Comments
Description
Transcript
高周波電力制御の設計
高周波電力制御の設計 これまでの線形加速器におけるフィードバッ ク制御は、高周波のパルス幅が数マイクロ秒オー ダーと比較的短い電子線形加速器(例えば KEKB 1. はじめに リニアック)の場合、高周波のパルス間で振幅・位 相を安定にするために行うことが主であり、単純 International Linear Collider (ILC)計画では、 な PI 制御(比例・積分制御)をアナログ系で構 超伝導空洞を用いた線形加速器で電子・陽電子の 築して遅延時間を短くして、RF パルス内で振 加速が行われる。その際、超伝導空洞内での加速 幅・位相を一定に制御するという例はほとんど無 電場に高い振幅・位相安定性(場所に依存するが、 かった。また、これまで加速器制御におけるデジ 今のところ厳しい場所では±0.5%、±0.05 度)が タルフィードバック制御としては、主に円形加速 求められている。KEK では ILC への寄与のため、 器における高周波源やビームへの取り扱いが中 Superconducting RF Test Facility (STF)計画を 心であった。 始めており、現在 KEK の陽子リニアック棟で建 設を進めている。 しかし、ミリ秒オーダーの長い高周波パルス (DESY の TTF-Ⅱでは 1.5ms)内で、多数のバンチ 高周波系の振幅、位相制御に対する誤差の原因 構造を持つ大電流を加速させるといった超伝導 となるものとして、クライストロンの印加電圧の 空洞を用いた線形加速器(Fig. 1-1)の場合、近年の 変動や、気温・水温変化等の色々な外乱がある。 デジタル機器の高速化(数百 MHz)により、パルス また、ILC では超伝導空洞を用いるので、Lorentz 内での加速電圧や位相の安定化を行うことが可 force detuning や Microphonics といった超伝導 能になってきており、多くの研究所での線形加速 空洞に特有な誤差の要因が加わる。そのために高 器において開発や運転が行われつつある(DESY, 周波源に対して、フィードバック制御を行う必要 J-PARC, SNS 等)。 がある。フィードバック制御系とは、外乱がある ときに制御対象の出力値(今回の場合、加速空洞で の電場)を設定値と比較し、その差を用いて出力値 を設定値に近づけようとするように制御信号を 返す系のことである。 デジタルフィードバック制御では、制御対象か らの出力値(アナログ電気信号)を A-D 変換器 (ADC)によりデジタル信号へ変換する。次にコン ピューターでデジタル信号の信号処理、制御操作 を行い、その結果を D-A 変換器(DAC)によりア ナログ電気信号へ戻すという手順を踏む。このデ Fig.1-1 TTF での高周波の出力例。 ジタルフィードバック系では、アナログ系で構成 されたフィードバック系と比べて、回路定数の任 本テキストでは、STF-PhaseⅠとの関わりで高 意性や、それに付随する安定化のためのフィルタ 周波電力制御の設計、およびその周辺の事柄につ ーなどの回路が組み込み可能といった利点があ いて説明を行う。 るが、A/D や D/A 変換、さらに信号処理により、 遅延時間(制御対象からの出力信号が信号処理の 後、再び制御対象に戻るまでに必要とする時間) が大きくなるという欠点があった。 1300MHz Timing Module Master Oscillator ADC/DAC/FPGA Clock 1300MHz Local Oscillator Sampling Clock DAC IF MHz (1300+IF)MHz LO ADC Pulse Mod. DSP/FPGA DAC Down Convertor RF Klystron Cavity Fig.2-1 低電力高周波(LLRF)系の概略図 z マスターオシレーター(MO)、ローカルオシ 2. 超伝導空洞を持つ線形加速器での低電 力高周波(LLRF)系 z ダウンコンバーター 空洞に電力を供給する高周波源は、様々な装置 z タイミング関連 の組み合わせにより構成されている。このうち、 z デジタル RF コントローラー クライストロンやクライストロンに高電圧を印 加させるためのパルス変調器を除いた部分、機器 で扱う電力が最大で数 kW 程度に収まるところ レーター(LO) その他には z 機器保護システム も LLRF 系の構成要素になっている。 は、低電力高周波(Low level RF;LLRF)系といわ れる。 線形加速器の LLRF 系に対して、RF の振幅と 位相を操作することの他に、最近では一定の精度 をもった RF を供給するという役割が出てきてい る。ILC では、ビームのバンチコンプレッサー 2.1. デ ジ タ ル フ ィ ー ド バ ッ ク 制 御 を 用 い た LLRF 系の構成要素 2.1.1. デジタル RF コントローラー (BCS)において、RF の安定性に対して振幅安定度 デジタル RF コントローラーはデジタルフィー ±0.5%・位相安定度±0.05 度といった厳しい要求 ドバック制御系のなかで特に重要な部分を占め、 が出てきている。この要求を実現するために、デ ADC、DAC と信号処理ユニットから構成となる。 ジタル信号処理を用いたフィードバック制御に 信号処理ユニットには、DSP (Digital Signal よる LLRF 系の開発が進められている。 Processor)もしくは FPGA (Field Programmable デジタルフィードバック制御を用いた LLRF 系 Gate Array)が使われるが、最近では FPGA が採 の構成要素としては以下のようなものからなり、 用されることが多い。DSP の場合、内部での演算 また全体の概略図を Fig.2-1 に示す。 処理能力は強力であるのだが、ADC や DAC のサ ンプリング信号とは非同期であることにより、 となる。この IF 出力にローパスフィルターを用 ADC/DAC と DSP の間にバッファが必要となる。 いて周波数の高い側を取り除くと、 VIF (t ) ≈ V (t ) = Vˆ cos(ω IF t + ∆ϕ ) そしてここで数 µs 程度の遅延時間が発生する。 これに対して FPGA の場合では、信号処理のアル となる。ここで ゴ リ ズ ム を ハ ー ド ウ ェ ア 記 述 言 語 (Hardware 1 Vˆ = VˆRFVˆLO 2 ω IF = (ω LO − ω RF ) description language:HDL)により四則演算から 作る必要がある。しかし ADC/DAC と FPGA の 動作クロックを同期させて動作することが可能 であり、このことにより、信号処理全体で必要と する遅延時間を短縮させることが可能である。 信号処理ユニットの処理能力や信号処理アル ゴリズムの複雑さ等に依存するが、ADC で信号を 読み込み、デジタル信号処理後に DAC でアナロ グ信号が出るまでにかかる遅延時間は、数百 ns (2-2) ∆ϕ = (ϕ LO − ϕ RF ) である。VLO (t ) の振幅・位相が一定であるならば、 VIF (t ) には VRF (t ) の振幅・位相情報がそのまま保 持される(Fig.2-2)。 RF signal LO signal VRF(t)=V^RFsin(ωRFt+φRF) VLO(t)=V^LOsin(ωLOt+φLO) から数 µs のオーダーである。 ILC に要求されている振幅安定度±0.5%・位相 Low Pass Filter 安定度±0.05 度を十分精度良く測定するために は、ADC や DAC に必要とされる bit 数も決まる。 ^ VIF(t)=Vcos(ω IFt+Δφ) デジタル RF コントローラーでは、100MHz 程度 Fig.2-2 RF ミキサーによる周波数変換 のサンプリングレートを持つ 14-ビットの分解能 を持った ADC や DAC が用いられている(Analog devices 製 AD6644 等)。 IF 出力の周波数については、空洞のバンド幅と 比べて十分に大きければ問題はない。今回の超伝 導空洞の場合、空洞のバンド幅は数百 Hz 程度で 2.1.2. ダウンコンバーター ある。 加速器の空洞に使われるレベルの周波数の信 号を直接 ADC で測定するということは、サンプ リング信号のジッターがシビアな問題になり、現 実的ではない。