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「ICHリスボン会議」開催される

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「ICHリスボン会議」開催される
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2015年1月号 No.165
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「ICHリスボン会議」開催される
ICH定例国際会議(運営委員会、専門家/実施作業部会など)が2014年11月8日~13日にポルトガルのリスボンで開
催されました。Q3D元素(金属)不純物、E2B(R3)個別症例安全性報告を伝送するためのデータ項目とメッセージ仕様
Q&Aがステップ4に到達し、日本・アメリカ・EU 3極のガイドラインになりました。また、ICHの将来のあり方も継続して
検討され、基本方針の合意が得られました。
リスボン市街にある、大航海時代の幕
開けを象徴する
「発見のモニュメント」
ICHリスボン会議 ICH運営委員会の審議風景
2014年11月8日~13日の6日間、ポルトガルのリスボンでICH定例国際会議(運営委員会、専門家/実施作業部会など。
以下、ICHリスボン会議)が開催されました。ICHリスボン会議には、日本・アメリカ・EUの官産6団体(「米国食品医薬品局
(FDA)」、
「米国研究製薬工業協会(PhRMA)」、
「EU」、
「欧州製薬団体連合会(EFPIA)」、
「厚生労働省(MHLW)」、
「日本製薬工
業協会(JPMA)」)、オブザーバー3団体(「カナダ保健省(Health Canada)」、「欧州自由貿易連合(代表「スイス連邦医薬品庁
(Swissmedic)」)」、「世界保健機関(WHO)」)、ICH事務局(スイス)、非ICH地域で規制調和に取り組んでいる地域代表(「ア
ジア太平洋経済協力会議(APEC)
」
、
「東南アジア諸国連合(ASEAN)
」
、
「南部アフリカ開発共同体(SADC)
」
、
「東アフリカ共同体
(EAC)」、
「湾岸協力会議(GCC)」、
「汎アメリカ医薬品規制調和ネットワーク
(PANDRH)」)、および招待国(中国、台湾、韓国、
シンガポール、ブラジル、ロシア)行政関係者などから320名以上(製薬協からは46名)が参加しました。また、「国際ジェネ
リック医薬品連盟(IGPA)」、「世界セルフメディケーション協会(WSMI)」などの医薬品に直接関連する多くのグローバル業界
団体の代表も参加しました。
今回の会議では、Q3D元素(金属)不純物、E2B(R3)個別症例安全性報告を伝送するためのデータ項目とメッセージ仕様
Q&Aがステップ4に到達し、日本・アメリカ・EU 3極のガイドラインになりました。また、ICHの将来に関する検討では、現行
のICH地域外の行政、ならびに業種別グローバル業界代表に門戸を開放する拡大路線の一環として、ICHの法人化に向け
た基本事項の合意が図られました。以下に概要を記載します。
1. 今後のICH
ICHは1990年の創設以来、日本・アメリカ・EUのいわゆる3極で規制調和を図ってきましたが、医薬品開発のグローバル化
に伴い、今後は、現行のICH地域外の行政、ならびにグローバル業界代表が加わる新たな枠組みで規制調和を図っていま
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す。今回の会議では、そのための基本的枠組みの合意形成が得られました。会議体としてのICHは法人化(スイス国内に
2015年にICH協会を設立)
されるとともに、今後の拡大に向け、協会構成、総会および執行委員会のメンバー、決定プロセ
ス、新会員参加基準、協会財務などの基本事項が検討され、2016年から行政主導の会議体に移行します。
設立されるICH協会のもとでは、会員適格基準(自国でのICHガイドライン履行義務など)を満たせば、会員に加わること
ができ、ガイドライン作成などに直接関与することができます。また、協会の要となる執行委員会は、JPMAを含め現行の
運営委員会委員の6団体(「EU」、
「FDA」、
「MHLW」、
「EFPIA」、
「PhRMA」、
「JPMA」)がICH協会創始団体となり、それに「Health
Canada」
と
「Swissmedic」を加えた計8団体を常任委員として運営を開始します。その2年後には、現行ICH地域外の行政お
