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第 5 章 インドネシア法定計量の現状と問題分析
第5章 インドネシア法定計量の現状と問題分析 第5章 インドネシア法定計量の現状と問題分析 5.1 法定計量制度 5.1.1 計量分野の分類と機能 インドネシアの法定計量制度を議論する前に、計量標準および標準化の分野について概 観しておくことは、計量機関の役割と責任を明確にするうえで有益である。これは、他章 に記載されている本調査の結果と、本節を比較することによって、この報告と勧告の目的 を理解しやすくする。 一般的に、計量分野とその機能は以下のように分類される。 1) 計量標準 • 国家標準の確立と維持 • 計量標準に関する技術開発 • 計量システムのためのトレーサビリティの開発と維持 • 国際的同等性を持った計量標準の確立 • 国際計量標準システムの品質維持への寄与 2) 法定計量 • 計量法の制定と施行 • 計量器型式承認試験の実施 • 計量器の検定・検査の実施 • 計量規制に関する行政 3) 工業標準 • 工業システムと製品の互換性の維持 • 工業システムと製品の品質維持 4) • 5) • 試験所認定 試験所・校正試験所の品質の維持 認定制度 認定制度の確立と維持 上記の機能は、計量標準の観点からのみ列挙されている。計量標準と法定計量は密接 に関連しており、多くは同一の国家機関によって維持されている。従って、上記の各 5-1 分野にそれぞれ国家機関を設置する必要はない。 本調査は、DOM の機能を国際的レベルに向上させるためのマスタープランを作成す ることを目的としており、また、DOM はインドネシアの質量標準と法定計量を維持・ 管理することを使命としているので、以下では、計量標準と法定計量を少し詳細に議 論する。 5.1.2 計量標準分野の国際活動 国の計量標準制度の開発を議論する場合、近年の計量標準分野の国際的活動を考慮する 必要がある。以後の議論のため、以下に計量標準と法定計量分野の最近の国際的活動を簡 単に記述する。 1) 計量標準 1875 年パリにおいて、国際単位(SI)を定義することによって、計量単位を統一する ことを目的とした、メートル条約が 17 ヶ国によって締結された。メートル条約の締結以 来、条約の運用を目的とした BIPM が設立され、以後、SI の普及に継続した努力が払わ れている。 SI が計測の枠組みとして認められ、国際的に採用されるにつれて、計量標準分野の活 動は、より広範囲な分野の標準の開発と、より正確・精密な測定に役立つよう、それら を自然科学、工業、法定計量分野へ普及させることに重点が置かれた。 さらに、現代科学技術の発展に伴って、BIPM によって維持・管理されている国際原器 の代わりに、普遍的な技術を基礎とした計量標準を実現するための研究が進められた。 これらの技術によって現示されている単位量は、物理・原子定数によって理論的に表現 される。現在では、7 つの物理量の単位が基本単位として、定義されている。これらは、 長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度、である。これらの基本単位の内、質量 の単位のみが特定の物体によって現示されている(即ち、BIPM によって維持・管理され ている国際キログラム原器)。他は物理学的用語によって定義され、現代の普遍的技術に よって現示される。 以下は、現在の BIPM の役割である。 • 基本単位とその目盛りの確立、および国際原器の維持・管理 • 加盟国の国家標準と国際標準の比較 • 上記の活動に関する計量技術の開発と維持 • 上記の活動に関連する物理定数の測定と、それらの間の調整 CIPM は、メートル条約加盟国中 18 ヶ国によって構成され、理事国の役割を担うとと もに BIPM を監督する。 2005 年 10 月 10 日現在、51 ヶ国がメートル条約に加盟しており、20 ヶ国・経済圏が総 会の準加盟国になっている。1938 年以来、DOM はインドネシアキログラム原器を質量の 国家標準として保持している。インドネシアは 1960 年にメートル条約に加盟した。 5-2 計量単位が物理・原子定数によって表現され、普遍的技術によって精密に現示される に従って、メートル条約加盟国の国家標準の同等性を確保する必要が出てきた。 この目的のため、CIPM は、参加国の国家標準の承認と、校正・測定能力を証明するた めの協定を起草した。この協定は、国家計量機関の長によって署名され、1999 年 10 月に 締結された(国家標準と国家計量機関の発行した校正証明書の相互承認協定:Mutual Recognition of National Measurement Standards and of Calibration and Measurement Certificates Issued by National Metrology Institutes: CIPM-MRA) 。 CIPM-MRA の目的は、以下の通りである。 • 国家計量機関の維持・管理する国家標準の同等性の確立 • 国家計量機関の発行する校正証明書の相互承認 • これらによって、政府およびその他の関係者に、国際貿易、商取引、規制に関 するより広範囲な協定のための、確実な技術基盤を提供すること 従って上記のように、現代の普遍的技術の進歩と CIPM-MRA の締結によって、参加国 は国家標準を一意的に定義し、国家標準機関がそれを維持・管理することが必要となっ ている。 現在 CIPM-MRA は 67 の代表者によって署名され(加盟国 45、総会準加盟国 20、国際 機関2) 、署名機関によって指定された機関は 113 に及んでいる。 インドネシアは、2004 年 6 月に CIPM-MRA に署名した。CIPM-MRA に関する DOM の 位置づけとしては、未だ政府によってインドネシアの国家標準機関の一つとして指定さ れていない。この問題は、5.1.4 節および 5.1.5 節で議論する。 2) 法定計量 法定計量は、計量の一分野であり、一般的に使用されている計量器に対し、その使用 されている状況によって法的な規制を課し、人々の生活の向上に寄与するものである。 しかし、もしそれぞれの国が異なった取引品目を指定し、異なった規制を課すと、結果 は貿易と投資の自由に対する大きな障壁となる。 メートル条約締結後、1937 年、37 ヶ国が「国際法定計量機関(OIML)を設立するた めの条約」を起草する会議を開いた。この条約の目的は、メートル条約の対象ではない が、商取引や産業で広く使用されている計量器に関する、技術的、行政的な問題を解決 するための国際機関を設立することであった。草稿は 1952 年に完成し、1955 年に締結さ れ、1958 年に発効した。 以来、OIML は法定計量に関する国際機関として機能し、型式承認試験標準化のための 技術勧告と、計量行政のための国際文書を数多く発行している。 インドネシアは 1960 年に OIML に加盟した。これは ASEAN 諸国の中では最初であっ た。 近年の貿易と投資の急速な発展によって、取引される計量器、または国内外の取引で 使用される計量器に対する法的規制は、商取引におけるいわゆるワンストップ・テステ 5-3 ィングを実現するため、ますます重要になってきた。 上記の状況を考慮して、1991 年、OIML 加盟国間で、計量器に対する型式証明書制度 が設立され、その後、2003 年京都で開催された国際法定計量委員会(CIML)において、 型式承認試験データの相互受入協定(OIML-MAA)が承認された。前者の協定の目的は、 計量器の多重試験を排除することと、当局の発行する証明書を利用して、ワンストップ・ テスティングを確立することであり、後者の目的は、参加国が他国の得た型式承認デー タを利用することができるようにすることである。OIML-MAA は、参加国の相互信頼を 強化する機構を組み込むことによって、改良されている(DoMC) 。 3) 校正試験所の認定 上記の OIML-MAA における相互信頼宣言制度(DoMC)に見られるように、証明制度 において信頼性を確保することは、極めて重要である。この問題に対する最も共通的な 方法は、ISO/IEC-17025 “General requirements for the competence of testing and calibration laboratories”を利用することである。 ISO/IEC-17025 の認定を受けるためには、試験所は以下の事項を満足する必要がある。 • ILAC-MRA に加盟している認定機関による認定を受けること、または • 指定評価者による専門的評価を受けること インドネシアに関しては、KAN が、ILAC のメンバーである APLAC に加盟しており、 これまでに多くの試験所が KAN による ISO/IEC-17025 の認定を受けている。 5.1.3 国際的レベルにある計量制度に対する要求事項 国際的レベルにある計量制度を考察する場合、その構成要素を列記しておくことが有用 であろう。 以下が 5.1.1 節で議論された各計量分野の主要な構成要素である。 1) 計量制度の構成要素 • 法制度 • 技術基盤 • 社会活動 • 国際協力 これらは、現代社会と国際標準の要求する、透明性と説明責任を備えた計量制度を開 発するために必要なことであり、特に法定計量に関しては、人々の順法精神に基づくべ きものである。 さらに、法定計量に関する制度は、計量標準に関する制度と異なっていることを考慮 する必要がある。前者は、一国の社会活動と法制度に強く依存するが、後者は、科学の 一分野であり、ほとんどの国で概ね共通である。 5-4 上記の、技術基盤および国際協力という観点においては、計量標準と法定計量の国際 的レベルについて必要とされる事項は明らかである。 5.1.2 節で議論されたように、計量標準に関しては、国家計量機関はその校正能力を CIPM-MRA の CMC データベースに登録することが要求される。これには、国際比較へ の参加と、ISO/IEC 17025 の仕様、または、それよりも良い品質システム(マネージメン ト・システム)が要求される。一方、法定計量当局は、OIML 勧告の開発に対する寄与や、 計量器に関する OIML 証明書制度、OIML-MAA への参加が要請される。 さらに、国の計量制度を開発する場合は、上記のそれぞれの要素について、下記の因 子を考慮する必要がある。 2) 計量制度の各要素を考察する場合の因子 • それぞれの国の現状 • 現在および将来の社会的ニーズ • 国際標準、国際勧告に対する適合性 計量制度に関する上記の要素と因子の組み合わせは、議論すべき全体的な観点を包含 すると考えられる。 5.1.4 現在のインドネシア計量制度の概要 この節の目的は、インドネシア計量制度の概要を、特に DOM の活動と他機関の関係にお いて記述することである。従って、他の部分、即ち DOM と無関係な、または DOM 固有の 事項については、ここでは記述しない。国際的活動の観点からは、この節の結果を前の議 論と比較することによって、インドネシア計量制度の問題点とその解決方法を見つけるこ とができる。これらは、5.1.5 節、5.1.6 節で議論されている。 以下に記述されている概要は、5.1.3 の各事項から引き出され、5.1.1-5.1.2 で議論された観 点によって整理されている。DOM は質量標準と法定計量を担当しているため、以下の議論 はその分野に焦点を合わせている。 1) 計量標準 (1) 法制度と機関 インドネシアの計量標準システムは、主に、DOM、KIM-LIPI、KIMIA-LIPI および BATAN の4機関によって支持されている。法定計量に加え、DOM はインドネシアキ ログラム原器を維持管理し、質量標準を担当しており、KIM-LIPI は質量標準以外の計 量標準を担当している。KIMIA-LIPI は化学標準と標準物質、BATAN は放射線標準をそ れぞれ担当している。DOM は商業省国内取引総局に属しているが、上記の他の機関は 研究技術省科学研究院に属している。我々の知る限り、世界のいくつかの機関が、計 量標準と法定計量を分離したシステムを採用しているのは事実である。しかし、ASEAN 諸国においては、タイのみがインドネシアと似たシステムを採用している。全ての計 5-5 量標準を担当している NIMT は科学技術環境省に属し、法定計量担当の度量衡局は商 務省に属している。インドネシアの場合と異なり、全ての物理標準は NIMT が維持・ 管理している。 (2) 技術基盤 上記のように、 インドネシアの質量標準に関しては、 2 つの機関が関係している。DOM はインドネシアキログラム原器(K-46)を国家標準として、K-4、T-4 および2つの E0 クラス分銅を2次標準として、E1 クラス分銅を作業標準として維持・管理している。 一方、KIM-LIPI は E0 クラス分銅をその質量標準としている。上記以外では、DOM と KIM-LIPI は、ほぼ同じレベルにある。 上記の表記法 “E0” は、国際的には定義されておらず、OIML 勧告の定義と混同しや すいため、“E0” という表記法は使用すべきではない。その代わりに、以下の分類が勧 められる。 • 国家標準グループ ¾ 国家標準 国家標準は、一意的に指定されるべきである。 ¾ 準国家標準 準国家標準の内の一つを2次標準へのトランスファー・スタンダードとして 使用し、これには E1 クラス分銅を当てることができる。 • 2 次標準 このグループは、一般使用者等へ標準供給を行う、国家計量機関以外の校正機 関によって維持・管理される。二次標準の一つが作業標準として指定される。 • 試験所・実験室標準(計量標準の使用者) このグループは、製造業者等の試験所・実験室において、維持・管理される。 DOM の K-46 は、10 年毎に国際キログラム原器、即ち BIPM が維持・管理している キログラムの定義によって校正されている。この意味で、インドネシアの質量の国家 標準を維持・管理している DOM は、国家計量機関の一つである。 長さ標準に関しては、DOM はインドネシアメートル原器を維持・管理しており、線 度器の校正のための標準として使用している。KIM-LIPI は、CIPM によってメートル の定義の現示方法の一つとして勧告されている、ヨウ素安定化ヘリウム-ネオン・レ ーザを維持・管理している。これは長さのトレーサビリティに必要な機材を改善する ため、DOM と KIM-LIPI に必要である。この問題は、他章で議論される。 DOM は温度標準の維持・管理は担当していないが、法定計量のトレーサビリティの ため温度の作業標準は維持する必要がある。これは、将来、RVO や LMS センターで必 要となるであろう。 5-6 (3) 社会活動 計量標準システムは、社会基盤、特に自然科学および工業技術の基盤の一つであり、 計測結果の信頼性を保証する責任がある。この意味で、DOM は、他章で議論されてい るように、RVO を通して質量の標準を供給する役割を負ってきた。計量標準の役割を 考慮すると、DOM は、法定計量だけではなく工業計測の分野でも、地域産業振興のた めの計量標準トレーサビリティを強化する必要がある。 (4) 国際協力 アジア-太平洋計量計画(APMP)は、アジア-太平洋地域の地域計量機関(RMO) である。国家計量機関が APMP の加盟国となるには、その国の政府か主幹計量機関に よる指定を受ける必要がある。 国家計量機関がある物理量に関し、CIPM-MRA の CMC データベースに登録する場 合には、国際比較(CIPM 基幹比較または地域基幹比較)に参加し、ISO/IEC 17025 の 認定を得、専門家の審査を受けなければならない。CMC への登録データは、地域機関 と JCRB によって所定の手続きにより精査される。 これらの手続きは、国家標準の指定とは何の関係もない。しかし、理論的には対応 する国家標準は、前もって指定されておくべきである。 インドネシアは、KIM-LIPI 所長の署名によって、2004 年 6 月に CIPM-MRA に参加 した。KIM-LIPI は APMP 基幹比較に参加し、幾つかの電磁気量について CMC に登録 した。 DOM と KIM-LIPI に共通であるが、DOM が質量標準の CIPM-MRA に参加を希望す る場合は、国家計量機関の一つとして APMP のメンバーに指名され、CIPM-MRAへの 参加手続きをとらなければならない。 DOM と KIM-LIPI の質量標準に関するトレーサビリティの元は異なっている。例え ば、DOM の維持する K-46 は BIPM によって直接校正されており、KIM-LIPI の質量標 準は、オーストラリアによって校正されている。 2) 法定計量 (1) 法制度 メートル法を基礎とした国際単位系の導入を目的として、インドネシア法定計量法 が 1981 年に施行された。これ以降で最も影響のあった改革は、1991 年に制定され、2001 年に施行された、包括的な地方分権化法である。この政策に沿って、地方の法定計量 行政は州政府に移管された。 この状況を考慮して、DOM は主要な地域に7つの LMS センターを設置することを 決定した。この考えは、既に 1994 年(即ち地方分権化以前)に編纂された JICA 報告 書の中で、 DOM による地域法定計量の振興と管理を目的として提案されている。 既に、 2 つの LMS センター準備室がメダンとマカッサルに設置された。 5-7 (2) 技術基盤 法定計量の技術基盤は、2 つのカテゴリーに分類される(即ち、型式承認と検定)。 型式承認試験の原理は、構造試験を基礎としており、その技術基準は OIML によっ て勧告されている。インドネシアの型式承認試験の詳細は、5.4 節で議論される。DOM は大臣令によって 40 種の計量器の型式承認試験を実施することになっている。しかし、 試験設備は非常に古く、また試験手順書(SSTK)も試験条件を詳細に規定するよう書 き直すべきである。LMK-PLN で実施されている電力量計の型式承認試験設備を除いて、 DOM の型式承認試験設備と検定設備はほとんど違いがない。 電力量計と水道メーターは、主としてそれぞれ地方の PLN と水道供給会社で検定さ れている。これらの計量器以外は、検定は主に RVO で実施されている。システム、設 備および人的資源は不十分な状態にあり、改善が必要である。 (3) 社会活動 法定計量の最も重要な考え方の一つは、消費者保護である。多くの開発途上国では、 この考え方は、それほど普及していない。これは、消費者が取引の正確さにそれほど 敏感ではないという事実によるのであろう。法定計量のトレーサビリティに支持され た消費者保護は、経済が発展するに従ってますます重要になると考えられる。担当当 局は法定計量に関する啓蒙を強化すべきである。 (4) 国際協力 インドネシアは、ASEAN 諸国の中で最初に OIML に加盟し、毎年 CIML や APLMF に参加している。さらに、インドネシアは幾つかの APLMF 技術研修の開催国となり、 ACCSQ においても主導的役割を果たしている。しかし、もしインドネシアが OIML に さらに寄与したいと希望するならば、型式承認試験技術を開発する必要がある。型式 承認試験技術は計量器の輸出入と直接関係しているので、これは国内産業を振興する ことになるであろう。 5.1.5 インドネシア計量制度の現在の問題 第一次現地調査終了後、以下の点が、第二次現地調査によって調査されるべき問題であ ると、特定された。それらはマスタープランと DOM の役割に直接関係するので、調査団を 含む関係者で議論されるべきである。 1) 国家標準の指定 国際単位系では 7 つの計量基本単位が定義されており、BIPM はそれらの現示方法を勧 告している。通常、物理量の単位を現示する器物は、5.1.2 で記述されているように、質 量標準以外は普遍的な技術によって製造されているので、一意的に指定する必要がある。 さらに、ある国が CIPM-MRA への参加を希望する場合にも、国家標準の一意的指定が必 要となる。