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Author(s)
学報. 号外 昭和41年第7号
大阪府立大学
Editor(s)
Citation
Issue Date
URL
1966-11-24
http://hdl.handle.net/10466/9445
Rights
http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/
昭和41年11月24日
大阪府立大学
号外
報
学
目
告
第7号 t
昭和41年11月24日
号 外
第7号
編 集 発 行
大阪府立大学事務局
次
示
学位論文内容の要旨および論:文審査の結果の要旨公表……・・…………・……………・・…・……………]
の設計に必要な臭化リチウム水溶液の蒸気圧、比重、
示
告
粘度、熱伝導度、比熱、混合熱、溶解度などを測定し
これらの実測値から使用に便利な実験式、線図、平滑
学位論文内容の要旨および
値を求め、つぎにこれらの数値を用いて冷凍機サイク
論文審査の結果の要旨公表
ルの設計基礎計算に必要かつ便利なエンタルピー、濃
度線図を作製し、装置の各部分における(熱力学的)
大阪府立大学告示第14号
昭和4ユ年11月日日、学校教育法(昭和22年法律第26
状態、および交換熱量を線図上で算出する熱力学的計
号)第68条第1項の規定に基づき博士の学位を授与し
算方法を例示した。さらにこの冷凍機サイクルの不可
たので、学位規則(昭和28年文部省令第9号)第7条
逆性による各部分の熱損失の程度を知るため、エント
の規定により、論文内容の要旨および論文審査の結果
の要旨を次のとおり公表する。
第2章においては塩化リチウムー水系について、同
昭和41年il月24日
大阪府立大学長
外山
様の物性値の測定ならびに線図の作製を行なった。特
修
正
にこの系で得られた線図を用いて、熱交換器を持った
(学位規則第5条第2項該当者)
型式と持たない型式の冷凍機の不可逆性による熱損失
称号および氏名
工学博士
植村
(大阪府、昭和8年11月27日生)
論
文
ロピー濃度線図を作製し、装置の各部分における熱損
失の程度を理論的に算出した。
名 低圧吸収式冷凍機に関する研究
の程度の比較を行ない、熱交換器を持つ型式の方が熱
損失が小さいことを理論的に確かめた。
第3章では、リチウム塩一水系冷凍機の動作特性す
1.論文内容の要旨
本論文は低圧吸収式冷凍機の設計に必要な資料を求
なわち作動条件を変えると性能がどのように変化する
かを調べた。その結果、塩化リチウムー水系は臭化リ
めることを目的とした研究であり、3篇よりなる。第
チゥムー水系と比較して、性能はよいが、動作範囲が
1篇では、この種の冷凍機に用いうる最も優秀な系と
狭いことをみいだした。
考えられる臭化リチウムおよび塩化リチウムー水系の
第4章では、上記のリチウム面一水系以外の吸収式冷
諸物性値を測定し、低圧吸収式冷凍機サイクルの化学
凍機の動作特性について考察した。 まずアンモニアー
工学熱力学的な研究を行ない、種々のサイクルの動作
水系の既報の資料をまとめて、その動作特性を調べ、
特性と性能について考察を行なった。ついで第2篇で
ついでエチル・アミンー水系および水酸化ナトリウムー
は、 リチウム塩一水系低圧吸収式冷凍機の装置各部の
水系の動作特性について考察した。さらにこれら各種
配置、構造とその機構に関する化学工学的研究を行な
の冷凍機の性能の比較を行ない、 リヂウム塩一水系が
い、冷凍機各部の構造、設計に必要な化学工学的数値
他の系に較べて優秀なことを確認した。
を求めた。最後に第3篇では、試作吸収式冷凍機の性
次いで第2篇第1章では、 リチウム塩一水系冷凍機
能試験とこの種の冷凍機の生産工程への導入について
の各装置部分の配置関係について考察した。この冷凍
述べている。
機は装置を真空(装置各部の温度における水溶液の蒸
以下各章ごとにその内容を略述すれば、eg 1篇第
1章では、臭化リチウムー水系吸収式冷凍機サイクル
気圧程度)で作動させるので、各装置部分の圧力差は
小さく、冷媒および吸収剤を支障なく循環させるため、
(39)
号外
第7号 2
理想的な配置と位置関係が決定された。
第2章では、吸収器の構造とその吸収機構ならびに
昭和41年11月24目
経済的に有利であると述べている。
2.論文審査結果の要旨
吸収速度に関する化学工学的基礎研究を行なった。低
