...

報告書 平成28年2月

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

報告書 平成28年2月
資源エネルギー庁 平成27年度新エネルギー等導入促進基礎調査
国内におけるスマートコミュニティ普及動向に関する調査
報告書
平成28年2月
目次
はじめに ............................................................................................................................................................. 1
第1部 四地域実証の成果の事業別レビュー ............................................................................................... 2
I. 調査の概要 ................................................................................................................................................ 2
II. 需給調整用蓄電池の統合制御による周波数調整及び瞬動予備力供給技術(横浜市 CEMS:株
式会社東芝、東京電力株式会社) ................................................................................................. 4
III. 需要家側蓄電池の統合制御による日間需給調整(ピークシフト)技術:
(横浜市 CEMS:株
式会社東芝、東京電力株式会社) ............................................................................................... 11
IV. 需給制御を実現する新電力向けエネルギーマネジメントシステム技術(北九州市 CEMS:富
士電機株式会社) ........................................................................................................................... 16
V. 従来 BEMS を上回る省エネとピークカットを実現するスマート BEMS(横浜市 BEMS:株式
会社明電舎) ................................................................................................................................... 23
VI. 地域全体でのピークカットを実現するスマート SC 型 BEMS
(北九州市 BEMS:イオンリテー
ル株式会社) ................................................................................................................................... 30
VII. MEMS を活用したマンション向けエネルギーマネジメント技術(横浜市 HEMS:株式会社
東芝、三井不動産レジデンシャル株式会社) ........................................................................... 36
VIII. 太陽光発電電力を最大限有効活用する TEMS(Town EMS) に関連する技術(北九州市
HEMS:積水化学工業株式会社、三菱重工業株式会社) ........................................................ 43
IX. ダイナミックプライシングに応じて生産計画を組み替える多品種・小ロット製造業向け
FEMS 技術(北九州市 FEMS:富士電機株式会社) ................................................................ 50
X. 多様な公共交通の効率活用で渋滞緩和と環境負荷低減を実現する、交通及びエネルギー統合
管理システム(豊田市運輸:トヨタ自動車株式会社) ........................................................... 56
XI. 公共交通から目的地のラスト・ワンマイルを結ぶ超小型電気自動車シェアリングシステム
(豊田市運輸:トヨタ自動車株式会社)要旨 ........................................................................... 63
XII. 燃料電池自動車からの外部給電システム(北九州市運輸:本田技研工業株式会社) .......... 70
第2部 四地域実証の結果を踏まえた電気料金型ディマンドリスポンス(DR)の経済性分析 ........ 77
I. はじめに .................................................................................................................................................. 77
II. DR の費用便益分析のガイドラインと本調査における前提条件 ................................................... 78
III. 一般世帯を対象にした電気料金型ディマンドリスポンスの費用便益分析と試算結果............ 80
IV. 感度分析 ................................................................................................................................................ 85
V. まとめ ..................................................................................................................................................... 90
VI. 参考資料 ............................................................................................................................................... 93
はじめに
平成 23 年度~平成 26 年度の次世代エネルギー・社会システム実証事業(以下四地域実証)によ
り、電気料金の変動によるディマンドリスポンスで約 2 割のピークカットが可能であることの統計
的な確認、エネルギーマネジメントに資する技術や標準の確立等の成果が得られた。スマートコミュ
ニティの構築に向けた基盤技術は、確立されつつあると言える。
一方、事業化につながるビジネスモデルが確立されていない、エネルギービジネスを展開する事
業主体が不明確である等、実証されたスマートコミュニティ技術の自立普及について課題が指摘さ
れている。
本調査では、四地域実証の成果の中から、事業化への活用可能性の高い事業を発掘し、個別にそ
の展開の可能性をレビューする。この際、広義のビジネスモデルのなかでも特に運営スキームにつ
いての整理を通じ、スマートコミュニティ技術の自立普及の課題の所在を明らかにする(第1部)。
また電気料金型ディマンドリスポンスの経済性について、四地域実証の結果を踏まえた費用便益分
析を実施し、事業者によるディマンドリスポンス事業のあり方や政策の検討に資する知見を得る(第
2部)
。そして以上の成果のうち、海外の政策立案者や電力会社担当者への訴求性の高いメディアを
通じた公表に向け、海外の関連市場や政策への展開が見込まれると思われる内容について英文レ
ポートを作成する。
-1-
第1部 四地域実証の成果の事業別レビュー
I. 調査の概要
1.対象事業のスクリーニングについて
本調査では、四地域実証で行われた個別の実証事業について、事業の実現性及び社会基盤として
の価値の観点からスクリーニングを実施し、各部門(CEMS、HEMS、BEMS、FEMS(産業・その
他)
、運輸)から、合計 10 事業程度ピックアップした。
スクリーニングに当たり、一般社団法人新エネルギー導入促進協議会のウェブサイトに公開され
た四地域実証各年度の成果報告書、次世代エネルギー・社会システム協議会のウェブサイトに公開
された各地域の発表資料を基礎材料とした。この他必要に応じ、資源エネルギー庁の資料を用いた。
協議の結果、表 1 の 10 事業を事業別レビューの対象とした。補助事業者及び共同事業者とは、
資源エネルギー庁または事業者の事業場で表 1 の通りレビュー開始の面接(キックオフ会合)を実
施し、以降は電子メールまたは電話で内容確認等を進めた。
表 1 事業別レビューの対象
部門
地域
補助事業者
事業名
面接日時
横浜市
株式会社東芝
北九州市
富士電機株式会社
横浜市
株式会社明電舎
北九州市
イオンリテール株
式会社
商業施設における地域と連携したエネル
ギーマネジメントシステムの有効性検証
2015 年 11 月 11 日 10:00
横浜市
株式会社東芝
マンション向けエネルギーマネジメントシ
ステムの実証
2015 年 10 月 29 日 10:00
北九州市
積水化学工業株式
会社
CEMS と情報連携を行い協調できる HEMS
及び TEMS の実証
2015 年 10 月 27 日 16:30
北九州市
富士電機株式会社
生産計画を考慮した次世代 FEMS の検証
2015 年 10 月 22 日 15:00
豊田市
トヨタ自動車株式
会社
TDMS を介した交通需給制御の最適化と
EDMS 連携
豊田市
トヨタ自動車株式
会社
ワンマイルモビリティシェアリングを通じ
た次世代型末端交通システムの導入
北九州市
株式会社本田技術
研究所
燃料電池電気自動車からの V2H による電力
平準化効果の実証
CEMS
BEMS
CEMS②(蓄電池 SCADA)実証
地域節電所を核とした地域エネルギーマネ
ジメントシステムの構築(CEMS 開発、ス
マートメータ開発)
自動車用リチウムイオン電池技術を応用し
た定置用大型蓄電池システムの研究開発
(BEMS③)
2015 年 10 月 23 日 10:00
2015 年 11 月 6 日 10:00
2015 年 10 月 28 日 10:00
HEMS
FEMS
2015 年 11 月 5 日 13:00
運輸
2015 年 10 月 19 日 16:30
2.事業レビューレポートの目的等の整理
以上のスクリーニング作業を経て、本調査の目的は、四地域実証の優れた成果に基づくスマート
コミュニティの現実的な自立展開のオプションを提示し、様々なステイクホルダーにスマートコ
-2-
ミュニティの実現及び課題解決の方向性を示すこと、と再確認された。これに基づき、レポーティ
ングに当たっては、訴求先として自治体職員を含む政策担当者や今後電力ビジネスへの参入を検討
する各種事業者等、技術者ではない読者を想定することが再確認された。
よってレポートの分量については A4 サイズ 6 ページ程度とし、その内容は各事業成果を中心に、
実装されうるシステムとその機能の見通しを分析・整理することとした(表 2)
。
表 2 主なレポート構成と、内容及びとりまとめ上の配慮
項目
内容及びとりまとめ上の配慮
タイトル
「○○を実現する○○向け○○技術」のように、機能、ユーザー、技術の一般的呼称
が一読できるタイトルを作成した。
システムが解決を目指す課題を、社会的な意義のレベルで記述した(技術開発経緯を
一部含む。
)
。
四地域実証の成果の所在を明らかにしつつ、提案するシステムの構成と機能を示し
た。
従来の標準的な技術との性能(可能ならばコストも)を比較し、対象システムの特徴
を明らかにした。
ミニマムまたは標準的なシステム構成を前提に、想定される導入先、運営スキーム、
(可能であれば)導入事例、費用と効果、投資回収の見通し、普及の見通しとその課
題や普及条件を示した。
システムの目的・意義
シ ス テ ム構 成 及び 機
能
従来技術との対比
実 装 に 関す る 現状 と
方向性
3.レビューの実施方法
事業別レビューのフローを図 1 に示す。対象事業としての適否確認の後、本調査の受託機関であ
る三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(以下 MURC)が各種資料に基づきレビューの素案を作成
した。MURC はキックオフ会合までに、補助事業者にレビューの素案として、対象となる技術のシ
ステム構成、機能、及び想定される運営スキームを整理した。キックオフ会合では、補助事業者(及
び、補助事業者の判断に応じ、共同事業者)に素案内容について確認し、加筆・修正すべき内容や
その方針を調整した。その後は電子メール等で補助事業者に連絡をとりながら、MURC がレポー
ティングした。最終的には、補助事業者に対して文章の確認と公表可能な写真等資料の提供を依頼
し、内容を確定した。
図 1 事業別レビューのフロー
以上のプロセスの結果、
本調査では事業別レビューレポートを 11 編作成した
(横浜市 CEMS「CEMS
②(蓄電池 SCADA)実証」は、2 編のレポートに分割した。)
。その内容を以下に示す1。
1 それぞれのレポートは本報告書から単独で抽出され頒布等利用されることを想定している。このため用語説明や参
考文献等一部の内容が各レポート単位で設定され、全体としては重複があることを、ここであらかじめ注記する。
-3-
II. 需給調整用蓄電池の統合制御による周波数調整及び瞬動予備力供給技
術(横浜市 CEMS:株式会社東芝、東京電力株式会社)
要旨
 経済産業省次世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「横浜スマートシティプロ
ジェクト」における「蓄電池 SCADA 実証」を対象として、システム構成及び機能、従来技術
との対比そして実装状況について評価した。
 実証事業を通じ、蓄電池 SCADA 及び需給調整用蓄電池等で構成される本システムが、蓄電池
の集合仮想化機能により、従来の LFC システムと互換性を維持しつつ、短周期需給調整機能及
び瞬動予備力機能を発揮できることが明らかになった。
 本システムは負荷追従性能が高く、増設が容易なことから、再生可能エネルギー大量導入への
一般送配電事業者等の対応力の強化に貢献するものと期待される。
1.システムの目的・意義
株式会社東芝と東京電力株式会社は、平成 23 年度から平成 26 年度 4 年間に渡り、経済産業省次
世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「横浜スマートシティプロジェクト」(以下
横浜市実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、需給調整用蓄電池の統合制御による周波数
調整及び瞬動予備力供給技術(以下蓄電池 SCADA2(LFC3/SR4)
)の開発および実フィールドにお
ける本技術の実証を行った。
(1)再生可能エネルギー等の大量導入による周波数調整力の不足
太陽光発電や風力発電の出力は天候等により大きく変動する。経済産業省の次世代送配電ネッ
トワーク研究会(2010)は、太陽光発電等の大量導入に伴う電力系統上の課題の一つとして、数
分から 10 数分単位での需給ギャップの発生(周波数調整力の不足)を指摘している。この課題
を解消するためには、短周期の需給調整に適した電源の導入が効果的である。
蓄電池 SCADA(LFC/SR)は、分散配置された蓄電池を統合し、1 台の仮想発電機としての充
放電制御を可能にすることにより、効果的に LFC 調整力を提供する技術である。LFC 調整力不
足解消に向け、技術ソリューションの選択肢を増やすことを目的としている。
(2)系統事故による系統周波数の急激な低下
災害等により大規模な電源脱落事故が発生した場合、深刻な周波数低下が生じる。豊馬(2013)
によると、
2011 年 3 月の東北地方太平洋沖地震の際には、
東京電力管内で約 4 割(約 21,000MW)、
東北電力管内で約 4 割(約 5,300MW)の供給力が脱落し、系統周波数は約 1 分の間に 49.99Hz
から 48.44Hz へと急低下した。系統が即応周波数維持装置、負荷遮断及び運転継続発電所の出力
増によりこの事態に対応することで、発生から約 5 分後、系統周波数は 50Hz に復帰した。この
ように瞬動予備力は電源脱落対応として負荷遮断を最小限に抑えるという重要な役割を果たす
ものであり、蓄電池 SCADA(LFC/SR)は瞬動予備力としての供給資源の一つとして、技術ソ
リューションの選択肢を増やすことを目的としている。
2 監視制御装置(Supervisory Control And Data Acquisition)の略。
3 負荷周波数制御(Load Frequency Control)の略。電力系統で観測された、周波数や潮流の適正値からの偏差を、火
力発電所や水力発電所の出力制御によって補正する操作を指す。数分から 10 数分程度の周期で変動する負荷調整
を主に分担する。
4 瞬動予備力(Spinning Reserve)の略。ここでは特に、電源脱落時の周波数低下に対応して急速(10 秒程度以内)
に出力を上昇させ、他の待機水力発電が起動するまでの数分間、周波数の維持に役立つ電源を指す。
-4-
2.システム構成及び機能
本事業において東芝と東京電力が実証したシステムの基本構成は図 2 の通りである5。LFC 機能
を持つ上位 EMS の下で、蓄電池 SCADA が情報を管理することにより、配電系統に接続して分散
配置された複数の需給調整用蓄電池(横浜市実証では、出力 300kW/容量 100kWh、出力 100kW/
容量 100kWh、及び出力 250kW/容量 250kWh の計 3 基を配置した。
)を統合し、LFC 電源または
瞬動予備力として機能させる。
図 2 システムの構成と機能
本システムの主要な機能は以下の通りである。
(1)蓄電池の集合仮想化機能
蓄電池は、火力・水力発電よりも1台の規模が非常に小さく、充放電できる電力量に制約があ
る為、多くの蓄電池を統合・監視しながら制御する必要がある。本システムでは、異なるメーカー
の製造した蓄電池を統合した際にも、火力・水力発電と同様に制御できるよう、蓄電池 SCADA
が集合仮想化を実現している。これにより、上位 EMS は全蓄電池を一台の仮想発電機として扱
えるようになる。
5 東芝における LFC システムの設計コンセプト上、系統の周波数偏差を上位 EMS が利用することとなっている(江
幡他 2014a)。しかし横浜市実証では系統の周波数偏差を利用しなかったことから、本図では括弧で示している。
-5-
(2)短周期需給調整機能(LFC 機能)
上位 EMS は、電力系統の連系線潮流偏差や周波数偏差を検出し、補正に必要な出力変更量を
算出する。そしてこの算出結果に基づき、各周波数調整用電源と集合仮想化した蓄電池に要求出
力を割り当て、1 秒毎に LFC 指令値として発信する。LFC 指令値を受信した蓄電池 SCADA は、
それを各蓄電池にどう配分すべきかを算出して送信する。各需給調整用蓄電池は、割り振られた
LFC 指令値に従って配電系統に充放電することにより、系統の周波数を制御する。なお蓄電池の
特性上、充電量と放電量を同量にしても、充電量は低減していくことから、充電量を適正な範囲
に留めるために、電力系統から適宜補充充電を実施する。
各需給調整用蓄電池は、充放電状況や充電量を蓄電池 SCADA に送信する。蓄電池 SCADA は
これらを統合し、単一の集合仮想蓄電池としての LFC 余力を算出して、上位 EMS に送信する。
上位 EMS はこの結果に基づき、次の LFC 指令値を計算する。
(3)電源脱落時の一斉放電機能(瞬動予備力機能)
瞬動予備力機能では、まず各蓄電池について短時間出力(kW)、短時間出力可能時間、出力抑
制開始時間、出力終了時間を設定する。短時間出力では、蓄電池の通常運用時の最大出力を超え
る高レート放電を設定することが可能となっている。
オペレーターが緊急出力を指示すると、蓄電池 SCADA はまず短時間出力可能時間の間、短時
間出力(高レート)を維持しつつ放電を継続する。短時間出力可能時間終了後から出力抑制開始
時間までは、通常運用時の最大出力で放電を継続する。出力抑制開始時間から出力終了時間まで
は、線形に出力を減少させる。
3.従来技術との対比
(1)性能に関する比較
蓄電池 SCADA(LFC/SR)の短周期需給調整機能は、東芝と東京電力が 50 年以上に渡り蓄積
してきた電力系統技術、系統監視技術、制御技術、高速通信技術、計算機技術、システム技術の
応用成果として位置づけられている。本システムは、従来型電源を用いていた既存の LFC シス
テムと互換性があり、併用・リプレイスが可能である。横浜市実証では、これら従来型電源と同
様の操作の下で、同様の効果を発揮させることが目的の一つとされた。そこでは、蓄電池への電
力供給が 24 時間以上継続的に過剰または不足するケースなど、厳しい実証環境の下で、本シス
テムが想定通り機能するかどうかが試験され、問題なく運用できることが確認された。
また瞬動予備力機能については、電源脱落による瞬時周波数低下を想定した本システムの一斉
放電実験を実施し、水力・火力発電機の起動までの時間帯において、周波数維持に貢献できるこ
とが確認された。
この他、本システムは従来型電源と比べ、以下の特長を備えている。
① 負荷追従性能の高さ
第一に、蓄電池特有の負荷追従性能の高さが挙げられる。大規模な原動機の回転運動から電
力を得る火力・水力発電が様々な運転制約を抱え、火力発電でも負荷変化速度が 12MW/分程度
と言われている(電気事業講座編集委員会 2007)のに対し、蓄電池は化学反応から電力を得て
-6-
いることから、負荷変化速度は 1,400MW/分程度に達する6。
② 増設の容易性
第二に、本システムの増設の容易性が挙げられる。設置期間を見た場合、本システムは火力・
水力発電に比べ短期間で導入可能である。また容量については逐次増設が可能であり、再生可
能エネルギーの電力系統への接続量が漸増していく事態を想定した場合、本システムは従来型
電源以上に柔軟な対応力を生むものと期待される。
(2)導入コストに関する比較
40,000kW 規模の蓄電池 SCADA(LFC/SR)の導入費用を概算し、火力発電との対比を試みる。
蓄電池 SCADA の導入費用を 10 億円(江幡他 2014b)、需給調整用蓄電池の導入費用を 60 億円7と
すると、合計は 70 億円程度となる。
一方、電力取引監視等委員会(2015)資料から、一般電気事業者の水力・火力発電設備にかか
る固定費のうち周波数調整力の確保分に相当する額が計算できる(表 1)。40,000kW 規模では、
3.6 億~7 億円/年となる。蓄電池はメンテナンス費用が小さい為これを無視した場合、導入費用
は 10~20 年程度で回収できる試算となる。
以上の概算結果は比較条件が揃っておらず直接の比較はできないものの8、本システムは導入
コストの点において、既に従来技術と比べ遜色のないものであり、今後の蓄電池の長寿命化やコ
ストダウンによっては、電力系統への適用が大いに期待できる。
表 1 一般電気事業者の周波数調整コストのデータ
北海道電力
東北電力
東京電力
中部電力
北陸電力
関西電力
中国電力
四国電力
九州電力
沖縄電力
固定費(円/kW/年)
16,512
14,403
10,342
9,117
12,892
11,004
10,881
12,480
10,980
17,604
燃料費(円/kWh)
データなし
0.08
0.07
0.05
0.07
0.08
データなし
0.07
0.10
0.52
(資料)電力取引監視等委員会(2015)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の模式図を図
3 に示す。ここでは本システムの導入事業者として、調整力確保を義務付けられている一般送配
電事業者を想定している。
6 本システムでも採用されている東芝製リチウムイオン蓄電池 SCiB は、東北電力西仙台変電所での営業運転前の性
能確認試験において、30MW から 40MW への出力変更指示に 430ms で反応している(橋本他 2015)。
7 系統向けリチウムイオン蓄電池のシステム価格を 15 万円/kW と想定した(NEDO 2014)。
8 この概算には、法定耐用年数の差異や設備修繕費といった要素が含まれていない。また本来運用コストは重要な要
素となるが、比較のための条件設定が困難なため、これも含まれていない。
-7-
導入事業者は、本システムの設置・運用コスト、通信費、補償充電に係るエネルギーコストを
負担する。他方、火力・水力発電の維持費と運転に係る各種コストを回避できる他、容量の柔軟
性という便益を受ける。導入事業者は本システムの運用により、託送サービスの利用者である電
力小売事業者に対し、アンシラリーサービスとして周波数調整及び瞬動予備力を提供する。その
費用は託送費用のなかのアンシラリーサービス費として、電力小売事業者から支払われる。
そして社会全体としては、このような運用を通じ、再生可能エネルギー導入可能量の拡大とい
う便益を得ることとなる。
以上の検討では、日本の電力小売自由化後の制度設計を前提に、導入事業者を一般送配電事業
者としたが、調整力確保がどの事業者の義務となるのか、調整力確保費用をどの料金の原価に含
めることが制度として認められるのかにより、導入事業者や運営スキームは異なるものとなる。
通信
設備会社(蓄電
O&M会社(蓄電
事業者
池SCADA)
池SCADA )
通信
機器及
び設置
通信費
設置
コスト
容量の
柔軟性
(逐次
増設可
能)
運用
運用
コスト
アンシラリー
サービス
電力小売
一般送配電事業者
再エネ導入可
能量の拡大
事業者
アンシラリー
サービス費
増設投資
回避分
増設支出
回避分
設備会社(火力・
O&M会社(火
水力発電)
力・水力発電)
増設支出
回避分
補償充
電分
燃料供給
事業者
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者
支払フロー(実)
支払フロー(みなし)
図 3 運営スキームの一例
(2)事業性
本システムに係る投資回収の見通しは、周波数調整の義務がどの事業主体に課されるのか、そ
して対価をどの主体から徴収することが認められるのか等、導入エリアの制度設計に大きく依存
する。(1)で示したように、周波数調整の義務を負う事業者が直接導入し、その原価を託送費
用として回収できる場合は、所定の利益率の下での回収が保証されることから、導入事業者は説
明責任の範囲内で柔軟に、本システムに係る費用を許容できる。逆にエネルギーサービスプロバ
イダーとしての供給((3)③ に後述。)の場合では、振れ幅の大きい市場価格に基づく事業と
なるため、収益確保に向け運営スキーム上の様々な工夫が必要と考えられる。
-8-
(3)実装の見通し
再生可能エネルギーの大量導入により、従来型電源よりも反応特性に優れた周波数調整能力が
求められている電力系統へ蓄電池の導入が進みつつある9。東芝は横浜市実証以外に仙台市、ウォ
ルヴァーハンプトン(イギリス)で系統周波数調整の実証実験向けに定置型蓄電池を受注してい
る他、ハミルトン郡(アメリカ)では周波数調整市場向けの需給調整サービス事業用施設として
導入されている。このように蓄電池の導入が進むと、複数の蓄電池を集約して扱うニーズが生ま
れ、蓄電池 SCADA の導入に繋がると期待される。
① 仙台市
仙台市では東北電力株式会社が、再生可能エネルギーの普及拡大に伴う周波数変動対策の実
証実験が行われている。同社の中央給電指令所を上位 EMS として、蓄電池及び火力発電を併用
した自動周波数制御が実施される。この実証では周波数制御システムとしての機能の評価の他、
再生可能エネルギー導入拡大効果や蓄電池寿命の評価が計画されている(東北電力 2014)
。
② ウォルヴァーハンプトン(イギリス)
ウォルヴァーハンプトンでは、シェフィールド大学が政府系研究機関である工学・物理化学
研究委員会の助成を受け、配電会社のウェスタン・パワー・ディストリビューション社と連携
して実施する系統周波数調整用蓄電池システムの実証試験向けに蓄電池を受注している。ウィ
レンホール変電所に設置され、系統周波数調整に使用される計画である(東芝 2014)
。
③ ハミルトン郡(アメリカ)
総合商社の住友商事は、再生可能エネルギーディベロッパーのリニューアブル・エナジー・
システムズ・アメリカ及びウィリー・バッテリー・ユーティリティーとともに、東芝製の需給
調整用蓄電池を運用し、独立系統運用機関 PJM の運営する周波数調整市場向けに需給調整サー
ビスを実施することを計画している。主要設備はオハイオ州ハミルトン郡に設置される。住友
商事は、PJM 以外にもテキサス州やカリフォルニア州の市場への参画も検討している(住友商
事 2015)。
(4)実装に向けた課題
以上のように本システムのうち、需給調整用蓄電池については実装が進みつつある。今後の蓄
電池 SCADA の実装は、特性の異なる複数の需給調整用蓄電池が採用されるようになる、あるい
は需給調整用蓄電池が逐次増設される環境になってからと考えられる。
5.おわりに
以上のように、本システムは火力・水力発電を利用する既存の周波数調整・瞬動予備力システム
と高い親和性の下で、拡張の柔軟性及び応答性能に優れた機能を提供する技術であり、国内外への
普及が期待されている。特に再生可能エネルギー導入量の増加が、より応答性能の高い周波数調
整・瞬動予備力機能を要求する場合、本システムの競争力は高まると考えられる。本システムを基
礎とする更なる技術改良は、離島でのスマートグリッド構築や、配電系統における電圧上昇対策に
も応用できると期待されている。
9 下記の事例において、蓄電池 SCADA は実装されていない。
-9-
参考文献
NEDO 2014:NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第 2 版.2014 年 2 月.
江幡他 2014a:江幡良雄,磯谷泰知,磯野英里,山下恒友,林秀樹.蓄電池 SCADA による蓄電
池の仮想集合化と LFC 実証試験.平成 26 年度電気学会電力・エネルギー部門大会予稿集.
2014 年 9 月.
江幡他 2014b:江幡良雄,磯谷泰知,磯野英里,山下恒友,中村朋之,横山清志.穏やかなデマ
ンドレスポンスのビジネスモデルと実証試験.平成 26 年度電気学会電力・エネルギー部門大
会予稿集.2014 年 9 月.
次世代送配電ネットワーク研究会 2010:低炭素社会実現のための次世代送配電ネットワークの
構築に向けて.2010 年 4 月.
豊馬 2013:東日本大震災によるエネルギー供給インフラ設備の被害状況電気設備地震対策WG
報告書の概要.2013 年 2 月.
住友商事 2015:住友商事、米国北東部で東芝製大型蓄電池による電力需給調整事業に参画.住
友商事プレスリリース,2015 年 4 月.
電気事業講座編集委員会 2007:電力系統.電気事業講座,第 7 巻.2007 年 2 月.
電力取引監視等委員会 2015:調整力コストについて.電気料金審査専門会合(第 7 回),資料 5.
2015 年 10 月.
東芝 2014:英国シェフィールド大学の系統周波数調整実証試験向けに蓄電池を受注.東芝プレ
スリリース,2014 年 6 月.
東北電力 2014:西仙台変電所周波数変動対策蓄電池システム実証事業.平成 24 年度大型蓄電
システム緊急実証事業進捗概要報告.2014 年 3 月.
橋本他 2015:橋本竜弥,川俣智幸,島田和義.東北電力(株)西仙台変電所大型蓄電池システ
ムの運転開始.東芝レビュー,Vol.70,No.9.2015 年 9 月.
発電コスト検証 WG 2015:長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に
関する報告.2015 年 5 月.
- 10 -
III. 需要家側蓄電池の統合制御による日間需給調整(ピークシフト)技術:
(横浜市 CEMS:株式会社東芝、東京電力株式会社)
要旨
 経済産業省次世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「横浜スマートシティプロ
ジェクト」における「蓄電池 SCADA 実証」を対象として、システム構成及び機能、従来技術
との対比そして実装状況について評価した。
 実践的なディマンドリスポンスシナリオの下、蓄電池 SCADA、集配信システム及び複数の需要
家側蓄電池等で構成される本システムが、蓄電池の集合仮想化機能により、需要家に節電を求
めることなく、実効性の高いディマンドリスポンス機能を発揮できることが明らかになった。
 需要家側蓄電池の導入とディマンドリスポンスの制度化が進めば、需要ピーク向け火力発電の
容量削減や、再生可能エネルギーの系統への導入可能量増大に貢献するものと期待される。
1.システムの目的・意義
株式会社東芝と東京電力株式会社は、平成 23 年度から平成 26 年度 4 年間に渡り、経済産業省次
世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「横浜スマートシティプロジェクト」(以下
横浜市実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、需要家側蓄電池の統合制御による日間需給
調整(ピークシフト)技術(以下蓄電池 SCADA10(DR))の開発および実フィールドにおける本
技術の実証を行った。
(1)再生可能エネルギー等の大量導入による余剰電力の発生
太陽光発電や風力発電の出力は天候等により大きく変動する。経済産業省の次世代送配電ネッ
トワーク研究会(2010)は、太陽光発電等の大量導入に伴う電力系統上の課題の一つとして、軽
負荷期にベース供給力等と太陽光発電の合計発電量が需要を上回る(余剰電力の発生)可能性が
あることを指摘している。この課題を解消するためには、数時間単位での日間需給調整に適した
負荷調整機能を導入する必要がある。
蓄電池 SCADA(DR)は、分散配置された需要家側蓄電池を統合し、1 台の仮想蓄電池として
の充放電制御を可能にすることにより、効果的にピークシフト機能を提供する技術である。余剰
電力解消に向け、技術ソリューションの選択肢を増やすことを目的としている。
(2)ディマンドリスポンスへの需要家参加率の問題
ディマンドリスポンス(DR)は、電力系統におけるピークシフトの観点から期待の高い仕組
みであるが、需要家側のヒューマンファクターが関与していることもあり、系統運用者の立場か
らするとどの程度まで供給力として信頼できるのか、定かとは言えない状況にある。
蓄電池 SCADA(DR)は、需要家側蓄電池の余力だけを利用することで、需要家側の負担を軽
減し、ディマンドリスポンスの実効性を高め、結果として電力会社が保有するピーク電源の設備
量削減に繋げることを目的としている。
2.システム構成及び機能
本事業において東芝と東京電力が実証したシステムの基本構成は図 2 の通りである。DR 機能を
持つ上位 EMS の下で、蓄電池 SCADA が集配信システムを介して情報を管理することにより、電
力系統に接続して分散配置された複数の需要家側蓄電池
(横浜市実証では、
出力 22kW/容量 45kWh
10 監視制御装置(Supervisory Control And Data Acquisition)の略。
- 11 -
を 1 台、出力 5kVA/容量 8.4kWh を 3 台、配置した他、500 台以上の需要家側蓄電池を模擬できる
シミュレータを設置した。
)を統合し、ピークシフトリソースとして機能させる。集配信システム
はインターネットに接続し、需要家側蓄電池の利用計画や余力等の情報を収集し、蓄電池 SCADA
からの指令を配信する。
①貢献可能容量要求
②計画送信
③実施通知
上位EMS
(CEMS)
①蓄電池利用計画要求
②計画送信及び許諾確認
③実施通知
①貢献可能容量
②充放電計画
③充放電実施状況
需給調整
指令
蓄電池
集配信
SCADA
システム
充放電計画、
電池情報、
許諾返信
需要ピーク用
充放電計画、
電池情報、
許諾返信
電源(火力)
①蓄電池利用計画要求
②計画送信及び許諾確認
③実施通知
電力供給
下位EMS
下位EMS
(HEMS、BEMS)
(HEMS、BEMS)
電力系統
充放電制御
充電
充放電制御
需要家側
蓄電池
需要家側
充電
蓄電池
放電
電力供給
放電
需要機器
電力供給
需要機器
凡例
システム構成要素
情報
制御・要求
電力
図 4 システムの構成と機能
本システムの主要な機能は以下の通りである。
(1)蓄電池の集合仮想化機能
蓄電池は充電と放電の両方の機能を持つ。系統運用者が、蓄電池容量を制御できるようになる
ことは、揚水発電所が増設されたことに相当する意味がある。しかし現実的には、揚水発電所に
比べ、蓄電池は1台の規模が非常に小さく、充放電できる電力量に制約がある。系統運用上意味
のある量を確保するためには、多くの蓄電池を統合・監視しながら制御する必要がある。本シス
テムでは、異なるメーカーの製造した蓄電池を統合して運用できるよう、蓄電池 SCADA(DR)
が集合仮想化を実現している。これにより、上位 EMS は多数の蓄電池を、一台の巨大な仮想蓄
電池として扱えるようになる。
(2)穏やかなディマンドリスポンス機能
蓄電池 SCADA(DR)の最大の特徴は、DR に際し需要家側の蓄電池の余力を利用する点にあ
る。需要家側の最終電力需要に影響を与えないことから、蓄電池が DR に参加できる可能性、実
施において計画通りの容量が確保できる可能性の向上が期待できる。
- 12 -
上位 EMS は蓄電池 SCADA(DR)から得た貢献可能容量に基づき充放電計画を策定する。蓄
電池 SCADA(DR)はその計画を個々の需要家側蓄電池に割り当て、需要家側の参加許諾を確認
する。上位 EMS はこの許諾に基づき、蓄電池 SCADA(DR)による DR を実施する。
3.従来技術との対比
(1)蓄電池の集合仮想化
横浜市実証において、蓄電池 SCADA(DR)はシミュレータを含め約 500 戸の需要家側蓄電池
を統合し、一体として DR 用に運用することに成功している。系統運用側は蓄電池 SCADA(DR)
により、需要家の持つ蓄電池の余剰分のみを集約し、運用計画に利用できることが実証された。
ピークシフト、ピークカットと言った一日を通じた需給バランスの調整に対する有効性は十分で
あると言える。
(2)穏やかなディマンドリスポンス機能
蓄電池 SCADA(DR)に裏付けられた穏やかなディマンドリスポンス機能が実際に機能するか
どうかについて、横浜市実証では実需要家を対象に 39 回 178 時間帯の DR を実験し、その実現
率(=DR 実績合計(kW)/系統側からの要求量の合計(kW))を検証したところ、97%という
結果が得られた11。また系統全体の蓄電池導入量に対する実現可能な日間需給調整量は、この実
証から蓄電池導入量 1MW あたり 2.3 時間×100kW と推定されている。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の模式図を図
3 に示す。ここでは本システムの導入事業者として、供給力を保有する発電事業者を想定してい
る。
導入事業者は、本システムの設置・運用コスト、通信費を負担する。他方、経年火力発電の維
持費と運転に係る各種コストを回避できる。導入事業者は本システムの運用に関し、系統運用者
からは DR 対価を受け取り、家庭・民生需要家に蓄電池の使用量を支払う。この際家庭・民生需
要家側では、DR のために充電した際の追加コストが発生している。
小売事業者は、図 3 では家庭・民生需要家に充電用電力を供給しているだけに見える。しかし
後述するような規模で、家庭・民生需要家の参加協力を得るためには、小売事業者とのパートナー
シップは不可欠と考えられることから、ここでは直接の関与者に含めている。
そして社会全体としては、このような運用を通じ、再生可能エネルギー導入可能量の拡大や
ピーク電源量削減に伴う電気料金の低減という便益を得ることとなる。化石燃料の消費量や CO2
については、ピーク電源の性質及び補充充電に利用される電源の性質に依存する。
11負荷予測が実際と異なり、DR 実施時に対応できなかった蓄電池が発生することで、実現率は低下する。
- 13 -
通信
事業者
通信
設備会社(蓄電
O&M会社(蓄電
池SCADA_DR
システム)
池SCADA_DR
システム)
蓄電池
SCADA_
DRシステ
ムの設置
蓄電池
SCADA_
DRシステ
ムの運用
設置
コスト
通信費
系統運用者
運用
コスト
DR実施
DR対価
系統安定化
発電事業者
再エネ導入可
蓄電池 能量の拡大
使用料
容量提供
家庭・民生
需要家
充電電力
火力発電関連投
資削減分
火力発電関連支
出削減分
設備会社(火力
O&M会社(火力
発電)
発電)
火力燃料
削減分
電気料金
(燃料/電力消費増)
小売事業者
燃料供給
事業者
(CO2増)
燃料/電力消費削減
CO2削減
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者・パートナー
支払フロー(実)
本システムの最終利用者
支払フロー(みなし)
図 5 運営スキームの一例
(2)事業性
江幡他(2014)は、穏やかな DR のみで 20 万 kW の経年火力発電所 1 基を代替するケースに
ついての試算を示している。ここでは石油火力の年間維持費を 7,000 円/kW、穏やかな DR が 4
時間×25 回/年、20 万軒の需要家が 10kWh の蓄電池を自費購入12し容量の 40%程度で穏やかな
DR に対応、発電事業者が蓄電池 SCADA(DR)導入費用 140,000 万円を負担し 10 年で償却、発
電事業者の通信費は 1,000 万円/年という条件の下、蓄電池からの放電が 1kWh あたり 62.5 円ま
での蓄電池使用料であれば、発電事業者にとってメリットが生じうるとしている。実際に 2014
年度の JEPX スポット取引における電力取引価格(システムプライス)の最高値が 44.61 円/kWh
であった(JEPX2014)ことを考慮すると、江幡他(2014)の蓄電池使用料の上限値は、日間需給
調整のコストとしては余裕のある水準と言え、条件が整った際には事業性が確保できるものと期
待される。
他方、江幡他(2014)の計算には、実際に 20 万軒の参加者を募るための営業費用が含まれて
おらず、他の小売ビジネスとの適切な組み合わせがなければ、事業性は計算よりも悪化すると考
えられる。
12 余力の活用を前提としているため、発電事業者側が設置コストを負担しないものと仮定している。
- 14 -
(3)実装の見通しと課題
現在のところ、蓄電池 SCADA(DR)の導入例はない。本システムの実装が進むためには、家
庭用蓄電池が数 100 万軒規模で普及していることが必須であり、
これが大きな課題となっている。
DR の制度化は、関連事業者の事業の不確実性を低減するものとして機能すると考えられる。
5.おわりに
本システムは、小規模な需要家側蓄電池の、系統運用への活用を可能とした点において、画期的
なものと言える。蓄電池普及後の社会において、その真価を発揮する場が拡大するものと期待され
る。
参考文献
JEPX2014:平成 26 年度(2014 年度)スポット取引結果.
江幡他 2014:江幡良雄,磯谷泰知,磯野英里,山下恒友,中村朋之,横山清志.穏やかなデマ
ンドレスポンスのビジネスモデルと実証試験.平成 26 年度電気学会電力・エネルギー部門大
会予稿集.2014 年 9 月.
次世代送配電ネットワーク研究会 2010:低炭素社会実現のための次世代送配電ネットワークの
構築に向けて.2010 年 4 月.
- 15 -
IV. 需給制御を実現する新電力向けエネルギーマネジメントシステム技術
(北九州市 CEMS:富士電機株式会社)
要旨



