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例外状況の行政判例と合法律性︵一九六二年︶ ピ=9①5Z自﹀菊U”

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例外状況の行政判例と合法律性︵一九六二年︶ ピ=9①5Z自﹀菊U”
紹 介∵㌔
一1・ユシァン・ニザ,ール著
例外状況の行政判例と合法律性︵一九六二年︶
ピ=9①5Z自﹀菊U”
ピ9。’冒ユ紹≡ら98。。αヨ一四一。・霞2。二ぐ①α①ωoマ08ω叶958ωo×08二魯器一一Φω
.o戸冨器σQ9算ひ● 勺鋤ユω導一⑩①卜。
のであり、一種の緊急権理論である。コンセイユ・デタ
となるような措置をとることに法的正当性をみとめるも
営とを確保するため必要なかぎり、通常の場合には違法
近 藤 昭 三
一.は し が き,
一..本書は、ワリ下ヌ教授の監修の下に公法部門の学
中 で .あったこと以外は詳かで な い 。
時億グルノーブル大学の法学部において講師として奉職
大学法学部で博士号を得た新進の研究者で、本書出版当
である。著者ニザールについては、一九六〇年ごろパリ
島①酔。蹄b蝿瓢謄︶ の第四〇巻として撒けにされたもの
とに同種の解決が判例により屡々採用され、学説上は戦
むしろ﹁戦時権力﹂ ︵℃o口く。酵α①σq器Po︶ の概念のも
次大戦後のことである。その間、第一次大戦においては
判例原則として確立され理論化されるに至ったのは第二
めた判例は、今世紀の初頭にまで認ることができるが、
であるが本稿では最高行政裁判所と解していい︶ が、
﹁
列斥犬兄﹁D既念こ遺り子忌白罫引D一丁吏を別法とみと
一イメノ斗、マ﹂︵オ∠’&︵ イ・メノ諄イf︵ノイイ、’﹂、イ.‘
︵Oo霧㊦出山、国$梓・以下CEと略す、その権能は多角的
・,二“本書の主題である例外状況の理論 ︵冨爵ひ。ユ①
時権力の理論として取扱われていた。その後、第一次大
位論文の中がら特にずぐれたものを選び、フランズ文部
介侮①朋。ぐ8器欝昌8ω①鷲①b鉱。自①一一①ω︶は、 公権力とく
戦後の経済的混乱と社会不安の時期に対処するためにと
省め助成金を得て刊行する﹁公法叢書 ︵しuま二〇島9二①
紹 に行政権が、例外状況において、公の秩序と公役務の運
30 (2、●169) 63
られた行政的措置について﹁例外状況﹂の概念が援用さ
れ、第二次大戦に際しても、もはや戦時権力としてでは
なく、例外状況における例外的権能として各種の非常措
置がCEの判例により適法とされ、その判例的解決の体
ではないかとさえ思われる。
三 フランス公法の伝統に対するこのいわば異端的な見
解は、アイゼンマン教授︵ζ●Oず・国凶ω①瓢︼β鋤コ鵠︶によっ
て定式化された方法論を基礎とするものである。 ︵とく
に見よ、OF南δΦ黒日鋤ごPい①黛。詳摯。αヨ一巳ω霞舞罵簿
こそフランス公法の基本原則のあると素朴に主張する通
を検証し、法実証主義の名のもとに立法者の意思の支配
の理論をテーマにとりあげた意図そのものが、この事実
のに過ぎないことを露わにする。ニザールが、例外状況
のではなく、実定法秩序の現実においては限定されたも
妥当性が従来承認され称揚されているように一般的なも
との対決において進められ、その結果この原則の現実的
れている︶合法律性の原則︵δ蜜ぎ6ぢ①山Φ富σq鋤葺①︶
作業はフランス公法の根幹である︵あるいはそう考えら
するかという問題に主要な関心がおかれているが、その
系づけるか、そのためには例外状況の概念をいかに構成
をたどった流動的な判例を一つの法制度としていかに体
ニザールの本書における作業も、以上のような、展開
恥欝綜う︶
法の伝統的原理により、行政法を体系づけようとするも
すと説明するのは、立法者意思の支配というフランス公
り、またそれらの法規範はすべて議会制定法と一休をな
説が、行政はあらゆる種類の法規範を順守する義務があ
妥当しているかどうかを検討するのである。おもうに通
味におげる合法律性がフランス行政法において原則的に
る議会制定法の順守ということであると主張し、この意
すべきはその始源的かっ制限的な意味すなわち行政によ
帰すると批判する。そして合法律性原則において問題と
する規範に拘束される﹂という無意味なトートロジイに
て、通説の見解によると、この原則は﹁行政が行政を拘束
規範を順守すべきことを意味すると主張するのに反対し
のみならず命令、国際条約、判例、慣習等のすべての法
律性の原則を説くにあたって、それは行政が憲法、法律
国こ一㊤α刈︶同教授は、フランス行政法の通説が行政の合法
δ蔑貯。εΦ創Φ冨σq塾審唱ぎ田&⑦ω。一U。窪ヨ①三ωりρ
説のあいまいさと不正確さとを批判することにあったの
ったのである。︷駕謀嬬塞矯灘輔頑襲舘無
系化が例外状況の理論の名のもとに試みられるようにな
紹介
30 (2●170) 64
のである。逆にいえば、この体系においては、それらの
と考えられる限度においてのみ、行政を拘束する効力が
にすることがない。むしろ、実定法は立法者意思の直接
検討はなおざりにされ、そこに生じて︽る乖離を明らか
実にどの程度、公法秩序を規制しているかという問題の
後退するにもかかわらず、.この種の立法措置は行政の裁
況の規制がなされると行政権の行使に対する裁判統制が
る。さらにニザールの指摘によると、議会により例外状
和的法制と矛盾するものでなく、むしろその正統的な一
部として取扱われていることを注意しなければならな
い。またニザール自身、合法律性原則の原則性喪失が決
して行政の恣意やむきだしの権力支配を意味するもので
はないという趣旨のことをのべている。 すなわち、 例
外状況の制度が合法律性原則の空洞化を結果したとして
も、それは行政裁判官の主体的な統制のもとにあり、そ
のことによって共和的法制に組み入れられているのであ
スチックにあらわれた問題領域をとりあげて実証的な分
析を展開し、その結果、合法律性原則の失権を確認する
︵第三篇終章、合法性原則の衰退︶。しかしここでわれ
われは、例外状況の制度が通説によって、合法律性11共
的・間接的表現であるという公式によって、4の乖難を
量権を異常に拡大し、幽それに伴い例外措置の権利侵害的
みとめられると同時に、行政を拘束する規範は、法律と
陰べいする危険をひそませているのである。
性格を増大させているという︵本書二九頁︶。ところが議会
