...

地域包括ケア体制構築にかかる基本方針

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

地域包括ケア体制構築にかかる基本方針
地域包括ケア体制構築にかかる基本方針
登米市地域包括ケア体制推進会議
【平成 28 年 4 月 1 日現在】
目
次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
第1章
厚生労働省施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3~5
1.地域包括ケアの実現に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・3~4
2.地域包括支援センターについて・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3.地域ケア会議について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
4.医療と介護の連携について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
5.生活支援サービスの充実と高齢者の社会参加・・・・・・・・・・・5
※地域包括ケアシステムとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第2章 登米市における現在の「地域包括ケア構想」 ・・・・・・・6~12
登米市が考える地域包括ケアのイメージ・・・・・・・・・・・・・・・6
1.地域包括ケアに関係する施設の状況・・・・・・・・・・・・・・・7
2.現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
3.取り組み方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9~10
4.具体策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11~12
第3章 登米市における地域包括ケア体制の長期的な課題・・・・13~28
1.人口構造の変化による課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
2.医療提供体制における将来的な課題・・・・・・・・・・・14~17
3.介護サービス提供体制における将来的な課題・・・・・・・18~24
4.地域・健康づくりの将来的な課題・・・・・・・・・・・・25~28
第4章 地域包括ケア体制構築に向けた重点目標・・・・・・・・29~30
2
は
じ
め
に
この方針は、2025 年問題といわれる超高齢社会の到来を見据え、高齢者や
障害者を含めた市民が、必要に応じて医療・介護・福祉の各サービスを活用す
ることで、一生涯に渡り「住み慣れた地域で 自分らしく 安心して暮らせる」
まちづくりを実現するための方向性を検討したものです。
第1章
厚生労働省施策
1.地域包括ケアシステムの実現へ向けて
日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。
65 歳以上の人口は、現在 3,000 万人を超えており(国民の約4人に1人)、
2042 年の約 3,900 万人でピークを迎え、その後も、75 歳以上の人口割合は
増加し続けることが予想されています。
このような状況の中、団塊の世代(約 800 万人)が 75 歳以上となる 2025
年(平成 37 年)以降は、国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが
見込まれています。
このため、厚生労働省においては、2025 年(平成 37 年)を目途に、高齢
者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域
で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括
的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進していま
す。
◎地域包括ケアシステムの構築
団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年を目途に、重度な要介護状態とな
っても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることがで
きるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包
括ケアシステムの構築を実現していきます。
今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での
生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。
人口が横ばいで 75 歳以上人口が急増する大都市部、75 歳以上人口の増加
は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が
3
生じています。
地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性
や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。
◎地域包括ケアシステム構築のプロセス
市町村では、 2025 年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実
