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ファストフードA店における アルバイトのシフトスケジュール作成支援ソフト
ファストフードA店における アルバイトのシフトスケジュール作成支援ソフトの試作 矢川 陽一朗 (沼田 一道 教授, 松浦 隆文 1 助教) はじめに 24 時間営業のハンバーガーショップは,価格が安く,すぐに飲食できるため,この不況下において も売上げを伸ばしている.しかし,ライバル業者との販売競争は激しく,また利益の少ない店舗を閉 店するなど,生き残りのための努力は常に行われている.人件費の削減もその努力の一環であり,賃 金の安いアルバイトを多数採用して店舗を運営している.その結果,店舗における作業のほとんどを アルバイトが担うようになっており,質の高いサービスを維持するためには,アルバイトのシフトス ケジュール管理[1] [2]が重要な要素となっている. ハンバーガーショップ A 店は,アルバイトは交代制勤務ではなく,生活スタイルに合った希望時間 帯で働くことができる.例えば,学生の場合,学校での授業終了後の夕方から夜の時間帯で働き,ま た,主婦などの場合,家事の合間に働くことができる.そのため,アルバイトから様々な希望勤務時 間が提出される. 現在,A 店では,アルバイトから提出された希望時間帯をもとに,シフトスケジュール作成担当者 が店舗運営に必要な従業員数を満たすように一週間分のシフトスケジュールを手作業で作成している. そのため,作成者担当者は多大な労力と時間を要しシフトスケジュール作成に要している.そこで, 本研究ではシフトスケジュールの作成時間を短縮し,作成担当者の労力を軽減できるソフトを提案し, その有用性を確認する. 2 A店の現状 ファストフード A 店は 24 時間営業で年中無休である.アルバイトの業務は,カウンターでの接客と キッチンでの商品製造である.アルバイト従業員数は 70 名であり,アルバイト従業員は,①接客業務 ができる人(以下,CP) ,②製造業務ができる人(以下,OP) ,③接客と製造のどちらもできる人(以 下,TRA)の 3 種類に分けられる.従業員数は CP が 30 名,OP が 25 名,TRA が 15 名である. アルバイト従業員は毎週水曜日までに,翌週の月曜日から翌々週の日曜日までの勤務可能な時間帯 (以下,シフト希望時間帯)をシフトスケジュール作成担当者に伝える.作成担当者は以下の前提条 件を満たすように,1 週間分のシフトスケジュールを作成している. ・ アルバイトのシフト希望時間帯は分かっているものとする. ・ 全時間帯で必要な接客業務と製造業務の人数は分かっているものとする. ・ アルバイトの労働時間は 1 時間刻みで継続した 2~7 時間である. ・ アルバイトはシフト希望時間帯でのみ働くことができる. ・ 終業時刻から最低 12 時間は休みを取らなければならない. ・ 全時間帯において,接客業務と製造業務の必要人数を満たさなければいけない. 現在, シフト作成者は手作業でシフトスケジュールを作成しており, 多大な時間と労力を要している. また,必要人数を満たすシフトスケジュールが作成できない場合,シフト希望時間外での労働を電話 や直接話し依頼している. 3. シフトスケジュール作成支援ソフトの作成 シフト作成者が過不足人数を確認しながら,対話的にシフトスケジュールを作成する支援ソフトを 作成する. 3.1 必要な機能 シフト作成者が接客,製造を担当している人の人数の過不足状況を確認しながら,シフトスケジュ ールの作成を行う.そのため,①画面への表示機能,②不足時間帯での人員追加機能,③過剰時間帯 での人員削除機能が必要である.以下に各機能の詳細を述べる. ① 画面への表示機能 1. シフトスケジュールの表示 2. 接客,製造を担当している人の人数の過不足状況を表示 ② 不足時間帯への人員追加機能 1. 接客を担当する人の人数が不足している時間帯に CP を割り当てることができる 2. 製造を担当する人の人数が不足している時間帯に OP を割り当てることができる 3. 接客・製造を担当する人の人数が不足している時間帯に TRA を割り当てることができる ③ 過剰時間帯での人員削減機能 1. 接客を担当する人の人数が過剰な時間帯の CP を削減することができる 2. 製造を担当する人の人数が過剰な時間帯の OP を削減することができる 3.2 インターフェイス Boland 社の Delphi 6[3]を用いて,シフトスケジュール作成支援ソフトの作成を行う.図 1 に,提 案するソフトの操作画面を示す.シフト作成者は,図 2 の接客,又は製造を担当する人の過不足状況 を確認しながら,図 1 の操作ボタンを押し,人員の追加・削除,就労時間の短縮・延長を行う.図 2 の縦軸は,接客,製造を担当する人の過不足人数を表し,横軸は時刻を表す. step 1: シフト希望時間,接客・製造担当者の必要人数を入力する(図 1,ボタン①). step 2: シフト希望時間表通りに,CP と OP を割り当てる(図 1,ボタン②) . step 3: 勤務時間を 7 時間以下にする(図 1,ボタン③).終業時間から 12 時間以上は勤務不可とす る(図 1,ボタン④). ① ② ③ ④ ⑤ ⑦ ⑦ ⑧ ⑧ ⑦ ⑥ ⑥ ⑨ 図 1:操作画面. 図 2:過不足状況の表示画面(上段: 接客業務.