一体であるからこそそのような効力をもつと考えられる
四、アイゼン、マン教授の方法論を適用したものとして、’
の例外措置をまたずに、 裁判統制が行われる場合には
い。しかし、この立場においては、 ﹁立法者意思﹂が現
の維持・形成に重要な影響力を及ぼしているといってよ
点において、通説は全く正当な目的をもち、共和的弓制度
治体制の主要要素である議会主権に対応して秩序づける
のである。このように、実定法の公法領域を、共和的統
さきに越権訴訟による裁判統制と合法律性との関係を究
例外状況理論による判例が行政行為に対する事実審理の
明したデュビッソンの労作︵ζ8ず卑Uロび♂ωoPb餌壷ω1
芸9ユ。α¢器8霞ωbo自。蓉①。・鳥ρ℃o賃く。ド・お切◎。︶﹂
この対比的な二つの事実は、合法律性源刷Φ皮配,とかう
つの契機となつ門て瀞るのであって、 ︵本書二七〇頁以下︶
怠三δ昌2窪Φ一曽志σq飴=一Φ簿一、ob℃o円ε巳審傷9諺冨 方式を発達させ、行政斑対す喝裁判統制を徹底させる一
があるが、本書においてニザ﹁ルは右の乖離が最も下ラ
30.(291了1)65
法規範は立法者意思に準拠し、あるいはそれを実現する
』ザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
伝統的ドグマのもとにおいて、フランスの実定公法が経
序言 例外状況と新権限の創出︵=一二頁一=二
頁︶
第一篇 法律の枠内における例外状況︵二〇頁−三八
序 説 ︵一頁一一 九 頁 ︶
本書の主な構成は次の通りである。
れる。
第二節 例外状況の法制
第一節 例外状況概念の主要な意味
第一類結語︵二二六頁−二四地点︶
第三章 新権限の目的︵一九五頁一二二五頁︶
第二章 措置の性格︵一六三頁i一九四頁︶
第一章 新権限の性格︵=三二頁1一六二頁︶
二頁︶
第二篇 法律の枠外における例外状況︵三九頁一八一
第三章
︹法律︺芝葺説︵二四,一頁−二四八頁︶
法律違反の措置の合憲説︵二四九頁 二五
六頁︶
合法律性原則の衰退︵二五七頁−二六四頁
例外状況と必要性︵九三頁i一〇五頁︶
例外状況の概念︵九三頁一一三〇頁︶
例外状況という用語を用いた判例のリストを作ってその
例外状況に関する種々の判例を体系化するについて、
序 説
︵二六五頁一二八二頁︶
例外状況と緊急性︵一〇六頁一一二一頁︶
共通要素を明らかにする方法と、例外状況の概念を論理
総 括
例外状況判例・その射程︵二四一頁︶
第三節 理論運用における裁判官の行政との関係
第一章 判例原則の精密化要素としての例外状況
.︵三九頁一五〇頁︶
第二章 判例原則の特例条件としての例外状況
︵五一頁一八一 頁 ︶
第三篇 法律違反の例外状況︵八二頁i二六四頁︶
第一類 法律違反の例外状況判例・その構造
必要性と便宜性︵一二二頁一一三〇頁︶
的に分析して規定したゾつえでこの概念を判例上の解決と
︵八五頁一二四 〇 頁 ︶
章章類
例外状況⑳諸効果︵一三一頁i二四〇頁︶
第第第第第
受章章章部
第第第
頁︶
験しっっある重要な変化の一端を示しているように思わ
紹介
30 (20{7乞) 66
範囲の不確定性は次の四つの要素により極めて大きい。
対置せしめる方法どがありうるが、 著書は後者の方法
まず第一は例外状況における特例的措置によって保護
をえらぶ。例外状況という用語を明示的に用いた判例の
すべき法益が予め限定されていないことであり、第二は
みを考察の対象とするときは、同一理論に総括さるべき
その法益を一般的に規定するため不確定概念を用いると
の判例重要な部分を探究から排除する結果になるからで
きは、その規定の適冊者の裁量を排除しえないし、確定
ある。かくて著者は研究の道具概念として﹁例外状況﹂
概念を用いても関連する諸法益聞の調整について裁量の
を、特例設定的︵念8σq暮。貯Φ︶ であり、かつ機能的H
余地を残すことである。第三は、例外措置の合目的性に
ついては具体的な技術的評価を必要とするが、その主観
両数的︵hOコO齢帥O麺口①一︶な内容をもつものと規定する。
する。このような特例設定は、法律上の特例のように当
の理由で、その法規の定める規制に服しないことを意味
②このように例外状況の概念の本質は法規に対する不
ある。
性は処分の時と事後的審査である裁判の時とのへだたり
をどの程度参酌するかという評価によって増幅されるの
であり、第四は、とるべき例外措置の内容の不確定性で
特例設定的というのは、例外状況の事案が法規の適用
該法規の制定者自身によってなされることもあるが隔例
確定な除外例を構成することにあるが、このことはむし
領域に入らないということでなく、入っていながら特殊
外状況の場合のように法規適用の任にあたる裁判官の配
ろその役割の消極的な面であり、裁判官が或る法益を保
護するため正当だと考える例外的規制をもって、通常の
,慮にゆだねられることもある。,
機能的H函数的というのは、例外状況の概念は該当場
規制方法に代えることを可能ならしめる点にこそ積極的
な面があることを著者は強調する。
する。当該法規を適用すべきか、例外状況の概念に訴え
ヨΦ三ら巴9。冨σq土器ひ︶として位置づけるのであるが、とザ
いて、 通説は前者を後者の柔軟な適用︵一.四ωωo偉宮一ωω①i
また、例外状況理論の合法律性原則に対する関係につ
るべ・きかは裁判官の合目的な判断にゆだねられる結果、
ールによるとこのような説明は例外状況の理論が必しも
に採用されるのであるから、その概念内容はけっきょく
当該法規との薗数的相関々係によって定まることを意味
裁判官は、裁量的権能をもっことになる。この裁量権の
30 (2● 173) 67
合に通常適用されるはずの法規の規制をまぬがれるため
ニザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
視し、合法律性原則の実質的観念のなかに法律のみでな
法秩序の同一段階においてのみ働くものでない事実を無
法律をもって、その定める場所および時期において、憲
二条︵﹁武装反乱または国家の安寧を脅す騒擾の場合、
れは、フランスの実定法秩序における例外状況理論の展
題の本質的所与をゆがめるものであるという。かくてか
く判例上の﹁法の一般原則﹂をも含ましめることにより問
るQ
について法政研究二九巻一i三号二二五頁以下﹂︶があ
憲法一六条︵﹁見よ拙稿﹁第五共和国における非常大権
法の支配を停止することができる﹂︶および一九五八年
