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Page 1 金沢大学学術情報州ジトリ 金沢大学 Kanaraพa University
Title
空間能力と認知地図形成に関する実験研究
Author(s)
大岸, 通孝
Citation
金沢大学教育学部紀要.人文・社会科学編, 55: 13-18
Issue Date
2006-02-28
Type
Departmental Bulletin Paper
Text version
URL
http://hdl.handle.net/2297/6280
Right
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*KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。
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,各著作権等管理事業者に確認してください。
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/
1
3
空間能力 と藩知地図形成に関す る実験研究
大
岸
通
孝*
AnEx
pe
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Mi
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a
kaOHGI
SHI
人間は外界を光学的情報 として認識す る際,
様 々な交通網が発達 し,個々の人間がそれぞ
絶えず空間把握を繰 り返 している.それによっ
れの生活空間外に出な くてはならない現代にお
て対象物 との距離や前後関係 を理解 し,物を手
いて,道に迷 う事は大きな不安要素 となってい
に取った り歩いた りできるのである.われわれ
る.その対策 として,衛星通信等を使ったナ ビ
は慣れ親 しんだ空間では,常に自分のいる位置
ゲーシ ョン機器等が発達 し,これにより道に迷
を把握 し,移動 したい地点に向かって正 しく移
うとい う確率は以前 より減少 している. しか し
動できる.また,使用する経路が使 えない場合
なが ら,未だにナ ビゲーシ ョン機器は万全 とは
に代わ りの経路を選ぶことや,複数の経路の中
言えないものであ り,使い方次第では逆に使用
から最短経路を選ぶ こともできる.こうした行
動や判断が可能なのは,その空間に関する知識
者 を混乱 させて しま う結果 とな りうることもあ
る.また,幾度か通過 したことのある経路をと
である認知地図をもっているか らであると考え
る際や機器に登録 されていないよ うな道,地下
られる.
道等を通る場合においてのナビゲーションにお
しか しながら,認知地図が形成 され る過程に
いては,機器 を使用す るよりも人の記憶による
ついては多 くの研究が行われてきたが,それ ら
ところが大きいのである.このよ うに優れた機
の研究は人間が先天的に保持 している能力 とし
器を製作す るためには,それを扱 う人間の情報
ての認知地図の性質がほとん どであ り,外的要
処理が解明 され る事が必要であると考えられる.
因が形成能力に影響が与えるのかどうか とい う
本研究では,認知地図を形成す るための空間
点においては検討 されてきていない.そのよう
把握能力,及びナ ビゲーシ ョン能力が認知地図
な点をふまえて,今回の研究では各々の経験に
形成法 とどのよ うに関連す るのかを明らかにす
よって差異が生 じるかどうかに着 目し分析 して
ることを研究 目的 としている. さらに,個々の
いくこととした.
人間の環境 とい う後天的な要素が認知地図の形
認知地図がわれ われに とって重要であると
成に影響を及ぼすか否かについては未だ研究 さ
意識 させ る事態が,道に迷って しまった ときで
れていないことか ら,この間題 を解決すべ く,
ある. しか し,人によってその頻度や度合いは
地図を用いたナ ビゲーシ ョンを競技 としている
大きく異なったものであ り,何 も見なくても困
スポーツ,オ リエ ンテー リングを行っている金
難なく目的地-辿 り着ける人 もいれば,地図を
沢大学オ リエ ンテー リング部部員(
以下 OL 部
何度見ても迷 う人 もいる.また,場所によって
負)
を比較対象 とするため,一般学生 と共に被験
者 として本研究を行った.また,OL 部員はさ
は道の構造がつかみにくく,過去に通ったこと
のある場所でも方向がわか らなくなって しま う
らに競技の年数および レベルによ り上級者 と初
ような道 もある.
級者に分けて比較 した.
