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Title S状結腸憩室炎に起因した結腸膀胱腟瘻の1例 Author(s)
Title Author(s) Citation Issue Date URL S状結腸憩室炎に起因した結腸膀胱腟瘻の1例 安士, 正裕; 村石, 修; 湯澤, 政行; 徳江, 章彦 泌尿器科紀要 (1998), 44(7): 513-515 1998-07 http://hdl.handle.net/2433/116211 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University . 513 泌 尿 紀 要44:513-515,1998 S状 結腸憩室炎 に起 因 した結腸膀胱膣瘻 の1例 自治医科大学泌尿器科学教室(主 任:徳 江章彦教授) 安士 A CASE 正 裕,村 石 OF 政 行,徳 江 COLO-VESICO-VAGINAL BY SIGMOID Masahiro 修,湯 澤 YASNI, Osamu COLON FISTULA 章彦 CAUSED DIVERTICULITIS MURAISHI, Masayuki YUZAWA and Akihiko TOKUE From the Department of Urology, Jichi Medical School A 74-year-old woman was referred to our hospital with the chief complaints of pneumaturia, fecaluria and discharge of feces and urine from vagina. Fistulography on the vaginal side showed the presence of contrast medium both in the sigmoid colon and bladder. Colonoscopy revealed multiple diverticulosis of the sigmoid colon. Under diagnosis of colo-vesico-vaginal fistula due to sigmoid colon diverticulitis, a one-stage operation removing sigmoid colon, uterus- vaginal wall and urinary bladder wall including the fistula and careful reconstruction was performed. Postoperatively, urinary leakage from vagina in large amounts continued due to the recurrence of vesico-vaginal fistula. An attempt to use human fibrin glue in the recurrent fistula was successful, and the patient was asymptomatic at 21 months of follow-up. Colovesical fistula has been reported in about 10-20% of patients undergoing surgery for complicated diverticulitis, but a combined fistula is a rare condition. Furthermore, we recommend the use of human fibrin glue for a recurrent fistula. (Acta Urol. Jpn. 44: 513-515, 1998) Key words : Colo-vesico-vaginal fistula, Sigmoid colon diverticulitis, Fibrin glue 緒 言 近年,結 腸 憩 室 炎 に起 因 した結 腸膀 胱 痩 の報 告 が 増 を もつ症 例 は稀 で あ る.今 回 わ れわ れ は,S状 41.0 •' 加 し,本 邦 で はす で に百数 十 例 を越 え るが,複 数 痩 孔 ',31( 結腸憩 室 炎 に よ って結 腸 か ら膀 胱,膣 の 両者 に痩 孔形 成 した • $-"` • 症例 を経験 し,ま た一期 的手 術 後 に再 発 した膀 胱 膣 痩 . に対 して フ ィブ リン接 着 剤 が 効 果 的 で あ った の で,文 rir 献 的考 察 を加 えて 報告 す る. 