ることになる。しかし論述の重点はもちろん第三篇にお
場合︵第二篇︶およびそれが法律違反を判例上条件づけ
ている場合︵第三篇︶のそれぞれについて分析をすすめ
判官の所産であるが判例法則に対する特例しか生じない
律︵画一9︶により規定されている場合︵第一篇︶、裁
としての例外状況概念とよんだ方が問題処理の方法を適
確に特徴づけられるとおもう︶を用いて、例外状況が法
機的事態宣言の専権をもつこと、立法者が例外的権能の
を異にするけれども、共通点として立法者︵議会︶が危
これらの法律はその制定を促した事態の性質により内容
態︵黛鉾畠.霞σq①旨。①︶に関する法律などがそうである。
する法律やアルジェリア動乱に際して制定された緊急事
る法律、 一九三八年七月一一日の戦時国民組織化に関
年八月九・︸一日の並々状態 ︵傘巴亀①ωδαq①︶に関す
概念としての﹁例外状況﹂ ︵むしろわたくしは認識象徴
ヘ ヘ ヘ へ
かれており、本紹介も第一篇第二篇については軽くふれ
限界を定めること、したがって例外状況の有無や当該状
況が例外的規制を必要とするか否かについて、裁判官が
をあげることができる。かくして、公的自由の侵害は立
法者の専権に属するという原則が維持されるのである
審査する余地はなく、その役割は後退すること、の三点
八一四憲章一六条︵﹁国王は諸法律の執行と国家の安寧
が、その尊重はもはや形式的なものにすぎない。議会は
ω 例外状況が憲法律によって規定された例として、︸
のため必要な命令︵忍会昌①昌冨舞oa。口口鋸。ω憲法九
第一篇 法律の枠内における例外状況
るに止める。
しかし フランス法では憲法律よりも、通常法律によ
ってこの種の措置が講ぜられることが多い。 一八四九
開を正しく体系づけるために、以上により得られた道具
紹介
$q (2● 174) 68
行政に賦与する権能の行使要件を漸次緩和しており、し
するとそのことによって便宜性は合法律性の要素になる
ともいえるが、その規定を適用して得られるべき解決は
法律のなかにではなくて事物のなかに、より正確にいえ
ば裁判官自身のなかに、行政生活についての彼の経験の
なかに見出されるのである。すなわち法律が裁判官に行﹁
政官と同様な便宜性評価を行うことを求めているのであ
るが、そうすることによって裁判官に義務づけた操作の
性質を魔法のように変え合法律性評価にしてしまうもの
から例外状況の存在を宣言しその法的規制を行う権能を
鋤 それほど重要でない事項については、立法者はみつ
地がないのでこの現象は一層危険なものとなっている。
かも執行権の独立性の増大が例外的制度の深刻化を伴っ
ていながら自由権を保障すべき裁判官の活動を容れる余
留保することなく、 単に通常の法制定を定めるととも
ることを定めた一九四五年一一月二日オルドナンスのよ
日法律や、絶対的緊急時に略式手続で外国人を追放しう
あって、たとえば、緊急収用を定める一八四一年五月三
ときとそうでないときとがある。後者の場合にも例外的
措置と呼ばれるのは、それが通常適用されるべき判例準
認められた場合、その例外的措置が法律規定に違反する
ω 例外状況が法律規定によってではなく裁判官により
第二篇 法律の枠外における例外状況
ではない。
ない旨を明らかにするに止まることがある。この場合は
うなものがある。これらの規定を特定事案に適用するに
則に対して特例的だからである。通説は例外状況の概念
例外状況が一般法に対する例外規定の条件とされるので
あたって、裁判官が例外状況ないし緊急性の存否につい
の裁判統制も便宜性の評価を含まないと説明する。たし
の便宜性の審査に及びえないと主張する者は、この場合
統制権能は合法律性の点にかぎられるべきで、行政行為
らの原則が裁判官によりて尊重される安定性をもってい
位する点で法律なみに考えようとするからである。これ
α置脅。騨︶になにか超越的な性格をあたえ、裁判官に優
例の所産である法の一般原則︵一Φω育貯。首⑦ωαq9Φ惹崖×
が法律違反をカヴァーする場合と判例準則の適用にニュ
て評価することになるが、この評価ははまさに行政行為
の便宜性︵obbo諄μ三盛︶に関するものである。裁判官の アンスをつける場合とを明確に区別しな.いが、それは判
かに便宜性の要求に従って決定すべきことを法律が規定
30 (2●175) 69
に、例外状況ないし緊急の場合には当該制度が適用され
ニザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
ることは当然みとめられるが、裁判官は自己の所産を修
用いられているのである。
性格と彼がそれらに対してもつ権能とを想起させること
ことにより、これらの原則が判例上のものであるという
て、法の一般原則に対しても必要と考える特例を設ける
ωCEの判例は行政法上の契約について、民法一=二四
例準則と 働法律に違反する判例準則とに分帯する。
例の法律との関係によって dり法律の欠鉄を補充する判
に対する特例が設けられる場合を問題とするが、当該判
㈲つぎに、著者は例外状況概念により、判例準則の適用
になるのである。このような考慮にもとづいて、著者は
条の規定と同様な﹁契約は当事者間の法律となる﹂とい
②まず例外状況概念による特例設定がむしろ見せかけの
用が公役務の継続性を脅かすに至る場合には、裁判官は
かし、予見しえなかった事情が生じたためこの原則の適
う原則を確立して契約関係の恒定性を保障している。し
場合がとりあげられる。不法行為に関する判例において,
行政との契約にもとづき公役務の執行にあたる当事者に
の具体的状況に則してなされる。その認定にあたって裁
概念が用いられている場合、これらの要件の認定は事案
を変更する︵不予見の理論冨夢①oユΦ号一、巨只0<一ωア
判官が例外状況の概念を用いることがあるけれども、そ
の結果えられる特例的解決はむしろ国の不法行為責任に
ついてブランコ判決が確立した相対性の原則の具体的適
鷲首。①︶。さらに特定給付を目的とする契約が、予見し
えなかった克服しがたい事情により履行不能となったと
に関する判例原則の適用についてもいえる。これらの場
を侵害するも.のでめる。これら三種類の判例において、
とめるが、この不可抗力による解除的効果は、契約条項
き、裁判官は不可抗力を理由に当該給付義務の消滅をみ
合、例外状況の概念は判例準則を精密化する要素ともて
用と考えるべきである。 同様のことは、 警察権相対性
ることが判例頼みとめられている︵君主行為一Φ富詳臼