これは、CIPM-MRA が参加国の国家標準と校正測定能力の相互承認を目的と 5-8 しているからである。この事実は、CIPM-MRAが各単位の国家標準の一意的指定 と、それ(国家標準)への国内トレーサビリティを前提としていることを意味する。 これまでのところ、インドネシアは各単位の国家標準とその責任機関を明瞭に指定し ていないように見える。 質量標準に関しては、インドネシアキログラム原器が、BIPM で維持・管理されている 国際キログラム原器(キログラムの定義)によって、定期的に直接校正されているので、 これを国家標準と指定するのが自然であろう。 2) CIPM-MRA への参加 国家計量機関が CIPM-MRA への参加を希望する場合、政府から指定を受ける必要があ る。これは、CIPM 基幹比較に参加するためにも必要である。この手続きは、5.1.4 1) d) に既に記述されている。一つの国家計量機関が全ての計量標準を担当できず、幾つかの 国家機関が CIPM-MRA への参加のために指定されていることは、多く見られることであ る。 この件については、今後の議論のために、CIPM-MRA の以下のパラグラフを参照して おく。 “1.4 本取り決めへの個々の署名者は、国家計量標準に責任を持つように、メートル条 約加盟国の適切な政府当局または公的当局によって、指定された国家計量機関である。 一つ以上のそのような機関を持つ国については、その全ての機関を代表して1機関がこ の取り決めに署名し、他の機関の名称はこの文書に添付される。 ” 例えば、 フランスは NMI と NML の長を署名者として指定し、LNE-LADG、 LNE-CETIAT、 LNE-ENSAM、LNE-IRSN、LNE-OB、LNE-FEMTO-ST、等を参加機関として指定してい る。 イギリスは、NPL を署名者とし、LGC、NEL、NWML を参加機関として指定している。 ドイツは PTB を署名者とし、BAM と UBA を参加機関として指定している。 インドネシアは、KIM-LIPI が署名者であるが、DOM、KIMIA-LIPI および BATAN は指 定機関になっておらず、CIPM 基幹比較に参加できない。 3) 国家計量機関の責務 上記の問題からは、以下の問題が生じる。 • 圧力、密度、力等の質量関連量について、効果的、効率的なトレーサビリティ を、どのようにして確立するか。 • 国家計量機関の責任が 4 機関に分割され、相互の協力が無いように見えるので、 情報の共有が難しい。また、KIM-LIPI 以外の機関は CIPM-MRA に参加してい ないので、BIPM の諮問委員会からの詳細な技術情報を得ることが難しい。こ の状況は、国際比較に関連する研究の停滞を生じさせる。 • トレーサビリティの資源が分割され、投資が重複する。 • これらの機関の幾つかの標準は、相互協力が欠如しているため、外国機関に依 5-9 存している。 • 計量標準に関する研究政策が明確でない。DOM は、計量標準開発に対する投資 が必要であるが、そのような活動が見えない。 4) トレーサビリティのための機材 前述の通り、インドネシアには 2 つの長さ標準が存在する。線度器用のインドネシア メートル原器(X27) 、およびメートルの現示用ヨウ素安定化 He-Ne レーザである。これ らは、それぞれ DOM と KIMI-LIPI によって維持・管理されている。これらの機材は、相 互に比較する比較器がないため、両方ともオーストラリアに校正を依存している。従っ て、KIMI-LIPI はメートルの定義に従った長さ標準を供給できないし、線度器用標準も供 給できない。一方、DOM は端度器用の標準を供給できない。両機関ともトレーサビリテ ィの源を外国に依存している。この状況は、国際的な視点から見ると、正常ではない。 5) 民間セクター 校正機関を認定するための手続きが国際的に標準化され、民間セクターが計量器の校 正業務に参入するに従って、参入業者は階層的システムに組み込まれ、国家計量機関は その資源を計量標準の開発やその普及に向けることができるようになった。 しかし、インドネシアにおいて先端的産業に計量標準を供給できる民間企業試験所は 少ない。 行政当局および国家計量機関が、近代産業からの要請に応えたサービスを提供できる、 幾つかの工業分野の民間企業校正試験所を振興することは、極めて重要である。この過 程では、産業界からの需要と校正サービスへの投資の調和を考慮するべきである。 第 2 回現地調査において、調査チームが訪問した地方試験所の多くは、主に輸出用農 産物の検査に従事していた。 6) 法と規則 プログレス・レポートおよびインテリム・レポートを作成する間、我々は、様々な法 令・規則を参照しなければならなかった。この過程では、規則の条項と法定計量法の条 項の対応を理解するのが難しかった。これは、規則が、法律のどの条項を参照している か記載していないためである。 5.1.6 考察 上記の事項を考慮して、現時点での勧告は以下のようになる。 1) 国家標準の一意的指定 これまでのところ、インドネシアは個々の物理量の国家標準とその責任機関を明示的 に指定していないようである。これらは、大統領令または政令によって指定されるべき である。 5 - 10 2) インドネシア国家計量機関 これまで詳述されてきたように、現在のインドネシア計量制度の問題の多くは、その 業務が、DOM, KIM-LIPI, KIMIA-LIPI および BATAN の4機関に分離されていることに 起因しているように見える。従って、それらの問題を取り除くため、上記機関を統合す ることが提案される。DOM と KIM-LIPI は基本量の標準に関し、密接な関係があるので、 この勧告は、特にこの 2 機関に適用できる。 実際、インドネシア政府は、既に大統領令に基づいて計量標準に関する諮問委員会 (KSNSU)を設置した。この委員会は、計量標準を担当する機関の協力を推進することを意 図している。委員会は、インドネシア国家計量機関の設立を目的として議論を開始し、 2005 年 8 月、国家計量機関の設立を勧告した。インドネシア計量制度に対する一つの提 案を、図 5.1-1 に示す。この議論は加速する必要がある。 3) CIPM-MRA への参加 これまでのところ、KIM-LIPI のみが CIPM-MRA への参加機関として指定されている。 インドネシアは、以下の手続きに従って DOM、 KIMIA-LIPI と BATAN を参加機関とし て登録するべきである。 4) a) 国家標準を指定する。 b) これらの機関を APMP 加盟機関として指定する。 c) ISO/IEC 17025 に準拠して、これらの機関の認定を受ける。 d) APMP 基幹比較に参加する。 e) これらの機関を CIPM-MRA への参加機関として、指定する。 f) APMP の審査を経て、CIPM-MRA の CMC データベースに登録する。 国家計量機関の環境 DOM の設立されている現在の場所は、計量標準を担当する機関の間の協力に適してお らず、また精密計測を必要とするインドネシアキログラム原器の維持・管理にも適して いない。さらに、バンドンの敷地面積は将来の発展を妨げる。DOM は便利で新国家計量 機関の開発に適した別の場所を探した方が良いであろう。 5) トレーサビリティ 工業計測や法定計量におけるトレーサビリティの開発に関しては、国家標準とその維 持・管理の責任機関を指定し、もし可能であれば民間機関を含めて、階層的構造を導入 することが必要である。トレーサビリティが機能するためには、機材の更新と関連機関 の調和が必要である。 5 - 11 6) 民間部門の活動 インドネシアの計量制度が近代化されるに従って、民間校正試験所は、トレーサビリ ティにおいてますます重要となるであろう。KAN は既に約 90 の試験所を認定している。 そのうちの半数以上は民間である。民間試験所が、政府機関の代わりに、校正サービス をユーザーに提供できるようにするためには、民間試験所を含んだトレーサビリティの 階層構造を開発することが極めて重要である。しかし、調査チームが第二次現地調査で 訪問した民間試験所は、輸出用農産物の検査をしていた。 また、担当当局は、製造業者がよりよいコミュニケーションと計量制度に対するニー ズを明確にするために、協会を設立することを奨励するべきである。 インドネシア計量制度(案) インドネシア共和国大統領 標準化委員会 商 業 省 国 家 行 政 海外取引総局 輸出入品の性 能評価 国内取引総局 法定計量+物理標準 + 化学標準 + 放射線 PPMB 地方国家行政 NMI設立 ( 2005/8 答申) DOM + KIM-LIPI KIMIA-LIPI BATAN LMSセンター(7カ所) 業務と人材のバランス (提案:標準供給・試験) 依頼 民 州 政 府 法定 州 行 政 BPSMB 間 試験・校正ラボ 州検定所 市 場 ・ 工 業 図 5.1.6-1 インドネシア計量制度に対する提案 5 - 12 5.2 法定計量法と関連法令 5.2.1 インドネシアの法令システム 近代的なインドネシアの法令システムは、多くの形態が入っている。2000 年 8 月に国民 協議会(MPR)は以下のような公式な法令階層を発布した。 • 1945 年憲法:1945 Constitution (UUD: Undang-undang Dasar 1945) • MPR(国民協議会)令:MPR Resolution (Ketetapan MPR) • 法律:Law (Undang-undang) • 法律を補足する政府規則:Government Regulation Substituting a Law (Perpu: Peraturan Pemerintah Pengganti Undang-undang) • 政府規則:Government Regulation (PP: Peraturan Pemerintah) • 大統領令:Presidential Decree (Keppres: Keputusan Presiden) • 地方自治体条例:Regional Regulation (Perda: Peraturan Daerah) 上記法令制度の階層を適用することに、問題がないことはない。一つの例として、最近 の憲法の改正と MPR の弱体化に伴い、過去の MPR 令の法制力が見直されている。それに 加えて、上記階層に載せられていないその他の有効な法制手段も存在する。それらは、大 統領指令(Instrukusi Presiden) 、大臣令(Keputusan Menteri)、書簡(Surat Edaran)を含んで いる。更に現状では、特定の法制手段の間に整合性がない。 大臣令は政府規則と大統領令を実施する際の規則である。大臣書簡 No.06-27 で説明され ている階層は、地方自治体条例は大臣令と矛盾してはならないと説明している。しかし、 地方政府はこれを尊重していない。 5.2.2 インドネシアにおける法定計量規制システム及び自治法 1) 法定計量法と関連規則の枠組み 表 5.2-1 に法定計量に関する法律と規則を示した。それらは以下に分類される。 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) 法定計量法 法定計量に関する共通・一般の法令 DOM と RVO の役割分担 DOM 特別技術基準(SSTK) 電力量計(WH メーター) タンクローリー 包装製品 MTC の人材開発 (10) RVO 5 - 13 5 - 14 法定計量基本法 Satuan Lain yang Berlaku 1987 商工大臣令 dan Perdagangan Nomor: 61/MPP/Kep/2/1998 Tentang Tentang Tanda Tera Tentang Ketentuan Izin Perbaikan UTTP Tentang Ketentuan UTTP Asal Import Tentang UTTP Yang Memerlukan Penanganan Khusus 636/MPP/Kep/10/2004 637/MPP/Kep/10/2004 638/MPP/Kep/10/2004 Nasional Indonesia 2004 年、 「特別処理を必要とする計測機器(UTTP) 」に関する商工大臣令 2004 年、 「輸入計測機器(UTTP)の規定」に関する商工大臣令 2004 年、 「計測機器(UTTP)修理許可の規定」に関する商工大臣令 2004 年、 「検定印」に関する商工大臣令 2002 年、 「標準化とインドネシア国家標準の監視」に関する商工大臣令 省国内取引総局長令 UTTP Metrologi Legal Tentang Standardisasi dan Pengawasan Standar 1998 年、「法定計量の計測機器(UTTP)の技術的明細と条件」に関する商工 Tentang Rincian dan Syarat-Syarat Teknis Khusus Penyelenggaraan Kemetrologian 1999 年、「計量実施に関する商工大臣令 61/MPP/Kep/2/1998 の変更」に関する 1998 年、 「計量実施」に関する商工大臣令 計量単位に関する政令(2001 年) ア共和国政府規則 1987 年、 「組合せ単位、追加単位とその他の有効単位」に関するインドネシ 1999 年、 「消費者保護」に関する法律 1981 年、 「法定計量」に関する法律第 2 号 日本語訳 Tentang Perubahan Keputusan Menteri Perindustrian 635/MPP/Kep/10/2004 753/MPP/Kep/11/2002 29/DJPDN/Kp/XII/98 251/MPP/Kep/6/99 61/MPP/Kep/2/1998 2001 Tentang Penyelenggaraan Kemetrologian Tentang Satuan Turunan, Satuan Tambahan, dan PP Nomor 10 Tahun PP Nomor 120 Tahun Tentang Perlindungan Konsumen 共通/全般 Tentang Metrologi Legal インドネシア語 UU Nomor 8 Tahun 1999 (2) UU Nomor 2 Tahun 1981 (1) No. 表 5.2.2-1 法定計量に関する法律と規則 5 - 15 DOM Pedoman Pengelolaan Standar dan 2005 年、「DOM 関連の UTP(技術実施ユニット)の組織と業務内容」に関す るレター(国家機能担当国務大臣から商業大臣へのレター) di Lingkungan Direktorat Metrologi 2005 年、 「LMS センターの組織と業務内容」に関する商工大臣令 2005 年、 「UTTP テストセンターの組織と業務内容」に関する商工大臣令 大臣令 2005 年、 「国家計測単位標準ラボセンターの組織と業務内容」に関する商工 2005 年、商業省の組織と業務内容に関する大臣令 総局長令 1999 年、 「標準と法定計量ラボの運営ガイダンス」に関する商工省国内取引 Perihal Organisasi dan Tata Kerja Unit Pelaksana Teknis Metrologi Legal Tentang Organisasi dan Tata Kerja Balai Standardisasi UTTP Tentang Organisasi dan Tata Kerja Balai Pengujian Standar Nasional Satuan Ukuran Tentang Organisasi dan Tata Kerja Balai Laboratorium Perdagangan Tentang Organisasi dan Tata Kerja Departemen Laboratorium Metrologi Legal Tentang Laboratorium Kemetrologian Tentang Pengelolaan Kemetrologian dan Pengeloaan 1997 年、水道メーター技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 油流量計技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 ガス流量計技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 タンクローリー技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 Tentang Syarat-Syarat Teknis Khusus (SSTK) Meter Air (SSTK) (SSTK) (SSTK) SSTK (Syarat-Syarat Teknis Khusus): 特別技術基準 920/Dirmet-1/III/1997 (5) B/2039/M.PAN/10/2005 29/M-DAG/Per/12/2005 28/M-DAG/Per/12/2005 27/M-DAG/Per/12/2005 01/M-DAG/Per/3/2005 30/DJPDN/Kep/XI/99 (4) 大臣令 Ulang UTTP 2002 年、 「計量運営と計量ラボ運営」に関する商工大臣令 2004 年、「計測機器(UTTP)の検定/再検定資格を持つ職員」に関する商工 Tentang Pegawai Yang Berhak Menera dan Menera DOM と RVO 間の役割分担 731/MPP/Kep/10/2002 (3) 640/MPP/Kep/10/2004 5 - 16 dan タンクローリー 人材育成/MTC 34/M-DAG/Per/12/2005 482/MPP/Kep/11/2000 (9) 634/MPP/Kep/9/2002 31/DJPDN/Kp/XI/99 局長令 Terbungkus (BDKT) Departemen Pelatihan Metrologi Tentang Organisasi dan Tata Kerja Balai Pendidikan dan Perindustrian dan Perdagangan Lingkungan 2005 年、 「計量研修センターの組織と業務内容」に関する商工大臣令 に関する商工大臣令 di Fungsional Penera 2000 年、 「商工省における検定官技能教育研修の実施に関するガイダンス」 る商工大臣令 dan Atau Jasa Yang Beredar Di Pasar Pedoman Penyelenggaraan Pendidikan dan Pelatihan 2002 年、 「市場での物品、そして/またはサービスの監視規定と方法」に関す Tentang Ketentuan dan Tata Cara Pengawasan Barang (47) 1999 年、 「包装商品(BDKT)監視のガイダンス」に関する商工省国内取引総 1999 年、 「食品の表示と広告」に関する政府規則 1996 年、 「食品」に関する法律 2004 年、 「タンクローリーの規定」に関する商工大臣令 共同法令 Tentang Pedoman Pengawasan Barang dalam Keadaan Tentang Label dan Iklan Pangan PP Nomor 69 Tahun 1999 Tentang Pangan 包装製品 Tentang KST Tangki Ukur Mobil Yang Dipergunakan Pada Usaha Ketenagalistrikan 1988 年、 「電力事業用計量器の検定」に関する商業大臣とエネルギー大臣の LPG 流量計技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 (SSTK) Tentang Peneraan Alat-Alat Ukur Dan Perlengkapannya 固定貯蔵タンク技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 (SSTK) UU Nomor 7 Tahun 1996 (8) 639/MPP/Kep/10/2004 (7) 0147 A.K/098/M.PE/1988 34A/KPB/II/1988 (6) WH メーター 列車タンク技術基準(SSTK)に関する DOM 局長規則 (SSTK) 5 - 17 Legal Tentang Pedoman Pengelolaan Laboratorium Metrologi 2004 年、 「法定計量ラボ運営のガイダンス」に関する商工大臣令 2004 年、 「法定計量ラボ評価のガイダンス」に関する商工大臣令 Note: “Ministerial Decree” in the table means “Ministerial Decree of Ministry of Trade (and Industry)”, if other ministry is not mentioned. 