圧式冷凍機に最適な吸収器では、冷媒の吸収機構は、装
本論文はリチウム塩一水系低圧吸収式冷凍機のプロ
置の構造から滴生成時の吸収と濡壁吸収の2つより成
セス設計の基礎となる吸収式冷凍機サイクルに関する
り立つ。まずそれぞれの吸収機構について基礎的な実
化学工学熱力学的な理論的研究と、この種冷凍機の各
験を行ない、得られた吸収速度式および物質移動係数
部装置の構造設計に必要な化学工学的数値を求める実
を既往の研究結果と比較検討し、さらに前述の最適機
験的研究とから成立っており、それぞれの分野で、以
構の小型吸収器について総合吸収量の測定を行ない、
下に述べるごとき学問的に重要な成果と知見を得てい
吸収器設計の基礎数値を求めた。
る。
第3章では、蒸発器として用いられるブイン付管の
i)従来ほとんど測定されていなかったリチウム塩一
フイン側境膜伝熱係数を求める実験を行なった。正方
水系吸収式冷凍機の冷媒水溶液の化学工学熱力学的諸
形配列の場合jH =O.263ReJO・4という実験式を得た。
物性値を測定した。
この式はJamesonや内田が他の型式寸法のフイン管で
得た結果とよく一致している。つぎに、正三角形配列
の場合jH=0.270Re−o・37を、また正方形配列で物質
ii)リチウム塩一水系冷媒水溶液のエンタルピー’W,度
線図およびエントロピー濃度線図を作製した。
この線図を用いてこの系の吸収式冷凍機サイクルの
移動を伴う場合jD=O.306Re O・43を、さらに摩擦係
化学工学熱力学的設計方法を考案した。
数fについてf/2=6.265Ref一。・41などの実験式を得
iii)この理論の応用として、 リチウム塩一水系および
た。これらの結果からブイン管蒸発器の寸法決定に必
要な基礎的数値を求めた。
第4章では、小型低圧吸収式冷凍機の冷媒一吸収液
の循環に用いられる気泡ポンプについて、蒸気流によ
る感電作用を最高にする蒸気量、浸水率、管高さ、の
関係などを実験的に解明した。
第5章では、同じく小型吸収式冷凍機の空冷式凝縮
器について実験し、管内で蒸気が凝縮するとき、管底
部凝縮液のため、管の傾斜角が30。付近のとき、熱移
動量が最大になる、等の結果を得た。
第6章では、真空下で動作する低圧吸収式冷凍機の
ミ
性能低下の原因となる浸入空気、および発生水素の排
気装置を試作し、その性能を検討し、設計資料を求め
た。
第7章では、この種の冷凍機の冷媒による腐蝕の抑
制方法について考察し、装置材料としてステンレス鋼
が望ましいが、鉄や銅を用いても、防蝕剤として
約0.2wt%の水酸化リチウムと約0.3wt%のクロム酸
リチウムを冷媒水溶液に加えれば大巾に腐蝕が抑制で
きることを見出した。
最後に第3篇第1章では、第1、2篇の基礎的研究
の結果を結集して、小型の臭化リチウムー水系吸収式
冷凍機を設計、試作し、その二二試験を行なった。そ
それ以外の各種の吸収式冷凍機の性能および動作特性
を調べ、吸収式冷凍機の長所を生かした応用領域を考
察した。
iv)リナウム塩一水系吸収冷凍機の各装置部分におけ
る化学工学的研究の成果、例えば、吸収器における吸
収機構および物質移動係数、ブイン管蒸発器のフイン
側境膜伝熱係数、気泡揚液ポンプの気液二相流、空冷
凝縮器の管内凝縮などに関する研究成果は上記冷凍機
の各装置部分の設計上重要である以外に化学工学全般
から見て学問的に重要な成果である。
v)自らの基礎的研究の成果を応用し、小型の吸収式
冷凍機を設計、試作し、その性能試験を行ない、結論
的に、その学問的研究結果の正確であったことを確め
得た。
さらに、この種の冷凍機の設計、製造という工業方
面に貢献しうる重要な手がかりを得た。
以上述べたごとく本論文は化学工学特に調湿および
空気調和工学の分野において学問上の進歩に貢献する
とともに、化学工業プロセスの改良、冷凍機の設計、
製作に対して寄与するところが少なくないと認める。
以上により工学博士の学位を授与することを適当と
認める。
昭和41年10月27日
の結果、第1、2篇の基礎的研究の結果とよく一致す
主査 教授 矢野 武夫
ることを認めた。
副査教授上山 惟恒
第2章では、吸収式冷凍機の経済的考察を行ない、
特に化学工業プロセス内に適当に導入すれば、非常に
(40)
副査 教授 北浦 嘉之
副査教授疋田 晴夫
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