そのため超伝導空洞からピックア ップした信号は、より低い周波数(100MHz 以下) 2.1.3. マスターオシレーター(MO)、ローカルオ シレーター(LO) マスターオシレーター(MO)では、加速器全体で 共通に用いる RF 基準信号をもとにして、周波数 へと周波数変換を行う必要がある。 周波数変換には RF ミキサーを用い、その仕組 1300MHz の RF をつくる。ローカルオシレータ みを以下に示す。2 つの周波数の異なる RF 信号 VRF (t ) と VLO (t ) を RF ミキサーの入力とする。 ー(LO)では、MO で作られた 1300MHz を基にし V RF (t ) = VˆRF ⋅ sin (ω RF t + ϕ RF ) V LO (t ) = VˆLO ⋅ sin (ω LO t + ϕ LO ) (2-1) 理想的な RF ミキサーの場合、その IF 出力は 1 VIF (t ) = VˆRFVˆLO (cos((ω LO − ω RF )t + (ϕ RF − ϕ LO )) 2 − cos((ω LO + ω RF )t + (ϕ RF + ϕ LO ) て、IF 周波数の分だけずらした RF を発振する。 これらの信号は PLL で互いに同期している。 実際の RF 出力には、目的の周波数からずれた 周波数を持つ RF 信号も、ある分布を持って出力 されてしまう。このことが基準となる RF 信号に 対しての位相のずれ、時間領域で見るならばジッ ターを引き起こす。 Fig.2-3 で STF-PhaseⅠで開発した MO におけ る位相ノイズの測定結果を示す。MO と LO の位 相ノイズ(ジッター)は、これらの信号がダウンコ ンバーターの入力信号になるため、空洞の振幅・ 位相の測定に対して、直接の誤差となって反映さ れてしまうことになる。このため MO と LO の位 相ノイズは、空洞の振幅・位相に要求されている 精度以下に抑える必要がある。 Fig.2-4 I 成分、Q 成分と振幅(Amp.)、位相(θ) の関係。極座標系(振幅、位相)とデカルト座標系(I/Q) の関係である. 2.2. 高周波系での変動の要因 高周波系の運転において、空洞の振幅や位相に 変動を与える要因としては、気温・水温の変化、 クライストロン印加電圧の変動、クライストロン Fig.2-3 マスターオシレーターの RF 出力(1300MHz)の の入出力非線形性、RF ミキサー、アッテネータ、 位相ノイズ分布の測定例(STF)。横軸:1300MHz からの 位相器の非線形性等が考えられる。以下では、超 オフセット周波数、縦軸:位相ノイズの強度(dBc/Hz)。 伝導空洞を用いることにより生じる変動として、 2.1.4. タイミング関連 ADC/DAC のサンプリング信号や FPGA のクロ ック信号などのデジタル RF コントローラーを制 御するための信号を取り扱う。これらの信号は、 MO の 1300MHz と PLL により同期している。 Lorentz force detuning と Microphonics につい て説明する。 2.2.1. Lorentz force detuning 超伝導空洞では冷却効率を高めるために、空洞 の壁は数 mm の厚さで作られている。このため IF 出力の周波数と ADC のサンプリング周波数 RF が空洞に投入された際に、空洞壁に作用する の間の関係については、それらの選択の仕方によ Maxwell 応力によって空洞の形を変形させてし り空洞の振幅・位相もしくは I/Q 成分(I/Q 成分と まい、結果として空洞の共振周波数が変わるとい 振幅・位相の関係を Fig.2-4 に示す)を再構築する った現象が起きる。ここで生じる detuning 量は、 アルゴリズムが変わってくるが、特に制限は無 空洞内の加速電場の二乗に比例し、空洞内電界が い。 高くなると、その効果を無視することができなく しかし、ADC からのデータを取り込んだ後のデ なる。Fig.2-5 は TTF における空洞の Lorentz ータの再構成の分かりやすさから、IF 周波数の 4 force detuning の測定例である。図からわかるよ 倍の周波数で ADC/DAC のサンプリング信号や うに、加速電圧が高くなると周波数の変動量が大 FPGA のクロック信号で動作させるものが多い。 きくなることを示している。 こうすることにより、測定した値を I、Q、-I、 -Q と割り振ることが可能なためである。 超伝導空洞をパルス運転する場合には、前もっ て空洞の共振周波数を運転周波数からずらして おき(Pre-detuning)、ビームを加速させる頃に空 洞の共振周波数が運転周波数に近づくようにさ せる。これによりフィードバック制御にかかる負 荷が軽減でき、また空洞へ投入する RF 電力を下 げることができる。 Fig.2-5 Lorentz Force Detuning の測定例(TTF)。電場 が高くなるほど、周波数のずれ(従って位相のずれ)が 大きくなる. 2.2.2. Microphonics Microphonics とは、空洞の周りの環境からの振 動が空洞に伝わることにより、空洞の共振周波数 に変調を与える現象のことである。超伝導空洞の 場合では、バンド幅が狭いために加速電場に大き く影響を及ぼすこととなる。 この Microphonics は、施設ごとにその大きさ が変わるものとなる。TTF での測定例では、 Microphonics による空洞の共振周波数の変化は 大体 10Hz(rms)程度である。 3. 連続信号系の制御理論 フィードバックの設計・解析は制御理論の道具 立てを用いて行われる。最初に連続信号(アナログ 信号)系での制御理論について、きわめて大まかに 紹介する。 dn dn−1 d n + an−1 n−1 +L+ a1 + a0 y(t) dt dt dt dm dm−1 d = bm m + bm−1 m−1 +L+ b1 + b0 u(t) (3−1) dt dt dt となる。但し、多くの場合で n ≥ m が成り立つ。 3.1. システムと制御 3.2. 伝達関数 図に示すようにシステムを入出力関係であら わし、システムへの入力を u (t ) 、出力を y (t ) とす る。 3.2.1. 伝達関数 微分方程式で伝達要素を表した場合には、伝達 要素数が増えてゆくとともに計算が煩雑になる。 入力信号 u(t) システム (伝達要素) G 出力信号 y(t) Fig.3-1 システムと入出力信号 そのため通常は、以下のようにラプラス変換をも とにした伝達関数により、システムの解析が行わ れる。式(3-1)の両辺について、初期条件はすべ て 0 としてラプラス変換すると、 (s ここで扱うシステムについては、以下のことが y1(t ) 、y 2(t ) の時に、入力信号 u1(t ) + u 2(t ) に対して、出力信号は y1(t ) + y 2(t ) となる。 また、入力信号 αu (t ) に対する出力信号は、 αy (t ) となる。 2) 時不変性 入力信号 u (t ) の時間シフトが、そのまま出 力信号 y (t ) の時間シフトになる。つまり、 入力信号 u (t + T ) の出力信号は y (t + T ) と なる。 3) 因果性 ( ) + a n−1 s n−1 +L+ a1 s + a0 Y (s) ) = bm s m + bm−1 s m−1 + L+ b1 s + b0 U (s) 成り立つとする。 1) 線形性 入力信号 u1(t ) 、 u 2(t ) に対して出力信号が n (3-2) となる。ラプラス変換は以下のように定義する。 F ( s ) = L[ f (t ) ] := ∞ ∫ f (τ )e − st dτ (3-3) 0 またラプラス逆変換については、次のように定義 する。 −1 f (t ) = L σ + i∞ [F ( s )] := ∫ F ( s )e st ds (3-4) σ − i∞ ここで、 s は複素数 s = σ + iω であり、ラプラス 演算子と呼ばれる。 σ = 0 の場合は、フーリエ変 換となり、ラプラス変換はフーリエ変換の拡張で あることがわかる。 出力信号 y (t ) のラプラス変換 Y ( s ) 、入力信号 出力信号は、入力信号の過去と現在の値の u (t ) のラプラス変換 U ( s ) 、これらの比を G ( s ) と みに依存する。 