634/MPP/Kep/10/2004 Legal Tentang Pedoman Pengeloaan Laboratorium Metrologi 633/MPP/Kep/10/2004 1999 年、 「再検定所の向上のガイダンス」に関する商工省国内取引総局長令 レター(国家機能担当国務大臣から商業大臣へのレター) Teknis Departemen Perdagangan Tentang Pedoman Pembinaan Pos Ukur Ulang RVO 2005 年、 「商業省の UTP(技術実施ユニット)の組織と業務内容」に関する Perihal Organisasi dan Tata Kerja Unit Pelaksanan 32/DJPDN/Kep/XI/99 (10) B/2004/M.PAN/10/2005 2) 自治法と法定計量 地方自治に関する法律 No. 22/1999 の主要な特徴は、幅広い公共サービスの実施を地方 へ法定移転すること、及び地方自治の監督と管理のための幅広い権限を持つ選挙による 地方議会を強化することである。この法律は 2004 年 10 月に法律 No. 32 に改訂された。 地方自治に関する法律 No.32/2004(Law No.32/2004 concerning Regional Autonomy (UU Nomor 32 Tahun 2004)) : 新「自治法」では、司法、宗教、防衛、保安、国家金融と財政、外交を除く多くの自 治権が、中央政府から地方政府に移管された。 地方の業務として、 「権限分権化(desentralisasi) 、中央権限業務の分散(dekonsentrasi) 、 委任事務(tugas pembantuan) 」の 3 種類があると規定されている。法定計量は権限分権化 に属し、地方政府が業務実施の権限を持っている。 法定計量は「権限分権化」と規定され、地方政府が業務を管理する権限を持つ。 業務を義務分野と任意分野に分ける。義務分野は中央政府の法令に従う。任意分野は 地方政府の法令に従う。 業務を 30 分野に分類する。商業は任意分野で、計量は商業に分類される。そのことは、 計量の業務は地方政府が規制する規定に従うことを意味する。 表 5.2.2-2 に分権化に関する法律と規則を示す。 5 - 18 5 - 19 Tentang Pengakuan Kewenangan Kabupaten dan Kota 2002 年、 「県と市の権限」に関する法務人権大臣令 Note: “Ministerial Decree” in the table means “Ministerial Decree of Ministry of Trade (and Industry)”, if other ministry is not mentioned. 130-67 Tahun 2002 令 Di Lingkungan Deperindag dengan Tindak Lanjut Dialihkan Kepada Pemerintah Daerah 2001 年、 「地方政府に移管する商工省内での国家所有物」に関する商工大臣 2004 年、 「中央・地方間の財政均衡」に関する法律第 31 号 2004 年、 「地方自治」に関する法律第 32 号 Tentang Penghapusan Barang Milik/Kekayaan Negara dan Pemerintah Daerah 2004 80/MPP/Kep/3/2001 Tentang Perimbangan Keuangan antara Pemerintah UU Nomor 33 Tahun 2004 UU Nomor 32 Tahun <分権化法> Tentang Pemerintahan Daerah する 06-27 の法務人権大臣レター MPR No. III/MPR/2000 Dan Hak Asasi Manusia Nomor: 06-27 2000 年、 「III/MPR/2000 の MPR(国民協議会)令での大臣令の位置づけ」に関 日本語訳文 Tentang Kedudukan Keputusan Menteri Dalam TAP インドネシア語 Surat Menteri Kehakiman <大臣令の位置づけ> No. 表 5.2-2 分権化に関する法律と規則 5.2.3 日本の法定計量システム 1) 法令 日本の法定計量システムは計量法、関連する政府規則及び省令で管理されている。計 量法は 1951 年に施行され、国際化、技術の進歩及び規制廃止のような新しい社会のニー ズに対応するために、1992 年に全面的に改訂された(新計量法) 。 新計量法の目的は第 1 条に、 「計量の規準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって 経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的とする。」と書かれている。 計量法及び法定計量の特徴は以下である。 • 計量法は計量単位、正確な計量、計量標準の 3 要素で構成される。 • 計量法は取引・証明に関する全ての種類の計量活動を規定している。 • 法定計量は、歴史的に見て、1 世紀に亘り主として政府機関により施行されてきた。 • 自主検査が推進され普及したが、民間の検定機関は少数である。 • 計量法は検定や包装商品の検査のような前市場段階の規制ばかりでなく、後市場段 階の規制も重視する。 • 証明(任意)付の計量標準の規定システムが計量法で定められている。 計量法の主要点は以下である。 a) 計量の主要規則 • 計量又は証明に法律にない単位の使用禁止 • 計量器の規制:初期検定、再検定、及び定期検査 b) 計量の規準の確立 c) 製品の量の正確な計測 d) 計量認証事業の登録 e) 計量士の育成及び事業における自治計量管理の促進 Appendix 5.2.3 に経済産業省が作成した計量法の概要を示した。 2) 法定計量における中央政府と地方政府の役割 日本では、中央政府と地方自治体の間の役割が地方分権に伴って変化している。法定 計量においては、その責任は殆ど地方自治体に移管されている。移管前では、中央政府 は、地方自治体の包括的な管理の下、法定計量業務を地方自治体に委任していた。地方 自治体は中央政府が全国的に規定した法定計量業務をただ行うだけであった。 移管後は、法定計量は地方自治体の自治事務になった。地方自治体は、自身の予算で 自身の裁量の下で作業を実施する権限を持っている。その結果、ある県ではサービスの 向上が見られたが、ある県では法定計量に関する予算を削減して、その結果サービスの 質の低下ばかりでなく、技術レベルの維持にも支障を来たしている。 移管後は、地方自治体は法定計量の管理の自治権を得た。地方自治体は自身の予算で 業務を実施する権利を持っている。その結果、ある自治体ではサービスの向上を達成し ているが、ある自治体では法定計量関連の予算を削減し、サービスの低下を招くばかり 5 - 20 でなく、技術レベルの維持にも困難を感じている。 例えば、2003 年の地方検定所の職員数は 4 人から 108 人と異なっている。これは地方 自治体の規模の差を考えても問題と考えられる。過去には、地方の検定官は研修が義務 化されていたが、現在は義務化されていない。もし、地方自治体が検定官を研修コース に派遣することに消極的であれば、彼等の技術レベルは低下するであろう。 中央政府と地方自治体の主要な役割と責任は、1998 年 10 月の「計量行政審議会答申」 で以下のように述べられている。 1. 国が担うべき主要な役割・責務 計量標準の供給や技術水準の制定など、全国的な統一を図る(ミッション)観点から実 施すべき役割・責務として以下に掲げるもの • 計量制度自体の設計、整備 • 計量単位の統一 • 国家計量標準の開発・維持・供給 • 国家計量標準の供給制度の運用 • 特定計量器の指定、型式承認の実施 • 検定、定期検査、計量証明検査の合格条件の統一的な技術基準(法令、政 令、省令)の制定 • 技術基準の国際整合性の確保 • 指定製造事業者制度の運用 • 全国統一的な観点からの特定商品の指定および量目公差の設定 • 計量士関連(国家試験の運営、登録など) • 全国的な計量思想普及策の実施 • 法令解釈 2. 地方が担うべき主要な役割・責務 消費者保護や地域住民サービスの一環として適正な計量の実施の確保を図る(ミッショ ン)観点から、住民に身近な行政主体として実施すべき役割・責務として以下に掲げる もの • 商品の販売に係る量目立ち入り検査の実施および強化 • 検定、定期検査、計量証明検査の実施 • 適正計量管理事業所の指定および指導 • 製造事業者、販売事業者、特定計量器を使用する者などに対する立ち入り検査な どの実施および強化 • 自主計量管理推進のための指導 • 地方の自主性を高め、地域の実情に合わせた上記事務の運用の実施 • 計量行政事務の実施水準の確保、強化 • 地域住民等への情報の提供および計量思想普及策の実施 5 - 21 5.2.4 分権化の下での法定計量システムの現状 1) DOM と RVO の役割分担 計量運営と計量ラボ運営に関する 731/MMP/Kep/10/2002 の産業商業大臣令は、DOM と RVO の役割分担を以下のように規定している。 第2章 計量活動実施 第2条 計量活動実施の内容は以下である。 a. 計量運営 b. 計量ラボ(RVO)運営 第3条 上記(第 2 条 a 項)に示される計量運営は産業商業省が行う。その内容は以下の事項に関連 する提案を作り、計画を立て、全国の政策を決定し、計量活動を実行し、評価を行う。 a. 計量単位と計量標準と UTTP 計量方法 b. 全国の計量監視と指導 c. 全国的な計量人材開発と研修を行う d. 国産と輸入品の UTTP e. 検定マークの運営 f. 特別な扱いを必要とする UTTP g. 検定料 h. 国内と国際の計量協力 i. 法定計量法令を実施するための計量ラボの認定と、検定技能職員研修の認定 j. 法定計量制度 k. 情報と報告 第4条 第 2 条 b 項に示される計量ラボ(RVO)運営は州政府が行う。法定計量に関する法規に基 づいて、州政府は技術実務業務を行う。その内容は以下である。 a. 計量単位用標準機の検定 b. ラボの設備と機材の整備 c. 計量単位用標準機とラボ室と検査機材の管理 d. 計量人材の育成 e. 検定マークの管理と使用 f. UTTP の検定と再検定 g. 検定料の運営 5 - 22 h. UTTP と包装商品(BDKT)の監視 i. 計量啓蒙活動 j. UTTP 修理業者と UTTP メーカーへの指導 k. 型式承認(Izin tanda pabrik(国産品型式承認)と izin tipe(輸入品型式承認) )申請手続 きのための UTTP 検査を行う。 前記のように、第 4 条 k 項の業務は、DOM に移管されるべきである。 5.2.5 法定計量システムの問題分析 1) 問題点 1: 中央政府から地方政府への権限の移譲に際して、従来からある法定計量に関する中央 政府の法律が地方政府に十分理解されなかったり、責任の分担が明確でなかったりし ている。これらの事実は、法定計量実施において混乱をきたしている。 提言: DOM、地方政府、学識経験者、及び産業、消費者の代表者を含む委員会を設立し、従 来の大臣令の見直しおよび協議を行う。問題点の発生している事項に対しては、委員 会は法整備を含む解決策を勧告する。 2) 問題点 2: 大臣令と州条例の位置づけが不透明で、中央政府と地方政府の間で大臣令と州条例の 位置関係の解釈が違う結果となっている。 提言 2: 大臣書簡 06-27 にあるように、州条例は大臣令と矛盾してはならない。 3) 問題点 3: 総局長令以下の規則が、州条例では無視されがちである。 提言 3: 重要な規則を大臣令で参照し、州条例は大臣令と矛盾してはならない。 4) 問題点 4: 一部の法定計量器の型式承認のための試験(器差試験)を RVO が行っている。DOM はその試験結果を承認して、型式証明書を発行している。 調査団が訪問した型式承認を行っている RVO は、 本来の意味での型式承認を行う設備、 技術共に不足している。そのため、不完全な試験による国産・輸入機器が型式承認さ れ、市場に出回る恐れがある。このことは、粗悪な国産・輸入水道メーターが流通し ているひとつの原因と推測される。 提言 4: 731/MMP/Kep/10/2002 の産業商業大臣令、第4条 k 項を改訂する。DOM がすべての型 式承認を実施する。一部試験の外注もあり得るが、DOM が管理する。 5 - 23 5) 問題点 5: SSTK で規定された型式承認の内容が不十分である。SSTK は構造試験、耐久試験、環 境試験などを規定していない。 提言 5: SSTK を OIML 勧告およびインドネシアの現状に即した型式承認の内容に改正し、大臣 令で承認する。 6) 問題点 6: 法定計量で管理する UTTP の容量の範囲(上限、下限)が決められていない。現状で は、DOM、RVO は全ての範囲(最大から最少まで)の UTTP に対応しなければならず、 それは現実的ではなく、時には不可能である。 提言 6: SSTK で、法定計量で扱う UTTP の容量の範囲を決める。 7) 問題点 7: もし地方政府が退職によるスタッフの補充をしないなら、人材不足が心配される。 提言 7: DOM が人材に関するガイドラインを作成する。 8) 問題点 8: RVO は DOM に対して報告義務がない。 提言 8: 大臣令等で報告義務を課する。日本では情報公開されており、ホームページでも DOM および RVO に相当する機関の設備、活動、業績、決算内容の情報が得られる。 5 - 24 5.3 予算システム 5.3.1 予算システムの現状 1) 財政の分権化 財政の分権化は、1999 年に出された政府分権化プログラム(法律第 22 号/1999、第 25 号/1999、第 34 号/2000 に基づく)の中で欠くことの出来ない一部を構成している。これ らの法律は地方政府に対して、地方住民の要望を取り入れて最も効果的に作ることが出 来る地方政府自身の予算の計画、実施に大きな権限を与えている。 2004 年、 「中央・地方間の財政均衡」に関する法律第 33 号 本法律は、中央と地方政府間の関係、移管メカニズム、地方政府のボンド借入/発行、 資金計画の分散化及び共同管理、地域財政管理、管理情報システム、及び財政の分権化 に関するその他の課題の法律的な骨格を定めるものである。 2) DOM と RVO の予算 (1) DOM DOM 運営のための予算は MOT から来る。 (2) LMS センター メダンとマカッサルの LMS センター設立のための予算は、2006 年は 7 億ルピア(約 900 万円)であった。それは計画と貸し事務所のためである。2007 年の予算は LMS センター建設に充てられる。その予算は以下に使用される計画である。 • 土地購入 • ラボと事務所建設 • 必要機器の購入(2004 年大臣令 633/644 に規定されている A 級の機器) (3) RVO RVO 運営の予算は州政府から来ている。RVO の聞き取り調査結果によれば、予算は RVO 運営には十分であるが、新規設備購入または設備の更新が出来ない。RVO から 中央政府に要請する予算は非常に限られている。 アンケート調査(第 4 章参照)によると、73%の RVO 回答者は、予算不足と答えてい る。平均コストは 6.48 億ルピア(7 万ドル)で、活動による平均収入は 1.98 億ルピア (2.2 万ドル)であった。 以下に第 1 次現地調査における RVO 予算の聞き取り調査結果を示す。 a) ジョグジャカルタ RVO 以下はジョグジャカルタ RVO の 2005 年の予算である。 • 州政府からの予算:9.2 億ルピア(10 万ドル)で、そのうち人件費を除くと 3.1 億ルピア(3.4 万ドル)である。 • 要請に基づく中央政府からの予算:2300 万ルピア(2500 ドル) • 検定/再検定料による収入:9750 万ルピア(10,600 ドル) 5 - 25 b) 東ジャワ州政府 東ジャワ州政府は 7 つの RVO に対して予算を提供している。予算は RVO 運営に は十分であるが、新規設備の購入ができない。2005 年と 2006 年における全ての費 用と投資額を含んだ予算は、それぞれ 80 億ルピア(87 万ドル) 、55 億ルピア(60 万ドル)であった。2005 年には中央政府は 3000 万ルピア(3.3 万ドル)を RVO の ために州政府に提供した。 RVO に対する予算のほかに、州政府は計量研究所建設の予算配分を計画している (建物:60 億ルピア、設備:100 億ルピア) 。2006 年には 28 億ルピア(30 万ドル) が建設に充てられた。 5.3.2 予算システムに関する問題分析 1) 問題点 1: 州政府が RVO の検定/再検定料収入を財源として考えている。州条例にもその旨明記し ている州政府もある。したがって、RVO の収入の目標を定め、それが達成されないと 翌年度の予算を削減し、RVO が法定計量を実施することに問題が発生する。問題点は、 州政府が、法定計量は社会責務の一部であり、消費者保護のための福祉であり、検定 活動から多くの収入を生まないということを十分に理解できていない。 提言 1: MOT の 5 ヵ年計画の中に法定計量の重要性が書かれている。アクションプランの一つ として、MOT は州政府と接触し法定計量の重要性を認識させる。例えば、MOT は、 他州または ASEAN 国の成功事例を与える。 2) 問題点 2: RVO が設備・機材を整備する予算が十分にない。 提言 2: DOM が、RVO が持つべき設備・機器に関するガイドラインを設定する。もし RVO が 独自で機材調達できないなら、最低限必要な機材について、DOM が供与する方策を検 討する。商業省所属の PPMB が州政府管轄の BPSMB に機材供与している例がある。 3) 問題点 3: 分権化後は、州政府が RVO の検定料金を決めることが出来る。全国展開をする PLN や企業は、それを不公平と感じている。 提言 3: DOM が大臣令に述べたような検定料金のガイドラインを作る。 5.4 DOM 本節の目的は、DOM 固有の問題を記述することである。DOM の他機関との関連は、5.1 節に記述されている。 5 - 26 5.4.1 DOM の概要 インドネシアの最初の計量規制 “Ordonansi Tera” (検定令), は 1923 年に制定され、その管 理と施行は「検定所」に割り当てられた。その後インドネシアは、BIPM からメートル原器 の複製 X-27 を 1928 年に、また、国際キログラム原器の複製 K-46 を 1938 年に受け取った。 X-27 を受け取った後、1928 年から 10 年の猶予期間を置いて、K-46 を受け取った 1938 年 にメートル法を導入した。