Comments
Description
Transcript
質問への回答 - 緩和ケア看護学分野
ELNEC-J in 東北大学 2014 年 2 月実施 質問への回答です。フォーマットは未整理で、順不同で列挙いたします。 質問モジュール:なし <質問内容> 緩和ケアチームのラウンドの際、多職種で話合った内容はどのように記録に残 しているのでしょうか? A.仙台医療センターの場合 電子カルテで管理されており、チーム回診は「処置」という機能を活用し、誰 がいつ回診にいくか病棟に専従医師(代行で専従看護師、医師事務補助者が行う こともある)がオーダーし、病棟スタッフが指示受けを行うシステムになってい る。 チームメンバー全体(医師,看護師,薬剤師,栄養士,心理士,がん化学療法認定看護 師)での回診の記録は、専従医師と専従看護師がチーム回診後、実施入力を行い、 実施記録を「緩和ケアチーム」に設定し「SOAP」で入力している。薬剤師、栄 養師、心理士、がん化学療法認定看護師の意見等については、専従医師と専従 看護師で代行入力している状況である。 チーム回診時に、患者の症状緩和の治療やケアについてチームメンバーから出 た情報は SOAP の「O」、チームメンバーから出たアセスメントは「A」、チーム の方針は「P」に入力している。また、主治医や病棟看護師に対しての、患者へ の症状緩和の治療やケアのアドバイスの際は、アドバイス内容のアセスメント は SOAP「A」アドバイス内容は「P」に入力している。 記録はあくまで、患者・家族の診療録であり、問題が医療者にあり調整や介入 が必要なことに関して、その問題により患者、家族に影響がない場合は記録と しては残せていない。 A.県立がんセンターの場合 現在、電子カルテ導入に向け準備中。医療者が抱える問題への緩和ケアチーム の介入についても記録を残せるよう、患者カルテとは別な入力画面を作成する 方針で準備を進めている。 モジュール 2:疼痛マネジメント <質問内容> 各勤務で、患者さんに痛みの程度を○/10 で聞いていますが、患者さんに痛み の程度を聞かれるのが煩わしいと言われます。どのように痛みの程度を知るよ うにすれば良いですか? A.疼痛スケールの使用の目的は、患者の主観的な痛みに客観性を与え、痛み の程度を共通理解できるようにすることである。 疼痛スケールは、NRS(0~10 の 11 段階の数字で痛みを示してもらう方法)の他に、 VAS(10 ㎝の直線の両端を痛みなし、最悪な痛みと定義し患者に当てはまると思 う部分にしるしをつけてもらう方法)、VRS(痛みなし‐軽度-中等度-強度-最 悪の痛みの 5 段階を言葉で痛みを示してもらう方法)、Face Scale(6 段階の顔の 表情で痛みを示してもらう方法)等があり、各スケールにはメリット、デメリッ トがある。患者の発達段階や知的レベル、生活背景、性格等をアセスメントし、 患者が使用しやすいスケールを選択し用いていく必要がある。また、スケール の使用を一度拒否されると、その後受け入れてもらえないということも少なく ないため、スケールを使用する目的やスケールの意味について、疼痛マネジメ ント開始の時点で患者に説明し理解と協力を求めることが大切である。 更に、いきなり「今痛みいくつですか?」と聞かれても、患者によっては言葉 につまり答えにくい場合もあると思われ、患者が痛みを表現しやすいようなコ ミュニケーションの工夫や配慮も必要である。 どうしても患者がスケールの使用を拒否される場合には、既存のスケール使用 にこだわらず、例えば全く眠れないくらいの痛み、数時間なら眠れるくらいの 痛み、起き上がれるくらいの痛み、歩けるくらいの痛み等、日常生活動作に痛 みの評価を加えるといった、表現の工夫も一つの方法と考える。 使用するスケール、もしくはスケール以外のどのような方法で痛みの程度を共 有していくか、カンファレンス等でチーム内情報共有し統一したアプローチが できるようにすることも重要である。 