Comments
Description
Transcript
着衣バストシルエットの審美性に関する研究 : 内容の
Nara Women's University Digital Information Repository Title 着衣バストシルエットの審美性に関する研究 : 内容の要旨及び審査 の結果の要旨 Author(s) 知念, 葉子; 諸岡, 英雄; 前川, 昌子; 今岡, 春樹; 鷹股, 亮 Citation 博士学位論文 内容の要旨及び審査の結果の要旨, Vol.26, pp.102-105 Issue Date 2009-08 Description 博士(生活環境学),博課第412号,平成21年3月24日授与 URL http://hdl.handle.net/10935/1148 Textversion publisher This document is downloaded at: 2017-03-28T14:47:01Z http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace 氏名(本籍) 知念葉子 (沖縄県) 学位の種類 学位記番号 博士(生活環境学) 学位授与年月日 平成21年3月24日 学位規則第4条第1項該当 学位授与の要件 博課第412号 人間文化研究科 論 文 題 目 着衣バストシルエットの審美性に関する研究 論文審査委員 (委員長)教授 諸岡英雄 教授 前川昌子 教授 今岡春樹 教授 鷹股 亮 論文内容の要旨 本研究は、美しい着衣バストシルエット(着衣時のバスト部位及びその周辺に創り出されるシルエッ ト)を形成しやすいブラジャーを設計するための基礎的資料を得るために、着衣バストシルエットの 審美性について、各種ブラジャーのカップ形態・ブラジャー寸法値・シルエット形状値・体形・上衣 とブラジャーカップ部の力学仁心特性等との関連から、消費科学的および感性工学的アプローチを用 いて物理量と心理量の両面から解明しようとするものである。 本論文は、次の6章から構成されており、各回の要旨は以下の通りである。 第1章は緒論で、本研究の目的と意義、本研究に関する内外の研究および本研究の概要を述べてい る。 第2章では、美しい着衣バストシルエットの概念と、美しい着衣バストシルエットを形成しやすい ブラジャーの形態について検討している。すなわち、形態の異なる各種C70ブラジャー上に直接ニッ トシャツを着装したときの着衣バストシルエットの上半身デジタル画像(正面、斜面(45。)、側面) を用いて、①カップの大きさ(1/2カップ、3/4カップ、フルカップなど)及び②はぎの形状 (2枚はぎ、3枚はぎ、縦はぎなど)の違いが、着衣バストシルエットの審美性に及ぼす影響をSD 法視感評価実験から検討している。その結果、着衣バストシルエットの美しさの概念を、丸く、柔ら かそうで、自然で、女性らしく、上衣にブラジャーのヒビキがなく、着衣しわがないシルエットと定 義している。また、美しい着衣バストシルエットを形成しやすいC70ブラジャーのカップ形態は、3 /4カップで、3枚はぎまたはシームレスのブラジャーであることを明らかにしている。 第3章では、ニットシャツ上に表出するブラジャーの表面形状等に起因するヒビキを明確にするた めに、ヒビキの種類と発生原因、表出しやすいブラジャーの種類と形状、ならびにカップ部の力学特 性から検討している。その結果、上衣へのヒビキ現象の表出要因には、ブラジャーの縫い目、カップ ライン、装飾レースの凹凸、ブラジャートップのつぶれなどがあることを明確にしている。さらに、 シームレスタイプのブラジャーはヒビキを表出しにくいことを、ヒビキを表出しやすい1/2カップ ブラジャーのカップ部は、総トップ角度が155。以下、アンダーカップの曲り度が6皿m以下、圧縮回 復性が50%以下であるこζを明らかにしている。 第4章では、素材と基本パターンを同一とし、カップ部の脇上辺部の寸法を段階的に変化させた試 作ブラジャー4種類を作製し、ブラジャー寸法値が着衣バストシルエットの審美性とシルエット形状 値に及ぼす影響について検討している。その結果、脇上辺部寸法値の段階的変化は、胸上部へこみ感 及び胸下部なめらかさ感などの着衣バストシルエットの視感に影響することを、シルエット形状値で は、胸上部角度及び胸下部角度などに影響することを明確にしている。さらにY型、A型、 AB型に よる体型の違いが、胸上部へこみ感、胸上部ボリューム感、トップ上向き感、トップ下向き感、寄せ 感、やわらかさ感などの着衣バストシルエットの審美性に影響することを明確にしている。 第5章では、審美性に優れた着衣バストシルエットの形状を明確にするために、A70、 C70、 E70 の各種カップブラジャーおよび体形の異なる被験者とニットシャツを用いて、これらのブラジャー着 用時の上半身デジタル画像を作成し、着衣バストシルエットの審美性のSD法視感評価と種々な部位 のシルエット形状値との関係を検討している。その結果、着衣バストシルエットの審美性を評価する とき、評価者が注目するシルエット部位は正面と側面の部位が多く、特に、着衣バストシルエットの 美しさは側面におけるバストエッジラインに注目することを明らかにしている。