1957 年に X-27 と K-46 は大統領令 55 号によって国家標準と定め られた。 「検定令」は 4 度改訂された。現在では、インドネシアの計量法は、メートル法に 基づいた国際単位の導入を目的とした、 「法定計量に関するインドネシア共和国 1981 年第 2号法」である。これによって、「検定所」は商業省国内取引総局下の「計量局」(DOM) となった。 1955 年までには、27 州において、第 2 レベル行政、即ち県市レベルでは 28 行政地域で 計量サービスが可能となった。工業省と商業省の統合によって、全ての地方政府、行政区 で可能となった。 インドネシアは 1960 年に OIML に加盟し、1999 年に APLMF に加盟した。 DOM は、 APLMF の指導者研修およびバリで開催された第 6 回 APLMF 総会の開催国となった。 以下は、インドネシア法定計量の簡単な歴史である。 1923 年 2 月 2 日 1923 年法令 57 号 検定令制定 メートル法の開始 1928 年 1 月 1 日 1928 年法令 255 号 検定令制定 猶予期間を15年に変更 1938 年 1 月 1 日 1933 年 5 月 9 日政令 1933 年 21 号 政令 非メートル法の禁止 1949 年 7 月 1 日 1949 年法令 175 号 1949 年検定令制定 検定令の改正 1954 年 12 月 21 日 Verification Office から Metrology Office へ所名変更 1960 年 10 月 30 日 OIML に加盟 1962 年 11 月 所名を Metrology Office から Directorate of Metrology に変更 1968 年 9 月 11 日 所名を Directorate of Metrology から Directorate of Metrology, Standardization and Normalization に変更 1975 年 5 月 29 日 Directorate of Metrology, Standardization and Normalization を商業 省下、Directorate of Metrology と Directorate of Standardization に分 割 1981 年 4 月 1 日 1949 年検定令に代えて、法定計量に関するインドネシア共和国 1981 年第2号法の制定(インドネシア共和国法令 1981 年 3193 号) 上記の歴史に沿って、DOM は法定計量法を施行し、法定計量分野において、インドネシ アを代表している。現在の DOM の詳細を以下に記す。 5.4.2 DOM の組織と機能 DOM は、商業省国内取引局に属する技術試験所であり、マネージメント部門を除くと、 主に2つの課グループから構成されている。一つは政策策定と技術指導のグループ、他は 5 - 27 国家標準の維持・管理と法定計量の実施グループである。これらのグループの活動は、政 令 No. 22 / 1999 と No. 25 / 2000、これに続く大臣令 No.731/MPP/Kep/2002 に基づいている。 以下は、それぞれの課について、機能を箇条書きしたものである。組織を図 5.4.2-1 に示 す。 1) 政策の策定および運営に関するグループ この課グループは、以下の 5 課から構成されており、約 60 人の職員を擁する。このグ ループの全ての課が RVO の管理に関与している。 (1) 組織と協力 • 計量器、および RVO に対する協力 • 法定計量に関する情報と報告制度 • 政府内の法定計量に関する情報と報告制度の開発 地方分権化後、RVO は彼らの活動を DOM に報告する必要は無くなった。このことは、 DOM が RVO で実施された検定・再検定の統計情報を得るための障害となった。 5 - 28 5 – 29 UTTP Audit Technicia n Group Calibration for UTTP UTTP Special Domestic Trade Flow, Length & Volume Div. Measuring cooperation Quality Consultation Div. Mass, Electricity & Pressure Div. Measuring Instrument Administration Metrology Laboratory & International Trade Cooperation Measuring Instruments & International Trade Auditor- general Administration Technical Service Div. Metrology Standard for Non-technical staffs Technical staffs Mass, electricity and pressure Div. Flow, length and volume Di Metrology Human R & D of Trade Metrology Technology Administration Periodical Audit for Goods Secretarygeneral 図 5.4.2-1 DOM 組織図 Technician Group Measuring Unit National Standard Labo. DOM Export Development MOT Technician Group LMS Centre Metrology Audit & Consultation f P ki Metrology Audit & Consultation for UTTP Metrology Audit & Metrology Technology MTC Education Centre of Trade Administration (2) 計量標準と校正に関する政策策定 • RVO に供給される質量、電気、圧力、温度、長さ、および体積の標準と校正技 術 • 質量と長さのトレーサビリティの開発および維持・管理に関する政策策定 • RVO 職員に対する技術指導と研修 • RVO の機能改善の援助 (3) 検定、再検定の運用 • 計量技術、検定、および再検定に関するRVOに対する指導、援助 • 特別な技術を要する計量器に関する試験、調査、および研修 (4) 人材開発 • RVO と民間部門の人材開発 • APLMF と協力して法定計量に関する技術研修を運営すること • APLMF 技術研修参加後、職員に対する研修を行うこと (5) 市場監視 • 計量器と包装商品に対する市場監視 この課の職員は、違法行為の摘発権限が与えられている。地方分権化後、州政府職員 は違法行為の摘発権限を失った。 2) 技術サービス業務を実施する課とグループ この課グループは主に3課によって構成され、 約 80 人の職員を擁する。これらの課は、 検定、再検定、型式承認試験、国家標準の維持・管理などの計量器に対する技術サービ スの実施を担当している。 LMS センターについては、そのうち2つの準備室が既にメダンとマカッサルに設置さ れている。これらが最近設置されたことと、RVO に対して DOM が機能するためには重 要な位置を占めているので、後で詳述する。地域産業振興のために、これらのサービス を拡大することは重要である。 (1) 計量器の検定 • 特別な技術を要する計量器の検定と再検定 • 法定計量器の型式承認試験 DOM は新製品の計量器の型式承認試験の検定を実施する。しかし、いくつかの型式の 計量器は型式承認試験や検定を必要としないように見える。型式承認試験や検定は真 に必要なものに限るべきである。 5 - 30 (2) 国家標準の維持・管理 • 質量国家標準の維持・管理 • 線度器用国家標準の維持・管理 • 計量標準の現示と計量技術の実施 DOM はインドネシアのキログラム原器とメートル原器を維持・管理している。前者は、 実際インドネシアの質量標準として働いている。しかし、メートルの定義は CIPM の勧 告に従って現示されるべきものであるから、後者の役割は明確ではない。 (3) a) LMS センター 設立過程 主要都市における 7 カ所の RVO を拡張することによって、中核検定所を設立するこ とは、1993-1994 年に JQA によって実施された前回調査において、既に提案されている。 そこでは、メダン、ジャカルタ、スマラン、スラバヤ、バンジャルマシン、デンパサ ール、およびパレンバンの 7 中核検定所の設立と、さらに、より高度な校正に対する ニーズを満足させるため、民間へのサービスを提供することが提案されている。 しかし、包括的地方分権化法が 2001 年に施行されて、地方における法定計量が法律 No.32/2004 によって、強制ではなく任意事項と分類されたため、重大な問題が発生し た。この法律によって、州政府および都市行政当局は、法定計量を実施するかしない かの選択肢を得た。 それゆえ DOM は、市場において計量器の再検定を担当している RVO に対する行政 権限を失った。これは、州間の非一様な法定計量行政の原因となった。もう一つの重 大な問題は、州政府の担当者が違法行為を摘発する権限を持っていないことである。 従って、国家行政の観点からは、地方において法定計量を実施するための国家機関を 設立する必要があることになる。 これらの状況を考慮して、DOM は主要地域において、7 カ所の LMS センターを設立 することを決定した。 しかし、前回の調査で提案されている LMS センターの機能(即ち RVO の中核検定 所と校正試験所の機能)は、現在では大臣令によって、RVO に対する技術的援助と、 それらの持つ参照標準器の校正に制限されている。こうして、所期の目的は変更され、 地域産業は、これまでのところ、より高度な技術と標準を用いる手段を持っていない。 b) 現在の状況 試験所としての LMS センターは、まだでき上がっていない。しかし、LMS センター 準備室はメダンとマカッサルに設置され、既に活動しており、メダンの準備室は、ス マトラにおけるRVO間の、体積測定に関する技能試験を企画し実施した。 c) LMS センターの役割 DOM との面談によって、LMS センターが法定計量のみを担当し、RVO は校正と法 5 - 31 定計量の両方を担当することが分かった。地方民間試験所と RVO の校正能力が限定的 であり、地域産業の期待を満足させることができないので、LMS センターの役割は、 できるだけ早い段階で拡張されるべきである。 上記の RVO 間の技能試験は、その校正能力を向上させるため極めて重要である。 5.4.3 企画と政策策定 DOM の機能の一つは、法定計量に関する企画と政策策定である。しかし、それを担当す る部署は存在しない。現在は、必要に応じて担当者が指名されているようである。 調査団は、質問票の中で DOM の中期と長期の目標を求め、それらを明確にする会議を持 った。しかし、ほとんどの目標は明確ではなかった。DOM は定量的な目標を持った計画を 作成し、MOT は DOM がそれを実現するのを助けるよう、十分努力するべきである。 この意味で、 DOM と MOT が企画と製作策定の人材に投資することが非常に重要である。 上記のように、企画に責任を持つ部署が存在せず、現状では DOM は組織的に計画を作成す ることができない。 5.4.4 法定計量制度の運営 DOM は、法定計量の行政と法定計量法の施行に全面的に責任を持つ政府機関である。以 下は、その過程において議論されるべき基本的事項であり、奨励され活発化されるべきも のである。 1) 法定計量の範囲の定義 政府や民間部門がどの程度の範囲を担当するかに関しては、原則として、政府はその 資源を民間が担当できないもの、即ち、RVO や校正試験所への標準供給、法定計量にお ける型式承認等に集中すべきである。これは、関連するセクターの階層的配置に発展す る。 2) 法定計量以外のサービスの範囲 法定計量の範囲を定義することの他に、DOM は本部機能として、校正や指導といった LMS センターに対する追加的なサービスを詳細に決定しておく必要がある。LMS センタ ーは、地域産業にそれらのサービスを先進技術や校正技術として提供できるようにして おくべきである。 3) 法定計量業務の階層化に必要な民間地域産業の参加 法定計量器として、法の規制を受ける計量器の数は急速に増加すると考えられる。現 状の法定計量実施体制が改善されなければ、社会活動および産業からのニーズには応え ることはできないであろう。DOM と RVO の再編、および民間部門の参加は行政部門の 責任を果たすために不可欠である。 原理的には、民間部門はトレーサビリティへの参加者であると同時に、計量器製造業 5 - 32 者でもある必要がある。しかし、調査によれば、現在の民間部門の能力はそのような業 務に十分ではない。従って、政府は民間部門を振興し、その能力を階層化されたシステ ムに組み込むための企画・政策を開発するべきである。 4) 情報伝達の改善による地域行政の把握 地方分権化以前、RVO は DOM に属していた。しかし、地方分権化後は、それらは州 行政の一部となり、DOM への報告義務が無くなった。その結果、DOM は法定計量活動 の国レベルの統計データを記録することができなくなった。 DOM は、関連する法律および規則を改正し、RVO がその年次活動を報告するためのフ ォームを作成することを提案する必要がある。 5) 製品競争力の強化政策 幾つかの企業は、国際的取引・貿易において競争力を持っているが、一方、品質にお いて国際的レベルから遅れているものもある。品質および競争力強化のため、後者の工 業製品の標準化を進める必要がある。 6) 公正な競争の促進 輸入計量器と国産計量器の公正な競争を促進する制度の開発が必要である。輸入計量 器が法定計量の対象となる場合には、それらには法定計量法と関連規則を確実に適用さ れるべきである。 5.4.5 技術サービス 地方分権化以前は、DOM はバンドンの本部と各州の RVO によって構成されており、そ れらの全ての職員は国家公務員であった。しかし、地方分権化後は、RVO は州政府に移管 され、バンドンの DOM は本部機能としてRVOを管理する権限を失った。しかし、DOM は、基本的にはまだ RVO に標準を供給し、技術相談に応える機能は持っている。 以下は、DOM の提供する技術的サービスの分野である。 1) 標準供給と校正 これまで政府は、DOM は基本単位である質量や、体積のような法定計量関連量の標準 を RVO に供給することが責務と考えてきた。実際、調査団が訪問した全ての RVO は、 DOM から質量標準を供給されていた。しかし、幾つかの RVO は長さのような別の標準 は、KIM-LIPI から供給されていた。 一つの計量標準の源は、一つの国家計量機関に統合されるべきである。 これらの業務を遂行するため、もし DOM が国家計量機関の役割を負って、国家標準に トレーサブルな標準を RVO や民間部門に供給しようとするのであれば、DOM の設備や 機材は相当更新されなければならない。その場合、DOM が供給するべき標準は、圧力、 密度、力等の質量関連量を含む。現代産業はこれらの基本的な量の精密測定を必要とし 5 - 33 ている。 さらに、現在設立過程にある LMS センターは、地域産業に校正や検査等のサービスを 提供する必要がある。地域産業からのニーズを満足させる試験所もなく、民間試験所は、 農産物検査に従事して、そのようなサービスを提供できない。 型式承認試験に加えて、DOM は法規制の対象となっていない計量器の校正サービスも 行っている。その場合、物理量や仕様等の項目を、顧客の要望に応えて明確に規定して おくべきである。校正に必要な機材は、ニーズ調査の結果に従って準備されるべきであ る。 上記の DOM の責務は KIM-LIPI と重複するであろう。この問題をできるだけ早く解決 し、国家計量機関の統合の議論を加速するべきである。これは DOM と LMS センターの 設備設計にも必要である。 2) 型式承認試験 国家計量機関が関与すべき業務の一つは、型式承認試験であろう。従って、ほとんど の OIML への参加機関は政府機関であり、OIML は、型式承認試験の方法や仕様を標準化 するために、多くの技術勧告を発行してきた。 OIML 勧告の中の仕様は、参加国の間の妥協の結果であるため、厳密に定義されていな い場合が多々ある。実際の型式承認試験では、条件を完結させるため、担当当局によっ て補足され明確に定義される必要がある。 ASEAN 諸国においては、世界の多くの開発途上国と同様、設備や技術に関する知識不 足のため、OIML の勧告通りには実施されていない。インドネシアの型式承認試験は、校 正や検定(器差試験)とほとんど同じである。 インドネシアは、消費者に提供される計量器の品質を保証するため、国際規格に則っ た型式承認試験(即ち構造試験)を実施するべきである。 3) 初期検定と再検定 地方分権化以前は、初期検定および再検定はバンドンの DOM と RVO の両方で実施さ れていた。バンドンの DOM は、本部機能として RVO へ技術サービスや計測技術に関す る技術相談を実施してきた。地方分権化によって、それまで DOM の組織的一部であった RVO は、州政府に移管された。それ以来、RVO を含む DOM が実施してきた初期検定、 再検定は RVO の主要な業務として、RVO にのみ割り当てられるようになった。 このようにして、検定に関しては、DOM は特別な技術を必要とする計量器の検定のみ を実施する、本部機関として機能するようになった。従って DOM は、その能力を国家機 関が本来なすべき業務へと拡張するよう、型式承認試験の業務を強化するべきである。 4) 技術サービスで考慮されるべき因子 以下は、上記の技術サービスを設計する場合、考慮されるべき因子である。 5 - 34 (1) 試験業務指示書 現行の検定および型式承認試験の条件は、DOMとRVOの全ての検定官に対する指 示書として、SSTKに記述されている。従って、以下のガイドラインが適用される べきである。 • • • • • • • 全ての検定官が試験の意味を理解できること 全ての検定官が試験の内容と手続きを理解できること 試験条件は、できる限り明確かつ詳細に指定されていること 指示書に従えば、試験が再現できること 試験の記録様式が、試験手順を記録し、一定の方法で再現される試験と比較 できるように準備されていること 全ての検定官が手元に業務指示書を持っているか、容易に利用できるように なっていること 業務指示書に記載されている事項は、検定官の作業環境で全て実行可能であ ること 調査では、幾人かの RVO の検定官は SSTK を読んだことがなかったり、単に記入用紙 のみを用いていたり、幾つかの RVO では SSTK を検定官が容易に利用できる場所では ないところに保存していたり、比較的低位の検定官はSSTKを利用できなかったり という事実があった。 さらに、幾つかの試験項目は、必要な機材が不足しているため、DOM では実行できな いであろうと思われた。 (2) 型式承認試験の範囲 調査によって、インドネシアでは 40 種の計量器が型式承認試験の対象となっているこ とが分かった。これらには、ウッド・メーター(木製物差し)、鋼製メジャー、巻き尺 等の、安定で容易にはごまかしができないもの、それほど精度を必要としないものな ども含まれている。これらのものは、公的に品質が保証された機器で、品質がそう早 くは劣化しないものであれば、工業標準化を適用して管理する方が良いと思われる。 従って、計量器に対する規制は工業標準化政策と調和させる必要がある。 (3) 法律および規制の目的 もう一つ考慮すべき点は、計量法とそれに関連する大統領令、大臣令等による規制の 目的である。様々な規制は、消費者保護、市民生活での正確な計量、産業振興等の基 本政策の下に、組織的に組み立てられる。よって、基本政策と相容れないサービスは 政府によるサービスからは除外されるべきである。 (4) 利害関係者と担当部局 型式承認試験や検定は、法定計量にとって基本的なものであり、市民生活における安 全や公正な取引に大きな影響を及ぼす。従って、原則として、これらのサービスの担 5 - 35 当部局は、計量規制の対象である計量器を使用している供給者側から分離されるべき である。この意味で、もっとも共通の考え方は、これらのサービスの実施を政府に割 り当てることである。しかし、標準的認定制度によって運営されている民間企業にこ れを割り当てることもできる。PLN や水道供給公社が型式承認試験や検定を実施して いるのは、適切とは言えない。 (5) 試験条件と試験範囲 試験条件や試験範囲、試験される計量器の型式および測定範囲は明確に定義されてい なければならない。DOMで実施される型式承認試験や検定において、多くの試験条 件や試験範囲、計量器の測定範囲が明確に定義されていないことが分かった。よって、 DOM では、その設備容量を超えるため、実施しなければならない型式承認試験や検定 ができないことが多く生じている。計量器の仕様の上限、下限、および試験条件は規 則の中で定義しておく必要がある。 5.4.6 DOM の人材開発プログラム 計量に関する人材開発は、教育、研修の広い範囲に及ぶ。技術的には、バンドンの計量 研修センター(MTC)が DOM と RVO 職員の教育を実施してきている。 本節では、法定計量行政の本部として、DOM の人材開発について議論する。 DOM は、 インドネシアにおいて、法定計量の運営に関するさまざまな責任を負っている。 以下は、職制によって職員を分類する一つの例である。 a) b) c) d) e) f) 設備、施設運用技術 計量技術補助 国内計量行政/技術 国際計量行政/技術 企画・政策担当行政/技術 経営人事担当 分類 e)、f)は、他のセクションからは独立して設置されるべきであり、これらの部門の強 化研修も必要である。現在では、これらの部門は存在しない。 試験所・校正機関の運営に関する国際標準化は急速に進んでいる。上記 d) の職員のみで はなく、全ての職員が試験所運営のシステムを理解しておく必要がある。さらに、技術職 はトレーサビリティや計測の不確かさの知識も要求される。 5.4.7 国際化 インドネシアは、1960 年以来、メートル条約と OIML の加盟国である。ASEAN 諸国の中 で、両者の正規加盟国であるのはインドネシアのみである。これらの2つの機関が世界の 計量担当者が交流し協力し合う舞台となっている。 さらに、DOM は APLMF のインドネシア代表機関となっており、ACCSQ 法定計量WG 5 - 36 の代表としてリーダーシップを発揮している。すでに、国際的活動に寄与していると言え る。 インドネシアは、国際基準に適合したシステムを構築し、メートル条約とOIMLの枠 組みの中での活動に寄与するため、以下の手段を講じるべきである。 1) APMP への加盟 これはインドネシアが国家標準を指定した後、メートル条約下のCIPM-MRAへ 参加するための最初のステップであろう。インドネシアの国家標準機関の責務を明確に する最も良い方法は、関係する国家標準機関を統合することである。 2) OIML 技術委員会への参加と OIML 勧告の作成への寄与 DOM はこれまでインドネシア法定計量を代表してきたが、国際基準に適合したシステ ムを確立するために、OIML 及び APLMF において、さらに活発に活動する必要がある。 国際的な技術委員会に参加せずにそうすることは難しい。 5.4.8 DOM に関する問題分析 以下の観点から、現在の問題を分析するため、これらの問題を明確に設定しておく必要 がある。以下の問題の幾つかは、法規制の改正を要するものもある。 1) 法律と規制 法律や規制は、起草するとき、その目的や目標を明確に定義しておく必要がある。 2) 組織と機能 (1) 組織と機能の定義の明確化 DOM に関する組織とその機能の問題点は、前節に記述されている。それぞれの課の役 割と機能を明確にするため、組織再編が必要となるであろう。国際協力と企画につい ては、それぞれ専門とする課を設置する必要がある。 (2) LMS センターの役割の拡張 DOM は法定計量の普及のため、主要な州に、近い将来 LMS センターを設置する計画 を持っている。これらの機関は国家機関であるため、効率という観点から、その与え られるべき役割と機能を明確にしておく必要がある。 その際、 1994 年の報告書で指摘されているように、 地域産業のニーズに応えるよう LMS センターの機能を拡張するべきである。LMS センターの活動の一つの良い例は、RVO 間の技能試験の企画調整・実施である。 5 - 37 (3) 型式承認試験および検定の試験条件と範囲の定義 計量規制の目的と目標に沿って、試験を受ける計量器の測定範囲と、型式承認試験お よび検定の試験条件を定義しておくことが必要である。そうしないと、DOMでは実 施できない無制限な業務がDOMに課せられることになる。 3) 他セクターとの関係における責任 (1) 国家計量機関の責任 DOM の主要な業務の一つである、計量標準の開発と維持・管理は、法定計量法第8条 -第11条に基づいている。これらの条項では、国家標準の維持・管理に責任を持つ 機関は、政令で定めると記述されている。現在では、これらの責任は4機関に分裂し ており、質量と長さ標準には、いくらかの混乱がある。 (2) 民間部門の包含 先進国においては、トレーサビリティの一部が民間部門に負っている国もある。しか し、開発途上国においては、民間部門がトレーサビリティの一部を担うほどには発展 しておらず、そのようなシステムを構築することは難しい。従って、現在では、国家 機関がトレーサビリティ構築を主導し、技術サービスを実施することになる。 4) 国際協力 DOM と他の国家計量機関は、その担当する物理量に関する国家標準とトレーサビリテ ィを維持・管理する機関として指定されるべきである。CIPM-MRA へ参加し、CMC に登 録するために必要なステップは既に前節に記述されている。 このことは、DOM がまだ APMP 加盟機関ではなく、CIPM-MRA 参加機関として指定 されていないことによる。 国際法定計量の観点からは、DOM は OIML 勧告の技術委員会に参加するべきである。 しかし、これには急速に発展する法定計量の技術に対応する設備や関連技術の高度化が 必要であり、OIML 証明書制度や型式承認試験データの相互受入などに参加する必要もあ る。 5) 現在の試験所環境と設備 (1) 新国家計量機関の必要性 質量の国家標準を維持・管理する国家計量機関としての DOM の環境は、DOM が主要 高速道路の近くのバンドンの中心部にあり、精密測定には適していない。建設地は静 かで便利であること、面積は将来の拡張のため十分広いことが必要である。 さらに、DOM、KIM-LIPI、KIMIA-LIPI および BATAN の 4 機関の統合は、新国家計量 機関を設立し、インドネシアの計量活動を急速に発展させ、人々に国際レベルの技術 サービスを提供するために不可欠である。 5 - 38 5.5 地方分権と地方検定所(RVO) 5.5.1 地方分権下の法定計量体系の現状 1) 地方自治法の施行 1981 年の法定計量に関する法律の施行後、法定計量に関する最も影響を及ぼした革新 は地方自治法(No.22/1999、No.25/1999)であろう。これは 1999 年に制定され、2001 年 に施行され、2004 年に修正された(No.32/2004) 。この革新は幾つかの管理業務を地方分 権化し、地方政府に実施を任せることを意図したものである。 2) RVO(RVO)に関する現状の問題と困難さ 2001 年の本法施行前には、全ての RVO は DOM に属しており Bandung の DOM は本 部として機能していた。分権化後、RVO は地方政府に移された。したがって設備と職員 はこの革新の推移の中で、そんなに変わっていない。分権化は法定計量の施行において 次のような様々な問題と困難を生じた。 • 各州の政策により、法定計量の管理業務が不統一である。 • 予算体系が州政府により異なる。 • RVO にはその活動を DOM に報告する義務がない。 • DOM から RVO への予算的支援がない。 上記の問題と困難さは RVO 側の観点からのものである。DOM の責任という観点から 見ると、いくらか異なる項目が生じよう。これについては後で議論する。 5.5.2 RVO の概要 調査団は現存の 54 の RVO のうち 11 の RVO を訪問した。また事前に各 RVO に配布して おいた質問書に対し 32 の回答を受取った。 調査団が訪問した RVO は下記の通りである。 ジャカルタ、ボゴール、ジョクジャカルタ、スラバヤ、メダン、マナド、マカッサル、 デンパサール、パダン、ペカンバル、バンジャルマシン 質問書を含メーター調査および各 RVO の 3 人のインタビューの結果を以降に記述する。 5 - 39 1) RVO の調査 (1) ジャカルタ RVO a) 概要 77 名 (57 名の技術者を含む。) ガスメーター、タンクローリー、電力量計、タクシーメーター、水道メー ター、分銅、体積タンク はかり、分銅、水道メーター、燃料油メーター、タクシーメーター、 タンクローリー、電力量計、ガスメーターおよび包装商品用 90 億 Rp (978,000 ドル) 大部分の職員が MTC の研修を終了。 ISO17025 の認定及び KAN から校正ラボの認定を取得。 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 新人はいないが、Jakarta 市政府により人事異動対応あり(MTC 研修付き) 。 タクシーメーターの検定および最新技術の教育訓練の要請あり。 十分な設備が備えられている。 問題なし。 • ガスメーターの検定・再検定の増大が将来予測される。 • はかりの受験者比率は大体 60%と推定される。 • KAN の認定は工業界からの要求によって取得した。 • 法定計量の不正はジャカルタの警察署の法定計量捜査官によって罰せ られる。 • 2000 年以降、一般の校正も要請によって行ってきている。 • 何人かの検定官が法定計量の法律および規則違反を見つけるために警官を伴って行く。 • ジャカルタ RVO は分権化後法定計量を良く管理できているので、LMS センターを必要 としない。 (2) a) ボゴール RVO 概要 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 32 名 (26 名の 技術者を含む。) 質量、体積、長さ はかり、分銅、燃料油メーター、タクシーメーター(ジャカルタ RVO から借用)およびタンクローリー用 25 億 Rp(272,000 ドル) 研修に職員を派遣する予算不足。 州政府に分権化後、事務所がこの地に移動した。 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 人材不足 退職職員の補充困難 教育訓練に職員を派遣する予算不足。 短期間研修ならば参加可能(例:包装商品、電力量計)。 水道メーターと電力量計の検定・再検定装置がない。 予算不充分 法定計量の普及・啓蒙活動予算不足 地方政府に分権前は再検定率は約 90%が、その後は 60%になった。 5 - 40 その他 • 都市に商品の再計測場所を作る計画がある。 • 東ジャワの 5 つの RVO は月 1 回の定期的会議がある。 • 電力量計と水道メーターはそれぞれ PLN と水供給公社によって検定される。 • 州政府は、はかりを含む計測器の再検定の責任がある。Bogor RVO は州政府の代理で それを行っている。検定ははかりを RVO に持参し検定する方法で行われるか、検定官 が検定機材を運び現場検定を実施する。 (3) ジョグジャカルタ RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 47 名 (MTC の研修終了技術者 31 名を含む。) 質量、体積、長さ、電気 はかり、分銅、水道メーター、燃料油メーター、タクシーメーター、 タンクローリー、電力量計および包装商品用 3.1 億 Rp(33,700 ドル)(人件費含まず。) 9.2 億 Rp(100,000 ドル)(全予算) MTC 研修終了者 31 名. 二つ検定事務所があったが、タンクローリーとタクシーメーター用の一つ が 2006 年 5 月 27 日の地震で破壊された。 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • 25 名のはかり製造業者が DOM に研修を要請。 • MTC の研修には時には自費が必要である。 要求設備:F1 級のマスコンパレーター、0ºC 以下の温度計用試験設備、 血圧計および標準タンク(タンクローリー、燃料油メーター)用試験設備 新しい設備用資本不足。 多くのはかりの検定が盛んに行われている。 DOM には最新技術の提供を期待する。 • この RVO は 4 州と1市をカバーしている。 • はかりの製造業者は 25 社である。 • ジョグジャカルタには 5 社のはかり修理業者がある。 • ジョグジャカルタ RVO では 4 州と1市で年に数回法定計量の市場監視を行っている。 (4) スラバヤ RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 37 名 (24 名の技術者を含む。) 質量、体積、長さ、電気 はかり、分銅、水道メーター、燃料油メーター、タクシーメーター、タン クローリー、および包装商品用 1.8 億 Rp(19,600 ドル) 大部分の職員が MTC の研修を終了した。 5 - 41 • • • その他 b) 問題点と考察 人材促進が将来必要になる(6 ヶ所の県 RVO も同じ) 。 MTC の代わりに独自の教育計画を持っている。 大容量で高級な計量計器用試験装置および検定車が必要。 経費に対しては問題ないが、新設備購入予算がない。 水道メーターの検定には検定官立会いの下で Barindo の校正設備を用いて いる。 スラバヤ RVO は県レベルの 6 ヶ所の RVO と連携している。 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • ISO17025 の認定及び KAN から校正ラボの認定を取得した。 スラバヤ政府による新法定計量ラボ建設中。 三ヶ所の地方検定事務所がある(タンクローリー、タクシーメータ ーおよび水道メーター用) 。 DOM へ計器を持っていく労力を排除するために、法定計量サービスを除いて、7 つの RVO への校正サービスを新しく計画中のラボで行う用意がある。 • 1994 度の調査によれば、東ジャワの 60%の計測器はスラバヤに集中している。 (5) マナド RVO a) 概要 24 名 (13 名の技術者を含む。) 質量、体積、長さ はかり、分銅、燃料油メーター、タクシーメーターおよびタンクローリー 用 1.68 億 Rp (18,300 ドル)(人件費を含まない。) 職員は MTC の研修を終了。 • トラックスケール用分銅および大容量用タンクローリー検定装置不 足 • 電力量計と水道メーターの検定は実施していない。 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • 年齢が若いため、退職職員の補充にはさほど問題はない。 • 教育費が不充分。 • DOM による支援の強化を要望。 • 8kL 以上のタンクローリー用校正設備がない。 • トラックスケールを検定する分銅がない。 州から 60%、中央政府から 20%、企業から 20%(Pertamina、PLN) 電力量計と水道メーターの再検定を実施していない。 • 法定計量法の準備が遅れている。 • 支配地域が広いため、充分にカバーできない。 • 法定計量に対する市民の認識不足。 LMS センターは RVO に計測標準と工業の計測器の校正サービスをするべきであると提 案した。 5 - 42 (6) マカッサル RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用の 主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • 24 名 (16 名の技術者を含む。) 質量、体積、長さ はかり、分銅、水道メーター、タクシーメーター、タンクローリーおよび包 装商品用 6.6 億 Rp (717,000 ドル) 職員は MTC の研修を終了。 東スラウェシすべてを管轄しなくてはならない(2007 年には分離される予 定)。 人材不足 教育の必要性が高い。 最新技術の欠乏 • 教育費が不充分。 • 設備購入費不足 • 燃料油メーターの精度が問題 (信頼性が製造業者によって異なる。) • 2007 年から水道メーターの再検定を実施する計画がある。 • KAN から校正ラボの認定を得る計画がある。 • 東スラウェシ州に RVO を創る計画がある。 マカッサルの LMS センターの役割は RVO での標準の校正、機材の供給、人材開発、 計量的な相談、啓蒙である。職員は 2010 年までに 4 人から 25 人に増やす予定である。 • 水道メーターは製造業者によって検定され、水供給公社によって購入され、RVO によ って再検定される。30 万個の水道メーターが設置され、一日 60 台が再検定される。 (7) a) デンパサール RVO 概要 職員数 検定・再検定 検定用主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 38 名 (17 名の 技術者を含む。) 質量、体積、長さ、電力量計、燃料油メーター、水道メーター、タクシーメ ーター、タンクローリー はかり、分銅、タクシーメーターおよびタンクローリー用 3.4 億 Rp (37,000 ドル) DOM に期待。 • 事務所は分権化後シンガラジャ からバリに移動した。 • 電気は LMK/PLN にトレーサブルである。 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 • 職員は バリの 254 ヶ所をサービスするためには不充分である。 • DOM が人材を支援することを期待している。 電気計器のような特に最新技術を DOM から支援してほしい。 DOM が国際標準に基づいた標準を供給するように望む。 予算に関する中央と州政府の比率を決定してほしい。 • 水道メーターと電力量計の校正装置を州政府に要請したが、拒否され た。 5 - 43 その他 • • • • • 水道メーターは水道メーター会社の装置を用いて検定している。 電力量計は PLN の装置を用いて検定している。 不満足な設備のため、ISO 9000 と ISO 17025 の認証が得られなかった。 地方分権化前には二つの RVO が存在したが、分権化後シンガラジャの RVO が閉鎖された(シンガラジャ RVO が再構築されるよう強く要求 したい)。 シンガラジャ RVO の創立は現デンパサール RVO の何人かの職員を分離し、約 10 人の 追加職員を雇用すれば可能であるという。 (8) メダン RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用の 主要設備 経費 教育訓練 その他 b) 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • 44 名 (17 名の技術者を含む ) 質量、分銅、体積、長さ、電力量計、水道メーター、タクシーメーター、タ ンクローリー はかり、分銅、体積、水道メーター、タクシーメーター、タンクローリー、 電力量計、参照流量計および湿度計用 6.5 億 Rp (71,000 ドル)(検定・再検定収入) 年間 5 名の職員を検定官にするように教育している。 各 RVO の体積標準の不確かさを比較するために、5000L の標準タンク搭載 の新しいトラックを所有している。 多くの検定官が近い将来退職する予定である。 職員の意識高揚のため毎日の作業計画を作成している。 