平成 1
7年 9月 30日受理
* 金沢大学大学院 自然科学研 究科
1
4
第 55号
金沢大学教育学部紀要 (
人文科学 ・社会科学編)
平成 1
7年
1.空間把握能力に及ぼされる経験の差に関す
に描かれている見本立体画像 と同一の構造 を持
る調査 ●
つ立体図形 を右 に示 してある 4つの中か ら2つ
経験 とい う後天的要素が空間把握能力 の発
達 に影 響 を及 ぼ して い るか を調 べ るた め,
選び, ×印を口の中に記入す る.正解は 1間に
つき必ず 2つあ り, 1つ正解す ることにつき 2
MRT(
心的回転テス ト)を行 った.MRT(
Me
n
t
al
点が加点 され,不正解の図形 を選んで しまった
pa
r
d 皮 Me
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(
1
971
)
の実
Ro
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s
t
)とは She
場合 には 2点の減点 となる.
験で使用 した立体刺激 を元に Ⅵmde
nb
e
r
g(
1
971
)
手続 き テス トは Pa
r
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lと pa
r
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2に分かれ,pa
r
t
l
が空間視覚化(
s
pa
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i
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l
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i
on
)
の個人差 を測
では正解以外の 2つの選択肢は鏡像,pa
r
t
2では
定 す る 目的 で 開 発 した 認 知 検 査 で あ り,
鏡像ではない別の異なる立体で構成 されている.
Ⅶ nde
nbe
喝 & Rus
e
(
1
978
)
の研究において標準化
各 pa
r
tは 1
0間であ りこれ を 3分以内で解かせ,
された ものである.
計 20間行 った.また pa
r
t
lと pa
r
t
2の間には高
この検査は,前半 ・後半の 2つのパー トに分
い相関性があることか ら,分析時には全体を合
れてお り,いずれ も 1
0項 目ずつある.各項 目に
計 した得点の比較で行 うことができる.よって
は,立方体を組み合わせて作った 3次元物体を
得点範囲は8
0-+8
0点 となる.被験者 にはあ ら
2 次元的に表 した図が描かれてお り,基準刺激
か じめ例題 を解かせ,この検査方法を理解 させ
と 4組の比較刺激か ら成っている.比較刺激の
た後に Par
t
l
∼Pa
r
t
2の順で解かせた.
うち 2組は図を立体的に捉 え回転 させた場合に
基準刺激 と一致す るとい う刺激であ り,その他
結果 と考察
の 2組は回転 させても一致 しない鏡像や歪みに
一般学生 と oL 部員 の平均 MRT 得点 を行
よる誤刺激である.制限時間内に各項 目の正 し
Fi
g.
1に示す.被験者全体の得点平均を求めると
い刺激 を見つけ出 させ,得点化す ることで空間
37.
8
(
SD1
8.
7
)
であった.また,男子全体の平均は
把握能力がわかる検査である.また,この検査
46.
5
(
SD1
4.
8
)とな り女子全体の平均 26.
3(
SD1
7.
3
)
h
t
a & Ne
wc
ombe
は神経心理学的研 究では Me
よ りも高 くなることか ら男女間での有意差が見
(
1
991
)
が大脳両半球機能の非対称性 と MRT の
られた(
t
-5.
97,dF88,p<.
Ol
)
.
nde
r
s
,
Wi
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nbe
唱(
1
98
2)
は比
関係 を,Sa
また,Fi
g.
1か らは一般学生 と OL部員 との間
較文化的観 点か ら利 き手 と MRT の関係 を調
には有意差は見 られ な く,経験による MRT 得
査 ・検討 していることか らも信頼性が高いもの
点の差 とい うのは生 じないよ うに思われ る. し
であることがわかる.
か しなが ら,上級者 と初級者で比較 した場合 に
方法
33.
3(
SDI
O.
5
)とな り有意差(
t
-3.
32,df
-1
5,p<.
03)
は男子上級者 は 56.
7(
SD1
5.
3
)
,男子初級者 は
被験者
男子 34名,女子
金沢大学学生 67名(
が存在 している.また,男子上級者 を一般男子
33名)
お よび金沢大学オ リエ ンテー リング部部
学生 と比較 した場合 において も有意差(
t
F2.