北九州市地域実証の事業「地域節電所を核とした地域エネルギーマネジメントシステムの構
築」を対象として、システム構成及び機能、従来技術との対比、実装に関する現状と方向性
について評価した。
その結果、CEMS や蓄電池等から構成されるシステムが、新電力(PPS)等の事業者に対し需
給制御等の機能を発揮することで、計画値同時同量もしくは実同時同量の責務を達成しやす
くするといった便益を生み出す可能性があることが明らかになった。
この技術は今後、PPS のアグリゲータビジネス等への展開や、発展途上国の工業団地における
グリッドの電力品質安定化等へ貢献することが期待される。
1.システムの目的・意義
富士電機株式会社は、平成 22 年度から平成 26 年度の 5 年間に渡り、経済産業省の次世代エネル
ギー・社会システム実証事業の一つである「北九州スマートコミュニティ創造事業」(以下北九州
市実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、CEMS(Community Energy Management System)
の開発および実フィールドにおける効果の実証を行った。
(1)電力市場における同時同量達成への要請
電力の小売全面自由化により、今後、多くの新電力(PPS)が電力市場へ参入していくことが
予想されている。PPS は、顧客(需要家)に電力を供給する際に計画値同時同量もしくは実同時
同量の責務13を負うため、需要家の電力需要に応じた電力を供給可能しなければならず、自社所
有の発電設備のほか、様々な事業者や電力卸売取引市場から電力を調達することが求められる。
一方、需要側のマネジメントであるデマンドレスポンス(DR)により負荷を平準化すれば、確
保しなければならない発電容量を削減させることが可能となる。
CEMS は、
こうした PPS への要請に対応し、様々な電源からの電力調達及び DR の実施により、
コスト面等で最適な需給調整を行うことを目的とするシステムである14。
(2)再生可能エネルギーが導入された独立系統における電力品質確保の要請
日本を含め世界には無数の有人離島が存在し,その多くは独立系統により電力が供給されてい
る。離島の独立系統では、化石燃料が不要な再生可能エネルギーを離島に大量導入することが環
境負荷の低減と経済性の両面を解決するものと考えられている。しかし,再生可能エネルギーの
大量導入は電力系統の電力品質や供給信頼度の低下を招き,導入にはこれらを解決するための対
策が必須である。
これは、離島に限られた課題ではなく、発展途上国においても、あるいは、日本国内本土にお
いても、今後、特定の地域グリッドに大量の再生可能エネルギーが導入される可能性があり、離
島と同様に、再生可能エネルギー大量導入時の独立系統における電力品質の維持と供給信頼度の
13 計画値同時同量とは、実際に電力の消費が行われる一時間前の発電(供給)計画量と需要計画量を一致させるこ
と。この場合、計画と実績の差分は、発電側、需要側それぞれにおいてインバランス料金として清算される。実同
時同量は 30 分ごとの需要量と供給量の差を±3%以下に抑えること。この場合、需要と供給の差分がインバランス
料金として清算される。新電力については、当面、計画値同量と実同時同量の選択制となる。
14 同システムは、再生可能エネルギーを多く活用することにより、低炭素という面で最適な需給調整を行うように
設定することも可能であり、CO2 削減にも貢献できる。
- 16 -
確保のための対策が求められる。
CEMS は、再生可能エネルギーが導入された系統において、太陽光発電や風力発電の発電量と、
地域の需要を予測し、発電機運転計画や電力貯蔵装置の充放電制御により、コスト面等での最適
需給運用を行うほか、対象グリッドにおける電力品質を制御すると同時に、上位系統への負荷を
低減することを目的とするシステムでもある。
2.システム構成及び機能
(1)新電力を想定したシステムにおける機能
新電力が導入することを想定したシステムに実装される機能として、主に、需給制御機能及び
ダイナミックプライシング/インセンティブプログラム(DP/IP)15機能が挙げられる。
① 需給制御機能
需給制御は、大きく予測機能と制御機能に分けられる。予測機能には、電力需要予測、再生
可能エネルギー出力予測の機能が含まれる。
また制御機能としては、需給運用計画、経済負荷配分制御、負荷周波数制御、同時同量制御
が挙げられる。いずれも、需要予測、再生可能エネルギー出力予測結果を活用し、各機能が設
定する目標に応じて、発電設備や蓄電設備を制御あるいは制御のための計画策定を行う機能で
ある。
i) 需給運用計画
需給運用計画は、需要・再生可能エネルギー出力予測結果を活用し、対象系統に存在する発
電機の起動停止・出力や蓄電池の充放電制御を計画するものである。本機能による制御目標は、
低コスト、低炭素、ピークカット・ピークシフト等、状況に応じて変更できる。
ii) 経済負荷配分制御
常に負荷と発電電力の合計とを等しく保ちながら、経済的な観点から最も発電コストが安く
なるように各発電機の出力を決定する機能である。送配電エリアと時間帯を設定し、その需要
予測値から、再生可能エネルギー出力予測値や蓄電池充放電量等を控除し、制御可能な発電機
の総発電量及び購入すべき電力調達量を計算する。
iii) 負荷周波数制御機能
系統電力側での周波数制御の負担を軽減するために、系統との連系点潮流を予め決められた
値の範囲で制御することを目的に、負荷周波数制御が対象とする発電機や蓄電池の出力を制御
する機能である。
iv) 同時同量制御
同時同量を順守するように発電機及び蓄電池を制御する機能である。
15 ダイナミックプライシング(DP)とは、電気料金単価を季節別・時間帯別に変化(静的/動的)させることで、
料金単価をトリガーに需要家の行動を変化させる手法を言う。インセンティブプログラム(IP)とは、コミュニティ
にとってプラスとなる行動をとった際にポイントを付与する等により、需要家の行動を変化させる手法を言う。
- 17 -
② DP/IP 機能
CEMS は、上記予測機能や需給運用計画機能等を活用し、需要家側の各 EMS(HEMS、BEMS)
と DP/IP 情報や需給運用計画等の受け渡しを行う機能を備えている。
具体的な受け渡しの手順は次の通りである。まず、CEMS 側から気象データや DR 料金テー
ブルを下位 EMS に送り、下位 EMS 側に運用計画を策定、フィードバックさせる。さらに、CEMS
側は、気象データを基にした再生可能エネルギー出力予測値及び下位 EMS よりフィードバック
された運用計画等の情報から地域全体の需給運用計画を策定し、それに基づき新たな DR 料金
テーブルを下位 EMS に再送する。各 EMS は、運用計画を見直すとともに、DR 情報に基づき、
負荷や蓄電池の制御や、住民や事業主等への DP/IP 情報の送信といった手段をとる。
( DP/IP機能)
負荷 蓄電池
FEMS
負荷
負荷
BEMS
需給計
画等 需給計
画等
DP/IP
情報
蓄電池
蓄電池
HEMS
DP/IP
情報等
需給計
画等
DP/IP
情報等
発電量等情報
CEMS
上位系統
調達要請
他電源
発電量
制御
発電設備
PV
制御
蓄電池
負荷
負荷
(需要家)
(需要家)
( 需給運用計画、経済負荷配分機能、負荷周波数制御機能、同時同量制御機能)
凡例
システム構成要素
情報
制御
電力
図 6 新電力を想定したシステム構成の一例
(2)その他の機能
上記機能のほか、北九州市実証にて検証され、同システムに実装可能な機能として以下が挙げ
られる。
① 電圧制御機能
電圧制御機能は、系統電圧が設定された上下限範囲に収まるように、各種実測値(負荷、設
備状態等)から CEMS 配下で電圧制御の対象となる各種設備(蓄電池、各種電圧調整装置)の
制御指令値を計算し、制御を指令する機能である。
② 自立運転機能
災害時等の長時間停電を想定し、自立運転系統内の需給制御を、CEMS が各機器(蓄電池、
- 18 -
太陽光発電、燃料電池、需要機器)の計画的制御により実現する機能である。
(資料)富士電機提供資料
図 7 CEMS(現地設置のもの)
3.従来技術との対比
前述したシステムの様々な機能の基盤となる技術として、予測技術が挙げられる。電力需要及び
太陽光・風力発電量に関する予測が正確でなければ、上記システムは有効に機能しない。これらの
予測技術は、本実証において以下に示すように改善され、予測結果に基づく制御(需給運用計画、
経済負荷配分制御、負荷周波数制御、同時同量制御)が有効に機能することが確認された。
電力需要予測に関しては、本実証の中で、データマイニング・ビッグデータの分析手法が取り入
れられ、日負荷曲線予測システムが高度化された。需要家特性がデータ化・定式化されたことによ
り、翌日の気象予測等のパラメータを活用して、各需要家の電力使用量を自動的に予測することが
可能になった。図 8 に「
『数値』気象予報」とあるように、晴れや曇りといった質的情報ではなく
気温、湿度、雲量といった量的情報を活用できるようになったことで、本システムでは太陽光発電
量等の正確な予測が可能となった。
1990
2000
▲ポイント予報
(3時間毎の予報)
外部環境
の変化
電力需要
予測
日最大予測 日負荷曲線予測
水力発電予測
(流入量予測)
再生可能
エネルギー
発電予測
2010
▲データマイニング・ビッグデータの発展
▲数値気象予報
日負荷曲線予測
(入力因子の自動選択)
風力発電予測
太陽光発電予測
(資料)富士電機提供資料
図 8 予測技術の開発経緯
- 19 -
4.実装に関する現状と方向性
CEMS の導入主体としては、主に PPS 等の電力小売事業者や小規模 IPP 等 が想定される。ここ
では、PPS を想定した運営スキーム及び事業性について説明する。
(1)運営スキームの例
図 9 は、主として、地域 PPS 等の電力小売事業者を想定した運営スキームを示したものであ
る。なお、この地域 PPS は、CEMS の他、発電設備及び蓄電設備を保有するとともに、必要に応
じ、他の自家発余剰電力や電力卸売取引所から電力を調達することを想定している。
地域 PPS は、需要家に電力を販売するわけであるが、電源を保有している場合、CEMS の需
要コントロール機能による負荷平準化・予備力削減効果によって、発電設備削減/小型化が図れる
というメリットが生じる。さらに、経済負荷配分機能を活用し、自家発余剰電力や電力卸売取引
所等より必要な電力を低コストで調達することが可能になる。
また、CEMS を保有する地域 PPS は、需給制御機能及び DR 機能を活用し、需要家への DR の
要請や関連情報提供を行うことにより、需要家にネガワットを創出させ、アグリゲーターを通じ、
それを獲得することが可能となる。
地域 PPS は、顧客に電力を供給する際に計画値同時同量もしくは実同時同量の責務を負い、達
成されなかった場合は、託送契約を締結している送配電事業者に対しインバランス料金を支払う
ことになるが、CEMS を導入した PPS は、ネガワットの獲得や CEMS の有する需給計画・同時
同量制御機能の活用により同時同量の責務が達成しやすくなるため、このインバランス料金を削
減することが可能となる。
地方自治体
補助金等
一般送配電事業者
インバランス
料金削減
地域付加価値増大
(再エネ地産地消)
同時同量
需給計画・同時同量制御機能
電力小売事業者(地域PPS):CEMS及び発電設備・蓄電設備保有
需給計画・経済負荷配分機能
供給力に
合わせた
電力調達
初期費用、
O&M費用
システム
の設置、
O&M
設備会社等
(システム)
需給計画・DR機能
電力
供給
対価
アグリゲーター
電力調
達コスト
削減
電気
料金
自家発余剰電力、
電力卸売取引所
対価
需要家
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者・パートナー
支払フロー(実)
関連機能
ネガワット供給
支払フロー(みなし)
図 9 運営スキームの一例
- 20 -
ネガワット供給
(2)事業性
本システムを利用する事業の基本的な収入源は、電力小売によって得られる電気料金である。
これにインバランス料金の削減効果、経済負荷配分機能による電力調達コストの削減効果が加わ
ることにより、収益を増大することが可能となる。
この他、地域内での電力の自給自足を政策的に重視する地方自治体とパートナーを組むことが
できれば、本システムの活用により、地域内で生産される再生可能エネルギーを優先的に利用す
ることに対する公的補助の可能性や、公共施設に対する長期的な電力供給契約を獲得する可能性
が生まれる。地域内でのきめ細やかな需給制御が、地域にとって従来以上の価値を生む場合、本
システムはそれを具体化することによって事業性を改善できるプラットフォームとなっている。
本システムの導入規模としては、最小で需要家数 200 軒程度と考えられている。電力供給
6,000MWh/月、ピーク需要 30M として需要家数 200 軒に電力を供給する際の CEMS 導入費用を 1
億円、CEMS 運用・維持管理費用を 2 千万円/年と仮定し、電力収入の他、インバランス料金削減、
平滑運転による燃料費削減、ネガワット収支、予備力削減による減価償却費削減を試算すると、
5 年程度で初期投資を回収できるという結果になるケースもあった(図 10)。
230
(百万円)
180
130
80
30
-2
-4
-6
-9
-11
7
25
43
61
79
97
114
132
150
224
202 213
190
168 179
-20
費用:CEMS減価償却費(5年)
費用:CEMS運用・維持管理費
収入:ネガワット収入
収入:インバランス料金削減分
収入:平滑運転による燃料費削減分
収入:予備力減価償却費(15年)削減分
累積収支
(資料)富士電機提供資料に基づき三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成
図 10 収支計算例
(3)実装の見通し
株式会社エナリスは、実同時同量管理、需要家ごとの需要予測、発電計画の策定等の機能を有
する需給管理システムをすでに導入しており、自社の事業に活用するとともに、PPS 向けに、同
システムを活用した需給管理を行うサービスを展開している。但し、今後、新電力事業の事業性
をさらに高めていくためには、本システムのようなより多くの機能を有する CEMS が実装されて
いくことが期待される。
また、CEMS の有する電力品質安定化機能は、発展途上国のように停電が多く電力供給が不安
定な地域では付加価値として認識されやすく、需要家に対して、電力料金に上乗せする形でサー
- 21 -
ビスを提供することが可能である。このことを踏まえると、発展途上国の工業団地のデベロッ
パーに対する、本システムの導入を提案することが考えられる。なお、この場合の導入側事業者
のビジネスモデルとしては、前述の PPS モデルと比べ、電力品質サービスに重点を置いたものが
想定される。具体的には以下のようなモデルが考えられる:
・系統電力を一括受電し、CEMS の制御による高品質な電力を配下の工場(需要家)に安定供
給するビジネスとする;
・グリッドには、再生可能エネルギー発電設備及び大型蓄電設備を導入する、そして;
・配下の工場に FEMS を導入し、CEMS と連携した需給調整により、負荷平準化を図る。
このモデルは国内展開を想定した PPS 向けのモデルと比べ、導入規模やシステム構成の異なるも
のになると考えられるが、基本機能や運営思想は本システムから得られたものと言える。既に富
士電機株式会社は、
インドネシアの工業団地に対して EMS 導入に関連する事業を展開しており、
今後、本システムを用いた海外への EMS 導入事業の展開が期待される。
(4)実装に向けた課題
CEMS の価値が強まり、CEMS が本格的に普及するための条件としては以下が挙げられる:
・電力システム改革が順調に進み、各種制度が整備されていくこと;
・再生可能エネルギーが大量に導入され系統安定化ニーズが高まること;
・電力調達の際に取引所から多くの電力を調達することが浸透すること、そして;
・下位 EMS が普及していること。
こうした条件が整えば、CEMS を導入した PPS のビジネスモデルが成立・普及するとともに、新
たなビジネスモデルが生まれる可能性も高まる。例えばネガワット取引制度が確立し取引が活性
化すれば、本 CEMS の機能を最大限活用し、アグリゲーターとして複数の需要家のネガワットを
集め、それを系統運用者や電力卸売取引所等に販売し、大きな収入源とすることも期待される。
5.おわりに
本システムは、電源の売買の必要性が高まり、様々な取引の可能性が増大した時、その真価が発
揮される。電力自由化がさらに進展することに伴い、本システムが活用される場面も増えていくと
期待される。
- 22 -
V. 従来 BEMS を上回る省エネとピークカットを実現するスマート BEMS
(横
浜市 BEMS:株式会社明電舎)
要旨
 横浜市実証の事業「自動車用リチウムイオン電池技術を応用した定置用大型蓄電池システムの
研究開発」を対象として、システム構成及び機能、従来技術との対比そして実装状況について
評価した。
 その結果、需要予測に基づき、エネルギー供給機器を統合最適制御することによって、従来の
見える化と個別制御を前提とする BEMS では到達できない省エネルギーやピークカットを実現
できる可能性があることが明らかになった。
 この技術は今後、ディマンドリスポンスに関する市場整備に伴う導入拡大展開や、複数施設の
最適運用、適用できる施設対象の拡大等の技術的進展が期待される。
1.システムの目的・意義
株式会社明電舎は、平成 23 年度から平成 26 年度の 4 年間に渡り、経済産業省次世代エネルギー・
社会システム実証事業の一つである「横浜スマートシティプロジェクト」(以下横浜市実証)にお
いて、以下に掲げる目的・意義の下、従来 BEMS を上回る省エネとピークカットを実現するスマー
ト BEMS に関する実証を行った。
(1)業務用施設における一層の省エネルギー
業務用施設では、従来から BEMS の導入をはじめ様々な手法による省エネルギー化が進められ
ているが、低炭素社会の実現のために今後さらなる省エネルギー・CO2 削減が求められている。
しかしながら、新築建設物(非住宅)における省エネ判断基準適合率16は近年約 9 割と高水準と
なっており、また新設数にも限りがある(国土交通省 2015)。一方、既存業務施設では、省エネ
ルギー化が必ずしも進んでいない場合が多く、またすでに分散型電源が導入されている施設にお
いても施設全体の省エネルギーに資する運転がされていない場合がある。さらに、電子情報技術
産業協会(2015)は、今後改修される既築建物が新設数を大きく上回ると予想しており、既築建
物の省エネルギーの余地が大きいといえる。
スマート BEMS は、新設建物だけでなく既築建物も導入対象とし、業務用施設における分散型
電源を最適制御することで、省エネルギーを実現することを目的としている17。
(2)ディマンドリスポンスへの対応
東日本大震災におけるエネルギー供給の制約や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、ディマ
ンドリスポンス(以下、DR)の取組の重要性が高まっている(資源エネルギー庁 2015)
。DR は、
これまでにない取組であることから、需要側にもそれに対応する設備が求められる。
スマート BEMS は、ピークカットを前提とした最適制御を実施することで、DR に対応するこ
とを目的としている。
2.システム構成及び機能
本事業において、明電舎が実証したシステムの基本構成は図 11 の通りである。本システムの中
16 当該年度に建築確認された建築物のうち、省エネ判断基準(平成 11 年基準)に適合している建築物の床面積の割
合を表す。
17 YSCP では、横浜みなとみらい 21 地区に位置する大型商業施設である横浜ワールドポーターズを実証サイトとし
ている。
- 23 -
心はスマート BEMS である。実証事業では、これにリチウムイオン蓄電池システムやコージェネ
レーションシステムを組み合わせたシステムが使用されている。しかし、スマート BEMS 自体は、
様々な機器の最適制御を可能にするものであるため、ここで挙げた以外の機器と組み合わせて使用
することも可能である。
スマート BEMS の機能は以下の通りである。
(1)需要予測機能
スマート BEMS は、過去のエネルギー消費実績や気候条件などのデータから翌日の施設内の電
力負荷及び熱負荷を予測する。この予測は、最適な運転パターンを算出するのに使用される。実
績に乖離が認められた際は、需要予測パターンを補正した上で運転計画を更新することも可能で
ある。
(2)最適制御機能
スマート BEMS は、需要予測に対して、エネルギーコストや CO2 排出量が最小となるパター
ンを運転計画として算出し、起動回数制限、受電電力上下限などの制約を満たすようにエネル
ギー供給設備を自動制御する。
自動制御によって手動制御に係る負担を軽減することができる。また、社会情勢(例えば、エ
ネルギー単価の変動、電力需給逼迫など)や施設内エネルギー需要の変化にも柔軟に対応するこ
とができる。
(3)DR 機能
スマート BEMS は、DR 信号を受信した際は、最も経済的な対応パターンを選択、エネルギー
供給設備を最大限活用する形で自動応答制御を行う。
これまでの DR は、主に負荷抑制のみが行われることが多いが、本システムはエネルギー供給
機器も同時に制御するため、施設内の電源の調整余力を活用することで、ピーク時間帯の系統電
力需要の一層の削減が可能となる。
(4)BCP 対応機能
スマート BEMS は、停電発生時に給電対象と構内供給力を適正に管理することで、オペレータ
の負担を軽減する。また、自家用発電設備などの構内の限られたエネルギー源を無駄なく利用す
ることで、必要業務の遂行をサポートする。
- 24 -
上位EMS
DR信号
(指定時間対・インセン
ティブ情報等)
電力消費情報
システム導入施設
スマートBEMS
制御
制御
需要予測やDR指令に
基づき、最適制御
制御
リチウムイオン
その他機器
コージェネレーション
蓄電池システム
(EV等)
システム(CGS)
充放電
充放電
排温水
電気
排熱投入型吸収
受変電設備
系統電力
都市ガス
冷温水機
電気
冷温水
電力負荷
熱負荷
凡例
システム構成要素
情報
都市ガス
制御
電力
冷温水等
図 11 システム構成の一例
(資料)明電舎(2015a)
図 12 スマート BEMS の監視設備
3.従来技術との対比
(1)制御対象範囲の違い
従来の BEMS は、主に電力負荷設備を対象に、エネルギー使用状況の見える化または一部制
御の実施を行っていた。このため、建物全体でのエネルギー供給設備の最適運用は実現できて
いなかった。これに対して、スマート BEMS は、エネルギー供給設備も含めて建物全体の機器
- 25 -
を最適制御することができる。これにより、以下が可能になる。
① 従来 BEMS を超える省エネルギー・エネルギーコスト削減の実現
従来の制御対象範囲よりも、広い範囲を制御対象とすることで従来を超える省エネルギーま
たはエネルギーコスト削減を実現することができる。実証事業では、スマート BEMS による分
散型電源の最適制御により、従来型 BEMS を上回る 15%以上の省エネルギー効果が得られる見
通しを得た。
② ピークカット能力の向上
DR へ対応する際、負荷設備の制御だけでは限界があるが、エネルギー供給設備も制御するこ
とで、系統電力のピークカット能力が向上する。実証事業では、DR を実施していない場合に比
べて 20%以上の電力抑制を実現した。
③ BCP 対応
エネルギー供給設備の運用も行うことで、非常時には、自家発電設備等の施設内の限られた
エネルギー源を最大限に活用し、BCP に基づく行動計画の実現を支援することができる。
(2)需要予測及び制御性能に関する違い
従来の BEMS は、空調や照明、コージェネレーションシステムや蓄電池システムなど、設備ご
とに電力消費量や発電状況を監視し、必要に応じて個別制御を実施していた。例えば、コージェ
ネレーションシステムは、一般的に電主熱従運転制御(電力需要に合わせてを負荷率を制御)に
より運転する。また、蓄電池システムは、あらかじめ設定された充放電パターンに基づき制御す
る。
この場合、機器単位では個別最適となっていたとしても、必ずしも施設全体の最適制御には
なっていない場合がある。つまり、従来は、社会情勢や施設内のその時々の負荷状況に対して必
ずしも最適制御されていたわけではなかった。このような場合、従来はオペレータが必要に応じ
て個別制御を行い、このような施設全体の調整を行っていたが、設備数が増加すると最適制御す
ることは困難となる。
スマート BEMS を使用することによって、需要予測に基づき、複合機器の最適な運転パターン
を自動制御で実現することができる。また、計算された最適運転パターンによって、コージェネ
レーションシステムや蓄電池システムを自動制御するため、オペレータの個別判断も不要となる。
最適な運転パターンを決める運用目的については、エネルギーコスト最小化、CO2 最小化、ま
たはそれらを一定の比重で重視する設定等に柔軟に変更することが可能である。つまり、ユー
ザーの運用目的に合わせて、最適な運転パターンを設定すれば、その目的に沿った運転パターン
を自動的に選択できるようになる。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムは、コージェネレーションシステム、太陽光発電システム、蓄電池システムなどの
分散型電源とスマート BEMS を組み合わせて販売されることが想定される。本システムを活用し
た事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の一例を図 13 に示す。ここでは、
- 26 -
本システムの導入事業者として、施設オーナーを想定している。
導入事業者は、本システムの設置・運用コストを負担する。他方、本システム導入により、電
力消費量を削減し、電力料金を削減することができる。また、DR 指令に対応し、ピークカット
実施や調整力提供を行うことで、その対価を受け取ることができる。
以上の検討では、DR プログラムが存在することを前提としたが、電力会社や一般送配電事業
者の動向や関連する制度設計の動向によって運営スキームは異なるものとなる。
(2)実装の見通し
主な導入先として、分散型電源を保有もしくは分散型電源の導入可能性のある業務用・産業用
の中大規模需要家(一定規模以上の延床面積を持つ病院、ホテル、ショッピングセンター、事務
所ビル、工場等)が想定される。実証サイトの横浜ワールドポーターズはその一例であるが、こ
のような施設は国内外でも多く存在しており、大きな市場が見込める。
本システムの展開事例の一つとして、横浜市立大学附属市民総合医療センター(以下、市大セ
ンター病院)と平成 28 年 2 月にその近隣に移転予定の横浜市南区総合庁舎(以下、南区総合庁
舎)における導入計画がある。同事例では、2 つの施設の需要特性を考慮して、高効率にコージェ
ネレーションシステムの運用を実施しようとしている。
南区総合庁舎は、非常時に地域行政機能を維持する必要があるほか、災害時の避難場所となる
ため、自家発電のニーズがある一方で、熱負荷が小さいため、コージェネレーションシステムを
高効率に運転することが困難である。一方、市大センター病院は熱需要が大きいという特徴を持
つ。
この需要特性を考慮して、同病院にコージェネレーションシステムを設置し、排熱は同病院で
利用、発電電力は南区総合庁舎などへ供給することで、2 つの施設のニーズにこたえつつコージェ
ネレーションシステムを高効率に運転することが可能となる。市大センター病院と南区総合庁舎
の間は自営線を敷設し、特定供給により電力供給を行い、市大センター病院に設置したスマート
BEMS が市大センター病院と南区総合庁舎ほかのエネルギー需要を監視し、コージェネレーショ
ンと受電電力の統合制御を行う(宇山 2015)
。
(3)事業性
本システムを導入する場合、施設オーナーは、初期投資及びシステム運用に伴う保守費用が必要
になる。一方、省エネルギーにより電力の基本料金及び従量料金の削減が期待できる。また、イン
センティブ型 DR が実施される場合には、それに応えることによって対価を得ることができる。
このようなエネルギーコストの削減効果及び DR の対価は、需要家のシステム構成やエネルギー
単価、DR のインセンティブの水準などにより異なるため一概に言えないが、補助金などの活用に
より、システム構築費用を数年で回収できるケースもある。なお、調整力が大きく、選択し得る運
用パターンが多岐に渡るようなエネルギーシステムであるほど、期待効果も大きくなる傾向にある。
- 27 -
電力会社(小売事業者)
電力
料金削減
電力
削減
送配電事業者
ピーク
カット
対価
対価
調整力提供
アグリゲータ(DRプログラムの管理者)
ピークカット・
調整力提供
対価
システム導入者(施設オーナー)
リチウムイオン
スマートBEMS
設備費用
蓄電池システム
複合エネルギ
ーシステム
の導入
コージェネレーション
EV
システム(CGS)
保守費用
機器メーカー
保守役務
保守会社
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの導入事業者
支払フロー(実)
支払フロー(みなし)
図 13 運営スキームの一例
(4)実装に向けた課題
実証事業で実施した DR については、現状では完全に市場が形成されているわけではない。本
システムを普及させていくには、今後、DR に関する市場環境を整備していく必要がある。また、
電力システム改革が進めば、電力調達に対するオプションが拡大し、本システムの活用機会が増
加する可能性がある。
また、本システムは定置用リチウムイオン蓄電池システムと組み合わせることで、柔軟で効率
的な運用が可能になるが、リチウムイオン蓄電池は現状では高コストであることから、さらなる
価格低減が望まれる。
5.おわりに
以上のように、本システムは、業務用施設におけるさらなる省エネルギー及びピークカットを
実現する機能を備えており、今後の国内外への普及が期待される。国内においては、電力システ
ム改革と併せて、DR に関する市場環境の整備が進めば、本システムの活躍する機会は大幅に増
加することが予想される。
さらに、本システムは様々な機器との組み合わせをすることができることから、明電舎は、個々
の制御が可能な機器の充実やカスタマイズを進めている。前述の市大センター病院及び南区総合
庁舎の事例はその 1 つである。このような取組がさらに進めば、本システムは単一の業務用施設
だけなく、複数施設の最適運用や、特定電気事業や地域熱供給におけるコージェネレーションシ
- 28 -
ステムの最適運用など応用できる範囲が拡大していくことが期待される(宇山 2015、
榛葉他 2015)
。
参考文献
宇山 2015:宇山孝士.浜市立大学附属市民総合医療センター/横浜市南区総合庁舎エネルギー連
携.明電時報,No.3,2015 年.
国土交通省 2015:省エネ法の施行状況について(建築物エネルギー消費性能基準等ワーキング
グループ及び省エネルギー判断基準等小委員会合同会議(第 6 回)資料 3)
.2015 年 8 月.
資源エネルギー庁 2015:ディマンドリスポンスについて.2015 年 3 月.
電子情報技術産業協会 2015:IT 活用による省エネ効果に関する調査研究報告書.2015 年 3 月.
榛葉他 2015:榛葉博則, 平嶋倫明, 宝利裕二,宇山孝士.横浜スマートシティプロジェクト
(YSCP)
.明電時報,No.3,2015 年.
明電舎 2015a:スマート EMS | EMS | 明電舎,available from <http://www.meidensha.co.jp/
products/energy/prod_09/prod_09_01/index.html>,(accessed 2016-2-3).
- 29 -
VI. 地域全体でのピークカットを実現するスマート SC 型 BEMS(北九州市
BEMS:イオンリテール株式会社)
要旨
 北九州市実証の事業「BEMS 商業施設における地域と連携したエネルギーマネジメントシステ
ムの有効性検証」を対象として、システム構成及び機能、従来技術との対比そして実装状況に
ついて評価した。
 その結果、
スマート SC 型 BEMS による DR 対応機能とインセンティブプログラムの導入によっ
て、施設単体だけでなく、地域全体でのピークカットを実現できる可能性があることが明らか
になった。
 この技術は今後、他社も含めた国内外の新規店舗への導入や地域全体を巻き込む仕組みづくり
の進展が期待される。
1.システムの目的・意義
イオングループは、平成 23 年度から平成 26 年度の 4 年間に渡り、経済産業省次世代エネルギー・
社会システム実証事業の一つである北九州スマートコミュニティ創造事業(以下北九州市実証)に
おいて、以下に掲げる目的・意義の下、イオンモール八幡東を実証サイトとして、地域全体での省
エネルギーを実現する BEMS 技術に関する実証を行った。
(1)ディマンドリスポンスへの対応
東日本大震災におけるエネルギー供給の制約や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、ディマ
ンドリスポンス(以下 DR)の取組の重要性が高まっている(資源エネルギー庁 2015)
。
ショッピングセンターにおいても、この取組に対応することが求められる。そこで、B スマー
ト SC 型 BEMS の導入により、DR 発令時にショッピングセンター内の設備・機器を停止・制御
できるようにすることを目的とした。
(2)節電行動範囲の拡大
ショッピングセンターはこれまでも業界全体で産業別自主行動計画への参加や環境対策ガイ
ドラインの作成などにより、省エネルギーや地球温暖化対策を進めてきた(日本ショッピングセ
ンター協会 2010)
。しかしながら、これまでのショッピングセンターの省エネルギーに関する取
組は、直営部や共用部が主となっており、テナント部については、基本的に各テナントの努力に
任せていた。
そこで、ピーク時にテナント部にも節電を促し、ショッピングセンター全体のピークカットを
実現すること、さらに、上位 EMS とも連携し、ショッピングセンターだけでなく、対象施設周
辺も含めて地域全体でピークカットを進めることを目的とした。
2.システム構成及び機能
本事業において、イオンリテールが実証したシステムの基本構成は図 11 の通りである。本シス
テムの中心はスマート SC 型 BEMS である。実証事業では、テナント部に情報端末を設置し、さら
に太陽光発電システムも導入した。
(1)DR 対応機能
スマート SC 型 BEMS は太陽光発電システムや電力負荷情報を見える化するだけでなく、DR
指令を受けた際にはショッピングセンター内でのピークカットを行う。上位 EMS から DR 指令
- 30 -
を受けると、共用部及び直営部とテナント部でそれぞれ電力削減行動を促す。
共用部及び直営部では、空調設備・照明設備を自動または手動制御することで電力負荷を削減
する。他方、テナント部には、各テナントに配布した情報端末を通して、DR が発令されている
ことを知らせる。これを受けて、テナント事業者は任意で節電に協力する。テナントごとに負荷
計測を行うため、テナント事業者は自社テナントの負荷情報や節電状況を情報端末で確認するこ
とができる。
(2)インセンティブプログラム実施のための機能
インセンティブプログラムは、上位 EMS から対象世帯に対して、節電要請(DR 発令)が行わ
れた際に、ショッピングセンターに来店誘導することにより、プログラムに参加している世帯で
の電力使用削減を行うものである。プログラム参加者が来店したとしてもショッピングセンター
のエネルギー消費量は大きく変化しないことが確認されていることから、各世帯における電力使
用削減が地域全体の電力使用削減につながる仕組みとなっている。
来店誘導のために、DR 発令時に来店するとお買い物ポイント”WAON”に来店ポイントが付与
される18。来店誘導できれば、来店した世帯の節電につながるほか、ショッピングセンターにお
ける購買行動につながることも期待される。
近隣住民の電力消費量と住民への来店ポイントの発行状況はプログラム参加世帯単位で管理
されており、上位 EMS19から情報提供を受けることによって、同プログラムのピークカット効果
を計算することができる。
18 実証事業では 100 円相当のポイントを付与した。
19 実証事業では、CEMS と連携した。
- 31 -
上位EMS
DR・インセンティブプログラム
の実施の指示
※来店した世帯と電力使用状況は
上位EMSに問い合わせて把握
システム導入施設
インセンティブプログラム
実施の指示
電力負荷
情報
太陽光発電の状況・
電力負荷情報の見える化
近隣住民
スマートSC型BEMS
HEMS等
削減行動の依頼
DR指示等
に基づき制御
(自動・手動)
テナントの情報端末
ピーク時間帯に店舗
に誘導することで家庭
の電力負荷を削減
依頼に基づき
手動制御
電力負荷
( 各テナント)
電力負荷
(直営・共用部)
負荷
計測
スマート
メーター
太陽光発電
負荷
計測
分電盤
分電盤
受変電設備
凡例
系統電力
システム構成要素
情報
制御
電力
図 14 システム構成の一例
(資料)イオングループ提供資料
図 15 エネルギー使用状況の監視状況(イオンモール八幡東)
- 32 -
3.従来技術との対比
(1)施設全体のピークカット効果
本システムにより、従来実施できなかった DR に対応することができるようになった。DR に
対応実証では、施設全体で 166kW(マイナス 4.85%)20の削減を達成した。
(2)テナント部でのピークカット効果
従来、ショッピングセンターにおいては、オーナーが直接取り組むことができる節電範囲は、
共用部や直営部に限られていた。本実証においてはテナント部にも節電を促す仕組みを取り入れ
たことが特徴といえる。
ただし、実証サイトは既築のショッピングセンターであり、省エネルギー手法が限られていた
ことから、実証事業における DR 発令時の電力削減量は、目標値マイナス 8.8%に対して実績値
はマイナス 2.2%にとどまった。新規店舗では、本システムに合わせて削減手段を用意すること
ができるため、より高いピークカット効果が期待できる。
(3)インセンティブプログラムによる地域全体でのピークカット効果
インセンティブプログラムによって、ショッピングセンターに誘導する手法を確立したことも
本実証の特徴といえる。インセンティブプログラムにより、電力需給逼迫時にショッピングセン
ターに周辺住民を誘導できれば、来客した住民の世帯では電力使用量の削減が期待できる。一方、
店舗にとっては、ポイント発行する必要が生じるが、これにより購買行動につながることも期待
される。実証事業では、対象世帯 50 世帯に対して最大で 26 世帯が来店した。このとき、当該世
帯での電力削減値は 26.6kW であったことから、1 世帯当たりの削減値は 1.03kW/世帯と推定され
る。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の一例を図
13 に示す。システム導入者は、本システムの設置・運用コストを負担する。他方、本システム導
入により、電力消費量を削減し、電力料金を削減することができる。また、DR 指令に対応し、
ピークカット実施や調整力提供を行うことで、アグリゲータ等を通してその対価を受け取ること
ができる。
近隣住民は、インセンティブプログラムに参加することで、ポイントを得ることができる。
ショッピングセンターはポイントを発行することになるが、近隣住民の来店による売上増加が期
待できる。また、上位システムとも連携して地域全体でのピークカットを管理できるようになれ
ば、その対価がシステム導入者にも入ることになる。
20 最高気温 30~34℃において DR 実施の有無を比較した場合の平均電力削減値
- 33 -
電力会社(小売事業者)
送配電事業者
ピーク
カット
対価
電力
料金
削減
電力
削減
電力
料金
削減
対価
調整力提供
電力
削減
アグリゲータ
ピークカット・
調整力提供
対価
システム導入者(施設オーナー)
ポイント
来客
(売上増加期待)
近隣住民
設備費用
(インセンティブプログラム参加
者)
設備
費用
BEMS等
の導入
電力料金
削減
機器メーカー
節電
協力
テナント
HEMS
の導入
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの導入者
支払フロー(実)
支払フロー(みなし)
図 16 運営スキームの一例
(2)実装の見通し
本実証で開発したスマート SC 型 BEMS は主に今後新設するショッピングセンターでの導入が
想定される。イオングループは国内の新設施設で本システムを導入していくことを予定している
他、同社の海外展開先である ASEAN・中国における導入も検討している。
現在、同社では、次世代エコストア「スマートイオン」の展開を開始している。スマートイオ
ンの基準は、(1)スマートエネルギー、(2)WAON・ネットとの融合、(3)交通環境(スマートモビ
リティ)
、(4)生物多様性・景観、(5)防災・地域インフラ、の 5 つとなっており21。すでに 2015 年
12 月現在、9 つの店舗がスマートイオンとしてオープンしている。スマートイオン 10 店舗目と
なるイオンモール堺鉄砲町(2015 年 3 月開店予定)では、本実証事業で開発されたスマート SC
型 BEMS が水平展開される見通しである(イオン 2014a)
。
21 スマート SC 型 BEMS は「スマートエネルギー」の基準に該当すると考えられるが、必ずしもスマート SC 型 BEMS
が導入される必要はなく、コージェネレーションシステムによるエリアにおける熱融通など様々な取組が含まれて
いる。スマート SC 型 BEMS の導入は、実証サイト以外ではイオンモール堺鉄砲町が初となる。
- 34 -
(3)事業性
本システムを導入する際、実証サイトのような既存店舗の場合には、初期費用として、スマー
ト SC 型 BEMS 導入費とともに、通常の電力量計をスマートメーターに交換するための費用が発
生する。一方、新規店舗に導入する場合には、当初からスマートメーターを設置することで交換
の手間を省略できるほか、照明の回路を分けるなどの工夫によって DR への対応力を高めること
が可能になる。また、インセンティブプログラムに参加する世帯は HEMS の導入が必要になる。
このような初期費用を、省エネルギーによる電気料金の削減、DR プログラムに基づくインセ
ンティブ、インセンティブプログラムによる売上増で回収していくことになる。BEMS のパッ
ケージ化などが進み、現状の半分程度の費用負担で済めば、投資回収年数は数年程度となること
が期待できる。
(4)実装に向けた課題
実証事業で実施した DR やインセンティブプログラムについては、それを成立させる社会的制
度が完全に整っているわけではない。DR については、電力システム改革と併せて、市場環境を
整備していく必要がある。また、インセンティブプログラムについては、上位 EMS が地域全体
のエネルギーに関する情報を集約する機能を担っていたが、この機能はどのような地域でも存在
しているわけではない。今後、実証地域以外においても、上位 EMS の持つ機能を提供する主体
や地域住民など地域全体の協力のもとにインセンティブプログラムを成立させる仕組みを構築
する必要がある。
5.おわりに
以上のように、本システムは、ショッピングセンターを中心に地域全体でのピークカットを実現
する機能を備えており、今後の国内外への普及が期待される。具体的には、同社グループの他の店
舗への導入、同社の海外展開先である ASEAN・中国などでの導入が期待される。
また、現在、電力システム改革の一環として、DR に関する市場整備が進められていることから、
これに合わせた今後の普及が期待される。
参考文献
イオン 2014a:
「
(仮称)イオンモール堺鉄砲町」の開発計画について.2014 年 10 月.
イオン 2014b:
「イオングループ中期経営計画(2014~2016 年度)
」について.2014 年 3 月.
日本ショッピングセンター協会 2010:
「SC 環境対策ガイドライン」.2010 年 3 月
資源エネルギー庁 2015:ディマンドリスポンスについて.2015 年 3 月.
- 35 -
VII. MEMS を活用したマンション向けエネルギーマネジメント技術(横浜
市 HEMS:株式会社東芝、三井不動産レジデンシャル株式会社)
要旨
 横浜市地域実証の事業「マンション向けエネルギーマネジメントシステムの実証」を対象とし
て、システム構成及び機能、従来技術との対比、実装に関する現状と方向性について評価した。
 その結果、MEMS/HEMS や蓄電池等から構成されるシステムが、マンションのエネルギー消費
の削減、
それによる電力料金の低減や CO2 の削減をもたらすとともに、
エネルギーセキュリティ
を強化するといった便益を生み出す可能性があることが明らかになった。
 この技術は今後、マンション内の需要家の環境行動等を分析することにより、様々な生活支援
サービス等を開発・提供していくことにつながっていくこと等が期待される。
1.システムの目的・意義
株式会社東芝と三井不動産レジデンシャル株式会社は、以下に掲げる目的・意義の下、経済産業
省次世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「横浜スマートシティプロジェクト」
(以
下横浜市実証)に参画し、MEMS(Mansion Energy Management System)技術の実証の場の一つとし
て、次世代エネルギー・社会システム実証事業に取り組むこととなった。
(1)集合住宅需要増加に伴うマンション向けエネルギー管理への要請
集合住宅需要の増加に伴い、マンション向けエネルギー管理に対する需要も近年急速に伸びて
きている。こうした動きに対応し、マンションの共用部機器等を制御するシステムとして、MEMS
及び HEMS が開発されてきた。これは、MEMS 及び HEMS がマンションのエネルギー消費の削
減、それによる電力料金の低減や CO2 の削減をもたらすと期待されているためである。
こうした背景の下、本実証事業は、高度な機能を有する MEMS 及び HEMS を開発し、それを
適用することで低コスト化・低炭素化を図れる集合住宅を提供することを目的としていた。
(2)大停電時のエネルギーセキュリティの確保への要請
東日本大震災後、大停電時における電源確保に対する要請が社会的に高まったが、これは、マ
ンションにおいても同様である。MEMS は、こうした要請に応えるシステムという側面もあり、
MEMS 等の開発は、災害時において蓄電設備や太陽光発電設備等を活用した電力供給を行うこと
により、エネルギーセキュリティを強化することを目的とした事業でもある。
2.システム構成及び機能
(1)マンション向けエネルギーマネジメントシステムにおける機能
マンション向けエネルギーマネジメントシステムにおいては、共用部のエネルギー管理は
MEMS が対応し、専用部は HEMS が対応する。
① MEMS の機能
MEMS は、マンション共用部にある太陽光発電ステム、 蓄電池、共用照明、共用空調、エ
レベーター、EV 等に対するエネルギー管理を行うシステムである。マンション内機器は、ネッ
トワークを経由して外部に設置されている MEMS サーバーと接続されている。また、MEMS
サーバーは、C-BEMS と通信回線で接続されており、DR 信号等を受け取る。
MEMS サーバーは、MEMS ローカルから受信したマンション共用部機器の消費電力や機器状
- 36 -
態を保存するとともに、これらの実績データや天気予報データを用いて電力需要予測及び PV 発
電予測を行う。さらに、電力需要予測結果及び PV 発電予測結果を用いて、創蓄最適化(機器運
転スケジュール)計算を行い、得られた蓄電池充放電スケジュールと C-BEMS から受信した DR
信号を用いて、DR 制御計算を行う。最後に、蓄電池充放電スケジュール及び DR 制御計算結果
が、MEMS ローカル装置へ送信され、MEMS ローカルから蓄電池及び機器に制御指示が出され
る。
② HEMS の機能
HEMS は、マンション専用部にあるエアコン、エコキュート等に対するエネルギー管理を行
う。 専有部内の機器はネットワークを経由して、HEMS サーバーと接続されている。
また、HEMS サーバーはその上位に位置する CEMS とも接続されており、CEMS からの電力
削減要求に関する DR 信号を受信することも可能である。
③ HEMS と MEMS の連携
通常、HEMS サーバーから MEMS サーバーへ、専用部の電力使用量等の情報が伝達されるよ
うになっている。MEMS サーバーから HEMS サーバーへは、DR 信号等を送信する場合とそう
でない場合がある。
CEMS
電力消費
等情報
DR信号
電力消費
等情報
C-BEMS
電力消費
等情報
DR信号
電力消費
等情報
HEMSサーバー
DR信号
(ADR:エア
電力消費
コン温度)
等情報
MEMSサーバー
電力消費
等情報
機器制御計画
HEMSローカル
MEMSローカル
発電量情報
制御
PV
蓄電池
制御
電力消費
等情報
制御
制御
負荷
負荷
負荷
(共用)
(共用)
(専用)
系統電力
受変電設備
凡例
システム構成要素
DR信号
情報
制御
図 17 システム構成の一例
- 37 -
電力
(2)災害対応に関する機能
後述する「パークタワー西新宿エムズポート」においては、停電・災害時等の際には、MEMS
により太陽光発電システム、大型蓄電池、非常用発電機を監視制御し、非常用エレベーターや給
排水ポンプ等を効率的に稼働させることが可能である22。
例えば、停電の際は非常用発電機が稼働し、災害対策拠点の電源確保や保安灯の点灯、非常用
エレベーターの稼働を行う。また、非常用発電機の燃料を使いきった際は、太陽光発電、大型蓄
電池、電気自動車の蓄電池電源が電力を供給する。
(資料)三井不動産レジデンシャル提供資料
図 18 マンション共用部 MEMS 表示画面
3.従来技術との対比
(1)創蓄アルゴリズムの機能の発展
負荷平準化に関する技術は以前にも存在していたが、手動で電力をカットするような初歩的な
制御方法であったため、本実証では、制御方法を向上させることが目標とされた。具体的には、
充放電計画機能等をマンションに適用させ、MEMS 技術(棟内エネルギー管理機能)を発展させ
た。棟内エネルギー管理機能は、創蓄アルゴリズムの機能であり、主な機能として、以下が挙げ
られ、今回の実証で、開発・発展させられた。
① 予測機能
PV 発電量予測機能、電力需要予測機能、及び予測補正機能が含まれる。
22 実証フィールドである「パークホームズ大倉山」においては、太陽光発電システムや蓄電池の放電先は照明設備
が中心となる。
- 38 -
② 機器制御計画機能
機器制御計画機能とは、MEMS への電力削減要求に対するマンション共用部の機器制御計画
を出力するとともに、機器制御計画によって修正された電力需要予測を推測する機能である。
電力削減要求種別は、大別すると DR、強制機器制御、ピークカットの 3 種類がある。これら 3
種類の電力削減要求は独立であり同時に発生する時刻も存在するため、機器制御計画機能では、
実績値と計画値を比較して、最も電力削減効果が高い機器制御計画を選択する必要がある。
③ 蓄電池充放電計画機能
創蓄最適化は蓄電池の最適充放電パターンを導出するためのアルゴリズムである。創蓄最適
化機能は、PV 発電用予測結果、電力需要予測結果、電気料金等を入力として、最適化手法によ
り充放電計画を求める。
④ その他の機能
その他の機能として、制約条件導出機能、ピーク平準化機能、蓄電池効率を考慮した充放電
計画機能、蓄電池充放電計画の平滑化機能等がある。
上記機能は、2011 年度~2013 年度にかけて、徐々に開発・発展されていった。例えば、まず
2011 年に電力需要予測機能が開発され、それが発展し、2012 年に予測補正機能が開発された。
また、2011 年に機器制御計画機能が開発され、それが制約条件導出機能の開発(2012 年)と結
びつき、2013 年の蓄電池充放電計画機能の開発に至った。
(2)実証事業の効果
実証フィールドにおける共用部データ(平成 26 年 4 月~11 月)を基に、MEMS 及び発電設備
や蓄電設備の導入による CO2 排出削減効果、及び CEMS からのデマンドレスポンスを受けた実
証実験における DR 効果の確認が行われた。
これによると、MEMS(共用部)のマンション向けエネルギーマネジメントシステムによる
CO2 削減効果(2012 年度アルゴリズム使用、太陽光発電設備・蓄電設備あり)は、実証フィー
ルドである「パークホームズ大倉山」において 20%以上の実績が確認された。また、MEMS(共
用部)の DR による CO2 削減効果も、同フィールドにおいて、一定の効果があることが示された
(表 3)
。
表 3 フィールド実証の結果
<共用部 CO2 削減効果>
<共用部 DR 効果>
構成
2012 年版アルゴリズム
パークホームズ大倉山
CO2 排出量
CO2 削減率
[kg/日]
[%]
131.0
20.1
(資料)東芝(2015)
- 39 -
2012 年度開発版 パークホームズ大倉山
の実測確認
CO2 削減率[%]
夏のDR
5.0
冬のDR
8.2
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の模式図を図
