Comments
Description
Transcript
第1章
15 第 1 部 ディスクリート・デバイスの基礎 PN 接合がわかれば 定電圧/可変容量/発光ダイオードもわかる! 第1章 ダイオードを理解しよう 初めて本書を読み始める方も「ダイオード」という言葉を聞いたことがあるでしょう.電子回路には 不可欠の部品であり,さまざまなダイオードが使われています. 「ダイオードは,アノードからカソードへは電流が流れますが,その逆には流れにくい…」こんな説 明を読んだこともあるでしょう.図 1 − 1 のような絵を使い,電子が N 型半導体から P 型半導体に向か って移動するから電流がその逆方向に流れる…といった説明です.でも,ダイオードの中を移動する電 子のようすを見た人はいません.半導体も自然の摂理や物理法則にしたがっているはずです.どうして 一方にしか流れないのでしょうか? 回路の話はさておき,まずは半導体ダイオードのなかで何が起きているかを知ることにしましょう. シリコン原子とシリコン結晶 ■ シリコン原子 半導体材料としてもっとも多く使われているのはシリコン(記号 Si)です.シリコンは原子番号が 14 P型半導体 N型半導体 −e 正孔 A −e −e アノード 電極 −e K 電子 カソード 電極 −e −e −e −e +14e −e 〈図 1 − 1〉 PN 接合ダイオードの模式的な構造 −e K殻 −e −e (第1軌道) −e L殻 (第2軌道) M殻 (第3軌道) −e 〈図 1 − 2〉 シリコン原子の電子配置 16 第 1 章 ダイオードを理解しよう の元素で,電子配置を図 1 − 2 に示します.K 殻には 2 個,L 殻には 8 個の電子があり,各軌道を満たし ています.これらは「内殻価電子」と呼ばれ,安定なイオン芯を構成しています. M 殻には四つの「外殻価電子」があり,外部に露出しているので,隣接原子と容易に分子軌道を形 成し,半導体の性質に本質的な役割を果たしています. ある軌道(エネルギ状態)を占めることができる電子の数は,スピンを考慮すると二つになります.一 つの軌道には,スピンが右向きと左向きの電子が 1 個ずつ合計 2 個入ることができるからです.図 1 − 3 (a)に示すように Si 原子が一つの場合,M 殻には四つの電子しかないので,四つの空いた軌道が存在し ます.したがって,Si 原子というのは非常に不安定な状態といえます. (b)のようにほかの Si 原子を近づけると,安定しようとして,容易に Si2 という分子 そこで,図 1 − 3 になります.すると M 殻は八つの電子が存在することになり,Si2 分子は安定した状態となります. ■ シリコン結晶 では結晶のように,多くの Si 原子が集まった固体では,どうなるのでしょうか. 固体の場合は,最外郭(M 殻)の電子がそれぞれ影響を与え合うようになります.しかし,「パウリの 排他律」により,電子はある準位しかとれません.かといって原子の世界にもルールがあるので,とん トランジスタは お買い得よ トランジスタ使えば…? うわ∼,汎用I Cじゃ性能が足りないし, 高性能なI Cは高価だし… どうしたらイイんだろう… うわっ! 何だオマエは! アタシはECB(エクボ) トランジスタの 妖精よ ! 妖怪? ! そんなのトランジスタ 外付けすりゃあ いいじゃん じゃ ! トランジスタもFETも これ読めば? ダイオードの使い方も わかるのよ! え∼ ゛ でもトランジスタは バイアスとか,動作 点とか難しいこと わからないし… パウリの排他律:原子内の電子の配置を決めるルールで,一つの軌道にはスピン方向が異なる 電子が 1 個ずつしか,すなわち合計 2 個しか存在することができない.パウリの原理ともいう. ! うわっ これを?