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第8回商標三極会合について(PDF:651KB)
第8回商標三極会合について 国際課 I.はじめに 2009年12月9日から11日にかけて、日本国特許庁(JPO)、欧州共同体商標意匠庁 (OHIM)及び米国特許商標庁(USPTO)(以下、「三極」という。)による第8回商標三極 会合がスペイン、アリカンテに所在するOHIMにおいて開催されました。 商標三極会合は、率直な意見交換や情報交換を行い、商標の制度や運用の改善につなげ ることを目的として、2001年5月から、ほぼ毎年1回開催されています。 今回の会合には、JPOから橋本審査業務部長、水茎商標課長他が出席しました。OHIM からは、デ・ボア長官、ローレンス副長官他が、USPTOからは、ベレスフォード商標担 当局長、コーン副局長他が参加し、熱心な議論が行われました。 また、前回会合の合意に基づき、中国商標局(CTMO)が第6回会合から引き続き一部 のセッションにオブザーバーとして参加しました(李中国商標局長他が出席)。また、世 界知的所有権機関(WIPO)がはじめて商標三極会合にオブザーバーとして参加しました (ルビオ特別顧問他が出席)。 さらに、前回会合に引き続き、意匠に関するセッションが非公式セッションとして、商 標に関するセッションと並行して開催されました。 (左から、WIPOルビオ特別顧問、OHIMデ・ボア長官、USPTOベレスフォード商標担当局長、JPO橋本審 査業務部長、CTMO李局長) II.会合の概要 今回の会合では、ホスト庁であるOHIMのデ・ボア長官が議長を務め、2日半の日程で 多岐にわたる議題について議論が行われました。 会合1日目は、JPO、OHIM、USPTOの三極のみの会合を開催し、 「三極の進捗のレビュ ー」、「他の知財庁及びユーザーとの関係」について議論が行われました。2日目は、オブ Webとっきょ 平成22年3月号(No.11) 2 ザーバーとしてWIPOを交えて、 「三極間での協力可能なプロジェクト」 、 「共通統計指標」 、 「優先権」、「三極の普及啓発」、さらにCTMOもオブザーバーとして迎え、「商標分類」に ついて議論が行われました。また、「商標分類」と並行して意匠に関するセッションが前 回会合に引き続き開催されました。3日目は、三極にCTMOをオブザーバーとして交えて、 各庁の進展について情報交換を行い、また、中国との協力について議論を行いました。 3日間の議論を踏まえ、最終的に三極間の共同声明が採択されました。なお、意匠につ いては、意匠に関する特別声明が採択されました。 ( 「共同声明」及び「意匠に関する特別 声明」は、JPOのウエブサイトで公表しております。1) 今回の会合では、次回会合への韓国特許庁(KIPO)のオブザーバー参加が承認された ことや、三極とユーザーとの会合を次回会合から開催することに合意したこと等、さらな る三極間の協力関係のみならず、「三極と他の知財庁」や「三極とユーザー」の関係につ いて、大きな進展を得ることができました。 主な議論の概要は、以下のとおりです。 (1)三極の進捗についてレビュー USPTOからの提案により、三極としてのミッションステートメントを作成することが 合意され、共同声明に盛り込まれました。 Mission statement(共同声明より) The Partners agree to adopt the following mission statement Through exchange of information on practices and programs as well as common projects aiming at the harmonization or improvement of trade mark procedures, the Trilateral strives to promote cooperation and collaboration between members and contribute to increasingly user-friendly and, if possible, interoperable trade mark systems. (仮訳) ミッションステートメント パートナーは、以下のミッションステートメントを採択することについて合意する。 商標手続きの実務、プログラム、調和を目的とするプロジェクト及び改善に関する情報交 換を通して、三極はメンバー間の協力と協調の促進、及びさらなるユーザーフレンドリー への貢献の促進、そして、可能であれば、商標制度の相互運用の促進について努力する。 (2)他の知財庁及びユーザーとの関係 今回の会合に引き続き、次回会合へのCTMO及びWIPOのオブザーバー参加について合 意されました。また、KIPOの次回会合へのオブサーバー参加について承認されました。 KIPOのオブザーバー参加が承認されたことについては、既にJPOからKIPOにその結果を 通知しました。