19 に示す。本システムの導入を決定するのは、新築マンションについてはデベロッパーであり、
既築マンションでは管理組合及び各戸の居住者である。
MEMS・HEMS 及びそれに付随する設備はマンションに導入されるが、マンションの居住者及
び管理組合へのサービスは、アグリゲータ事業者等が窓口となり一括して行い、高圧一括受電23
やデマンドレスポンス制御等のサービスを提供するとともに、電力等のエネルギーを提供する。
この際、MEMS は、マンション全体の電力使用状況、太陽光発電状況、蓄電池の充放電状況を
把握するとともに、目的(電力削減要求の種類)に応じて共用設備(大型蓄電池の充放電、 EV
充電器や照明の稼働、空調の設定温度)を自動制御する。この目的には、電力会社側の DR 要求、
需要側ピークカット/シフトが含まれる。
MEMS から各住戸の HEMS へ制御指示を行う場合もあるが、これは、通常、電力会社側の DR
要求に基づいて行われる。この MEMS は、「パークタワー西新宿エムズポート」24に導入されて
いるが、ここでは、MEMS からの指令により、各住戸内のエアコン設定温度自動制御をするとと
もに、タブレット型端末にて系統ごとの詳細な電力使用状況の「見える化」
、省エネアドバイス、
デマンドレスポンス要請の告知等を行い、居住者の自発的な省エネアクションの促進を図ってい
る。また、DR 報酬はポイントを付与していることで対応している。
(2)事業性
HEMS 及び MEMS は、マンション居住者及び管理組合の負担で展開する。新築物件において
は、その導入費用は物件価格に含まれる。高圧一括受電及び MEMS 等による需要管理により、
居住者は、電力料金(特に基本料金)の削減というメリットを享受する。
「パークタワー西新宿エムズポート」の場合、家庭用の低圧電力より安価な高圧電力を一括購
入することで、低圧電力契約より最大 5%程度安価な料金で電力が利用できる。また、電力需給
ピーク予想情報(ピーク時の節電依頼)に応じて MEMS・HEMS が設備機器を自動制御し、居住
者の節電により削減した電力量に応じて翌月以降の電気料金に利用可能なポイントが還元され
る。各住戸が削減した分は各住戸に還元され、共用部で削減した分は管理組合に還元される。ま
た、太陽光発電を共用部電力に活用することにより購入電力をより抑制することができる。
一方、エネルギーサービスプロバイダー(MEMS アグリゲータ、高圧一括受電会社)としては、
エネルギー供給と管理全体で収益を見込むことができると考えている。なお、高圧一括受電サー
ビス事業者は、各住戸をまとめてマンション全体として高圧一括受電契約を締結した場合と、個
別に低圧受電契約をした場合の料金単価の価格差を、基本的な収益源としている。また、DR 対
応による収益も期待できる。
23 高圧一括受電とは、多数の居住者がまとまり、電力会社から高圧で電気を一括して安価に購入することである。
これにより、安価に電気を居住者が個々に低圧で電気を購入する場合よりも、一居住者当たりの電気料金を安くす
ることができる。。
24 2012 年 9 月、三井不動産レジデンシャル株式会社は、株式会社東芝が提供する「MEMS」と「HEMS」の連携に
よるエネルギーマネジメントと、電力需給に応じたデマンドレスポンスによるインセンティブ還元を組み合わせて
マンション全体のエネルギー利用をスマート化する新システムを、分譲マンション「パークタワー西新宿エムズ
ポート(総戸数 179 戸)」に導入した。
- 40 -
電力小売事業者
電気
料金
削減
高圧
一括
受電
電気
料金
削減
最大需要
低下、購
入電力量
削減
DR対
応料
DRによる
ピークカット
MEMSアグリゲーター/高圧一括受電サービス事業者
電気
料金
削減
高圧
一括
受電
電気
料金
削減
最大需
要低下、
購入電
力量削
減
DR対
応料
(ポイ
ント)
DRに
よる
ピーク
カット
DR対
応料
(ポイ
ント)
マンション管理組合
マンション居住者
電気
料金
削減
•需要側ピークカット/ピークシフト
•DR機能
初期
費用
DRに
よる
ピーク
カット
初期
費用
•電力購入量削減(PVを利用)
•DR機能(エアコン
温度設定、DR案内、
見える化)
•電力購入量削減
•電力料金削減
•電力料金削減
デベロッパー(共用設備提供)
デベロッパー(個別設備提供)
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者・パートナー
支払フロー(実)
支払フロー(みなし)
図 19 運営スキームの一例
(3)実装の見通し
三井不動産レジデンシャル株式会社は、実証案件以外に、すでに、「パークタワー西新宿エム
ズポート(竣工済)
」
、
「パークホームズ品川ザレジデンス(竣工済)」に MEMS を導入した実績
を有している。また、経済産業省「スマートマンション導入加速化推進事業」を通じ、MEMS は、
全国的に導入されつつある。
今後の展開の方向性として、デベロッパー及びアグリゲータ―が、電気使用量をモニタリング
することで環境設備や環境行動を分析し、ハード・ソフト含めた住宅商品開発に活かすことによ
り、ビジネスチャンスを広げていくことが考えられる。また、街全体のエネルギー連系を実践す
ることでマンション単体にとどまらない街全体のソリューションを生みだし、国内・海外含めた
都市へ街づくりそのものを「スマートコミュニティ」として諸外国に輸出していくことも期待さ
れる。
(4)実装に向けた課題
高圧一括受電サービスを行うことを前提とした場合、MEMS/HEMS を導入して採算に合う規模
の目安は、100 戸程度(マンション)である。このため、MEMS/HEMS を導入する場合、居住者
間の合意形成を行う必要があり、今後さらなる普及を目指すのであれば、そのための仕組みやノ
ウハウを確立していくことが重要となってくる。
- 41 -
5.おわりに
MEMS/HEMS の導入は、高圧一括受電サービスと結びつき進展してきたが、今後、生活支援サー
ビスを含む様々なサービスが考案・提供されていくことにより、さらに拡大されていくことが期待
される。
参考文献
東芝 2015:マンション向けエネルギーマジメントシステムの実証.I-1-1 エネルギーマネジメ
ントシステムの構築,次世代エネルギー・社会システム実証事業費補助金.2015 年 3 月.
- 42 -
VIII. 太陽光発電電力を最大限有効活用する TEMS(Town EMS) に関連す
る技術(北九州市 HEMS:積水化学工業株式会社、三菱重工業株式
会社)
要旨
 北九州市地域実証の事業「CEMS と情報連携を行い協調できる HEMS 及び TEMS の実証」を
対象として、システム構成及び機能、従来技術との対比、実装に関する現状と方向性について
評価した。
 その結果、TEMS や蓄電池等から構成されるシステムが、蓄電池制御や電力融通等の機能を発
揮することで、住まい手に対して経済性向上、送配電事業者に対して系統負荷低減という便益
を生み出す可能性があることが明らかになった。
 この技術は今後、アグリゲータビジネスや PPS 事業等において活用されていくことが期待され
ている。
1.システムの目的・意義
積水化学工業株式会社及び三菱重工業株式会社は、
平成 23 年度から平成 26 年度の 4 年間に渡り、
経済産業省の次世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「北九州スマートコミュニ
ティ創造事業」
(以下北九州市実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、HEMS(Home Energy
Management System)及び TEMS(Town EMS)の開発および実フィールドにおける効果の実証を行っ
た。
(1)太陽光の有効活用による経済性の向上
太陽光発電は、昼間において需要量以上の電力を発電することがあるため、しばしば供給余剰
となり、出力抑制が行われたり、家庭の太陽光発電設備では、住まい手が発電電力を活用できず
に無駄に系統に流されたりする。
こうした太陽光発電の特徴を踏まえ、本システムは、太陽光発電電力を、無駄なく、有効に(賢
く)活用するということを目的に開発された。
本システムは、太陽光発電電力を自家消費する前提で蓄電池を最大限活用するとともに、住戸
間で電力を融通することにより、太陽光発電電力の利用率を最大化させ、系統からの購入電力を
最小化することにより、住まい手に対して経済性向上という恩恵を提供するとともに、CO2 削減
に貢献する。
(2)負荷平準化による系統負荷の低減
十数年ほど前より、風力等出力変動の大きな再生可能エネルギーによって、電力系統に及ぼす
影響が社会的に懸念され始めたが、FIT 制度の開始により大容量ソーラーが急速に普及し始めた
ことにより、ますますその懸念が大きくなってきている。
こうした背景の下、本システムは、太陽光発電電力を最大限活用するに当たり、系統に悪影響
が与えられないようにすること、あるいは、タウン内消費電力ピークを低減することにより系統
への負荷を低減することを目的に開発された。
本システムは、蓄電池を用いたエネルギーマネジメントにより、送配電事業者に対して、配電
網の電圧上昇抑制や、計画的な太陽光発電余剰電力の逆潮流による系統負荷低減とピークカッ
ト・ピークシフトによる負荷平準化が期待される。
また、これにより、発電事業者の火力発電設備は高効率な状態で高稼働率が維持され、燃料の
- 43 -
削減、如いては CO2 削減に寄与することが期待される。
2.システム構成及び機能
図 20 は、本事業において門司地区で実証したシステムの基本構成である。
本実証事業においては、太陽光発電付き戸建住宅に蓄電池・HEMS を設置し、各戸に分散設置さ
れた家庭用蓄電池を TEMS により統合制御するシステムを開発・実証した。本システムにおいて、
TEMS は、各戸に設置された HEMS と連携し、複数の一般住宅等を一括りにした「タウン」でのエ
ネルギーマネジメントを行う役割を担う。以下に、本システムの主要な機能を示す。
(1)CEMS、TEMS、HEMS の連携機能
本システムにおいては、CEMS、TEMS、HEMS が連携して操作される。具体的な操作手順は
以下の通りである。
まず、HEMS は TEMS に蓄電池残存容量、太陽光発電量、電力消費量等の情報を送るとともに、
TEMS がタウン内の電力需要及び太陽光発電を予測し、自動で蓄電池の最適動作を計算する。一
方で、TEMS が、CEMS より地域の需要状況や DR 情報等を受取る。
次に、TEMS は、HEMS に蓄電池制御指令等を送り、それを受け、HEMS は各家庭の蓄電池を
制御する。蓄電池制御指令の中には、例えば、「CP 放電/CP 充電:TEMS の指令に応じ一定電力
を充放電する」
、
「PV 連系:タウン内太陽光発電余剰電力の充電及び負荷不足電力に対する放電
を行う」等の指令が含まれる他、
「ピークカット:タウン内負荷の契約電力超過分に対する放電
を行う」等の機能も実装された。
(2)電力の融通機能
これは、住戸間の発電/需要量の違いを、タウン内の電力融通で補間する(共用蓄電池の充電分
を融通する)機能である。実証では、各戸に自営配電線をつなぎ電力融通を行った。
なお、共用蓄電池と言った場合、一つの大きなタウン用蓄電池を使用する場合と複数の家庭用
蓄電池を統合制御する場合とがある25。
25 実証試験では、大型のインバータを用いる前者よりも、後者のほうが各家庭の電力を細やかに受給調整すること
で電力損失が少ないという結果になったことから、前者ではインバータ仕様の適正化が今後の課題である。また、
初期投資の面では、前者のケースのほうが部品点数が少なく有利と考えられるが、現実的には量産に伴う低コスト
化や設置スペースの確保しやすさから、後者のほうが採用されやすい傾向にある。
- 44 -
CEMS
需要計画・実績等
地域需要情報等
TEMS
蓄電池残存容量等
HEMS
発電量
HEMS
制御
負
荷
P
V
蓄電池制御指令等
蓄
電
池
発電量
P
V
HEMS
制御
負
荷
受変電設備
発電量
蓄
電
池
P
V
制御
負
荷
蓄
電
池
自営配電線
(電力融通)
上位系統
凡例
システム構成要素
情報
制御
電力
図 20 システム構成の一例
(資料)それぞれ積水化学工業(左)及び三菱重工業(右)提供資料
図 21 左:監視画面(TEMS)
、右:家庭用蓄電池
3.従来技術との対比
積水化学工業は、太陽光発電搭載住宅を多く普及させてきた責務として、需要家の立場から再生
可能エネルギーを賢く活用する技術の開発に取り組むことを決め、本実証事業への参画に至った。
再生可能エネルギーを賢く活用する技術とは、太陽光発電電力を最大限有効に活用するとともに、
複数の家庭の電力を融通する技術を意味する。こうして、本実証において、主に、タウン用蓄電池
に関する技術、また、複数の家庭用蓄電池の統合制御技術が開発された。
- 45 -
(1)蓄電池の主な構成要素の開発状況・経緯
本実証で新たに開発された蓄電池の主な構成要素の開発状況・経緯は以下の通りである。
タウン用蓄電池や家庭用蓄電池の各構成要素の多く(コンテナ、パワコン、システム制御装置、
電池ユニット)は、本実証で開発・採用されたものである。
タウンや家庭用の EMS との連携技術(動作モード、最大充電・放電電力指令への対応。運転
情報、電池残存容量情報の応答。
)も本実証において一から開発された。
タウン用電池や家庭用蓄電池の動作モードの多くも、本実証で初めて開発された。例えば、
タウンや家庭の負荷に対する放電のための動作モード(負荷追従放電、逆潮流制限放電、ピー
クカット)
、太陽光発電余剰電力の活用のための動作モード(PV 売電、PV 連系、PV 余剰充電)
、
電池充電率推移を所望範囲内に収めるための動作モード(電池充電率上下限維持モード)であ
る。
電池残存容量推定機能は、以前より社内で開発・検証されていた「電池充電率推定技術」を
利用しつつ、本実証にて初めて開発・検証され、現在、実案件へ展開されている。
(2)家庭用蓄電池システムの統合制御による TEMS の実証結果
TEMS の運用効果向上のため、タウン内の住戸に分散設置された家庭用蓄電池を TEMS により
統合制御することで蓄電池をタウン内でシェアして使う仕組みの実証が実施され、データ解析が
行われた。
TEMS 運用に起因する省エネ効果分は、
TEMS によりタウン全体で蓄電池を運用したエリアと、
各住戸個別に蓄電池を運用したエリアの省エネ率(以下の数式を使用)の差で示した。
省エネ率 =
家庭での消費電力量-購入電力量 (=発電電力の自家使用分)
家庭での消費電力量
この結果は、平成 26 年 7 月~12 月の実証データより、目標 4%(200kWh)に対し、実績が 9%
(572kWh)であった。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の模式図を図
22 に示す。
運営スキームの例として、分譲住宅地、既築住宅を含む街区等の住宅に対し、TEMS と連携す
る HEMS・蓄電池・太陽光発電設備を設置し、アグリゲータ事業者(TEMS・HEMS を提供する
住宅メーカーが兼ねることを想定)が TEMS を導入し、エネルギーマネジメントサービスを提供
することが考えられる。
エネルギーマネジメントサービスは、各家庭の蓄電池を相互に融通し合えるようにしそれらを
共用の蓄電池とみなした上で、TEMS が需要予測・太陽光発電量予測を基にした蓄電池の最適動
作を計算するとともに、その結果に基づく指令を各家庭の HEMS に送り、HEMS が各家庭の蓄電
池を自動制御することによって実施される。このサービスにより、住戸間の電力融通がなされ、
太陽光発電余剰電力の利用率が最大化されることになり、系統電力使用量削減による経済性向上
という便益がもたらされる。なお、このシステムでは、FIT 適用期間を過ぎた太陽光発電設備に
よる電力を使用することを想定している。
- 46 -
さらに、このアグリゲータ事業は、電力小売事業とセットとすることが想定されている。この
場合、電力小売業者としての役割は、各家庭に電力を供給することの他、各家庭が使用した太陽
光発電由来電力や系統由来電力を使用量に応じて換算し、電力料金を各家庭に配分することが挙
げられる。
DR に関連する事業は当面考えられていないが、将来的には実施される可能性もある。
(2)事業性
① TEMS の事業性
基本的に、同一事業者がアグリゲータ事業と PPS 事業の双方を行うことが想定されているが、
各事業を別々の事業者が行い相互に協力し合うことも考えられる。
i) アグリゲータ事業による収益源
収益源としては、まず、太陽光発電事業者が出力抑制されないようにするために余剰分(逆
潮流分)を充電するサービスへの対価、省エネ・電力融通により生じた余剰電力を電力が不足
している大口需要家や PPS に提供する場合の対価等が考えられる。
また、将来的には、送配電事業者に対して、配電網の電圧上昇抑制や、計画的な PV 発電電
力の逆潮による系統負荷低減を提供し、アンシラリーサービス費を受け取ることが考えられる。
ii) PPS 事業による収益源
アグリゲータ事業者は、さらなる収益拡大のため、PPS 事業を行い、TEMS の対象となる個
別住宅を含む需要家に電力を供給するサービスを展開することが想定されている。
収益源は、基本的に、需要家に電力を小売りすることによって得られる電気料金である。
また、ピークカット・ピークシフトによる負荷平準化機能の活用により同時同量26を達成し、
インバランス料金を削減すること等により、コストを削減し、収益を増大化することも期待さ
れている。
② TEMS と連携した HEMS の事業性
HEMS は、太陽光発電設備、蓄電設備とセットで住宅に搭載され、その費用は、新規住宅の
販売価格に含まれることが想定されている。
例えば、平均的な一般世帯の需要は年間約 7,000kWh、太陽光発電設備 4kW として過去 20 年
間の平均気象データより各世帯での年間太陽光発電量は約 4,000kWh であるが、これを元に計算
すると、各世帯平均の年間購入電力を約 1,600kWh 削減できる。これに 2kW-6kWh の蓄電池を
併用し HEMS で最適運用すると約 2,400kWh の削減効果が得られ、さらに複数の住宅で電力融
通を行うことで約 2,900kWh の削減が期待できる。また、HEMS による節電支援により 10%の
省エネで 700kWh の削減量を見込むと、トータル 3,600kWh の削減になり、これに電気料金単
価 22 円/kWh を乗ずると、一世帯当たり年間約 80,000 円の電気代削減になる。なお、これは
グリッドパリティ成立後を前提とした計算であるため買取制度による収入は含まれていない。
26 同時同量には、計画値同時同量と実同時同量がある。計画値同時同量とは、実際に電力の消費が行われる一時間
前の発電(供給)計画量と需要計画量を一致させること。この場合、計画と実績の差分は、発電側、需要側それぞ
れにおいてインバランス料金として清算される。実同時同量は 30 分ごとの需要量と供給量の差を±3%以下に抑え
ること。この場合、需要と供給の差分がインバランス料金として清算される。新電力については、当面、計画値同
量と実同時同量の選択制となる。
- 47 -
一方、数年後には蓄電池の価格もある程度下がり、需要家の投資を太陽光発電設備 150 万円、
蓄電設備 150 万円、HEMS10 万円と想定すると、投資回収には 45 年を要することになるが、
停電時の電力確保、環境配慮への満足感に加え、住宅メーカーによる各種サービスにより顧客
の負担を軽減することで、受け入れられる投資の額になると考えられている。また、小規模な
商業施設等も顧客と考えると、ピークデマンドを下げることによる経済性効果も期待できる。
エリアの規模で言えば、20~30 戸(小規模な分譲)から 150~200 戸(ある程度の規模の分譲)
をカバーすることが目標とされている。需給状況のばらつきが大きいほど TEMS(電力融通)
の効果が大きく、20 棟以上をカバーできれば平滑化の効果が現れる。
大口需要家等
電気料
金
送配電事業者
電力余
剰分
インバラ
ンス料
金削減
DRによる系
統側ピーク
カット
DR対
応料
同時
同量
達成
アグリゲータ(TEMS導入)/PPS
電
力
余
剰
分
電
気
料
金
電
気
料
金
電
力
D
R
対
応
料
DR指
示対応
による
ピーク
カット
(将来)
契
約
料
金
削
減
最
大
需
要
低
下
ピーク低減
電
気
料
金
削
減
電
力
購
入
量
削
減
太陽光利用
戸建住宅(HEMS導入)
ピークカット/ピークシフト(負荷
平準化)
電力使用量削減(太陽光)
初期費用
住宅メーカー
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者・パートナー
支払フロー(実)
支払フロー(みなし)
関連機能
図 22 運営スキームの一例
(3)実装の見通し
本事業成果の展開が可能な市場は、まずは、「タウン」を形成しやすく、建設当初から必要な
設備導入を前提に施工できる、新規に開発される住宅地、新規の分譲住宅地であり、将来的には
全国の個々の一般家庭を対象とした事業へも発展できると考えられている。
ビジネスの初期においては、新しい町や宅地開発に合わせ、住宅メーカーが本システムを導入
していくことが想定されている。既築住宅地へ展開する際にはその町の管理会社との折衝により
導入を進めていき、管理会社がない場合は、町内会や自治会、自治体を通して展開していくこと
が考えられている。
- 48 -
(4)実装に向けた課題
TEMS の普及のためには、収益源の拡充及びコストの低減が必要となる。
収益源の拡充に関しては、電力改革が進展し、アグリゲータ及び PPS の事業の幅が広がると
ともに、様々なビジネスモデルが確立されていくことが重要であると考えられる。例えば、送
配電事業者に対して行う配電網の電圧上昇抑制や計画的な PV 発電電力の逆潮による系統負荷
低減サービス価格として、送配電事業者での電力供給予備力の削減分をも含めた適正な設定が
なされることが望まれる。
さらに、コスト低減策に関連して、蓄電池の投資回収を容易にするため、本実証事業におい
て、蓄電池の劣化推定技術を構築し蓄電池の運用ロジックに反映させることで長期に亘り蓄電
池を安定的に運用するための検討が行われたが、本検討結果を踏まえ、三菱重工業株式会社の
社内で改良検討が加えられており、今後実案件への展開が予定されている。
その他、制度的な課題として、実証では、各戸に自営配電線をつなぎ電力融通していたが、
実装する場合は、既存の配電網を使い電力融通することになることが挙げられる。即ち、これ
は、制度上、現在では認められていない蓄電池からの逆潮流に相当するやりとりになるため、
一般送配電事業者との調整が必要となってくる。これに関連して、‘ある需要家’の蓄電池に、
隣地の需要家の余剰電力を一時的に蓄電し、別の需要家の電力使用時に放電、逆潮流すること
になるが、この場合、
‘ある需要家’の電力メーターで一時的に蓄電しただけの電力も計量され
るため、託送費や再エネ賦課金、燃料調整費の課金に関して、これに対応した制度的な仕組み
が必要となる。
また、小売電気事業者が余剰電力を一旦買い取って最終需要家に販売するという売買の仕組
みを適用することが適切と考えられる。しかしながら、家庭の余剰電力予測は、天候と需要の
双方に影響を受けることから非常に難しいことに加え、系統負荷を低減させるためには、実際
の余剰電力量や需要量に追随した蓄電池の充放電制御が必要であるため、改革後電力システム
における計画値同時同量制の下での運用では、大きなインバランスの発生が懸念される。
さらに、一般送配電事業者の配電網を活用する上で、小売電気事業者は送配電事業者の設定
する損失率を加味して、需要量より多く電気を調達する必要がある。需要家蓄電池に一時的に
別の需要家の余剰電力を貯めることによって、電気事業の運用上、損失率を二重に加味するこ
ととなり、需要地で使用可能な太陽光発電電力が少なくなる。また、分譲住宅地など集合立地
の「タウン」内の電力融通においては、実際の損失量は極小さいものと想定されることから、
損失率の適用除外が望まれる。
今後も普及が拡大する太陽光発電電力を、系統の調整代確保を含めた社会コストの増大を最
小限に留めながら面的に有効活用していくためにも、これらの課題を解決していくことが望ま
れる。
5.おわりに
以上のように、本システムは、太陽光発電電力を地域内で有効活用し省エネ・低炭素化を推進す
るとともに、系統への負荷を低減することを目指している。今後太陽光発電の導入がさらに拡大し
ていくことが予想されていることから、本システムが普及していくことが期待される。
- 49 -
IX. ダイナミックプライシングに応じて生産計画を組み替える多品種・小
ロット製造業向け FEMS 技術(北九州市 FEMS:富士電機株式会社)
要旨
 北九州地域実証の事業「生産計画を考慮したFEMSの検証」を対象として、システム構成及
び機能、従来技術との対比及び実装に関する現状と方向性を評価した。
 その結果、ダイナミックプライシングに応じて生産計画を組みかえる FEMS 技術を、多品種小
ロット製造事業者が導入することで、ピークシフトによる電力系統の負荷平準化、システム導
入事業者の電気料金削減といった便益を生み出す可能性があることが明らかになった。
 この技術は今後、ディマンドリスポンス制度の導入に伴う国内展開や、生産計画の実効性の向
上等の課題解決が期待される。
1.システムの目的・意義
富士電機株式会社は、平成 22 年度から平成 26 年度の 5 年間に渡り、経済産業省の次世代エネル
ギー・社会システム実証事業の一つである北九州スマートコミュニティ創造事業(以下北九州市実
証)において、以下に掲げる目的・意義の下、多品種・小ロット製造業の生産計画をダイナミック
プライシングに応じて組み替える FEMS(Factory Energy Management System)の開発および実フィー
ルドにおける効果の実証を行った。
(1)産業部門におけるディマンドリスポンスへの対応
エネルギー供給の制約や再生可能エネルギーの導入に伴い、電力需給逼迫時に供給力を確保す
る手段として、ディマンドリスポンスの重要性が高まっている。特に産業部門は、日本全体の消
費エネルギー量の 44.4%(資源エネルギー庁 2015a)を占めており、ディマンドリスポンスによ
る負荷削減量は大きいと期待されている。資源エネルギー庁(2015b)は、業務・産業部門のディ
マンドリスポンス協力により、全需要の 9%のピークカットが可能と推計している。
本事業において実証された FEMS システムは、主に多品種小ロット生産を特徴とする製造業に
対してディマンドリスポンス(ダイナミックプライシング、以下 DP)を適用し、地域負荷を平
準化することを目的としている。
(2)生産計画を組み替える FEMS
生産設備の消費エネルギーは工場全体の 8 割以上を占める(経済産業省 2015a)。したがって
生産計画を変更することで電力需給逼迫時における電力量削減の実効性が高まるが、一方で生産
現場においては納期や操業時間の維持が重要であり、それらを損なわないよう配慮が必要である。
本事業において実証された FEMS システムは、生産ラインにおける生産実績を所与として、そ
れを大幅には変更することなく、エネルギーコスト削減に向けた改善を提案することを目的とし
ている。
2.システム構成及び機能
本システムの典型的なシステム構成・機能を図 23 に示す。本システムが対象とするのは複数の
生産設備を利用する多品種・小ロットの製造プロセスである27。主にマニュアル操作によって生産
が行われる製造設備に、エネルギー計測機器、FEMS サーバー、現場操作端末といった構成要素か
27 本システムでは、マニュアルで作業される比較的シンプルな生産ラインが想定されており、クリーニング工場の
作業ラインで実証試験が実施された。
- 50 -
らなるシステムを導入する。
製造設備から得られる生産状況、エネルギー計測機器から得られる電力/電力量を FEMS サー
バーで監視する。FEMS サーバーは上位の CEMS から送られてくる DP の発令状況と生産実績(生
産品種別消費電力量)に応じて生産計画を組み換え、現場操作端末に送る。現場のオペレータは
FEMS サーバーより送られた生産計画の内容に応じて生産作業を行っていく。
本システムによって得られる機能は主に以下の通りである
(1)生産計画に基づく電力負荷予測機能
FEMS サーバーは、事業者が納期に応じて作成した生産計画に基づき、生産品種別の消費電力
量・生産時間から全体の電力負荷を予測する。この予測情報は DP に応じて生産計画を組み替え
る際に使用される。生産状況は常に FEMS サーバーによって監視されており、実績に乖離が生じ
た際は生産品種別の消費電力量のデータが更新される。
(2)ダイナミックプライシングに応じた生産計画の組み直し機能
FEMS サーバーは DP の情報と負荷予測情報を用いて、消費電力量が多い品目は電気料金の安
い時間帯に、消費電力量の少ない品目は電気料金の高いに時間帯にシフトするスケジューリング
を提案する。これによってシステム使用者は、操業時間を変更することなく、DP による電気料
金負担を削減できる。また地域の電力供給がひっ迫している時間帯のデマンドを減らすことにな
るため、地域全体での負荷削減に貢献できる。
(3)消費電力量の見える化機能
FEMS サーバーは現場オペレータの操作端末に、生産品種別消費電力量を表示する。これによ
り、オペレータの省エネルギー意識を促すことができる。
本システムの操作画面の一部を図 24 及び図 25 に示す。
生産工程管理に必要な様々なデータが、
詳細にシステムに入力される(図 24)
。本システムはこれらのデータに基づき、電力費用の削減に
資する生産計画を提案する。
- 51 -
上位システム
CEMS
ダイナミックプライシングの発令
システム導入施設
(多品種・小ロットな製造業)
現場操作
端末
ダイナミックプライシングに
応じた最適な生産計画の
提示
FEMS
現場オペレータ
による運用
製造設備
使用電力の
測定
生産実績
の監視
電力計測
機器
使用電力実績
の監視
凡例
システム構成要素
情報
制御
電力
図 23 システム構成の一例
(資料)富士電機提供資料
図 24 FEMS システムへの生産計画入力画面の一例
- 52 -
系統
電力
(資料)富士電機提供資料
図 25
FEMS システムによる生産計画組み換え後の表示画面の一例
3.従来技術との対比
(1)従来の FEMS との差異
従来の FEMS は、主にエネルギーデータ収集機能、データベース機能、監視・管理機能からなっ
ており、FEMS が自動的に生産設備を制御することはない。これに対し本システムはエネルギー
使用量と価格を反映した生産計画を提案するという点が大きな特徴である。
(2)生産計画の策定における特徴
生産計画を策定するアルゴリズムにも特徴がある。DP を前提とした場合、電気料金を単純に
最適化(最小化)すると、単価の高い時間帯に操業を停止するという対応が提案されることにな
る。しかしこれは勤務時間の変更につながり兼ねず、必ずしも実践的な生産計画とはならない。
そこで本システムは、エネルギー使用量に応じて生産品目を入れ替えることで、工場の稼働時間
を変えることなく、DP に対応した生産計画を実現する。
また本システムは、機械システムではなく人が作業する生産設備を対象とするため、提案され
る計画は、オペレータにとって作業しやすいものであることが重要である。本システムは、これ
までオペレータが実際に従ってきた生産計画を参照し、それを少しずつ組み替えた生産計画変更
案を多数作成し、その中で、DP の条件の下で電気料金が最小となる生産計画を見つけるという
アルゴリズムを採用している。クリーニング工場を対象とした北九州市実証では、一日に取り扱
う品種数は約 10 点に及び、生産計画変更の検討のためのコンピュータの計算時間は、30 分程度
を要する。このように厳密な意味での最適化計算ではないものの、現場のオペレータにとっての
変更案の受け入れやすさを追求することで、実効性を高めるという戦略である。
本実証においては、製造スケジューリング見直しによる DP 時間帯の電力ピークシフト率(%)
- 53 -
28は実証時の実績値で 3.9%、理論値は 14%程度であった29。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキーム
図 26 に運営スキームの模式図を示す。事業者が本システムを用いて事業する際に必要となる
費用として、システム導入のイニシャルコストがある。一方で得られる利益としては、DP の協
力による従量電気料金の低減、ピークシフトによる基本料金の低減、省エネルギーによる従量料
金の低減の3つになる。
電力小売事業者は電力逼迫時に DP を用いて需要調整することで、ピーク電源費用を削減でき
る。また地域の負荷平準化という便益も発生する。
(2)実装の見通し
本システムが想定する導入先は多品種小ロットの製造業、その中でも複数の製造システムを有
する、マニュアル工程の多い業種である。製造業においては従来の大量生産方式から、顧客の多
様なニーズにこたえるために多品種小ロット生産への移行が進んでおり、日本企業においても多
品種小ロット生産に柔軟に対応可能できることが重要視されている(経済産業省 2015b)。この
ように多品種小ロット生産への移行が進むと、生産品目ごとに異なる消費エネルギーに応じた生
産計画の重要性は高まると期待される。
ピーク電源費用
負荷平準化
削減
設備会社
電力小売事業者
導入コスト
システムの
導入
ダイナミックプライシング協力
による従量料金低減
ダイナミックプライシング協力
基本料金低減
ピークシフト
従量料金低減
電力購入量削減
本システムの導入事業者
(多品種・小ロットを特徴とする製造業者)
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者
支払フロー(実)
支払フロー(みなし)
図 26 運営スキームの一例
28 電力ピークシフト率=(DP時間帯の生産計画変更前の電力使用量-生産計画変更後の電力使用量)/DP時間帯
の生産計画変更前の電力使用量×100(%)
29 北九州市実証のダイナミックプライシングでは、実証参加者の負担を軽減するため、ダイナミックプライシング
適用により、計算上の電気料金が非適用時の電気料金を上回っても、請求額は非適用時のものを上限としていた。
したがって本来のピークシフトに協力するインセンティブが小さく、節電への働きがけが少なかった。実際にシス
テムを導入する際はそのような支払額の上限は存在しないため、理論値に近いピークシフトが実施されるものと期
待される。
- 54 -
(3)事業性
DP の協力による電気料金の削減、ピークシフトによる基本料金の低減、消費電力量の削減に
よる従量料金の低減の3つが事業者にとってのみなし収入となる。石油換算で 1500 kl を超える
エネルギーを消費する事業者の場合、年間 5%程度電気料金を削減できれば、5 年で初期投資が
回収可能となり、十分なコストメリットを得ることができる。
(4)実装に向けた課題
本システムは DP を前提として、生産計画の組み換えによりエネルギーコスト削減を図るもの
であり、導入に当たっては DP 制度が普及していく必要がある。現在日本ではディマンドリスポ
ンス制度全般の検討がなされており、今後各種社会的制度を整備されていくことが期待される。
生産計画の組み換えに際しては DP に基づいて電力料金が安くなるよう計算が行われているが、
システム導入事業者のデマンド平準化は考慮されていない。そのため冬季の価格設定のように
DP のピークとデマンドのピークが一致しない場合には、基本料金が値上がりする可能性があり、
事業者のデマンド平準化(=基本料金の削減)も考慮した生産計画の組み換えが期待される。
また実証事業においてはオペレータの省エネ意識・省コスト意識が薄く、FEMS が提示する生
産計画に 100%従わないといった課題があり、トップダウンの支持による運用の変更などにより
生産計画の実効性を高める必要がある。
5.おわりに
以上のように本システムは、DP に対応して生産計画を組み換えることでエネルギーコスト削減
を図るものであり、今後の国内外への普及が期待される。特に国内においては今後 DP を含めたディ
マンドリスポンス全般の検討が進むと期待され、本システムの必要性は高まっていくものと考えら
れる。また上位システムである CEMS は多種多様な地域における展開が検討されており(大賀,樺
澤 2013)
、本システムを組み合わせた形での普及が期待される。
参考文献
資源エネルギー庁 2015a:平成26年度エネルギー白書,第 2 部.2015 年 7 月.
資源エネルギー庁 2015b:ディマンドリスポンスについて.2015 年 3 月.
経済産業省 2015a:2015 年度冬季の節電メニュー.2015 年 10 月
経済産業省 2015b:平成26年度ものづくり白書,第1部. 2015 年 6 月
大賀,樺澤 2013:大賀英治,樺澤明裕.北九州スマートコミュニティ創造事業におけるダイナ
ミックプライシング実証事業.富士電機技報,Vol.86,No.3, 2013 年 9 月.
- 55 -
X. 多様な公共交通の効率活用で渋滞緩和と環境負荷低減を実現する、交通
及びエネルギー統合管理システム(豊田市運輸:トヨタ自動車株式
会社)
要旨
 経済産業省次世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「愛知県豊田市における『家
庭・コミュニティ型』低炭素都市構築実証プロジェクト」における「TDMS を介した交通需給
制御の最適化と EDMS 連携」を対象として、システム構成及び機能、従来技術との対比そして
実装状況について評価した。
 実証事業を通じ、交通データ管理システム及びエネルギーデータ管理システム等で構成される
本システムが、地域の交通関連情報を総合的に分析し、交通需給ひっ迫解消に向けた需要家・
供給事業者双方を調整し、モーダルシフトを実現できることが明らかになった。
 本システムは都市の再構築を必要とする先進国や、新たな都市交通インフラの構築ニーズの高
い新興国への展開が期待される。
1.システムの目的・意義
トヨタ自動車株式会社は、平成 23 年度から平成 26 年度の 4 年間に渡り、経済産業省次世代エネ
ルギー・社会システム実証事業の一つである愛知県豊田市における「家庭・コミュニティ型」低炭
素都市構築実証プロジェクト(以下豊田市実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、多様な
公共交通の効率活用で渋滞緩和と環境負荷低減を実現する、交通及びエネルギー統合管理システム
(以下 TDMS-EDMS 連携システム)の開発および実フィールドにおける効果の実証を行った。
(1)運輸部門からの CO2 排出の増大
IPCC(2014)は世界の運輸部門からの CO2 排出について、他のどのエネルギー最終需要部門
よりも速いペースで増加していること、及び 1970 年から 2010 年までの増分(4.2Gt-CO2)の約
80%が自動車由来であることを指摘し、今後の増大要因としてマイカーの普及を挙げている。こ
のことは、自動車単体での排出抑制策だけで自動車の利用量の増加ペースを上回る抑制効果を上
げ続けることが困難であり、自動車を利用する生活者にライフスタイルの変化が求められている
ことを意味している。他方 IPCC(2014)は、ライフスタイル変化による排出抑制は、強力な政
策ツールに支えられなければ十分な水準には至らないとも指摘している。
TDMS-EDMS 連携システムは、自動車から公共交通機関へのモーダルシフトを促進することで、
運輸部門からの CO2 排出を抑制することを目的としている。
(2)電力需給のひっ迫への対応
クリーンな交通手段として期待の高まる電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車だが、
これらの普及は、燃料から電力へのエネルギー転換を引き起こし、電力系統への負担を増大させ
る。従って電力供給力が不足気味の地域への導入に当たっては、需給のひっ迫時に系統からの充
電量を極力少なくできるような配慮が必要である。
TDMS-EDMS 連携システムは、電力需給ひっ迫時に、電気自動車やプラグインハイブリッド自
動車の利用及び充電を抑制するよう生活者に働きかけることで、系統電力の負担増を抑制するこ
とを目的としている。
- 56 -
2.システム構成及び機能
本事業においてトヨタ自動車が実証したシステムの基本構成は図 2 の通りである。交通データ管
理システム(以下 TDMS)が交通需給情報を、エネルギーデータ管理システム(以下 EDMS)が地
域の電力需給情報を管理し、連携して省 CO2・省エネ・電力需給緩和に資する移動ルートや充電行
動を生活者に提案する。
本システムの主要な機能は以下の通りである。
(1)交通需給情報・関連情報の収集機能
TDMS は、交通需給情報として道路の混雑状況、駐車場の満空管理情報、バスの運行情報及び
乗降履歴そして鉄道の運行情報及び乗降履歴をリアルタイムで収集する。また関連情報として、
天気予報、地域行事・観光情報、道路工事情報を収集する。
交通需給情報
バス・電車
関連情報
道路
地域の
天気予報
混雑
情報
ワンマイルモビリ
ティシェアリング
地域のPV
(工事・行事)
満空
情報
サービス
電力需要
イベント情報
駐車場
タクシー
予約
電力需給情報
発電量
情報
電力需要
情報
予約
予約
TDMS
乗降・運行情報
EDMS
エネルギー需給予測情報
各種リコメンド(マルチモーダルルート検索結果、EV
充電スケジュール変更)とインセンティブの提示
増便・配車等、
運行計画関連
の提案
移動者側端末
交通事業者
各種予約
凡例
システム構成要素
情報提供
指示・サービス
図 27 システムの構成と機能
(2)交通需給状況の予測機能
TDMS は、収集した交通需給情報及び関連情報に基づき、近い将来の交通需給状況を予測する。
(3)多種交通機関間での最適ルート検索機能
交通需給状況の予測結果に基づき、TDMS は、乗用車、公共交通、タクシー、ワンマイルモビ
- 57 -
リティ30シェアリングシステムといった様々な交通手段を組み合わせた「マルチモーダルルート」
として、複数の候補を検索し、それぞれの①所要時間、②CO2 排出量、③料金を算出する。この
結果から、各項目の評価結果の上位 3 ルートが選択材料としてドライバーに提示される。①~③
を統合して最適性を評価する方式ではないため、CO2 排出量は少ないがコストや時間の点で劣る
といったルートが含まれることもある。
EDMS が、地域の電力需給予測(太陽光発電システムの発電量及び地域の電力需要予測)の結
果に基づき省電力行動を要請する場合、TDMS は電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車
のドライバーに対し、公共交通等、より系統負荷の低い交通機関の利用を優先的に提示する。ま
たワンマイルモビリティシェアリングサービスに関しては、ルート提案において利用を推奨しな
いことに加え、系統からの充電の停止や定置型蓄電池からの充電を指示する。
(4)インセンティブ付与機能
以上の提案ルートと省電力行動の特性に応じ、TDMS はドライバーに対するインセンティブを
計算する。そして実際のルート選択に応じて、ドライバーにインセンティブを付与する。特に電
気自動車(EV)のドライバーに対しては、EDMS と連携し、デマンドレスポンス(DR)として
充電スケジュールの変更等の提案もオプションとなる。
(5)交通事業者への運行計画関連提案機能
交通事業者に対しては、移動者からの予約要請の管理の他、交通需給状況予測に基づく運行計
画関連の提案機能を有する。即ち需要予測に応じた便の増減や配車すべき車両のサイズを提案し、
移動者の利便性を損なうことなく、交通事業者の旅客輸送の経済効率を改善することができる。
本システムは以上の機能を組み合わせ相乗効果を発揮することで、都市における交通需給の不均
衡是正を通じ、省 CO2 及び電力需給のひっ迫といった課題の解決に向け、需要者と供給者とを橋
渡しする統合交通情報プラットフォームとして機能するよう設計されている。
3.従来技術との対比
(1)交通ナビゲーションシステムとの対比
本システムでは複数の機能が搭載されており、単体で比較すべき従来技術はない。ここでは交
通ナビゲーションシステムと対比した場合の特徴を示す。
第一に、本システムは交通需給の現状だけではなく、将来予測を用いて移動者へのルート案内
や交通事業者への運行計画提案ができる。第二に、自動車からのパークアンドライドを含み、自
動車と各種公共交通を組み合わせたマルチモーダルルート検索が可能である。第三に、移動者に
対するインセンティブ計算やルート推奨を、需給予測に合わせて動的に実施できる。そして
EDMS からの要請があれば、電力需給予測に応じた交通行動の制御が可能である。これらはいず
れも現時点での普及技術には見られない特徴と言える。
以上のように、本システムの基本機能である交通ナビゲーションシステムとして見た場合、生
活者に対し従来技術以上の利便性をもたらすと言える。更に複合される機能により、エネルギー
需給に配慮した形で公共交通への誘導と道路渋滞の軽減が進むと期待される。
30 トヨタ自動車が豊田市実証においてシェアリングサービスの実証を進めた、超小型電気自動車の名称。
- 58 -
(2)豊田市実証で確認された効果
豊田市実証においては、ユーザーによる本システムの利用動態やプロファイルの分析を通じ、
事業化に向けた運用改善の方向性が確認された。
豊田市実証では、モーダルシフトに向けた各種機能を個別に開発・実証したことから、本シス
テムが総合的に導入された場合のモーダルシフト率は確認されていない。トヨタ自動車は過去の
小規模な取り組みの実績31に基づき、本システムによる都市規模でのモーダルシフト率の最終的
な目標値を 10%と設定し、開発に臨んだ。人口 50 万人規模、自動車交通量約 76 万トリップ/日
の都市において、この目標値が達成された場合の効果を試算するとその効果は表 4 の通りとなる
32、33。
表 4 導入効果の試算
項目
CO2 排出削減効果(道路交通流改善によ
る車速向上効果を含む。
)
効果
固有単位
経済価値換算
対価率
-18.5%
(約 13 万 t-CO2/年)
約 1.6 億円※1
0.1%
18 百万人・時間/年
約 490 億円※2
0.02%
自家用車から鉄道へのモーダルシフト
約 830 万人/年
約 25 億円※3
0.1%
自家用車からバスへのモーダルシフト
約 47 万人/年
約 93 百万円※4
0.1%
道路渋滞軽減による時間短縮効果
※1・・・CO2 価格を約 10USD/t-CO2(発電コスト検証ワーキンググループ
※2・・・乗用車の平均乗車人数を 1.30 人(国土交通省道路局
2015)と設定
2015)、乗用車の走行時間短縮便益
計算の時間価値原単位を 2746.8 円(国土交通省道路局都市・地域整備局 2008)と設定
※3・・・平均運賃を 300 円/人と設定
※4・・・平均運賃を 200 円/人と設定
4.4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の模式図を図
2に示す。本システムの導入事業者は、利用者である移動者にルート提案等のサービスを提供し、
対価として利用料金を得る。またここでは、DR 充電スケジュールによる系統安定化への対価を
電力小売事業者から、交通量減による移動時間短縮の経済効果への対価を自治体から受け取るこ
とを想定している。
本システムの事業化において、交通事業者は導入事業者となる可能性と、システム利用者とな
る可能性の二つがある。図2では利用者として位置づけている。交通事業者は、公共交通の利用
者が増加することによる収入増の便益を受けるとともに、需給状況予測に基づく運行計画提案
31 1999 年に豊田市で実施されたカーシェアリングシステムによるパークアンドライド実証「Crayon」において、周
辺道路の交通量が最大 10%程度削減した経験から、この水準を目標値とした。
32 本試算はトヨタ自動車提供資料に基づき、MURC が実施した。
33 2014 年 11 月に行われた実証試験では、参加者(325 人)のモーダルシフト率は 35%(106 人)に達した。豊田市
実証におけるモーダルシフト率の実証値として挙げるならばこの値となるが、都市規模での成果を目指す立場から
すれば、規模の乖離が大きいことから、あくまで参考値に留まる評価となる。
- 59 -
サービスによって更に運行を効率化できる。ただしこれらに伴い、交通事業者側の燃料消費量や
CO2 排出量は増大する。
本システムを利用する移動者は、導入事業者に利用料金を支払うほか、公共交通機関利用に伴
う支払が発生する。また自家用車利用が減った分燃料費は低下するが、一方で稼働率低下に伴う
みなしコストは増加する。インセンティブ提案に応じた場合は、導入事業者から支払を受けるこ
とになる。
(2)事業性
本システムをクラウドサービスとして提供するなどのビジネス上の工夫により、事業展開先の
増加に伴う初期投資・運用費用増分を極力抑制するものと仮定する。このとき、50 万人規模の都
市が展開先として追加された場合の限界費用は、初期投資が約 10 百万円程度、運営費用が約 10
百万円/年程度、と考えられる。これに対し、表 4 で示された各効果の経済価値に対し、受益者
である自治体及び鉄道・バス事業者から、対価率に示した対価を得られれば、収益は約 13 百万
円/年となり、初期投資を 3-4 年で回収することが可能となる34。
(3)実装の見通し
本システムが自家用車から公共交通へのモーダルシフトを主たる目的としていることから、導
入先の地域には、ある程度の公共交通機関が整備されている必要がある。トヨタ自動車は、一定
規模の移動交通量が存在するとともに、バス・鉄道などの代替交通手段が豊富に存在する地域に
おいて、より効率的な運用が可能になるとしている。
本システムは交通需給改善という交通システムとしての便益に加え、
省 CO2 や電力需給のひっ
迫への対応という社会課題への対応力を備えており、今後の国内外への普及が期待されている。
トヨタ自動車は、2020 年代初旬までの主要な市場としては、既に交通課題が深刻化しており、か
つ必要な法規の整備が進んでいる先進国の都市部を、2020 年代中旬以降については都市化が進展
し交通課題が増大する新興国での事業展開を想定している。
34 本試算は、トヨタ自動車提供資料に基づき、MURC が実施した。
- 60 -
ピーク電源費用削減
通信
設備
O&M
事業者
会社
会社
TDMS/
EDMS
の設置
TDMS/
EDMS
の運用
通信
設置
コスト
通信費
移動時間
短縮の経
済効果
現地自治体
交通量減便益
(経済効率化、
CO2削減)
運用
コスト
電力小売事業者
対価
系統安定
化
電力ピークカット
対価
本システムの導入事業者
マルチモーダ
ルルート/
ルート変更等
提示
インセン
ティブ支払
増便・配
車等運行
計画関連
の提案
システム利用料金
燃料/
電力消
費増加
CO2増
鉄道・バス・
ワンマイルモビリ
ティシェアリング
事業者
燃料
費増
DR充電スケ
ジュール提示
DRインセン
ティブ支払
システム利用料金
公共交通に
よる移動増
移動者
利用増によ
る支払増
稼働率向上による
見なしコスト削減
特に
EVドライバー
燃料費/
充電費減
燃料/電
力消費削
減
CO2削減
稼働率低下による
見なしコスト増加
凡例
本システムの直接の関与者
便益フロー(負の内容を含む。)
本システムの主要事業者・パートナー
支払フロー(実)
本システムの最終利用者
支払フロー(みなし)
図 28 運営スキームの一例
(4)実装に向けた課題
本システムが導入・運用された場合、大きな社会的便益を生むことが期待されるものの、現在
のところ表 4 に示すような便益を事業者に還元する制度は確立されていない。実装に向けては、
このような便益に関する社会的な合意の形成が待たれるところである。
5.おわりに
以上のように、本システムは近未来の総合交通管理技術として、着実にその実用性を高めつつあ
る。今後は TDMS 及び EDMS との連携の高度化、燃料電池バスと連携した地域電力供給、貨物及
び旅客事業者を主要ターゲットとしたカスタマイズについても、発展余地は大きい。
- 61 -
参考文献
IPCC 2014: “Transport,” Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change, Chapter8 (April 2014),
599-670.
地球温暖化対策推進本部 2014:京都議定書目標達成計画の進捗状況.2014 年 7 月.
国土交通省道路局都市・地域整備局 2008:費用便益分析マニュアル.2008 年 11 月.
国土交通省道路局 2015:道路交通センサスからみた道路交通の現状、推移(データ集),2
OD
調査からみた道路交通,available from <http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/data_shu.html>,
(accessed 2015-12-15).
発電コスト検証ワーキンググループ
2015:発電コストレビューシート.2015 年 5 月.
- 62 -
XI. 公共交通から目的地のラスト・ワンマイルを結ぶ超小型電気自動車シェ
アリングシステム(豊田市運輸:トヨタ自動車株式会社)要旨



