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XY テーブルを用いた卓上アクチュエーションシステム
情報処理学会第 78 回全国大会 7X-01 XY テーブルを用いた卓上アクチュエーションシステム 蓮本 諒介† 樋田 基紘‡ 慶應義塾大学理工学部† 1 今井 倫太† 慶應義塾大学大学院理工学研究科‡ はじめに 本稿では、物質空間を情報的に処理すること でモノの利便性とユーザとのインタラクティビ ティを向上する実験的な試みとして、テーブル の上でモノを制御する機構とユーザへのサービ スを実装する。 我々は卓上において、書類の整理や皿の片付 けといったタスクを日常的に行う.卓上は整理を しなければ散らかり、ユーザの作業を妨げてし まう。片付けをする上で、書類や皿の収納場所 は事前に決められていることが多く,物体を決ま った位置に移動させたり決まった経路を移動さ せ続けるといったタスクは人間よりもコンピュ ータの方が適していると言える.そこで,本研究 では卓上の物体の移動を可能にするシステムと してインテリジェントデスクを提案する. 机は 我々が日常的に使用する家具であるため,インテ リジェントデスクは生活環境に取り入れやすい と期待される. 2 尾形 正泰‡ 石が必要になる.[4]では磁石を糸を使って移動 させるが,生活環境内での利用が検討されていな い.本稿の目標は日常の物理空間の情報化である ため、ユーザが使う道具や食器のような物をユ ーザの意図やサービスの状態に合わせて提供す る点で異なる。 3 インテリジェントデスク 上記の従来手法の問題点をふまえ,卓上物体の 移動を可能にするアクチュエーションシステム として本研究では XY テーブルと電磁石を用いた 卓上アクチュエーションシステム「インテリジ ェントデスク」(図 1)を製作した.インテリジェ ントデスクは機構的には従来の手法に比べて軽 量で,消費電力が少なく,拡張が容易である,とい う特徴を持つ。これに加え、ユーザの意図をモ ーションセンサで取得し、対象のモノとサービ スの状況から、物体の移動を行う。 関連研究 コンピュータによる卓上物体の移動を行った 研究や事例は存在するが,日常生活で利用するに あたって問題点がある.卓上に設置するロボット アーム[1]はアームがユーザと接触する可能性が ある.また,机を広くする際にアームの長さを長 くせざるを得ない.卓上を自由に移動できる小型 ロボット[2]では,ロボットアームと同様にユー ザとの接触に加え,物体の配置によってロボット 自身が移動不可になる可能性がある. インテリジェントデスクと同様に磁力により 制 御 を 行 う シ ス テ ム も 存 在 す る [3][4].[3] の Pico は机内部に敷き詰められた電磁石によって 消費電力が大きく,重量が重いため,生活環境に 取り入れにくい.また,大型化の際に多くの電磁 A Tabletop Actuation System Using XY Table †Ryosuke Hasumoto, Michita Imai Faculty of Science and Technology, Keio University ‡Motohiro Toyoda, Masa Ogata Graduate School of Science and Technology, Keio University 図1 インテリジェントデスク 4 設計と実装 インテリジェントでクスは,XY テーブルで電 磁配列の座標を制御することで,卓上の磁性体の 移動を可能にする. 卓上物体が磁性体ではない 場合,底面に磁石を張ることで移動が可能になる. 上記の手法によって消費電力や発熱を抑えるこ とができ,システム全体が机の中に収まるためユ ーザの妨げになることがない.また,机を大型化 する場合は XY テーブルを大きくするのみで対応 できるため大型化が容易である. インテリジェントデスクを用いることで従来は 人が行っていたタスクをコンピュータが支援す 4-215 Copyright 2016 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved. 情報処理学会第 78 回全国大会 ることが可能になる.例えば,パーティ会場のよ うな大規模な配膳では自動で決められた場所に 正確に皿を移動させることができる.また,机の 上の書類をまとめて所定の位置に戻す,逆にユー ザに届けることができる. を取り除く機能の実装を行った(図 4). 4.1 ハードウェア設計 インテリジェントデスクはガイドレール,ステ ッピングモーター,タイミングベルトで構成され た XY テーブルと 4 つの電磁石,制御基盤で構成 されている(図 2).電磁石が乗った磁気ヘッドの 位置を XY テーブルで制御することで卓上の磁性 体を制御できる .テーブルトップとして厚さ 5mm のアクリル板を設置した.電磁石に 12V の 電流を流した際のテーブルトップ表面での磁束 密度は約 30mT であった.電磁石は ON/OFF を 制御できるため卓上物体の保持,切り離しが容易 である. 電磁石による磁力で位置の制御を行うため,卓 上の物体の底面にネオジウム磁石を貼り付けた. 移動させる物体が重い場合でも底面に貼るネオ ジウム磁石を強力にすることで移動可能になる. 図2 ハードウェア 4.2 アプリケーション インテリジェントデスクを用いて卓上物体の 制御を行った.その際,システム上空にカメラを 設置し,物体認識や手の認識を行った.制御の例 としてハンドジェスチャによる移動を行った(図 3).図 3 は指を広げた手の先にある物体の引き寄 せを行った様子である.これは腕を伸ばしても届 かない場所にある物体の引き寄せや移動に活用 できる.また, インテリジェントデスクが持つ磁 気ヘッドは 1 つであるため,効率的な配置や収集 には複数の物体の同時移動が必要である.そこで, 電磁石を複数持つことを利用し,電磁石をぞれぞ れの物体に割り当てることで卓上に点在した物 体を集めて運ぶことができた.インテリジェント デスクは XY 平面方向の移動であるため,移動経 路上に障害物が存在していた場合,その障害物を 経路外に移動させる必要がある.そこで,目標物 体の移動の前に他の物体との衝突を検知し障害 図3 ハンドジェスチャによる引き寄せ 図4 移動経路中の障害の除去 5 まとめ 本稿ではコンピュータによる卓上物体の移動 を行うシステムとして,XY テーブルと電磁石を 用いたアクチュエーションシステム「インテリ ジェントデスク」を提案した.インテリジェント デスクはアクチュエータがユーザと接触する恐 れがなく,少数の電磁石を用いるため低電力で拡 張が容易であることから,従来の手法と比較して 生活環境に取り入れやすいと期待される. イン テリジェントデスクを用いて卓上でのタスクを 支援するための物体の制御を行った. 参考文献 [1] Bischoff R., et al.: The KUKA-DLR Lightweight Robot arm - a new reference platform for robotics research and manufacturing , Robotics (ISR), pp.1-8 (2010) [2] Hashimoto S, Andrei O, Inami M, Igarashi T: Photograph-Based Interaction for Teaching Object Delivery Tasks to Robots, HRI '10, pp.153-154 (2010) [3] Patten J., Ishii H.: Mechanical Constraints as Computational Constraints in Tabletop Tangible Interfaces, CHI '07, pp. 809-818 (2007) [4] 青木孝文ほか: 実世界で存在感を持つバーチ ャ ル ク リ ー チ ャ の 実 現 : Kobito -Virtual Brownies-, 日本バーチャルリアリティ学会 論文誌 11(2) , pp. 313-321 (2006) 4-216 Copyright 2016 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved.