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「男女共同参画グローバル政策対話」
ペルー講演原稿
日本語仮訳
所属
ペルー行政監察官局リプロダクティブライツプロジェクトコーディネーター
氏名
ラモス・バロン・マイダ・アレハンドリナ
ジェンダー政策におけるペルー行政監察官局の貢献
1. 経緯
ペルーでは近年、国の各種部門ならびに機関から女性の進歩のための政策の推進を求める
声が盛んに上がってきた。
このような事情を背景に、1995 年、共和国国会に女性特別委員会が設置された。1997 年に、
同委員会は、一般(常任)委員会として女性・人的資源開発委員会に改編された。法律では、女
性・人的資源開発省(PROMUDEH)を、男女機会均等を促進し、人的資源の開発を特に重点的
に進めるべき分野を推進するプログラムの立案・開発において指導的役割を果たす機関と定めて
いる。
女性・人的資源開発省の個々のプログラムでは、女性ならびに差別されている人々に重点を置
いているが、だからといって、他の部門が公共政策の策定とそれぞれのプログラムの実施におい
てジェンダーおよび人的資源開発を軽視しているわけではない。反対に、PROMUDEH は、実施
主体としての役割を果たし、あらゆる政治および行政部門のプログラムにジェンダーと人的資源開
発の視点を組み込むことを保証するための規範となる技術面での監視を実施することが期待され
ている。
この点に関して、行政部門では、中間レベルにおいて女性のための具体的なプログラムが調整、
推進、実施されている。例えば、外務省には女性・貧困局が設けられており、保健省には女性・保
健・開発プログラムが設けられている。これらのプログラムの多くは独自のものであり、女性の進歩
のための国家計画に対応しておらず、分散して実施されていると言えよう。とは言え、この分野の
さまざまな施策の指針として、教育、保健、女性に対する暴力、雇用、政治および社会的参加、な
らびに通信の領域に重点を置く PROMUDEH の取り組みとして、2000〜2005 年男女機会均等国
家計画が、2000 年に承認された。
この国家計画は、基本的に 1995 年に北京において開催された第 4 回世界女性会議の行動綱
領に基づき近年ペルー政府が行った国際公約を準拠枠としている。
また、1996 年 11 月には、女性の権利の擁護と推進を担当する部署を行政監察官局内に設け
る試みとして、女性の権利の擁護を最優先課題とする女性の権利保護官補佐が任命された。
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「男女共同参画グローバル政策対話」
2. 行政監察官局
行政監察官局は、1993 年の憲法により設置された独立政府機関である。
上記憲法第 162 条の規定に従い、以下の 3 つの職務を法的権限とする:
a)
国民の憲法上の権利と基本的権利を擁護する、
b)
行政の職務実施を監督する、
c)
国民に対する公共サービスを監督する。
行政監察官局の業務は、その倫理観、社会的正当性および使命感に基づき、調査を行い、国
民と行政との仲介を行うことである。従って、同局は、不法または不適切な行政行為を防止あるい
は解決するとともに、人権を擁護し、権力行使における真の社会管理を促進するための勧告や提
案を行う。
その職務を遂行するため、行政監察官局基本法は、以下を含む権限を同局に課している:
a)
苦情申し立ての調査—指定の裁判所または当事者の請願による
b)
憲法上の手続きの導入
c)
行政手続きの開始または停止
d)
法的措置の実施
e)
国際人権規約の促進
f)
諸問題や具体的な事情の調査
また、行政監察官局は、同局の調査項目について当局に情報の提出を依頼する権限を有し、公
文書を閲覧する権利を有しており、調査を実施し、インタビューを行い、文書を検討し、記録をつ
け、調査対象の事実を明らかにすることに有用なあらゆることを行う。これに従い、憲法(第 161
条)ならびに基本法(第 16 条)は、行政監察官局に協力する行政府の義務を定めており、保護官