温度計と圧力計の校正設備がない。 検定・再検定収入が年間 13 万~14 万台を検定するので非常に多い。 問題なし。しかし PLN が最近重油で 3,000 m3/h にて流量計を校正すること を要求してきた。 日本が検定・再検定を企業に移転したことに興味を示している。 年間約 13 万台の計測器が検定されている。タンクローリーの数が多く 700 台のトラッ クスケールが使用されている。 (9) パダン RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用主要設備 経費 教育訓練 その他 34 名 (18 名の技術者を含む。) 質量、体積、長さ、電力量計、タクシーメーター、タンクローリー はかり、分銅、タクシーメーター、タンクローリー、電力量計、および湿度 計用 2.2 億 Rp (23,900 ドル)(人件費含まず。) 大部分の職員が MTC の研修を終了した。 新しいラボ構築計画が州政府によって拒否された。 b) 問題点と考察 人材 5 年間で 4 人の検定官が退職の予定(平均年齢 45 歳) 5 - 44 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 教育の必要性が高い。 最新設備不足 検定・再検定からの収入が減ると、予算が自動的にカットされ、活動が弱く ならざるを得ない。 検定・再検定費用を払いたくないばかりか、装置を貸したくないので、水道 メーター会社の装置を用いて水道メーターを校正することが拒否された。 サービスカーが故障しており、別のものはやっと動く状態で検定・再検定の 数が減ってしまった。 • ほとんどの設備がオランダ時代から使われてきている。 • 西スマトラ州にはたくさんのパームオイル畑がある。計測器の数は増大しつつあるが、 職員不足や故障多発のサービスカーのため、RVO は限界状態にある。 (10) ペカンバル RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 その他 35 名(27 名の技術者を含む。) 質量、体積、長さ、電力量計、タクシーメーター、油流量、タンクローリ ー はかり、分銅、タクシーメーター、タンクローリー、電力量計、油流量お よび圧力計用 2.2 億 Rp(23,900 ドル)(検定・再検定費の収入) 多くの退職予定者と法定計量計器の増大により州政府に 20 名の技術者を 要請している。 新ラボを建築する計画あり(15m×10m×3 階建) 。 b) 問題点と考察 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • 多くの検定官が近い将来退職する予定である。 教育の必要性が高い。 水道メーター校正装置なし。 DOM は州政府と協力して検定費を統一しなくてはならない。 PLN が電力量計を検定したがらないので、DOM, PLN およびペカンバル RVO で協議し、検定・再検定を RVO で実施することになった。 水道供給会社は水道メーターを使用しないで、固定費用を課している。 電力量計用の校正装置は DOM にトレーサブルであり、DOM は LMK にトレーサブル である。 • 貧弱な経営により水自体の品質と水供給公社のサービスが悪くなってきている。 (11) バンジャルマシン RVO a) 概要 職員数 検定・再検定 検定用の主要設備 経費 教育訓練 21(11 名の技術者を含む。) 質量、体積、長さ、タンクローリー、電力量計、水道メーター、流量計 はかり、分銅、長さ計、水道メーター、タンクローリー、電力量計および 油流量計用 1.1 億 Rp (12,000 ドル) DOM に依存している。 5 - 45 その他 b) 借地である。 問題点と考察 2 年間に 4 人の検定官が退職の予定であり、人材が非常に欠けている。 高校出身者は 3 年間の教育が必要なので、技術系学士に対し 1 年間位の研 修を要請する。 今年は設備に対し州政府の支援が非常に高い。 設備が非常に高価なので、完全には RVO をフォローできない。 州政府は No. 2002-13 の法律で検定・再検定料を決定した。 借地なので、開発できない。 人材 教育 設備 予算 検定・再検定 その他 • 昨年以来タクシーメーターが使われている。タクシーの数はたった 30 台である。 • 州政府はバンジャルマシンから空港近くの Banjarbaru に RVO を移す計画を持っている。 2) 検定官のインタビュー 検定官に対する質問内容は次のような項目から構成されている。 (1) 名前と年齢 (2) 学歴 (3) RVO の勤続年数 (4) RVO に入社した理由と経歴 (5) 技術レベル (6) DOM または MTC での教育訓練の印象; (7) 設備、b) 教師、 c) 内容、 d) 期間、e) 日当などについて (8) 主要業務 (9) 業務満足度 (10) 技術レベルの業務への反映 (11) 仕事上の問題点 a) 予算、 b) 設備、 c) 人材、 d)技術、e) 作業マニュアル f) 条件 (報酬や地位)、 g) 通勤状況、 h) チームワークなど (12) 業務計画 (13) 同僚との関係 (14) 作業手順用の取扱説明書 (15) トレーサビリティに関する知識 (16) 設備管理の満足度 前述のように、全体で 21 名の検定官が質問に応対した。回答結果を表 5.5.2-1 に 示す。 表 5.5.2-1 調査回答一覧表 No. 1 質 問 回答検定官 分 類 数 20 男 5 - 46 2 最終学歴 3 RVO 勤続年数 4 最初の就職先 5 技術レベル 6 DOM または MTC における研修 に関する不満 7 主なる業務 8 業務満足度 9 仕事への技術レベ ルの反映度 10 仕事への不満 女 大学 働きながら大学 短期大学 (特殊学校) 高校 1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 30~31 MOT RVO DOM BPMB By general test Class 1 Class 2 Class 3 Class 3+ 設備 資料 教師 内容 期間 日当 その他 検定 再検定 指導 監視 秘書 管理 企画 その他 満足 どちらかと言えば満足 どちらかと言えば不満足 不満足 不明 はい 不充分 いいえ 不明 予算 設備機材 人材 技術 教育 作業マニュアル 待遇 (給与、地位) 情報伝達 チームワーク その他 5 - 47 1 3 11 3 4 1 3 3 4 8 1 1 7 8 1 1 4 0 2 3 16 1 9 5 6 3 10 3 11 13 3 3 2 3 1 1 12 3 1 4 1 14 4 2 1 12 19 11 7 8 3 9 1 2 2 11 12 業務計画 議論と研究を行っ ているか 13 作業手順書 14 トレーサビリティ 先 15 設備の維持管理 14 2 1 1 3 2 3 7 0 6 13 3 0 9 1 5 4 3 1 年次 月次 週間 無計画 不明 個別目標有り 定期的 不定期 なし OJT ベース DOM から RVO 独自 なし DOM LMK 充分 やや良い 不充分 不明 質問の結果を図 5.5.2-1 から図 5.5.2–8.に示す。 Numbers of inspectors: 21 Level Class 3+ Class 2 Class 3 DOM Organization Belonged first MOT Years worked For RVO RVO 11- 10 12-30 20 Final academic University background 0 BPMB University while working 20 30 図 5.5.2-1 40 50 60 College 70 80 2 から 5 までの質問結果 5 - 48 90 100% Others Daily Allowance Term Content Teacher Materials Facility 0 2 4 6 Numbers 8 10 12 図 5.5.2-2 DOM または MTC における研修に対する不満 Others Programming Control Secretariat Audit Consultation Reverification Verification 0 2 4 6 8 Numbers 10 12 14 図 5.5.2-3 職員の主要業務 Unknown Yes Rather Yes Somewhat No No 0 2 4 6 8 Numbers 図 5.5.2 4 業務の満足度 5 - 49 10 12 14 Unkonwn N Not enough Yes 0 5 10 15 Numbers 図 5.5.2-5 技術レベルの仕事への反映 Teamwork Condition (pay, position) Education Human resources Budget 0 5 10 Numbers 15 20 図 5.5.2-6 仕事への不満因子 Personal norm Unknown No schedule Per week Per month Per year 0 2 4 6 8 Numbers 図 5.5.2-7 業務計画 5 - 50 10 12 14 16 None By RVO From DOM 0 2 4 6 8 10 12 14 Numbers 図 5.5.2-8 作業手順書 5.5.3 組織とその業務 地方分権化法によって RVO は 1999 年から州政府の管理下に置かれた。RVO の業務は次 の通りである。 1) 法的に管理される計測器(UTTP)の検定と再検定 2) 法定計量に関する相談 3) 法的に管理される計測器の市場監視 4) 法定計量器の業務管理 5) 型式承認試験の実施 • これらの業務を実行するにあたり、一つの困難な点は法定計量に関する法律または規 則の違反を摘発する権利を持っていないことである。 • 5)項について、RVO は構造試験設備を持っていないので、簡単な計測器に関する初期 検定に類似した試験だけを実施している。 5.5.4 1) RVO のサービス 検定・再検定 a) 地方分権化後、再検定の比率は大きく減少した。 b) 水道メーターおよび電力量計の検定は、実際にはそれぞれ水道メーター会社および PLN で実施されている。 c) 輸入水道メーターの検定はジャカルタ RVO 以外では実施されていない。 d) 水道メーターの再検定は部分的には実施されているが、電力量計は実施されていな い。 e) 包装商品の検査はジャカルタ、ジョグジャカルタおよびスラバヤ以外では実施され ていない。 5 - 51 2) 立入検査 一般に RVO は立入検査を行っている。必要な検査機材は自動車で運ぶ。この機材は燃 料油メーターを検査する標準体積、はかりを検査する標準分銅などである。今回の調査 で、 多くの RVO は新車を買ったり、 あるいは古い車を修理したりする予算が不足のため、 充分なサービスカーを持っていない。サービスカーはこの地域の検査比率を維持するた めに、地方地域の検査や検定を実行するのに必需品である。 3) 普及 質問調査によると 19 の RVO(回答 RVO の約 60%)が法定計量の普及用のパンフレッ トを配布し、12 の RVO が展示やデモにより法定計量の普及に努めている。 4) トレーサビリティの維持 インタビューの結果 RVO の質量標準は DOM にトレーサブルであることを示している。 ある RVO では MTC に教習者が質量標準を携えて行き、年に一度校正している。他の RVO では 3 年ごとに校正している。その後 RVO は質量標準を用いて全ての質量作業標準 を順次校正する。体積の作業標準もまた秤量法に基づいて校正される。 長 さ 標準 はエ ンド ゲージ と ライ ンゲ ージ の二つ の 範疇 に分 かれ ている 。 前者 は KIM-LIPI によって供給され、一方後者は法定計量の分野で DOM により供給されている。 5.5.5 1) 地方分権下における法定計量の問題分析 地方分権化によって生じた不統一なサービス水準 先に議論した自治法に従って、たとえ基本的行政が国政府によって管理されても、法 律の施行に関する規定は地方政府に委ねられる。この状態は各州政府によって行われる 実際の規定や活動に幾つかの相違を生じている。このため消費者が統一的な法定計量の 行政サービスを受けられないという結果も生じそうである。実際に各州の検定料が異な っており、各州の予算方式もまた異なっている。 2) 地方行政における法定計量の位置付け さらに、2004 年に施行された地方自治法の改定では、行政サービスの実施の規制を撤 廃するため、会計性、外面性および効果性の観点から行政サービスを分類した。商業活 動に属する法定計量は、任意サービスに分類されており、地方政府が法定計量を実施す るための組織を作るかどうか決定できる。このため法定計量の位置付けが地方行政にお いて曖昧になっている。 設備の開発と購買は州政府に任されている。 5 - 52 3) 法定計量規制 地方自治法による地方分権化後、もと国家公務員であった RVO の全職員は州政府に転 籍した。州政府公務員は法定計量法の違反を摘発する権限を持っていないため、法定計 量の監督行政上で重大な問題を生じている。 4) DOM の活動拡大 RVO が州政府に移管したために、DOM は RVO を管理する権限を持っていない。 原則として、DOM の活動は国家行政に対するものに規制される。しかし DOM はこの 状況を否定的に取ってはならず、むしろ自らの活動と行政を真の国家水準の行政に発展 させるチャンスとして見るべきである。例えば計測技術の研究開発、法定計量の国際情 勢、型式承認、トレーサビリティの開発、その地方工業への拡張、それの新量目への拡 張などである。国家政府はこれらの活動を支援しなくてはならない。 5.5.6 RVO への問題点と提言 以下は Q & A および RVO でのインタビュー実施の要約である。 1) 問題点 (1) 人材 a) 検定官の平均年齢が一般的に上昇し、退職した職員の補充も困難である。 b) 新技術への対応が難しい。 (2) 教育 a) MTC で開催される研修課程に職員が参加させることは、充分な予算を持たない州政 府にとって難しい。 b) 新技術に対する研修が充分でない。 (3) 設備 a) 多くの RVO で、設備機材が不充分で古くなっている。 b) サービスカーが多くの RVO で整備されていない。 c) 一般的に標準室の空調が良くない。 (4) 予算 a) 一般的に言って、法定計量の通常の活動用の予算は充分だが、新しい装置、教育、 普及、啓蒙などの資金がほとんどない。 b) 検定・再検定からの収入目標が RVO に割り当てられている。ある州政府では検定 料を収入源と捕らえている。 5 - 53 (5) その他 a) 地方政府による法定計量に関する規則が制定されていない。 b) 消費者が法定計量に関して充分な関心がない。 c) 教育、普及、啓蒙が充分でない。 d) RVO は自分たちで得た統計を DOM に報告することを義務づけされていないので、 法定計量に関する統計資料が必ずしも得られない。 e) 2) 多くの RVO が ISO17025 の認定を要請している。 提案 (1) 中央政府(DOM)は予算が制限されているため必要な設備を買うことが出来ない RVO に、設備を供給するか貸与することを考慮すべきである。 (2) 州政府は前年度の検定・再検定収入の結果に基づいて RVO に予算を割当てるべきで はない。もしその収入が減ると、RVO の活動が減少してしまう傾向になる。 (3) DOM は職員を補充することで RVO を支援すべきである。 (4) MTC は研修計画を最新でより効果的なものに改善すべきである。研修コースも短縮 すべきである。 5.6 人材育成 (HRD) 5.6.1 HRD の必要性 RVO のスタッフは、消費者保護のために、国家の求める最小限の計量技能を持たなけれ ばならない。そして将来を見越した挑戦と管理改善の能力を持つことが望ましい。現在、 法定計量の権限は、地方政府に委譲されている。もしそのような技能をもつ専門スタッフ が各州に育成されれば、彼らは、市場の計量水準が悪化し混乱することを防ぐことが出来 る。それにより法定計量を全国的に普及させる道筋になるであろう。同様に、彼らは、将 来の法定計量システムの推進を行う中心的な役割を果たすことが出来る。 RVO のスタッフ数は、地方分権化後、州によっては減員されている。HRD の緊急課題は、 人員の補充のためだけでなく、現状に即した研修コースへの改善を行うことである。HRD の強化はスタッフに対する奨励策にもなり重要である。 5.6.2 MTC の概要 計量技術者育成の長い歴史をもつ国は、 ASEAN 諸国の中では、インドネシアだけである。 研修施設は 1923 年に設立された。そして計量技術者の育成を効果的に行うため、法定計量 法が制定された 1981 年に MTC が創立された。MTC は、インドネシアにおける唯一の計量 技術の研修センターである。MTC の主な役割は、RVO で働く検定官の養成である。MTC は 2004 年から DOM から分離独立し、現在の地所に移転した。MTC の敷地面積は、現在 10,245m2である。現在の事務所棟、教室棟、多目的ホール、宿泊施設、大講堂は、2002~ 2003 年に建てられた(全床面積は 2,718m2) 。今後さらに拡張計画があり、隣接地(6,661 m2)を購入する予定である。 5 - 54 5.6.3 MTC の組織と職務 MTC の組織は、トレーニング計画と調整のセクションを含む 4 つのセクションで構成さ れている。MTC のリーダーは、 「M-DAG/DER/No.34/2005 の大臣令」で指定された 4 人。講 師は、常勤 4 人、DOM からの非常勤 8 人の合計 12 人である。 2005 年 12 月に発令された大臣令により MTC の機能、職責等が定められた。 MTC により提供される研修の主な目的は次の通りである。 1) 計量器(UTTP)の検定および再検定技術の取得 2) 高精度の標準器の適切な取扱い技術の取得 3) 校正ラボの管理技術の取得 4) 包装商品の検査技術の取得(BDKT) 5.6.4 研修プログラム JICA 調査団は、MTC が実施した 2005 年のカリキュラム記録と 2006 年の計画を入手した。 それによると、現在のカリキュラムは、2000 年 11 月発令の大臣令 482「検定官の教育・研 修のためのガイドライン」に基づいて設定されている(このガイドラインの詳細は、別添 資料 5.6.4 を参照) 。しかし、このガイドラインは、中央集権時代の検定官の育成法であり、 現在の地方分権の影響を考慮したものではない。 ガイドラインの内容は (1) 目的、 (2) 研修生の受講資格、 (3) 講師と教科書、(4) 検定 官の 5 階級制度、(5) MOT と DOM の関連(DOM は、地方検定官の職務、検定能力の管理、 検査内容を決定する機関としている)、(6) 研修コースと研修時間(コース当り 1,200-1,820 時間) 、 (7) 研修生の評価方法、である。 上記大臣令は「高校、2 年制短期大学の卒業者が検定官になるためには、最小限 4 年以上の 経験が必要」と定めている。一方、4 年制の大学卒業者は、 「法定計量検定官(1,260 時間) 」 の一コースを受講すれば、検定官の資格を取ることができる(表 5.6.4-1 参照) 。 表 5.6.4-1 研修コースの種類と研修時間 【course】 Position Classification Total training hours Inspector of Legal Metrology (first level) 【A】 1820 hours Inspector of Legal Metrology (second level) 【B】 1540 hours Inspector of Legal Metrology 【C】 1260 hours Inspector equivalent for Metrological Controller 【D】 1200 hours Inspector of Legal Metrology equivalent for Re-Verification 【E】 1200 hours 検定官の資格を取る手順は、学歴により異なる(図 5.6.4-1 参照) 。