症 患 者=74歳,女 例 性 , 主 訴1気 尿,糞 尿 お よび膣 か らの浸 出 既往 歴:数 年 来,糖 尿 病 で 内服,食 事 療 法. 現 病歴:1996年1月 頃か ら気尿 を認 め る よ うに な っ ob.• たが,近 医 で 膀胱 炎 と して 抗 生剤 加 療 され て い た,同 年5月 頃か ら糞尿 お よ び膣 か ら汚物 が 流 出 す る こ とに 気 づ き,5月16日 当 科 を受診 した. 現 症:身 長139cm,体 重41kgで 栄 養 状 態 は良 好. 腹部 に手術 痕,腫 瘤 は認 め な か った. 検 査所 見:血 算,生 化 学 に異常 を認 め ず,空 腹 時 血 糖137mg/d1,HbAIC6.8%.尿 数,尿 培 養 で はE.coli>104で m FistulograPhY s bho-othwsinthtehePthevaginalside bladder.arrow (sigmhe°aid). resenocnedocfocloonntr(aasrtromwe)diad medium 検査 で は 白血球 多 あ っ た. 画 像所 見:ク ス コ膣 鏡 で前 膣 円蓋 の10時 方 向 に周 囲 . Fig. に発 赤 を伴 う径3mmの 小 痩 孔 を認 め,こ れ よ り細 径 ネ ラ トンカ テ ー テル を挿 入 して痩 孔 造 影 を行 った. 514 泌尿 紀 要44巻7号1998年 まずS状 結 腸 が造 影 され,続 いて 膀胱 が造 影 され,三 に膀 胱 壁 を部 分 切 除 し,S状 者 の 交通 が確 認 された(Fig,1). 膀胱 造 影 で は,膀 胱 頂 部 か らわ ず か の造 影 剤 漏 出 を 認 め,S状 結 腸 に交 通 す る と思 わ れた が,膣 側 へ の漏 出 は認 め な か っ た.ま VURを た,両 を加 え,後 壁 正 中 の痩 孔 を確認 して,こ れ を囲 む よ う 側 尿 管 にgradeIの は吸 収 糸 で縫 合 修 復 し,さ らに有 茎 大 網 を膣 断 端 と膀 胱 縫 合 部 の 間 に充 愼 した.手 術 時 間 は9時 間,術 中 出 認 めた. 血 量 は1,650mlで 大腸 内視 鏡 で は,S状 結 腸 は狭 窄 ぎみ で,多 発 す る VURに 膀 胱 鏡 で は,膀 胱 後壁 に限 局 した炎 症 性 の浮 腫 状 粘 膜 を認 め た が,旗 孔 は 明 らか で な か っ た. は,S状 あ っ た.術 前 か ら認 め た 両 側 対 して は,程 度 が軽 く,手 術 の煩 雑 さ を避 け るた め処 置 を加 えな か った. 憩 室 を認 め た が,痩 孔 は特 定 で きな か った. 腹 部CTで 結 腸,子 宮,膣 上 部,膀 胱 後 壁 を一塊 の標 本 と して摘 出 した.膣 断 端,膀 胱 壁 摘 出標 本:S状 結 腸 の筋 層 は著 名 に肥 厚 して お り, 粘 膜 面 に は多 数 の 憩室 を認 め た.そ の うち の一 憩 室 に 結 腸 壁 が 著 名 に肥厚 し,前 方 で 膀胱,膣 は膀 胱 後 壁 と,後 方 で は膣 と密 着 して いた(Fig.2). との 交 通 を認 めた. 病理 組 織 学 的所 見:S状 結 腸 漿 膜 下 脂肪 織 に小 膿 瘍 尿 細 胞 診,子 宮 お よび膣 細 胞診 は陰 性 で あ っ た. 形成 が み られ,合 併 切 除 した膀 胱 筋 層,膣 以上 か ら,S状 結 腸 憩 室 症 は無症 状 に経 過 して い る るの が認 め られ た(Fig.3).痩 もの の,憩 室 炎 に起 因 した 結 腸 膀 胱 膣 痩 と診 断 し, 1996年6月25日,痩 の集 族 が み られ,憩 室 炎 の存 在 が証 明 され た, 孔 を含 むS状 結 腸,子 宮 膣 壁,膀 胱壁 切 除 お よび再 建 手術 を一 期 的 に施 行 した. 術 後 経 過:結 腸 の縫 合 不全 や腸 閉塞 はな く,術 後7 日 目か ら経 口摂 取 可 能 とな った.尿 道 カテ ーテ ル留 置 手 術 所 見:下 腹 部 正 中切 開 に て 開腹 す る と,S状 結 腸 と膀 胱 後壁,子 宮 膣 部 が 強 固 に癒 着 して いた.