は必要な情報を提出させるために役人あるいは服従しない部下に対し懲戒手続きを要求すること
さえできる(行政監察官局基本法第 21 条)。
他方、特筆すべきこととして、司法関係においては、行政監察官局は、調査に有用と考える情
報を収集することができるが、これは同局が司法の独立と権限の行使に介入できることを意味する
ものではない。この仕組みにより、行政監察官局基本法第 14 条に定められているとおり、司法当
局の不法業務を、対応する司法部門の執行委員会または内務省に知らせることとなる。
行政監察官局は、全国に対し法的権限を有する本部をリマに置いている。また、同局の中核的
な構成組織として、地理的地域の代表事務所の役割を果たす 8 つの地域事務所(アヤクチョ、ア
レキパ、カリャオ、クスコ、ワンカヨ、イキトス、ピウラおよびトルヒヨ)を設置している。また、州都に 7
つの分権的管理事務所(カハマカ、ワンカヴィルカ、ハエイン、プエルト・マルドナード、チンボテ、
アンダワイラスおよびサティポ)を置き、それぞれの地域事務所の代表が指名するコーディネータ
ーが管轄している。さらに、全国各地での人口増加に対して適切な保護を遂行するために、アテ
ンション・ブースや巡回チームも設けている。
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行政監察官局は、管理、助言、支援などを行う指導・監督機関の組織機構も有している。例え
ば、憲法問題保護官補佐や女性の権利保護官補佐などである。
3. 女性の権利行政監察官補佐
ペルーでは、女性は依然疎外され、差別を受けており、女性の権利は制約され、真に平等な
社会の確立は難しいものとなっている。このため、女性の権利に関する業務は、行政監察官局に
とって優先分野となっている。
1998 年の推定データによれば、ペルーの総人口は 24,800,768 人で、うち 50.4%に相当する
12,497,013 人が女性である。このうち 72.1%が都市部に暮らしている。また、女性の総人口の
33.6%が 0 歳から 14 歳までの少女で、61.4%が 15 歳から 64 歳、残りのわずか 5%が 65 歳以上の
女性である。平均寿命は、男性がわずか 65.91 歳に対し、女性は 70.85 歳である。妊娠可能な年
齢(15〜49 歳)の女性のうち 58%がカップルで生活しており、その内訳は 24%が同棲生活、34%が
婚姻関係にある。第 3 のカテゴリーが独身で、6%が別居または離婚している。
妊娠可能な年齢にある女性の出生率は平均 3.1(ENDES 96)であるが、女性の学歴により子ど
もの数に大きな格差が見られる。大卒の女性の出生率は 2.7 であるが、教育を受けていない女性
のそれは 7.1 にものぼる。多産性は貧困にも関係しており、貧困指数の高い家庭の女性の出生率
は平均 5.5 であるのに対し、基本的ニーズが満たされている家庭の女性のそれは 2.2 である。
前述のとおり、女性の権利行政監察官補佐局は、1995 年 10 月に設置された。同局は、一般的
な視点から検討・援助する必要のある問題を抱える女性の権利の擁護・促進に関連する主題に
ついて分析を行い、提案を策定する業務の指導に当たっており、必要な場合は、行政監察官地
域事務所による個々の事例の措置に対し制限を提案し、あるいは特別な措置が必要とされる場
合には調査に貢献している。加えて、女性の権利行政監察官補佐は、基本的に女子差別撤廃条
約に謳われていることを実施し、国家当局による女性に対する差別的行為の回避に貢献すること
も、その目的に掲げている。
また、行政監察官に対し、彼の施策ならびに政策の策定や制度開発にジェンダーの視点を組
み込むよう助言を行っている。
女性の権利行政監察官補佐局の目的は、以下のとおりである:
・ その法的権限内において、権利の擁護、苦情申し立て手続き、請願や相談の対処に関す
る政策を提案、調整、監督および指導する。
・ とりわけ女性の権利に影響を及ぼす裁判所によるまたは当事者の請願書による請願や苦情
