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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会

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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会
情報報告
情 報 報 告
ウィーン
IARC2013(その3)
3 月 13 日~15 日にベルギー・ブリュッセルで開催された自動車リサイクル技術に関する
国際会議(IARC2013)について報告する。主催は ICM AG(International Congress
&Marketing、スイス)である。今回は、オランダ ARN のシュレッダーダストからのリサイ
クル率向上に関する報告およびドイツ GRS の電気自動車用電池の安全な回収システムに関
する報告について紹介する。
4.破砕処理後のプロセスの産業化による適切な連鎖での95%回収の達成
Hans van de Greef氏、ARN (オランダ)
【ARN】Auto Recycling Nederland の略
ARN は、使用済みの車を持続可能な方法で処理するための法的要件を満たすために、自動車業界によっ
て 1995 年に設立された。ARN は、運輸部門におけるリサイクル専門のオランダの総合施設であり、15 年
以上に渡るリサイクルチェーンの管理によって、ARN の専門知識は次の 3 つの領域を包含している。
①リサイクル:リサイクル目標を達成するための環境に配慮した経済的にも実現可能な方法の開発。
②リサイクルチェーンの管理:リサイクルチェーンの監視、調整および統轄。
③知識の共有:A リサイクルと持続可能性に関する知識の収集ならびに積極的に共有する。
4.1 なぜ破砕処理後技術を使用するのか?
(1)
シュレッダーダストの機械的処理へ切り替える理由
・リサイクルのための非有害材料の手作業による解体は非常に高価である
・シュレッダーダストの埋立て処分が禁止されている
・焼却処理は85%の材料リサイクルの目標到達に向けたソリューションではない
・産業用プロセスは、金属、プラスチックと繊維の高いリサイクル率に対する可能性を作
りながら、時間内にそれらを可能にし、時間をかけてコストを低減する傾向がある
(2)ARNのシュレッダーダスト処理
表4-1に示すとおり、2015年には、95%のリサイクル率(ここでは、リサイクルに熱リサ
イクルが含まれる)まで上昇し、85%の材料リサイクル率が要求される。また、使用済み自
動車(以下、ELV)のリサイクルチェーン全体のコスト低減のために、手作業による解体手数
料の低減が必要となる。その目安としては、1台のELVあたり40ユーロの低減とシュレッダ
ー後の軽量フラクションの処理費用は、1トンあたり65~100ユーロである。
図4-1にARNリサイクルプロセスの概略フローを示すが、4つのモジュールによって、シ
ュレッダーダストを9種類に選別している。
― 37 ―
情報報告 ウィーン
PSTプロジェクト開始時と計画されるリサイクルの割合
表4-1
[単位:%]
項
目
ELV リサイクル
(PSTプロジェクト開始)
ELV リサイクル
(2015年)
解
体
10
5
75
75
85
80
PSTでのリサイクル
―
≧5
PSTでの回収
―
≧10
85
≧95
金属(シュレッダー)
小
TOTAL
計
合
補足1:PSTとはPost
計
Shredder Technogyの略でシュレッダー(破砕処理)後の技術
補足2:PSTプロジェクト以前は、解体中心でのリサイクルであったため、PSTのデータがない。
出典:IARC2013講演資料、Hans van de Greef氏、ARN Recycling
シュレッダーダスト
(破砕残さ)
リサイクルプロセス
プラスチック プラスチック プラスチック
繊維
混合
(ρ>1.3)
混合
(1.1<ρ<1.3)
混合
(ρ<1.1)
プラス
チック
他
細粒
(0~4mm)
金属
細粒
(4~8mm)
ダスト
出典:IARC2013講演資料、Hans van de Greef氏、ARN
図4-1
ARNリサイクルプロセスの概略フロー
ARNリサイクルプロセスの特徴は以下のとおり。
・投資コストは約3,000万ユーロ
・基幹プロセスはドイツの自動車大手のVolkswagen(VW)社とドイツのリサイクル専門
企業のSiCon社が共同開発したプロセス
・Gallo Plasticsのプラスチックの処理(ECR社)
・年間処理能力は約80,000トン
・処理物は1時間あたり20トンのシュレッダーフラフ(カーシュレッダーダスト)
・正社員は30人で、3交代勤務
・処理能力の妥当性に関する研究開発は継続的なプロセス
― 38 ―
情報報告 ウィーン
【Galloo Plastics】