すると 通常、これらの性質を持つシステムを LTI(linear time invariant)システムという。多くの自然界の システムの場合、入出力間の関係は、微分方程式 で表すことができ、 G (s) = Y (s) U (s) bm s m + bm −1 s m −1 + L + b1 s + b0 = s n + a n −1 s n −1 + L + a1 s + a 0 (3-5) となる。このようにすべての初期値を 0 とした出 力信号と入力信号のラプラス変換の比 G (s ) を伝 達関数と呼ぶ。この伝達関数を用いると、入出力 3.2.3. 伝達関数の安定性 については、 G (s ) のステップ応答を部分分数分解すること により(ここでは、伝達関数 G (s ) の極は互いに異 Y ( s ) = G ( s )U ( s ) (3-6) と表すことができる。ここで Y ( s ) = 0 の m 個の解 を pi とし、 U ( s ) = 0 の n 個の解を z i とすると、 伝達関数 G (s ) は K (s − z1 )(s − z 2 )L (s − z m ) (3-7) (s − p1 )(s − p 2 )L (s − p n ) とも表すことが出来る。ここで pi を極、z i を零点、 G (s) = K をゲインと呼ぶ。 なるとする) G(s) = c0 c c c + 1 + 2 +L+ n (3-12) (s − pn ) s (s − p1 ) (s − p2 ) となる。これに逆ラプラス変換を行うと g (t ) = L−1[G( s)] = c0 + c1e p1t + c2e p 2t + L + cne p n t (3-13) となる。つまり、極の実部 pi がすべて負であるな らば、 t → ∞ で g (t ) = c0 となる。よって安定な 3.2.2. インパルス応答、ステップ応答 システムというのは、すべての極の実部が負であ 単位インパルス関数、単位ステップ関数と呼ば れる信号を入力信号 u (t ) として、そのときの出力 信号 y (t ) により、システムの入出力特性を調べる ことが行われる。単位インパルス信号には、デル タ関数 δ (t ) が用いられ、単位インパルス信号を 入力とした場合の出力をインパルス応答と呼ぶ。 デルタ関数では ∞ (t = 0 ) ∞ δ ( t ) := , ∫ δ (τ ) d τ = 1 ≠ 0 ( t 0 ) −∞ 3.3. 状態方程式 伝達関数は、システムの入出力関数に注目する ものである。そのためシステム内部は、ブラック ボックスのままであり、また初期値は 0 となって いるので、システム内部の信号の振る舞いを考慮 (3-8) できない。つまり超伝導空洞のように、空洞内の 電場によって、空洞の共振周波数が刻々と変化し で定義される。このデルタ関数のラプラス変換は ∞ L[δ (t )] = ∫ δ (τ )e −st dτ = 1 る必要がある。 てゆくような場合には対応できない。 このような問題に対処するために、システムの (3-9) 0 よって式(3-6)より、 内部状態も考慮した状態空間表現が知られてい る。状態空間では、状態ベクトルと呼ばれる x(t ) を用いて、1 階の微分方程式である状態方程式と Y (s) = G (s) 出力方程式と呼ばれる代数方程式でシステムを となる。つまりインパルス応答がわかるというの は、システムの伝達関数が分かることを意味す る。 単位ステップ関数は 記述する。 x& (t ) = A ⋅ x (t ) + B ⋅ u (t ) y (t ) = C ⋅ x ( t ) + D ⋅ u ( t ) (3-14) 伝達関数の場合と異なり、状態方程式では多入力 0(t < 0) ϑ (t ) := 1(t ≥ 0) (3-10) かつ多出力であるシステムについても記述が可 能となる。一般的な場合では、状態ベクトル x(t ) と定義される。この単位ステップ関数のラプラス は n×1 ベクトル、入力ベクトル u (t ) はr×1 ベク 変換は トル、出力ベクトル y (t ) は p×1 ベクトル、システ ∞ L[ϑ (t )] = ∫ ϑ (τ )e − st dτ = 0 となる。 1 s (3-11) ム行列 A は n×n 行列、入力行列 B は n×r行列、 出力行列 C は p×n 行列、D は p×r行列である。 しかし状態方程式では、システムについて数式 でモデル化をおこなう必要があり、システム内部 を数式でモデル化できない場合では、適用するこ とができない。後ほど 5 章において、RF 空洞に ついて状態方程式を用いたモデル化を行う。 3.3.1. 伝達関数との関係 状態関数と伝達関数との間の関係は以下の通 り。状態関数にラプラス変換を行い、 sX ( s ) = A ⋅ X ( s ) + B ⋅ U ( s ) ⇒ X ( s ) = ( sI − A ) −1 BU ( s ) Y (s) = C ⋅ X (s) + D ⋅U (s) { } ⇒ Y ( s ) = C ( sI − A) −1 BU ( s ) + D ⋅ U ( s ) となる。ここで x(0)は 0 としている。よって伝達 関数 G (s ) は G (s) = Y (s) / U (s) { = C ( sI − A) −1 BU ( s ) + D } (3-15) と求まる。 また、式(3-15)より A の固有値、つまり特性方 程式 pI − A = 0 の解 pi は伝達関数 G (s ) の極に等しい。伝達関数 の場合と同様に、システムについては A の固有値 pi の実部がすべて負であれば安定である。 4. フィードバック制御 合、フィードバックは安定に動作せず発振してし まう。 4.1. 開ループと閉ループ 制御系としては、Fig.4-1 に示すものに分けられ る。Fig.4-1(a)に示したようなシステムでは、その 出力が入力に影響を与えないもので、これは開ル ープ制御(フィードフォワード制御)という。 Fig.4-1(b)に示したように、システムの出力が入 力側へ戻され、システムの入力へ影響を与える場 4.2. PID 制御 PID 制御は、よく使われているフィードバック 制御の方式であり、P は比例(Proportional)、I は 積分(Integral)、D は微分(Derivative)の頭文字を 表す。 C(s) 合を閉ループ制御、またはフィードバック制御と いう。 k I/s フィードバック制御において、入力信号とシス テムの出力信号の差を偏差 e(t ) と呼ぶ。この場 合、入力信号は出力信号の目標値といった意味を r(s) + e(s) kP + - U(s) G(s) Y(s) 持つ。 kDs (a) 出力信号 Y(s) 入力信号 U(s) システム G(s) この PID 制御においては、入力信号とシステム の出力信号の差である偏差 e(t ) に対して、 (b) 入力信号 U(s) + - システム G(s) 出力信号 Y(s) では、それぞれに偏差 e(t ) の過去、未来の情報が Fig.4-1 開ループと閉ループ. 反映することとなる。PID 制御のコントローラー (Fig. 4-2 の C (s ) )を式で表すと、操作信号 U (t ) と O. L. ( s) は G (s) = G (s) = Y (s) / U (s) C . L. ( s) は となり、閉ループの伝達関数 G G (s) G C .L. ( s ) = 1 + G (s) H (s) I 制御:偏差 e(t ) の積分値を U (t ) に返す。 といった操作を行う。このため、P 制御には偏差 e(t ) の現在の情報が反映される。I 制御、D 制御 システム H(s) O .L. P 制御:偏差 e(t ) を操作信号 U (t ) に返す。 D 制御:偏差 e(t ) の変化量を U (t ) に返す。 開ループの伝達関数 G Fig.4-2 PID 制御. (4-1) 偏差 e(t ) を使って t U (t ) = k P e (t ) + k I ∫ e (τ ) d τ + k D 0 (4-2) と書くことが出来る。 フィードバック制御での出力 y (t ) が安定かど うかについては、Fig.4-2(b)のシステムにおいて、 G0 ( s ) = G ( s ) H ( s ) の周波数応答 G0 (iω ) より、位 相差が − 180 度となる場所で、その絶対値が1を 超えるかどうか、によって評価する。