高校または 2 年制短期 大学の卒業者は、先ず「法定計量検定官入門コース」 (図中 A コースで示している)を受講 しなければならない。このコースの研修内容は、数学・物理・統計学、計量学の基礎であ 5 - 55 る。このコース受講後、研修生は RVO で 1 年間の OJT 教育を受けなければならない。それ から「第 2 レベル」 (1 年間)の研修を MTC で受講することが出来る(図中の B コース) 。 さらにこの研修生は、RVO に戻り業務に従事しなければならない。最終ステップとして、 「法定計量検定官 コース」 (図中 C コース)を受講できる。一方、4 年制大学以上の学歴を 持つものは、最初から「法定計量検定官 コース」を受講できる。 5.6.5 研修の実施状況 当初 MTC の研修プログラムでは、年間 100 人の検定官を育成する計画だった(25 人/コ ース×年 4 回) 。しかし 2005 年の場合は 2 コース 19 人に過ぎなかった。表 5.6.5-1 に、最近 の受講者数を示す。 MTC は、各 RVO に招聘状を出し RVO の推薦者の中から研修生を選ぶ(この際入所試験 は行わない)。研修費用、教科書代、宿泊費は無料だが、食費、雑費などの費用は RVO が 負担(事実上州政府の予算を使う)するか、まれには研修生が自己負担するケースがある。 一方、MOT は、DOM のスタッフや民間企業向けに「短期研修」を提供している。 5 - 56 5 – 57 selection Staff of ministry of trade and industry Course for Verification monitoring inspector selection Verification Monitoring inspector Working > 1 year Course for reverification inspector selection 3 years technology university or 4 years university (physics, machine, civil, industry, mathematics electronic) selection selection Verification Monitoring Inspector General high school (physics, biology) or Technology school (machine and electric) Staff of ministry of trade and industry working > 1 year 図 5.6.4-1 検定官の資格を取るための手順 【B】 Education and training of functional Inspector advance level selection 【E】 Education and training of equivalency functional Inspector for Re-verification Inspector 【C】 Education and training of functional Inspector selection Reverification inspector Could do re/verification of UTTP in some exception (electronic balance, vertical measurement, force and preasure etc) selection 【A】 Education and training of functional Inspector basic level selection 【D】 Education and training of equivalency functional Inspector for Verification monitoring Inspector selection Staff of ministry of trade and industry Base on Ministry of Industry and Trade decree No. 482/MPP/kep/1/2000 General high school (natural, physics, biology) or Technology school (machine and electric) Base on Ministry decree No. 690/KP/XII/79 Could do re/verification of all UTTP prepackaged goods etc have duty to manage IV level of standard measurement and working standard for calibration laboratory Reverification inspector Course for Metrological expert working > 1 year 【C】 Education and training of functional Inspector selection Working > 1 year selection Functional Inspector Functional Inspector Inspector 表 5.6.5-1 研修コースの受講者数 № Training Course 2000 2001 2002 2003 2004 2005 Total A. Functional Course 1 Re-verification inspector 31 2 Inspector equivalent for Metrological Controller 3 Inspector of Legal Metrology 4 Inspector of Legal Metrology equivalent for Re-Verification 5 Inspector of Legal Metrology (Second Level) 31 32 31 17 80 28 Total 28 30 59 62 61 92 91 30 42 19 91 47 42 19 321 B. Technical Training Course 1 Administration of measurement standard and laboratory 60 22 2 Application of information technology related to measurement 29 29 3 Inspection of after-package 30 30 4 Execution of official duty 22 22 5 Inspection and application of large scale balance 6 Inspection and application of telephone pulse meter 7 8 23 30 53 30 90 150 Inspection and application of Wh-meter 30 30 Inspection and application of water meter 30 30 30 Total 30 0 60 81 75 180 426 Grand Total 89 62 152 128 117 199 747 5.6.6 HRD システム作りの前提條件とコンセプト 1) 研修コース 下記の研修コースが必要と思われる。 2) 82 • RVO の検定官の育成 • 計量標準(DOM での校正を含む) • 短期研修:新技術、電気/電子技術、保守技術など • 民間企業および民間人のための研修 検定官育成の研修コースのコンセプト 検定官研修のコンセプトを列記する。 • 研修生数は、需要分析の結果を踏まえ、年間 200 人とする。 • 研修期間は、現状より出来るだけ短縮させるものとする。 • 研修コース (1) 全受講生を対象にした基礎コース。消費者保護の教育も含める。 (2) 検定および再検定コース (3) 計量標準 (4) 法定計量の監視とコントロール 5 - 58 5.7 計量技術 5.7.1 インドネシアの計量技術の概要 インドネシアの工業標準は BSN (Badan Standardisasi Nasional; 国家標準化機構)の管理の 下に発展してきた。この前身の機構である DSN は 1997 年に再組織されたものである。 インドネシアは4つの計量研究所を持っており KIM-LIPI、 DOM、 KIMIA-LIPI 及び BATAN である。 KIM-LIPI は質量を除いた物理計測標準の開発と維持管理の責任があるが、一方 DOM は 質量標準と法定計量に責任がある。 KIMIA-LIPI と BATAN はそれぞれ参照物質を含む化学 用標準とイオン化放射標準に責任を持っている。 現在 KIM-LIPI だけがアシア太平洋計量計画(APMP)のインドネシアのメンバーとして 登録されているが、その会員は RMO(地域計量組織)の基本比較に参加する必要がある。 DOM に保管されている質量標準は国際度量衡局(BIPM)でキログラム国際原器と定期 的に比較されている。他の標準は外国の研究所、PTB(ドイツ) 、NML(オーストラリア)、 及び CERLAB(フランス)によって校正されている。 これは KIM-LIPI だけがインドネシア国家研究所として APMP に指名されており、その他 の研究所は国際比較に参加できないという事実によるものである。その代わりにその他の 研究所は自分達の標準と他国の標準を相互比較している。 技術的な観点から、DOM と KIM-LIPI の計量技術は工業および社会活動からの要求に対 して充分でなく、また器具類においても首尾一貫していない。従って、両研究所は計量技 術に関する研究を急速に進展させるため、統合についてのマスタープランを作成する必要 がある。また効率的な研究および矛盾のない計量トレーサビリティに関する体系を構築す るべきである。 5.7.2 DOM DOM の現状を以下に詳述する。 1) 校正用技術マニュアル DOM は 1998 年に認定された時に、品質システム、作業標準および校正手順用の技術 マニュアルを整えた。法定計量における型式承認試験および検定の技術マニュアルとし て、SSTK (特別技術標準)が開発され、RVO に配布されている。 これまで、次のような SSTK が DOM によって更新され、発行されている。 5 - 59 (1) SSTK AWI (自動はかり) (2) SSTK 固定貯蔵タンク (3) SSTK 力および圧力 (4) SSTK ガスメーター (5) SSTK 工業用ガスメーター (6) SSTK 長さ (7) SSTK LPG 充填機 (8) SSTK 電力量計 (9) SSTK タクシーメーター (10) SSTK タンクローリー (11) SSTK 湿度計 (12) SSTK NAWI (非自動はかり) (13) SSTK タンク車 (14) SSTK 水道メーター 分銅および秤用 SSTK は今作成中である。 2) 校正技術 組織面から見ると、DOM には庶務部門および人事部門の他に 2 部門がある(即ち管理 部門と技術部門)。技術部門は次の 3 部門からなる。 • 質量、電気および圧力計測技術に関する部門 • 流れ、長さおよび体積計測技術 • LMS センター 前者 2 部門はバンドンの DOM に所在するが、最後の部門の予備事務所がメダンとマカ ッサルに所在している. DOM の資産一覧表によると、DOM には 14 の技術グループがあり、各グループが所持 している計器数を表 5.7.2-1 に示す。しかし検定と校正サービスは計測器校正部門によっ て実施され、各グループは 3 人で構成されている。一つのグループは 2 週間ごとに作業 すべき研究室と計器の種類を変える。 表 5.7.2-1 技術グループと計器 No. 技術グループ 計器数 1 ガスメーター 11 (4) 2 比較器およびレベルゲージ 7 (1) 3 力および圧力 47 (3) 4 温度 40 (6) 5 密度および粘度 145 5 - 60 6 梱包 39 7 質量 73 (20) 8 水道メーター 12 9 体積 50 (1) 10 長さ 38 11 はかり 7 12 電気 28 (3) 13 電気メーター 20 (1) 14 燃料油メーター 6 注:( )内の数値は故障中のもの (1) ガスメーター研究室 A. 大流量用ガスメーター設備 ガスメーターの校正装置は 1978 年に建設された。これはオランダの Gasunie から導入 されたか、 これを参考にして造られたと思われる。 この校正装置は 1 台のベルプルーバ、 2 台の湿式ガスメーター及び 7 台のマスターメーター(CVM)から成り、その構成は Gasunie の装置と類似している。 a) 主要計器の仕様 この装置に使われている主要な計測器の仕様を表 5.7.2-2 に示す。 表 5.7.2-2 ガス流量計校正室の計測器 No. 1 2 3 計測器 b) 商標 George Wilson’s ベルプルーバ Graven Hague 数量 1 湿式メーター (1) 2,000L/h Dordrecht 1 湿式メーター (2) 16,000L/h Dordrecht 1 マスターメーター (MM1) 200m3/h IGA 3 3 マスターメーター (MM2) 400m /h IGA 3 マスターメーター (MM3) 3 IGA 2 IGA 1 マスターメーター (MM4) 4 容量 1,200m /h 3 4,000 m /h ブロワー (1) 小 Assel Bergs & Nachnis 1 ブロワー (2) 大 Assel Bergs & Nachnis 1 トレーサビリティ トレーサビリティはつぎのようになる。 ステップ 1: 1 台のマスターメーター(MM1)がオランダの NMi に送られ校正され る。 ステップ 2: 2 台のマスターメーター(MM1)が上記マスターメーター返却後これ 5 - 61 を用いて校正される。 ステップ 3: 各々の MM2 が 2 台の MM1 を用いて校正される。 ステップ 4: 各々の MM3 が 3 台の MM2 を用いて校正される。 ステップ 5: MM4 が 2 台の MM3、3 台の MM2 及び 2 台の MM1 を用いて校正され る。 ステップ 6: 写真 1 に示すように、現在、ガス流量校正スタンドには 2 台の MM1、 3 台の MM2 及び 2 台の MM3 が設置されている。 • 流量範囲は大気圧下で 30 ~ 4,000m3/ h である。 • 被試験流量計が設置される最大口径は 300mm (12”)である。 • この装置はオランダの NMi で完成された積重ね方式を用いて構成されている。 • しかしながら、積重ね校正に必要な電気カウンターが現在故障中なので、1978 年に取られたマスターメーターの器差を使用せざるを得ない状況である。 B. 小流量用ガスメーター設備 面 積 式 流 量 計 と 傾 斜 マ ノ メ ー タ ー を 組 み 合 わ せ た 二 つ の 装 置 ( Meterfabriek Dordrecht))あり、主として家庭用ガスメーターの校正に使用されている。 • 一つの装置で複数台の家庭用ガスメーター“が同時に校正される。 • 流量範囲は 300~2000L/min である。 しかしながら、これらは古すぎて校正には使用できず、しかも重大な漏洩が生じ ている。従って家庭用ガスメーターを校正するときには、ベルプルーバが暫定的に 使われている。 (2) 比較器とレベルゲージ研究室 数種類の校正計器が設置されており、例えば 0.01%の不確かさの 20m までの巻尺用 の比較器およびミツトヨ製の長さ計や桜のレベルゲージが見られた。 (3) 力及び圧力研究室 DOM の力及び圧力に関する資産表によれば、18 の圧力計(ほとんど長野製)、真空 ゲージ、6つの試験リング、5 個の錘テスター、2 個の精密圧力校正器、3 個の硬さ計 及び力比較器などがある。 マレーシアの SIRIM で校正されている重錘式圧力計は 2000 気圧まで 0.025% F.S.の 精度で使用されている。 DOM と KIM-LIPI のどちらの研究所が圧力の国家標準とそのトレーサビリティに責 任があるのかを明確にするべきである。KIM-LIPI は圧力の国家標準を持っているが、 DOM によって保持されている圧力標準は SIRIM で校正されている。 (4) 温度研究室 ここには、21 個の精密ガラス温度計、6 個の温度計、2 個のデジタル温度計、温度 校正器、熱電対校正器、乾湿計、及び熱式湿度計、3 個の水槽などがある。温度計は KIM-LIPI の標準にトレーサブルである。 5 - 62 (5) 密度及び粘度研究室 31 個の比重計(Frans Widder 製)、49 個の毛細管粘度計(Czanon Fenske 製)、多くのガ ラス容器及び多くの標準液体などがこの研究室にはある。 (6) 梱包研究室 この研究室には、梱包製品を検査するための多くの計器即ち電子天秤、薬用天秤、 おもり、温度計、比重計、マイクロスコープ及びガラス容器などを保持しているよう である。 (7) 質量研究室 • この研究室は 1975~1978 に設立された。 • DOM は 2005 年 8 月 30 日に BIPM によって校正されたインドネシアキログラム原 器(K-46)および副国家標準として K-4、T-4 の質量標準を有している。 DOM はまた 3 個の E1 クラスの分銅(Mettler Toledo 製) 、7 個の E2 クラスの分銅 (Mettler Toledo および Vial Metrologie 製)及び多数の下級クラス(F1, F2, M1 およ び M2)の分銅を備えている。最近 E0(1)および E0(2)が購入された。 実際には前述したように、用語 E0 は OIML(OIML R 111)によって推奨される用語 体系との混乱を避けるために使用するべきではない。さらに、分銅「E0 級」という 国際定義はないのである。 3 台の Mettler 製のコンパレータ及び Sartorius 製のコンパレータも使用されている。 • • • • • • • 特に 1 台のコンパレータ(Mettler AX64004)は最近装備したもので、世界に 4 台しか ないうちの 1 台であるというもので、50kg までの宣伝用に使用される計画である。 計測の不確かさがコンピュータを用いて第 2 標準の校正などについて評価されてい る。繰返し性に対する人的影響は 0.05mg/kg と見積もられている。これを 0.02~0.03 を目標として少なくするべきであると言っている。 校正の範囲は 1mg~50kg である。 校正は型式承認、検定、再検定および依頼試験に対して実施されている。 DOM は質量標準とトレーサビリティに関する国家計量局としてまだ指定されてい ないので、国際比較に参加していない。 以下のインドネシアの計量器が外国機関によって校正されている。 a) 質量のインドネシア国家標準 K46:BIPM b) おもり:SIRIM c) インドネシア国家標準ラインゲージ(X-27):オーストラリア NML 質量校正に対して DOM に近い高架道路からの振動影響がありそうだが、まだ確認 されていない。 質量に関するインドネシアのトレーサビリティを図 5.7,2-1 に示す。 ステップ 1: DOM は第 2 標準(副国家標準)K4, T4, E0(1) および E0(2)をマスコン パレータ AT-1006 および KA30 を用いて第 1 標準により校正する。 ステップ 2: E1 級作業標準がコンパレータ AT-1006 を用いて第 2 標準により校正 される。 