8︶。 また事情変更を理由として、行政主体のイニシ
アチヴにより、公益に適合するよう契約条項を変更しう
︵90ωρ9鵠ひq雑嚢ωΦ︶や不可抗力︵貼08Φヨ黛。撤霞①︶の補償を与えることにより、契約当事者の権利義務の範囲
重過失く♂暮①一〇霞傷Φ︶が責任要件とされたり、危険物
状況を本篇において取扱うのである。
とくに箕昔話囲①αQ①ヨであって判例準則に祇触する例外
正し、ときには完全につくり直すこともできるのであっ
紹介
30 (2. 176) 7Q
設定する⋮機能をもつ点で、不予見、君主行為および不可
かし、 ︵判例︶法準則に対する不確定で可塑的な特例を
例外状況の概念は還しも明示的に言及されていない。し
に服するというのが、フランスにおける権力分立制であ
る訴訟は、司法裁判所の管轄に属さず行政裁判所のそれ
するものと限定的に解釈し、これと競争する地方自治体
あるが、C・Eはこの規定を私的経済活動の自由を保障
地方自治体にも商工業をいとなむ自由が与えられた筈で
も職業選択の自由を有することを宣言した。したがって
ヘ ヘ
ル・シャブリェ法︵一9住①ピ①Oげ鋤℃OΦ=Φ﹃︶七条は何人
恥大革命当時、 一七九一年三月ニー﹁七日のいわゆる
α卜⊃︶
外を生ずる﹂ ︵〇四ヨ①傷Φζロお暮ρ白・O・N刈ヨ費ω一ゆ
︹暴力行為︺の性格をみ乏めることを妨げる場合には例
に属するというものが確立された判例準則である、しか
しこの準則も﹁例外状況が当該の侵害行為についてこの
そしてこの暴力行為に関す渇訴訟は、司法裁判所の権限
法な執行行為は、行政的性格を失って暴力行為となる。
るがハ行政の行為であっても、法令にもとつかないこと
が明白なもの、および財産権または自由権を侵害する違
抗力の観念は、いずれも例外状況概念を含んでいるので
ある。
つぎに法律の欠欲を補充する判例準則として、行政上
の強制執行方法に関するものがある。それは有名なサン
・ジュスト不動産事件判決︵ωま一ヨヨO玄一斗おα①ω斎
で、 その原則は、 強制執行を許容する明文規定がある
か、又は義務違反に対する処罰規定のない場合以外は、
行政による強制執行は禁止されるというものである。と
ころでこの原則に対激て、執行について緊急の必要あみ
場合はこの限りでないという例外が判例上承認されてい
る。この強制執行の許容性を条件づける緊急性なる観念
は執行すべき処分の内容、侵害される権利.利益の重要
性、および迅速な執行により達成しようとする目的によ
の経済活動を原則的に禁じたのであったつ一九二六年、
立法者は判例によるこの制限を撤廃するため、市町村お
よび市町村組合が商工的な公益事業をいとなむことを
ゆて定まるのであって、不確定かつ機能的な特例設定を
さいごに、暴力行為︵︿O一Φ α① h魯一一︶に閑する準則と
許す明文規定︵ げ九二六年一二月二八日デクレ一条︶を
いとなむ点で例外状況の概念を含むのである。
それに対する特例とがとりあげられる。行政行為に関す
3Q く2●177) 71
言ω叶9↓・O・Nαひ8ヨσ︻①日⑩OD︶ により確立されたもの
出ザ島ル・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
紹
ところで初期のの判例における例外状況の概念は、当該
て自治体が、私経済的活動を行うことを許容していた。
しかしここでも判例は、例外状況における特例措置とし
法を固守し、明文規定に紙触する判例準則を維持した。
設けたのであるが、判例はそれにも拘らず従前の解決方
独自の見解を以下のように展開する。
そくして通説的見解を批判しつつ、著者ニザールはその
例外状況理論の核心である本問題に関し、判例の現実に
ンス法体系の基礎は、合法律性の原則ではなかったか。
ンスの実定法秩序のなかでどう位置づけるべきか。フラ
ω第一類 法律に反する例外状況の判例・その構造
対立があらわになる。この場合の裁判官の役割を、フラ
介
警業に従事する私人が存在しないため、公共の安寧、秩
序、衛生に危険が生じていることを意味し、その危険を
瘧O状況の概念 判例は例外状況概念について何ら明
確十全な定義を与えていないから、概念構成の作業は学
予防するという警察上の目的にてらして自治体の介入が
許されたのであった。しかるにその後の判例の発展は、
説にゆだねられる。ファミイ・ムダニイは、古典的学説
の立場から本概念が 異常かつ格別の ︵①×O﹃び一融鋤旨けΦ︶
な状態、通常の法規に従って行為することが不可能又は
甚だしく困難であること、脅威をうけている重要な法益
を保持するために迅速に行動する必要があることの三要
素より成立することを明らかにした。しかしこのような
分析は余りに人為的であり、またこ九らの要素によって
例外状況を規定することは現実的でないとニザールは批
公権力が法律に違反した措置をもとりうることを認め
さらに進んで判例は例外状況において必要なかぎり、
える法益保持のため必要であると、裁判官が認定するよ
律に違反する権能をみとめることが裁判官の最重要と考
して、 ﹁行政に当該︹例外的︺措置を行うことにより法
判し例外状況概念は内容的に定義しえないことを前提と
る.ここに例外状況の判例と合法律性原則とのするどい
第三篇 法律違反の例外状況
外の関係が明白でなくなっているのである。
のであるが、今日では、例外の累積によって、原則・例
済的干渉をごく例外的に許容することを条件づけていた
人の私経済的自由を保障する原則に対して、市町村の経
すに至っている。すなわち、当初、例外状況概念は、個
目的のため市町村が私経済活動をいとなむことまでも許
警察概念を拡大し、さらに文化行政のような警察以外の
α一
30 (2● 178) 72
性をみとめることは適当でなく、それはむしろ必要性な
摘できるという。けっきょく、緊急性概念に固有の独自
を省いたりするために援用されてる度合が多いことは指
て、行政を遅滞させるような手続を簡略にしたり要式性
ただ、緊急性概念は迅速な行動を必要とする状況におい
法効果の点でも例外状況と区別をすることはできない。
性をもつ点で、必要性概念と本質を等しくするし、また
れば、緊急性概念も目的論的であり状況依存的な不確定
考え、両者の相異を強調する。しかし著者ニザールによ
的効果の点でもより重大な法律違反を正当化するものと
より非常性の規模、深刻さにおいてより程度が高く、法
ダン、ガボルド、ファミイ・ムダニイ︶は前者は後者
昌。Φ︶ とどう違うのか。通説︵オーリウ、ワリーヌ、オ