よび業界から非常任委員が総会で選出され、執行委員会に参加することが予定されています。
今後の運営のうち、ガイドライン作成は参加団体間の合意形成を基本とします。しかし、合意形成が得られなかった場合
は、ガイドラインが最終的に規制文書になることから、3創始行政(「EU」、
「FDA」、
「MHLW」)の意見を優越します。財務は、
今まで3創始業界(「EFPIA」、
「PhRMA」、
「JPMA」)が貢献してきましたが、今後は会員が負担する会費で運営し、活動経費(事
務局経費、年2回の定例国際会議費)を一括管理し、当面は3創始行政と3創始業界が等分に負担することになります。
2. ICHトピックの動向
専門家/実施作業部会では、計13トピックス(M2、M8、E2B(R3)、S5(R3)、Q7、Q12、E6(R2)、E9(R1)、E11(R1)、
E17、E18、M4E(R2)、M1 MedDRA PtC)
で、対面会議を実施しました。今回の会議でステップアップしたトピックは、
「M8
電子化申請様式」、
「Q3D元素(金属)不純物」、
「E2B(R3)個別症例安全性報告のデータ項目とメッセージ仕様」の3つでした。
各トピックは、テーマごとに紹介します。
■
有効性など
(6トピックスすべてで対面会議を実施)
・E6(R2)GCP 補遺:
本体は改訂せず補遺作成。フォーマット
(構造)、記載内容(quality management、risk management、risk-based
monitoring、electronic records、trial master file)を検討。ステップ2は2015年6月、ステップ4は2016年11月予定。
・E9(R1)臨床試験の統計的原則 補遺:
本体は改訂せず補遺作成。はじめての対面会議。臨床試験における
「Estimand」の選択と感度分析の計画・実施・解釈
に関するフレームワークの調和促進が目的。用語「Estimand」の定義、補遺の構造(trial objectives、estimand、analysis
methodology、sensitive analyses)などを検討。ステップ2は2015年6月予定。
・E11(R1)小児臨床試験 補遺:
本 体 は 改 訂 せ ず 補 遺 で 補 完。 補 遺 は 本 体 参 照 の もと、 新 規 作 成また は 改 訂 を 実 施 する7分 野 で 構 成( 新 規:
「Commonality(小児用製剤開発における当局とのマイルストーンのタイミングおよび内容の共通性)」、
「Extrapolation of
data(データの外挿)」、「MID3/Modelling & simulation(モデリングに基づく医薬品開発)」。改訂:「Ethical issues on
pediatric studies(倫理的問題)」、「Age classification and pediatric subset(新生児を含む年齢区分およびサブセット)」、
「Clinical trial methodology(試験の種類と試験方法)」、
「Pediatric formulation(小児用製剤開発における剤形の問題)」)。
うち、
「Extrapolation of data 」、
「MID3/Modelling & simulation 」、
「Pediatric formulation 」の3分野は専門家拡大。ステッ
プ1技術文書は2015年3月予定。
・E17 国際共同治験:
新規トピックで初会合。
「Table of contents」として次を作成。
「1. Introduction、2. General recommendations in
planning/designing MRCT・2.1 Strategy-related points・2.2 Clinical trial design and protocol-related points、3.
Glossary」。今後、各章のdraftingを開始。 ステップ2は2015年11月予定。
・E18ゲノミックサンプリング:
新規トピックで初会合。技術的面に焦点を当てたガイドライン。今回、ガイドラインの対象範囲、将来の使用を踏まえ
たゲノミックサンプル収集の適切な方法に関する価値とその重要性、サンプリング方法、データの利用と扱い、個人情報・
プライバシー の 保 護、 将 来 的 使 用 の 定 義 などを 検 討。
「Table of contents」として次 を 予 定。
「1.Introduction、2.