さらに、オブザーバーの条件やオブザーバーと三極メンバーとの差異等を 1 共同声明:http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai3/pdf/8th_sankyoku_kaigou/kyoudou_seimei.pdf 意匠に関する特別声明:http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai3/pdf/8th_sankyoku_kaigou/ishotokubetu_seimei.pdf Webとっきょ 平成22年3月号(No.11) 3 含め、三極会合の将来の構想について検討していくことが合意されました。 また、ユーザーとの関係では、次回会合より、ホスト国の主催でユーザー会合を開催す ることについて合意されました。 (3)三極間で協力可能なプロジェクト OHIMが提案した三極間で協力可能なプロジェクトについてさらに検討を進めることが 合意されました。また、USPTOより三極で共通した「ステータス(出願案件の状態)に 関する共通用語」の導入の提案がありました。USPTOからの提案については、今後検討 していくこと、及び、USPTOが詳細な提案を用意することが合意されました。 (4)共通統計指標 これまで、三極で共通した統計の作成を検討してきましたが、この有用性について確認 し、今後も統計の情報共有を継続していくことで合意されました。 (5)優先権書類の電子的交換 優先権書類の電子的交換に係る三極間の比較調査及び検討に関するJPOからの報告に対 し、USPTO、OHIMは、2010年3月末までに優先権情報の三極間での電子的交換に関する 意見をJPOに報告することで合意されました。 (6)三極における普及啓発 JPOから、日中の協力に関する覚書にしたがって2009年11月に中国青島で開催された、 三極が参加したシンポジウム等について報告しました。2010年も引き続き、中国におい て三極のシンポジウムを開催していくことで合意されました。 (7)商標分類 三極が相互に受け入れられる商品・役務表示をリスト化した「商品役務表示の三庁リス ト」について、第三国の参加を含め、どのくらいの規模にすることがユーザーの利便性に 資するのか等、将来の方向性について引き続き検討していくことで合意されました。また、 WIPOがオブザーバーとして参加し、三極と意見交換を行いました。 (8)意匠会合 前回会合に引き続き、商標に関するセッションと並行して、意匠会合が開催されました。 各庁より、意匠制度の近況について統計を中心とした報告が行われました。三極は、今後 も意匠制度について議論していくことは有用であるとの認識のもと、今回と同じ枠組みで 引き続き意匠に関する会合を行っていくことで合意されました。 (9)各庁の進展 CTMOがオブザーバーとして参加し、各庁より、(i)過去1年間の進展、(ii)審査処理 と生産性、 (iii)審査の質の管理、 (iv)IT施策等に関する報告と意見交換が行われました。 Webとっきょ 平成22年3月号(No.11) 4 (10)中国との協力 三極より、CTMOが商標三極会合での常任オブザーバーとして認められたことを報告 しました。CTMOより、三極が中国を重視しているあらわれとして歓迎の意が表明され ました。 (11)次回会合 次回会合は、JPOが主催し、東京で開催することで合意されました。 III.おわりに 第8回商標三極会合も無事に終了しました。今回の成果を受け、次回会合では、ユーザ ー会合が新たに設けられ、意匠のセッションが本格的に稼働するなど、新しい方向性が示 された会合でした。また、次回会合にはKIPOがオブザーバーとして参加する予定です。 今後、ほかの国が商標三極会合へ参加を希望してくることが予想されます。これら主要国 と三極がともに議論し、協調していくことは、商標、さらに意匠の国際整合化にとっては きわめて重要なことです。一方、これまで世界の知的財産制度をリードしてきた三極がそ の経験を踏まえて情報交換し、議論を深めることもまた必要なことです。今回の会合では、 将来の商標三極会合の拡大を念頭においた本格的な議論が開始されましたが、日本として は上記考え方を基本に対応していく所存です。 さて、最後にOHIMの所在するアリカンテについて簡単に紹介したいと思います。アリ カンテは、スペインの南東部に位置し、地中海に面した街です。温暖な気候が続くため、 避寒地、海水浴場として多くの観光客を集めます。しかし、日本人にはあまり馴染みのな い街ではないでしょうか。今回の出張中も街中で日本人の観光客を見かけることはありま せんでした。 今回の旅程は、日本を出発した後12時間飛行機に乗り、ドイツ・フランクフルトへ。フ ランクフルトで飛行機を乗り継ぎ、さらに2時間半かけてスペイン・マドリードへ。マド リードで1泊した後、翌朝、マドリードからアリカンテまでは、飛行機でさらに約1時間と いう長旅です。これでは、日本人の観光客が少ないのもうなずけるところです。 しかし、我々を待っていたのは、長旅の疲れも忘れさせる青い空と青い海でした。その 素晴らしさを写真でご覧頂きながら、今回の商標三極会合の報告を終わらせて頂きます。 (OHIMのバルコニー及びバルコニーからの地中海) Webとっきょ 平成22年3月号(No.11) 5