1 以上の場 de (t ) (4-3) dt となる。ここで、 k P を比例ゲイン、 k I を積分ゲ イン、 k D を微分ゲインと呼ぶ。この PID 制御の コントローラーを伝達関数で表した場合には C (s) = k P + と書くことができる。 kI + kDs s (4-4) 4.3. 線形加速器の高周波源のフィードバック制 御の実例 周 波 数 、 ADC/DAC の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 ここでは、線形加速器の高周波源にフィードバ 48MHz、信号処理ユニットには FPGA(内部クロ ック制御が用いられている例として、ともにパル ック 48MHz)を使うことにより、ケーブルによる スモードで RF 系の運転をしているが、超伝導空 遅延も含めて、全体の遅れを 0.5μs 程度にしてい 洞を用いている TTF と常伝導空洞の J-PARC の る。J-PARC のシステムでは、パルス幅 650μs システムについて、説明を行う。 の空洞の加速電圧に対して、振幅と位相の安定度 速化が要求される。J-PARC では、12MHz の IF ±0.15%以下、±0.15 度以下という結果を得てい る。 Fig.4-3 TTF の DSP を使った FB 系の模式図。 TTF で採用しているフィードバック制御の模 式図を Fig.4-3 に示す。この TTF のシステムでは、 IF 周波数は 250kHz、ADC のサンプリング周波 数 1MHz である。信号処理ユニットには 3 台の DSP(内部クロック 40MHz)が使われている。信号 処理のアルゴリズムは、P 制御のフィードバック とフィードフォワードであり、必要な計算時間 は、ADC/DAC での処理時間を含めて、4.2μs で ある。 このシステムにより TTF では、パルス幅 800 μs の空洞の加速電圧に対して、振幅と位相の安 定度 0.1%以下、0.05 度以下という結果を得てい る。 次に J-PARC のフィードバック制御の模式図を Fig.4-4 に示す。TTF の場合と違って J-PARC で は、常伝導空洞のため空洞の Q 値が大幅に下が り、結果として P 制御のみのフィードバックでは 比例ゲイン k P に余裕が無くなる。そのため信号処 理のアルゴリズムには、PI 制御のフィードバック とフィードフォワードを用いている。I 制御を加 えたために、デジタル制御系に対して処理系の高 Fig.4-4 J-PARC での FPGA を用いた FB 系の模式図 5. RF 空洞のモデル化 QL = RF 空洞内の加速電場の状態方程式を求めるた ω 0W (5-3) Ptot の状態は LCR の等価回路の共振により記述でき Ptot は Pdiss と Pext の和であるので Ptot = Pdiss + Pext る。この等価回路モデルでは、空洞を励振させる となる。これら(5-1)~(5-3)式より クライストロンやビームは電流源として取り扱 1 1 1 = + QL Q 0 Q ex t めに、空洞のモデル化を行う。共振モードの空洞 われる。 (5-4) (5-5) が求まる。超伝導空洞の場合、Q0 は Qex t よりも非 5.1. RF 空洞の基礎方程式 高周波系全体のモデルを Fig.5-1 に示す。ここ 常に大きく、Q0 >> Qex t 、つまり Q L ≈ Qex t となる。 では、空洞は L、C、R の並列回路、伝送線路と 空洞間のカプラーを巻き数 n の理想変圧器であら Ig Ib わしている。 I cav Transmission line L Z ext Klystron R C Beam Cavity Beam R L C Fig.5-2 空洞側に変換した回路. Klystron Fig.5-2 は、空洞側から見た高周波系のモデルを 示す。この図でのクライストロン電流源と伝送線 路は、理想変圧器によって変換されている。伝送 線路のインピーダンスを Z 0 とするならば、外部負 Coupler 1:N Fig.5-1 高周波系全体のモデル. 荷 Z ex t = N ⋅ Z 0 である。外部負荷 Z ex t は空洞の 2 空洞の Q 値は以下のように定義される。 Q= ω 0W Pdiss 抵抗 R と並列に配置されるため、合成抵抗 RL は ここで W は空洞で蓄積されたエネルギー、 ω0 は 空洞の共振周波数、 Pdiss は空洞内で消費された電 力である。空洞壁での抵抗のみで電力が消費され た場合を空洞の無負荷の Q0 と定義する。 エネルギーは空洞内の壁での消費ばかりでな く、カプラーや外部負荷を通して抜け出す。ここ で external Q ( Qext )を次のように定義する。 Q ext = ω 0W Pext 1 1 1 = + RL R Z ex t (5-1) (5-2) Pext は外部負荷によって消費された電力である。 次に loaded Q ( QL )を定義する。 (5-6) となる。 空洞について、次の量を定義する。 R L 1 = ω0L = = (5-7) Q0 ω 0C C この R Q0 は L 、C 、ω0 にのみ依存する空洞の形 状性質を特徴付ける量である。規格化シャントイ ンピーダンス r Q は、次式で定義する。 R r 2⋅R := sh = Q Q0 Q0 (5-8) Rsh は空洞のシャントインピーダンスといい、空 洞への入力電力に対する加速電場の変換効率を あらわす。1:n の理想変圧器の代わりにカップ リング因子 β を R と Z ex t の比として定義する。 β = R R = Z ex t N 2Z0 ) する。位相角ψ と電圧 V を L と C ではなく、ω 0 と Q L で表すとすると、 (5-10) ω ω tan ψ = Q L ⋅ 0 − ω0 ω ) ) RL I0 V = 1 + tan 2 ψ (5-11) となる。発振器の周波数 ω が空洞の共振周波数 ω 0 と接近している場合には、近似として (5-9) この β を用いることにより、 R RL = 1+ β Q0 QL = 1+ β tan ψ ≈ 2 Q L ⋅ と書くことが出来る。この β は常伝導空洞の場 合、大体1のオーダーであるが、超伝導空洞の場 合には、 Q0 >> QL なので、 β は 10 といった大 Fig.5-2 から Kirchhoff の法則により I C + I R + I L = I g + I b = I (5-12) が成り立つ。ここで I C 、 I L 、 I R は C 、 L 、 RL に流れる電流で、各々では (5-13) V L であるため、LCR 共振回路の微分方程式が次のよ うに求まる。 1 & 1 1 V&&(t ) + V (t ) + V (t ) = I&(t ) RL C LC C ω ωR 2 V&&(t ) + 0 V& (t ) + ω0 V (t ) = 0 L I&(t ) Ql (5-14) QL ) RL I 0 (5-17) ∆f f (5-18) 2 洞のバンド幅(電圧がピーク値の半分になる周波 数) ω1/ 2 は ω1 / 2 = V I& R = RL = 2Q L ⋅ (5-16) ∆ω 1 + 2Q L ⋅ ω ここで、 ∆ω = ω 0 − ω である。(5-17)式より、空 I& C = C V&& IL = ω ) V (∆ ω ) ≈ 3 きな値になる。 ∆ω ω0 (5-19) 2QL となる。 5.2. RF 空洞の状態方程式 r r V (t ) = (V I (t ) + iV Q (t )) ⋅ e iω t r I (t ) = ( I I (t ) + iI Q (t )) ⋅ e iω t (5-20) を代入して V の二次の項を省略する。その結果、 以下の一次の微分方程式となる。 ここで 1 RL C = ω0 QL 、 1 LC = ω0 であり、 ω0 は V&I + ω 1 2V I + ∆ ω V Q = R L ω 1 2 I I LCR 回路の共振周波数である。