33,
男子 上級 目 名,
初級 6名,
女子
員 23名(
df
=
43,p<.
02)
が確かに存在 していた事か ら上級
上
級 3名,初級 3名)
者すなわち経験が豊富なもの とそ うでない もの
Me
n
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t
a
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on Te
s
t(心 的 回 転 検 査
の間に違いが存在 していると思われ る.一方女
MRT)
を用いた.MRT は立体の向きを変えた図
子において,OL 部員は一般女子学生 よ り平均
材料
形を呈示 して見本図形 と同 じものマ ッチングさ
点が低 くなっている. しか しなが らこれは OL
せ る検査であ り,問題は 4つの選択肢の中か ら
女子部員の被験者数が比較的少ないため,集団
見本 と同 じ図形のもの 2つを選び出させ るとい
としての傾 向を見出すには至 らなかった.
うものである.このテス トの検査方法は,左端
大岸通孝 :空間能力 と認知地図形成に関す る実験研究
1
5
回繰 り返行情報 とを呈示 した. この手続 きを数
-の起点 した後,行 き着いた仮想空間内の地点
プ としてか らの経路 を紙 に書かせ ,ルー トマ ッ
I
l
5
0
0
.
0
0
0
6
4
3
2
l
0
0
0
0
O
.
.
.
0
0
0
00
全体平均
男子平均
琶 娼
i
■
.
二
.
■
=
■=
l
l
る実験 を行
の情報か らサー ヴェイマ ップを描かせ
それぞれ
女子平均
った.
仮想空間は 2パ ター ン用意 し,
画像お よ格子状の都市である北海道の旭川市の
L
M
Fi
g
.1 -般学生 とIG)O
OL
eB部員における
員l
L-椴学 生 t
る金沢市有
び複雑 に道が入 り組んでいる都市であ
lパ ター ン 松地 区の画像 よ り作成 されたもので,
画像呈示時 1
2枚 の刺激画像で形成 されている.
激画像が 4間は 1つの刺激 につ き 1
5秒 とし,
刺
得点
2認知地
.経路探索実験
R
Tの平均
を設 け
つ呈示 され るごとに 45秒の回答時間
イマ ップ図の構造は,ルー トマ ップ とサー ヴェ
さ らその間にのみ用紙-の記述 を認 めた.
の研究で に分類 され るのが一般的である.最近
記憶が にス
ど ケ ッチ させ た後 にナ ビゲー シ ョン
的な基盤 は,この 2つの認知地図の神経心理学
再認テスの程度記憶 されているかをみ るため,
中心 と した検討
について海馬∴前頭葉お
が
よび頭頂葉を
同一画像 トとして仮想空間内で呈示 した画像 と
She
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on,2003;MeI
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4枚 を同 とそ うでない近似画像 を 2枚ずつの計
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のを被験時に見せ,オ リジナル画像ではない も
して,
刺激
者 に答 え させた.また使用 した機器 と
De
本実験
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,2000)
.
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イマ ップでは,ルー トマ ップ的知識 とサー ヴェ
ト型 パ ー 呈示
ソナ・
ル
刺激時間制御
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を行 うためにノー
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山de
ピ ュ ー タ(
シ ョンテ知識の関連 を調べ るために,ナ ビゲー
を,刺激編集
を,
のために
刺激撮影A
のためにデ
dobeP ジタルカメラ
いることス トの一つである経路探索テス トを用
等 を使用
ン能力 とにより,空間把握能力 とナ ビゲー シ ョ
例題 を解 した.なお,被験者にはテス トの前 に
憶 した経 の関連性 を測定 した. このテス トは記
た.呈示画像の
かせ ,趣 旨をよく理解 させてか ら行 っ
法のテス路 を紙の上で再生す るスケ ッチマ ップ
られ る地理
間や cG トである.経路の記憶方法は実際の空
どの刺激 環境内を探索する場合,画像や映像な
では,最 による場合等様々あるが,今回の実験
させ ないよ う,
静止画 を用いて仮想空間を移動
も記憶 を阻害す る要因が少
経路を描かせた.