M3 せん妄と認知症の違い 臨床兆候 発症の様式 せん妄 認知症 急激(数時間から数日) 潜在性(数ヶ月から数年) 注意集中困難や意識障害 記憶障害(近時記憶障害) 動揺性(数日~数週間続く) 慢性進行性(年単位) 障害される 通常正常である 覚醒水準 動揺する 正常 思考内容 通常穏やか(しかし無秩序) 不毛である 初発症状 経過と持続 注意 せん妄を見分ける方法 ・部屋に入った時、ちらっと見るか? ・ベッドサイドに立ったとき、ちらっと見るか? ・会話してみる・・・(言い間違い、言い訳は多くないか?) ・身の回りが散らかっていないか? ・注意課題・・・(100ひく7/数字の順・逆唱) ・入院中の点滴抜去、ナースコール頻回、突然の帰宅要求は、せん妄とみて(ほ ぼ)間違い ない。 モルヒネ持続点滴に対するフラッシュ 質 問 内 容 モルヒネを持続注入している患者さんが、痛みや呼吸苦がある時、モルヒネ のフラッシュの指示があるのですが、患者本人がフラッシュをすることで、 意識が遠のいて行ったり、傾眠傾向になったりするので、フラッシュを拒否 しているときがあり、家族も話ができなくなるのでいやなのでフラッシュ(ま た、ベースアップ)をしないでほしいと言われることがあります。こちらと しては、苦痛を取ってやった方がいいと思うのですが、それにより、レベル 低下し家族とのコミュニケーションが取れなくなることにつらくなることが あります。このようなときどのように対応するのが良いでしょうか? 回 答 内 容 ・痛みの性質、部位、程度について再度アセスメントする。モルヒネのフラ ッシュで痛みは軽減するのか。副作用だけ強いのであれば、モルヒネ抵抗性 の痛みと考え、鎮痛薬の変更や NSAIDs+鎮痛補助薬の検討をする必要あり。 また、全身状態、病期の程度も評価し、予後予測についても検討する。 ・薬物療法の他に、痛みを緩和する因子が何か、看護ケアも取り入れる。 ・患者、家族は、今の状態に対してどのように理解しており、今後どのよう に過ごしたいと思っているのかを確認する。 ・院内緩和ケアチームへの相談。場合によっては、主診療科や緩和ケアチー ムメンバーとカンファレンスを開催し、今後の方向性を検討し、多職種で介 入していく。 「モジュール5:エンド・オブ・ライフケアにおける文化への配慮」への質問 Q.今回受講し、臨床で実践する際、組織のエンドオブライフケアに関する価値 観とジレンマが生じるかもしれません。今回得た知識を臨床に活かしていくた めにも、どのようにしたらいいのか? A:自分自身がどんな考え・価値観を持っていて、周囲の人についてもなぜその 考えになっているのか、取り巻くものの影響等を知ることがアプローチの第一 歩かと思います。そして、モジュール 10 でもあったように、同じ志を持つ仲間 を集め、鍵となる人物に働きかけること、提案する人は十分準備をする必要が あると考えます。 Q.在宅で看取りをするのはどのように決めるのでしょうか?誰が決めるのか、 何か判断基準がありますか? A:在宅看取りをするということは本人家族を含めて、話し合いのプロセスを経 て決定することです。 誰が決めるということではなく、一緒に療養生活をする人と共に考えていくこ とです。 だいたいの人は初めてのことなので、医療者が相談にのっていくことが必要に なってきます。 Q 遺族ケアに関して・・・ ・緩和ケア病棟の遺族ケアで手紙送付が 89%とありましたが、どの時期に送る のでしょうか。また、その後も何度も送るのか疑問に思いました。差し支えな ければ手紙の内容も教えていただきたいです。嫌がる方などいるのでしょうか。 ・遺族ケアを実施することによって、どのような効果(スタッフ、遺族ともに) があるのか興味があるのでもし事例があれば教えていただきたいです。 ・宮城県で今後遺族外来の構想はあるのでしょうか。 デスカンファに関して有効なツールなどはあるのでしょうか。 A J-HOPE 研究の結果です。以下のホームページに詳細があります。 