電流について V&Q + ω 1 2V Q − ∆ ω V I = R L ω 1 2 I Q 2 ) I (t ) = I 0 sin(ωt ) とおくと、電圧側は (5-21) ω1/ 2 = ω 0 2QL は空洞のバンド幅、 ∆ω = ω 0 − ω ) V ( t ) = V ⋅ sin( ω t + ψ ) 1 tan ψ = R L ⋅ − ωC ωL ) ) RL I0 V = 2 1 − ωC 1 + RL ωL r 式(5-14)に I/Q 成分に分離した電圧 V 、電流 I は空洞の detuning である。式(5-21)を行列の形 (5-15) と解くことができる。位相角ψ は、電圧 V と電流 I の間の角度で、空洞の tuning angle として定義 で書くと、以下のようになる。 II d VI − ω1/ 2 − ∆ω VI V + RLω1/ 2 I (5-22) V = dt Q ∆ω − ω1/ 2 Q Q ここで VI x(t ) = VQ II u(t ) = IQ − ∆ω − ω A = 1/ 2 ∆ω − ω1 / 2 R ω B = L 1/ 2 0 RLω1 / 2 0 VI (s) I (s) 、 I(s) = RL I V(s) = G(s) ⋅ I(s) 、 V(s) = I (s) VQ (s) Q とおくと、RF 空洞の伝達関数は (5-23) G(s) = ω1 2 s +ω1 2 − ∆ω (5-30) ∆ω + (s +ω1 2 ) ∆ω s +ω1 2 2 2 となる。 とおくと、 x&(t ) = A ⋅ x(t ) + B ⋅ u(t ) (5-24) と状態方程式の形で表わすことができる。ここで 状態ベクトル x(t ) の一般解は t x(t) = e ⋅ x(0) + ∫ e A⋅t である。 e ここでは Lorentz force detuning による共振周 波数について、状態方程式を用いたモデル化をお A⋅(t −t′) ⋅B ⋅ u(t ′) dt ′ (5-25) こなう。Maxwell 応力によって空洞内の体積変化 が一次式に変化すると仮定すると、定常状態での 0 A⋅t 5.4. Lorenz force detuning のモデル化 は状態遷移行列といい、次のように detuning 量は空洞内の電場の 2 乗に比例する。 ∆f0 = ( f0 )2 − ( f0 )1 = −Km ⋅ Eacc 2 定義される。 1 2 2 1 3 3 A t + A t + L (5-26) 2! 3! A⋅t 今回の RF 空洞の状態方程式の場合、 e は − sin(∆ωt ) −ω t cos(∆ωt ) (5-27) e A⋅t = e 1 2 sin( ω t ) cos( ω t ) ∆ ∆ I となる。例として一定な入力 u = が空洞に与 0 e A⋅t = 1 + At + えられた場合を考えると、一般解は VI RL ⋅ I ⋅ ω1 2 = V ω 2 + ∆ω 2 ⋅ Q 12 −ω1 2t − ω1 2 cos(∆ωt) + ∆ω sin(∆ωt) ω1 2 e − ω1 2 sin(∆ωt ) + ∆ω cos(∆ωt) + ∆ω (5-28) ω ⋅ 1 2 ∆ω ここで K m はローレンツ応力定数として定義す る。 Eacc は空洞内の加速電場。 ( f 0 )1 は加速電場 Eacc =0 での共振周波数。( f 0 )2 は Eacc で定常状態 になった電場での共振周波数である。 ローレンツ応力による空洞の共振周波数の変 化を記述する式としては、以下のものが使われて いる。 d2 ωm d ∆ω + ωm2∆ω = −2π ⋅ Kmωm2Eacc2 ∆ω + 2 dt Qm dt (5-32) ∆ω(t) = ω0 −ω ωm は空洞の機械的な共振周波数、Qm はその Q 値 である。これを状態方程式であらわすと となる。 t → ∞ では、 V I R L ⋅ I ⋅ ω1 2 = V ω 2 + ∆ω 2 Q 12 (5-31) (5-29) となって、一定値をとる。 1 ∆ω d ∆ω 0 2 0 = − ⋅ 2 π ω K 2 m m E 2 (5-33) dt∆ω& −ωm −1τm∆ω& acc となる。ここでは τ m = 2Qm ωm であり、空洞の機 械的時間定数と定義する。 ωm 、 Qm 、 K m は空洞 の形状やサポート機構等に依存するため、最終的 には測定により決まる量である。 5.3. RF 空洞の伝達関数 式(5-21)での RF 空洞の状態方程式で A、B が 決まったため、式(3-15)を用いて RF 空洞の伝達 関数を求めることが出来る。結果としては 5.5. MATLAB/Simulink によるシミュレーショ ン 制御系の解析・設計に幅広く利用されて、信頼 性は非常に高い MATLAB/Simulink を用いて、超 伝導空洞を含めた高周波系のモデル化を行う。 ドバックとフィードフォワード制御ができるよ MATLAB とは、行列演算を基本とする数値演算 うになっている。 を行い、その結果を数値やグラフに表示するソフ STF では、2 種類の超伝導空洞を開発中であり、 トウェアである。Simulink では、制御系をブロ 各空洞のパラメーターを Table.5-1 に示す。これ ック線図による表現することができ、また状態方 らの超伝導空洞について、今回のモデルを用いて 程式によるモデル化も可能である。 シミュレーションを行う。条件としては、フィー ドバックゲインは 50、シミュレーション開始後 空洞内の電場の状態方程式は、 Vcav を空洞内の 0.1ms から RF が入力開始、RF パルス立ち上が 加速電場とすると り後 0.55ms 後で平均電流 10.83mA のビームが入 I I d VcavI −ω1/ 2 −∆ω VcavI R ω = + L 1/ 2 I (5-34) dt VcavQ ∆ω −ω1/ 2 VcavQ Q 射、そこから 0.83ms 後に RF とビームが同時に である。また、Lorentz force detuning による状 態方程式は 1 ∆ω d ∆ω 0 2 0 = 2 −2π ⋅ Kmωm 2 (5-35) dt∆ω& −ωm −1τm∆ω& Vcav となる。 空洞のモデル化では、以下のようになる。最初 r に式(5-34)により Vcav を求める。これにより Vcav 2 を計算して、式(5-35)を解くことにより ∆ω を求 める。次には、前のステップでの ∆ω を使って式 r (5-34)を解いて…という手順で Vcav と ∆ω をその 都度に変えて計算を行う。これにより、伝達関数 では評価できない時間的に空洞内部の変数が変 更していく場合の空洞のモデル化が可能となる。 Fig.5-3 では、Simulink 上での空洞を含めた RF フィードバック系のモデルの配置図を示す。この モデルは、空洞と RF コントローラーから構成さ れ、RF コントローラーには P 制御によるフィー -K- |u| u Att 1e6 Att1 In1 Out V_Set_Table SP Table FB_Out loop phase 2 0 ib_out Beam df_mic df_mic FF_Out microphonic Feedforward1 |u| u sqrt_P_rev df SS_Cav |u| u rad deg rad-deg rad deg rad-deg1 Scope rad-deg3 Beam b1b 2 deg Terminator rad lb_in df FB gain table rad deg rad-deg2 Feedback Loop Phase |u| u V sqrt_P_for FB Gain Table sqrt_P_ref sqrt_P_for |u|2 Math Function 2 |u| P_ref -K- Math Att2 Function1 P_for Fig.5-3 RF フィードバック系の Simulink によるモデル オフとなっている。 Table.5-1 STFでインストールする超伝導空洞のパ ラメーター パラメーター 35MV/m 45MV/m (r Q ) [Ω] 1016 1144 QL 2.20×106 2.60×106 バンド幅 f1 2 [Hz] 295 250 Eacc [MV/m] ビーム電流 [mA] 35 45 10.83mA 10.83mA Fig.5-4 と Fig.5-5 では、各空銅の加速電圧と入 力電力を現している。しかし、このシミュレーシ ョンでは、Lorentz force detuning の効果を含め ていない。 