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企業の上場と株式所有構造に関するいくつかの重大な問題について

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企業の上場と株式所有構造に関するいくつかの重大な問題について
企業の上場と株式所有構造に関するいくつかの重大な問題について
株式所有構造を合理的に設定することは、企業の経営戦略と長期的な安定にとって重要
である。特に上場手続きにおいて、株式所有構造の設定は特に重要な問題となるため、注
意すべきである。
文/黄前松
1:上場の条件と鍵となる要因
より多くの優良企業を資本市場に送り出し、中国の資本市場を拡大・強化することは、
中国の国家的金融戦略となっている。中国の資本市場はまだ十分拡大するポテンシャルを
持っており、現在、加速的な発展の段階にあり、また好景気の真っただ中にある。上場す
る環境は良好であり、企業にとって上場するための外部条件は揃っている。
ただし、上場するためには幾つかの条件を満たさなければならない。簡単にいうと、上
場の法定条件は「主体合格」、健全なガバナンス体制、合法的な経営、基準を満たした財務
などである(これらは法律の知識となるため、ここでは議論しない)。
法定条件以外に、上場するためには、3 つの特殊な要件を満たす必要がある:
第一に、ストーリがあること:企業は明確な戦略ポジションと優れたビジネスモデルを
構築しており、上場後も持続的に成長可能であり、資本市場にとって魅力的であること。
第二に、利益を生み出すこと:同業他社よりも競争力のある財務体質であること。
第三に、政府の支持があること:企業は政府、中国証券監督管理委員会(以下、証監会)
から支持されていること。
一例をあげると、2010 年 10 月 18 日に、国務院が「戦略的新興産業の育成と発展の加速
化に関する決定」を公表し、財政、税務、金融などの一連の政策を通して、省エネ・エコ
産業、次世代情報技術産業、バイオテクノロジー産業、ハイテク産業、新エネルギー産業、
新素材産業、新エネルギー自動車産業などの戦略的新興産業の育成と発展を加速化させる
ことを明確化した。このような背景のもと、これら 7 つの戦略的新興産業の企業は、上場
において、より政府からの支持を得られやすくなっている。また、現代の農業は以前から
国の支援を受けているため、農業に属する企業であれば、その上場は間違いなく国家から
の支持を受けることが可能である。更に、新疆を発展させることは国家戦略となっている
ため、新疆の企業の上場は政府の支持を受けやすくなっている。
上場が成功するための鍵となる要因
1、
規律(財務、法務)を十分に守ること。2010 年 6 月 9 日の経済観察網(中国のサ
イト)の指摘によると、財務、法律などの規律上の問題により、中国の多くのベン
チャー企業の上場が 2∼3 年ほど遅れており、
「10 社に 4 社ぐらい」の割合でその影
響を受けている。
1
中小企業の上場にはリスクを伴うが、上場はさけて通ることのできない道でもあ
る。リスクを回避する方法は、上場準備を早めに始めることである。上場の法定条
件と潜在的な条件と照らし合わせ、上場申請が却下されるよくある原因を把握し、
正式に申請する 3 年前から却下理由になりうる法務、財務、業務、業界などの面で
の問題を探し出し、それをクリアすることである。
2、
企業業績など基本的な側面を強化すること。その重要性は言うまでもない。
3、
レベルの高い、責任感の強い主幹事証券会社などのアドバイザリチームに依頼す
ること。アドバイザリチームは重要であり、そのチームのリーダになる人がさらに
重要である。「因人成事」つまり人に頼ってことを成し遂げるのである。
2:株式所有権の問題
(一) 企業の上場に関する株式所有権の問題
企業の上場プロセスにおいて株式所有権の問題は特に重要な問題である。というのは
法定条件を満たすかどうかに直接関係するからである。条件を満たしているかどうかの
判断には、法律の知識、ノウハウ、実践的知識、弾力的な対応が必要となる。特に、我