5 - 63 ステップ 3: RVO に対する E2 級の移転標準がコンパレータ MC210P を用い校正さ れる。 調査団は分銅のクラス名に関し他の用語を推奨する。 幾つかの RVO は E2 級の分銅を持っていない。コンパレータの仕様を表 5.7.2-3 に示 す。 表 5.7.2-3 コンパレータの仕様 型番号 容量 不確かさ 型番号 容量 不確かさ AT-1006 1000g 0.00001g AX64004 2~50kg 0.1mg KA30 30kg 0.001g 0~60g 0.01mg AT-1005 1000g 0.0001g 60~100g 0.02mg 100g~2kg 0.05mg MC210P D DOM K-46 第 1 標準 マスコンパレータ AT-1006 第 2 標準 K-4 T-1 E0(1) & E0(2) マスコンパレータ AT-1006 E1 マスコンパレータ RV E2 AX-1005 & F1 F2 マスコンパレータ MC210P MMユーザー ユーザー 図 5.7.2-1 インドネシアの質量トレーサビリティ (8) 水道メーター研究室 • 試験装置は 13 ~ 40mm 径までの水道メーターを取付けられる 2 ラインから構成され ている。水道メーターは直列に設置され体積標準タンクによって校正される。 • 標準タンクは 2,000L、 500L、 200L、 50L、 20L、10L 及び 5L の 7 種類が用意さ れている。また小流量用として 2000mL、100mL、1mL のガラス容器がある。 • 別の部屋には、大口径ライン(4 インチ)と Avery Hardoll 製 1136L/min の容量のマ スターメーターが大流量校正用として設備されている。 5 - 64 金門製の容量 500L/h の可搬式マスターメーターは小流量用にも使用可能である。 尚ラインには圧力安定装置と濾過器も設置されている。 (9) 体積研究室 体積ガラス(フラスコ、ビーカ、ビューレット、目盛付ピペット等)は、充填装置 を用いて純水を満たした後、電子天秤で校正される。三洋製のミニポンプが充填装置 に使用されている。DOM には密度計がないので、純水は密度証明書付で買う。その他 多数のガラス製体積標準がある。調査団が訪問時には空調が故障していた。 (10) 長さ研究室 DOM はプラチナ・イリジウム製でオーストラリア NMI にトレーサブルなインドネ シア原器(X-27)を所持している。ミツトヨ製デジタル・マイクロメーターやブロックゲ ージ、光干渉板などの多数の長さ計測器が使われている。 • KIM-LIPI と DOM はそれぞれエンドゲージとラインゲージ用の標準を供給している。 インドネシアの両標準はオーストラリア NMI によって校正されている。 (11) 天秤室 この部屋は古く歴史的な天秤や分銅が展示されている。 (12) 電気研究室 2 台の Schlumberger 製電気式マルチメーター(SM7050)が型式承認用の電力量計を試 験するために参照標準計器として使用されている。使用頻度は約 60 回/年というこ とである。これらは 2 年毎に校正のためフランスに戻される。その他の主要な電気 計測器を表 5.7.2-4 に示す。 表 5.7.2-4 電気研究室に保持される電気計器 No. 計器 ブランド名/型式 数量 1 参照標準メーター Landis & Gyr/TVH2.32 1 2 万能メーター試験ユニット Landis & Gyr 1 3 可搬式メーター試験ユニット Landis & Gyr 1 4 電流計 Siemens/ 500025 1 5 電圧計 Siemens /500029 1 6 直流電源 Metrix/ AX-722 1 7 参照標準メーター Schlumberger/ SM7050 2 8 デジタルマルチメーター Fluke /45 1 9 絶縁抵抗計 Laxtronics/DX-11-G, 10-G 2 10 十進抵抗発生器 Yokogawa/27930 etc. 2 11 ファンクション発生器 HAMEG/HM8131-2 1 5 - 65 12 照度計 Foot-Cmdle/DX-200 1 13 光度計 Lutron/UVC-254, UVA-365 2 14 騒音計 GRAS/42 RA 1 15 ジェネレータ GRAS/14 AA 1 16 mA 電圧校正器 Fluke/715 1 17 複合機能校正器 Scandura/B-20/DT 1 18 オシロスコープ Metric/OX.735 1 19 信号試験セット Wiltron/9361B 1 (13) 電気メーター研究室 この部屋には外部で電気メーターを校正するために、多数の可搬式電気計測器が準 備れている。例えば W-H メーター、ワットメーター、絶縁テスター、電流計など である。 (14) 燃料油メーター研究室 灯油を用いたガソリン計量機用及び工業用油流量計用の二つの校正装置がある。 前者の装置では、ガソリン計量器から吐出された体積が標準タンク(50L, 100L ま たは 200L)で校正される。後者は二つの標準タンク(5000L 及び 1000L)と古い 2 台 のマスターメーターから成っている。配管口径は 6 インチと 3 インチである。最大 流量は 230m3/h 位である。主要な機器と計測器は表 5.7.2-5 に示す。 表 5.7.2-5 燃料油メーター研究室の機器と計測器類 No. 機器、計測器 容量 商標/型式 数量 1 マスターメーター1 3,750L/min Smith/LG6.51 1 2 マスターメーター2 1,136L/min Avery Hardoll/BM252 2 55kW MMA/R250M-2 1 18.5kW MMA/R160L-2 1 5.5kW NUG/DP1112 M-4 1 37kW Guangzhou/C480M-2 1 MAA/R112M-2 2 Mestrole/JP-330 1 3 遠心型ポンプ 4kW 4 5 6 パイププルーバ 標準タンク 貯油タンク 5000L 1 1000L 1 500L 1 200L 1 100L 1 50L 1 20L 1 8000L 1 2000L 2 5 - 66 • これらの 5000L の標準タンクは次のようにしてインドネシアのキログラム原器 (K-46)にトレーサブルである。 5000L 体積の被校正標準タンクは予め秤量法で校正された 200L 標準タンクを用い て水が充満される。秤量法に用いられる分銅は質量国家標準、即ち K-46 から始ま る積重ね方式によって校正される。 • 結果の判定は不確かさによってではなく、表 5.7.2-6 に示す MPE(最大許容誤差) によって行われている。 表 5.7.2-6 標準体積タンクに対する MPE 標準体積タンク MPE 5000L 2.5L 1000L 0.5L 100L 0.1L • パイププルーバは予備部品の不足のために使われていない。 • DOM は流量計の校正に対し重油、ガソリン、LPG のような流体の粘度影響に関す る補正をしていない。 • マスターメーターは非常に古くて保守ができないか、あるいはスペアパーツの補充 が出来ないように思える。 3) 型式承認試験技術 基本的に、型式承認試験は幾つかの機械的、電気的および電子的試験からなる構造物 試験である。この試験はサージ試験、EMC 試験、耐久度試験、振動試験などが含まれる。 しかしながら、DOM はこれら試験用設備が無く、型式試験用の校正とほとんど同じ試験 のみを実施している。 したがって、幾つかの工場は顧客用計器を買うときに、自ら構造試験をしなくてはな らない。例えばあるバンドンの水道供給公社は「水道メーターは 1 ヶ月運転した後によ く故障してしまう。使用により軸が磨耗を生じてしまう。たとえ水道メーターが校正済 みであっても、自ら校正し直さなくてはならない。輸入水道メーターは信頼できない。 RVO が法的に特定された試験を実施することを要望する。」と述べている。 型式試験は DOM の最も重要な任務の一つであり、製品信頼性の思想によって管理され るものである。商売に対して信頼のある計測器を消費者に提供し、さらに計測器工業界 を発展させることが必要である。 DOM は型式承認試験に対し、OIML を参照した試験手順を開発し、これに必要な設備 を設置しなくてはならない。次の計測器は消費者に最も影響の大きい計器なので、型式 承認試験を受けるべきものである。 • 質量とはかり 5 - 67 • タクシーメーター • 電力量計 • 水道メーター • 燃料油メーター • ガスメーター 4) 検定・再検定技術 検定官は幾つかのグループに分かれている。各グループは 3 人からなり、2 週間毎に研 究所(燃料油メーター、水道メーター、ガスメーター及び質量と長さ)を変わる。この システムは検定官が各計測器の校正を通して全般的な知識を得るためには効果的にちが いない。しかし、詳細な技術を深く理解し、各計器の特質を得ることは困難である。 正確な体積計測に重要なボイルシャールの法則による温度補正が、ガスメーターの校 正シートで計算されていないことが発見されたのもその一例である。 5) 設備機材の保守・管理 DOM の設備管理は国家計量局としては充分でない。必要な予算を取り、設備を良い状 態に保つことが非常に重要である。現在設備は全く古くて、良く保守管理されているよ うに見えない。 以下は調査団が流量計研究室で見つけた幾つかの事例である。 • ガスメーター研究室のトレーサビリティに必要であるのに、電気カウンターが修理さ れていない。 • 家庭用ガスメーター校正用装置が二つとも漏れのため、使用できない。 • 壊れたパイププルーバが燃料油試験室に放置されている。 6) RVO に対する技術指導 • 4.1.1 の 9 項によれば、RVO の 76%が DOM から人材開発に関し技術的支援を受けてい る。33 のうち 19 の RVO(58%)が主なる支援は熟練と技術指導に関する研修である と回答している。 • RVO の 91%が DOM から指導および/または技術支援を受けているかという質問に対し 「はい」と回答している。検定官の 62%が技術マニュアルとして SSTK を用いている と言っている。 上記結果は DOM の RVO に対する技術指導はかなり良いことを示している。 5.7.3 地方検定所(RVO) 1) マニュアルの整備状況 • 82%の RVO が検定用のマニアルを保持し、6%の RVO が部分的に持っている(4.1.1 の 8 項参照)。 • SSTK は RVO にとって非常に重要であり、一般に事務所の所長か課長が保管してい 5 - 68 る。 検定官は簡単にそれ見る機会がないが、図 5.7.3-1 (タンクローリ用) や 図 5.7.3-2 (流 量計用)に示す校正シートを用いている。 • 検定官のインタビューの結果、電気計器と最新技術用のマニュアルが仕事上充分で ないようである。 2) 検定・再検定技術 • わずか 9 %の RVO が職員の技術に満足しており、64%が部分的に満足している(4.1.2 の Q17 参照)。RVO は最新技術、電気、電子及び保守管理に関する基礎技術を必要と している。 • 表 5.5.2-1(No.5 及び 8)の 21 名の検定官に対するインタビューの結果によると、自 分たちの技術レベルは高く、各レベルにおいて仕事への反映も良いと言うことがで きる。しかしながら、ほとんどの検定官が最新技術と電気電子技術に関する教育の 重要性を認識している。 3) 設備機材の保守管理 • 設備機材の保守管理は RVO によってかなり異なる。ジャカルタの RVO の設備機材 は群を抜いている。スラバヤ とメダンの RVO も良く保守管理されている。他の RVO は良くない。これは予算の差異によるものである。 • 一般的に RVO の試験室の空調は、質量標準に要求される精密計測を得るためには貧 弱である。 • RVO によって管理されている質量標準は一般に 5 年毎に DOM で校正されている。 • RVO の検定官のインタビューによると、施設の保守管理の重要性を理解していない。 あるいは重要性を理解しているにせよ、予算不足が保守管理を行う足かせとなって いる。 5.7.4 民間校正ラボ 1) 民間校正ラボの概要 JICA 調査団が訪問した民間および公社校正ラボの概要を以下に記述する。 (1) BARINDO (スラバヤ) 水道メーターと水道弁が自前の機械を用いて独自に基本部品から製造されており、 幾つかの機械は自らの設計によって製造されている。 水道メーターに関する ISO4064 に基づく SNI(インドネシア国家規格)が水道メータ ーを適切に試験し使用するために決められている。SNI を発行する目的の一つは、アジ ア諸国から来る大部分の劣悪なメーターを追放することにある。SNI によれば、全ての 生産および輸入メーターは市場に出回る前に検定を受けなくてはならない。SNI はまた メーターの故障を生じるような不法な変化を防ぐように水道メーターの設計を明細化 5 - 69 している。SNI は 2005 年 11 月に WTO に申請し、2006 年に承認される予定である。 水道メーターは、年に 150,000 から 200,000 台製造されが、その工場で全ての部品が 鋳造、モールド、機械加工、圧延、組立てられ、そして校正される。技術者は鋳造、 加工機械を設計するためにコンピュータを用い、熟練している。2 列の校正装置には全 体で 120 台の水道メーターが装着でき、一度に校正できる。彼ら自身で開発した流量 コンピュータは電磁流量計を用いて自動的に流量が設定され、校正データが出力され る。 (2) PDAM (飲料水供給公社)、バンジャルマシン 二つの水道メーター用校正装置があり一つは PDAM のもので、もう一つは水道会社 組合に属している。バンジャルマシンでは水は 85,000 世帯、個人住宅の 83%に送られ ている。この州では高い比率である。水道メーターは 5 年ごとに再検定しなくてはな らないので、組合によって集められ、これらの装置を用いて校正される。 大体 1 ヶ月に 1,300 から 1,600 台が校正される。不合格台数は 200 から 300 台であり、 これらは通常メーカーに売られる。 呼称口径 20, 25 および 50 mm のメーターが 10 m3/h の流量まで校正される。水道供給能力は現在 3780 m3/h であるが、これを 1800 m3/h 増 やす計画である。 (3) PDAM (バンドン) バンドンの PDAM は Bandung の水道供給公社である。ここでは 140,000 台の水道メ ーターが個人住宅に設置されており、DOM 発行の SSTK に従って年に約 30,000 台の再 検定が実施されている。呼称口径 13mm から 100mm の水道メーターの校正に 5 ライン を有している。標準タンクはバンドンの RVO で2年毎に校正される。 ある時、PDAM はスラバヤ経由で輸入した全ての水道メーターが、既に検定されて いるという事実にもかかわらず、作動せずまた信頼性にも欠けるという問題を経験し た。またある時、水道メーターの軸が 1 ヶ月の試運転の後磨耗してしまった。RVO に は試験装置がないので、水道メーターを購入した後、自分たちでこのような試験を実 施せざるを得ないのである。2500L/sec の水道供給能力は 4000L/sec の需要に対して不 十分である。 (4) PT. METBELOSA PT. METBELOSA は資本率 79.5%(5,000,000 米ドル)の大崎電気株式会社を含む電力 量計のジョイントベンチャーである。従業員は 216 名である。生産能力は単相型電力 量計百万台と 3 相型 9 万 5 千台である。 LMK が電力量計の型式承認試験と校正を実施しジャカルタの RVO が検定をして封 印をする。 5 - 70 封印する数日前にジャカルタの RVO に台数を通知すると、検定官が封印具を携えて 工場に来て業務を行う。最大封印数は一日 1000 台である。 製造業者所有の試験用計器と試験室標準はジャカルタ RVO で年に一度校正しなく てはならない。 初期検定は 10 年で無効となるが、多くの電力量計が再検定されずに壊れるまで継続 して使われている。 (5) PLN (Banjarmasin) 現在 259,000 世帯がバンジャルマシンで電力を使用しているが、必要量の 50%に過ぎ ない。6,000 台が毎年増加しているが、それでも足りない。 3 人が 60 から 100 台の単相電力量計と 20 台の 3 相電力量計の再検定のために配置 されている。設置に必要な電力量計の数は実際に設置されるよりはるかに多い。これ は次の理由による。 • 地域の送電設備不足 • 電力量計不足 • 地域の過剰電力量 • 発電不足 (6) PLN (Bandung) バンドンの PLN は西ジャワとバンドンに送電している。西ジャワでは、250 万世帯 と 2,600 の工場が電気を使用している。電力量計は最近 20kV のユーザーに対しても使 われ、ENR システムも準備された。 今まで PLN は最初電力量計を検定していたが、2005 年からは製造会社で既に検定さ れた電力量計を買うことを最近決定した。PLN は自分たちの設備を持たない第三者に 検定装置を貸すように計画している。 原則として、RVO は電力量計の再検定に責任があるが、彼らはしばしば PLN の設備 を使っている。このように PLN の設備の使用は、MoU の形で、工業省と商業省間の協 定の下に許可されている。 2) 技術サービスと技術レベル 前述したように、調査団による調査と訪問により、水道供給会社、水道メーター製造 業者、電力量計製造業者および PLN は計測器を校正するための、良い技術サービス網と 良い技術を持っているということが明らかになった。 3) 装置と設備 • 水道メーターと電力量計の公社/民間校正機関の設備機材は RVO のものよりずっと 良い。 5 - 71 • タクシーメーターの校正ラボの設備機材はあまり良くない。 4) 民間校正ラボによる法定計量サービスへの関与の可能性 • 調査団が訪問した水道会社と水道供給会社は水道の検定を実施する能力を持ってい る。 • 今まで電力量計の検定は製造業者によってその敷地内で行われてきた。電力量計の 検定は比較的人材と金のかかる装置が必要なので、検定の現体系を変えるのは困難 のようである。幸いなことに、電力供給会社および電力量計製造業者は良い熟練度 を持っている。検定部門は利益集団から分離すべきであり、そして/または認定シ ステムは民間企業に与えられるべきである。 • 上記の観点から、電力量計の検定設備は第 3 者に貸与されるべきである。 5) 計量技術に関する問題と提起 (1) インドネシアは、ある種の標準に対し特定の国に依存しないトレーサビリティ体系 を創設するべきである。そのために国家計量研究所の統一と関連国際機構への参加 が必要である。 (2) インドネシアは DOM と KIM-LIPI の長さ標準を統一し、CIPM 勧告に基づいた国家 標準を創設すべきである。 (3) 更なる精緻な計測に対して、研究所および設備の改善が無視できない。 (4) DOM は校正と検定に対し各々の技術的な熟練度を獲得すべきである。例えば次のよ うな流量計測の改善である。これにより計測の不確かさが改善されよう。 • 標準体積タンクは各々の校正でタンク内面の濡れの影響を防止するために、ゼロ点 確認用のガラス目盛が必要である。 • DOM は小型体積管による校正技術を獲得するべきである。 • 流量計に関する粘度影響は校正上考慮すべきである。 5 - 72 写真 5.7.2.1 ガスメータ校正装置 写真 5.7.2.2 コンパレータ (Mettler AX64004) 写真 5.7.2.4 電力量計用参照標準 写真 5.7.2.3 水道メータ校正装置 写真 5.7.3.1 検定待ちの秤(Yogyakarta) 写真 5.7.2.5 ガソリン量機校正装置 写真 5.7.3.2 電力量計試験台 (Surabaya) 写真 5.7.4.1 水道メータ校正用コンピュータ 5 - 73 Fig 5.7.3.1 ( タンクローリ 5 - 74