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酪農家の牛乳 - パルシステムの産直
「酪農家の牛乳」(埼玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」公開確認会 「酪農家の牛乳」(埼玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」公開確認会(2014 年 2 月 6 日)監査報告 パルシステム生活協同組合連合会新農業委員会 パルシステム埼玉とパルシステム連合会は2月6日(木)、埼玉県深谷市で「酪農家の牛乳」(埼 玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」公開確認会を開催しました。牛乳を対象商品に、生産の現状とこ れからの取組を確認しました。 ■生産者、組合員等72名が参加 公開確認会は、1999 年からスタートした生産者と消費者の 二者が産地で生産状況を確認するパルシステム独自の制度です。 「酪農家の牛乳」(埼玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」の公開 確認会が、埼玉県深谷市文化会館で開催されました。パルシス テム埼玉、パルシステム連合会の共催で開催、総参加者数 72 名 となりました。来賓として埼玉県畜産安全課の方も参加されまし た。また、今回は防疫上の関係で監査人以外の牛舎への立入り ができないため、監査人以外の方にも牛舎視察の様子がわかる ように、「スカイプ」で視察の模様を中継する初めての試みを 行いました。 ▲埼玉酪農業協同組合 木本榮一 代表理事組合長 ■この牛乳のために工場に専用ラインを増設 埼玉酪農業協同組合の酪農家戸数は 89 戸、飼養頭数 2,693 頭、生乳生産量は年間 24,640tです。 そのうち、パルシステム向け直送生乳生産者は 23 戸です。 生産者の1日の作業時間は 7~8 時間で、その合間に農作業 をしています。牛の飼育については、日々細やかに管理を行っ ており、牛から乳を搾った後の洗浄にはとても気をつかって います。 ▲新設した生乳受入タンク(写真は新設時) 牛乳を製造している西武酪農乳業株式会社は生乳処理を年2.1万 トン行っており、そのうち約8割の1.6万トンが埼玉県内の酪農家から集乳されたものです。また、製造した 牛乳の13.5%がパルシステム向けに出荷されています。2009年にHTST牛乳を製造するために、新たに 専用ラインを増設しました。2009年11月より「酪農家の低脂肪牛乳」、2010年5月より「酪農家の牛乳」 の製造を始めました。 産地交流・利用実績がパルシステム埼玉の一ノ瀬正人組織管掌理事より発表されました。 西武酪農乳 業の工場見学等組合員との交流が好評であること、「酪農家の牛乳」の買上げ率向上に取り組んでいるこ とが紹介されました。 ■酪農家が置かれている厳しい現実 昼食後、生産者の1人である関根直志さんの牛舎に監査人 7名と「スカイプ」中継スタッフで向かいました。 整理整頓された牛舎内の模様は、深谷市文化会館にも中継 され木本榮一埼玉酪農業協同組合代表理事組合長が作業の様子 や用具類等を解説していただきました。 関根さんは、牛舎の視察に際して、監査人に現在酪農家が置 かれている状況を話していただきました。生乳の取引価格は 上がらず、餌代は1.3倍になった分収入は減ってしまい、経営 的に厳しくなったとのことです。 ▲生産者の関根さんから説明を聞く監査人 また、監査所見の発表の前に、 「タオルを贈る運動」の贈呈式が行われました。寄せられたメッセージの一 部が読み上げられ、代表して目録を受け取った関根さんは「搾乳以外にもタオルを使用する機会は多く、大 「酪農家の牛乳」(埼玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」公開確認会 変重宝しています。これからも期待にこたえられるよう努力してい きます」と話しました。 2013 年度の「タオルを贈る運動」に集まったタオルのうち 3,900 枚がメッセージとともに埼玉酪農協の酪農家へ寄贈されまし た。 ■牛乳の消費が生産者の励みになる 監査人所見では「丁寧に牛乳づくりがされている」「生産者の ▲タオル 3,900 枚を贈呈しました 現実を知る中で私達の姿勢を考えていきたい」「牛乳は産直の深み が問われる事業。生産者と消費者という分け方ではなく、同じ生活 者として地域を守っていってほしい」等生産者を激励する所見が多く出されました。また「酪農・鶏卵・野 菜・お米の生産者など、パルシステム埼玉の交流を通じて、地域の課題を共有し、出来る事は何か考えて取 り組む事でパルシステムの産直を進化させてほしい。 」とこれからの取組に期待するコメントも出されました。 監査人所見の後、木本組合長は「所見をいただき励ましていた だきました。生乳は牛乳になれば販売できますが生乳のままでは直 接販売することができません。限られた流通システム、限られた ルールに則った形で牛乳にして販売していかなければなりません。 消費していただくことが励みになります。」と述べました。また、 西武酪農乳業株式会社佐伯吾郎専務は「生産者・乳業メーカー・ 生協・組合員の四者による実りある会だったと思います。 こだわりの商品であることはご理解いただけたと思います。 いっぺんにゴクっと飲むより、少しずつ噛み砕くように飲んでいた だくとより美味しさが体感できるかと思います。おいしいものを知 らない人にアピールして、牛乳消費の拡大、そして高くても買いた い!飲みたいと思う人が増えるようコツコツと励んでいきたいと 思います。」と述べました。 ▲西武酪農乳業株式会社佐伯吾郎専務 最後にパルシステム埼玉の亀山裕二専務より「私たちが求める牛乳を生産するために努力されていること がわかりました。公開確認会はパルシステムならではの取り組みです。この取組みをより多くの方に知らせ ていきたいと思います。」と閉会の挨拶で終了しました。 「酪農家の牛乳」(埼玉産地) 「酪農家の低脂肪牛乳」 公開確認会所見のまとめ 1、生産者(団体)の理念や事業方針 ・わが国の食と緑を守る。 ・協同の理念を学び実践を通じて共に生きがいを追求する。 ・農業の持つ多様な価値を見直し豊かな地域社会をつくることを目的とする。 ・埼玉酪農業協同組合では 5 つの理念を掲げ、特に地域の農業を振興し、我が国の食と緑と水を守る、 という理念に感銘を受けた。安心安全な生産だけではなく、環境、日本の自給率についても考えられてい ると感じた。また、西武酪農乳業株式会社衛生管理手法に HACCP を取り入れ行っていた。また、彩の国 HACCP の優良施設に公認され、また埼玉県の評価を埼玉県民へ公表する制度を行っており、とても、透明性が高 いと感じた。これらのことより、パルシステム消費者の考え方と合致していると思う。 ・埼玉県酪農 100 名の内、26 名生産者を指定しパルシステム向けに供給している。生菌数の少ないクリー ンな原乳を厳選している。 2、生産方法・出荷基準等 ・良質な生乳生産者である酪農家 26 戸で構成されている。日々の細やかな飼育管理により生菌数の少ない 良質乳がクーラーステーションを経ず 24 時間以内に西武酪農乳業の工場へ直送される。 ・毎日ミルカー・バルククーラーの洗浄・消毒・バルククーラー乳温記録を記入している。 3、飼養管理について ・治療牛コード、最終治療日、出荷日、使用薬剤等参照できるよう整理保管している。 ・投薬による出荷停止期間は「動物用医薬品等の投与記録」により確認できた。 ・牛舎の入り口には石灰が撒かれており、手を消毒してから牛舎に入った。 「酪農家の牛乳」(埼玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」公開確認会 4、飼料及び飼料添加物について ・商品名・購入伝票・使用開始・終了年月日を飼料給与記録表に記入している。 ・飼料の多くは輸入されており、Non-GMO 不分別である。 ・牛舎の中と倉庫に飼料は保管している。 ・東日本大震災前はデントコーンを飼料用に栽培していたが、放射能検査の費用がかかるようになったこ とと、視察した酪農家の方によると、飼料を購入すると補填金が支給されることから、現在、飼料は栽 培せずに一部自給している。 5、糞尿処理及びその活用 ・たい肥は一部近隣農家で使用されているが、ほとんどは自家用である。 ・糞尿は牛舎内のコンベアで出され農地へ散布し敷き込まれたい肥化していたことを確認した。 ・確認を行った酪農家はたい肥化した糞尿は使用していないことを確認した。 