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1.地球を宇宙から眺めると 2.海の中にも、山や谷がある

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1.地球を宇宙から眺めると 2.海の中にも、山や谷がある
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NPO法人日本海洋深層水協会メールマガジン 第48 号 (2012 年 7月29日)
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NPO法人日本海洋深層水協会 メルマガ編集チーム
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目次 <協会制作記事>
地球の凸凹
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地球の凸凹
「映画監督のジェームズ・キャメロン氏が、世界最深の海溝といわれるマリアナ海溝の
最深部、チャレンジャー海淵(深度10,900m)への単独潜航に成功した(3月26日現地時間)」
というニュースが流れ、キャメロン氏の勇気と実行力に感銘を覚えました。
我々は、普段、海洋深層水という水深200~1000mの資源性のある海水の利活用を広める活
動を行っていますが、今回は、目線を変えて、もう少し深い「海溝」と「地球の起伏」に
ついて話題として取り上げたいと思います。
1.地球を宇宙から眺めると
暗い宇宙に水と大気によって青く輝く地球は、ほとんど凹凸のない姿です。挑戦者にと
って、命をかけても登りたいと思わせる世界最高峰のエベレストでさえ、地球の半径に比
べれば七百分の一以下で、大気の薄い層の中に埋没しています。
2.海の中にも、山や谷がある
海水で覆われた海の底を、直接目で見ることはできませんが、地表に勝るとも劣らない
起伏に富む地形があります。音響測深器による海底地形の探査でわかったデーターをもと
に、海水をとりのぞいたときの海底地形のパノラマができています。それを眺めてみると、
太平洋や大西洋全域にわたる長大な海嶺があり、海山や、ハワイのように海面に突き出た
火山島もあり、まさに海底は平らなところばかりではないことが理解できます。
また、私たちの住む日本はユーラシア大陸の東に形成された弧状列島で、その太平洋側
には、深く海底に窪んだ日本海溝や南海トラフなどが見つかります。
3.地球の起伏の消長は
-熱エネルギーどうしのせめぎ合い-
地球創世期、微惑星の衝突で大きくなっていく原始地球には、衝突の際のエネルギーが
膨大な熱となって蓄積していったと考えられていて、今でもその余熱が保存されていると
いわれています。また、地球の中心部にある鉄やニッケルが成分と考えられる固体内核の
外側には、溶けた鉄などからなる液体状の外核があり、内核と外核の接触部で、液体状の
外核が冷えて徐々に固体化していく過程で放出される潜熱、さらには、岩石に含まれる放
射性元素の崩壊熱、これらが地球内部の熱源として考えられています。
地球内部からの熱は注1マントルの対流を生み出し、その上昇流が地下深くの岩石を地表
近くに持ち上げます。すると、圧力が低下するのでそれほど高い熱でなくとも溶けてマグ
マになります(減圧融解)。マグマは温度が高い分、密度が小さくなって浮力で上昇しま
す。溶けると体積が大きくなるので、圧力を解放しようとまわりの岩石を押しのけ、破壊
しながら上昇して、時には地表や海底で吹き出して火山を形成します。
また、マントル対流は、その上に乗る地殻(プレート)を動かします。その際、プレー
トどうしがぶつかる形で衝突すれば、重い方が下に潜り込みます。そして、それぞれのプ
レートにのっている地殻どうしも互いに押し合っている力の圧力を解放するべく、縦方向
に曲がりくねって盛り上がり、褶曲山脈を形成することもあります。地球内部の熱エネル
ギーが生み出す圧力がこのように地表付近に凸部をつくるのです。
逆に、山を低くする作用は太陽の熱エネルギーが源です。太陽熱を吸収して、海や河川
から昇る水蒸気は雨や雪となって山を削り谷を形成します。風もまた、太陽エネルギーに
よる空気の流動で、水の働きと共に山の岩石を風化させます。昼夜の温度変化は、岩石の
膨張収縮を繰り返させてはもろくさせ、岩石はやがては砂と化します。このように、地球
内部の熱エネルギーと太陽の熱エネルギーのせめぎ合いで地球の起伏が増減するのです。
4.海溝の成因
-海溝は、海嶺で誕生する岩盤の終着駅-
大洋の底には、海底(火山)山脈が長く連なる場所があります。それを海嶺と呼びます。
大規模なものは、海底からの高さが3000m、長さは1万5000kmという大西洋中央海嶺な
どがあります。海嶺の下には、マントルが一部溶けて、マグマを蓄えた部分があり、ここ
が海底をつくる岩盤の供給もととなります。深度があるので、火山活動も水圧によって爆
発的な噴火はせず、頂上部のわき出し口から出て冷やされたマグマは、左右に分かれて広
がっていきます。
マグマが固まると、陸の岩石よりも比重が大きい玄武岩となり、これが海の底を形づく
る岩盤となります。このようにして海洋地殻(海洋プレート)が誕生します。海嶺も色々
な方向に伸びているものがあるので、プレートも十数枚あるといわれ、移動する方向も速
さも違ってきます。生まれたての海洋地殻は時間をかけて海嶺から遠ざかり、やがて海溝
付近に来ると地下深部に沈んでいき、再び、地球内部にかえっていきます。この沈んでい
く部分が、海嶺から一連に続くプレートを引きずり込むようにして引っ張るので、この力