経済産業省次世代エネルギー・社会システム実証事業の一つである「愛知県豊田市における『家
庭・コミュニティ型』低炭素都市構築実証プロジェクト」における「ワンマイルモビリティを
通じた次世代型末端交通システムの導入」を対象として、システム構成及び機能、従来技術と
の対比そして実装状況について評価した。
実証事業を通じ、超小型電気自動車及び交通データ管理システム等で構成される本システムが、
公共交通との接続、移動自由度の拡大を実現し、乗用車からのモーダルシフトを実現できるこ
とが明らかになった。
本システムは都市の再構築を必要とする先進国や、新たな都市交通インフラの構築ニーズの高
い新興国への展開が期待される。
1.システムの目的・意義
トヨタ自動車株式会社は、平成 23 年度から平成 26 年度 4 年間に渡り、経済産業省次世代エネル
ギー・社会システム実証事業の一つである愛知県豊田市における「家庭・コミュニティ型」低炭素
都市構築実証プロジェクト(以下豊田市実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、公共交通
の末端交通としてラスト・ワンマイルを補完する超小型電気自動車(以下ワンマイルモビリティ)
シェアリングシステムの開発および実フィールドにおける効果の実証を行った。
(1)運輸部門からの CO2 排出の増大
IPCC(2014)は世界の運輸部門からの CO2 排出について、他のどのエネルギー最終需要部門
よりも速いペースで増加していること、及び 1970 年から 2010 年までの増分(4.2Gt-CO2)の約
80%が自動車由来であることを指摘し、今後の増大要因としてマイカーの普及を挙げている。
ワンマイルモビリティシェアリングシステムは、公共交通機関の末端から利用者の目的地まで
のラスト・ワンマイルを補完することによって、過剰なインフラ投資をすることなく公共交通の
利便性を増すことで自動車からのモーダルシフトを促進し、結果的に運輸部門からの CO2 排出
を抑制することを目的としている。
(2)電力需給のひっ迫への対応
電気自動車であるワンマイルモビリティの普及は、エンジン車での燃料消費から電力消費への
エネルギー転換を引き起こし、結果として電力系統への負担を増大させる可能性がある。従って
電力供給力が不足気味の地域へ導入するに当たっては、需給のひっ迫時に系統からの充電量を極
力少なくできるような配慮が必要である。
ワンマイルモビリティシェアリングシステムでは、電力需給ひっ迫時の充電を抑制するよう生
活者に働きかけることで、系統電力の負担増を抑制することを目的としている。
2.システム構成及び機能
本事業においてトヨタ自動車が実証したシステムの基本構成は図 1 の通りである。本システムは、
定員 1~2 名、全長 2.4 m×幅 1.1 m、1 充電当たりの走行距離約 50 km の超小型電気自動車である
ワンマイルモビリティを用いたカーシェアリングシステムである。交通データ管理システム(以下
TDMS)はエネルギーデータ管理システム(以下 EDMS)と連携し、地域の交通需給情報と電力需
給情報を統合する。管理センターはワンマイルモビリティ及び充電機能付き駐車場の利用を管理し
- 63 -
つつ、TDMS の情報を活用し、移動者に低コスト・省 CO2・省エネに貢献する移動ルートを提案す
る。
本システムの主要な機能は以下の通りである。
(1)交通需給情報・関連情報の収集及び交通需給状況の予測機能
TDMS は、交通需給情報として道路の混雑状況、駐車場の満空管理情報、バスの運行情報及び
乗降履歴そして鉄道の運行情報をリアルタイムで収集する。また関連情報として、天気予報、地
域行事・観光情報、道路工事情報を収集する。これらに基づき、近い将来の交通需給状況を予測
する。
(2)最適配車及び配回送管理機能
管理センターは、TDMS の予測及び予約情報に基づき、各駐車場に適切な台数のワンマイルモ
ビリティを配置する。配置に当たっては、配回送事業者に委託して実施する他、利用者にインセ
ンティブを提示したうえで協力を依頼する「インセンティブ配回送」も実施する。このような偏
在解消のメカニズムを導入することで、本システムではユーザーの片道利用を可能としている。
(3)ピークシフト充電機能
EDMS が、地域の電力需給予測(太陽光発電システムの発電量及び地域の電力需要予測)の結
果に基づき、省電力行動を要請する場合、TDMS はワンマイルモビリティへの充電のタイミング
をずらすことで、電力系統への負荷を緩和する。
バス・電車
道路
運行情報
混雑情報
地域行事・
観光情報
関連情報
凡例
システム構成要素
TDMS
情報提供
指示・サービス
公共交通連携、交通需給予測
配回送のインセンティブ付与
管理センター
予約等
インセンティブ配回
送情報
配回送指示
混雑情報
位置・運行
情報
移動者側端末
充電機能付き
配回送事業者
配回送
駐車場
利用者
充電
ワンマイル・モビ
インセンティブ配回送
リティ
移動手段の提供
図 29 システム構成の一例
- 64 -
3.従来技術との対比
本システムの特徴を従来技術と対比して示す場合は、単独の移動手段としてのワンマイルモビリ
ティの他の移動手段との対比と、シェアリングシステム全体としての対比がある。それぞれを以下
に示す。
(1)エンジン車及び電気自動車との対比
ワンマイルモビリティは現状では乗用車と競合する。ここでは既存の自動車経路における比較
と、それ以外の比較を試みる。
既存の自動車経路として、豊田市実証で最も多く観察された移動経路(鉄道駅 A から企業 B
までの約 11.2km)を想定する。これについて①マイカー(ガソリン車)のみで移動した場合と、
②公共交通とワンマイルモビリティを組み合わせて移動した場合とで費用を比較すると、①では
約 580 円35、②では 590 円36と、コスト面ではほとんど差が現れない。
次に既存経路以外での比較を試みる。車体専有面積の小ささは、ワンマイルモビリティの最大
の特徴であり、交通混雑の激しい都心部での走行能力や、駐車スペースが確保できず従来の乗用
車でアクセスできなかった地点へのアクセス性能が向上している。ワンマイルモビリティには、
公表交通末端からのラストワンマイルとして、移動自由度の拡大が期待できる。
(2)従来のカーシェアリングサービスとの対比
従来のカーシェアリングサービスには、実効的な車両偏在解決策がなく、片道利用ができない
37。これに対し本システムでは、片道利用が可能であり、実際総利用の 85%以上が片道利用であ
り、移動車のニーズに合致したシステムであることが伺える。車両偏在は当然発生するが、市内
の短距離移動であり、偏在是正の輸送は効率的に行いやすい。また今後は利用者へのインセン
ティブ配回送の更なる改善も期待される。
駐車場の確保の可能性についても、車体専有面積の小さい本システムが有利と言える。駅前、
公共施設前などアクセスの良い場所に駐車場を設置できれば、利便性を向上できる。
以上のように、本システムを移動手段として見た場合、生活者に対し従来技術と同等以上の利便性
を提供するものと期待される。
(3)豊田市実証で確認された成果
豊田市実証において、本システムは 3,000 名以上の会員を獲得し、ユーザーの支持を得られるサー
ビスとなっていることが確認された。また会員の利用動態やプロファイルの分析を通じ、事業化に
向けた運用改善の方向性を確認された。
低 CO2 効果について分析すると、主たる効果は乗用車から公共交通へのモーダルシフトから得
35 車両費 165 万円(償却 9 年)、自動車税 3.45 万円/年、保険料 3 万円/年、ガソリン代 138 円/リットル(2013
年 11 月現地)、燃費 20km/l、駐車場代 5770 円/月(2013 年 11 月現地)、乗用車の走行距離 9120km/年と仮定。
36 鉄道料金 330 円(2013 年 11 月現地)、ワンマイルモビリティ利用料 260 円と仮定。
37 カーシェアリングサービスにおいて、ユーザーにとって片道利用が重要となることについては、既に指摘されて
いる点である。自動車メーカーのダイムラー社が 2009 年から展開している、小型車によるカーシェアリングサー
ビス「car2go」でも、片道利用が可能である点が注目を集めている。
- 65 -
られる。日本全国の人口集中地区に導入した場合38の CO2 削減効果は約 34 万トン CO2 と試算され
る。これは政府による交通部門における排出削減見込量の 1 割程度に相当する。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキームの例
本システムを活用した事業の利害関係者、キャッシュフロー及び想定される便益の模式図を図
2に示す。本システムを用いて事業を実施する主体(OMM 事業者)は利用者にサービスを提供
し、対価として利用料金を得る。またここでは、ピークシフト充電による系統安定化への対価を
電力小売事業者から、交通量減による移動時間短縮の経済効果への対価を自治体から受け取るこ
とも想定している。
OMM 事業者のコストとしては、利用者が配回送に協力した際のインセンティブ、配回送コス
ト、管理システムの運用コスト、通信コスト、設備構築等のイニシャルコストがある。
ワンマイルモビリティを利用するドライバーは OMM 事業者に利用料金を支払うほか、公共交
通機関利用に伴う支払が発生する。また自家用車利用が減った分燃料費は低下するが、一方で稼
働率低下に伴うみなしコストは増加する。
鉄道・バス事業者ついては、本システムの普及により稼働量・稼働率とも改善すると期待され
る。鉄道・バス事業者側では、燃料消費量や CO2 排出量が増大する。
ピーク電源費用削減
通信事
設備
O&M
配回送
現地自治
業者
会社
会社
会社
体
対価
TDMS/管 TDMS/管 配回送
理センター 理センター
の運用
の設置
通信
通信費
設置
コスト
運用
コスト
移動時間
短縮の経
済効果
交通量減便益
(経済効率化、
CO2削減)
配回送
コスト
電力小売
事業者
系統安定
化
対価
電力ピー
クカット
ワンマイルモビリティ(OMM)事業者
OMM移動
サービス
ピークシフト充
電/配回送
システム利用料金
インセンティブ
燃料消費
削減
利用者(自動車ドライバー)
CO2削減
公共交通移動増
移動増に
よる支払増
燃料消費増
自動車燃
料費減
自動車稼働
率低下によ
る見なしコス
ト増加
凡例
本システムの直接の関与者
本システムの主要事業者・パートナー
鉄道・バス事業者
CO2増
本システムの最終利用者
燃料費増
過剰インフラ投資回避の
見なしコスト削減
便益フロー(負の内容を含む。)
支払フロー(実)
稼働率向上による
見なしコスト削減
支払フロー(みなし)
図 30 運営スキームの一例
38 人口約 8600 万人の 10%が入会するシナリオを設定。その内 37.5%が自家用車走行距離を 9.4%低減、4.2%が自家
用車利用を全廃と仮定(仮定は全て関連調査結果からの推定)。
- 66 -
(2)事業性
OMM 事業者の主な費用としては、車両費(車両・車載器減価償却費、保守費)、システム費(運
用管理システム減価償却費、保守費)
、ステーション費(ステーション設備減価償却費、保守費、
用地賃借費)
、運用費(スーパーバイザー、コールセンタースタッフ、保守配回送スタッフ等の
人件費)がある。一方事業収益はユーザーからの利用料金が中心であり、現地自治体や電力小売
り事業者とどの程度の提携が可能かは見通しが立てづらい。
トヨタ自動車の提供データに基づく試算では、1 都市で 200 車分の駐車枠と 100 車両を配置し
た程度では、事業性は確保できない。しかし展開先を 5 都市に拡大し、各都市に 600 車分の駐車
枠と 300 車両を配置した場合は、規模効果や原価低減効果により事業利益が発生し、初期開発費
も約 6 年で回収できるという39。
(3)実装の見通し
小型電気自動車システムの活用が期待される導入先について、国土交通省都市・地域整備局
(2010)は市街地と観光地を挙げている。それぞれへの導入の効果について以下で分析する。
① 交通過密地域
道路渋滞に深刻な地域では、渋滞緩和を目的とした導入が想定される。日本の乗用車利用を見
ると、移動機会の 93.7%で移動距離 30km 未満、平均乗車人数 1.30 人であり(国土交通省道路局
2015)
、この移動需要は定員 1-2 名、航続距離約 50km のワンマイルモビリティで十分対応でき
る。一般的な乗用車の利用者が本システムを利用するようになれば、公共交通への乗り換えとワ
ンマイルモビリティの車体の小ささの効果により、渋滞緩和に貢献できる。
② 活性化が求められている中心市街地
地方都市では商業施設を中心に、施設の郊外化が進んでいる。郊外に点在している複数施設の
回遊手段としてワンマイルモビリティを導入し公共交通機関と連携することで、市街部からの交
通利便性を向上させ、公共交通の利用増加と中心市街地の活性化を図ることができる。
③ 公共交通手段が不十分な地域
東京の湾岸地域などのように、旧市街地からやや離れた場所に新開発された新興市街地では、
必ずしも交通インフラが充実していない。本システムの導入により、公共交通や交通インフラへ
の投資を抑制しつつ、生活者の移動利便性を向上できる。
④ 観光地など回遊手段が必要な地域
観光地では、観光施設間での回遊性が重視される。また地方では乗用車が入れない細い路地も
多いことから、本システムが有効に機能すると期待される。返却の手間がないという本システム
の利便性は、観光客からは生活者以上の評価を受ける可能性がある。
(4)導入事例
トヨタ自動車はワンマイルモビリティを含む都市交通システム「Ha:mo」を展開している(図
31)
。商用導入は行われていないものの、豊田市実証の後もグルノーブル(フランス)、東京都、
本部半島(沖縄県)などで実証実験を行っている。
39 本試算は 2013 年度のトヨタ自動車提供資料に基づく。現時点での同社の推定とは異なっている可能性がある。
- 67 -
① グルノーブル
フランス南部のグルノーブル市では自治体主導の基、環境配慮と利便性向上を両立する交通シ
ステムの整備が進められており、本システムの有効性と事業採算性が検証されている。この事業
にはグルノーブル市の他、広域自治体、シテ・リブ社(カーシェアリング事業者)、フランス電
力公社などが参加している。
② 東京
駐車場事業者であるパーク 24 グループの協力の下、2015 年 10 月 20 日からの半年間、シェア
リングサービスの実証実験「Times Car PLUS ×Ha : mo」を実施している。本サービスでは東京
駅周辺から臨海エリアにかけて、ワンマイルモビリティが配置されており、様々な移動が集積す
る大都市での公共交通を補完する移動サービスの実現を目指している。
③ 沖縄・本部半島
本部町観光協会、今帰仁村観光協会、旅行代理店である JTB グループ、などと連携した観光サー
ビス「ちゅらまーい Ha : mo」の実証実験を 2016 年 1 月から実施する。本サービスは超小型自動
車ならではの観光スポット巡りを提供するもので、ワンマイzルモビリティに取り付けられたタ
ブレットの情報に従いながら、乗用車ではアクセスしづらい場所にある観光名所を回遊し、環境
保全と環境振興への寄与を目指している。
(資料)トヨタ自動車提供資料
図 31 Ha:mo RIDE の主な特徴
(5)実装に向けた課題
本システムの実装に関しては、今後関連制度の整備が必要となる。第一に、超小型モビリティ
の取り扱いに関する制度が挙げられる。当該モビリティの認定制度やガイドラインの高度化、車
両区分に関する制度の拡充は、本システムの普及を支えると期待される。第二には、車両のレン
タル・リース事業に関する制度が挙げられる。保管場所の確保等の義務が緩和されることによっ
て、無人貸し渡しや片道利用のより柔軟な事業化が可能となる。
- 68 -
5.おわりに
以上のように、本システムは移動利便性の質的・量的向上という交通システムとしての便益に加
え、省 CO2 や電力需給のひっ迫への対応という社会課題への対応力を備えており、今後の国内外
への普及が期待されている。トヨタ自動車は、2020 年代初旬までの主要な市場としては、既に交通
課題が深刻化しており、かつ必要な法規の整備が進んでいる先進国の都市部を、2020 年代中旬以降
については都市化が進展し交通課題が増大する新興国での事業展開を想定している。
また本システムについては、更なる技術的な発展も期待されている。TDMS 及び EDMS との連携
を高度化し、交通及びエネルギー需給とのマッチングの精度を高めることは、社会的便益と本シス
テムの事業性を高めることになる。自動運転技術が実現すれば、配回送費用は大幅に低減できる。
高齢者等外出困難者向けのシステムを構築できれば、これまでとは異なる導入先が生まれる。都市、
コミュニティの発展に合わせた、多様なアプリケーションの可能性を持つシステムとして、更なる
発展が期待される。
参考文献
IPCC 2014: “Transport,” Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change, Chapter8 (April 2014),
599-670.
国土交通省道路局 2015:道路交通センサスからみた道路交通の現状、推移(データ集),2
OD
調査からみた道路交通,available from <http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/data_shu.html>,
(accessed 2015-12-15).
国土交通省都市・地域整備局 2010:電気自動車等の導入による低炭素型都市内交通空間検討調
査(その1)業務報告書,2010 年 3 月.
地球温暖化対策推進本部 2014:京都議定書目標達成計画の進捗状況.2014 年 7 月.
- 69 -
XII. 燃料電池自動車からの外部給電システム(北九州市運輸:本田技研工
業株式会社)
要旨
 北九州市実証の事業「燃料電池自動車からの V2H による電力平準化効果の実証」を対象として、
システム構成及び機能、従来技術との対比及び実装に関する現状と方向性を評価した。
 その結果、燃料電池自動車からの外部給電システムは、災害時においては地域拠点におけるエ
ネルギー供給確保に資するとともに、平常時においては地域コミュニティにおける V2H を通じ
たピークカットの実現、といった便益を生み出す可能性があることが明らかになった。
 この技術は、本格的な水素社会到来時に向け、更なる普及拡大が期待される。
1.システムの目的・意義
本田技研工業株式会社は、平成 24 年度から平成 26 年度の 3 年間に渡り、経済産業省次世代エネ
ルギー・社会システム実証事業の一つである北九州スマートコミュニティ創造事業(以下北九州市
実証)において、以下に掲げる目的・意義の下、燃料電池自動車(以下 FCV)からの外部給電シス
テム(以下「FCV-非常用 V2L(Vehicle to Load)システム」及び「FCV-V2H(Vehicle to Home)シ
ステム」
)に関する実証を行った。
(1)非常時における地域拠点のエネルギー確保
2011 年 3 月の東日本大震災の後、公共施設、病院などの重要拠点におけるエネルギー確保の重
要性は強く認識されることとなった。しかし 2015 年 11 月の時点においても、地方自治体におけ
る非常用電源の不備が指摘されるなど(消防庁 2015)、その整備は十分に進んでいない。このよ
うな状況を鑑みて、FCV-非常用 V2L システムは、FCV からの外部給電実現を通じて、公共施設、
病院など非常時における重要拠点のエネルギー確保に貢献することを目的としている。
(2)家庭での V2H を通じたピークカットの実現
東日本大震災を契機として、電力供給の制約が顕在化し、需要側においても地域単位で節電や
ピークカットに取り組むことの重要性が高まっている(資源エネルギー庁 2014)。FCV-V2H システ
ムは、一般家庭にも FCV 普及が進んだ社会環境をイメージしている。非常時に限定せず、平常
時においても、FCV から住宅へ外部給電を実施し、この V2H 実現を通じて、スマートコミュニ
ティ全体の電力ピークカットを図ることを目指している。
2.システム構成及び機能
同社は、上記実証結果から得られた知見をベースに、事業化に向けたプロセスとして 2 段階の
プロセスを描いている。第 1 段階で、平常時には車両からの外部電源として利用可能な外部給電
用インバータボックスを搭載した FCV を、非常用 V2L システムとして、早急に導入を図ること
を目指している。具体的な導入サイトとしては、公共施設、病院など非常時における重要拠点を
念頭に置いており、当該施設に対して必要な接続設備を設置し、FCV からの外部給電が可能なシ
ステムを構築する。
続く第 2 段階では、水素社会到来時を念頭に置いており、一般家庭にも FCV 普及が進んだ社
会環境をイメージしている。非常時に限定せず、平常時においても、FCV から住宅へ外部給電を
実施し、この V2H 実現を通じて、スマートコミュニティ全体の電力ピークカットを図ることを
目指している。
- 70 -
非常時に限定した
「非常用V2L」実現
FCV普及拡大・
水素供給インフラ構築…
非常時・平常時に対応した
V2H実現
図 32 非常用 V2L と V2H
上記の通り、非常用 V2L と V2H では事業化に向けたイメージが異なっており、システム構成
及び機能も異なっている。以下、それぞれの詳細を示す。
(1)非常用 V2L による外部給電
本システムの装備として、主に FCV 関連技術、負荷側接続設備が挙げられる。
① FCV 関連技術
FCV 関連技術としては、FC 単体に加え、自動車に搭載可能な可搬型インバータボックス等の
開発が必要となる。北九州における実証では、Honda FCX クラリティの改良に加え、外部給電用
の可搬型インバータボックスの開発により、非常用 V2L の実現を図っている。
② 負荷側接続設備
外部給電実施にあたり、負荷側においても接続設備を敷設する必要がある。具体的には、必要
な機器等を格納したジャンクション・ボックス(J/B)などの開発が必要とされる。
系統電力
非常時における重要サイト
(公共施設、病院など)
FCVから外部給電
J/B
FCV
電力供給
受電切替盤
インバータ
図 33 非常用 V2L システム構成及び機能
なお北九州実証事業では、FCV から公共施設への非常用給電実証試験施設として、北九州市いのち
のたび博物館の蓄電池への V2L 非常用給電施設を設置し、燃料電池電気自動車からの非常用給電実
証試験を 28 回実施した。
非常用 V2L 実証試験の累積給電時間合計は 38 時間に達し、給電量は 86kWh
であった。併設のテントエリアの照明を常時点灯させることで、車両から電気が供給されているこ
とを視覚的に理解でき蓄電設備への給電量は 48kWh であり発電量の 55%を占めた。
- 71 -
(資料)本田技研工業提供資料
図 34 北九州実証における FCV から V2H の様子
(2)V2H による外部給電
将来的にスマートコミュニティ全体の電力ピークカット・電力平準化を視野に入れると、本シ
ステムの実装機能としては、FCV 関連技術、負荷側接続設備に加え CEMS 連係技術も必要とさ
れる。コミュニティ全体で V2H を実現することにより、家庭内では電力料金(特に基本料金)
の引き下げ、コミュニティ全体ではピークカットによる発電設備投資回避が達成される。
① FCV 関連技術
非常用 V2L と同様に、FC 単体に加え、搭載可能な可搬型インバータボックス等の開発が必要
となる。
② 負荷側接続設備
外部給電実施にあたり、住宅に対して接続設備を導入する必要がある。よりコンパクトな J/B
などの開発が必要となる。
③ CEMS 連係技術
V2H 外部給電を実施した住宅など、複数施設を CEMS 連係技術により制御し、コミュニティ
全体の電力ピークカット・電力平準化を図る。具体的には、CEMS から住民に対する電気料金を
通じた需要削減の情報の提供を受け、
系統電力から V2H 外部給電に切替えることにより電力ピー
クカットを実施する。その実績データは CEMS で収集・保存される。将来的には系統電力と外部
給電の切り替えをフィールドコントローラを通じた制御をおこないコミュニティ全体のピーク
カット等に貢献する。
- 72 -
住宅
CEMS
制御
FCVから外部給電
J/B
FCV
系統電力
フィールド・
コントローラ
制御
電力供給
受電切替盤
インバータ
図 35 V2H のシステム構成及び機能
なお北九州実証事業では、FCX クラリティと FCV に搭載して使用する家庭への給電が可能な可
搬型インバータボックスを用いて、一戸建て住宅である北九州エコハウスへの V2H 給電実証を
80 日以上実施し、その V2H 給電実証によるスマートコミュニティの電力ピークカット/電力平
準化への効果を検証した。V2H 実証試験の累積給電時間合計は 473 時間に達し、給電量は 802kWh
であり CO2 削減量は 272 ㎏であった。仮に上記実績平均ペースで年間を通して V2H による家庭
への給電が実施されると、年間 3,600kWh の電力を供給することになり平均的な一般家庭の消費
電力すべてに相当し、CO2 削減量は 1,200 ㎏以上になる。
3.従来技術との対比
(1)非常用 V2L による外部給電
現状では、非常時重要拠点における、系統電力途絶時の電力調達手段としては、ディーゼル等
の化石燃料による非常用発電機による発電、また蓄電池による放電等に限定されている。これら
の調達手段は、非常時のみの利用を前提とした場合、特に後者に関しては、過度な導入費用がか
かるとともに、保管・設置スペース、維持管理費用等を鑑みると、必ずしも費用対効果に優れた
ものとは言えない可能性もある。例えば、小学校が災害拠点としての役割を兼ねている場合、当
該施設に、災害時に必要な蓄電池容量を常時維持・管理するのは負担が大きい。
一方、非常用 V2L は、負荷側に J/B 等の簡易接続設備を導入するだけであり、負荷側の導入費
用は低廉なものとなっている。外部給電機能を搭載した FCV は、平常時においては自動車とし
て通常通り利用され、非常時の場合のみ、“移動型外部給電機器”として、災害拠点を次々と巡
回し電力供給を行う。このように追加的な便益の創出により、拠点側に負担をかけずに V2L に
よる災害対応型電力システムを構築することが可能である。
なお北九州市における実証試験では、インバータの最大定格が 9kW であり、7 時間程度かけて、
約 60kWh(注:一般家庭の電力需要は 10kWh/日程度)の電力供給が可能となっている。
(2)V2H による外部給電~平常時の場合
系統電力からの電力供給に加えて V2H による外部給電を実施することにより、ユーザーは、
電力調達のオプションを持つことが可能となる。これにより将来的には、ユーザー側の選択行動
に基づく、スマートコミュニティの電力ピークカット/平準化等にも寄与することが可能となる。
具体的には、電力需給逼迫時においてピークカット要請があった場合、消費者は、価格インセ
- 73 -
ンティブを参照しつつ40、系統由来の電力使用量を減らす一方で FCV からの外部給電量を増やす
という行動パターンをとることにより、利益を創出することが出来る可能性がある。また CEMS
連係によりこのような個人の行動をスマートコミュニティ全体に伝播させることによって、地域
全体としてのピークカット/平準化に寄与し、発電設備投資回避への効果も期待することが出来
る。
表 5 従来技術との対比
非常用 V2L による外部給電
V2H による外部給電
~平常時の場合
概要
外部給電機能を搭載した FCV による電力
巡回供給
⇒負荷側には、J/B 等の簡易接続設備を
導入
外部給電機能を搭載した FCV を CEMS
連係
⇒スマートコミュニティのピークカット/平準
化に寄与
従来技
術
ディーゼル等の化石燃料による非常発電
機による発電(蓄電池との組み合わせも
可)
特に無し
主なメ
リット
 イニシャルコスト低減
 保管・スペース削減、維持管理費用
低減
 非常時・平常時兼用が可能