申し立ての援助、調査、文書作成を行い、また女性の権利に関する相談に対処する。
・ 行政監察官に対し、女性の権利を擁護する憲法上の手続きの導入を要請する。
・ 公共政策を提案し、女性の権利の擁護および有効性を確保する法規則の策定に参画す
る。
・ 女性の権利に関係する公共機関と市民社会団体との協調・協力関係を樹立する。
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・ 行政監察官に勧告・所見を作成し、また女性の権利の問題や現状について研究調査を実
施し、報告を行う。
・ 暴力のない生活に対する権利、セクシュアル/リプロダクティブ・ライツ、政治参加の権利に
特に重点を置いて、女性の権利に関する推進・普及活動に参加する。
・ 女性の現状に関する学術的論議に参加する。
・ 行政監察官局の手続きにおいてジェンダーの視点を重視する。
・ 行政監察官を通じて、女性の権利擁護に有利な国際文書の署名、承認および批准を促進
する。
女性の権利行政監察官補佐局では、さらなる職務遂行のため、優先監督部門を定めることが
適切であると考えた。各事業部門において、既存の規範の適用範囲および限界ならびに法律の
さまざまな運用への適用を評価し、苦情申し立てから裁判までの問題を見極め、勧告や提案を作
成し、行政監察官が国の行政に対して行った勧告が実施されているか否かを評価する。
以上から女性の権利行政監察官補佐局の基本監督部門は、以下のとおりである。
a) 女性に対する暴力
女性の権利行政監察官補佐局は、その創設以来、ジェンダーに基づく暴力との闘いにとりわけ
力を入れてきた。ジェンダーに基づく暴力は、女性の尊厳、女性の生命、自由、自己保全、人格
の自由な発達、そして非人間的あるいは屈辱的な扱いなど肉体および精神的な暴力の犠牲にな
らないことなどの権利を侵害する人権に対する攻撃に他ならないからである。女性に対する暴力
の防止、制裁および根絶に関する米州条約(ベレム・ド・パラ条約)をはじめ、ペルーが批准してい
る国際人権条約をもとに、上記の権利はすべてペルーの憲法に保障されていることを強調してお
くことが必要であろう。
女性に対する暴力の問題に関して、女性の権利行政監察官補佐局の主な業務には、法律の
分析と、性的暴力に関連する苦情申し立てや請願に対する対処が含まれる。
2000 年 4 月から 2001 年 4 月までの期間、女性の権利行政監察官補佐局では、ドメスティック・
バイオレンスに関連する保護法の監督・実施から、苦情申し立てへの対処、「性的暴力:市民の安
全の問題—被害者の声」と題する調査結果に盛り込まれた勧告の実施の監督に至るまで、女性
に対する暴力と闘うための活動を実施し続けた。
指摘すべき点として、アヤクチョの地域事務所では、女性に対する暴力に関して行政監察官局
に提出された苦情申し立てならびに相談の件数の増加を報告している。しかしながら、女性に対
する暴力の問題に関して、司法手続きにおいて告発者側が訴訟を取り下げてしまう確率が高いこ
とが報告されている。これは、手続きの遅さが要因のひとつになっていると思われる。
女性に対する暴力に関する苦情申し立ては、引き続き基本的に国家警察、司法部門、内務省
および法定医療機関に対するものである。苦情申し立ての多い機関は基本的に国家警察で、ドメ
スティック・バイオレンスや性的暴力に関する女性の起訴を処理する警察署のやり方が原因となっ
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ており、女性の権利の擁護に何ら役立っていないものとなっている。
これに関しては、アヤクチョの地域事務所の監督官による監視活動から、被害者に対する対応
に差別の問題や怠慢が見られたことが明らかにされていることに言及する必要があろう。実際、農
村部においては、学歴や非識字ならびに先住民の言葉であるケチュア語を使用する点などが、
告発を行ったり、保護を求める際に不平等なあるいは差別的な扱いを受ける原因となっていること
が指摘されている。トルヒヨの地域事務所にも、婚姻関係の証明がないまま子どもをもうけた女性