最 初 にS状 結 腸 を癒 着 の な い部 位 で 約22cm長 に接 して い 孔 周 囲 に は異 物 巨細 胞 にわた り 切 除 し,断 端 を端 々 吻合 した.切 除 したS状 結 腸 を上 中 に もか か わ らず,同 時期 よ り,膣 側 か らの尿 漏 出 が 出 現,増 加 し た.膀 胱 造 影 で 膀 胱 膣 痩 が 確 認 さ れ (Fig.4A),ク ス コ膣 鏡 で も再 発 痩 孔 が 確 認 さ れ た. 手 術 侵 襲 に伴 う炎 症 所 見 の改 善 を持 ち,術 後28日 目 方 に持 ち上 げ る と,癒 着 部 分 は よ り明 瞭 とな り,ま ず 痩 孔 を含 む子 宮,膣 上 部 を切 除 した。膀 胱 に は縦切 開 β' ・ 、 鐡幽 r 〆"ひ 、 物 ヰし 轄 腔 竃 、 ∼ ㍉ ミ'・ 』 汐' 鰯 ヘ ゐ ヨ 、 .'''"・ 厚 ホ ぎ .、蕊 、、. Fig。3.Low-poweredmicroscopicviewshows 達 thesigmoidcolon(arrow)tobe f adheredtothebladder(arrowhead) 託 一 認 \9噂 ぐ"寅 },・ ・,儲 、 多 轟 続蟹 ヨ ドゴ 贈 "く 評幣 ジ、鴨 鎌 諺解v 麟 亥1 andabscessfbrmation(whitearrow). ♪`・ ㍉ 一・ ・・ …一 一 一tt-x"一 一t一 ノ ノ A 遭 轟 .鰯 鰐, ・! 乙 撃・ ,」 Fig.4.A:Postoperativecystographyshows Fig.2.PelvicCTshowsthesigmoidcolon withamarkedlythickwalladheredto theposteriorbladderwall(A)and vagina(B). thevesico-vaginaifistula.B:Cystographyafterocclusiontherapywith 丘bringlueshowsnourinaryleakage BilateralVUR(gradeI)areseen. . 安 士,ほ か:S状 に,イ ソ ジ ン加 生 理 食 塩 水2,000mlに 洗 浄 を 行 っ た 後,膣 フ ィ ブ リ ン 接 着 剤(商 注 入 した.直 品 名=ベ リ プ ラ ス ト)2mlを 後 か ら尿 漏 出 は 停 ま り,尿 道 カ テ ー テ ル 留 置 の ま ま術 後35日 目 に 退 院 し た.フ 注 入 か ら21日 目 に 再 度,膀 ィ ブ リ ン接 着 剤 胱 造 影 を 行 い,造 の な い こ と を確 認 して(Fig.4B),尿 抜 去 した.術 よ る持続 膀 胱 側 か ら痩 孔 内 容 を 鋭 匙 で 掻 爬 し, 後21カ 月 の 現 在,痩 影剤 漏 出 道 カテーテルを 孔 の 再 発 な く無 症 状 結 腸膀 胱 膣痩 515 が充 分 制 御 されて い る こ とが 重要 で あ る.ま た,疲 孔 形 状 は 細 長 く 直 線 状 の も の が 閉 鎖 しや す い と さ れ る6'8)自 験 例 の よ う に上 記 の 条 件 を満 た す 場 合 は フ ィブ リ ン接 着 剤 の効 果 が 充 分期 待 で きる. 本 剤 は血 液 製 剤 で あ る ため,適 応 を充分 検 討 しな い むや み な使 用 は控 え るべ き と思 われ るが,も し再 手術 が 回 避 で きれ ば,侵 襲 が 少 な く,有 効 な手 段 と成 り得 る と考 え られ た. で 経 過 して い る 。 考 語 結 察 S状 結 腸 憩室 炎 に起 因 した結腸 膀 胱 膣 痩 に対 す る手 結 腸 憩 室 炎 に起 因 す る結 腸 膀胱 痩 や結 腸膣 痩 な どの 内痩 は欧米 で は稀 な 疾患 で は な く,外 科 的 治療 の行 わ れ た 結 腸 憩 室 症 の10∼20%に 認 め られ,さ 術 お よ び フ ィブ リ ン接 着 剤 に よ る治 療 経 験 を報 告 し た. らに そ の 10%に 複 数 痩 孔 を持 つ と言 わ れ る1'2)本 邦 に お い て 文 献 もす で に百 数 十 例 の 手術 例 が 報告 されて い るが,欧 米 と比 較 して特 異 な こ とは 女 性 患 者 が少 な い こ と(男 1)WoodsRJ,LaveryIC,FazioVW,etal.:Internal fistulasindiverticulardisease.DisColonRectum 性:女 性=4,6:1)3),複 数痩 孔 の報 告 が少 な い こ と で あ る.