施を通じて、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケ
アシステムを構築していきます。
2.地域包括支援センターについて
地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援
体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び
福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中
核的な機関として市町村が設置しています。
現在、全国で約 4,300 か所が設置されています。(ブランチ(支所)を含め
ると 7,000 か所以上)※平成 24 年4月末現在
3.地域ケア会議について
地域包括ケアシステムを構築するためには、高齢者個人に対する支援の充実
と、それを支える社会基盤の整備とを同時にすすめることが重要です。厚生労
働省におきましては、これを実現していく手法として「地域ケア会議」を推進
しています。
4.医療と介護の連携について
疾病を抱えても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を
続けられるためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的
かつ継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要です。
厚生労働省においては、関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介
護を一体的に提供できる体制を構築するための取組を推進しています。
4
5.生活支援サービスの充実と高齢者の社会参加
今後、認知症高齢者や単身高齢世帯等の増加に伴い、医療や介護サービス以
外にも、在宅生活を継続するための日常的な生活支援(配食・見守り等)を必
要とする方の増加が見込まれます。
そのためには、行政サービスのみならず、NPO、ボランティア、民間企業
等の多様な事業主体による重層的な支援体制を構築することが求められますが、
同時に、高齢者の社会参加をより一層推進することを通じて、元気な高齢者が
生活支援の担い手として活躍するなど、高齢者が社会的役割をもつことで、生
きがいや介護予防にもつなげる取組が重要です。
※「地域包括ケアシステム」とは
重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最
後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体
的に提供されるようなシステムのこと。(厚生労働省 HP より)
5
第2章
登米市における現在の「地域包括ケア構想」
2025 年問題と言われる超高齢社会の到来に備え、誰もが住み慣れた地域
で『安全に安心して暮らせるまち』を実現させるため、支援が必要となった
方々(支えられる人)に「切れ目のないサービス」が提供され「生活の質」
が確保されるよう、保健、医療、福祉の関係機関・団体や地域の皆さまとの
連携を図っていきます。
また、激減する就労人口に対応するため、市民と一体となり心と体の健康
(支える人)づくりを推進します。
登米市が考える地域包括ケアのイメージ
※住まいの周りに、医療機関・介護事業所・地域コミュニティなどがあり、分
野ごとの連携体制を基本とし、それぞれが互いに連携し合うことで、必要な
サービスを提供し「住み慣れた地域で 自分らしく 安心して暮らせる」体
制と、それを支えるのが、生活環境と健康づくりであるというイメージ。
6
1.地域包括ケアに関係する施設の状況
【医療機関】
病
診
療
院:市立 3病院(一般病床:376床、療養病床30床)
民間 1病院(精神病床:120床)
所:市立 4診療所(登米・よねやま・上沼・津山)
民間33診療所 ※在宅療養支援診療所:市立1・民間1
歯科診療所:市立病院併設1、民間33診療所
薬
局:民間31カ所
訪問看護ステーション:
市立 1カ所(本部:豊里、5サテライト:米谷・佐沼
・米山・登米・上沼)
民間
1カ所(中田)
【介護関係施設】
養護老人ホーム
:民間
1施設(106床)
介護老人保健施設
:市立
1施設 民間2施設(325床)
特別養護老人ホーム
:民間
7施設(350床)
地域密着型特別養護老人ホーム:民間
9施設(243床)
認知症対応型グループホーム :民間 13施設(176室)
ショートステイ
:民間 20施設(131床+空床)
療養ショートステイ
:民間
3施設(10床+空床)
デイサービスセンター
:民間 53施設(1019人)
認知症対応デイ
:民間
4施設(21人)
生活支援ハウス
:民間
1施設(10人)
HP 等より(平成 28 年 1 月 18 日現在)
サービス付き高齢者住宅
:民間
2施設(22戸)
東部保健福祉事務所登米地域事務所管内介護保険事業所一覧(H26.8.1 現在)より
訪問介護サービス
訪問入浴サービス
訪問リハビリ
居宅療養管理指導
通所リハビリ
居宅介護支援
福祉用具貸与
福祉用具販売
:民間
:民間
:民間
:民間
:民間
:民間
:民間
:民間
7
11施設
4施設
1施設
1施設
3施設
27施設
10施設
10施設
2.現状と課題
【健
○
康】
日本の三大生活習慣病にみる死亡率の第1位は「がん」ですが、本市にお
いては、脳卒中や心筋梗塞など循環器系の疾患が多いことが特徴としてあげ
られます。医療資源の少ない本市では、健康を支え、守るための社会環境の
整備とともに市民が主体となって取り組む疾病予防・健康づくりが求められ
ています。
【医
療】
①
全国的な課題である医師の地域偏在と、診療科偏在による医師不足が顕在
化している状況下、県内でも本市は医師不足が深刻な地域であり、効率的な