発電設備投資回避への効果
価格インセンティブに基づく選択肢の
提供
また電気自動車(以下 EV)からの外部給電システムとの比較に関して言えば、EV の場合は発
電機能について具備しないのに対し、FCV は自ら発電することも可能であり、柔軟なシステム構
築が可能となっている。
4.実装に関する現状と方向性
(1)運営スキーム
非常用 V2L システムにおいて、主な事業顧客になるのは公共施設(医療・福祉施設、国公立
および民間研究所、学校等)であり、これら施設に対して J/B など必要な接続設備を導入する。
また外部給電機能を搭載した FCV についても、当面は、自治体自らが公用車として導入を図る
ことを念頭においている。
一方、V2H システムの場合、事業顧客となるのは、住宅所有者であり、これらのユーザーに対
して自動車も販売する。電力会社との供給契約に基づき、スマートコミュニティの電力ピーク
カット・ピークシフトに貢献することにより、利用料金低減等に係る措置を受けることが可能に
なる。
40 なお北九州市における CEMS 実証試験では、ピーク制料金(CPP: Critical Peak Pricing)を 150 円/kWh(午後 1~5
時)と設定した場合において、22.2%のピークカット効果が得られることが実証されている。
- 74 -
非常用V2Lによる外部給電
電力会社
水素供給インフラ
電力
供給契約
公共施設等
外部給電
水素St
FCV
FCV
対価
⇒ 水素料金
水素供給
V2Hによる外部給電~平常時の場合
電力会社
水素供給
イン フラ
提供価値
⇒ ピ ークシフト・
ピ ー クカット
対価
⇒ 利 用 料金
削減
提供価値
⇒ ピ ークシフト・
ピ ー クカット
対価
⇒ 利 用 料金
削減
電力
供給契約
住宅
住宅
外部給電・充電
水素St
FCV
FCV
対価
⇒ 水素料金
水素供給
図 36 事業運営スキーム
(2)実装に向けた課題
特に V2H による外部給電による事業運営スキームがビジネスとして成立するためには、FCV
の普及拡大が不可欠である。従って、水素という観点でエネルギー供給リスクの分散(レジリエ
ンス)を図り、エネルギー供給の多様化を進展させるという視点で FCV 普及拡大に取り組むこと
が必要である。
また FCV 普及には、水素供給インフラの拡充が不可欠であるが、現状では、大規模な設備で
水素を大量供給する都市圏向けのインフラ整備が中心となっている。本田技研工業が岩谷産業株
式会社と共同開発したスマート水素ステーション(SHS: Smart Hydrogen Station)は、それを補完す
る形で、小さな地方都市などでも少ない投資で水素供給インフラを整備できることを念頭に置い
て設計されたものである。このような水素供給インフラの拡充を積極的に支援していくことも実
装に向けた課題となる。
- 75 -
5.おわりに
本田技研工業は、FCV 外部給電試験の推進により、ユーザーに対して FCV の新たな価値を提
供することを通じて、水素社会へ向けた FCV 普及に寄与してきた。FCV 外部給電は、非常用 V2L
に加え、V2H によるスマートコミュニティの電力ピークカット・平準化につながる可能性を内包
している。 本田技研工業は、自動車関連技術及び発電関連技術の双方において優れた技術を有
しており、外部給電を核とした FCV の普及拡大に向けて、重要な役割を果たしている。非常用
V2L 及び V2H の実現により、自動車がまさしく地域コミュニティの一部として組み込まれ、水
素社会構築に向けた必要不可欠な要素として機能することが期待される。
参考文献
消防庁 2015:地方公共団体における災害対策機能の維持に係る非常用電源の確保に関する緊急
調査結果.2015 年 11 月.
資源エネルギー庁 2015:
「平成 25 年度エネルギーに関する年次報告書」(エネルギー白書 2014).
2014 年 6 月閣議決定・国会報告.
- 76 -
第2部 四地域実証の結果を踏まえた電気料金型ディマンドリスポンス
(DR)の経済性分析
I. はじめに
本調査報告書は全国の一般世帯を対象にしたディマンドリスポンス(Demand Response, 以下 DR)
41の費用便益分析を行い、DR プログラムの経済性を検証したものである。
一般世帯を対象にした電気料金変動型 DR は、平成 23 年度から平成 26 年度の「次世代エネルギー・
社会システム実証事業(対象地域は横浜、豊田、けいはんな、北九州、以下四実証地域)」において
社会実証として実施された。四実証地域における料金変動型 DR のピークカット効果は、米国エネ
ルギー省のガイドラインにしたがって、約 10~20%になることが確認され、電気料金を上げること
によってピーク時の電力需要の抑制が可能であることがエビデンスとして明らかになった。
しかしながら、一般世帯を対象にした電気料金変動型 DR 実施に要した費用や DR によって生じた
便益は日本においてこれまで十分に検討されてこなかったため、一般世帯を対象にした電気料金変
動型 DR プログラムの経済性は未だ不明である42。
今後、日本の一般世帯を対象にした電気料金型 DR が普及・浸透するためには、DR の費用便益分
析にもとづいた経済性の評価を行う必要がある。本調査では、四実証地域において一般世帯を対象
に実施された電気料金型 DR プログラムの社会実証の成果を踏まえ、全国(沖縄を除く)の一般世
帯に対し電気料金型 DR を実施した場合の社会的な便益と費用を試算し、DR プログラムの経済性を
検証した。
本調査における DR の費用便益分析を行う際の前提条件は次の通りである。対象期間は 2012 年度
から 2051 年度の 40 年間とした。また全国の一般家庭(沖縄県を除く)が HEMS43を装備して DR
に参加し、CEMS44は全国に設置されるもと仮定する(ただし、一般世帯の DR 参加率を変化させる
感度分析を行う)
。対象期間中は DR 履行の確実性は担保されているものとする。
次に本調査における DR の便益と費用はそれぞれ以下の通りである。DR による便益は短期社会便
益と長期社会便益から構成される。短期社会便益は発電費用と電力量料金の乖離を補正した最適消
費から得られる社会的便益で、過剰消費がある場合、短期社会便益は生産者余剰の増加から消費者
余剰の減少を引いたものになる。長期社会便益は新規の LNG 発電所建設費、運転維持費の回避費用
である。一方、DR の費用は DR 実施に必要な設備(CEMS、HEMS)や人件費、運用費用である。
以上の前提条件のもとで、日本の全世帯が HEMS を装備し電気料金型 DR に参加した場合の費用
便益分析を行った。主な結論としては、HEMS 単価が 0.5 万円まで低下すれば、社会実証で用いられ
た全てのピーク別料金(CPP45)料金水準において、DR の便益が DR の費用を上回ることが示され
た。
41 ピーク時に電気料金を値上げすることで、各家庭や事業者に電力需要の抑制を促す仕組み。
42 DR 導入による発電コストの与える影響を試算したものとして高山他(2011)、東京電力管内の一部の事業所を対
象にしたインセンティブ型 DR の費用便益分析は東京大学、エネルギー総合工学研究所(2015)がある。
43 ホームエネルギーマネジメントシステムを指し、家庭で使うエネルギーを管理するシステム。
44 コミュニティエネルギーマネジメントシステムを指し、地域におけるエネルギーの需要・供給を統合的に管理す
るシステム。
45 需給がひっ迫しそうな場合に、事前通知をした上で 変動された高い料金を課す仕組み。
- 77 -
本調査報告書の構成は次の通りである。II では、DR の費用便益分析に関するガイドラインの紹介
と本調査で費用便益分析を行う際の前提条件について説明する。III では本調査での費用便益分析に
おける便益、費用の試算の考え方について説明し、III.3.で試算結果を示す。IV では感度分析を行
う。最初に、一般世帯の DR 参加率が変化した場合の感度分析を行う。次に、CEMS が導入され、
HEMS が導入されないケースと CEMS が導入されず、
HEMS が導入されるケースの感度分析を行う。
V はまとめである。
II. DR の費用便益分析のガイドラインと本調査における前提条件
1.DR 費用便益のガイドラインについて
DR の費用便益分析に関するガイドラインの 1 つとして米国の Department of Energy and Federal
Energy Regulatory Commission(2013)がある。そこでは 5 つの経済性テストが紹介されている。表
6 は紹介されている 5 つの費用効果テストをまとめたものである。
表 6 DR の経済性テスト
テスト項目
社会的費用テスト
(Social Cost)
総資源費用テスト
(Total Resource Cost)
プログラム管理者費用テスト
(Program Administrator Cost)
参加者費用テスト
(Participant Cost)
料金影響評価テスト
(Rate Impact Measure)
テストの定義
社会の構成員が負担する費用と享受する便益を試算。
環境負荷などの外部性も評価の対象。
電力供給者と需要家が負担する費用と享受する便益
を試算。
DR プログラム管理者が負担する費用と享受する便益
を試算。
DR プログラム参加者が負担する費用と享受する便益
を試算。
プログラム管理者費用を含み、DR プログラム実施に
より、電力料金がどれだけ低下したかを検証。
本調査報告書の費用便益分析は、電力供給者と需要家の双方が負担する費用と享受する便益を含
んだものであるため、総資源費用テストに対応している。
2.本調査での費用便益分析の前提条件
本調査報告書における DR の費用便益分析の前提条件は以下の通りである。まず、全国の一般家
庭が HEMS を装備し、DR に参加していると仮定する46。また CEMS は全国に設置されると想定す
る。CEMS の主な設置主体は電力小売事業者(一般電気事業者、新電力)、自治体、アグリゲータ
であると仮定する。そして DR 実証が開始された 2012 年度の数値に基づき、全国の一般家庭の最
大電力需要は 46,800MW、そのときの電力量料金は 25 円/kWh とする。本調査報告書で検討する評
価期間は、発電コスト検証 WG(2015)における LNG 火力発電の想定稼動年数に基づき 2012 年度
から 2051 年度の 40 年間とし、その間の DR 履行の確実性は担保されているものとする。上記の前
46 グリーン政策大綱(国家戦略室 2012)で、2030 年まで HEMS を全世帯に普及させる、という目標が設定された。
2014―2015 年に実施された大規模 HEMS 情報基盤整備事業でも、この目標が改めて言及されている(商務情報政
策局 2015)。
- 78 -
提条件のもとで行った費用便益分析の結果をベンチマークとして、IV において Web アンケート調
査により得られた DR 参加率を利用して感度分析を行う。
DR によって生じる主な便益としては、短期社会便益(発電費用と電力量料金の乖離を補正した
最適消費から得られる社会的便益)及び長期社会便益(新規の LNG 発電所建設費、運転維持費の
回避費用)を対象とする。一方、DR 実施に要する費用としては、DR 通知を行う CEMS の費用を
考慮する。その費用は初期費用(サーバー、システム構築など)、人件費そして運用費用である。
そして DR 通知を受け取る HEMS も DR の費用の対象となる。最後に、本報告では DR によるピー
クシフトカットのみが生起対象とし、他の時間帯への電力消費の移動(ピークシフト)は生起しな
いものとして、一般世帯を対象にした電気料金型 DR プログラム費用便益分析を行う。
- 79 -
III. 一般世帯を対象にした電気料金型ディマンドリスポンスの費用便益分
析と試算結果
1.DR の便益
II における DR の費用便益分析の前提条件の下で、DR による便益をはじめに試算する。DR によ
る便益は前節で述べたように短期社会便益と長期社会便益から構成される。短期社会便益は発電費
用と電力量料金の乖離を補正した最適消費から得られる社会的便益で、一般世帯による電力に対す
る過剰消費がある場合、短期社会便益は生産者余剰の増加から消費者余剰の減少を引いたものにな
る。本調査報告書では Ito et al.(2015)における短期社会便益の試算方法を利用する。以下では、短期
社会便益の計算方法について説明する。
はじめに全国(沖縄を除く)の一般世帯の電力に関する需要関数を
ε
とする。 は
電力需要量、 は定数、εは需要の価格弾力性、 は電力量料金である。この電力需要関数の逆需
要関数は
ε と表せる。本調査報告書では、2.2.で述べたように全国の一般世帯の最
大電力需要は DR の社会実証が開始された 2012 年度の約 46,800MW、ベースとなる電力量料金は
25 円/kWh を利用すると、全国の一般世帯の最大電力需要は上記の逆需要関数を利用すれば
ε
と示せる。さらにピーク時の発電の限界費用
と対応したピーク時
の電力量料金が設定されると最適な電力消費量 が決まるものとする47。図 37 では、全国の一般
世帯のピーク時の電力需要曲線、
最大電力需要
TOU)における最適な電力消費量
と CPP またはピーク時の時間帯別料金
(time of use,
が示されている。
図 37 短期社会便益
DR が発動される前の電力量料金は 25 円/kWh の場合、前述の通り電力需要は である。DR が発
動され電力量料金が限界費用
に対応する水準まで上昇することによって電力消費は
る。したがって DR によるピークカットは
に減少す
になる。また、電力量料金を 25 円/kWh から
に
対応する料金水準まで上げることによって、電力供給者の生産者余剰は増加し(図 37 では四角形
ADBC の面積部分)
、消費者側は過剰消費によって発生した消費者余剰が減少する(図 37 では ADB
47 本調査報告書の場合、ピーク別料金はけいはんな地域の社会実証の料金水準を用いて、全国の一般世帯が参加し
た場合のピークカット効果、社会便益を試算した。
- 80 -
で囲まれた面積部分)
。電力量料金上昇によるネットの経済厚生の改善は図 37 の ABC で囲まれた
面積部分であり、これは
による積分で求めることができる。本調査報告書では、
CPP による DR が発動される日数は年間 15 日で、1 日あたり 3 時間(年間 45 時間)のピークカッ
トが実現されるものと想定して短期社会便益を試算した。また、TOU の適用日数は 50 日と想定し
て短期社会便益を試算した。
次に長期社会便益は DR によって新規の発電所の建設が回避されることから、LNG 発電所建設費、
運転維持費の回避費用を長期社会便益とした。利用したデータは発電コスト検証 WG(2015)にお
ける LNG 火力発電の建設費、運転維持費用である。発電コスト検証 WG では LNG 火力発電の稼動
期間は 40 年と想定しているため、本調査報告書では DR による長期社会便益は 40 年発生するもの
と想定し、毎年発生する回避費用を発電コスト検証 WG でも利用している割引率 3%で回避費用の
現在価値を計算した。さらに稼動年数均等化を行うために年経費率を利用して年間に発生する社会
便益を算出した。
以上より、TOU、CPP の短期社会便益、長期社会便益、そしてピークカット効果についてまとめ
たものが表 7 である。
- 81 -
表 7 DR の便益(料金制及び水準別)及びピークカット効果
(単位:億円/年)
短期社会便益
長期社会便益
(建設費)
長期社会便益
(運転維持費)
ピークカット効果
TOU(45 円/kWh)
CPP(65 円/kWh)
CPP(85 円/kWh)
CPP(105 円/kWh)
40.83
76.55
118.88
162.65
127.72
340.52
373.68
404.28
17.52
37.80
41.48
44.88
2,460MW
6,559MW
7,198MW
7,787MW
TOU(45 円/kWh)
、各 CPP 料金水準(65、85、105 円/kWh)のピークカットはそれぞれ 2,460MW、
6,559MW、7,198MW、7,787MW となり、短期社会便益はそれぞれ 40.83 億円/年、76.55 億円/年、
118.88 億円/年、162.65 億円/年となる。長期社会便益(建設費)はそれぞれ 127.72 億円/年、340.52
億円/年、373.68 億円/年、404.28 億円/年となり、長期社会便益(運転維持費)はそれぞれ 17.52 億
円/年、37.80 億円/年、41.48 億円/年、44.88 億円/年になる。
2.DR の費用
本調査報告書では、一般世帯向け電気料金型 DR 実施に要する費用として、DR 通知を行う CEMS
の費用(初期費用である設備費、人件費そして運用費用)
、DR 通知を受け取る HEMS の費用を対
象とする。本調査報告書における DR の実施に要する費用の算出は、主に四地域実証に参加した
CEMS、HEMS 開発事業者からの聞き取り調査に基づく。
ところで、本調査報告書で想定する CEMS の機能は、エネルギーデータ収集、エネルギー供給・
消費の見える化、負荷平準化や需給バランスを確保するための DR 機能などで、最小限の機能を装
備したものと想定する。これらの機能を前提に CEMS の単価を算出した。また CEMS の設備更新
については、CEMS の設備の一部であるサーバーが 5 年ごとに取り替えられると想定して試算した
(取替え作業に伴う費用も同様)
。さらに、2.2.で述べたように全国に CEMS が設置された場合を想
定しているため、現時点での CEMS の対応能力は事業者の聞き取り調査にもとづき 1 台あたり約
50 万世帯程度であると仮定した。よって沖縄を除く全国約 5,359 世帯をカバーするために必要な
CEMS は約 107 台とした。また、CEMS による DR 通知、エネルギーデータ収集の収集はインター
ネット経由で行われるため、約 107 台の CEMS で全国の世帯をカバーすることは技術的に可能であ
る。
次に HEMS の費用については以下のような仮定のもとで試算を行った。標準的な HEMS の平均
価格は現時点で約 5 万円であるが、今後、クラウド型 HEMS の普及により、現在の価格より 10 分
の 1 に下がる可能性があるため、本調査報告書では HEMS の単価を 0.5 万円とした。また、HEMS
の耐用年数を考慮して 10 年ごとに取り替えられると仮定して HEMS 費用を算出した。
以上より、DR 実施に必要な構成要素である CEMS、HEMS の費用をまとめたものが表 8 にな
る。1 台あたりの CEMS の費用は、初期費用が 2,690 万円(内訳はサーバー代が 550 万円、Base Pack
代が 630 万円、DR 機能費が 80 万円、エンジニアリング代が 870 万円、運用テスト費が 560 万円)
、
人件費が年間 2,500 万円、運用費用が年間 1,070 万円である。CEMS、HEMS の更新時期を考慮し
た上で 40 年間生じる CEMS、HEMS の費用総額の現在価値を計算し、さらに稼動年数均等化を行
うために年経費率を利用して年間に発生する DR の費用を算出した。
- 82 -
表 8 DR の費用:CEMS 及び HEMS 関連費用
初期費用(万円) 人件費(万円/年) 運用費用(万円/年)
個数
2,690
2,500
1,070
107
0.5
5,359.25(万)
CEMS
HEMS
3.試算結果
第2部 III.1.
、第2部 III.2.で試算した DR の費用と便益をまとめたものが図 38 になる。ピー
ク別料金が 65 円/kWh のときの社会便益は 454.87 億円/年(長期社会便益(建設費・運転維持費)、
短期社会便益の合計、以下同様)
、85 円/kWh のときは 534.04 億円/年、105 円/kWh のときは 611.82
億円/年である。DR の費用は 348.07 億円/年である。さらに各料金における費用便益比率をみると、
65 円/kWh から順に 1.31、1.53、1.76 となり、全ての CPP 料金に対して 1 より大きいことが確認さ
れた(ただし、TOU のみだと社会便益 186.06 億円/年となり、費用が便益を上回り、費用便益比率
は 0.53 で 1 より小さい)
。したがって上記で述べた前提条件が満たされているならば、一般世帯を
対象にした電気料金型 DR プログラムの経済性は確保される可能性がある。
ピーク別料金(CPP)の費用便益
億円/年
700
600
162.65
500
76.55
400
37.80
118.88
44.88
41.48
11.47
300
26.80
4.82
200
340.52
373.68
404.28
便益(CPP=¥65)
便益(CPP=¥85)
便益(CPP=¥105)
304.98
100
0
長期社会便益(建設費)
長期社会便益(運転維持費)
短期社会便益
HEMS
CEMS初期費用
DR人件費
費用
DR運用費
図 38 一般家庭向けの電気料金型ディマンドリスポンスの費用便益の試算結果
また日本の全世帯が HEMS を装備し電気料金型 DR に参加した場合、HEMS 単価が 9,324 円を下
回れば、本調査報告書で用いられたすべての CPP 料金水準において、DR 便益が DR 費用を上回る
ケースが存在することが確認できる48。
48 CPP の各料金水準で費用便益比率が 1 になる HEMS 単価を試算。各 CPP 料金水準における DR 便益から DR の初
期費用、人件費、運用費を差し引いた金額は費用便益比率が 1 になる HEMS の費用である。そこから HEMS の単
価を算出。
- 83 -
つぎに TOU と CPP を組み合わせた料金メニューによる費用便益分析を行う。本調査報告書では
TOU におけるピーク料金の適用日数は年間 50 日で 3 時間/日(年間 150 時間)、CPP 発動日数は年
間 15 日で 3 時間/日(年間 45 時間)と想定している。TOU と CPP を組み合わせた料金メニューの
場合、TOU のみの年間適用時間 150 時間を TOU で年間 105 時間とし、残りの 45 時間は CPP 単独
の場合と同様に年間 45 時間と仮定して、計 150 時間の適用時間の TOU+CPP 料金メニューによる
DR 便益を試算した。この場合、CPP 単独よりピーク時の料金上昇適用時間が長いため短期社会便
益、運転維持費は大きくなる。一方、TOU+CPP 料金メニューでも CPP の料金水準は同じなので、
ピークカット効果も同じである。そのため、回避できる建設費は CPP 単独と同じ額になる。表 9
は TOU+CPP 料金メニューによる DR 便益をまとめたものである。
- 84 -
表 9 DR の便益(TOU+CPP の場合)
(単位:億円/年)
TOU+CPP(65 円/kWh)
短期社会便益
長期社会便益
(建設費)
長期社会便益
(運転維持費)
TOU+CPP(85 円/kWh)
TOU+CPP(105 円/kWh)
105.13
147.46
191.23
340.52
373.68
404.28
46.70
51.25
55.45
表 9 より各 CPP 料金水準(65、85、105 円/kWh)の短期社会便益はそれぞれ 105.13 億円/年、147.46
億円/年、191.23 億円/年となり、CPP 単独の場合より増加する。長期社会便益(建設費)は CPP 単
独と同じで、長期社会便益(運転維持費)はそれぞれ 46.70 億円/年、51.25 億円/年、55.45 億円/年
になる。
図 39 は TOU+CPP 料金メニューが導入された場合の費用便益分析の結果である。この場合、
CPP
料金が 65 円/kWh のときの社会便益は 492.35 億円/年(長期社会便益(建設費・運転維持費)、短期
社会便益の合計、以下同様)、85 円/kWh のときは 572.39 億円/年、105 円/kWh のときは 650.96 億円
/年である。DR の費用は TOU 単独、CPP 単独のときと同様に 348.07 億円/年である。以上より各料
金における費用便益比率をみると、65 円/kWh から順に 1.41、1.64、1.87 となり、全ての CPP 料金
に対して 1 より大きく、CPP 単独より費用便益比率は大きいことが確認された。
TOU+CPPの費用便益
億円/年
700
600
191.23
500
105.13
400
46.70
147.46
55.45
51.25
11.47
300
26.80
4.82
200
340.52
373.68
404.28
便益(CPP=¥65)
便益(CPP=¥85)
便益(CPP=¥105)
304.98
100
0
長期社会便益(建設費)
長期社会便益(運転維持費)
短期社会便益
HEMS
CEMS初期費用
DR人件費
費用
DR運用費
図 39 TOU+CPP 料金メニューの場合の費用便益の試算結果
IV. 感度分析
IV では、第2部 IV.1.で Web アンケート調査の結果を利用して、一般世帯の DR 参加率に関す
る感度分析を行う。第2部 IV.2.では、CEMS が導入され、HEMS が導入されないケース(ケース
- 85 -
①)と CEMS が導入されず、HEMS が導入されるケース(ケース②)の感度分析を行う。
1.一般世帯の DR 参加率に関する感度分析
III の DR の費用便益分析では、全世帯が電気料金型 DR に参加すると仮定して DR の費用と便益
を試算した。しかしながら、現時点においてすべての一般世帯が電気料金型 DR に参加することは
非現実である。そこで、どれくらいの割合の一般世帯が電気料金型 DR に参加するのかを Web アン
ケートを用いて調査した。また、今回の Web アンケート調査は、2016 年 4 月以降の電力の小売り
自由化に向けた日本の消費者の新電力会社、新料金(時間帯別料金)への切り替えに関する選択意
向、電源構成比率に対する選好を把握するために実施にされた49 50 51。なお、今回の Web 調査
では電源構成比が電力会社、新料金を選択する際に重要な要因ではなかったため、電源構成比が時
間帯別料金に影響を与えることはないものとする52。
新料金への参加意思を把握するために、今回の Web 調査では、回答者に対し仮想的な 3 つの料
金プランを提示して、どれを選ぶか質問した。具体的には、新電力会社が時間帯別料金を導入する
場合(プラン①)、現在契約中の電力会社(既存電力会社)が時間帯別料金を導入するプラン(プ
ラン②)
、現在契約中の電力会社(既存電力会社)による既存の料金(従量料金)のままのプラン
(プラン③)である。このような Web 調査によって得られたデータに対し、コンジョイント分析
を用いて新料金に関する選択確率を推定した。表 10 は、新電力会社、既存電力会社の両者が新料
金を導入した時に回答者が月間電気料金削減率別 に新料金に切り替える選択確率をまとめたもの
である53 54。今回の Web 調査では、新料金による月間電気料金削減率が 0%でも新電力、既存電
力の両者が新料金を導入した場合、56.3%の一般世帯が加入することを示唆している。
表 10 時間帯別料金に対する選択確率(参加率)
「中立的」な情報を流した場合
新電力・既存両方が導入
0%
56.3%
月間電気料金削減率(%)
5%
73.0%
10%
84.9%
ところで、ここでは各参加率は 40 年間固定されたものとして費用と便益を計算する。ただし、
CEMS の費用は参加率によって変化しないと想定して試算する。その結果をまとめたものが表 6
になる。
49
Web 調査の概要については「第2部 VI.1.電力自由化アンケート調査結果」(パワーポイント資料 19~22 頁)
を参照。
50 新電力会社、新電力料金への切り替えに関する情報提供の違いによる一般世帯の参加率の差の有無を検証するた
めに、質問票を 3 つ用意した。新電力会社、電力料金への切り替えについて何も説明しないケース(「中立的」情
報)、長所を説明するケース(「積極的」情報)、短所を説明するケース(「消極的」情報)の 3 つである。Web
アンケート調査の質問表は第2部 VI.2.3.4.を参照。
51 Web 調査による分析結果は「第2部 VI.1.電力自由化アンケート調査結果」(パワーポイント資料 23~35 頁)
を参照。
52 「第2部 VI.1.電力自由化アンケート調査結果」選択重視項目(パワーポイント資料 27 頁)を参照。
53 情報提供の違いによる新料金の参加率の差はほとんどないため、ここでは何も説明しない「中立的」情報提供に
おける参加率を利用。「中立的」、「積極的」、「消極的」情報提供の新電気料金普及率の結果は「第2部 VI.1.
電力自由化アンケート調査結果」(パワーポイント資料 34~36 頁)を参照。
54 Web 調査では時間帯別料金に関する選択確率を推定しているが、電気料金型 DR に対する選択確率とみなして感
度分析を行う。
- 86 -
表 11 TOU、CPP 単独の場合の参加率に関する感度分析
表 11 より、各参加率、各料金の DR の便益、費用は、参加率が低ければ便益、費用の金額は小
さく、参加率が高ければ便益、費用の金額は大きくなる。また費用便益比率は、参加率が高くなる
につれて大きくなることが確認できる。
2.CEMS、HEMS の有無による感度分析
ここでは、CEMS、HEMS の有無による感度分析を行う。具体的には CEMS が導入され、HEMS
が導入されないケース(ケース①)と CEMS が導入されず、HEMS が導入されるケース(ケース②)
である。
各ケースを検討する理由は以下の通りである。現在、一般電気事業者や特定規模電気事業者はイ
ンターネットを利用して、携帯電話、スマートフォン、パソコンから一般世帯の電力使用量の見え
る化、
省エネアドバイス、
最適な料金プランの情報提供などの Web サービスを行っている(ただし、
- 87 -
一部の電力会社は今後サービスを提供予定)
。表 12 では一般電気事業者が提供しているサービスを
まとめたものである。
表 12 一般電気事業者が提供している Web サービス
電力会社
サービス名
北海道電力
東北電力
東京電力
中部電力
北陸電力
関西電力
中国電力
四国電力
九州電力
会員制 Web サービス
よりそうeねっと
でんき家計簿
カテエネ
ほくリンク
はぴ e みる電
ぐっと ずっと。クラブ
よんでんコンシェルジュ
省エネ快適ライフ
一般電気事業者と契約している一般世帯は Web 上で登録することで上記のサービスを受けるこ
とができる。現時点では Web サービスにおいて DR プログラムは行われていないが、今後、Web
サービスのシステムを利用して DR プログラムを実施することは技術的には低コストで実施するこ
とは可能である。例えば、一般世帯に対し DR 通知をメールやショートメッセージサービス(SMS)
を利用して携帯電話やスマートフォンに送信することは可能である。実際、米国のエネルギー情報
サービス会社は DR 通知を電話、メール、SMS などを利用してピークカットを実現している。その
ため、一般世帯が HEMS を導入しなくても、DR プログラムを実施することは可能である。さらに、
一般電気事業者や特定規模電気事業者は CEMS を導入しなくても既存の設備、システムに DR 機能
を追加することで DR プログラムを実施することは技術的に可能である。
以上の理由より、ケース①の CEMS は導入、DR 通知はメールや SMS で通知するケース(HEMS
不要)とケース②の CEMS は導入されず、既存システムに DR 機能を追加、HEMS は導入するケー
スの感度分析を行う55。
ケース①では、HEMS は導入されないケースであるため、DR 費用としては CEMS の初期費用、
人件費、運用費のみを考慮すればよい。ケース②では CEMS は導入されないため、既存のシステム
に DR 機能が追加される。また一般世帯は HEMS を導入しているため、DR 機能の費用と HEMS の
費用が DR 費用として考慮される。ここでは DR 機能はソフトウェアのため一度導入すれば更新費
は発生しないと想定する。一方、DR の便益については、3.III.3.の TOU、CPP 単独の便益の数
値をそのまま利用する。以上の想定の下で、各ケースの感度分析の結果は表 13、表 14 になる。
表 13 ケース①(CEMS あり、HEMS なし)
55 CEMS、HEMS の両方を導入しないケースも考えられるが、その場合、DR 費用は小さくなり、費用便益比率が非
現実的な数値になるため、ここでは感度分析の対象外とした。
- 88 -
表 13 のケース①(CEMS あり、HEMS なし)では、HEMS を利用せず、メール、SMS などによ
り DR 通知を行うため、HEMS 導入コストが必要ない。そのため DR 費用が小さくなり、TOU、CPP
のすべての料金水準、すべての参加率において、便益が費用を上回る。また III.3.のベンチマー
ク(参加率 100%、CEMS、HEMS ともにあり)における各 CPP 料金 65 円/kWh、85 円/kWh、105
円/kWh での費用便益比率がそれぞれ 1.31、1.53、1.76 であるのに対し(表 11 の参加率 100%を参
照)
、ケース①における参加率 100%の各 CPP 料金での費用便益比率はそれぞれ 10.56、12.40、14.20
となる。
表 14 ケース②(CEMS なし、HEMS あり)
- 89 -
表 14 のケース②(CEMS なし、HEMS あり)では、既存のシステムに DR 機能を追加し、HEMS
を導入するケースである。そのため CEMS 導入コスト、CEMS 関連の人件費、運用費は必要ない。
その分 DR 費用は小さなるため、III.3.のベンチマークの結果より費用便益比率は改善される。し
かし DR 費用において大きな割合を占める HEMS 費用は計上されたままであるため、ケース①と比
べると費用便益比率は小さい。さらに各参加率の費用便益比率がほぼ同じである。理由としては
DR 機能追加費用が HEMS に比べ小さいが、DR 便益、HEMS 費用は金額が大きく、参加率に比例
して変化するためと考えられる。
V. まとめ
本調査報告書では、全国の一般世帯を対象にした DR の費用便益分析を行い、DR プログラムの
経済性を検証した。はじめに日本の全世帯が HEMS を装備し電気料金型 DR に参加した場合、本調
査報告書における前提条件と HEMS 単価が 0.5 万円と仮定すれば、四実証地域で用いられた CPP
- 90 -
料金水準に対し、DR 便益が DR 費用を上回ることが示された。そして、日本の全世帯が HEMS を
装備し電気料金型 DR に参加した場合、HEMS 単価が 9,324 円を下回れば、本調査報告書で用いら
れたすべての CPP 料金水準において、DR 便益が DR 費用を上回るケースが存在することが確認で
きた。さらに、TOU と CPP を組み合わせた料金メニューの DR の場合、CPP 単独よりも DR の便
益は大きくなり、費用便益比率が改善されることが示された。
感度分析ついては、一般世帯の DR 参加率に関する感度分析、CEMS、HEMS の有無による感度分
析が行われた。DR 参加率に関しては、Web 調査から得られた一般世帯の DR 参加率の推定結果を利
用した。Web 調査から得られた一般世帯の DR 参加率を利用して感度分析が行われた。その結果、
一般世帯の DR 参加率が上昇するにつれて費用便益比率が改善されることが明らかになった。
一方、CEMS、HEMS の有無による感度分析では、CEMS 導入あり、HEMS 導入なしのケースと、
CEMS 導入なし、HEMS 導入ありのケースの感度分析が行われた。最初のケースの場合、HEMS の
導入コストを考慮する必要がないため、全ての参加率、全ての料金水準において費用便益比率が 1
以上になる。2 つめのケースでは、CEMS の導入コストを考慮する必要はないが、DR 費用において
大きな割合を占める HEMS 費用は計上されたままであるため、1つめのケースと比べると費用便益
比率は小さい。しかし、全ての料金水準の費用便益比率はベンチマークより改善される。ただし、
費用便益比率が 1 以上になるのは CPP 料金のみである。
以上の通り、本調査報告書における前提条件が満たされるなら、一般世帯を対象にした電気料金
型 DR プログラムの経済性が成り立つ可能性が確認された。ただ、DR プログラムにどれくらいの世
帯が参加するか、DR 費用の大きな割合を占める HEMS の価格が実際にどこまで安くなるのかを予
測することは困難であるため、本調査対象の DR プログラムの経済性が成り立たない可能性もあり
うる。
最後に、四実証地域の DR プログラムは主にマニュアル DR56であったため、今回の調査はマニュ
アル DR の視点からの費用便益分析であった。今後は高機能な CEMS や家電製品を自動制御する高
機能な HEMS が導入される可能性があるため、オート DR に対する費用便益分析も必要になる。
56 DR 発動に対し、需要家は手動で節電行動を行う DR。オート DR は自動制御による節電。
- 91 -
参考文献
国家戦略室 2012:グリーン政策大綱.2012 年 11 月.
発電コスト検証 WG 2015:長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に
関する報告.2015 年 5 月.
Ito et al. 2015: Ito, K., Ida, T., & Tanaka, M. 2015: The Persistence of Moral Suasion and Economic
Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand. NBER Working Paper, No. 20910.
Feb 2015.
商務情報政策局 2015:平成 27 年度経済産業省予算関連事業 PR 資料,
エネルギー対策特別会計,
商務情報政策局情報経済課分.2015 年 4 月.
高山他 2011:高山正俊,高橋雅仁,加藤力也,山口順之.デマンドレスポンスプログラムの導
入がわが国の発電コストに与える影響.研究報告:Y10021,電力中央研究所研究報告.2011
年 5 月.
東京大学,エネルギー総合工学研究所 2015:DR ビジネスの環境整備に向けた社会システム実
証の調査・評価成果報告書.テーマ 2 次世代エネルギー社会システムにおける DR 経済効果
調査事業,I-3 エネルギーマネジメントシステムの構築に係る調査事業,次世代エネルギー・
社会システム実証事業費補助金.2015 年 3 月.
U.S. Department of Energy and Federal Energy Regulatory Commission 2013: A
Evaluating the Cost-Effectiveness of Demand Response. Feb 2013.
- 92 -
Framework for
VI. 参考資料
1.電力自由化アンケート調査結果
- 93 -
- 94 -
- 95 -
- 96 -
- 97 -
- 98 -
- 99 -
- 100 -
- 101 -
- 102 -
- 103 -
- 104 -
- 105 -
- 106 -
- 107 -
- 108 -
- 109 -
- 110 -
- 111 -
2.Web アンケート調査の質問表 1
(電力全面自由化について「中立的」な情報を流した場合)
電気料金についてのアンケート調査
京都大学大学院経済学研究科
依田高典
研究室
A.基本設問
A-1 あなたのご家庭の夏 7 月~9 月の平均的な 1 ヶ月当たりの電気料金(電気代支払額)に近い
ものを以下からお選びください.
□ 月間 3,000 円以下
□ 月間 4,000 円程度
□ 月間 5,000 円程度
□ 月間 6,000 円程度
□ 月間 7,000 円程度
□ 月間 8,000 円程度
□ 月間 9,000 円程度
□ 月間 10,000 円程度
□ 月間 11,000 円程度
□ 月間 12,000 円程度
□ 月間 13,000 円程度
□ 月間 14,000 円程度
□ 月間 15,000 円程度
□ 月間 16,000 円程度
□ 月間 17,000 円程度
□ 月間 18,000 円程度
□ 月間 19,000 円程度
□ 月間 20,000 円以上
A-2 現在,あなたのご家庭でご契約されている電力量料金のプランは以下のどちらですか.
□ 一般的な従量電灯プラン(利用時間帯に関わらず,電力消費量で料金が決まる)
□ 時間帯別に電力量料金が設定されているプラン(夜間電力が割安になる料金プラン,夏
のピークタイム(13 時~16 時)に料金が割高になるプラン 等)
A-3 現在,あなたのご家庭で.太陽光発電など,自家発電を行っていますか.
以下のうち,当てはまるものをすべてお選びください.(複数回答)
□ 太陽光発電
□ ガスエンジン・コージェネレーション・ユニット
□ 燃料電池
□ その他(
)
- 112 -
□ 自家発電は行っていない
A-4 「電力の小売り自由化」について,どの程度ご存知ですか.
□ 知っている
□ 認知しているが詳しい内容は知らない
□ 聞いたことがない
A-5 電力の小売り自由化後,ご契約中の電力会社から別の電力会社への乗り換えを検討します
か.
□ 乗り換えを検討したい
□ 乗り換えたくない
□ どちらともいえない・わからない
A-6 (問 5 で「乗り換えたくない」を選択した回答者のみ)乗り換えたくない理由は何ですか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 選び方がわからない
□ 具体的にイメージできない
□ 手続きが面倒
□ 電気代が抑制されるとは思わない
□ 現状に不満がない
- 113 -
□ 特に理由はない
A-7 電力の小売り自由化後,契約する電力会社を選択する時,あなたは何を重視しますか.以
下のうち,当てはまるものをすべてお選びください.(複数回答)
□ 電気料金の安さ
□ 料金メニューの豊富さ
□ メニューや手続きの分かりやすさ
□ 自分のライフスタイルにあっているかどうか
□ 顧客対応などのサービス
□ 再生可能エネルギーや自然エネルギーの比率
□ 原子力発電を使用しないこと
□ 電力供給の安定性
□ 見える化サービスの提供
□ 途中契約解除(会社切り替え)の制約がないこと
□ 企業の規模・知名度・実績
□ 地元企業や地域主体の企業であること
□ その他(
)
A-8 現在契約している料金プランから時間帯別料金プランに切り替えを検討する時,月々の電
気料金がどれだけお得であれば,時間帯別料金プランに替えますか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
- 114 -
□ 料金が下がらなくても替える
□ 5%減なら替える
□ 10%減なら替える
□ 20%減なら替える
□ 料金が下がるとしても替えない
A-9 現在契約している電力会社から別の電力会社に乗り換えを検討する時,月々の電気料金が
どれだけお得であれば,別の電力会社と契約しますか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 料金が下がらなくても乗り換える
□ 5%減なら乗り換える
□ 10%減なら乗り換える
□ 20%減なら乗り換える
□ 料金が下がるとしても乗り換えない
B.選択型の設問
電力小売り自由化後の電力量料金プラン選択についての,あなたの選択に関する意向をお聞か
せください.
時間帯別料金プランの場合は,ご自分のライフプランにあった時間帯別料金を選べると想定し
てお答えください.
従量電灯料金プランの場合は,一日を通して同じ電気代です.
なお,再生可能エネルギーと原発由来のエネルギー以外は,火力発電(化石燃料)由来のエネ
ルギーです.
現在既に時間帯別料金プランにご加入の方も,現在はまだ従量電灯料金プランに加入されてい
ると仮定して,以下の設問に仮想的にお答えください.
同じ内容の質問を,三者択一問題としてお聞きします.
プラン①は,現在ご契約中の電力会社とは異なる新電力会社が提供する料金プランです.
プラン②は,現在ご契約中の電力会社による新しい料金プランです.
プラン③は,現在ご契約中の電力会社による既存の料金プランです.
望ましい選択肢をいずれかひとつお選びください.
電力供給の安定性(停電の確率など)は,どちらの会社も同程度だとお考えください.
- 115 -
設問は全部で 8 問あります.あまり難しく考えずにご回答ください.
- 116 -
B-1 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
0%
40%
10%
原発比率
20%
0%
10%
月間電気料金
20%減
20%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-2 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
40%
10%
原発比率
20%
20%
10%
月間電気料金
現状と変わらない
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 117 -
B-3 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
0%
10%
原発比率
20%
40%
10%
月間電気料金
10%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-4 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
0%
20%
10%
原発比率
0%
20%
10%
月間電気料金
10%減
20%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 118 -
B-5 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
0%
10%
原発比率
0%
20%
10%
月間電気料金
10%減
現状と変わらない
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-6 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
20%
10%
原発比率
40%
20%
10%
月間電気料金
20%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 119 -
B-7 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
40%
20%
10%
原発比率
20%
40%
10%
月間電気料金
10%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-8 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
40%
20%
10%
原発比率
40%
0%
10%
月間電気料金
現状と変わらない
現状と変わらない
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
質問は以上です.ご協力ありがとうございました.
- 120 -
3.Web アンケート調査の質問表 2
(電力全面自由化について「積極的」な情報を流した場合)
電気料金についてのアンケート調査
京都大学大学院経済学研究科
依田高典
研究室
A.基本設問
A-10
あなたのご家庭の夏 7 月~9 月の平均的な 1 ヶ月当たりの電気料金(電気代支払額)に
近いものを以下からお選びください.
□ 月間 3,000 円以下
□ 月間 4,000 円程度
□ 月間 5,000 円程度
□ 月間 6,000 円程度
□ 月間 7,000 円程度
□ 月間 8,000 円程度
□ 月間 9,000 円程度
□ 月間 10,000 円程度
□ 月間 11,000 円程度
□ 月間 12,000 円程度
□ 月間 13,000 円程度
□ 月間 14,000 円程度
□ 月間 15,000 円程度
□ 月間 16,000 円程度
□ 月間 17,000 円程度
□ 月間 18,000 円程度
□ 月間 19,000 円程度
□ 月間 20,000 円以上
A-11
現在,あなたのご家庭でご契約されている電力量料金のプランは以下のどちらですか.
□ 一般的な従量電灯プラン(利用時間帯に関わらず,電力消費量で料金が決まる)
□ 時間帯別に電力量料金が設定されているプラン(夜間電力が割安になる料金プラン,夏
のピークタイム(13 時~16 時)に料金が割高になるプラン 等)
A-12
現在,あなたのご家庭で.太陽光発電など,自家発電を行っていますか.
以下のうち,当てはまるものをすべてお選びください.(複数回答)
□ 太陽光発電
□ ガスエンジン・コージェネレーション・ユニット
□ 燃料電池
- 121 -
□ その他(
)
□ 自家発電は行っていない
A-13
「電力の小売り自由化」について,どの程度ご存知ですか.
□ 知っている
□ 認知しているが詳しい内容は知らない
□ 聞いたことがない
A-14
電力の小売り自由化後,ご契約中の電力会社から別の電力会社への乗り換えを検討し
ますか.
□ 乗り換えを検討したい
□ 乗り換えたくない
□ どちらともいえない・わからない
A-15
(問 5 で「乗り換えたくない」を選択した回答者のみ)乗り換えたくない理由は何で
すか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 選び方がわからない
□ 具体的にイメージできない
□ 手続きが面倒
□ 電気代が抑制されるとは思わない
- 122 -
□ 現状に不満がない
□ 特に理由はない
A-16
電力の小売り自由化後,契約する電力会社を選択する時,あなたは何を重視しますか.
以下のうち,当てはまるものをすべてお選びください.(複数回答)
□ 電気料金の安さ
□ 料金メニューの豊富さ
□ メニューや手続きの分かりやすさ
□ 自分のライフスタイルにあっているかどうか
□ 顧客対応などのサービス
□ 再生可能エネルギーや自然エネルギーの比率
□ 原子力発電を使用しないこと
□ 電力供給の安定性
□ 見える化サービスの提供
□ 途中契約解除(会社切り替え)の制約がないこと
□ 企業の規模・知名度・実績
□ 地元企業や地域主体の企業であること
□ その他(
A-17
)
時間帯別料金プランには、次のような長所が知られています。そうした長所を踏まえ
- 123 -
て、以下の質問にお答え下さい。