からのドメスティック・バイオレンスに対する告訴について、ドメスティック・バイオレンスに関係する
保護法の改正である法律第 27306 号で明示的に認められているにもかかわらず、その受理に消
極的であることに関して、国家警察に対する苦情申し立てが寄せられている。
他方、2001 年 3 月以来、女性の権利行政監察官補佐局は、ドメスティック・バイオレンスに関す
る調査についてカリャオの地域事務所に助言を行っている。この調査は、法律の有効性を評価す
ることを目的とするものである。最初の調査結果では、地区検事も家庭裁判所判事も予防措置を
とっておらず、司法手続きの多くが訴訟取り下げに終わっていることが明らかとなっている。
加えて、女性の権利行政監察官補佐局は、ドメスティック・バイオレンスと性的暴力の 2 件の調
査を含む性的差別と法適用に関する刊行物を出版した。
また、行政監察官局は、アヤクチョとピウラの地域事務所を通じて、アヤクチョにおけるドメスティ
ック・バイオレンスの防止と対処のためのネット、およびトゥンベスにおけるドメスティック・バイオレン
スに関する会議を活用してドメスティック・バイオレンス根絶の取り組みに参加していることも強調し
たい。
特筆すべきは、国連開発計画の支援ミッションが、ペルーの司法の組織強化を分析するために
本年 3 月にペルーを視察したことである。このミッションにはサラマンカ大学の刑法教授イグナシ
オ・ベルドゥゴ・デ・ラ・トーレが参加した。女性の権利行政監察官局は、その監督官とベルドゥゴ
博士との討論会を開催した。
この討論会の目的は、ペルーが現在進めている行刑改革において留意すべき側面を知ること
にあった。このスペインの教授は、スペインの行刑改革に参加した経験に基づき、犯罪化プロセス、
また特に性的自由に対する犯罪の関連で留意すべき側面といった非犯罪化プロセスにおいてみ
られる、刑法の全般的な改革に考慮すべき政治・犯罪原理に言及した。
最後に、将来の展望について、ドメスティック・バイオレンスに対する法律の適用における諸問
題、とりわけ農村部の女性が被害者の場合の司法へのアクセスにおける障害に対して、その解決
策を見出し提案する上で、女性・人的資源開発省(PROMUDEH)との調整が見込まれた。
この意味において、最高条例第 008-2001-PROMUDEH 号により、女性・人的資源開発省内に
ドメスティック・バイオレンスおよび性的暴力に対する国家計画を定めることを強調する必要があ
る。
b) 家族計画およびセクシュアル/リプロダクティブ・ライツ
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セクシュアル/リプロダクティブ・ライツは、性と生殖における自由に関連した人間の基本的権
利に関するものである。
リプロダクティブ・ライツは、人権の不可欠な一部をなすものであり、すべてのカップルおよび
人々が子どもの人数および出産の間隔を自由に責任をもって決めることができることを基本的に
認めるものであり、そのための情報および手段を持つ権利、そしてできる限り高いセクシュアル/
リプロダクティブ・ヘルスへ到達する権利がその基本である。
セクシュアル・ライツは、性およびセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスを管理し、それらにつ
いて強制や差別や暴力を受けることなく自由に責任をもって決めることができる女性の人権を含
む。
1997 年 9 月から、行政監察官局では、保健省の国家家族計画プログラムの適用の枠内でなさ
れたさまざまな違反に対し苦情申し立てを受理している。1998 年 1 月には、行政監察官局は最初
の報告を行い、リプロダクティブ・ヘルスおよび家族計画プログラムは避妊法として卵管切除が好
ましいとの結論を下した。行政監察官は、保健省に対し、いつ、何人の子どもを生むのかを決定
する男女の権利を保障するよういくつかの勧告を行った。それらの勧告のいくつかは、1998 年 3
月の書状に述べられているように、保健省に受け入れられた。
1999 年 8 月、行政監察官局は、157 の事例を含む第 2 回報告を発表した。報告書は新たな勧
告を作成し、これが 1999 年 9 月に可決した国内家族計画プログラム法に盛り込まれた。中でも強
調すべきは、卵管切除または精管切除の外科手術における熟慮期間の義務である。実際、承諾
の署名から手術までに 72 時間の経過が義務づけられている。
これらの権利の尊重を保証し、家族計画に関する保健省の職務実施を監視することを目的とし
て、行政監察官局は、1999 年 9 月からリプロダクティブ・ライツの尊重と有効性を管理するシステム
の開発にあたっている。その主たる目的のひとつは、家族計画の教育、情報およびサービスにお
ける男女不平等の根絶への貢献である。
保健省のリプロダクティブ・ヘルスおよび家族計画プログラムの管理を通じて、さまざまな不法
行為を見つけ出すことができる:
・ サービス提供の場(Punto de Entrega de Servisios-PES)の資格を持たない機関の介入。
・ 命令書に当事者が署名してから外科手術まで 72 時間の経過を待つことなく卵管切除手術
が行われるなど、熟慮期間の義務の不履行。
・ 患者の承諾の署名のない卵管切除手術の実施。
・ 外科的避妊法のキャンペーン。
・ 不適切な手術前評価。
21 歳から 24 歳までの女性にも卵管切除の事例が見られる。これは非合法ではないものの、この
年齢層の女性は、元通りにすることができない最終的な避妊法を施すには必ずしも適切な対象
者ではない。
全国各地の保健所を訪問した結果、職員は国家家族計画プログラム法を熟知していないこと
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が明らかとなった。
c) 女性の政治参加
民主主義は、対等の条件の下で、政治参加の基本的権利に対する有効性と完全な行使を認
めている。この権利は、すべての人が社会生活の多種多様な側面(政治、経済、社会、文化)に
介入し、国家の意思形成および国家の政治機関に参加できる能力として、定義される。この政治
参加の権利には、選挙権と被選挙権が含まれる。
しかしながら、女性は 47 年間にわたり選挙権を持っているものの、公職への参加は極めて少な
い。その結果、不平等な状況が存在しており、選挙法に地方自治体の候補者名簿には女性また
は男性候補者少なくとも 25%以上、国会の場合は 30%以上の比率を求める規定を盛り込むことに
より問題の解決を図ろうと試みられている。
すなわち、留意すべきこととして、行政監察官局は、候補者名簿の候補者人数に関する議論に
積極的に参加し、最終的には最低比率 25%を定め、またこのクオータ(割り当て)を 30%まで増大
することを勧告し、最終的にこの勧告が 2000 年 12 月に国会で決定された。法的規範が決定され
ると、同局はその普及と適用の推進に貢献した。また、ラ米におけるクオータ制度の適用に関する
評価を行うほか、公職に女性がつくことを保証するためのさまざまな取り組みを支援した。
d) ジェンダーの視点からの権利の分析
女性の権利行政監察官補佐局は、法律の適用について調査を行うことが重要であると考え、
女性差別主義的アプローチが法的規範の解釈において女性の権利の真の有効性にとって重大
な障害になっていることを明示した。
実際、女性の権利の擁護は、差別的規範がないことを確保することだけでなく、むしろ女性にと
って適切な法的措置がなされることに依存する。判事を含む法執行者により、女性の権利擁護を
妨害するような形で適用されていることがよくある。
このような状況の下、女性の権利行政監察官補佐局は、女性の権利の真の有効性を阻んでい
る現行の司法制度に存在するさまざまな障害を見極め、解決策を提案し、さらに、女性の権利の
有効性がもはや権利に対する形式的な認識ではなく法的規範の適切な解釈にいかに依存して
いるかということを、実証することが必要と考えている。国内レベルにおいては、ジェンダーの問題
に関するワークショップを開催してきた。これは、行政監察官局の業務にジェンダー視点を適用す