1
が国の上場審査は実質審査制であり备案制 ではないため、証監会の考え方(政策上の誘
導や業務に関する企業への指導など)、規範となる文書、及びいわゆる窓口指導などが極
めて重要になる。上場審査において、代表的な問題は以下のものである。
1.出資問題
出資に関する審査の原則:審査機関は、上場申請期間外の出資については主に主
幹事証券会社等の意見を参考にし、申請期間内の出資を重点的に審査する。出資問
題は株式所有権にかかわるだけではなく、株主の誠実さと信用にもかかわる、すな
わち、株式に関して安全な取引ができるかどうかを見極めるためである。
(1) 上場申請企業において出資金額不足または違法な方法による出資があった場
合、当該企業はその程度の軽重によって 1∼3 年の上場延期が要請される。
(2) 企業の資産であることを明らかに知っておきながら、当該資産を出資に振り
当てた場合、3 年間は上場の申請をすることができない。
(3) 出資に充てられた資産に関して出資後に財産権変更手続きをしなかった場
合:当該資産が企業に所有されて利益創出活動に使用されていることを確定
できる、もしくは上場申請前に財産権変更手続きが行われた場合、上場審査
結果には影響しない。適切な資産評価を行わなかった場合、保薦人2に不正出
資問題が存在するかどうかに関する意見を表明してもらうことが必要になる。
不正出資があった場合、上記(1)に従って処理する。増資に関して虚偽の
報告書を申請書類として提出した場合、当該企業を処罰し、3 年以内の再上
1备案制とは、上場のリスクと義務履行責任などを投資銀行、アンダーライター、希望企業
に負わせる制度であり、通常のプロセスとは異なり、上場のための公開情報を登録し、情
報開示義務を履行したかを審査し、上場可能かどうかの判断は行わない。
2 証券保薦人、アンダーライター企業が担う
2
場申請を禁じる。
2.実質支配者の問題
公表された証監会法律部 1 号文は主に以下のような特殊な株主構成を持つ企業の
株式所有構造の変更に関するものである。つまり、共同管理する株主が存在する企
業;大株主が存在するものの、同一の行動をとる複数の小株主の合計株数が大株主
より多くなるような企業;株主構成が分散しており、同一行動をとる株主が存在し
ないような企業;株主へ権利を移転したい国有企業、である
(1)
過去 3 年以内に筆頭株主に変更があり、かつ変更前後の株主が同じ実質
的な支配者ではない場合、企業の実質支配者には変化があったと認識す
る。
(2)
企業の株式所有構造が非常に分散している中、過去 3 年以内に大株主の
構成に大きな変更がなかった場合、代理弁護士が企業には実質支配者は
いないという意見を表明することができる。ただし、当該大株主の何名
かをその持株数に応じて支配株主とみなし、当該大株主の株式の売買を 3
年間禁止することが必要である。
(3)
国務院国資委(国務院国有資産監督管理委員会)が直接管理する企業に
関しては、省人民政府国務院国資委が直接管理する企業の株式所有権の
移転は実質支配者が変化しないと認識し、省以下の人民政府国務院国資
委が直接管理する企業の場合では実質支配者が変化するとみなす。
(4)
家族支配は認めるが、上場申請期間内に家族間の株式所有権の譲渡、継
承などがあった場合、譲渡元である株主が企業経営の重大意思決定に関
与していない場合のみ、企業の実質支配者が変化しなかったと認識する。
3.株式所有権の管理問題
(1) 委託持株、投資信託持株、匿名持株などの株主が存在する場合、上場前に
株主を整理する必要がある。
(2) 株主が 200 人以上いる場合、上場は認めない。これは 2006 年(「会社法」
が公表された)以前に設立された企業も含まれる。
(3) 上場申請前の株式譲渡、増資が頻繁に行われている企業に対しては重点的
に審査する:①株式譲渡が真正か、合法的か、所定のプロセスや相応の契
約などに従ったか、払込は完了したか(株式発行前に譲渡金を払い込むべ
きである)、工商部門での変更手続きを完了したか、名義借り持株が存在す
