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詳細報告書
マッチング・ファンド方式による産学連携研究開発事業
次世代インターネットプロトコル
IPv6 基本ソフトウェア体系の研究開発
研究開発プロジェクト総括研究成果報告書
平成 13 年 5 月
総括代表者
企業分担代表者
村井純
(慶應義塾大学環境情報学部 教授)
歌代和正
(株式会社インターネットイニシアティブ)
システム技術部 部長)
研究開発プロジェクトの背景・経緯と目的
次世代インターネットは 21 世紀の社会基盤であり、IPv6 は次世代情報基盤として必要な基
本機能(セキュリティー機能や信頼性)を提供することが可能な基盤技術である。本プロジェク
トでは、次世代インターネットの基盤技術となる IPv6 の基本システムソフトウェア体系の研
究開発および総合的運用に基づいた実践的実証実験を行い、継続的に参照・利用可能な IPv6
共通ソフトウェア基盤を確立する。本プロジェクトの研究開発成果物であるソフトウェア体系
は、インターネット関連機器ベンダーおよび学術研究組織において、参照ソフトウェアツール
として、改善あるいは機能追加を行われながら継続的な発展を続けるものと考えられ、さらに、
次世代インターネットにかかわる IPv6 関連のさまざまな製品開発、ソフトウェア開発の発展
を加速させることになる。
(財)日本情報処理開発協会先進的情報システム開発実証事業(平成 11 年度、12 年度、予算額
341 百万円)を通じて、IPv6 技術の基本プロトコルアーキテクチャおよび基本機能の研究開発
をほぼ完了し、国際的に参照アーキテクチャおよび参照ソフトウェアとしての地位を確立する
ことができたといえる。
しかしながら、これまで、研究開発を行ってきたのは、IPv6 システムの基本プロトコル構
成および基本機能であり、今後、IPv6 技術が、人々の産業および生活基盤として広く導入利
用されるためには、汎用的なパケットスケジューリング機能やマルチホーム機能など、新機能
および拡張機能に関する研究開発を基礎的研究レベルから推進する必要がある。
IPv6 技術の研究開発とその確立は、次世代情報システムの発展にとって必須の課題である。
本提案プロジェクトは、国際的に広く利用される参照アーキテクチャおよび参照ソフトウェア
としての地位を確立したわけであり、国際的な責任において、継続した新機能及び拡張機能に
関する研究開発およびその普及を行うことが要求されている。
上記(財)日本情報処理開発協会先進的情報システム開発実証事業を推進するために組織したプ
ロジェクトチームは、すでに、IPv6 システムが必要とする新機能の検討と、それを実現する
ためのシステムアーキテクチャの研究に一部着手している。
共同研究組織
・総括代表者
村井 純 (慶應義塾大学・環境情報学部・教授)
・研究分担者
中村 修 (慶應義塾大学・環境情報学部・助教授)
・
〃
楠本 博之 (慶應義塾大学・環境情報学部・助教授)
・
〃
南 政樹 (慶應義塾大学・環境情報学部・専任講師)
・企業分担代表者
歌代 和正 (株式会社インターネットイニシアティブ・技術本部シス
テム技術部・部長)
・研究分担者
山本 和彦 (株式会社インターネットイニシアティブ・技術研究所・
主任研究員)
・
〃
萩野 純一郎 (株式会社インターネットイニシアティブ・技術研究
所・主任研究員)
・
〃
永尾 禎啓 (株式会社インターネットイニシアティブ・技術本部シス
テム技術部)
研究期間
平成 12 年 3 月 17 日 ∼ 平成 13 年 3 月 31 日
研究開発の実施状況等
(1) 研究開発の実施状況
技術開発
以下の各対象項目に対する技術開発を行った。
・ IPv6 対応 DNS(Domain Name Server)システム
IPv6 アドレスと計算機の論理名の対応を行う DNS システムの研究開発
・ IPv4 システムとの相互接続および IPv6 システムへの移行技術
IPv6 システムへの移行に向けた基本技術および機能の研究開発と確立
・ セキュリティー技術
IPsec 機能を実現するために必要な電子鍵を配布する基本プロトコル(IKE)の研究開発
・ マルチホーム技術
複数のサービスプロバイダに同時に接続されたネットワークおよび端末を良好に動作
させるための基本技術と機能の研究開発
・ 自動構成機能
ネットワーク機器および計算機が自動的にネットワーク接続に必要な情報を獲得する
ための基本技術および基本機能の研究開発
・ 移動サポート機能
インターネット上で移動する計算機を収容するために必要な基本技術および機能の研
究開発
・ マルチキャスト経路制御機能
今のインターネットにないマルチキャスト機能を実現するための基本技術の研究開発
・ 経路制御機能