6、生産の特徴や生産者の努力 ・衛生管理チェックシートにより、搾乳前後の清掃、搾乳機器の洗浄を行っていることが確認できた。 ・生産者の話から、現状では飼料自給率向上の取組みは難しいことがわかりました。 ・問題が酪農家で発生した場合は組合に連絡し、対応するというよい関係が、組合と酪農家でできている ことを口頭で確認した。 ・記録類が(チェックシート)を取っていない場合は、授乳を拒否できる契約になっていることを確認し た。 ・環境保全型資源循環型農業を目指している。 7、記録類について ・農場において搾乳時のバルクの乳温、ミルカー・バルクの洗浄の記録等、衛生管理チェックシートに適 切に記録され、9 年間保管されることを確認した。 ・公開確認した農場を含め 6 戸の酪農家の生乳をローリーで直接工場(西武酪農乳業)に運搬することを 確認した。 ・西武酪農乳業において受入時に検査を行い、基準に合っていることを確認したのち、受け入れることを 確認した。 ・貯乳についてもパルシステム専用のタンクで 6℃以下で貯乳されていることを確認した。 ・HTST 用生乳受入日報等で受入検査をしてろ過・冷却されていることが確認できた。 ・殺菌温度は 75℃で 15 秒で行われ、生乳が通るパイプの長さが 15 秒の長さであった。 ・HTST 製法のラインは、パルシステム専用のラインであることを確認した。 ・充填作業も機械化され、検査も金属探知機、ウエイトチェッカーも機械で流れ作業的に行われていた。 最後に充填させたパックを横に倒し、液漏れがないかを確認し出荷していることを確認した。 8、その他 ・東日本大震災により工場設備が破損したため、2011 年 3 月 3 回から 9 月 3 回まで供給できなかった。 ・震災以降、放射能汚染を考え、放牧はしない、自給飼料を使用しない、屋外に餌を置かないなどの対策 をいち早く行い、生乳においては、早くから放射能に対する対策を取っていたことを確認した。 ・震災以降風評被害で関東圏の牛乳の消費が落ち込み大変だったとの意見をきいた。パルシステムでも購 入量が減ったという事実を利用動向の説明を聞いて確認した。 監査人名簿 1 パルシステム埼玉 2 パルシステム埼玉 3 パルシステム埼玉 4 パルシステム埼玉 5 パルシステム埼玉 6 パルシステム生産者・消費者協議会 7 パルシステム連合会 組合員 組合員 組合員 組合員 組合員 生産者幹事 産直・商品活動部 青栁 岡部 里見 関口 渡辺 和田 高橋 則子 千鶴子 好美 幸子 正子 宗隆 英明 「酪農家の牛乳」(埼玉産地)「酪農家の低脂肪牛乳」公開確認会 ※ 監査シートの自由記載欄に記入いただいた内容を下記に掲載しました。 ・パルシステム埼玉に届く「酪農家の牛乳」 「酪農家の低脂肪牛乳」は埼玉県内で生産されており、牛乳にお いても地産地消がされています。さらに、品質の良い生乳(生菌数が少ない)を一般的には最短で 3~4 日 かかるとこを、2 日で届けられています。また HTST 製法(75℃15 秒殺菌)で牛乳に優しく製造しているた め、臭みのないおいしい牛乳になっています。低脂肪牛乳も脂肪を抜いただけで、余計なものは加えず牛 乳本来の味が残っており、他では飲めないおいしさです。また TPP、円安等が続く昨今、酪農を行ってい くのに、とても大変な状況であると公開確認会で実際に酪農家の話を聞き、鬼気迫る思いを感じました。 そのような状況の中でも、安心安全なものを作り私たち消費者に届けたいという思い、日本の農業に対し ての強い思いをもって下さっていることにとても感動しました。きっとこの気持ちがあればこそ、この大 変な状況でも酪農を続けていけるのだと思いました。普通の人であればきっと心が折れてしまいそう、と 私は思いました。 年々酪農家の数は減っており、このままでいくと、安心安全なおいしい牛乳を飲むことができなくなる日 が来るのではと恐怖を感じました。 私たち消費者はただ買うのではなく、これらのことを学習し、理解し、その上で買い支えていかなければ ならないと強く思いました。 * 「酪農家の牛乳」は雪印メグミルク野田工場でも製造されています。この西武酪農乳業㈱で製造されてい るのは、パルシステム埼玉およびパルシステム群馬にお届けしている分です。そのため、開催名に(埼玉産 地)と明記しています。 * 編集の都合で、加筆・修正している箇所があります。