時間帯別料金プランによって、夏の昼間や冬の夕方など、電力需要ピーク時の電力消
費を抑制し、電気不足や停電の危険性を緩和する。

時間帯別料金プランによって、家庭の月々の電気料金への支払を抑制し、家計を助け
る。

ホーム・エネルギー・マネジメント・システムを組み合わせて、電力消費の見える化
や、エアコンやその他の家電製品のスマート化を可能にする。
現在契約している料金プランから時間帯別料金プランに切り替えを検討する時,月々
の電気料金がどれだけお得であれば,時間帯別料金プランに替えますか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 料金が下がらなくても替える
□ 5%減なら替える
□ 10%減なら替える
□ 20%減なら替える
□ 料金が下がるとしても替えない
A-18
新電力会社への切り替えには、次のような長所が知られています。そうした長所を踏
まえて、以下の質問にお答え下さい。

新電力会社は最新鋭の発電設備を所有し、多種多様な顧客サービスを提供するので、
現在契約している電力会社よりも、顧客目線のサービスを享受できる。

新電力会社の参入によって、電力産業の競争が活性化し、セット割引きなどを利用す
れば、家庭の月々の電力料金の支払を減らすことができる。

新電力会社の参入によって、原子力発電への依存を引き下げ、再生可能エネルギーの
導入を促進するなど、電力システムの改革が期待できる。
現在契約している電力会社から別の電力会社に乗り換えを検討する時,月々の電気料
金がどれだけお得であれば,別の電力会社と契約しますか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 料金が下がらなくても乗り換える
□ 5%減なら乗り換える
□ 10%減なら乗り換える
□ 20%減なら乗り換える
□ 料金が下がるとしても乗り換えない
B.選択型の設問
電力小売り自由化後の電力量料金プラン選択についての,あなたの選択に関する意向をお聞か
せください.
- 124 -
時間帯別料金プランの場合は,ご自分のライフプランにあった時間帯別料金を選べると想定し
てお答えください.
従量電灯料金プランの場合は,一日を通して同じ電気代です.
なお,再生可能エネルギーと原発由来のエネルギー以外は,火力発電(化石燃料)由来のエネ
ルギーです.
現在既に時間帯別料金プランにご加入の方も,現在はまだ従量電灯料金プランに加入されてい
ると仮定して,以下の設問に仮想的にお答えください.
同じ内容の質問を,三者択一問題としてお聞きします.
プラン①は,現在ご契約中の電力会社とは異なる新電力会社が提供する料金プランです.
プラン②は,現在ご契約中の電力会社による新しい料金プランです.
プラン③は,現在ご契約中の電力会社による既存の料金プランです.
望ましい選択肢をいずれかひとつお選びください.
電力供給の安定性(停電の確率など)は,どちらの会社も同程度だとお考えください.
設問は全部で 8 問あります.あまり難しく考えずにご回答ください.
B-9 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
0%
40%
10%
原発比率
20%
0%
10%
月間電気料金
20%減
20%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-10 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
- 125 -
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
40%
10%
原発比率
20%
20%
10%
月間電気料金
現状と変わらない
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 126 -
B-11 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
0%
10%
原発比率
20%
40%
10%
月間電気料金
10%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-12 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
0%
20%
10%
原発比率
0%
20%
10%
月間電気料金
10%減
20%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 127 -
B-13 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
0%
10%
原発比率
0%
20%
10%
月間電気料金
10%減
現状と変わらない
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-14 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
20%
10%
原発比率
40%
20%
10%
月間電気料金
20%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 128 -
B-15 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
40%
20%
10%
原発比率
20%
40%
10%
月間電気料金
10%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-16 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
40%
20%
10%
原発比率
40%
0%
10%
月間電気料金
現状と変わらない
現状と変わらない
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
質問は以上です.ご協力ありがとうございました.
- 129 -
4.Web アンケート調査の質問表 3
(電力全面自由化について「消極的」な情報を流した場合)
電気料金についてのアンケート調査
京都大学大学院経済学研究科
依田高典
研究室
A.基本設問
A-19
あなたのご家庭の夏 7 月~9 月の平均的な 1 ヶ月当たりの電気料金(電気代支払額)に
近いものを以下からお選びください.
□ 月間 3,000 円以下
□ 月間 4,000 円程度
□ 月間 5,000 円程度
□ 月間 6,000 円程度
□ 月間 7,000 円程度
□ 月間 8,000 円程度
□ 月間 9,000 円程度
□ 月間 10,000 円程度
□ 月間 11,000 円程度
□ 月間 12,000 円程度
□ 月間 13,000 円程度
□ 月間 14,000 円程度
□ 月間 15,000 円程度
□ 月間 16,000 円程度
□ 月間 17,000 円程度
□ 月間 18,000 円程度
□ 月間 19,000 円程度
□ 月間 20,000 円以上
A-20
現在,あなたのご家庭でご契約されている電力量料金のプランは以下のどちらですか.
□ 一般的な従量電灯プラン(利用時間帯に関わらず,電力消費量で料金が決まる)
□ 時間帯別に電力量料金が設定されているプラン(夜間電力が割安になる料金プラン,夏
のピークタイム(13 時~16 時)に料金が割高になるプラン 等)
A-21
現在,あなたのご家庭で.太陽光発電など,自家発電を行っていますか.
以下のうち,当てはまるものをすべてお選びください.(複数回答)
□ 太陽光発電
□ ガスエンジン・コージェネレーション・ユニット
□ 燃料電池
- 130 -
□ その他(
)
□ 自家発電は行っていない
A-22
「電力の小売り自由化」について,どの程度ご存知ですか.
□ 知っている
□ 認知しているが詳しい内容は知らない
□ 聞いたことがない
A-23
電力の小売り自由化後,ご契約中の電力会社から別の電力会社への乗り換えを検討し
ますか.
□ 乗り換えを検討したい
□ 乗り換えたくない
□ どちらともいえない・わからない
A-24
(問 5 で「乗り換えたくない」を選択した回答者のみ)乗り換えたくない理由は何で
すか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 選び方がわからない
□ 具体的にイメージできない
□ 手続きが面倒
□ 電気代が抑制されるとは思わない
- 131 -
□ 現状に不満がない
□ 特に理由はない
A-25
電力の小売り自由化後,契約する電力会社を選択する時,あなたは何を重視しますか.
以下のうち,当てはまるものをすべてお選びください.(複数回答)
□ 電気料金の安さ
□ 料金メニューの豊富さ
□ メニューや手続きの分かりやすさ
□ 自分のライフスタイルにあっているかどうか
□ 顧客対応などのサービス
□ 再生可能エネルギーや自然エネルギーの比率
□ 原子力発電を使用しないこと
□ 電力供給の安定性
□ 見える化サービスの提供
□ 途中契約解除(会社切り替え)の制約がないこと
□ 企業の規模・知名度・実績
□ 地元企業や地域主体の企業であること
□ その他(
A-26
)
時間帯別料金プランには、次のような短所が知られています。そうした短所を踏まえ
- 132 -
て、以下の質問にお答え下さい。

時間帯別料金プランによって、夏の昼間や冬の夕方など、電力需要ピーク時に、エア
コンなど、電気製品の使用を控える必要がある。

時間帯別料金プランによって、家庭の月々の電気料金の支払額が増えて、家計に負担
をかける可能性もある。

電力消費の見える化や、エアコンなど、家電製品のスマート化を実現するために、ホー
ム・エネルギー・マネジメント・システムを導入する必要がある。
現在契約している料金プランから時間帯別料金プランに切り替えを検討する時,月々の電
気料金がどれだけお得であれば,時間帯別料金プランに替えますか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 料金が下がらなくても替える
□ 5%減なら替える
□ 10%減なら替える
□ 20%減なら替える
□ 料金が下がるとしても替えない
A-27
新電力会社への切り替えには、次のような短所が知られています。そうした短所を踏
まえて、以下の質問にお答え下さい。