ではこの例外状況概念は緊急性概念︵ロ〇二〇⇒傷、霞鴨−
るQ
念の奉仕する目的の諸要請いかんにより定まることにな
はなく、また目的論的性格をもつから全構成は必要性概
定なものであるから、先験的に適用を排除せられるもの
概念の適用は必要性により左右されるが、必要性は不確
方式を提案する。したがって、かれによれば、例外状況
うな状況の場合に、例外状況が存するのである﹂という
ω例外状況においては、無権限の機関が正当な権限機関
ではこの新しい権限は、いかに性格づけられるか。
からである。
うる能力は判例により規定された義務を伴うことになる
ずから作った指針を措定することを許し、法律に違反し
なれば例外状況は、裁判官に対し法律規定に代えて彼み
新しい権限の淵源︵ωo霞。①︶となると主張する。なんと
律違反を正当化するが、著者ニザールはそれのみならず
働例外状況の効果 くり返しのべたごとく例外状況は法
ある。
おいて、裁判官に大幅な自主的判断の余地を残すもので
のためにいかなる措置をとるべきかといら具体的判断に
ら、そこでいかなる目的を考慮すべきか、その目的達成
かくて、 必要性判断は表見上厳格なように見えなが
可能である。
幅が相当大きいために、実際上両者を区別することは不
断を含むことが多く、また必要性に関する技術的評価の
ある点で論理的に区別されるが、必要性判断は便宜性判
ε三ま︶とを比較すると、前者は後者より一そう厳格で
さらに、必要性概念と便宜性概念︵昌。減。昌自、obbo7
いし例外状況の特殊な場合と考えるべきことになる。
ニザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
3Q (:2.179) 73
次大戦中、開戦直後の混乱期に市長が市民に食糧配給を
に代って必要な措置をとることができる。たとえば第二
めに、所与の状況においてその介入が必要とせられる者
は、公の秩序を確保する必要に応じた権限を行使するた
︵公務員であれ私入であれ︶という以外に規定のしょう
れ、 そのことから当該措置を行う権限機関が確定され
がないという。一定の例外措置が状況に応じて必要とさ
は知事に属し、本件では知事の市長に対する徴発権限の
る、つまり措置の必要性によりこの新しい権限の正当な
のであって、委任の有無や委任権限の有無を問題として
ぱら例外状況においてとられた措置の必要性を強調する﹂
関による例外措置を正当化するにあたって、判例はもっ
がなされていたとか解するのである。しかし無権限な機
限委任が通常許されていないときは黙示の委任権限付与
合、正当な権限機関による黙示の委任があったとか、権
行使については問題とされなかった権限濫用 ︵αΦ8嘆=
いた権限に、行為裁量の余地が生じ、従来の覇束的権限
それを義務づけていない場合。本来、法律に織束されて
まず、必、要性が行政に法律違反を行う能力のみを与え
は次のようになるであろう。
また例外状況によって生ずる権限と裁判統制との関係
るQ
る。 ところが本来、行為裁量権限を有していた行政庁
昌①ヨ①昌↓島=℃oロ<o跨Yについての裁判統制が可能とな
有効ならしめる、 いわゆる事実上の公務員︵鴎§。江8一
なくなる。
(一
著者ニザールによれば、この種の権限を与えられる者
つぎに、必要性が行政に法律違反を義務づける場合、
うになる。
することになって裁判官による便宜性の統制に服するよ
は、裁量権の行使について法律の定めていた枠外で行為
Q島心。甑①◎①一〇逼娼b碧①ロ。①︶を援用しなければなら
塁騨①傷①壁騨︶の判例について、さらに別個の表見理論
が例外状況においてなし公役務に関す﹂る行政行為として
いない。しかも通説の立場では、これと同系統の、私入
00一90.国・”りぎくΦヨ寓①HΦ島︶ 通説はこのような場 って適当とされる者ということになる︶が定まるのであ
みとめたのであった。 ︵ω縞Ooob費9。鉱く①一、d三〇昌﹀αqh主
7体︵誰でもよいわけでなくその本来の権限.地位によ
委任も存在しなかったにも拘らず、CEはそれを正当と
あった小麦を徴発した行為について、そのような徴発権
する差迫った必要のため同市の港に碇泊中の船に積んで
紹介
30 (2●180) 74
回それでは以上のように特徴づけられた権限を行使七て
の存在することを立証する責任を負わしめるのである。
いときは、当事者に当該措置を無効にすべき重大な利益
要求して便宜性の統制にまで及ぶが、それほど重要でな
は、裁判官は行政に詳細な理由づけ ︵ヨ。温く鋤二§︶ を
措置により侵害される個人権利が重要なものであるとき
判宮は立証責任の分配という方法を利用している。例外
る。しかもその度合を調節する訴訟上の技術として、裁
益︵公益および私益の種類︶、稀には行為者の資質であ
きめるのは多くの場合、そこで問題とされている関連法
まで事案により緩急を異にしている。その統制の度合を
は便宜性の要請にかなうかどうかの審査にとどめる場合
ことから、具体的審査を行なわず一般にその種類の措置
CEの裁判統制は、その措置の便宜性を厳格に審査する
なりうることをニザdルは指摘する。
ところで、例外状況における行政の権限行使に対する
ならば、その作為または不作為は不法行為責任の,原因と‘
に従って行為し、例外状況の必要とする措置をとらない︹
なり裁判統制に服することになる。この場合、㌧も七法律
その性質を変えないが、行為裁量権限は霧束的なものζ
はありえないのであるが、他方また、作為、不作為のい
また、例外的権限の行使をアプリオリに排除する領域
が終ったからといって湖及的に消滅するものではない。
果を発生せしめるが、一旦有効に発生した効果は必要性
た必要性の続くかぎり、かつそのかぎりでのみ、法的効
例外状況においてとられた措置はその措置を正当化し
ついての要請を充足しうると考えられたからでもある。
し、行政立法によってのみ、公の秩序と公役務の継続に
に外ならない︵=①貿δωO・国も。。血管お一。。︶。 しか
を行政に与えることが必要であるとCEが評価するから
立法が例外状況を理由と有効にされるのは、広い裁量権
は行政の裁量権の淵源となる。じっさい、その種の行政・
冒三雲Hりト。O︶ので、その限度で感σq冨ヨΦヨαΦ昌Φo①ωω搾Φ
するにとどめる︵一働OΦ嵩霞巴Φ匹①9円甘q①℃ρ国ご㊤
なく、はたして命令の執行といえるかどうかの点を審査
ば、CEは当該処分自体について必要性を審査すること