被験者
方法
実験材
,記憶 した
前調査 と同一の被験者
ス トは,
料 と手続 き
今 回用意 した経 路探 索テ
れ らの画 い くつかの交差点の画像 を用意 し,そ
築 した.像 を順 に呈示す ることで仮想空間を構
にその画初 めに起点 となる交差点の画像及び次
を元に どの方向に何
進行情報像
m進むか とい
う
を与え,次
に進んだ地点の画像
とさら
に次の進
hot
os
hopEl
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g.2に,その画像か ら得
例 を Fi
1
6
金沢大学教育学部紀要 (
人文科学 ・社会科学編)
第5
5号
平成 1
7年
は られた(
間に有意な差が見
MRT得点も高
くな
り,
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-2.
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5
-5
, 2群の
この関係 は OL 部員 に対 して も
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(
成 り立 った
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-2.
8
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5,p
と 7点以上
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01
)
. また得点者群を 4点以下
.LJ L 」LJ L
「「
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」コ
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Fi
g
.3 パターン 1における仮想空間イ
の正解
では先述
最後に再認テス
し
トを行った.この再認テス
メージ
ト
ターン
たとお りのもので,パターン 1
,パ
以外の画像
2で使用
とをそれぞれ
したオ リジナル画像
2枚ず
24枚 とそれ
を一度に呈示 した.被験者にそつ計 4枚の画像
ナル画像ではないものを選ばせるとい
を 3間行った.
の中か らオ
うテス
リジ
ト
結果
経路探索実験で記入
と考秦
された経路を,交差点の
数,
それ
形,
距離などをパー トごとに 5段階評定 し,
ぞれ 0,2,3,4,5点 と得点化 した.画像
の再認テ
の評定はス トを正答数で評価 した.また,経路
記述 した解答例を示す
2名で行った.以下に実際に被験者が
伊i
g.
4.
参照)
.ちなみにこ
の解答例は 2種類 とも OL部員の被験者が記述
したもので,評定は 5点 となったものである.
しくなく
また,この実験の評定は段階ごとの重みが等
ないため単純に平均などで比較を取る事はでき
傾向を ,まず人数の多い一般学生を 2分化 し,
まず経路探索テス
求めた.
トと MRT との関
べるため,
連性 を調
秤(
6点以上)
被験者を経路探索テス トの高得点者
の
低得点者群
れぞれ MRTと
(
5
点以下)
に分け,そ
得点を比較
した.すると経路探
索の高得点者群
大岸通孝 :空間能力 と認知地図形成 に関す る実験研究
1
7
向がルー トマ ップ的なものかサー ヴェイマ ップ
おいてインターカ レッジの選手枠 を得ている者
的なものなのかを調べた.
,
4年生部員である.つま
であ り,ほとん どが 3
りオ リエンテー リングとい う競技は一部の例外
を除 くと経験の多さが競技の技術に関連 して く
方法
被験者
前実験 と同一の被験者
るスポーツでもあると言える.また,このスポー
手続き 被験者には質問の要 旨は教えずに,口
ツは方向感覚がかな り必要になる競技であるの
頭によ り買い物 しているところを想像 させた.
で自然 と空間把握の練習が行われているような
その後,その想像 されたイメージ中にて鳥略図
環境なのである.また,逆に OL部員初級者 と
的に自己の姿を認めることができるのか,それ
い うのは,経験が浅い者やある程度の経験を積
とも視覚的なものであ り自己の姿を認めること
んでも技術発達がない者つま り空間把握能力 も
はできないのかを確認 させ,答えさせた.
発達 しない者である.以上のことより,空間把
握能力は,ほとん どの人は空間把握の経験を積
結果 と考察
この実験の結果,鳥撤図のよ うに自己やその
む ことで,発達す るものであると思われ る.