新電力会社は十分な発電設備を持っていないことが多いので、現在契約している電力
会社に比べて、安定した電力供給を受けられない可能性もある。

新電力会社の参入によって、電力消費のパターンやお住まいの地域特性に応じて、一
部の顧客の電気料金の支払が現在よりも増える可能性もある。

新電力会社の算入によって、従来通りの発電・送配電・小売の垂直一貫体制が崩れ、
将来の発電設備や送配電設備への投資が不十分になる可能性もある。
現在契約している電力会社から別の電力会社に乗り換えを検討する時,月々の電気料金が
どれだけお得であれば,別の電力会社と契約しますか.
以下のうち,最も当てはまるものをお選びください.
□ 料金が下がらなくても乗り換える
□ 5%減なら乗り換える
□ 10%減なら乗り換える
□ 20%減なら乗り換える
□ 料金が下がるとしても乗り換えない
B.選択型の設問
電力小売り自由化後の電力量料金プラン選択についての,あなたの選択に関する意向をお聞か
せください.
- 133 -
時間帯別料金プランの場合は,ご自分のライフプランにあった時間帯別料金を選べると想定し
てお答えください.
従量電灯料金プランの場合は,一日を通して同じ電気代です.
なお,再生可能エネルギーと原発由来のエネルギー以外は,火力発電(化石燃料)由来のエネ
ルギーです.
現在既に時間帯別料金プランにご加入の方も,現在はまだ従量電灯料金プランに加入されてい
ると仮定して,以下の設問に仮想的にお答えください.
同じ内容の質問を,三者択一問題としてお聞きします.
プラン①は,現在ご契約中の電力会社とは異なる新電力会社が提供する料金プランです.
プラン②は,現在ご契約中の電力会社による新しい料金プランです.
プラン③は,現在ご契約中の電力会社による既存の料金プランです.
望ましい選択肢をいずれかひとつお選びください.
電力供給の安定性(停電の確率など)は,どちらの会社も同程度だとお考えください.
設問は全部で 8 問あります.あまり難しく考えずにご回答ください.
B-17 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
0%
40%
10%
原発比率
20%
0%
10%
月間電気料金
20%減
20%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-18 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
- 134 -
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
40%
10%
原発比率
20%
20%
10%
月間電気料金
現状と変わらない
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 135 -
B-19 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
0%
10%
原発比率
20%
40%
10%
月間電気料金
10%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-20 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
0%
20%
10%
原発比率
0%
20%
10%
月間電気料金
10%減
20%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 136 -
B-21 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
0%
10%
原発比率
0%
20%
10%
月間電気料金
10%減
現状と変わらない
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-22 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
20%
20%
10%
原発比率
40%
20%
10%
月間電気料金
20%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
- 137 -
B-23 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
40%
20%
10%
原発比率
20%
40%
10%
月間電気料金
10%減
10%減
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
B-24 次のような電力会社・電力量料金プランの選択肢があるとき,あなたはどの料金プランで
契約したいと思いますか.
プラン①
現在とは異なる新電力会社
プラン②
現在契約中の電力会社
プラン③
現在契約中の電力会社
料金プラン
一律型従量電灯料金
ピーク・オフピーク型
時間帯別料金
一律型従量電灯料金
再生可能エネルギーの比率
40%
20%
10%
原発比率
40%
0%
10%
月間電気料金
現状と変わらない
現状と変わらない
現状と変わらない
↓
↓
↓
選択するものに○
質問は以上です.ご協力ありがとうございました.
- 138 -
CASE STUDY
Grid balancing using energy storage aggregation
This case study discusses the battery-based energy storage
aggregation system developed as part of the Yokohama
1
Smart Community Project . Dubbed battery SCADA, it has
been used to explore how distributed battery-based energy
storage systems can be virtually aggregated to provide
ancillary services such as frequency regulation to the grid as
well as peak-shifting for the end-consumer.
The Yokohama Smart Community Project is one of the four
1
smart community projects funded by the Japanese central
government, as well as local governments, in collaboration
with the private sector. The primary objective of the projects
was to realise resilient and sustainable energy infrastructure.
The projects were planned in FY2010, and executed from
FY2011 until FY2015.
The battery SCADA system was developed by Toshiba, in
partnership with Hitachi, Kansai Electric Power Company,
Meidensha, Mitsubishi Heavy Industry, NEC, Sharp, Sony
and Tokyo Electric Power. The plan for the system was
developed in FY2011, with installation completed in FY2012,
and testing conducted over the following two years.
Budget details for the battery SCADA system have not been
disclosed. The overall original budget put forward by the
Yokohama Smart Community Project team for the broader
Community Energy Management System (CEMS) project,
which included the battery SCADA system, was JPY 2.6bn
1
($22.5m ).
THE CHALLENGE
There are continuous discrepancies between supply and
demand in an electricity grid. To maintain balance, system
operators perform tasks (or externally procure services)
such as frequency regulation – ensuring the grid frequency
stays within a specific range – and deployment of reserves
to address short-term supply-demand imbalances. These
tasks/services are collectively called ancillary services. The
traditional approach to ancillary services is to reserve a
certain portion of power output from existing assets such as
coal plants and pumped hydro to provide ancillary services.
However traditional approaches to ancillary services are
facing increasing physical, environmental and economic
1
challenges that can be addressed by relying on faster
responding scalable battery-based energy storage systems:
Changes to supply: as the overall share of variable
renewable electricity sources, ie, wind and solar, increase in
the overall generation mix, the need for ancillary services
also increases due to weather dependency of output from
wind and solar. Additionally, even for electricity systems with
relatively low or no reliance on renewable energy, real-time
events such as a mechanical failure of a gas turbine require
the ability to quickly respond to changes in the supplydemand balance.
Changes to the demand: As economies mature, there is
more electricity demand from the residential and service
sectors relative to the manufacturing sector. Demand
profiles from residential and service sectors are far peakier
on a daily basis compared to demand from the
manufacturing sector. As a result the overall electricity
demand profile in developed economies is getting peakier,
while overall electricity consumption remains stagnant or
declining in some cases. Peakier demand means some
conventional generators would be running fewer hours per
year thus reducing their economic competiveness. This in
turn creates the need for technologies such as energy
storage that enable peak shifting to achieve a flatter
demand profile.
Additionally, uptake of rooftop PV is transforming the
demand-side of the grid to a supply source too. The
electricity injected into the grid by rooftop PV sources can
pose challenges to the regular voltage distribution along the
grid thus requiring new means for voltage control on the
distribution network.
WHAT THEY DID
Utilisation of battery-based energy storage systems for
ancillary services has already been demonstrated by
various projects around the world. The goal of this project
was to develop a system that could virtually aggregate
different sized battery-based energy storage systems
deployed at various nodes within the grid as well as at the
consumer end to provide ancillary services as well as peak
shifting.
Exchange rate used is 116.6 JPY/USD
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade
and Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is
included.
Page 1 of 23
CASE STUDY
Technical results: In tests with just the Toshiba battery for
Supply/demand
data
Active
generators
Electricity
supply +
regulation
service
OUTCOME
Grid management system LFC signal
(CEMS)
LFC signal
Backup
generators
Battery
SCADA
Electricity supply
LFC command
SOC
status
signal
Stationary
Battery 1
Electricity
supply +
regulation
service
T&D
network
frequency regulation, the battery SCADA showed it could
achieve changes from providing 300kW to the grid
Stationary
Battery 2
Stationary
Battery 3
Regulation up/down service
Electricity supply
Renewables
(variable output)
Legend
information
Variable load
eg, EV charger
Load
Control signal
Electricity flow
Figure 1. Battery SCADA schematic
Source: Toshiba, Mitsubishi UFJ Research Consulting. Note:
SOC stands for state of charge.
The battery SCADA system (Figure 1) developed in this
project integrated three large stationary lithium-ion battery
energy storage systems: 300kW/100kWh (Toshiba),
300kW/100kWh (Hitachi), and 250kW/250kWh (NEC in
partnership with Meidensha). The battery SCADA system
was designed to also be able to communicate with energy
storage systems installed at the user end. The battery
SCADA system itself was interconnected to the central grid
operating system to be able to receive grid control
commands.
The battery SCADA system was designed in accordance
2
with IEC61850 communication standards for substation
automation, part of IEC’s smart grid standards. It performed
two functions:
Load frequency control: for this functionality, once the
battery SCADA receives a grid control signal from the
CEMS ie, the system operator, it takes into account the
available electricity stored in each of the three batteries and
rapidly determines how much power to charge or discharge
from each of three units to achieve the frequency correction
(regulation up) to reducing 300kW from the grid (regulation
down) in one second ie, within the communication speed
limits of the system as well as the maximum power rating of
the battery system. The test results have been disclosed as
part of the use cases filed with the Electric Power Research
3
Institute’s smart grid USE Case Repository .
System advantages
Battery based frequency regulation systems can provide a
far faster response than conventional means of frequency
regulation. As mentioned above, in the Yokohama Smart
Community project, the system has been able to provide
100% of its maximum power output in less than one-second.
For comparison a typical efficient 500MW+ gas turbine such
4
as the GE 9HA.02 , has a ramping rate of 70MW/min ie, it
has a ramping rate of 0.23% of max output /second
compared to the ramping rate of 100%/second for the
energy storage system. While faster gas turbines exist eg,
4
the GE 7E.03 , it still takes more than two minutes for the
turbine to ramp up to its maximum output ie, a ramping rate
of 0.73% of max output /second.
Battery based systems also do not directly emit any
pollution or create noise, which makes it easier to place
them in urban centres. Additionally, as the size of the
underlying battery system can be easily scaled up or down,
the overall system size tends to be more flexible than
pumped hydro systems as well as thermal generators.
While the aforementioned advantages are common among
all battery-based systems, an additional advantage of the
battery SCADA system designed for the Yokohama Smart
Community project is the ability to independently replace
each of the battery systems controlled by the SCADA
system if and when needed.
Is the outcome replicable?
needed.
Spinning reserve: in this case, the energy storage system
provides (or removes) considerable amount of energy to the
grid, whereas in load frequency control it is primarily about
provision of power ie, megawatts and not energy ie,
megawatt-hours.
In February 2015, Toshiba commissioned a 40MW/20MWh
5
energy storage system – as a commercial-scale pilot
project – at Tohoku Electric’s Nishisendai transmission
substation based on the same technology used in the
Yokohama Smart Community Project. That installation has
been providing ancillary services for Tohoku Electric which
is seeing a rapid uptake of solar and wind installations.
According to Toshiba, the Tohoku installation has matched
the performance of the Yokohama project. Specifically it has
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 2 of 23
CASE STUDY
been able to achieve regulation up/down on 10MW within
430 milliseconds ie, a response time of 58% of the
maximum power rating per second, far faster than typical
thermal generators. Toshiba is currently developing a
6
second 40MW/40MWh project for Tohoku Electric set for
commissioning by February 2016.
Separately in June 2014, Toshiba started to develop a
7
2MW/1MWh pilot in collaboration with the University of
Sheffield at the Willenhall primary substation of the Western
Power Distribution’s network in the UK. In April 2015,
Toshiba also started developing a commercial 6MW/2MWh
8
project in collaboration with Sumitomo Corporation and
Renewable Energy Systems Americas (RES) in Hamilton
County, Ohio to participate in the frequency regulation
market of the PJM Interconnection.
In short, there is ample evidence that Toshiba, and other
parties, have had sufficient confidence in the technology to
utilise the technology for new projects. There are also about
170MW of battery based energy storage installations
providing ancillary services in to the PJM interconnection in
the US, showing greater confidence in the technology.
Economics: The technical performance of Toshiba’s
system certainly appears to meet emerging needs for
ancillary services. The question is whether it can meet those
needs in an economical manner. Detailed cost information
has not been provided for the Yokohama project. However,
9
estimations by NEDO suggest a 40MW lithium-ion battery
system for frequency regulation would be JPY 6bn
($51.46m), while technical publications by Toshiba suggest
the capital cost associated with the battery SCADA is about
94
94
93
89
78
Kyushu
Chugoku
TEPCO
Chubu
107
Shikoku
111
Hokuriku
124
Tohoku
142
Hokkaido
Okinawa
151
Kansai
JPY 1bn ($8.57m) ie, in total a 40MW system would cost
JPY 7bn ($60m). O&M costs are expected to be relatively
minimal as the battery system does not require any fuel.
Additionally the net amount of electricity used to charge and
discharge to provide frequency regulation on a net-basis is
Figure 2: Japanese utilities estimated average spending
on frequency regulation ($/kW)
Source: Disclosures by each utility to the Electricity Market
Surveillance Commission10
relatively low.
Comparing the capital costs of the energy storage system
with Japan’s vertically integrated utilities’ annual costs for
frequency regulation (Figure 2), Toshiba expects the
technology to be cost competitive.
FUTURE PLANS
As the amount of variable renewable energy in Japan’s
energy mix increases, Toshiba and its partners expect
increasing need for frequency regulation. They expect the
battery SCADA system will be able to address those needs
in a more economical, and environmentally friendly manner
than thermal generators and pumped hydro. Another
potential area of adoption is by Japan’s many small remote
islands. Integration of energy storage in the small grid
systems of such islands could enable far higher uptake of
renewable resources.
OUTLOOK
The technical performance of Toshiba’s technology certainly
appears well suited for emerging ancillary service needs.
The company also appears to be accumulating practical
experience deploying different sized installations across the
world which showcase the versatility of its technology. The
important factor going forward will be the economics of the
technology. This is not simply dependent on the capital cost
of the equipment, but also the financing cost.
Another important factor is how Toshiba’s battery SCADA
technology can be adopted for use under different business
models suitable to the local electricity market structure.
Under Japan’s current market, the country’s 10 vertically
integrated utilities have sole responsibility for ancillary
services in their respective regions and they pass on that
cost to rate payers as part of regulated network charges.
Under such circumstances, economic comparisons are
relatively simpler as the utility is more or less guaranteed a
cost recovery mechanism.
In liberalised electricity markets such as those operating
within the PJM interconnection in North-eastern US, a
competitive market for ancillary services exists whereby
third-parties compete to sell services to the network
operator. As shown in Figure 3 this results in highly volatile
pricing for regulation services. Under such circumstances, it
is paramount for the battery SCADA system to also offer
optimised trading strategies to maximise revenue streams
for the battery system owner. This need may also arise in
Japan, as the country proceeds with its electricity market
reform process and unbundles the vertically integrated
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 3 of 23
CASE STUDY
utilities by 2020. Toshiba has indicated that its system is
already incorporating such functionality which it will be
testing via its Hamilton project.
$250/MWh
$200/MWh
Customers Electricity Usage IEEJ Transactions on
Power and Energy. Vol.135 No.1 pp.78–84
10. Utility submissions to the electricity rate committee
of the Electricity Market Surveillance Commission.
11. PJM Interconnection data directory, accessed on
12 January 2016.
$150/MWh
$100/MWh
$50/MWh
$0/MWh
1 Jan
2 Jan
3 Jan
4 Jan
5 Jan
6 Jan
7 Jan
Figure 3: Hourly frequency regulation clearing prices
for PJM for the first week of 2016 ($/MWh).
Source: PJM Interconnection. Note: chart created by
Bloomberg New Energy Finance based on publicly
11
available data from PJM Interconnection .
CONCLUSION
Provision of ancillary services is an increasingly attractive
application for energy storage which can reduce the volume
of balancing services required in a market and lead to fewer
emissions. The technology is also well suited for smaller
grid systems on islands as well as in regions with limited
grid infrastructure. The battery aggregation technology
demonstrated by Toshiba and its partners at the Yokohama
Smart Community can enable further adoption of energy
storage for grid balancing provided supportive regulatory
mechanisms and business models are adopted.
REFERENCES
1. Japan Smart City Portal accessed on 8 January
2016.
2. IEC61850 communication standards accessed on
8 January 2016.
3. Electric Power Research Institute’s smart grid USE
Case Repository accessed on 8 January 2016.
4. General Electric Gas Turbine Product Page
accessed on 1 February 2016.
5. Commencement of operation of large-scale battery
energy storage system for Nishi-Sendai substation
of Tohoku Electric, Toshiba Review, Vol.70 No.9
(2015).
6. 29 May 2015 Toshiba Press Release
7. 24 June 2014 Toshiba Press Release
8. 21 April 2015, Sumitomo Corp Press Release
9. Demonstration and Business Method of Peak
Shifting using Battery Aggregation Technology by
Demand Response without Restriction of
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 4 of 23
CASE STUDY
ABOUT US
Copyright
This case study is prepared by Bloomberg New Energy Finance in collaboration with Mitsubishi
UFJ Research and Consulting as part of a project commissioned by Japan’s Ministry of Economy
Trade and Industry, Agency for Natural Resources and Energy. Copyright of this report belongs to
Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and Industry, Government
of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Disclaimer
This service is derived from selected public sources. Bloomberg Finance L.P. and its affiliates, in
providing the service, believe that the information it uses comes from reliable sources, but do not
guarantee the accuracy or completeness of this information, which is subject to change without
notice, and nothing in this document shall be construed as such a guarantee. The statements in
this service reflect the current judgment of the authors of the relevant articles or features, and do
not necessarily reflect the opinion of Bloomberg Finance L.P., Bloomberg L.P. or any of their
affiliates (“Bloomberg”). Bloomberg disclaims any liability arising from use of this document
and/or its contents, and this service. Nothing herein shall constitute or be construed as an
offering of financial instruments or as investment advice or recommendations by Bloomberg of an
investment or other strategy (e.g., whether or not to “buy”, “sell”, or “hold” an investment). The
information available through this service is not based on consideration of a subscriber’s
individual circumstances and should not be considered as information sufficient upon which to
base an investment decision.
Page 5 of 23
CASE STUDY
Supply-demand balancing system for electricity retailers
This case study discusses the community energy
management system (CEMS) developed as part of the Kita
Kyushu Smart Community Project by Fuji Electric. The Kita
Kyushu Smart Community Project is one of the four smart
community projects funded by the Japanese central as well
as local governments in collaboration with the private sector.
The primary objective of the projects was to realise resilient
and sustainable energy infrastructure. The projects were
planned in FY2010, and executed from FY2011 until
FY2015.
The CEMS was developed by Fuji Electric, as part of a
broader energy management system project (including enduser installations of HEMS/BEMS and other energy
resources) in partnership with IBM Japan, Nittetsu Elex,
Nippon Steel & Sumikin Engineering, Kita Kyushu city and
others. Budget details for the CEMS have not been
disclosed, however estimate of the system cost are
discussed later in this note under economics. The overall
original budget put forward by the Kita Kyushu Smart
Community Project team for the broader energy
management system project which included the CEMS was
2
JPY2.7bn (USD23.2m ).
THE CHALLENGE
The CEMS was developed to address two related needs:
Planned value and Real-time balancing in deregulated
retail markets: Electricity retailers have to ensure supply
and demand remain in balance at one hour before the time
when electricity would be used for real or have to ensure
electricity demand from their customers is balanced in realtime with electricity supply both to ensure the physical
stability of the power grid as well as to meet their regulatory
and financial obligations. Independent retailers operating in
competitive deregulated markets, typically secure electricity
from a variety sources eg, the wholesale electricity market,
independent power producers as well as their own
generation assets. These retailers may not be able to easily
make real-time adjustments to their electricity supply. While
they may be able to purchase additional supplies in realtime, those supplies could be too expensive. Failing to
2
Exchange rate used is 116.6 JPY/USD
ensure demand from their customers remains balanced with
contracted supply, may result in hefty imbalance penalties
even if the network remains physically balanced. Under
many circumstances it can be more economical for the
retailer to pay some of its customer to reduce demand so
that the retailer does not have to procure additional
expensive supplies and/or pay hefty imbalance penalties.
The CEMS developed for the Kita Kyushu project enables
such demand response (DR) schemes that help the retailer
avoid or lower imbalance fees. The CEMS achieves this
objective by integrating economic signals eg, imbalance
penalties, wholesale power prices, and residential demand
response incentives, dynamic retail pricing,… into its supplydemand forecasting to develop the most optimum loaddispatch algorithm.
Real-time balancing in independent grids subject to
high-levels of intermittent renewables: In larger grid
networks with relatively low penetration of solar and wind,
the intermittent output from solar and wind can be balanced
by reliance on other generation and energy storage systems.
In independent grids for example those on small islands, it is
not possible to easily balance out the intermittent output
from renewables, particularly if the share of renewables is
relatively high. The CEMS developed for the Kita Kyushu
project overcomes this challenge by integrating accurate
weather and local demand forecasting into its supplydemand balancing as well as utilising demand response.
WHAT THEY DID
For the Kita Kyushu project, Fuji Electric developed the
CEMS (Figure 1) from the perspective of usage by an
independent retailer operating in a competitive retail market
as well as exposed to a grid with a high level of renewable
energy penetration. The CEMS primary function is supplydemand control. Based on its supply-demand control
functionality, it can also act as a demand response
management system (DRMS).
Supply-demand control function: To achieve the optimum
supply-demand balance, separate interconnected
forecasting and control functionalities are implemented.
Forecasting covers projections of electricity demand as well
as output from renewable resources taking into account
detailed weather conditions.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade
and Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is
included.
Page 6 of 23
CASE STUDY
The control function integrates the following four grid
operation components:
•
Supply-demand operation plan: Supply-demand
operation plan takes into account actual output from
renewable resources to determine whether to adjust
output from other generation as well as energy storage
sources. This functionality enables meeting objectives
such as lowering supply costs, lowering emissions,
reducing peak-demand, and peak-shifting.
•
Economic dispatch: This functionality optimizes the
dispatch order for each power plant to achieve the
lowest-cost generation mix. Taking into account the
specific network region and period of time, based on
the forecasted supply-demand, the system calculates
how much power from existing thermal generators
should be adjusted, how much external power
purchases to be carried out, as well as charging or
discharging energy storage systems and output from
renewables.
•
operation plan together with the DR information, control the
load as well as batteries, and provide dynamic pricing /
incentive programme information to consumers as well as
building owners.
Load frequency control: To control the frequency of the
power grid within the target range, this feature controls
output from generators as well as energy storage units.
•
Planned value balancing: This functionality ensures
supply and demand remain in balance at one hour
before the time when electricity would be used for real.
•
Real-time balancing: This functionality ensures supply
and demand remain in balance within the 30-min
compliance period by controlling generators as well as
energy storage units.
Demand response management system: in addition to
the aforementioned forecasting functionality and supplydemand operation plan, the CEMS communicates
information on dynamic pricing / incentive programmes to
energy management systems installed at end-user sites.
The details of the information exchange is described as
following. First from the CEMS side weather data or retail
menu is sent to the lower order energy management
systems (EMS), then the lower level energy management
systems such as a home energy management system
(HEMS) or a building management system (BEMS)
determines its own action plan and sends feedback to the
CEMS. Additionally, on the CEMS side, based on the
weather data forecasted output of solar PV, as well as
updated operation plan based on the lower EMS feedback,
it recalculates new DR retail menu and feedback to the
lower EMS system. The lower EMS based on updated
(Demand side)
Load
DER
Load DER
FEMS
Supply/
demand
plan
BEMS
Load DER
HEMS
Load
Smart
meter
Pricing
data
Grid
CEMS
Current
output
Pricing
information
control
Wind,
solar
Thermal
generator
●
Energy
storage
Whole-sale
power market
(Supply side)
Figure 4. Simplified schematic of CEMS integration.
Source: Fuji Electric, Mitsubishi UFJ Research Consulting.
Note: DER stands for distributed energy resources such as
rooftop PV, residential energy storage or fuel cells, etc. FEMS
stands for factory energy management system. Dashed lines
represents information flow while sold lines mark control
signals.
Beyond the supply-demand control functionality including
DRMS, the CEMS also offers two more features:
Voltage control: The voltage control functionality enables
the CEMS to direct underlying systems to adjust their output
to ensure the voltage in specific parts of the grid maintain
the targeted range.
Autonomous operation: During blackouts caused by
disaster, the CEMS can control the subsystems under its
control to autonomously operate the segment of the network
it is connected to if there are sufficient local generation and
storage assets available.
SYSTEM ADVANTAGES
Technology: The underlying foundation of the
aforementioned functionalities of Fuji Electric’s CEMS is its
unique forecasting technology. Without accurate forecasting
the CEMS would not meet its desired functionality. For
example it wouldn’t be able to properly balance supply and
demand, nor forecast amount of output from solar and wind.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 7 of 23
CASE STUDY
The forecasting technology is based on the latest data
mining techniques for Big Data.
During the Kita Kyushu demonstration experiment the
CEMS was able to improve daily load curve forecasting. By
taking into account detailed characteristics of each
consumers’ demand profile, and the weather forecast for the
next day, it was possible to forecast the amount of electricity
each consumer would use. The forecasting model takes into
account quantitative weather information such as
temperature, humidity and cloudiness, and based on such
quantitative information as opposed to qualitative inputs, it
can develop accurate forecasts of amount of solar output.
Economics: The system at a minimum requires 200
can serve these customers. These independent retailers
referred to as PPS in the Japanese regulatory context, for
instance, have to ensure their customers demand within
30min intervals does not deviate from contracted supply by
more than ±3%, otherwise they will have to pay hefty
imbalance penalties to the local utility whose network they
rely on.
Figure 2 shows the operation scheme as utilised by a PPS.
In this schematic, it is assumed the PPS has access to other
generators as well as storage systems in its area along with
the wholesale power market.
The primary objective of the PPS is to serve its customers
electricity demand. The CEMS enables the PPS to come up
electricity customers. For the minimum size, the initial
introduction cost of the system is around JPY 100m ($858k),
while the O&M cost of the system is estimated to be about
JPY20m/year ($172k/year). Based on the cost savings
associated with lower electricity procurement costs, and
revenue from demand response, Fuji Electric expects that
the payback period for the system is about 5 years.
with the most optimized merit order to meet its customer’s
demand without having to rely on excess generation either
from its own assets and/or external procurement.
Furthermore, the CEMS develops an economic load
dispatch order that will determine whether to rely on
purchasing power from the wholesale market and/or relying
on surplus power from other generators. The CEMS also
enables the PPS to implement demand response either
FUTURE PLANS
directly or via an aggregator. By relying on the CEMS, the
PPS can control its customers demand to ensure it does not
end up violating the planned value or real-time balancing
rule and hence avoid having to pay an imbalance penalty.
The CEMS reduces the potential for having to pay
imbalance penalty fees while also optimizing the
procurement cost of electricity thus overall allowing the PPS
to increase its revenues.
The primary users of the CEMS would be electricity retailers
in particular those operating in deregulated competitive
markets. For example, in Japan under the current regulatory
framework (in place since 2005 and set to change from April
2016 onwards), the retail market for customers with demand
Municipalities
Subsidy,
support
Additionally the system can enable the realization of
Network utility
Information on local
energy production/
consumption, CO2
reduction
Network
Balancing
control
charges
supply/demand balancing control
Retailer using CEMS
Economical load dispatch
DR function
Payment
payment
Electricity
procurement/
trading
Electricity
provision
Payment
aggregators
Payment
IPP, Electric Power Exchange,…
negawatt
Demand
aggregation
Electricity consumer
Figure 5: Business models enabled by the CEMS
Source: Fuji Electric, Mitsubishi UFJ Research Consulting.
above with 50kW is deregulated, and independent retailers
important political targets such as increasing regional selfsufficiency, by enabling the ability to utilise locally generated
electricity from renewable energy resources to serve public
facilities. Introduction of this system enables a smooth
control of supply and demand and can act as a platform for
business improvement.
More than 200 users would be needed for this system to be
successfully introduced. There has been a simulation result
in which initial cost would be recovered within 5 years if the
following conditions would be realized; that is to say,
electricity supply: 6,000MWh/month, peak demand:30M, the
number of users:200, the initial cost:100 million yen and the
running cost:20 thousand yen/year. Moreover, the income
include the reduction of imbalance penalty fees, the
reduction of fuel costs due to flat and smooth operation, the
income of negawatt business and the reduction of
depreciation cost due to decrease of reserved capacity, as
well as the income due to supply of electricity.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 8 of 23
CASE STUDY
1900
•
The CEMS would enable increasing the quality of the
electricity service by ensuring better balance between
supply and demand
•
It will also enable integration of renewable energy as
1,000 USD
1400
900
400
-18 -37 -55 -73 -91 62
-100 yr 1 yr 2 yr 3 yr 4 5
6
7
CEMS capex
Reduced opex(imbalance)
cumulative profits
215
8
368
9
521
675
10
828
11
981
12
CEMS O&M
Reduced opex(fuel)
1,921
1,825
1,729
1,633
1,537
1,441
1,288
1,134
13
14
15
16
17
18
19
20
Nega-watt revenue
Avoided capex
well as energy storage
•
In cases where there are lower level energy
management systems such as at a factory, the CEMS
can interact with the EMS in a similar manner to the
PPS model. Fuji Electric has already introduced the
system into an industrial park in Indonesia. The
experience in Indonesia is expected to enable further
expansion to other markets.
Figure 6: An example of cash flow
Source: Fuji Electric, Mitsubishi UFJ Research Consulting.
OUTLOOK
Domestic market: ENERES Co.,Ltd. has already
introduced a demand and supply management system
which has such functions as real-time balancing, demand
forecasting and power generation planning and applied the
system for their own project and for PPS as a business.
However, in order to increase economic efficiency, it would
be expected for CEMS with more various functions, which is
referred here, to be introduced to the market. Fuji Electric
envisions the CEMS can be widely adopted in Japan if the
following conditions are met:
•
The ongoing electricity market reform process leads to
a supporting regulatory framework.
•
Increase of renewables leads to greater need for grid
stabilisation
•
Electricity procurement via the wholesale market
becomes mainstream
If the above conditions are met, retailers adopting the CEMS
can develop new business models. For example if the
proposed negawatt trading scheme is successfully
implemented, the CEMS can become a critical tool for
retailers and aggregators to enable expansion of demand
response in Japan.
International market: Fuji Electric expects the CEMS can
enable increasing electricity quality in developing countries
suffering from black outs and brownouts. It can also support
better management of electricity retail payment. The
business model would be very similar to the PPS case in
Japan:
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 9 of 23
CASE STUDY
06 April 2016
ABOUT US
Copyright
This case study is prepared by Bloomberg New Energy Finance in collaboration with Mitsubishi
UFJ Research and Consulting as part of a project commissioned by Japan’s Ministry of Economy
Trade and Industry, Agency for Natural Resources and Energy. Copyright of this report belongs to
Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and Industry, Government
of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Disclaimer
This service is derived from selected public sources. Bloomberg Finance L.P. and its affiliates, in
providing the service, believe that the information it uses comes from reliable sources, but do not
guarantee the accuracy or completeness of this information, which is subject to change without
notice, and nothing in this document shall be construed as such a guarantee. The statements in
this service reflect the current judgment of the authors of the relevant articles or features, and do
not necessarily reflect the opinion of Bloomberg Finance L.P., Bloomberg L.P. or any of their
affiliates (“Bloomberg”). Bloomberg disclaims any liability arising from use of this document
and/or its contents, and this service. Nothing herein shall constitute or be construed as an
offering of financial instruments or as investment advice or recommendations by Bloomberg of an
investment or other strategy (e.g., whether or not to “buy”, “sell”, or “hold” an investment). The
information available through this service is not based on consideration of a subscriber’s
individual circumstances and should not be considered as information sufficient upon which to
base an investment decision.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry o
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided prop
CASE STUDY
Integration of transportation and energy data management
systems to lower traffic congestion and emissions
This case study discusses Toyota Motor Corporation’s
demonstration project on integration of transportation data
management system (TDMS) with energy data
management system (EDMS) to increase utilisation of public
transportation systems to lower emissions as well as traffic
congestion.
This project dubbed “TDMS-EDMS” was part of the Toyota
Smart Community project, one of the four smart community
projects funded by the Japanese government, in
collaboration with the private sector. These projects were
planned in FY2010, and implemented over a four-year
period from FY2011-FY2015.
THE CHALLENGE
According to the United Nation’s Intergovernmental Panel
on Climate Change (IPCC), greenhouse gas (GHG)
emission from the transport sector in 2010 had already
reached 7GtCO2eq accounting for 23% of global energyrelated CO2 emissions (Reference 1). GHG emissions from
the transport sector has more than doubled since 1970,
outpacing the growth rate of all other energy end-user
sectors, with 80% of this increase coming from road
vehicles. In 2014, IPCC projected that without “aggressive
and sustained mitigation policies” GHG emissions from the
transport sector could reach 12 GtCO2eq by 2050. One of
the mitigation approaches recommended by the IPCC is
“modal shift to lower-carbon transport systems —
encouraged by increasing investment in public transport,
walking and cycling infrastructure, and modifying roads,
emissions. In the TDMS-EDMS project, controlled charging
of electric vehicles was implemented to ensure the charging
process does not take place during peak-demand to lower
the resulting GHG emissions.
WHAT THEY DID
Figure 1 shows the basic system configuration of the Toyota
Motor demonstration project. The Traffic Data Management
System (TDMS) controls transportation demand/supply and
the Energy Data Management System (EDMS) controls
local power supply demand/supply. The integrated platform
plans and controls traveling routes as well as charging
schedule of electric vehicles to lower GHG emissions, and