審σq冨ヨΦヨ自Φ幕。①ω。・騨Φ にもとづいて行われるなら
個別的処分とに区分される。 もし、 個別的な処分が
遷舞⋮:①8・・ま︵爆墨黒響翻雛賭︶と
どのような措置がなされるのであろうか。
まず、その措置の法形式によって一般的規範すなわち
30 (;2.181) 75
行政の新権限は完全に覇束的である。従来の.覇束権限は
ユヂール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
の継続が例外措置を正当化する独自の根拠として援用さ
れているのは、 戦時︵出2ユΦω凛曾幕︶ や罷業時
︵ぐく一二脚①一層 ︵︶. 国こ¶ 鋤σ⇔一 HりO⑩︶ に際して法定手続要件
を省いてなされた官吏の懲戒処分に関してであるが、そ
れも第二次大戦後には根拠としての独自性を失い、公役
務の中断が秩序の維持を危くするかぎりでのみとり上げ
られるようになったことを、著者ニザールは指摘する。
すなわち今日では例外措置により達成すべき目的は、秩
限の性格を予防的なものに限定することになる。したが
って、事後的な処罰や法秩序を長期にわたり変更する措
序維持に統合されうるのであるが、 そのことは例外権
このことを明言するものに司Φ鼠舞OPO●国。卜。①融く目一臼
置を行う余地はないはずであるが、判例はときとして、
は、 公秩序の維持という目的の諸要請に応じて変動す
H逡ω︶、通常暴力行為となる、違法性の重大かつ明白な
囚例外状況において、法律違反の措置が許されるのは、
る。したがって、その目的はしばしば、本来の権限の目
これらの措置をみとめている。ただし清貼的措置はゆる
いかなる公益を確保するためであろうか。重要な公役務
的と相違するに至る。この点でも例外権限は本来の権限
執行行為をも行うことが許される。 ︵国防上の危険人物
の運営︵ジェズ︶、国家の存立︵オーリウ︶、国家生活
の拡大にすぎぬと説く通説は正確でない。というのは、
されない︵℃①ほΦ鋤巳♂O・国こNΦ二。<円認お曽︶
の麻輝をさけること︵リヴェロ︶などがあげられている
例外状況において覇束的権限が裁量的権限となり、事後
の強制収容について、 bご。ωρ厳巴算O●国こお富くユ興
が、判例の中では公役務の継続と公の秩序の維持の二つ
的な処罰権能が予防的権能となる︵その例として一八八
他方、 例外状況に条件づけられて成立する例外権限
が競合的又は選択的に言及されている。しかし、公役務
一⑩ミ︶Q
置の種類を分類することは実際上技術的に困難であり、
けっきょく基準は必要性の存否ということ以外にない。
行政は例外状況において、法律に留保された自由権を一
般的に禁止することが許されるし︵集会の自由について
一ト。冒一=卑お罐︶もあるが、この基準によってとるべき措
愚目①蚕一①α①ω蜀Φ濠茜瓜。昌ωOohO昌。↓一〇昌鵠蝕おρΩ国こ
解︵Oo昌2ロωδ昌。。傷①霞・O暗く一。・ω①ω〇二ω一、①護蝉d巳8
ずれによっても法律違反の措置を正当にとりうるし、必
要に応じていかなる種類の措置をもとりうるのである。
例外措置は臨時的、保全的な性質のものに限られ確定的
かつ回復不能の効果を生ずるものは許されないという見
介
紹
30 (2●182) 7e
ネ上法律に反する例外状況判例の構造に関する考察を
例外措置の許容性を認定するにあたって、裁判官は自分
自身の判断により決定するのである。しかし裁判官は取
消権能しかもたないから、行政の不作為に対し積極的な
行動を促すことはできないし、また裁判官の活動は訴の
提起によって条件づけられている。これら二つに加える
に、手続が迅無性にほど遠いことのために、裁判官が自
己の意思を思いのまま行政におしつけることは不可能で
ある。
したがって、裁判官は行政の行為を審査する点で大き
な自主性をもつけれども、それだからといって行政を指
揮したり、その活動を調整したりできる立場にあるわけ
ではない。すなわち、一部の学説がいうように、この場
合裁判官は行政の上級機関の役割を演ずるということは
官はこの場合、 必要性を法律違反の条件たらしめ、 必
しいかなる役割を演ずるのであろうか。たしかに、裁判
囚では例外状況理論の適用において、裁判官は行政に対
をみとめるにいたることを指摘しうるにとどまる。
を与えまた極めて多岐な分野において法律違反の正当性
律に違反する措置の必要性を承認し、行政に対し裁量権
例外権能の行使が法律に違反することを認めて、しかし
よって例外権能の行使が正当化されると考える。他は
従属という原則をあくまで崩さずに、通常法律の解釈に
の解決方法を用意している。一つは、執行権の法律えの
置づけられるか。最近の学説はこの問題について、二つ
例外状沢の判例はフランス公法体系においていかに位
②第二類 法律に違反する例外状況の判例・その射程
ない。
要性の存否を認定し、そして必要性の効果を確定するこ
それを憲法により根拠づけるものである。
総括してニザールは次のようにいう。
ω判例は例外状況の概念をいろいろな意味に用いている
が、その用語法を定型的に分類すると、戦争などの危機
的な時期を指す場合、より複合的に、危機により影響さ
れた特定の状況を指す場合、および危機とは何等関係な
く特定の状況を指す場合があ る 。
回これらの定型に応じていかに制度が相違するかは明確
でなく、ただ、危機の場合には裁判官が比較的容易に法
…蝋
とについて裁量権をもつ。すなわちこの理論を適用して
30 (2●183) 77
一年法律による出版物の差押え、刑事訴訟法一〇条によ
る県知事の逮捕権能、公務員に対する懲戒権があげられ
る︶からである。ただ、警察権はその本来の目的が秩序
の維持であるから、例外状況において権限の量的拡大を
生じることはあっても質的には変化しない。
千ザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
を考慮しつつ、法律適合性の原則そのものに基づいて構
意思を示したのである。その限度をこえる法律違反の例
の拡大をみとめる反面、その限度の拡大しかみとめない
やデクレ・ロワの制定をみとめる全権委任法律が数多く
成されている。本理論は単に、この原則の内容が不変で
外措置をみとめた判例が立法者の意思に反することは争
ω前説の立場をとるマチォ教授︵一︽日。り二心叶げ帥O齢︶はつぎの
ありえないことを承認するのである。危機における裁判
う余地がない。すなわち立法者の意思により例外状況判