ポリマーの選別とリサイクルの世界のリーダーで、Galloo Plastics社は、エンジニアで構成された持
株会社のEnvironment2000社とGalloo社(金属リサイクルにおける欧州最大手)によって1997年に設
立された。技術的スキルが世界的に認められたGalloo Plastics社は、自動車、電気・電子機器、家庭
ごみのような廃棄された消費財からのシュレッダーダストのリサイクルを産業化することによってプ
ラスチックリサイクルの世界に革命を起こした。
フランス北部の Halluin にある未来の施設の選別能力は、数年以内に年間 90,000 トンに到達する必
要がある。様々なタイプの調合されたプラスチックを含む濃縮された原料は、欧州全土から供給され
ている。ISO9001 および 14001 の登録だけでなく TÜV 登録の承認も付与され、Galloo Plastics 社は
クリーンで効率的または革新的技術によって数多くの賞を受賞している。
GP-PP-1065:黒色ポリプロピレン化合物に変化させたエラストマー(弾性体)
GP-PP-88
:黒色ポリプロピレン化合物
GP-PP-157 :黒色ポリプロピレン化合物
(GP-PP-88 とは機械的特性異なる)
【ECR】
ECR 社は Environnement 2000 社(エンジニアで構成された持株会社)と Galloo Metal 社(金属リサイ
クルにおける欧州最大手)によって 2005 年に設立された。技術的スキルとその成果が世界的に認めら
れた ECR 社は、シュレッダーダストや廃棄される消費財で懸念されるプラスチックについて、自動車、
電気・電子機器だけでなく家庭ごみの中で見つけられるようなプラスチックに対する本当のリサイク
ル産業を創出することでリサイクルの世界に変化をもたらした。
処理量(トン)
図4-2に、2012年の毎日の処理実績を示す。
月あたりの平均曲線
時間
出典:IARC2013講演資料、Hans van de Greef氏、ARN
図4-2
ARNリサイクル施設での処理実績(2012年)
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情報報告 ウィーン
4.2 期待される成果
表4-2に2013年と2015年の埋立て処理、回収(リカバリー)およびリサイクルの割合の変化
を示す。2015年に85%のリサイクル率を達成するためには、2013年時点で回収(リカバリー)
されている10%の比率を下げて、リサイクルの比率を上げる必要がある。
表4-2
2013年と2015年の比率の相違点
2013年
2015年
埋立て処理
D1(地中又は地上への投棄)の合計
3%
埋立て処理
D1(地中又は地上への投棄)
3%
回収(リカバリー)
R1(燃料、エネルギー回収)の合計
10%
回収(リカバリー)
R1(燃料、エネルギー回収)
6%
リサイクル
R3(有機物の再生、回収)からR12(R1~R12のた
めの交換)までの合計 7%
リサイクル
R3(有機物の再生、回収)からR12(R1~R12のため
の交換)までの合計 11%
Total 20%
Total 20%
出典:IARC2013講演資料、Hans van de Greef氏、ARN
表4-3に、PST施設によるリサイクルと回収(リカバリー)の現状と2015年の計画値を示す。
要点はPST施設でのリサイクルと回収の比率を表に近付けられるかどうかである。
[単位:%]
表4-3 現状と計画されるリサイクルの割合
項
目
ELV リサイクル
(2011年)
ELV リサイクル
(2015年)
解
体
8
5
75
75
83
80
PSTでのリサイクル
-
11
小計(リサイクル)
83
91
PSTでの回収
13
6
96
97
金属(シュレッダー)
小
TOTAL
計
合 計
出典:IARC2013講演資料、Hans van de Greef氏、ARN
4.3 研究・開発プロジェクト
図4-3に、リサイクルに向けた進行中の研究開発プロジェクトのいくつかを紹介する。
4.4 シュレッダー後の軽量フラフの産業用処理に向けた課題
・安い焼却コスト
・加盟国内でPST処理物のフラクションの分類に対して調和が取れていない
・加盟国内で埋立て処分とそのコストに関する公正な競争の場が無い
・リサイクルの法律は自動車メーカーにだけ適用可能である
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情報報告 ウィーン
鉱物フラクションの溶融固化物
道路工事用資材
木材からの複合材
さらなる金属の回収
出典:IARC2013講演資料、Hans van de Greef氏、ARN
図4-3
4.5
ARNで進行中の研究開発プロジェクト例
Next steps 次のステップ
ARNでのシュレッダーダストのリサイクルにおける次のステップとして、以下の3項目が
あげられる。
①品質に関する研究・開発プロジェクト
より洗練されたプロセスによって顧客に適した施設能力
②35,000トンのELVのシュレッダーダストに対する95%以上の回収率の達成