また、美しい着衣バ ストシルエットの形状値は、32mm≦R≦40mm、67c㎡≦A2≦86c㎡、7.1cm≦B2≦8.1 cm》14cm≦T2≦ 15.6cmの範囲にあることを明らかにしている。ここで、 Rはバストエッジライン全体の曲がり度、 A2は側面のバスト上部の面積で、 B 2は側面のバストエッジライン上部の長さ、 T2は側面のトップ バストの厚さである。 第6章は、結論であり、以上の各面で得られた結果の総括を行い、今後の課題を提起している。 論文審査の結果の要旨 着衣バストシルエット(着衣時のバスト部位及びその周辺に形成されるシルエット)の美しさは多 くの青年女性の関心事の一つである。着衣バストシルエットの要因には人体・ブラジャー・上衣の3 要因が考えられるが、本論文ではこれら3要因間の関連を、ブラジャーを中心に検討し、美しい着衣 バストシルエットを形成しやすいブラジャーの設計指針を得ようとするものである。従来のブラジャー に関する研究の多くはブラジャーによる体型補整や人体影響に関する研究などで、人体とブラジャー との2要因間の関連を検討している場合がほとんどである。したがって、本論文の独創性の一つに、 ブラジャーの設計指針を着衣バストシルエットの審美性に関する3要因間の関連の検討から得ようと した点があげられる。本論文は6章からなる。 第1章では、本研究の目的と意義、本研究に関連する内外の研究、および本研究の概要を述べてい る。 第2章では、美しい着衣バストシルエットの概念と美しい着衣バストシルエットを形成しやすいブ ラジャーの形態について、青年女子が形態の異なる各種C70ブラジャー上に直接ニットシャツを着装 したときの着衣バストシルエットの上半身デジタル画像(正面、斜面(45。)、側面)を用いて、SD 法視感評価実験から検討している。その結果、着衣バストシルエットの美しさの概念を、丸く、柔ら かそうで、’ d然で、女性らしく、上衣にブラジャーのヒビキがなく、着衣しわがないシルエットと定 義している。また、美しい着衣バストシルエットを形成しやすいC70ブラジャーのカップ形態は、3 /4カップで、3枚はぎまたはシームレスのブラジャーであることを明らかにしている。特に、着衣 バストシルエットの美しさの概念を明確にした従来の研究はなく、評価に値する。 第3章では、ニットシャツ上に表出する、ブラジャーの表面形状等に起因するヒビキを明確にする 検討を行い、上衣へのヒビキ表出の要因には、ブラジャーの縫い目、カップライン、装飾レースの凹 凸、ブラジャートップのつぶれであることを明確にしている。さらに、シームレスタイプのブラジャー はヒビキを表出しにくいことを、ヒビキを表出しやすい1/2カップブラジャーのカップ部は、総トッ プ角度が155。以下、アンダーカップの曲り度が6mm以下、圧縮回復性が50%以下であることを明ら かにしている。このように、ブラジャーによるヒビキの原因とヒビキを生じやすいブラジャーの形状 値や圧縮特性値の数量範囲を明確にし、ブラジャーの設計指針を具体的に示した点において、高く評 価できる。 第4章では、素材と基本パターンを同一とし、カップ部の脇上辺部の寸法を段階的に変化させた試 作ブラジャー4種類を作製し、ブラジャー寸法値が着衣バストシルエットの審美性とシルエット形状 値に及ぼす影響について検討している。その結果、脇上辺部寸法値の段階的変化は、胸上部へこみ感 及び胸下部なめらかさ感などの着衣バストシルエットの視感に影響することを、シルエット形状値で は、胸上部角度及び胸下部角度などに影響することを明確にしている。このように試作ブラジャーを 用いて、実際的・具体的なブラジャーの設計指針を示した点は評価できる。 第5章では、A70、 C70、 E70の各種カップブラジャーおよび体形の異なる被験者とニットシャツ x を用いて、着衣バストシルエットの審美性のSD法視感評価と種々な部位のシルエット形状値との関 係を検討している。その結果、美しい着衣バストシルエットのシルエット形状値は、32mm≦R≦40mm、 67c㎡≦A2≦86c㎡、7.1cm≦B2≦8.1cm、14cm≦T2≦15,6cmの範囲にあることを明らかにしている。こ こで、Rはバストエッジライン全体の曲がり度、 A2は側面のバスト上部の面積で、 B 2は側面のバス トエッジライン上部の長さ、T2は側面のトップバストの厚さである。このように、カップサイズの 異なる各種ブラジャーと体形の異なる被験者の着衣バストシルエットの比較から、美しい着衣バスト ツルエットの形状値の範囲を明確にしたことは、美しい着衣バストシルエットの指標の一つを明確に したことになり、高く評価できる。 第6章は、結論であり、以上の各章で得られた結果の総括を行い、今後の課題を提起している。 以上のように、本論文は美しい着衣バストシルエットを形成しやすいブラジャーの設計指針に関す る重要かっ具体的な新知見を多数提供しており、今後のブラジャーの設計および衣生活への多大の貢 献が期待できる。なお、本論文の第2章・第3章については査読付学術語日本繊維機械学会誌に掲載・ 印刷中である。また、第4章は投稿準備中であり、第5章は同学会誌に投稿中であることを付記する。 よって、本学位論文は奈良女子大学博士(生活環境学)の学位を授与されるに十分な内容を有して いると判断した。