制定されており、立法者はそれらの法律により行政権能
官の役割も通常時と根本的に異るものではない。裁判官
例を根拠づけるこの説は、実定法の現実を正しく説明し
ようにのべる。例外状況の理論は公的機関の一般的義務
は、通常時において法律の欠訣ある場合、既存の法準則
えない。
回図説の立場をとるものに、ヴデル教授 ︵竃・<①αΦ周︶
その他がある。ヴデル教授の主張はつぎの如くである。
一八七五年憲法三条や一九四六年憲法四七条は、共和国
大統領や内閣議長に諸法律の執行を確保する︵鋤ωωξ1
へ
Φ門脈、①×0。雲ごp傷ωωごμω︶ 任務を与えているが、それ
は個々の法律の執行をこえて国家生活の継続確保という
意思であるという説明は、 立法作用の現実に適合しな
もので、例外状況には適用されぬことが立法者の黙示の
創造されたものである。通常立法は通常時を前提とした
いて排除するために用いられておりむしろ裁判官により
この説を批判してニザールはいう. 具体的法律の執
ているのである。これを憲法適合説と名づけうる。
な措置をおこなう権能は、憲法規定により根拠づけられ
措置が個々の法律に違反する場合でも執行権がそのよう
般的権限を付与することを意味する。したがって、例外
使命を課すものであり、その使命達成のために必要な一
い。げんに例外状況に対処するための臨時的な立法措置
欲﹂概念は、通常適用さるべき法律規定を例外状況にお
著者ニザールはこの説を次のように批判する。この﹁欠
能の一部にすぎない。すなわち欠欲補充説なのである。
ものではなく、法律の枠外に於いて裁判する裁判官の権
法の一般原則の順守を免除する判例も、法律に違反する
る。けっきょく,マテオ教授にとっては、執行権に法律や
は立法者を通常導くのと同じ要素に訴えて訴訟を裁断す
法措置がなされていればそれを適用するが、ない場合に
探究してそれを補充する。それと同じく危機に応じた立
紹介
3〔3 (2 ●184) 78
である。
の侵害という事実を魔術的に消滅させるものではないの
ども、判例準則の法律規範との交替が、法律適合性原則
制に服し、判例準則により規制されるからである。・けれ
全権委任を許すものではない。例外権能の行使は裁判統
を生ぜしめる。しかしそのことはアナーキーや行政への
いることは明らかである。.例外状況は法律の支配の終止
の侵害が例外状況概念の援用によってのみ正当化されて
いとすれば、この場合法律性原則が侵害されており、そ
が、立法意思によっても無二によっても根拠づけられな
㈲以上のように、行政が法律違反の例外措置をとる権能
な い のである。
関または私人によって行使された場合に及ぶことができ
説は、例外権能が共和国大統領や内閣議長以外の公的機
を憲法規定から引き出すのはこじつけである。またこの
るのである。この考え方は政治哲学上ものであってそれ
のため行われる個々の法律えの違反を正当化しようとす
定の政治社会体制の維持という意味をもたせ、その任務
教授はむしろ、 ﹁諸法律の執行の確保﹂という用語に一
相容れない固有の権能を認めることはできない。ヴデル
行という任務を遂行する者としての行政に、その任務と
定することになる。 30
にかからしめることであり、立法者の決定の主権性を否¢
評価することを許すのは、まさにその維持を馨の判断燗
裁判官に、この便宜性に関する立法者の主権的決定を再79
となることを要請するものである。しかるに行政および
は、立法者のなした便宜性の主権的評価が、断言的命令
は便宜性の指針に変形する。がんらい、合法律性の原則
る。じっさい、必要性概念を契機に、法律の断言的命令
の全体に適用されうるので、原則の原則性があやしくな
は、原則と同じ一般闘な適用可能性をもち、当該領域
を限定することも出来ない。 そこでこのいわゆる例外
をアプリオリに規定することは不可能であり、その効果
例外状況概念は統治行為概念とは異なり、その適用条件
ないという関係に立つものとして規定される。ところが
のに対し、後者は厳格に限定された局面にしか適用され
が当該領域の全体に一般的に適用されるべきものである
質的ないし論理的観点において原則と例外とは、前者
ら分析する。
あろうか。ニザールはその関係を質的および量的観点か
侵害されているのであろうか。それは例外にとどまるで
では例外状況判例によって法律適合性原則はどの程度
ニザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
紹
介
律に違反して解決した場合より多いかどうかということ
決の多寡により定まる。すなわちここでは潜在的な例外
状況に対して、法律を順守して解決した場合の方が、法
という関係は、それぞれによって実際におこなわれた解
つぎに量的観点における、何が原則であり何が例外か
は後者に前者と対等な重要性を与えるのである。
いう準則が定式化される。しかも公の秩序の概念の拡張
性はその一般原則の適用を妨げることが出来ないことと
とという条件つきのものになり、その他に公の秩序につ
秩序が問題になっていない限り、 行政を義務づけるこ
馨
鴇
いては、行政権能の相対性の一般原則が存在し、合法律
が問題になる。ニザールはこの問題を便宜性の考慮と法
総括
蕊
律順守の要請が衝突するときのみ有意味であるとし、法
律による解決が明らかに便宜性に反するにも拘らず、そ
の立法者の解決に裁判官がしたがった場合の瀕度の問題
羅
の.原則性をもたず、もう一つの競合的な法準則と並存す
かくてニザールは、合法律性の原則は、厳格な意味で
合の相当多いことを推定するのである。
者意思の尊重でなく便宜性の考慮によって解決される場
優劣を考慮して解決していると主張する。すなわち立法
判官が法律や判例準則の形式的効力でなく、関係法益の
張して正当化の範囲を大きくしていることを指摘し、裁
などの場合以外にまで及ぼしめた。また行政裁判官によ
の例外の役割に融通性を与え、それを古典的な不可抗力
なんでいる。すなわちこの概念は、公法における必要性
回例外状況概念は法技術的な面において次の機能をいと
状況をカバーする。
例外状概況念は法規範に対する例外を正当化する一切の
の抗弁が義務の一般的限界をなすように、公法において
性の抗弁H例外︶の公法における適用である。私法上こ
ω例外状況の概念は、一、①×8讐ご昌◎①溝8ωω一審︵必要
るにすぎぬと結論する。かくて合法律性の原則は、公の
権を行政にみとめていること、また公の秩序の概念を拡