http://www.hospat.org/practice_substance-top.html 手紙送付を受けた割合(アンケート回答者) J-HOPE研究 手紙の送付時期 坂口 2012 ↑坂口先生の研究です。緩和ケア病棟に限ったものです。 ↓ 遺族ケアを行う期間(手紙に限らず) 坂口 2012 手紙送付は役に立ったか? J-HOPE研究 手紙の送り方 緩和ケア 2010年7月号 手紙/葉書の送付を受けた遺族の評価 <手紙/葉書送付に対する肯定的意見> 「退院後の遺族のことまで気遣ってくれた」(8名) 「遺族のフォローとしてよい方法だと思った」(6名) 「退院後も忘れず覚えていてくれた」(5名) 「患者の人柄を理解してくれていたことが分かる 文面だった」(4名) 「家族のことも見てくれていたことが分かる文面 だった」(3名) スタッフの 気遣い 個別性のある 手紙/葉書 <手紙/葉書送付に対する否定的意見> 「信頼関係のない看護師からの手紙だった」(3名) 「返事を書くのが面倒である」(2名) Muta R, Sanjo M, Miyashita M, Wakabayashi R, Ando E, Morita T, Tsuneto S, Shima Y. What bereavement follow-up does family member request in Japaese palliative care units? A qualitative study. Am J Hosp Palliat Med. (in press) ↑宮下が指導した学生の修士論文です。患者をよく知っている看護師からの手 紙がいいようで、単なるメモリアルカードの送付はあまり意味がないと思いま す。遺族会なども同様で、有名な先生の講演を聞くより当時のことをよく知っ ている看護師さんとお話したりするほうが意味があるようでした。 ↓宮城で遺族ケアを熱心にされている団体です。 宮城の遺族ケア 現状では困っている遺族は病院の患者相談室に問い合わせるのがベストだと思 います。がん拠点病院なら相談室は必ずありますし、多くの病院が同様の部屋 を持っています。心療内科・精神科の受診もいいでしょうが、抵抗がある方も いるでしょうし、医師もそういうケースに不慣れなこともあると思います。以 下のホームページでは、相談室を持っている病院などが検索できるようになっ ています。その他の情報もありますので、是非ご活用ください。 がん情報みやぎ デスカンファレンスですが、私のホームページに以前雑誌でやった特集号の記 事が載せてあります。ご参考までに。 http://plaza.umin.ac.jp/~miya/ PDF ファイルで読めます。 の雑多というところです。以下の全ての記事が デスカンファの連載記事(雑誌「看護技術」の 2010 年の連載記事「明日の看護 に生かすデスカンファレンス」) 第1回 デスカンファレンスとは何か―意義と実際 広瀬寛子 第2回 淀川キリスト教病院のデスカンファレンスの進め方 杉田智子 第3回 山口赤十字病院緩和ケア病棟でのデスカンファレンスの実践 小野芳 子 第4回 淀川キリスト教病院ホスピスにおけるデスカンファレンスの実際 伊 藤友美 第5回 国立がんセンター東病院緩和ケア病棟におけるデスカンファレンスの 実践 關本翌子 第6回 岐阜中央病院緩和ケア病棟におけるデスカンファレンスの実践 松尾 啓子 第7回 慶應義塾大学病院呼吸器内科・呼吸器外科病棟におけるデスカンファ レンスの実践 加藤恵理子 第8回 静岡県立がんセンター7F 東病棟におけるデスカンファレンスの実践 下山美智子 第9回 筑波メディカルセンター病院 ER/救命 ICU におけるデスカンファレン スの実践 木澤晃代 第 10 回 佐久総合病院訪問看護ステーションうすだにおけるデスカンファレン スの実践 上原晴美 第 11 回 自殺事例に対するデスカンファレンスの実践 明智龍男 第 12 回 デスカンファレンスのまとめ 連載を振り返って 宮下光令