Fig. 5-4 STF-35MV/m 空洞での加速電圧と入力電力 Detuning の効果は入れていない Fig. 5-5 STF-45MV/m 空洞での加速電圧と入力電力 Detuning の効果は入れていない 6. 離散信号系での制御 ルドと呼び、ADC にその役割がある。ここではゼ ロ次ホールドの伝達関数を求める。 連続時間信号 u(t)をサンプリングした離散時間 6.1. 連続信号系の離散化 信号で表すと ∞ 6.1.1. サンプリング u (t ) = ∑ u ( nT ) ⋅ [ϑ (t − nT ) − ϑ (t − (n + 1)T )](6-3) アナログ信号をデジタル化(離散化)する際に、 サンプリングという操作を行う。サンプリングと は、アナログ信号を時間軸方向に切り出してゆく ことである。 u *(t) u(t) n =0 となる。ラプラス変換を行うと ∞ e − nTs e − ( n +1) Ts U ( s ) = ∑ u ( nT ) ⋅ − s n=0 s − Ts ∞ 1− e = ⋅ ∑ u ( nT ) ⋅ e − nTs s k =0 (6-4) となる。ここで ∞ ADC ∑ u ( nT ) ⋅ e − nTs k =0 ∞ = L ∑ u ( nT ) ⋅ δ (t − nT ) (6-5) k =0 は u(t)を t=nT でサンプリングした数列のラプラ t 0 0 5T 10T t ス変換であるので、ゼロ次ホールドの伝達関数は サンプリングパルス 時間間隔:T 1 − e − Ts H (s) = s Fig.6-1 アナログ信号のサンプリング (6-6) となる。 サンプリングに用いるパルス列は、単位インパ ルス列として、 f (t ) = ∞ ∑ δ (t − nT ) (6-1) n = −∞ として表すことができる。アナログ信号 u(t)のサ 関数 X (z ) を求めることをz変換と呼び、以下の ∞ u * (t ) = u (t ) ⋅ ∑ δ (t − nT ) n=0 = ∑ u ( nT ) ⋅ δ (t − nT ) 6.2.1. z変換 離散時間信号 x(nT ) に対して、その周波数特性 ンプリング後の信号列 u*は ∞ 6.2. 伝達関数の離散化 (6-2) n=0 となる。ここで T をサンプリング間隔(周期)、1/T をサンプリング周波数と呼ぶ。 サンプリングの際に注意することとして、アナ ように定義される。 X ( z ) = Z [x ( nT ) ] = ∞ ∑ x ( nT ) z −n (6-7) n = −∞ ここで z −n を掛けることは、n サンプリング分、 つまり n×T 時間の分だけ信号を遅らせる操作に 対応している。 ログ信号の周波数情報を保持できるのは、最大で サンプリング周波数の半分の周波数までと決ま っている(サンプリング定理)。 6.2.2. 伝達関数の離散化 連続時間系で表現されている伝達関数 G(s)の ステップ応答を y(t)とすると、離散時間系での伝 6.1.2. ゼロ次ホールドの伝達関数 デジタルフィードバック制御系では、連続時間 系の信号をサンプリングの後にサンプリング間 隔 T の間、その値を保持する。これをゼロ次ホー 達関数 H(z)は、ゼロ次ホールドの伝達関数を用い て以下のようにして求められる。 e −Ts G(s) 1 − e −Ts G(s) − H ( z) = Z G(s) = Z Z s s s = Z [ y(t )] − Z [ y(t − T )] = Z [ y(t )] − z −1 Z [ y(t )] ( Bd = ∫ e A⋅(T −t′) ∞ ATn B dt ′ = T ∑ B n=1 (n + 1)! (6-12) となる。この離散化した状態方程式へ z 変換を行 ) うと zX ( z ) = Ad ⋅ X ( z ) + B d ⋅ U ( z ) となる。これを用いて RF 空洞の伝達関数 G(s) = T 0 G(s) = 1 − z Z L−1 s −1 Ad = e A⋅t ⇒ X ( z ) = ( zI − Ad ) −1 B d U ( z ) RLω1 2 s + ω1 2 − ∆ω ∆ω 2 + (s + ω1 2 ) 2 ∆ω s + ω1 2 Y ( z) = C ⋅ X ( z) + D ⋅U ( z) { } ⇒ Y ( z ) = C ( zI − Ad ) −1 B d U ( z ) + D ⋅ U ( z ) の離散化を行うと、離散化した空洞の伝達関数と となるので、離散化した伝達関数 H(z)は H ( z) = Y ( z) /U ( z) 得られる。 { = C ( zI − Ad ) −1 B d U ( z ) + D } (6-13) となる。 6.3. 状態方程式の離散化 連続時間系で表現されている状態方程式は x& (t ) = A ⋅ x (t ) + B ⋅ u (t ) 6.4. RF 空洞の状態方程式の離散化 であり、この状態方程式の状態ベクトル x(t ) の一 6.4.1. 加速電場の状態方程式の離散化 般解は t x(t ) = e A⋅t ⋅ x(0) + ∫ e A⋅(t −t′) ⋅B ⋅ u(t ′) dt ′ (6-8) 0 である。ここで t=nT から t=(n+1)T への状態の遷 空洞内電場の状態方程式は連続状態では、 II d VI − ω1/ 2 − ∆ω VI R ω + = L 1/ 2 I dt VQ ∆ω − ω1/ 2 VQ Q (6-14) − ∆ω − ω A = 1/ 2 ∆ω − ω1 / 2 0 R ω B = L 1/ 2 RLω1 / 2 0 (6-15) 移を考えると A⋅T x((n +1)T) = e ⋅ x(nT) T + ∫ eA⋅(T−t′) ⋅B⋅ u(t′) dt′ (6-9) 0 と記述できる。式(6-12)を用いて、離散系の状態 となる。ゼロ次ホールドにより u (t ) = u ( nT ); nT ≤ t < ( n + 1)T 方程式 とサンプリング時間 T の間で出力は一定である。 よって時間を離散化した場合の状態方程式は、次 のように表せられる。 Ad = e A⋅T = e x((n + 1)T ) = e A⋅t ⋅ x(nT) T + ∫e A⋅(T −t′) B dt ′ ⋅ u(nT) (6-10) 0 これを以下のように書き直す。 x((n +1)T ) = Ad ⋅ x(nT) + Bd ⋅ u(nT) ここで Ad 、 Bd は、それぞれに x((n + 1)T ) = Ad ⋅ x(nT ) + Bd ⋅ u (nT ) へ変換を行う。計算の結果、 Ad と Bd は (6-11) −ω1 2t R ω Bd = T L 1 / 2 0 cos(∆ωT ) − sin(∆ωT ) sin(∆ωT ) cos(∆ωT ) (6-16) 0 RLω1 / 2 ここでサンプリング時間 T を 0.1μs(10MHz)とす ると、 ω1/ 2 、 ∆ω は数百 Hz 程度のため Ad は、 − T ∆ω 1 − Tω1 / 2 Ad ≈ 1 − Tω1 / 2 T ∆ω (6-17) となる。 6.4.2. Lorentz force detuning の状態方程式の 離散化 連続系での Lorentz force detuning による空洞 の共振周波数の変化を表す状態方程式は 1 ∆ω 0 2 d ∆ω 0 = 2 +2π ⋅ Eacc (6-18) dt∆ω& −ω −1τm∆ω& −Kω2 Development Kit-Ⅳ) を Fig. 6-2 に示す。この FPGA ボードは、2 個の 14bit ADC(AD6645)、2 個の 14bit DAC(AD9772A)、そして FPGA(Xilinx Virtex-Ⅳ)が組み込まれている。 このシミュレーターでは、ADC から入力した模 擬のクライストロン RF 出力の I/Q 信号に対して、 FPGA により空洞の電気的モデルの方程式を離散 的に解いてゆくことで空洞の加速電圧を求め、 DAC より空洞出力波形を I/Q 信号もしくは IF 周 波数に変調されたものとして出力すると同時に、 であるが、これを離散系での状態方程式に変更し この加速電圧の値を用いて機械的モデルの方程 ようとしても、きれいな形にならない。但し、連 式を解き、共振周波数の変化値を求める。