以上のような法秩序の各段階における例外状況概念の
嚢
におき代える。そして彼は、法律違反の例外措置が、そ
爾
研究にもとづき、ニザールはその適用の全体を綜合する
存
れほど重大な状況でない場合や法律の順守が絶対的に不
養
要素を次のようにまとめる。
套
可能ではないときにも許され、裁判統制がかなりの裁量
観:z
3
30 (2●186) 80
つぎに法律の枠外ではあるが判例準則に対する特例と
る9
法文を適合させる必要があると考えてそうしたのであ
けれども予見することの出来ない特定の事態のために、
入を授権したのであり、立法者はその発生を予感できる
問題は簡単である。法律が裁判官に例外状況における介
まず例外状況の特例が法律により規定されている場合
の ように試みる。
なわちその内容の合理性とその法的拘束力との説明を次
困さいごにニザールは、例外状況判例の基礎の解明、す
秩序尊重的機能をいとなむ。
は法の実体︵一Φ hOご自 自q 彫目O一側︶に対し、衡平的機能と
に確保しようとするのであるから、その面からこの概念
た、例外状況概念によって裁判官は一定の法益を優先的
よって法を現実に適合させ、法の変化をもたらした。ま
る事実審理を発展せしめた。さらにその可塑的な適用に
家緊急権の理論︵ω富舞ω口。葺。。茸︶と対立的なものであ
する。そしてフランス法の例外状況理論はドイツ流の国
階層秩序では公の秩序が最高位を占めていることを強調
侵害を社会的価値の階層秩序にもとつかせており、その
の内容の合理性の問題については、例外状況概念が法の
反の判例の法的正当化を放棄するもののようである。そ
の侵害を法的に根拠づけることはできないと考え法律違
然法に求めるものである。結局ニザールは、必要性が法
ることが試みられるが、それは実定法の問題の解決を自
対する抵抗権や国家理性のような観念にその根拠を求め
とが許されないのは前述のとおりである。そこで圧制に
る場合、その法的正当性の根拠を法律や憲法に求めるこ
おわりに、例外状況の特例的規制が法律に違反してい
手段であることに見出される。
衡量して判例準則に融通をつけるために裁判官の用いる
つ。またその内容の合理性は、例外状況概念が、法益を
特例的規制は裁判官の一般的権能のなかに法的基礎をも
×慶;P⋮,⋮一 ×
るという通説的見解に反対して両者の基本的特徴の類似
を指摘するのである。
×
30 (26187) 81
なる例外状況の規制は、前の場合のように法律による授
権にもとっくのでな︽、裁判官が自主的におこなうので
ある。しかし判例準則じたい裁判官により形成されたの
であるから、彼はそれを全面的に修正しうるのと同じく
特定の場合にその適用を排除しうるのであり、結局この
ニザ」ル・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
介
に要約できるであろう。
本書におけるニザールの論述の主要な特徴は次のよう
を、通説のように本来の権限の延長とせず新しい権限と
目例外状況において法律に反する措置をおこなう権限
論と類似することを強調するけれども、これは前者にお
論が必要性概念を中心にしている点でドイツの緊急権理
を容易にしたといえる。ただしニーザルは例外状況の理
の性格とそれに対する法的規制方法を具体的に示すこと
の立場からは当然の処理である。この処理は、例外権限
ら、この区別づけは形式的観点を重視する規範論理主義
外権限は必要性に条件づけられて創設されるのであるか
考えたこと。本来の権限を与えたものは立法者であり例
紹
ωすでに述べたように、アイゼンマン教授の方法論の適
用であること。ただし同教授自身は、例外状況の制度が
合法律性原則の原則性を脅かすものではないと観察して
いたのであるが、ニザールの結論はその原則性の喪失を
確認する。ところでアイゼンマン教授はケルゼンの規範
論理主義をフランス行政法に適用されたのであり、読者
は本書において純粋法学のフランス法への定着、あるい
は土着化の一例を見るであろ う 。
いて裁判官の役割が不可欠の要素であることを見落した
階におけるそれとの比較が可能になった。
され、しかも立法段階における例外状況の規制と判例段
て判例段階に特殊・固有なものではないことが明らかに
ことなく、法秩序の各段階に見出したこと。それによっ
て、この概念が法秩序全体に内在的なものであり、決し
くものである.通説は行政による例外権限の行使および
をなす。この差異は大部分、両者の法学観の対立にもとつ
れに匹敵する災厄に限定して用いているのと著しい対照
ことは、通説がこの概念を国家的規模の危機あるいはそ
困ニザールが、例外状況概念をこのように広く構成した
回例外状況概念を、通説のように判例の中にだけ求める
的通説のように視野を例外状況の用語を明示的に用いる
議論である。
判例にのみ限定せず、この概念の法秩序における機能に
として構成する。例外権能の行使は、立法的制約をやぶ
ってなされるのであるからこの配慮は当然である。しか
その判例による正当化を、極度に重大な危機的事態に限
ヘ ヘ ヘ へ
定しょうとするのであって、いわばこの概念を組織象徴
着目して概念構成したこと。この構成は、実定法におけ
る裁判官の創造的役割をうきぼりにするために不可欠で
あった。
30 (2●188> 82
に用いられている概念であると考えている、あるいはそ
う考えさせる点に問題がある。これに対しニザールはこ
の概念が判例によって、危機および危機によって影響さ
れた特定の事態をさす意味だけでなく、危機とは無関係
な異常な事態という意味を与えられていることを確認し
て、そういう判例の解決をすべて統一的に認識するため
の概念として構成したのである。いうまでもなく、認識
することはただちに承認を意味しない。この点でニザー
ルの方法論を基礎づけたアイゼンマン教授の前記論文の
功績について、CEのルネ・カッサン副長官が述べたこ
とが、そのまま、ニザールの労作にもあてはまるであろ
う。すなわちこの行政裁判所の最高責任者は、同論文の
実証的検討が、法律の優位を奉ずる国における立法者・
行政官・裁判官のおのおのの役割と関係とに関する真の
哲学を明らかにすることを指摘したのであった。
︵幻Φ忌O器ω凶Pぎ霞。αロ。江。ロ自。億×国言α8象Uoo雰−
日①三。・α①お宅b・Hb。︶
30 (2●189) 83
しその意図で構成された例外状況概念が、実定法上げん
ニザール・例外状況の行政判例と合法律性(近藤)
Fly UP