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二国間交流事業 共同研究報告書

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二国間交流事業 共同研究報告書
(様式5)
二国間交流事業 共同研究報告書
平成20年4月9日
独立行政法人日本学術振興会理事長
殿
共同研究代表者所属・部局 京都大学 大学院理学研究科
(ふりがな)
職・氏 名
1. 事
業
名 相手国(フランス)との共同研究
2. 研 究 課 題 名
まつだ
教授・松田
ゆうじ
祐司
対応機関( MAE )
エキゾチック超伝導体の新超伝導相と対称性に関する研究
3. 全 採 用 期 間
平成18年4月1日 ~ 平成20年3月31日 (2年0ヶ月)
4. 研 究 経 費 総 額
(1)本事業により交付された研究経費総額 1,850 千円
初年度経費 850 千円、 2年度経費 1,000 千円
(2)本事業による経費以外の国内研究経費総額
2,000
千円
-1-
5.研究組織
(1)日本側参加者
(ふりがな)
氏
所 属・職 名
名
ま つ だゆ う じ
研 究 協 力 テ ー マ
京都大学・教授
全研究テーマ
京都大学・准教授
全研究テーマ
京都大学・助教
電気・熱輸送特性
京都大学・PD
電気・熱輸送特性
京都大学・大学院生
電気・熱輸送特性
京都大学・大学院生
マイクロ波応答
京都大学・大学院生
磁気光学、ホール素子による磁場分布測定
橋本顕一郎
京都大学・大学院生
マイクロ波応答
なかじまやすゆき
東京大学・大学院生
電気・熱輸送特性
松田祐司
しばうち たか さだ
芝内孝禎
やましたみのる
山下 穣
し し ど ひろ あき
宍戸寛明
かさはら ゆういち
笠原裕一
か と う とも なり
加藤智成
おかざき りゅうじ
岡崎竜二
はしもと けん いちろう
仲島康行
(2)相手国側研究代表者
エコールポリテクニーク・上級研究員・van der Beek, Cornelis Jacominus
所属・職名・氏名
(3)相手国参加者(代表者の氏名の前に○印を付すこと)
氏
名
○ C.J.
van
所属・職名(国名)
研 究 協 力 テ ー マ
der Ecole Polytechnique・上級研究 磁気光学による磁場分布測定、マイクロ波
Beek
員(フランス)
M. Konczykowski
CRNS・DR2(フランス)
ホール素子による磁場分布測定、マイクロ波
Feng Yang
CEA・大学院生(フランス)
磁気光学による磁場分布測定
P. Pari
CEA・低温技術者(フランス)
磁気光学による磁場分布測定
J. Losco
Ecole Polytechnique・技官
磁気光学による磁場分布測定
(フランス)
J. E. Wegrowe
Ecole Polytechnique・助教授
磁気光学による磁場分布測定
(フランス)
T. Wade
Ecole Polytechnique・研究員
磁気光学による磁場分布測定
(フランス)
-2-
6.研究概要(研究の目的・内容・成果等の概要を簡潔に記載してください。)
従来の超伝導体では、超伝導を記述する秩序パラメータ(あるいはエネルギーギャップ)は波数の方
向によらず一定で、s波の対称性を持つことが知られている。これに対して、エネルギーギャップがあ
る方向でゼロになるようなノード(節)が存在する異方的な秩序パラメータをもつ「エキゾチック超伝
導体」が最近非常に注目されており、低温において新しい超伝導相や対称性の破れなどの存在が期待さ
れている。この比較的新しい、超伝導の基礎としても重要だと考えられる問題に対して、最も直接的な
実験方法として必要不可欠なのは、超伝導特性の微視的な空間分布をプローブすることである。このよ
うなエキゾチック超伝導相を実験的に明らかにすることを目的として、磁気光学効果を用いた超伝導体
中の磁場分布の可視化を可能にする顕微鏡の開発、および微小ホール素子を用いた微小領域の磁化測定
を行った。また、微小領域の磁化を理解する上で不可欠であるエキゾチック超伝導体の超伝導状態の電
子状態を電子・熱輸送特性およびマイクロ波侵入長測定を行い、京都大学及びフランス・エコールポリ
テクニークにおいて、以下の成果が得られた。
1)極低温環境における磁気光学顕微鏡の開発について
磁気光学顕微鏡のための、振動のないチャコールポンプを用いた低温装置を顕微鏡下で焦点合わせが
可能になるようにマイクロメータを用いた移動機構を構築した。また、顕微鏡観察に伴い必要な画像記
録のためのカメラ、データ解析用のソフトウエアを整備・開発した。低温装置単体では1K の温度を数
時間キープすることに成功した。次に偏光顕微鏡によりハロゲンランプ光源から光を入射した状態での
テストを行ったが、低温に冷やすため、低温装置に取り付けた窓が複数あるために多重反射が問題にな
ることが明らかになった。このため、現在窓材に無反射コーティングをおこない、多重反射による画像
の乱れをなくす改良をおこなうことにより、従来超伝導体 Nb における3K での磁場分布観察に成功した。
今後は 3He ガスの導入と低温装置のヒートリンクの最適化により、より低温での観察が期待できる。
2)微小ホール素子を用いた局所磁化測定について
微小ホール素子を用いて、パイロクロア型結晶構造を持つ超伝導体 Kos2O6 についての局所磁化測定を
おこなったところ、超伝導転移温度(9.6 K)以下の8K において、構造相転移に伴う、磁化のとびが観
測された。このとびの大きさは、バルク磁化測定に比べ、局所的には高磁場においてはるかに大きな値
となることが明らかになり、またその値は試料中心が最も大きく、試料端では逆符号になることが明ら
かになった。このような場所依存性は磁場分布測定により始めて明らかになったものであり、この特殊
な超伝導体の相転移現象の理解に大きな寄与を与えるものだと考えられる。
3)電子・熱輸送現象測定について
重い電子系超伝導体 URu2Si2 において 1 K 程度の極低温において、磁束格子融解の相転移が発見され
ました。温度が 100 K 程度と高い高温超伝導体では大きな熱揺らぎのためにこの格子が融けて液体とな
る相転移が発見され大きな話題となったが、1K 以下の極低温でこのような相転移が観測されたのは世
界初である。これは、強い電子間相互作用のため有効質量が 100 倍近くにも増強された「重い電子系」
とよばれる化合物では、極低温でも重い電子のために熱揺らぎの効果が驚くほど強められることによる
ものであると考えられる。
4)マイクロ波表面侵入長測定について
高温超伝導体に電子線を照射することにより制御された量の点欠陥を導入した試料のマイクロ波に
たいする応答を調べることにより、その超伝導特性がどのように変化するかを調べた。その結果 c 軸方
向の超伝導電子密度の温度変化がほとんど変わらないことが明らかになり、今まで謎であった高温超伝
導体の c 軸特性が不純物レベルを使った純粒子ホッピングによるものであることをつきとめた。
-3-
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