ここで 続系での状態方程式での行列 A 、B 内の各成分は 時間的に一定値のままであるので、行列 Ad 、 Bd 求めた値は、次の電気的モデルの方程式を解く際 内の各要素を近似的に数値で求め、それによって 状態方程式の離散化を行う。 に取り込まれる。 この空洞シミュレーターの出力結果を Fig.6-3 から Fig.6-5 に示す。Fig.6-5 での空洞の detuning の効果については、TTF 空洞で採用されている値 を用いた。これらの結果より、MATLAB/Simulink 6.5. 空洞シミュレーター 加速電圧や Lorentz force detuning の状態方 程式の離散化による応用例として、空洞シミュレ によるシミュレーションと FPGA ボードによる 空洞シミュレーターの出力よく一致しているこ とが分かる。 ーターを紹介する。 デジタル LLRF 制御系の性能評価試験を行うた めには、その制御対象である RF 空洞が必要であ るが、導波管で作る模擬空洞では空洞の Q0 値が違 いすぎる。しかし、空洞内の加速電場(電気的モデ ル)と Lorentz force detuning による共振周波数 の変化(機械的モデル)を表わす状態方程式の離散 化を行ったことにより、ADC、DAC をもつ FPGA ボードを用いて、超伝導空洞のシミュレーターを 構築することができる。 Fig.6-3 Fig.6-2 空洞シミュレーター (Xilinx, XtremeDSP Development Kit-Ⅳ) この超伝導空洞シミュレーターの開発に用い た市販の FPGA ボード (Xilinx 製の XtremeDSP 10MHz に変調した空洞出力波形 50 35 40 30 30 20 vavity voltage / MV vavity voltage / MV 25 20 15 10 0 -10 -20 10 -30 5 0 -40 -50 0 Fig.6-4 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 time / s 0.007 0.008 0.009 0.01 400Hz pre-detuning した空洞の ステップ応答。 (上)空洞シミュレーターの出力 (下)MATLAB によるシミュレーション 0 Fig.6-5 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 time / s 0.007 0.008 0.009 0.01 Lorentz force detuning を考慮した 場合の空洞のステップ応答 (上)空洞シミュレーターの出力、 (下)MATLAB によるシミュレーション 7. STF-PhaseⅠの LLRF 系 STF-PhaseⅠでは、RF 系のデジタルフィード バック制御により、超伝導空洞内での加速電圧の 平坦部で 0.3%(rms)の振幅安定度、0.3deg.(rms) の位相安定度の実現を目指している。STF での LLRF 系制御の全体図及び現状の写真を Fig.7-1 と Fig.7-2 に示す。 この LLRF 系は、JPARC で開発された LLRF 系を基本として開発を進めており、PLC、タッチ パネル、コンパクト PCI(cPCI)等から成る。これ Fig.7-1 STF 棟での LLRF 系 ら LLRF の構成要素は 19inch 標準ラック内に取 り付けられ、LLRF 系全体は PLC を介して制御 される。 7.1. STF-PhaseⅠでのデジタル制御系 LLRF 系は、今年春から始まった大電力クライ STF で使われることとなるデジタル制御系は、 ストロンの高電圧試験とカプラーの大電力通過 カスタム FPGA カードを取り付けた DSP ボード、 試験のため、デジタルフィードバック制御系を除 IO ボードといった cPCI に組み込まれるデジタル いた形で運転を行い、大電力クライストロンへ RF 部と IQ 変調器、RF&CLK ユニット及び空洞のモ を供給している。LLRF 系全体はタッチパネルに ニター信号をダウンコンバートする Mixer ユニッ より PLC を介して制御が行われ、大電力クライス トといったアナログ部より構成される。現在、こ ト ロ ン の 運 転 時 、 導 波 管 で の 反 射 に よ る Arc れらの構成要素の製造が完了し、性能評価を始め Detector や VSWR モニターの信号などモニター系 ているところである。 以下に各構成要素の状況を説明する。 から異常状態を示す信号は直接インターロック 回路に取り込まれ、パルス変調器のゲートを数 µs 以内で閉じる仕組みになっている。 PLC LAN Touch Panel Timing Signals LLRF PLC Arc PCLink Timing RS-232C 1300MHz Ref D/I Arc Detector Fast Interlock RF & CLK 1300MHz 40MHz VSWR Meter Tank8 Pf Pr Tuner Tank8 Vc Kly Pf,Pr Circ Pf,Pr I/O DSP Pulse Gate I/Q M Pulse M DAC FPGA ADC 10MHz 1310MHz Tank8 Tank8 Arc CPU cPCI Kly Arc Circ Arc Tank1 Arc DSP BUS (PEM) Tank Vc Tank Pf Trombone Phase Shifter Analog FB 20dB I/Q M PID Arc 20dB 400W Circulator Arc Arc Klystron Tank1 CTRL from PLC Kly Pf Pr I/Q D I/Q D 1300MHz Fig.7-2 STF の LLRF 系の模式図 Circ Pf Pr Tank1 Pf Pr Tank1 Vc Tuner cPCI J3 & J5 Bus CNT Pulse, Interrupt ..... Control I/O の軽減を試みている。 Control Signal J3 Control Pulse Interrupt serial Tuner Control DC Power J1 DC Table.7-1 64-bit Bus CNT Pulse, Interrupt DSP (Barcelona) J5 64-bit Bus J3 serial Tuner Control FPGA 周波数 [MHz] JN4 I/O ADC/FPGA/DAC I/Q signal IQ modulator To Amp.(NIM) LVDS 規格で出力させ、ノイズ等によるジッター J5 RF&CLKユニットで出力する信号 Signal 出力先 役割 RF Mixer ユニット Mixer の LO 信号 1310 1300 RF I/Q 変調器 RF 40 LVDS FPGA ボード クロック信号 10 LVDS FPGA ボード クロック信号 From RF&CLK Mixer 10 MHz From Cavity (1300 MHz) RF & CLK 1300 MHz 1310 MHz 1300MHz の CW の RF は、IQ 変調器によって RF パルスとなった後、固体増幅器、クライストロ 1310 MHz Optical Ref. Signal (1300 MHz) To IQ modulator 40MHz Sine Wave 1300 MHz Ref 1310 MHz LO Clock 40 MHz (Sampling) ン(TH2401A)で増幅され、超伝導空洞へ供給され る。1310MHz の CW の RF は、Mixer ユニットへ 送られる。 Mixer ユニットでは、1310MHz の CW 信号と超 伝導空洞を通過後の RF 信号を入力とし、空洞の 波形と位相の情報を反映した 10MHz の IF 信号が 出力される。この IF 信号は、FPGA ボードの ADC への入力信号となる。 RF&CLK ユニットの各周波数について、ジッタ ーの結果を表 7-2 に示す。ここでジッターは 1Hz から 5MHz までの位相ノイズの強度を積分して求 めたものである。 