③60,000トンへの施設能力の増強
(2013年に実施予定)
(参考資料)
・IARC2013 講演資料、Hans van de Greef 氏、ARN
・ARNホームページ、(http://www.arn.nl/english)
・SiCon社ホームページ、VW-SiCon プロセス、
(http://www.sicontechnology.com/recycling-verfahren/a-sr-total-recovery-systems/vw-sicon-verfahren/)
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情報報告 ウィーン
5.ドイツのHEVおよびEV用電池の輸送とリサイクルに関する安全性調査の結果
Tabias Schulze Wettendorf 氏、Stiftung GRS Batterien(ドイツ)
【Stiftung Gemeinsames Ruecknahmesystem Batterien】
GRS Batterien 協会(電池共同回収システム協会)は、ドイツ電池法(BattG)の第 6 条に基づき、ドイツ連
邦環境省によって指定されているような可搬式電池に対する欧州最大の共同収集スキームを運営してい
る。GRS は、全国レベルでの使用済み電池の収集、選別およびリサイクルを確実にするために、大手電
池メーカーとドイツ電気電子工業会(ZVEI)によって 1998 年に非営利団体として設立された。GRS のサ
ービスは電池メーカーと電池を取り扱う輸入業者によって賄われている。電池メーカーは法的に自社製
品を消費者から収集する義務があり、GRS は電池メーカーに代わって収集と輸送のために、小売店、自
治体、公共機関やエンドユーザーにコンテナを提供している。これらのコンテナは全国に無償で提供さ
れている。そして、GRS は収集された電池を選別施設に輸送し、電池の様々な電気化学的システムに応
じて選別する。これは、鉄、マンガンそしてニッケルのような有価物の回収が可能であり、金属鉛とカ
ドミウムは電池の生産で再利用可能であることを意味している。12 年以上前の運営開始から、我々は継
続的に電池の収集量だけでなくリサイクル率もまた向上している。
5.1 リチウム電池の安全性リスク
多くの種類のリチウム一次電池が短絡に対する保護のない単純機能しかないため、商業
的収集者による引き取りで発火事故が発生している。また、安全性リスクと適当な取り扱
いに関する情報の欠如によって、リサイクル施設での発火事故が発生している。
ドイツの環境団体であるbifa Umweltinstitut社は、返却のチェーンに沿った安全リスク
と可能な安全手段をGRS Batterien協会(以下、GRS)に代わって調査し、図5-1に示すよう
な“状況報告書(Status report)”を作成している。
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-1
bifa Umweltinstitut社の状況報告書の例
【bifa Umweltinstitut】bifa environmental institute社
bifa Umweltinstitut 社は、環境的側面に基づいた利益の増加を目的とする全ての企業の要求に対して
カスタマイズされたソリューションを実現している。
― 42 ―
情報報告 ウィーン
図5-2に発生確率と生死にかかわる危険性による危険分布図を示す。この分布図より、次
のような2つの項目の要因の検討を進めていく。
①不適切な取り扱いによる安全リスク
・定義されていない電池の組み合わせ
・露出した電極
・残留電荷
・不純物、その他の廃棄物
・破損/壊れた電池
②リスクの高い分野
・廃電気・電子機器(以後、WEEE)のリサイクル施設
・廃棄物の収集およびリサイクル施設
・自治体の収集ポイント
・電気屋、卸売業者と貿易
・その他、例:写真屋、バイク屋、日曜大工店
生死にかかわる危険性
P、条件 6-12
最も危険
発生確率
W、条件 1-5
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-2
W/P危険分析図の例
リチウム電池の安全性リスク調査プロジェクトの結論としては、以下の条件において
“リチウム電池は安全である“ということが確認された。
(条件)
①電池が、危険な製品に対する国際基準に基づいて正しく市場で取り扱われている場
合または技術的に確認されている場合
②電池が、その使用と収集を通して注意して取り扱われている場合
③WEEEから正しく除去するために、すべての必要条件を遵守している場合
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情報報告 ウィーン
5.2
GRSの安全コンセプト
ドイツ電池法より図5-3に示すように、電池の収集は区別して行わなければならない。
特別な許可が必要!
(緑色の箱)
(黄色の箱)
(1)一般的な電池
(黄色の箱)
(2)高エネルギー電池
危険ではない混合物とモノ
1 次および 2 次リチウム
チャージ(バッチ式)電池
・ZnC (炭化亜鉛)
・Zn-air(空気亜鉛)
・AlMn (マンガン-アルミ)
・Pb (鉛)
・NiCd (ニッケル-カドミウム)
・NiMH (ニッケル-水素)
電池、多分 NiHM(ニッケル
(3)破損した高エネル
ギー電池
破損したリチウム電池
-水素)または未来の
代替技術
許容可能な範囲
リチウム電池<10%
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-3 電池収集時の区別の内容
(1)
一般的な電池
高エネルギー電池ではない一般的な電池の典型的な収集経路を図5-4に示す。一般的な電
池は、小売業者、自治体、業界、廃棄物収集業者などが収集を行っている。
小売業者
自治体
業界、
廃棄物収集業者
など
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-4 一般的な電池の収集ポイント
― 44 ―
情報報告 ウィーン
そして、この典型的な収集ポイントの特徴としては以下のとおりである。
・可搬式の電池が混合している
・高エネルギー電池(例えばリチウム電池)の許容可能率は10%未満
・高エネルギー電池の分別収集のための特別な方法が要求されていない、または個々の
状況に応じてだけ要求されている
(2)
高エネルギー電池
高エネルギー電池の主要な収集経路を図5-5に示す。高エネルギー電池の収集は、認定さ
れた収集ポイントで行われ、その特徴は以下のとおりである。
・図5-3に示す全ての安全レベル(1)、(2)、(3)に対して対応可能
・リチウム電池の適切な取扱いに対して認定されている
・特別な梱包と輸送資材を装備している
・特別な情報資料を持ち、訓練を受けている
認定収集ポイント
典型的な
収集ポイント
認定収集ポイント
・自動車の修理店
・自治体
・改修センター
・小売業者
・ELV リサイクル施設
・廃棄物収集業者
など
など
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-5 高エネルギー電池の収集ポイント
(3)
破損した高エネルギー電池の対処方法
破損した高エネルギー電池は非常に危険であり、その取扱いには注意が必要である。そ
の対処フローを図5-6に示す。チェックリストに基づいて確認と作業が進められる。
― 45 ―
情報報告 ウィーン
認定収集ポイント
チェックリスト
・電池のタイプ/ 電気化学的システム
・電池のサイズ
・破損の種類
・その他
破損の有無?
黄色
赤色
チェックリスト
・電池のタイプ/ 電気化学的システム
・電池のサイズ
・梱包材量
・輸送時の梱包
・輸送業者
・承認手続き
・分類(特別または標準ケース?)
簡略化された手順
/個別承認?
GRS の通常の引き取り
公式な容認により
引き取り
個別の公式承認後に
引き取り
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-6 破損した高エネルギー電池の対処フロー
①適切な梱包と輸送材料のリスク評価と選択のためのコンセプト
特定の電池の最も危険な状況を予測するための手段として、GRSソフトウェアは次の
事項を考慮しながら予測可能である。
・熱的現象(温度上昇など)
・熱エネルギー
・有毒性
また、GRSソフトウェアでは、最も危険な状況を吸収可能な梱包と輸送の様々な組合せ
を評価できる。輸送に関する公式な承認申請には、梱包および輸送材料の適切な組合せ
の提案書が要求される。
5.3
GRSの自動車用電池に対するコンセプトの引き取り
(1)
ドイツにおける法的義務
①EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)のような全ての電気自動車用電池は、ドイツ
電池法(BattG)によれば、産業用電池である。
②周辺機器または他の構成機器は、欧州の廃自動車指令(2000/53/EC 、以後、ELV指令)
によってカバーされている可能性があり、登録や収集に関する他の指令との境界設定
の問題を引き起こす可能性がある。
③周辺機器または他の構成機器の販売、取り付けおよび交換は通常、認定修理工場や交
換部品の販売店で行われている。
④ELV指令のため、過去の周辺機器または他の構成機器は、使用済み自動車用のリサイ
クル施設に蓄積される可能性がある。
― 46 ―
情報報告 ウィーン
(2)
ドイツにおける法的義務と責任
図5-7にドイツにおける産業用電池に関する相関図を示す。まず、販売業者はエンドユー
ザーの電池を引き取らなければならない。そして、産業用電池の生産者は、無償で処分す
るための収集ポイントの提供ならびに適切なリサイクルを確保する必要がある。
この場合、
エンドユーザーは
上昇するコストに
耐える必要がある
民間
エンドユーザー
一般的な
リサイクル業者
商用
エンドユーザー
不可能
販売業者
自治体
この破線部分の責任が不明確
生産者の
コレクション
ポイント
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-7 ドイツにおける産業用電池の法的義務と責任
(3)
他国の状況
図 5-8 に、他の EU 加盟国の状況の 1 例を示す。まず、電池の生産者は国際市場に自社
製品を提供している。しかしながら、生産者はその子会社または販売業者(代理店)に代わっ
て市場にある電池を EDS(=IMDS)に登録することは不可能である。そのため、市場にある
電池の登録は、個々の子会社や販売業者が地方レベルで行うことになる。
【EDS】Electronic Data Systems の略
アメリカに本社を置く IT サービス企業名(2008 年に HP 社に買収されたため、EDS としてのブラン
ド名は無い)であったが、ここでは自動車を構成する約 3 万点の部品の材料および含有化学物質情報につ
いてサプライチェーンを通じて収集するためのシステムである IMDS(International Material Data
System)の運営組織名を指す。現在の運営は HP 社。IMDS は、新型車の環境負荷物質、使用済み自動
車やリサイクル率に関する規制などを含んだ EU の ELV 指令に対応するため、1998 年にドイツ自動車
製造業会(VDA)から依頼を受けたドイツ EDS(当時)および欧米の自動車メーカー8 社の共同プロジェク
― 47 ―
情報報告 ウィーン
トにより開発された。現在は、世界各国の自動車メーカー30 社以上が会員登録をし、IMDS を使用する
ことで国際的な標準、法律、規則により課せられた義務を果たしている。
生産者
EU 電池指令
(2006/66/EC)
国内法への
適用
国内法への
適用
国内法への
適用
生産者の
子会社
生産者の
子会社
販売業者
イタリア
スペイン
フランス
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図5-8 産業用電池の他国の状況
(4)
自動車用電池
図 5-9 に自動車用電池における GRS の引き取りに関する相関図を示す。特徴としては、
エンドユーザーに知られた生産者のためのサービスということである。また、個々の廃電
池の処分の依頼があり、電池のタイプは生産者に知られており、生産ラインの 1 部である(か
またはあった)。そして、生産者にはリサイクルされた電池の実際の質量に応じて、処分費
用が請求される。
また、契約のモデルとして、ドイツ電池法第8条第2項より供給の範囲は以下のように個々
に契約することになる。
・生産者および消費者に応じた収集と輸送ためのソリューション
・依頼内容に応じた連絡と報告
・収集および処分された電池の実際の質量に応じたサービスに対する請求
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情報報告 ウィーン
ELV 用電池+廃電池
生産者の収集
契約によるだけと規定
GRS
収集ポイント、
ワークショップ
使用済み製品の
リサイクル施設
販売業者
GRS の引き取り
国内全域
出典:IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
図 5-9 ドイツ電池法による廃自動車用電池の流れ
(参考資料)
・IARC2013講演資料、Tabias Schulze Wettendorf氏、Stiftung GRS Batterien
・電池工業会ホームページ、(http://www.baj.or.jp/)
・IMDSホームページ、HP社、(http://www.mdsystem.com/magnoliaPublic/ja/public.html)
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