が、プレートの移動の原動力だと考えられています。
海嶺から海溝まで移動するのに要する時間は、1例を挙げると、東太平洋海嶺で生まれ
た海洋底は誕生してから1年に8cm程度の速さで移動し、約1億数千万年かけて日本の東側
に位置する日本海溝にたどり着き沈んでいくといわれています。
日本列島はアジア大陸の東の縁に位置していて、周りには複数のプレートが分布します
(図1)。
図1 出展:http://bousai-jishin.com/quake.html
日本列島そのものは、ユーラシアプレートと北米プレートに乗っています。ユーラシア
プレートと北米プレートのような、「大陸プレート」を形成する岩石は、太平洋プレート
のような「海洋プレート」をつくる岩石より密度が低く軽いため、「大陸プレート」と「海
洋プレート」が衝突するところでは、重い方の海洋プレートが、軽い大陸プレートの下に
沈み込んでいきます(図2)。
つまり、ここ、海溝が海洋地殻の終点と言うことになります。
ここで生じるプレートどうしの摩擦で、大陸プレートが海洋
プレートに引っ張り込ま
れるようにして深い溝状の地形ができるのです。この海洋のプレートが沈み込む境界に沿
って細長くくぼんだ横断面が、V字形の地形となった海溝です。
5.海溝に沿って分布する「地震の巣」と「火山活動地帯」
図3の太い実線は、日本海溝を示してお
図3
り、その南東側延長線上には、伊豆・小笠
原海溝が連なっています。
海上保安庁水
路部の資料
「日本近海海
底地形図」を
基に作成
前記、図1で示したとおり、伊豆・小笠原
海溝の位置は、フィリピン海プレートと太
平洋プレートがぶつかるところであり、こ
日本海溝
赤い実線部分
が日本海溝
こでは、フリピン海プレートに太平洋プレ
ートが沈みこむことで海溝が形成されます。
また、深さが6,000m以上あるものを海溝
と呼び、その中でも特に深い部分は海淵と
伊豆小笠原海溝
南海トラフ
いいます。6,000mより浅いものはトラフと
呼ばれています。
西日本は、ユーラシアプレートの端の部
分に乗っているので、ここに、フィリピン
海プレートが沈み込んで、駿河湾から四国、
九州の沖まで連なる南海トラフが形成され
たのだといわれます。
富士箱根火山帯、伊豆諸島、小笠原諸島などの火山は、このプレートの沈み込む運動の
結果生まれたと考えられています。海洋プレートが大陸プレートに沈み込む時に、長い間、
海の底に存在していた海洋プレートの上部には、海水を多量に含む岩石層があり、その水
分が地下に持ち込まれることで、より低温でもマグマが生じると考えられています。
このような、プレートの分布と運動が、日本を始めとする環太平洋火山帯の火山活動の
原因となります。また、プレートどうしの運動による応力が、地殻やその下部のプレート
そのものの岩石層をたわませたり、破壊したりするので、環太平洋火山帯は地震の巣にも
なっています。
6.海溝を調査する
-世界初の日本の研究成果-
火山活動、地震、津波といった自然現象による災害を未然に防ぐことは困難ですが、そ
れらの兆候を研究して、予知につなげ、避難など防災に役立てることは何よりも重要です。
震源域の地質構造や岩石の物性などの調査研究を通じて自然災害のメカニズムが解明さ
れれば、人々の生活に大きく貢献するでしょう。
しかし、深海は、そのあまりの高圧に阻まれて、未だ未知の領域です。
ジェームズ・キャメロン氏が潜水艇で訪れたチャレンジャー海淵は、1平方センチあたり
11トンもの圧力がかかる深さで、今までに、そこに到達した人はわずかに3人(1960年に
ジャック・ピカール氏とドン・ウォルシュ氏を乗せて、アメリカ海軍がイタリアから買い
入れたトリエステ号が到達している)という事実も、深海調査の困難性を物語っています。
日本は火山と地震の国と言われ、世界的に見てもそれらの研究では、最先端の技術力を
誇っています。
日本の研究機関である 独立行政法人 海洋研究開発機構JAMSTECは有人潜水調査船「し
んかい6500」を有し、2011年8月3日には同調査船が、東北地方太平洋沖地震の震源海域で
ある日本海溝水深5350mに潜航し、巨大地震の影響と思われる大きな亀裂を確認しました。
また、同じく、同機構が有する地球深部探査船「ちきゅう」は、2007年9月から実施して
きた「南海トラフ地震発生帯掘削計画」に加え、2012年4月からは、「東北地方太平洋沖地
震調査掘削計画」を実施して、同年4月25日には、水深6889.5mから海底下850.5mまで掘削
することに成功しました(世界初)。その地点で、同年5月13日から22日にかけて、コアサ
ンプルの採取を試み、14日に最初のサンプル回収に成功。5月21日PM16:20には、海底824m
のコアサンプルの採取に成功して、まさにそのコアサンプルが日本海溝下のプレート境界
にある「断層」部分であることが確認されました。ただし、3月の巨大地震のときに動いた
断層であるとは限らず、今後の研究を待たないと判らないとのことです。
これら世界初の快挙を、日本の研究機関が成し遂げたことはとても素晴らしいことです。
今後の研究成果が、人類の宝となっていくことを期待したいと思います。
参考資料:JAMSTEC提供「ちきゅうTV」
注1マントル;対流すると言う表現から液体と思う方もいるようですが、マントルは密度が高くて固い固
体です。永い時間をかけて力を加えると、岩石などの固体も流体のように振る舞います。例えば、千歳飴
は、一瞬に噛めば砕けますが、先端部を歯で押さえ、手でゆっくりと力を加えると折れずに曲がります。
この現象に似ていると考えて良いでしょう。
(by 円周率π)
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