るとともに、行政監察官局と他の機関、官庁、その他との協力関係について議論する上での重要
な研修の場となっている。こうしたワークショップの目的は、ワークショップに参加する各補佐局あ
るいは分権的管理事務所の機構や組織における役割やジェンダーの関係に対する分析につい
て指導することであった。現在、行政監察官局が推進するさまざまな活動にジェンダーの指標を
組み込むために、ジェンダーの指標を盛り込んだ文書の作成を進めているところである。
この文書を作成するために実施した活動は以下のとおりである:
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・ 人権、行政・公共事業、刑務所および政治的暴力の被害者保護プログラムに対する、さまざ
まな行政監察官補佐局チームとの面談、会合。
・ 組織開発ワークショップ、年次事業計画の評価、およびジェンダー分析。これには、概念お
よびジェンダー視点に関する基礎研修が含まれる。これらのワークショップでは、組織開発
の評価や事業計画の評価にジェンダー分析が組み込まれ、ジェンダーにかかる内部関係
および対外関係についての分析に取り組んだ。これらのワークショップは、ピウラ、トルヒヨ、
ワンカヨ、アヤクチョおよびアレキパの 5 カ所の行政監察官代表事務所で実施された。
また、特筆すべきこととして、行政監察官局に持ち込まれる訴訟の文書作成、追跡および解決に
使用する法律文書の改訂がこの期間行われた。最終的に、ジェンダーに関する具体的な情報を
記録し、ジェンダー・アプローチが考慮されるようにするための改革案がまとめられた。
組織内で実施される今後の活動にジェンダーの視点を組み入れることが、現在の課題となって
いる。このため、行政監察官局の各部局、チーム、プログラムの持つ年次事業計画に盛り込まれ
る活動のプログラム立案および計画立案を、初めて見直しているところである。
最後に、指摘すべきこととして、すでに述べたとおり、4 つの優先監督部門が設けられているが、
これのみに限るわけではない。従って、母子の国外退去自由の制限、女性治安判事の差別、児
童ポルノ写真の出版、ティーンエイジャーの妊婦に対する差別、リマのダウンタウンで働く売春婦
の基本的権利の無視、国家扶助計画(Programa Nacional de Apoyo Alimentario—PRONAA)に
おける職務行使にあたっての役人によるさまざまな不正行為について市民団体からのさまざまな
苦情申し立てなど、性質の異なる主題が取り上げられている。
今後の課題
1.
ドメスティック・バイオレンス
法律第 26260 号、ドメスティック・バイオレンスに関する保護法の改正は、ドメスティック・バイオレ
ンスへの取り組みにおける国家警察の任務の明確化を目標としていた。しかし、ドメスティック・バ
イオレンスに関する法制度改革は評価されるものの、この問題に法律を適用する上での諸問題を
解決するためには予防措置を講ずることが必要である。
法制度改革にもかかわらず、行政監察官局が実施した調査では、改革が効果を上げていない
ことが明らかとなっている。国家警察に対する起訴件数と家庭裁判所の解決件数に差があること
が引き続き極めて重要な問題となっている。「性的差別と法律の適用」に関する調査を手始めとす
る行政監察官局によるドメスティック・バイオレンスについての調査研究では、家庭裁判所により解
決されたドメスティック・バイオレンス事件の件数は依然極めて少ないことが明らかとなっている。
起訴の大半は司法部門にも行き着かず、司法手続きにおいて訴訟の取り下げに終わっている確
率が高い。地区検事による調停の命令的な特質を改め、家庭放棄がドメスティック・バイオレンスと
されない可能性を評価することが賢明であろう。
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他方、カリャオで開始された調査の第 1 回目の結果によれば、判事も地区検事も被害者保護の
裁定を通常行っていないことが明らかとなっている。調査結果はまた、判事および検事を対象とし
た、被害者保護の軽視について議論する研修コースの必要性を訴えている。