わ れわ れ が調 べ 得 た か ぎ り,結 腸膀 胱 痩 と結 31:591-596,1988 2)RodkeyGWandWelchCE:Changingpatternsin 腸 回腸 痩 の 合併 症 例 が数 例 報 告 され て い る3)のみ で, thesurgicaltreatmentofdiverticulardisease.Ann 結 腸 膀胱 膣 痩 は本邦 初 報 告 と思 わ れ る. Surg200:466-478,1984 診 断 に関 して は,旗 孔 の 証 明 と結 腸憩 室 症 か 否 か の 原因 の診 断 が 必 要 で あ るが,一 般 に は単 一検 査 で は感 3)大 腸 の1例.西 野 徹:膀 胱 ・S状 結 日 泌 尿55:924-928,1993 structionofcolovesicalfistulas.JUrol158=795- が で きる もの は痩 孔 の証 明 が容 易 にな る.最 近 で は痩 描 出 したGregoryら 均,大 Dimensionalcomputerizedtomographicrecon- 判 断 す る こ とが 多 い.自 験例 の よ うに 直接 に痩孔 造 影 像で 回 腸 痩 田 4)AndersonGA,GoldmanILandMulliganGW:3- 度 が悪 く,情 報 量が 少 ない た め,複 数検 査 を総 合 して 孔 描 出 と周 囲臓 器 との位 置 関係 を3次 元CT画 岡 均 至,永 797,1997 5)宮 崎 憩 室 炎 の 報 告4)が あ り,手 術 状 況 を予 要,亀 岡 信 悟,田 に よ るS状 中 信 一,ほ か:S状 結 腸 膀 胱 痩 の2例.日 結 腸 本 大 腸 肛 門 病 会 誌42:1227-1232,1989 め推測 した 治療 計 画 を可 能 と し,注 目 され る. 6)PettersonS,HcdelinH,JanssonI,etaL:Fibrin 治療 に関 して は,患 者 の栄 養 状 態 に 問題 が な け れ ば 一期 的 に手術 を行 うの が 一般 的 に な って い る.多 発 憩 室 を含 むS状 結 腸 切 除 に議 論 の余 地 は な いが,膀 胱 に occlusionofavesicovagina1丘stula,Lancet28: 933,1979 7)HedelinH,NilsonAE,Teger-NilssonA,etal,: つ いて は,部 分 切 除 す る もの と,最 近 で は痩 孔 切 除の み で 良 い とす る もの が あ る5)自 Fibrinocclusionoffistulaspostoperatively.Surg GynecolObstet154:366-368,1982 験 例 は膣 上 部 に も痩 孔 があ るた め,膀 胱 部分 切 除 と子宮,膣 上 部切 除 を加 8)渡 辺 建 詞,山 下 裕 一,曹 科 手 術 後 の 難 治 性 痩 孔 え たが,縫 合 断 端 同士 の痩 孔 形 成 を招 く結 果 に な った こ と を考 え る と,縫 合 創 の小 さい痩 孔 切 除 の み に とど め るべ きだ った の か も知 れ ない. フ ィ ブ リ ン接 着 剤 に よ る 難 治 性 膀 胱 膣 痩 閉 鎖 は Pettersonら6)が 最 初 に報 告 し,そ の 後 臨 床 各科 で 難 治性 痩 孔 に対 して 有 効 とす る報 告7'Io)が多 く見 られ る 用 経 験.日 9)鶴 ン 接 か:消 る フ 化 器 外 ィ ブ リ ン 糊 の 使 臨 外 医 会 誌48:1581-1585,1987 崎 俊 文,澤 リ 光 男,ほ に 対 す 着 瀬 健 次,星 剤 の 使 用 経 野 継 二 郎,ほ 験.西 日 泌 か:フ ィ ブ 尿55:1144- 1148,1993 10)WelpT,BauerOandDiedrichK=Useoffibrin glueinvesico-vaginalfistulasaftergynecologic treatment.ZentralblGynakolll8:430-432,1996 よ うに な った.作 用 機 序 は,安 定化 フ ィブ リ ンに よ る 物理 的 な閉 鎖 に 引 き続 き,肉 芽 組 織 の 侵 入 に よる生 理 的 な創 傷 治癒 を促 進 す る もの で あ る ため,痩 孔 の 感 染 (ReceivedonMarchl2,1