Guidelines・2.1 Rationale for genomic sampling・2.2 Genomic sampling・2.3 Genomic data・2.4 Privacy and
confidentiality・2.5 Emerging topics、3. Glossary」。ステップ2は2015年6月予定。
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・M4E(R2) ベネフィット・リスク:
本体の改訂。CTD Section 2.5.6(臨床に関する概括評価)「ベネフィットとリスクに関する結論」のフォーマットの共通化
を図ることにより、承認申請時の、申請者によるベネフィット・リスク評価をわかりやすくすること
(より具体的かつ構造化
した形に改訂し、 ベネフィット・リスク評価の表現方法に関する調和を図る)が目的。 方針の検討、 新規サブ構造
(Therapeutic context、benefits、risks、benefit-risk analysis evaluation)などの検討実施。ステップ1 技術文書は2015
年4月予定。
■
安全性
・S3A トキシコキネティクス マイクロサンプリング Q&A:
Concept Paper承認。作業部会を結成し、作業開始。ステップ2は2015年3月予定。
・Informal S5(R3)生殖発生毒性試験:
現行ガイドライン本体の改訂を提案中。課題として、胚胎児発生毒性試験で2種目動物を用いた試験を省略する条件
(代替法、予備試験の活用、ヒトへの外挿性・曝露量などの情報)、投与量設定根拠(ヒト曝露量考慮条件)、授胎能評価
における反復投与試験の活用条件、生殖発生毒性試験の中の各試験の組み合わせ条件など。保留中の1規制当局の検討
結果を受け、2015年3月の運営委員会電話会議で最終決定。
・S9 抗悪性腫瘍薬の非臨床評価 Q&A:
Concept Paper承認。作業部会を結成し、作業開始。ステップ2/4は2015年3月予定。
・S11小児用医薬品の非臨床評価:
Concept Paper、Business PlanおよびEWG結成が承認され、今後作業開始。幼若動物を用いた小児用医薬品の非臨
床評価。ステップ2は2015年11月予定。
■
品質
・Q3D元素(金属)不純物:
ステップ4到達(2014年11/19付)。今後、EWGはIWGに移行し、ICH研修資料作成。
・Q7原薬GMP Q&A:
各課題(既存の公的Q&Aのレビュー、技術的課題、Q7に与えるQ8、Q9、Q10およびQ11概念の影響)に対するQ&A作成。
ステップ4は2015年6月予定。進捗の遅れは、Q&Aの数の増大(計55個)に伴う作業量増大によるもの。
・Q11原薬の開発と製造 Q&A:
APIの出発物質の選定と管理のQ&A作成。IWG結成承認。ステップ2は2015年11月予定。
・Q12医薬品製品ライフサイクルの管理:
はじめての対面会議。承認後の変更事由(技術的、規制要件の考慮事項)の管理を意図し、承認申請書の記載方法、
医薬品品質システムへの関与、承認後変更計画と実施計画などの課題を検討。ステップ1技術文書は2015年6月予定。
■
電子関連
・M2医薬品規制情報の伝送に関する電子的標準:
作成した「M2 File Format Criteria」document(DOCXやPDFなど、各種ファイル形式の評価を行う際の基準となる要件
を規定したもの)を承認。
・M8電子化申請様式::
次世代eCTD v 4.0ステップにほぼ到達。ステップ4は2015年11月予定。
・E2B(R3)個別症例安全性報告のデータ項目とメッセージ仕様:
Q&A(27個、実装ガイドを含むパッケージの共通理解促進と実装に際し各方面から寄せられた個々のQuestionsに対す
るAnswers)
ステップ4到達。
3. 次回開催予定
■
2015年6月6日〜11日、福岡市(福岡ヒルトンホテル)
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4. ICH成果などの情報共有、情報公開
ICHでは、ICH定例会議の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々にも理
解を深めてもらえるようにしています。
今回の定例国際会議であるICHリスボン会議の成果などは、以下のウェブサイトから閲覧できます。
■
ICH Press Release
・ICH公式ホームページ:
http://www.ich.org/ichnews/newsroom/read/article/press-release-ich-steering-committee-meeting-in-lisbonnovember-2014.html
■
ICH即時報告会:12月11日
(日本薬学会 長井記念ホール)
・JPMA website:
http://www.jpma.or.jp/information/ich/ich_list.html
12月11日に開催された
「ICH即時報告会」の質
疑応答の様子
ICHリスボン会議の結果に関する情報を、医薬品の開発や安全性確保を担当する企業の方を含め、広く一般の方と共有
するため、リスボン会議直後の12月11日に、第31回ICH即時報告会を開催しました。活発な質疑応答が行われ、ICHの活動、
トピックの進捗、ガイドラインなどについて理解が深められました。本報告会の講演資料は上記ウェブサイトから閲覧でき
ます。
(国際規制調整部 岸 倉次郎)
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