Table.7-2 周波数 Fig.7-3 デジタル制御系の概略図と写真 RF&CLKユニットで出力する信号のジッ ター(位相ノイズ)の測定結果 ジッター(rms) 位相ノイズ(rms) [MHz] [sec.] [deg.] 1310 688fs 0.32 1300 609fs 0.28 40 2.75ps 4.0×10-2 10 10.1ps 3.6×10-2 7.1.1. RF&CLK、Mixer ユニット RF&CLK ユニットでは、10MHz の基準信号か 1300MHz や 1310MHz では、STF で要求されてい ら、ビーム加速用周波数(1300MHz)と PLL によ る±0.3deg.(rms)の半分程度の位相ノイズ(rms)とい り同期した3種類の周波数を持つ信号(10MHz、 う測定結果となった。これはオフセット周波数の 40MHz、1310MHz)を出力する。各周波数の信号 低い成分(1~100Hz)での測定器系の測定限界によ の役割について、Table.7-1 に示す。40MHz 信号 るものと考えており、実際の位相ノイズ(rms)は (ADC、DAC、FPGA のクロック信号)や 10MHz 信号(FPGA 用クロック信号)は、差動信号である 0.05deg.程度であると考えている。 目標である 0.3%(rms)、0.3deg.(rms)の振幅及び 位相安定度の実現のためには、機器内素子やモニ ターケーブルの温度依存性、RF&CLK ユニットの ォワード制御を行う予定であり、制御プログラム 位相ノイズも重要な要因となる。RF&CLK ユニッ は現在開発中である(Fig.7-5)。 トや Mixer ユニットは水冷により出力の安定化を このデジタル制御系は、空洞シミュレーターを 図る。Mixer ユニットの各ミキサー出力について、 用いることにより、性能評価試験が可能となる。 水温変化と RF 出力変動についての評価試験を行 この性能評価試験の概略図を Fig. 7-6 に示す。今 ったところ、各チャンネルで 0.1deg./℃程度の安定 年秋には模擬空洞及び空洞シミュレーターを用 性が得られている。 いたデジタル LLRF 系全体の評価試験を行う予定 である。 7.1.2. FPGA ボード FPGA ボードは Xilinx 製の VirtexⅡPro30、10 個の 16bit ADC (LT2208)、2 個の 14bit DAC (AD9764)で構成される(Fig.7-4)。ADC は、Mixer ユニットにより IF 周波数(10MHz)へと変換され た各空洞やクライストロンの出力及び空洞から の反射信号を入力とする。 Fig.7-5 STF での RF フィードバック系のシステム図 Cavity Simulator (Xilinx Xtreme DSP KitⅡ) FPGA (Virtex-Ⅱ) Beam Table I Fig.7-4 FPGA ボード DAC Q vv この FPGA ボードは、DSP ボードの高速 I/O ポ Δw Δw = C*w+D*vv ート(PEM)を介してリアルタイムでの制御、デー IF(10MHz) タ 収 集 が 可 能 で あ る (Fig.7-4) 。 DSP ボ ー ド は TMS320C6701 を 4 個搭載した Spectrum Signal 社 の Barcelona を用いる。また DSP ボードは cPCI の CPU ボード上のホストプログラムにより制御 される。 FPGA 内では、ADC から取り込んだデータをも とに空洞の I/Q 成分を測定、PI 制御とフィードフ FF Table FB Gain Table Q-Set Point Table DAC + × + - DAC + × + FF Table FB Gain Table Q ADC I I-Set Point Table FPGA(VirtexⅡpro30) Digital Feedback System - Controller Fig.7-6 空洞シミュレーターを用いたデジタ ル LLRF 系試験の概略図 8. おわりに 超伝導空洞を用いた線形加速器の高周波デジ タルフィードバック制御系の設計・解析について は、従来の伝達関数を用いた手法よりも、モデル を作って状態方程式を解くといった方法がメイ ンになり、そのため MATLAB/Simulink(別にフ リーの Scilab でもかまいませんが)が必須になる と思われる。MATLAB と制御理論をあつかって いるものとして、文献[1]をあげる。文献[6][7]に 実際に MATLAB/Simulink を使った加速器のモ デル化の例が出ている。 線形加速器でのデジタルフィードバック制御 については、文献[2]の 9 章で伝達関数を用いて TTF と J-PARC について議論している。過去の OHO では、文献[3][4]に KEKB リングのビーム と RF のフィードバックが書かれている。 STF の他にも ILC への向けての試験施設がつ くられつつあるが、デジタルフィードバック制御 系は、TTF での成果(文献[5]-[10])が基本になって いる。最新のものは TESLA Report を参照。 STF-PhaseⅠの LLRF 系は、かなりの部分で J-PARC のシステムを参考にしている。J-PARC の LLRF 系については、文献[11][12]参照。 最後に、道園真一郎氏をはじめとする STF の LLRF 関係者の皆様、空洞シミュレーターの開発 にご尽力頂いた Zheqiao Geng さん(IHEP/CHINA) と、この原稿を書く機会を与えていただきました 福田茂樹教授に感謝いたします。 参 考 文 献 [1] 井 上 和 夫 監 修 、 川 田 昌 克 、 西 岡 勝 博 著 , 『MATLAB/Simulink によるわかりやすい制御工 学』 森北出版;青木立、西堀俊幸 著『ディジ タル制御』 コロナ社 [2] 道園真一郎, 「高周波源」 高エネルギー加速器 セミナー OHO ’02 (2002) [3] 飛山真理, 「ビームフィードバックによるビー ムの安定化」 高エネルギー加速器セミナー OHO ’94(1994) [4] 絵面栄二, 「RF フィードバック」高エネルギー加 速器セミナー OHO ’94(1994) [5] T.Schilcher, “Vector Sum Control of Pulsed Accelerating Fields in Lorentz Force Detuned Superconducting Cavities”, TESLA 98-20 Aug. 1998. [6] A. Hofler et al., “RF System Modelling for the JLAB 12GeV upgrade and RIA”, 2003 SRF Workshop Proceedings, Lübeck, Germany. [7] A. Vardanyan, et al., “An Analysis Tool for RF Control for Superconducting Cavities”, EPAC’02, Paris, France (2002)1673. [8] S.N. Simrock et al., “Experience with the Control of the Vector Sum at the TESLA Test Facility “, 6th EUROPEAN PARTICLE ACCELERATOR CONFERENCE (EPAC98), Stockholm, June 1998. [9] S.N.Simrock, “Achieving Phase and Amplitude Stability in Pulsed Superconducting Cavities”, 2001 PARTICLE ACCELERATOR CONFERENCE (PAC2001), Chicago, June 2001. [10] S.N.Simrock, “Status of the Art in RF Control”, Proc. of LINAC 2004, Lübeck, Germany (2004)523. [11] S. Anami, et al., “J-PARC Linac Low Level RF Control”, Proc. 29th Linear Accelerator Meeting in Japan, 297(Funabashi, 2004). [12] S. Michizono, et al., “Digital Feedback System for J-PARC LINAC RF SOURCE”, Proc. of LINAC 2004, Lübeck, Germany (2004)742.