下段: 製造業務). step 4: t 時刻の接客,又は製造の人員が過剰に割り当てられている場合,人員の削減を行う. ・ 開始時刻が t 時の接客,又は製造担当者の開始時刻を 1 時間遅らせる(図 1,ボタン⑥). ・ 終了時刻が t 時の接客,又は製造担当者の終了時刻を 1 時間早める(図 1,ボタン⑥) . 削減ができる限り人員の削減を行う. step 5: step 4 にて削除を行った結果,勤務時間が 1 時間になった場合,シフト希望時間の範囲で開 始,又は終了時間のどちらかを 1 時間延長する(図 1,ボタン⑤). step 6: t 時刻の接客,又は製造担当者が不足している場合,希望時間の範囲内で従業員の勤務時間 を延長する. ・ 開始時刻が t 時の接客,又は製造担当者の開始時刻を 1 時間早める(図 1,ボタン⑦). ・ 終了時刻が t 時の接客,又は製造担当者の終了時刻を 1 時間遅らせる(図 1,ボタン⑦) 延長ができる限り,勤務時間の延長を行う. step 7: 接客,製造担当者の不足時間帯にどちらの業務も出来る TRA を割り当てる. ・ 接客業務の人員が不足している時間帯に TRA を割り当てる(図 1,ボタン⑧). ・ 製造業務の人員が不足している時間帯に TRA を割り当てる(図 1,ボタン⑧). step 8: TRA を割り当てた結果,接客,又は製造担当者が過剰に割り当てられている場合,CP,又は OP の勤務時間を削減する(図 1,ボタン⑥) . step 9: 人員の追加,削減ができないことを確認し,割当てを終了する.シフトスケジュール表を画 面に出力する(図 1,ボタン⑨) . 4 利用例と考察 A 店にて全アルバイト従業員 70 名(TRA:15 名,CP:30 名,OP:25 名)により提出された希望 シフトを基に,シフトスケジュールの作成を行った.図 3 に,提案するソフトを用いて作成したシフ トスケジュールを示す.図 3 の灰色の点は提出された希望シフト時間を表し,赤丸が接客業務を担当 する時間,青点が製造業務を担当する時間を表す.縦軸は従業員の ID(1~15:TRA,16~45:CP, 46~70:OP) ,横軸は時刻を表す.図 4 に,提案した支援ソフトを用いてシフトスケジュール作成を 行った際の過不足人数を示す. 図 3:シフトスケジュール作成支援ソフトで作成したシフトスケジュール. CP OP 図 4:必要人数過不足表(割り当て後) 図 4 より,全ての時間帯において必要人数を満たし,また過剰に人員を割り当てることなくシフト スケジュールが作成できていることが分かる.提案したシフトスケジュール作成支援ソフトを用いて, スケジュールを作成するのに要した時間は,データを入力してから約 10 分程であった.これまではシ フトスケジュールの作成に 2~3 日程度要していたが,提案したシフトスケジュール作成支援ソフトを 用いることで,大幅な時間削減が期待できる. 5 まとめと今後の課題 本研究では,ファストフード A 店におけるシフトスケジュール作成問題に対して,アルバイトによ り提出された多様なシフト希望時間帯内で,全時間帯における接客・製造に必要な担当人員数を満た すシフトスケジュールの作成支援ソフトを試作した.提案した作成ソフトを用いてシフトスケジュー ルを作成した結果,約 10 分程度で過剰な人員を割り当てることなく,全時間帯で必要な人員を満たす シフトスケジュールが作成できた.このことより,シフトスケジュールの作成時間を短縮し,作成担 当者の労力を軽減できるソフトを試作するという目的が達成できていると考えられる. しかし,今回試作したソフトでは下記の点が不十分であり,改善の余地がある.今回のソフトは担 当業務が決まっている従業員(CP,OP)を先に割り当て,どちらの業務仕事も出来る TRA を割り当て ている.その結果,CP,OP に比べて TRA の勤務時間が少なくなっている.しかし,本来 TRA は, 両方の仕事が出来るベテラン従業員であるため,なるべく働いた方が店舗にとっては有益である. TRA を優先的に割り当てるシステム設計をする必要がある.また,提案ソフトは,各従業員により提案さ れたシフト希望時間帯と勤務時間の長さを考慮しておらず,平等なシフトスケジュールが作成できて いるかの評価を行っていない.今後は雇用機会の平等性を評価しシフトスケジュールを作成するソフ トの開発が望まれる. 人と人との相性や個々の能力も考慮するソフトの開発などが今後の課題である. 参考文献 [1]ヒューネットジャパン株式会社,「適正人員配置システム」 ,Worknavi, http://www.hunet-japan.co.jp/worknavi/seminar/seminar_wnavi.html 最終閲覧日(2010/10/11) [2]豊川 盛, 「勤務シフト作成支援システムに関する研究」 ,大阪工業大学情報科学部情報処理学科 (2005) ,http://www.is.oit.ac.jp/~hirayama/Result/index.htm 最終閲覧日(2010/10/11) [3]佐藤 親一, 「VBユーザーのためのDhlphi6 プログラミング」 ,オーム社開発局, (2001) [4]中島 啓介, 「ファーストフード店における準社員勤務時間帯割り付け問題」 ,平成十三年度卒業 研究抄録集,東京理科大学工学部第二部経営工学科,p233-p236, (2002)