IPv6 システムで動作する経路制御の機能の検討および開発
・ パケットスケジューラ機能
汎用なパケットスケジューラ機能の研究開発
・ 通信品質制御機能
Diff-Serv(Differentiated Service)機能の研究開発
検証評価
実運用ネットワーク環境への接続を行い、インターネットバックボーンに直接接続さ
れた実稼働システム上で、技術開発の対象項目について実トラフィックを用いた検証
評価を行った。
また以下の各実験ネットワーク環境の構築もしくは参加を行い、技術開発の対象項目
について検証評価を行った。
・ 特定機能の運用可能性の検証を目的とした実験ネットワーク環境
l リナンバー実験
l WIDE プロジェクト合宿ネットワーク
・ 他製品との相互接続性の検証を目的とした実験ネットワーク環境
・ IPsec 2000
l Mobile IPv6 相互接続実験(1 回目)
l Mobile IPv6 相互接続実験(2 回目)
(2) 各機関別の研究開発目標、実施方法、成果
1. 慶應義塾大学
研究開発目標
各種の検証評価を実施する実運用ネットワーク環境および実験ネットワーク環境の整備、検証
評価の実作業および実施に対する支援を行うことで、技術開発の各対象項目に対する相互接続
性や相互運用性の検証を行い、本プロジェクトの研究開発成果物における品質の向上に寄与す
ることを目標とする。
実施方法
・WIDE プロジェクトが運用管理を行う WIDE インターネットバックボーンおよび国際的な
IPv6 ネットワークバックボーンである 6bone への参加・接続・運用を行い、技術開発の各対
象項目に対して、実運用ネットワーク環境上での実トラフィックによる検証評価を行える環境
を整備した。
・2000 年 11 月に慶應義塾大学 SFC 研究所においてリナンバー実験を実施し、マルチホーム
技術の検証評価を行う実験ネットワーク環境を整備した。
・2001 年 3 月に愛知県西浦温泉にて実施された WIDE プロジェクト合宿において、合宿所内
に敷設された一時的な実験ネットワーク環境上に、通信品質制御機能の検証評価を行う環境を
整備した。
・2000 年 10 月にフランスで開催されたイベントである IPsec 2000 に本プロジェクトの研究
開発成果物を提供し、セキュリティー技術を検証評価する環境の構築を支援した。
・2001 年 1 月と 2 月の 2 回にわたり慶應義塾大学 SFC 研究所において Mobile IPv6 相互接続
実験を実施し、移動サポート機能の検証評価を行う実験ネットワーク環境を整備した。
成果
机上の実験環境のみではなく、実際に運用されているネットワーク上で実際のユーザが利用す
ることによって、実装の安定性や相互接続性、スケーラビリティ等を評価できたと同時に、仕
様策定時や技術開発時には見えていなかったさまざまな問題点を発見し、ときには仕様の修正
案を提案することで有効なフィードバックを行うことができた。
2. 株式会社インターネットイニシアティブ
研究開発目標
技術開発の各対象項目に対する実際の開発作業を行い、本プロジェクトの研究開発成果物を作
成することを目標とする。
実施方法
次の各対象項目に対する技術開発を行った。
・ IPv6 対応 DNS(Domain Name Server)システム
・ IPv4 システムとの相互接続および IPv6 システムへの移行技術
・ セキュリティー技術
・ マルチホーム技術
・ 自動構成機能
・ 移動サポート機能
・ マルチキャスト経路制御機能
・ 経路制御機能
・ パケットスケジューラ機能
・ 通信品質制御機能
本プロジェクトの研究開発成果物は技術開発の途中においても随時公開し、自由に参照・利用
が可能な状態とした。また任意に参加可能なメーリングリストを用意し、研究開発成果物に対
する質問や意見、機能追加や不具合修正などを随時受け付けられる体制をとった。
成果
実運用ネットワーク環境やさまざまな実験ネットワーク環境において検証評価の対象と
なることで、十分な安定性や相互接続性、スケーラビリティが確認された実装としての研
究開発成果物を作成し、公開することができた。
まとめ
当該研究開発プロジェクト全体の進捗状況及び成果のまとめ
本プロジェクトにおいては、当初予定された技術開発対象項目に対する技術開発作業に関し、
移動サポート機能以外の全ての開発作業を完了し、随時研究開発成果物の公開を行ってきた。
移動サポート機能については一通り動作する状態までの開発作業は行ったが、仕様自体がまだ
変更される可能性があるため、引続き完成度を高めるための研究開発を行うこととなる。
また本プロジェクトの対象項目として開発作業が完了したその他の技術開発対象項目に
関しても、今後の機能拡充や仕様の追加変更等に伴う修正開発を引続き行うものとする。
今後の展開