次に経路探索実験においては,ナ ビゲーショ
周囲を上か ら見たよ うな認識形態である状況的
ン能力には空間把握能力 と相関があ り,さらに
認識は一般学生の約 7割を占める.このような
視覚的情報の記憶能力 とも相関が存在すると推
認織を している理由はわれわれが 日頃の認知地
察できる.今回の実験では被験者数に限 りがあ
図をサー ヴェイマ ップ的に捉えているか らでは
ることか ら傾向を求めるだけで終わったが,今
ないか と考えられ る. しか しなが ら OL部員の
後の課題 として,被験者数を増やす ことができ
認識を見ると状況的認識を しているのは約 27%
れば,より正確なデータが得 られ ると考えられ
に留まってお り,視覚的認識 を しているものの
る
方が圧倒的に多い とい う結果になった.
視覚的イメージと状況的イメージに関する実
また,この認識別に経路探索テス トでの得点
験結果は当初の予想を覆す ものであった.これ
を分類 した ところ,視覚的認識 を しているもの
までの研究 において,ルー トマ ップか らサー
の方が状況的認識 を しているものに比べて得点
ヴェイマ ップに発達す るとい うことが解ってお
が高くなる傾向が得 られた.以上のことより前
り,サー ヴェイマ ップがよ り優れている認知地
節に引き続き,道に迷いにくい者はサー ヴェイ
図の形態であるとい う認識のもとに実験を行っ
マ ップ的な情報だけに頼るのではな く,む しろ
たが,実際 に迷 いに くいのは基本的なルー ト
ルー トマ ップ的な視覚からの刺激を忠実に再現
マ ップ としての認知地図であった.これはルー
ができる者であることがわかる.
トマ ップとしての認知地図のほ うがサーヴェイ
マ ップよりも多い情報を得 られると考えられる.
4.給合的考察
つま り,認知地図の成長 とは 幼児期において
本研究では,外界把握の手段 として用いられ
は生活範囲がごく狭いのでルー トマ ップとして
る認知地図の機構 を,視空間イ メー ジ(
s
pa
t
i
al
情報を得ても記憶できるが,生活範囲が広 くな
i
ma
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)
機能 との関係か ら解明す るために,空間
るとルー トマ ップでは情報量が過多にな りすぎ
把握 とナ ビゲーシ ョンに関す る調査お よび実験
るためにサー ヴェイマ ップ として機能的に情報
を行った.まず MRT による空間把握能力の測
をま とめてい るのではないか と考 え られ る.
定を行った ところ,OL 部員上級者はその他の
よって,一つの経路を決め移動す る際は圧倒的
者 より有意に得点が高 くなった.この OL部員
に視覚的情報を扱 うルー トマ ップの方が迷いに
上級者は主にオ リエンテー リングとい う競技に
くい と言える.
1
8
第 55号
金沢大学教育学部紀要 (
人文科学 ・
.
社会科学編)
平成 1
7年
引用文献
oL 部員の者が迷いにくいとい うのは経験的
にこれを身に付けているか らと説明できる.そ
の理由として,オ リエンテー リングの競技にお
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いて大切な事の一つに視覚的イメージングが挙
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げられる.これは地図を頼 りに未経験の風景を
Aug7,333
335.
イメージし,それ と合致 させることで現在地を
特定させるとい う技能である.このような練習
があるからこそ OL部員の認識は視覚的なもの
になると思われる.つま り, 日常的に,視覚的
に空間のイメージをすることは,空間把握能力
において脳を発達させ,また道に迷いにくくな
るとい う効果が得 られることがわかる.また,
よ りよいナ ビゲーシ ョン機器 としては,サー
ヴェイマ ップ的な鳥略図だけではなく,ルー ト
マ ップ的な視覚的なイメージを取 り組むことで,
使用者にはよりいっそ う理解 させやすいものに
なると考えられる.
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