るか、新しい株主が既存の株主または保薦人とインサイダー取引を行って
いないか、資金源が合法的かなど。②国有株式の譲渡がある場合、所定の
プロセスに従ったか、譲渡当時国有資産管理部門の了承を受けなかった場
合は後に国有資産管理部門の確認書類を取得すべきである。労働組合、社
員持株会などによる株式譲渡は、社員ごとに譲渡確認書類が必要になる。
(4) 純資産価格またはそれより低い価格で譲渡する場合、その理由を説明しな
3
ければならない。国有資産の譲渡に関連して、譲渡当時の資産評価や相応
の管理部門の了承などを受けなかった場合、追加の確認手続きが必要にな
る。
(5) 証監会に申請書類を提出した後、株主構成に変更があってはならない。会
社発起人または大株主が株式を譲渡した場合、主幹事証券会社などのアド
バイザリチームが新たに調査と申告手続きを行わなければならない。
(6) 支配株主の株式資産が凍結もしくは抵当に附された場合、または支配株主
が清算あるいは重大な訴訟に関わる場合、それらの事情により企業の支配
権が移転する事があるかどうかに注目する。全額凍結または一定比率を超
えて株式の強制的な処理が支配権に影響を及ぼす可能性がある場合、株式
発行の条件は不適格と判断する。
以上は一部の問題をまとめたに過ぎない。企業の上場プロセスにおいて、株式
の権利に関する問題は様々であり非常に複雑である。弁護士、会計士、証券会社、
投資家などの専門家の力を借りて解決を図ることが重要になる。
「闭门造车」3 、
「南
4
辕北辙」 してはいけない。
(二) 株式所有構造問題の背景
株式所有構造は企業の「政権」に相当するので、株式所有構造が不安定な場合、企業
の発展はおぼつかない。
実際に中国企業の株式所有構造問題はこの何年間、広範囲に拡大している。たとえば、
ワハハグループの株式所有権の争い、国美(電器量販店)グループの上場後の支配権と
企業管理の争い、真功夫(定食チェーン)グループの上場前の株式所有構造と企業支配
権の紛争等があった。
中国企業は中国特有の市場化の進行とともに発展し、多くの面で中国の独特な市場化
と共通する独自性を持っている、株式所有構造の面では:
(1) 多くの民間企業は創業当初、株主構成、株式所有の比率などについて深く考
えていなかった。そのため株主を再構成しようにももはや全体的な調整が難
しく、企業の継続的な発展に潜在的なリスクを残すことになった。そのため、
企業は好ましくない株主の影響を受け、より深刻な場合には企業の発展の方
向がコントロールされてしまい、終わることのない争いに消耗してしまう。
あるいは、企業規模が拡大する中で株式所有構造が乱れ、財務管理上の規律
を失う場合もある。
(2) 国有企業が組織改編を行うことで成立した民間企業の多くは、改編時に多数
のステークホルダーが存在していたために徹底的な組織改編ができず、
「改編
後遺症」を残してしまう。たとえば新機軸をうまく打ち出せない、発展の活
3
4
門を閉じて車を作る。客観的事実を無視して,自分勝手な判断で事を運ぶこと
轅(ながえ)は南に、車は北に。行動と目的が相反すること
4
力が不足、株式所有権が分散、上場規則に反する労働組合の持株の方法など
があげられる。
(3) ほとんどの企業家は創業段階において資本に対する意識が薄かったため、資
本運営の考え方に基づいて株主を構成することができない。企業が急速な発
展期に入り、上場による資金調達が必要になった時点でも、株式所有構造が
整理されておらず、上場への大きなハードルが存在する。一部の企業では株
式所有が分散しすぎて、上場後に敵対的買収にさらされるリスクが存在する。
(三) 株式所有に関する基本原理
企業家が株式所有構造設定の問題に関して系統的に思考することによって不必要なト
ラブルを回避する事ができると我々は考える。
1、コア理念
株式所有構造の設定によって企業の長期安定化と経営の効率化という両方が保証
され、最終的な目標は企業価値を最大化することである。
2、基本原則
(1) 合法合規(規則違反しない):相応の法律、法規、規範などに適合する。
(2) バランスよく発展:リスクと収益のバランスを保つ。