本プロジェクトの研究開発成果物であるソフトウェア体系は、インターネット関連機器ベ
ンダーおよび学術研究組織において、参照ソフトウェアツールとして、改善あるいは機能
追加を行われながら継続的な発展を続けるものと考えられる。本プロジェクトの研究開発
成果物は、さまざまな組織(企業や研究機関)において、さまざまな IPv6 関連の研究開発
における研究基盤ソフトウェア/参照ソフトウェアとして利用され、次世代インターネット
にかかわる IPv6 関連のさまざまな製品開発、ソフトウェア開発の発展を加速させること
になる。このようなプロセスを通じて、新たな市場の創出、発展を促すことにより、我が
国の次世代情報産業の国際市場における競争力の確立と、それらを通じて、経済全体に刺
激を及ぼすことが期待される。
キーワード
インターネット、IPv6、DNS システム、IPsec、IKE、マルチホーム、自動構成、移動サ
ポート、経路制御、PIM、通信品質制御
研究成果発表
Jun-ichiro Hagino and K. Ettikan,
“ An analysis of IPv6 anycast ” ,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-anycast-analysis-02.txt, February 27, 2001.
Jun-ichiro Hagino,
“ Socket API for IPv6 traffic class field ” ,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-tclass-api-01.txt, October 16, 2000.
Jun-ichiro Hagino,
“ Socket API for IPv6 flow label field ” ,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-flowlabel-api-00.txt, September 17, 2000.
Jun-ichiro Hagino,
“ Guidelines for IPv6 local experiments ” ,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-local-experiment-01.txt, September 6, 2000.
Jun-ichiro Hagino,
“ IPv6 multihoming support at site exit routers ” ,
Internet Draft draft-ietf-ipngwg-ipv6-2260-00.txt, July 27, 2000.
Jun-ichiro Hagino and Kazu Yamamoto,
“ A RADIUS attribute for IPv6 dialup PPP with static address assignment”,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-dialup-radius-00.txt, July 13, 2000.
Jun-ichiro Hagino and Kazu Yamamoto,
“ Requirements for IPv6 dialup PPP operation ” ,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-dialup-requirement-00.txt, July 13, 2000.
Jun-ichiro Hagino,
“ Possible abuse against IPv6 transition technologies ” ,
Internet Draft draft-itojun-ipv6-transition-abuse-01.txt, July 10, 2000.
Jun-ichiro Hagino and Kazu Yamamoto,
“ An IPv6-to-IPv4 transport relay translator ” ,
Internet Draft draft-ietf-ngtrans-tcpudp-relay-01.txt, May 22, 2000.
Jun-ichiro Hagino,
“Mbuf issues in 4.4BSD IPv6/IPsec support (experiences from KAME IPv6/IPsec
implemntation) ” ,
Freenix2000, June 2000.
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