2. 性的暴力
性的自由に対する犯罪に関する規定もまた、近年いくつかの法改定の対象となってきた。行政
監察官局ではこれらの改革の推進に極めて積極的な役割を果たしてきた。もっとも注目すべきも
のは、犯罪の謝罪として加害者と被害者の婚姻を認めていた条項の改正、ならびにこれらの犯罪
における刑事訴訟の行使の制定である。
行政監察官局が実施した調査研究では、法改正にもかかわらず、治安判事において、これら
の訴訟の処理および解決に女性差別的なアプローチが引き続き見られることが明らかとなってい
る。刑事裁判官を研修する時点での勧告が必要である。
行政監察官局はまた、かかる犯罪の被害者が法定医療機関で適切な治療を受けられるように
取りはからうことにも尽力した。この問題に関する報告を公表した後、行政監察官局は一連の勧告
を提案し、法定医療機関に歓迎されるのみならず、法律により規制されることとなった。現在のとこ
ろ、調査には 2 名の専門家のみが同席でき、被害者は希望すれば同席を求めることができる。
他方、行政監察官局の勧告がきっかけとなり、警察業務ハンドブック(Manual de Operativos
Policiales MAPROPOL 2000)からは、例えば、被害者に対し犯罪以前に性体験があるかを尋ね
るなど、女性に対する一連の差別的措置が削除された。行政監察官局と法定医療機関では協力
し、これら被害者の身体面に関する新しいプロトコルを策定した。
3. 家族計画とセクシュアル/リプロダクティブ・ライツ
国家家族計画プログラム法を完成させようと保健省が努力してきたことは認める必要があるが、
依然いくつかの問題が残っている。このため、保健省は役人ならびに健康の増進に携わっている
人々のための研修コースを実施することが不可欠である。これらの研修コースでは、国家家族計
画プログラム法のみならず、サービスを利用する男女のあらゆる面について取り上げることが必要
である。
4. 女性の政治参加
9 月 25 日、法律第 26859 号、選挙基本法が公布され、第 116 条には、「国会の候補者名簿に
おいては男女いずれかが 25%を下回る人数とならないこと」が定められている。
他方、1997 年 10 月 13 日には、法律第 26864 号、地方自治体選挙法が公布され、第 10 条 2
項に、「2. 候補者名簿における地方自治体代議員の候補者の比率は、男女ともそれぞれ 25%以
上とすること」と定められている。
このクオータ制度は、1998 年 10 月に実施された地方自治体選挙で初めて実施に移された。そ
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の結果は極めて好ましく、女性の地方代議員の数は 7%から 25%に増えた。
国会議員の選挙については 2000 年 4 月 9 日の選挙で初めてクオータ制度が適用され、女性
国会議員の数は 13 人から 26 人に増加した。
行政監察官局は、2000 年 11 月、選挙クオータを 25%から 30%に引き上げることを国会に勧告し
た。この勧告は受け入れられ、2001 年 12 月に交付される法律第 27387 号に盛り込まれた。この規
範はまた、大選挙区でも導入されている。
しかしながら、前回の選挙では、法律第 27387 号に定められた 30%の選挙クオータ制は遵守さ
れなかった。実際、25 の選挙区のうち 3 選挙区では 25%のクオータ(イカとカリャオ)および 28.5%
のクオータ(ラリベルタード)が設定された。かかる不履行に対し、国内および国際監視団員は注
意を喚起した。
30%のクオータ制度は、2001 年 4 月 8 日の選挙では適用された。クオータが 25%から 30%に増
大されたにもかかわらず女性国会議員の数は、26 人から 22 人に減少した。当選した女性の 50%
はリマの選挙区に属する。すなわち、国内内陸部における女性指導者の強化の必要性が示唆さ
れる結果となった。
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