increase the efficiency of both the local transportation
system and the local power system. Commuters can use the
system via a mobile app as well as a web platform. The
integrated system has five functionalities:
Public transportation
eg, bus, train
Reservation
Operation
information
Another recommendation by the IPCC is increased
utilisation of alternative drivetrains eg, electric vehicles.
While battery electric vehicles do not directly emit any
emissions, in most countries the electricity generation
process itself is still heavily reliant on fossil fuels such as
coal and natural gas. As a result uncontrolled charging of
electric vehicles may limit their contribution to lowering GHG
Weather
information
Road
conditions
Parking
space
Taxi
Events
(road works)
Regional
demand
Local solar
PV output
OMM
Reservation
TDMS
Supply/demand projection
EDMS
Recommendations and incentives
Propose
(multi-modal route search, EV charging schedule)
operation
plans
Mobile App
Transportation
/ Web
providers
airports, ports, and railways to become more attractive for
users and minimize travel time and distance” Toyota’s
TDMS-EDMS project aimed to achieve such a modal shift
by making it easier to utilise the local public transportation
system instead (or in combination) of private vehicles.
Supplementary
Electricity information
information
Transportation information
Reservation
Legend
System element
Information flow
Service flow
Figure 7: Toyota’s integrated TDMS-EDMS platform
Source: Toyota Motor Corporation, Mitsubishi UFJ Research
and Consulting. Note: OMM stands for One Mile Mobility
system, Toyota’s ultra-compact electric vehicle car sharing
platform.
1.
Transportation and supplementary information
collection: TDMS collects real-time data on traffic
flow, parking area vacancies, and bus/train
itineraries as well as passenger flows. It also
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade
and Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is
included.
Page 11 of 23
CASE STUDY
2.
3.
4.
5.
collects information on the weather as well as local
events such as festivals.
Transportation supply and demand projection:
Based on the aforementioned information TDMS
collects, it projects transportation supply and
demand.
Optimal route/transportation mode suggestion:
Based on the predicted transportation supply and
demand, the integrated TDMS-EDMS proposes
optimum multimodal transportation combinations
for commuters based on travel time, cost, and
associated GHG emissions. Users are presented
with the top three results under each category of
travel-time, cost and GHG emissions, which they
can then decide on. In the event the EDMS
requests lowering electricity demand, for users who
own electric and plug-in hybrid vehicle drivers the
TDMS prioritizes usage of public transportation. It
will also send demand response requests to both
charging infrastructure as well as stationary
storage systems in the region to not to charge
during these times, if possible.
Provision of incentives: Along with providing
optimum multimodal transportation routes, the
system provides users with incentives to choose
the choice with the lowest GHG emission as well
as cooperate with demand response requests.
Operation plan feedback for transportation
business: the integrated system also provides
feedback to local transportation businesses such
as taxi fleet operators, city bus operators. The
system provides these entities with information on
how much and when to increase or decrease their
fleets.
OUTCOME
Toyota had initially aimed to achieve a 10% modal shift from
private passenger vehicle usage to public transportation
based on its prior experience from car-sharing experiments
conducted in 1999 (Crayon project), however it has not
been able to confirm the final modal shift rate. If Toyota’s
10% modal shift target is achievable, preliminary
calculations by Mitsubishi UFJ Research & Consulting
based on data provided by Toyota shows that a city with
similar characteristics to Toyota City ie, a population of 500k
and daily average passenger vehicle of 760k trips would be
able to reduce its transportation GHG emissions by 18.5%.
3
If CO2 were priced at 10$/t this would translate to $1.37m.
Additionally 18m hours of commuting time per year would
be saved. Based on Japan’s Ministry of Land Infrastructure
3
and Tourism’s analysis of value of lost time to commuting
(Reference 2), this would translate to JPY49bn ($420m).
While the results of the modal shift are unclear, the project
was successful in demonstrating the integrated TDMSEDMS platform could perform all its aforementioned five
functionalities. The system was able to provide multimodal
route suggestions to users as well as operation plans to
transportation business operators based its transportation
supply/demand projections. Its suggestions included the
relevant combination of multimodal transportation options as
well as incentives to encourage utilisation of the lowest
GHG emission choice. The demand response functionality
controlling charging of electric vehicles as well as stationary
energy storage systems also performed as designed.
FUTURE PLANS
Figure 2 shows the future operating scheme of the TDMSEDMS platform based on Toyota’s experience thus far. The
platform operator would provide services such as
route/transportation mode suggestions to users and receive
payments for those suggestions. The operator may also be
able to generator ancillary revenues from the local utility via
participation in demand response as well as the local
municipality that would be benefiting from lower congestion
and better air quality hence enhanced economic activity.
Transportation service providers can be either owners of
this platform or users themselves. In Figure 2 transportation
service providers are considered as users. Traffic service
businesses receive the benefit of a rise in income with the
increase in public transportation usage as well as increasing
operation efficiency through the operation plan suggestion
service based on the platforms supply/demand predictions.
Although fuel consumption and GHG emissions of the
transportation service providers could increase depending
on the composition of their transport fleet.
Commuters would have to pay to use the service however
they would benefit from savings associated with reduced
usage of their own private vehicle as well as time-savings
due to lower average commute time. Additionally they could
benefit from the incentives offered by the TDMS-EDMS
platform, if they can comply with the route suggestions and
DR events.
Reference carbon price considered by the Electricity
Generation subcommittee convened by Japan’s Ministry
of Economy Trade and Industry (Reference 3)
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 12 of 23
CASE STUDY
Telecom
network
operator
System
installer
O&M
provider
Electricity
retailor
compensation
Reduce
traffic congestion/
Improved
air quality
TDMS/
EDMS
TDMS/
EDMS
Municipality
Installation
Fee
TDMS-EDMS platform
DR for charging
Commuters
EV drivers
Public transportation
(bus, train) operator
Figure 8: TDMS-EDMS operation scheme
Source: Toyota Motor, Mitsubishi UFJ Research & Consulting.
Note: red arrows mark payment flows while blue arrows market
service flows
Future deployment targets
Since modal shifting from personal vehicles to public
transportation is the main goal, the targeted regions need to
have pre-existing public transportation infrastructure. Toyota
Motor expects a certain balance of existing private
passenger vehicle traffic volume as well as availability of
public transportation alternatives eg, buses and trains would
be optimum. To test out results under different existing
conditions, Toyota is proceeding with similar projects
elsewhere in Japan as well as in France.
Grenoble: In September 2014, in coordination with City of
Grenoble as well as French utility EDF (and its affiliate
Sodetrel), and local car-sharing operator Cité lib, Toyota
launched a similar three-year project in Grenoble.
Tokyo: In February 2015, Toyota in collaboration with
parking operator, Park24 announced a 6-month trial in the
business district of Tokyo around Yurakucho station. Later it
economics seems attractive. The system would also
increase the return-on-asset for the existing public
transportation infrastructure. The cost of the system itself
may come down further as a result of advances in cloud
computing.
CONCLUSION
The integrated TDMS-EDMS platform can reduce
congestion as well as GHG emissions, thus contributing to
the quality of life in the region of its deployment. The
integration of the local Traffic Data Management System as
well as the Energy Data Management System also offers
clear ancillary benefits to both the electricity grid as well as
the local transportation infrastructure.
Toyota is currently evaluating which domestic and
international markets would be best suited for commercial
deployment of the system prioritising developed countries
until 2020 and developing countries post 2020.
While the Toyota city demonstration experiment was aimed
at passenger vehicle usage, the system can be adopted for
other applications such as commercial vehicles. Toyota
expects the integrated TDMS-EDMS platform, can enable
opportunities presented by the greater interaction between
the electricity grid and the transportation infrastructure as a
result of uptake of alternative vehicles such as batterypower and fuel cell vehicles.
REFERENCES
1. Climate Change 2014: Mitigation of Climate
Change, Transport Chapter, IPCC.
2. Database of Road Bureau, Ministry of Land,
Infrastructure and Tourism, Government of Japan.
3. Electricity
generation
cost
sub-committee,
convened by Ministry of Trade, Economy and
Industry, May 2015.
extended the trial period to the end of March 2016.
Okinawa: In October 2015, Toyota announced the launch of
the system in Motobu Peninsula of Okinawa Island.
How would the economics improve?
Toyota estimates the introduction of the TDMS-EDMS
platform to a city with a population of 500,000 would cost
about JPY10m ($85.7k), while annual O&M costs also
would be roughly JPY10m ($85.7k). Comparing these costs
with the potential value of annual GHG emission reductions
it can achieve – about $1.3m if CO2 is priced at 10 $/t – the
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 13 of 23
CASE STUDY
ABOUT US
Copyright
This case study is prepared by Bloomberg New Energy Finance in collaboration with Mitsubishi
UFJ Research and Consulting as part of a project commissioned by Japan’s Ministry of Economy
Trade and Industry, Agency for Natural Resources and Energy. Copyright of this report belongs to
Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and Industry, Government
of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Disclaimer
This service is derived from selected public sources. Bloomberg Finance L.P. and its affiliates, in
providing the service, believe that the information it uses comes from reliable sources, but do not
guarantee the accuracy or completeness of this information, which is subject to change without
notice, and nothing in this document shall be construed as such a guarantee. The statements in
this service reflect the current judgment of the authors of the relevant articles or features, and do
not necessarily reflect the opinion of Bloomberg Finance L.P., Bloomberg L.P. or any of their
affiliates (“Bloomberg”). Bloomberg disclaims any liability arising from use of this document
and/or its contents, and this service. Nothing herein shall constitute or be construed as an
offering of financial instruments or as investment advice or recommendations by Bloomberg of an
investment or other strategy (e.g., whether or not to “buy”, “sell”, or “hold” an investment). The
information available through this service is not based on consideration of a subscriber’s
individual circumstances and should not be considered as information sufficient upon which to
base an investment decision.
Page 14 of 23
CASE STUDY
Ultra-compact electric vehicles car-sharing for last-mile
mobility
This case study discusses Toyota Motor Corporation’s
demonstration project on car-sharing using ultra-compact
the last-mile challenge is needed. For this project Toyota
evaluated whether coordinated car-sharing using ultracompact electric vehicles can be the solution. Additionally to
avoid increasing peak-demand as a result of electric vehicle
charging, it tested integration of the local Traffic Data
Management System with the utility’s Energy Data
Management System to ensure coordinate charging of the
electric vehicles.
electric vehicles to overcome the last mile challenge for
public transportation. Public transportation systems such as
subways, light rail and bus rapid transit, typically have
stations every one-mile or so. Access to these stations by
residences and businesses beyond an easy walking
distance is known as the last-mile challenge. Toyota Motor’s
project evaluated how coordinated sharing of ultra-compact
electric vehicles can be used to address the last-mile
WHAT THEY DID
challenge while also lowering emissions as well as reducing
any potential negative impact on the electricity grid.
Figure 1 shows the basic system configuration of the Toyota
Motor demonstration project. For this project, Toyota used
This project dubbed “One Mile Mobility” system was part of
the Toyota Smart Community project, one of the four smart
community projects funded by the Japanese government, in
collaboration with the private sector. These projects were
planned in FY2010, and implemented over a four-year
period from FY2011-FY2015. The budget for the One Mile
4
Mobility system was JPY3bn ($2.58m ). The One Mile
about 100 units of the two-seater Toyota COMS (Figure 2)
5
as well as the one-seater Toyota i-Road (Figure 3). These
electric vehicles have a range of 50km per full charge. The
One Mile Mobility Management System was linked to both
the Traffic Data Management System as well as the Energy
Data Management System to achieve the best optimum and
lowest GHG emissions associated with the utilisation of the
vehicles.
Mobility System was part of a larger experiment on
integrated traffic data management system (TDMS) and
energy data management system (EDMS).
Public transportation
eg, bus, train
Timetable information
THE CHALLENGE
Regional events
eg, festivals
Road
Traffic information
Event information
Legend
According to the United Nation’s Intergovernmental Panel
on Climate Change (IPCC), greenhouse gas (GHG)
emission from the transport sector in 2010 had already
reached 7GtCO2eq accounting for 23% of global energyrelated CO2 emissions (Reference 1). GHG emissions from
the transport sector has more than doubled since 1970,
outpacing the growth rate of all other energy end-user
sectors, with 80% of this increase coming from road
vehicles. In 2014, IPCC projected that without “aggressive
and sustained mitigation policies” GHG emissions from the
transport sector could reach 12 GtCO2eq by 2050.
Increasing utilisation of public transportation can reduce
GHG emission growth by reducing private passenger
vehicle usage. However to increase utilisation of public
TDMS
Public transport, traffic forecast
System element
Information flow
Service flow
Incentive for delivery
Control
center
Reservation
Incentive info
for dropEV distribution
Request dispatch/return
off/pick-up at
control
specific
Parking info
Mobile app/
locations
Parking space with
web portal
charging point
Transportation dispatch/return
Commuter
operators
EV charging
One Mile
Mobility
Incentive for delivery
Transport information
Figure 9: Toyota’s one mile mobility system
transportation, an efficient and emission-free approach to
Source: Toyota Motor, Mitsubishi UFJ Research Consulting.
Note: TDMS stands for traffic data management system.
4
5
Exchange rate used is 116.6 JPY/USD
Toyota i-Road models used in Europe are two-seater.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade
and Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is
included.
Page 15 of 23
CASE STUDY
Users of the system could book the ultra-compact vehicles
via a smart phone app as well as a web portal. Registered
users also received reward points for using the system.
by third-party delivery companies, as well as via offering
incentives to users to drop-off (or pick-up) from specific
locations.
OUTCOME
Mitsubishi UFJ Research Consulting supported by Toyota
Motor has performed preliminary economic analysis on the
results of the experiment for the most popular daily
commuting route during the experiment. For this route, if the
commuter uses a local train and the car sharing, the cost for
each single-trip is 590JPY ($5.06) based on the train ticket
cost of 330JPY and 260JPY usage fee for the ultra-compact
electric vehicle. If the user chooses to drive his own car,
MURC supported by Toyota estimates the cost comes out to
6
Figure 10: Toyota COMS
Source: Bloomberg
TDMS collects real-time data on traffic flow, parking area
vacancies, and bus/train itineraries as well as passenger
flows. It also collects information on the weather as well as
local events such as festivals. Based on this information, it
predicts transportation demand and supply for the near
future and then coordinates pick-up/drop-off for the ultracompact electric vehicles as well as their charging schedule.
Based on TDMS’s prediction as well as existing reservations
of the ultra-compact electric vehicles, the One Mile Mobility
Management System assigns the appropriate amount of
ultra-compact electric vehicles to each designated parking
area. The vehicles are dispatched to their optimum location
580JPY ($4.97) per usage . While there is a slight cost
difference, Toyota expects commuters relying on the One
Mile Mobility system would have a better user experience as
a result of the smaller size of the vehicle being better suited
for a congested urban environment as well as availability of
pre-assigned parking.
Beyond, potential ease of use benefits, there are clear
benefits in GHG emission reduction. Toyota has estimated
that if it would be possible to expand this scheme to serve
10% of Japan’s 86m commuters, it would be possible to
reduce 340,000 tonnes of CO2 emissions, equal to 10% of
the Japanese government’s emission reduction target for
the transport sector.
Is the outcome replicable?
Toyota Motor has already started similar projects elsewhere
in Japan as well as in France.
Grenoble: In September 2014, in coordination with City of
Grenoble as well as French utility EDF (and its affiliate
Sodetrel), and local car-sharing operator Cité lib, Toyota
launched a similar three-year project in Grenoble. The
project named "Cité lib by Ha:mo" involves 35 three-wheel
Toyota i-ROAD and 35 four-wheel Toyota Auto Body COMS
distributed across 27 stations throughout the city. The
service has a simple pricing structure dubbed "3, 2, 1 euros"
for respectively the first, second and third 15-minutes of
usage. It also includes discounts for users who subscribe to
annual passes for the local transportation system.
6
Figure 11: Toyota i-ROAD
Source: Bloomberg
Assuming a vehicle cost of 1,650,000JPY (depreciation of
9 years), vehicle tax of 34,500 JPY/year, insurance cost of
30,000 JPY/year, gasoline cost of 138JPY/liter (November
2013 local value), gas mileage of 20km/liter, parking fees of
5,770 JPY/month (November 2013 local value), vehicle
annual distance travel of 9,120 km.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 16 of 23
CASE STUDY
Tokyo: In February 2015, Toyota in collaboration with
parking operator, Park24 announced a 6-month trial of the
One Mile Mobility system using 5 i-Road electric vehicles in
the business district of Tokyo around Yurakucho station.
Later it expanded the trial to include 25 COMS vehicles, as
well as extended the trial period to the end of March 2016.
The fee structure for this trial is also very simple: 412JPY
per 15 minutes of usage for the i-Road and 206 JPY per 15
minutes for the COMS.
Okinawa: In October 2015, Toyota announced the launch of
the One Mile Mobility system in Motobu Peninsula of
Okinawa Island. Motobu Peninsula is the location of many of
Okinawa Island’s tourist attractions eg, the Churaumi
Aquarium, and the UNESCO World Heritage-listed Nakijin
Castle Ruins. For this trial Toyota is collaborating with travel
agency JTB as well as six local hotels and tourism entities,
to offer 30 COMS vehicles to tourists.
Toyota’s rapid deployment of the One Mile Mobility system
suggests it has strong confidence in the potential of the
system. The experience of other integrated electric vehicle
car sharing projects eg, the Bluecar service in Paris
developed by the Bolloré Group, provides good supporting
evidence that Toyota’s confidence is well-placed.
FUTURE PLANS
Figure 4 shows the potential future operating scheme of the
One Mile Mobility system based on Toyota’s experience
thus far. The One Mile Mobility operator (OMM operator)
procures equipment and services from the various players
shown in Figure 4 to provide the ultra-compact electric
Telecom
network
operator
System
installer
TDMS
O&M
provider
Delivery
service
Delivery
TDMS/
control
center
Installation
Fee
Fee
Municipality
Electricity
retailor
compensation
Reduce
traffic
congestion/
Improved
air quality
One Mile Mobility operator
vehicle car-sharing to commuters. The OMM operator would
be collecting fees from commuters who use the system as
well as the local municipality that would be benefiting from
lower congestion and better air quality hence enhanced
economic activity.
The OMM operator’s costs would include user incentives for
cooperation with drop-off/pick-up incentives, vehicle delivery
costs, control system operating costs, communication costs
and initial costs to procure the electric vehicles as well as
construct the charging infrastructure. The OMM operator
would be able to generate ancillary revenues or cost
savings via coordination with the local utility, public transport
operator as well as local retail businesses. For example it
can reduce its electric vehicle charging costs and potentially
generate revenue by utilising its charging infrastructure as
part of a demand response scheme in coordination with the
local utility. It can also generate revenues from local
businesses by enabling advertisement on the mobile app for
the service as well as via its parking locations.
Which locations are suited for the
system?
In Japan, the City and Regional Development Bureau of the
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
(MLIT) designated urban areas and tourist spots as targets
for the One Mile Mobility scheme back in 2010 (Reference
2). Below is an examination of specific types of locations
that could benefit from this system.
Urban centres with severe traffic congestion: In urban
areas where road traffic is congested, implementation of this
system could help alleviate congestion. In Japan, MLIT
analysis (Reference 3) has shown 93.7% of passenger
vehicle car travel is under 30 km. The average occupancy of
passenger vehicles is 1.30 persons. As such, two-seater
ultra-compact electric vehicles with a range of 50km, could
address the needs of majority of commuters. The
combination of the ultra-compact size of these electric
vehicles, and coordination with public transportation
infrastructure, would reduce traffic congestion.
Suburban areas: Suburbanisation, particularly relocation of
commercial centres to the suburbs is an ever increasing
trend. Suburbanisation tends to result in higher rates of
Commuters
Public transportation
(bus, train) operator
Figure 12: One Mile Mobility operation scheme
Source: Toyota Motor, Mitsubishi UFJ Research & Consulting.
Note: red arrows mark payment flows while blue arrows market
service flows
single-occupancy vehicles. Providing public transportation in
suburbs also tends be rather costly. By implementing the
One Mile Mobility system in the suburbs, it could be possible
to reduce single-occupancy vehicles and enhance utilisation
of public transportation hence lowering its costs.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 17 of 23
CASE STUDY
Public transit deserts: there are many regions around the
world, for example newer urban developments in Tokyo Bay
area, and San Antonio Texas, where public transportation
infrastructure is either non-existent or not sufficient relative
to demand. In many developed as well as developing
economies, local and central governments have not been
able to devote sufficient funding to public infrastructure
particular since the aftermath of the 2007-08 financial crisis,
thus further exasperating the situation. Deployment of the
one mile mobility system in these regions can be a more
cost effective way to overcome the lack of sufficient public
transportation.
Tourist spots: by their nature, tourist destinations are
congested. Many tourist destinations can be ecologically
sensitive or have narrow roads that are not suited for
conventional vehicles. Deploying the one mile mobility
system across these sites could overcome these challenges.
The convenience of not having to return the vehicles to the
same location would also benefit the tourists.
How would the economics improve?
The expenses for the one mile mobility system are vehicle
costs (vehicle procurement & maintenance costs), system
life in the region of its deployment. The integration of the
local Traffic Data Management System as well as the
Energy Data Management System also offers clear ancillary
benefits to both the electricity grid as well as the local
transportation infrastructure. Toyota is currently evaluating
which domestic and international markets would be best
suited for commercial deployment of the system post 2020.
It is considering regions that suffer from air pollution for eg,
urban centres in India, and South East Asia. As well as
countries with aging populations such as Japan could also
benefit. As far as the economics of the system, the global
shift towards connected vehicles and auto-pilot technology
is expected to enable cost reductions that would benefit the
one mile mobility system.
REFERENCES
1. Climate Change 2014: Mitigation of Climate
Change, Transport Chapter, IPCC.
2. Low carbon society based on electric vehicles,
Japanese report by Ministry of Land Infrastructure
and Tourism (2010).
3. Database of Road Bureau, Ministry of Land,
Infrastructure and Tourism, Government of Japan.
costs (control system procurement and maintenance costs),
station costs (station equipment/facility depreciation,
maintenance costs, and property leasing costs), operating
costs (labour costs for supervisors, call centre staff,
maintenance and assign/return staff, etc.). Revenues would
be the fees paid by commuters as well as any
complementary services that can be provided based on
agreements with local municipalities, utilities, public
transport operators and other local businesses. While the
equipment costs are expected to be relatively similar across
different locations, other expenses and revenues would
widely vary by location. Toyota has performed some initial
calculations to identify what minimum scale would be
necessary to ensure economic success. Based on MURC’s
assessment, placing a fleet of 100 vehicles with 200 parking
spaces in one city is unlikely to be economical. However, if
the system is expanded to five cities within the same region
with a fleet of 600 vehicles across 300 parking spaces, the
deployment would likely be economical. Toyota expects with
the 600 vehicles across 300 parking areas over five
neighbouring cities, the payback period would be
approximately 6 years.
CONCLUSION
The One Mile Mobility system can reduce congestion as
well as GHG emissions, thus contributing to the quality of
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 18 of 23
CASE STUDY
ABOUT US
Copyright
This case study is prepared by Bloomberg New Energy Finance in collaboration with Mitsubishi
UFJ Research and Consulting as part of a project commissioned by Japan’s Ministry of Economy
Trade and Industry, Agency for Natural Resources and Energy. Copyright of this report belongs to
Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and Industry, Government
of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Disclaimer
This service is derived from selected public sources. Bloomberg Finance L.P. and its affiliates, in
providing the service, believe that the information it uses comes from reliable sources, but do not
guarantee the accuracy or completeness of this information, which is subject to change without
notice, and nothing in this document shall be construed as such a guarantee. The statements in
this service reflect the current judgment of the authors of the relevant articles or features, and do
not necessarily reflect the opinion of Bloomberg Finance L.P., Bloomberg L.P. or any of their
affiliates (“Bloomberg”). Bloomberg disclaims any liability arising from use of this document
and/or its contents, and this service. Nothing herein shall constitute or be construed as an
offering of financial instruments or as investment advice or recommendations by Bloomberg of an
investment or other strategy (e.g., whether or not to “buy”, “sell”, or “hold” an investment). The
information available through this service is not based on consideration of a subscriber’s
individual circumstances and should not be considered as information sufficient upon which to
base an investment decision.
Page 19 of 23
CASE STUDY
Economics of residential demand response in Japan
1
The four smart community projects funded by the Japanese
government, in collaboration with the private sector,
included various residential demand response schemes.
These demonstration experiments conducted from FY2011FY2015 have shown peak reduction levels of 10% to 20%
by relying on a combination of technology eg, Home Energy
Management Systems (HEMS) as well as time-of-use
(TOU) or critical-peak pricing (CPP) retail electricity pricing.
Based on these preliminary results, researchers led by
Kyoto University’s Professor Ida, have conducted costbenefit simulations to evaluate the impact of expansion of
residential demand response (DR) across all of Japan
(excluding Okinawa). The goal of the study was to evaluate
the cost and benefits of residential demand response based
on universal adoption of HEMS, as proposed by Japan’s
7
Cabinet Secretariat in 2012 .
METHODOLOGY
In their analysis, the researchers considered demand profile
of the residential segment across all of Japan using FY2012
data. The aggregate peak demand associated with the
residential load in the analysis is 46.8GW (53.59m
households). All residential units are assumed to be
equipped with HEMS, enabled for receiving demand
response notification from the utility’s central energy
management system (CEMS). The CEMS referred to by the
Kyoto University research team functions as a demand
response automation server (DRAS).
For the simulations, the based residential electricity retail
8
rate was assumed to be JPY25/KWh (0.21$ /kWh), the
same as the average Japanese residential rate in FY2012.
Four residential demand response retail menus were
simulated: a TOU tariff with the peak-time tariff set at
45JPY/kWh along with three CPP tariffs with the peakdemand price set at 65JPY/kWh, 85JPY/kWh and
105JPY/kWh. Under the CPP conditions, 15 days per year
are simulated as DR events whereby the peak-demand
during the highest 3-hour peak period is reduced Under the
TOU condition, 50 days per year is simulated as DR event.
Residential customers response to the DR events were
modelled based on actual results observed in the four smart
community projects, for further details please refer to
reference 3.
The analysis considered a 40-year lifetime period based on
the average life of thermal generators (Reference 4). For the
simulations, assumptions in Table 1 were used. While
current initial HEMS costs are around $429, the researchers
used $43 based on feedback from manufacturers who
project lower prices once mass-adoption takes place.
Table 1. System cost assumptions
Assumption
HEMS
CEMS
Capex ($)
43
231k
Annual labour cost ($)
-
214k
Annual O&M cost ($)
-
92k
Replacement cycle
Every 10 years
Server replaced
every 5 years
Total quantity for
simulation
53.59m
107 (assuming
one system per
500k households)
Source: Kyoto University Research Team
Figure 1 shows the annualised costs associated with the
system assumptions in Table 1. Using these costs, the
researchers, have calculated the short-term benefits (lower
peak demand hence lower electricity bill) as well as longterm benefits – cost savings associated with deferral of
building new power plants as well as lower O&M costs for
existing power plants – for each DR retail menu.
10 312
23 18
DR running cost
DR labour cost
262
CEMS capex
7
While the election in September 2012 resulted in a change
of government, subsequent documentation under the new
government, for example the Ministry of Economy Trade
and Industry’s budget announcement for a large-scale
HEMS project still include a 2030 universal HEMS target.
8
Exchange rate used is 116.6 JPY/USD
HEMS capex
1
Figure 13: Annualised costs (million $/year)
Source: Kyoto University Research Team
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade
and Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is
included.
Page 20 of 23
CASE STUDY
ANALYSIS RESULTS
OUTLOOK
The impact of each DR retail menu on demand reduction is
shown in Figure 2. As expected the CPP menu (CPP-105)
with the highest price has the most impact on demand
The results of this study are definitive evidence for benefits
of deployment of HEMS combined with critical peak pricing.
While the cost of technology deployment may seem
reduction.
prohibitive, many developed markets eg, Japan are well
underway to universal HEMS enabled smart meter
deployment, while others such Sweden have already
reached this point. In short the technology challenge will
likely be solved over time. The remaining challenges – as
the researchers have discussed in reference 3 – will be
consumer acceptance and adaptation. In markets were
TOU/CPP retail menus have already been introduced eg,
Ontario, regulators have had to deal with consumer
9,000
18%
7,787
8,000
16%
7,198
6,559
7,000
14%
6,000
12%
5,000
10%
4,000
3,000
8%
2,460
6%
2,000
4%
1,000
2%
0
0%
TOU
CPP-65
MW reduced
CPP-85
CPP-105
% reduced
Figure 14: Peak demand reduction by each DR retail
menu (left axis: MW, right axis: %)
Source: Kyoto University Research Team
backlash and thus far implementation of high CPP rates has
been politically challenging. Furthermore results from
studies around the world on home energy management
tools has shown that the energy reduction benefits can
widely vary, with larger studies showing lower benefits.
Further consumer education as well as ongoing
engagement will be necessary to ensure long-lasting
benefits.
16%
Comparing the annual benefits of each DR menu (Figure 3)
14%
with the annualised cost (Figure 1), shows that all the CPP
menus have benefits outweighing their annual cost. Only the
TOU menu has lower benefits – a gap of 47% – than costs.
CPP of 65JPY/kWh has annualised benefits exceeding
costs by 31%, CPP of 85 JPY/kWh has annualised benefits
exceeding costs by 53% and CPP has annualised benefits
exceeding costs by 76%. Using these results, the
researchers have back-calculated what would be the HEMS
break-even cost (keeping all other assumptions the same).
12%
For CPP of 65JPY/kWh, the resulting HEMS unit break even
cost is 6,751JPY ($58), for CPP of 85JPY/kWh it would be
8,049JPY ($69), and for CPP of 105JPY/kWh, the breakeven cost would be 9,324JPY ($80).
10%
8%
6%
4%
2%
0%
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
Year of trial completion
500 homes
In-home display
Load disaggregation
Figure 16: Energy reduction attributed to feedback from
home energy management tools
Source: Bloomberg New Energy Finance
CONCLUSION
524
458
390
160
35
15
139
102
38
66
32
36
292
320
347
CPP-65
CPP-85
CPP-105
110
TOU
Avoided capex
Reduced O&M
Lower peak demand
This study has shown that residential DR based on critical
peak pricing can be cost-effective provided HEMS prices
can be significantly reduced. Specifically if regulators are
willing to set relatively high critical peak prices, then HEMS
prices as high as $80 would still break-even. Once the cost
of HEMS technology has been reduced to below $50, then
even at lower CPP rates, the economics would be attractive.
Cost
Figure 15: Annualised benefits of each DR retail menu
compared to cost (Million $/year)
Source: Kyoto University Research Team
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 21 of 23
CASE STUDY
REFERENCES
1. Green Policy Outline , Japan Cabinet Secretariat,
November 2012
2. Large-scale HEMS demonstration experiment
announcement, Ministry of Trade, Economy and
Industry FY2015 budget announcement.
3. The Persistence of Moral Suasion and Economic
Incentives: Field Experimental Evidence from
Energy Demand, NBER Working Paper No. 20910.
4. Electricity
generation
cost
sub-committee,
convened by Ministry of Trade, Economy and
Industry, May 2015.
Copyright of this report belongs to Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and
Industry, Government of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Page 22 of 23
CASE STUDY
ABOUT US
Copyright
This case study is prepared by Bloomberg New Energy Finance in collaboration with Mitsubishi
UFJ Research and Consulting as part of a project commissioned by Japan’s Ministry of Economy
Trade and Industry, Agency for Natural Resources and Energy. Copyright of this report belongs to
Agency for Natural Resources and Energy, Ministry of Economy Trade and Industry, Government
of Japan. Reproduction of this study is allowed provided proper citation is included.
Disclaimer
This service is derived from selected public sources. Bloomberg Finance L.P. and its affiliates, in
providing the service, believe that the information it uses comes from reliable sources, but do not
guarantee the accuracy or completeness of this information, which is subject to change without
notice, and nothing in this document shall be construed as such a guarantee. The statements in
this service reflect the current judgment of the authors of the relevant articles or features, and do
not necessarily reflect the opinion of Bloomberg Finance L.P., Bloomberg L.P. or any of their
affiliates (“Bloomberg”). Bloomberg disclaims any liability arising from use of this document
and/or its contents, and this service. Nothing herein shall constitute or be construed as an
offering of financial instruments or as investment advice or recommendations by Bloomberg of an
investment or other strategy (e.g., whether or not to “buy”, “sell”, or “hold” an investment). The
information available through this service is not based on consideration of a subscriber’s
individual circumstances and should not be considered as information sufficient upon which to
base an investment decision.
Page 23 of 23
Fly UP