Comments
Description
Transcript
アジアのことばと文字
R EFERENCE C ORNER 機に瀕した世界の言語 こと ばと文化の多様性を守るため れた。宮岡伯人編﹁消滅の危 が主要なテーマに取り上げら 学 者 会 議 で は、 ﹁危機言語﹂ ケベックで開かれた国際言語 に 瀕 し て い る。 一 九 九 二 年、 世紀中に消滅するかその危機 よれば、そのおよそ九割が今 者M・クラウス教授の予測に 現在、世界には約六〇〇〇 の言語が存在するが、言語学 砂岡和子・池田雅之編著﹁ア 事 情 を 概 観 す る も の と し て、 ている。また、アジアの言語 とっても興味深い内容となっ はもちろん、そうでない人に 解説し、ことばを学習する人 編纂の歴史と主要な辞書類を 種類のことばについて、辞書 らサンスクリット語まで三〇 伝えてくれる。さらに、石井 平易な解説で、文字の魅力を 〇〇五年︶は、豊富な写真と 漢字が一般の人々のものに なる以前、湖南省江永県一帯 産党による主張を検討する。 に着目しながら、国民党と共 とし、言語に関する各種法令 元社 二〇〇三年︶は、主に 清朝末期から現代までを対象 中 国 に お け る 言 語 政 策 ﹂︵ 三 藤井︵宮西︶久美子﹁近現代 民共和国成立後、識字政策と の 辞 典 ア ジ ア 編 ﹂︵ 三 省 堂 し て 文 字 改 革 が 実 施 さ れ た。 二〇〇八年︶は、アイヌ語か 米雄編﹁世界のことば・辞書 に、女性たちが作り出した文 本家中国においては、中華人 の 人 々 だ け の も の で あ っ た。 間がかかるため、長らく一部 が、習得するには難しく、時 簡略化の道をたどって来た 漢字は、その長い歴史の中で れる。われわれになじみ深い 文字、アラビア文字があげら た。鈴木義里 ﹁あふれる言語、 ぞれ独自の公用語が制定され 言語ではなく、州ごとにそれ それは他の州にとっての多数 ヒ ン デ ィ ー 語 が 選 ば れ た が、 の独立後、連邦公用語として 題の中心となる。植民地から は、ことばがしばしば政治問 る。 そ の 発 祥 の 地 イ ン ド で に影響を及ぼしたとも言われ ハングルやカナ文字創出の際 ア で 使 用 さ れ て い る。 ま た、 せ、主に南アジアと東南アジ 驚くべき多様性と拡がりを見 して、インド系文字の仲間は、 たブラーフミー文字を起源と ある。紀元前三世紀に出現し 文字﹂ ︵白水社二〇〇一年︶で 和彦編著﹁華麗なるインド系 ついて取り上げるのは、町田 は、ラオスの国家としての独 のである。ラーオ語の﹃独立﹄ 関係に注目しつつ考察したも れてきた過程を、タイ語との ラオスの国民語としてつくら でを対象として、ラーオ語が 一九七五年の社会主義革命ま イ語﹂︵風響社 二〇〇八年︶ は、フランス植民地時代から が﹃つくられる﹄とき ラオ スの言語ナショナリズムとタ ばである。矢野順子﹁国民語 語上の境界線が引かれたこと ﹃ ラ ー オ 語 ﹄ は、 植 民 地 支 配により、メコン川を境に言 の中で捉え分析する。 ることばを、社会との関わり 策﹂︵三元社 二〇〇二年︶ は、 シンガポールで使用されてい 多言語社会における言語政 アジアのことばと文字 に﹂ ︵明石書店 二〇〇二年︶ は 危 機 言 語 の 現 状 を 検 証 し、 ジア世界のことばと文化﹂︵成 言語状況を、また、世界の文 ク﹂ ︵大学書林 二〇〇〇年︶ が、一〇一二の言語と世界の 界の言語と国のハンドブッ 多言語社会である東南アジア 化﹄ も紹介している。後者は、 と す る も の で、 ﹃等身大のア 典 普及版﹂ ︵吉川弘文館 ジアの人々の言語と生活文 二〇〇九年︶は諸文字の成立 字研究会編﹁世界の文字の図 七カ国の、複雑な言語事情を と文化の視点から問い直そう 者は地域研究のあり方を言語 と文化﹂ ︵高文堂出版社 一 九九七年︶が参考になる。前 文堂 二〇〇六年︶と、小野 沢純編著﹁ASEANの言語 収める。 ほか、女文字に関する論文を カナ文字を比較した遠藤論文 ﹁消えゆく文字 中国女文字 の 世 界 ﹂︵ 三 元 社 二 〇 〇 九 年 ︶ は、 女 文 字 と ハ ン グ ル、 を収め、遠藤織枝・黄雪貞編 たちが自らの思いを綴った歌 国の女文字 伝承する女性た ち﹂︵三一書房 一九九六年︶ は、女文字発見の経緯と女性 字が存在する。遠藤織枝﹁中 策を講じて民族の統合を図っ であり、国家は様々な言語政 も、ことばは重要な政治課題 一方、狭い国土に多民族が 暮らすシンガポールにおいて 関係にあるのかを解明する。 た枠組みが言語とどのような し、国家や政治・行政といっ 公用語の相互の関係を検討 あふれる文字 インドの言語 政 策 ﹂︵ 右 文 書 院 二 〇 〇 一 年︶は、このような二種類の かりになるだろう。 らはアジアを知るための手掛 時に姿を変えてきたが、それ 様々な運命をたどり、文字は アジアのことばと文字に関 する資料は、この他にも多数 えている。 ディアに乗ってメコン川を越 映画やラジオなど様々なメ 佐々木茂子 保護について模索する。 から現状までを解説する。 取り上げ解説するものである。 立維持に不可欠なものであっ ア ジ ア 地 域 は、 ﹃文字の宝 庫﹄と言われるが、東京外国 刊 行 さ れ て い る。 こ と ば は たが、いまやタイ語の影響は、 語大学アジア・アフリカ言語 世界の主なことばと文字に ついては、下宮忠雄編著﹁世 文化研究所編﹁図説アジア文 て き た。 大 原 始 子﹁ 改 訂 版 ︵ さ さ き し げ こ / ア ジ ア 経 済 シンガポールの言葉と社会 研究所図書館︶ 二 漢字と並び、アジアに広く 伝播しているインド系文字に アジア地域で使用される主 な文字には、漢字、インド系 字入門﹂ ︵河出書房新社 56 アジ研ワールド・トレンド No.181(2010. 10)