(3) 調和がとれる:株主同士の利害関係を一致させ、株主と企業の利益を一致
させる。持続可能な発展を実現し、株主同士の間で「心理的契約」を結び
あい、真の利益共同体、事業共同体、運命共同体になる。
3、判断基準
株式所有構造の設定が合理的かどうかは、第一に企業の戦略的発展に有益か、第
二に企業の長期的安定に有益か、によって判断する。
(1) 株式所有構造の設定は企業の戦略的発展に有益であるべき。
第一に、株式所有構造の設定は戦略の一部である:戦略とは、企業は将来何を
するか、どうするか等の企業の生存と発展に関わる重大な問題に関する体系的な
計画であり、株式所有構造の設定(及び企業のガバナンス)を含むことは当然で
ある。
第二に、株式所有構造の設定は戦略を左右する。企業は自身の資源と能力に基
づいて戦略を策定、実施する。株式所有構造は企業の最も重要な資源の一つであ
る。企業はどの範囲で、いつ、どの程度の資源を統合的に活用し、経営と管理の
能力を向上できるかは、株主と株式所有構造によって決められることが多い。株
式所有構造という資源を十分に利用し、戦略的な株主を囲い込み、株式所有権の
比率を合理に配分し、株主の協力とサポートによってより多くの社会資源を囲い
込むべきである。例えばストックオプションを導入し、コアメンバーと企業との
利害関係を一致させ、事業に巻き込んでいくこと、などである。
つまり、戦略が不明確なままでは、株主と株式所有構造の設定には適切なロジ
5
ックの起点と終点がない。株式所有構造の設定が不適切であれば、企業の経営戦
略の実行に必ず問題が起こるのである。
たとえば、天才的な技術者である本田宗一郎がマーケティングと経営管理の天
才である藤沢武夫を巻き込んで株主にし、株主の協力とサポートを計ったからこ
5
そ、ホンダという企業を共同で大きくすることができた。无独有偶 ではないが、
トヨタグループも似たような株主背景を持っている。
(2) 株式所有構造の設定は企業の長期的安定に有益であるべき。
第一に、一般に、企業は上場前には絶対支配的な株主が存在するほうがよい。
たとえば、ある未上場企業に 3 人の株主が存在し、株式所有の比率を「4:3:3」
に設定することよりも「7:2:1」に設定するほうが、企業の安定的な発展には良
い。「7:2:1」の状態では、基本的に大株主の利益のインセンティブは大きく、
企業の利益を高めることと、個人の利益が高まることはその利害が一致している
が、同時に小株主の利益を保証することにつながっている。もし「4:3:3」の比
率に設定した場合、企業の戦略的な方向に食い違いが起こると、三者が覇権を争
う泥沼の状況に陥り、「終わりのない消耗戦」になる可能性が高い。「7:2:1」の
状態では、もし大株主が企業にとって好ましくない株主であったらどうするかと
聞く人がいるかもしれない。この場合、他の株主には二種類の対応方法がある、
一つは「手で投票し」大株主になること、もう一つは「足で投票し」企業の株式
所有権を放棄することである。
第二に、上場における株主と株式所有権に関する証監会の強制的な要求を満た
すべきである。たとえば、上場の 3 年前から、企業の実質支配者は変わってはい
けないこと;上場前に企業の株式所有権が明確であり、支配株主と他の株主、お
よび実質支配者がコントロールする株主のそれぞれが保有している株式に関して
重大な所有問題がないこと。
第三に、将来のストックオプション、戦略的投資家の受け入れ、上場による資
金調達、上場後の敵対的買収への対抗策、株式交換による合併など、資本運営の
ための余裕を残し、事業と資本の両輪による発展を有効にしていくべきである。
一般的に、ストックオプション、戦略的投資家の受け入れ、上場などによる株式
の希薄化の後においても、支配株主と実質支配者が持つ株式の比率は 30%以下に
ならないようにすることが良い、と我々は考えている。
5「単独ではなく対(つい)をなす者がいる、珍しい事(者)でも必ずそっくりの事(者)がある」
と言う意味
6
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