医療の提供体制の構築と医師招へいは重要課題となっています。
②
訪問診療や訪問看護は多職種の連携が重要なポイントです。しかし、様々
な要因により連携が十分に機能していないケースもあり、在宅医療を希望し
ても日常生活に不安を抱えている市民が依然として少なくない状況にあり
ます。
③
市立病院・診療所と市内開業医は、それぞれの機能と役割、特性に応じた
診療行為を行っています。今後は市内の医師同士の連携はもとより、医療機
関でのネットワークの充実・強化を図り、市民の医療に対する不安を取り除
く必要があります。
【介
護】
①
一人暮らし高齢者世帯や高齢者単独世帯の増加、同居家族や働く世代の減
少などにより、世帯における介護力がますます低下するものと見込まれます。
②
高齢者の4人に1人が認知症又はその予備軍といわれる中、認知症の予防、
早期発見及び早期対応の対策とともに、認知症になっても尊厳を持って暮ら
していけるサポート体制が必要です。
③
要介護認定者の増加とともに、1人あたりの介護給付費も伸びており、将
来にわたって介護保険料の負担が上昇することが懸念されます。
8
3.取り組み方針
【健
○
康】
生活習慣病は、加齢により発症率が高まることから、発症する前の若い
世代から、基礎的な生活習慣の定着に加え、自主的に食生活の改善や運動の
習慣化などに取り組むことができる環境整備を進め、高齢となっても地域を
支えることができる「元気高齢者」を目指すまちづくりを推進します。
【医
療】
①
地域医療に対する情報を市民・関係機関と共有しながら、より良い医療提
供体制の構築に向けて、地域住民との意見交換会や普及・啓発などの取り組
みを実施します。さらに、病院とかかりつけ医の役割分担を進めるうえで、
市民ボランティアグループなどと相互に連携を図り「協働のまちづくり」の
観点のなかで地域医療の基盤を支える環境の整備に努めます。
②
患者・家族の意向が十分に反映された医療を提供するため、地域医療連携
室を中心とした「切れ目のないサービス」を提供します。また、医療機関の
連携を強化する取り組みを行い、顔の見える関係づくりを推進するとともに、
円滑に在宅復帰ができる体制を構築するため関係機関等の情報の共有化を
促進します。
③
在宅医療を提供する関係分野・関連多職種との連携を促進します。また、
患者・家族を支える基盤整備を推進するとともに、今後、宮城県が策定する
地域医療構想のなかで、地域における将来の医療需要との整合性を図りなが
ら、市立病院・診療所の持つ役割と必要とされる医療機能の充実を図ります。
【介
護】
①
家庭介護力が低下した高齢者の多様なニーズや身体特性及び住宅事情へ
対応可能な住環境の整備を推進します。また、介護サービスの必要度の高い
高齢者のために、適切なサービスを提供する介護福祉施設等の整備を推進し
ます。
②
認知症になっても地域で暮らしていけるよう、地域における支援体制の整
9
備や、早期発見・早期治療に繋げる人材の育成を図ります。
③
若い世代からの健康づくりを基本としながら、高齢期における身体機能や
精神機能の低下予防対策を推進し、健康寿命の延伸と持続可能な介護保険制
度の運営を目指します。また、軽度の支援が必要となっても、支え合いによ
り日常生活を送ることができる地域づくりを推進します。
10
4.具体策
【健
○
康】
全世代を対象とした生活習慣の改善を柱とし、ウォーキング事業等により
市民が「自主的な健康づくり」に取り組める環境を整備するとともに、教育
委員会と連携した児童の生活習慣病の予防、保健活動推進員による健診の受
診率の向上、食生活改善推進員による食生活の改善、そして市全体への喫煙
による健康被害の防止の啓発などを推進し、三大生活習慣病の発症・重症化
の予防に対する自主的な取り組みを支援します。
【医
療】
①
市民に対し、医療機関の機能と役割分担の理解について普及・啓発を図る
とともに、それぞれの医療機能に応じた「かかりつけ医」への適切な受診の
理解を深める取り組みを推進するとともに、効率的な医療提供体制の構築に
向けて情報の一元化と共有ツールの作成を進めます。
②
市立登米・上沼診療所は、民間が開業するやまと在宅診療所登米とともに、
在宅療養支援診療所(24 時間体制で看取りまでケアする診療所)として民間
診療所と連携を図りながら訪問診療と往診を行います。また、市内の訪問看
護ステーションは、現在、登米市訪問看護ステーション本部(豊里)、サテ
ライト(米谷・佐沼・米山・登米・上沼)と民間で運営している訪問看護ス
テーションふれあいなかだ(中田)があり、引き続き訪問看護を実施してい
きます。さらに、関係分野・関連多職種との連携を図るため、関係者が一堂
に会するセミナーなどを開催することで、在宅医療における連携強化と、市
民の不安解消を図る体制づくりに取り組んでいきます。
③
登米地域の中核的病院である登米市民病院は、一次・二次救急及び急性期
の入院・治療を中心とした地域密着型の病院づくりを進めるとともに、地域
包括ケア体制の核となる医療機関としての役割を担います。また、米谷病院
と豊里病院は、入院から在宅までの一貫した医療提供を行い、主に慢性期の
入院・治療を行います。市立診療所については、市内開業医とともに、地域
のかかりつけ医として、地域の実情にあった医療サービスを提供します。
今後さらに市立病院・診療所の役割を明確にし、関係機関との連携を図り、
市民の安全・安心を確保する地域包括ケア体制の充実を図ります。
11
【介
護】
①地域福祉力の向上と住まい・介護保険施設等の整備推進
地域包括支援センターが中心となり、行政(保健師等)とも連携しながら
高齢者一人世帯や在宅療養者とその家族を多面的にサポートできる体制の
確立に向け、住民参加型ネットワークの整備を図り、地域の見守りや相談体
制の構築を推進するとともに、住まいとそれを補完する介護保険施設の整備
を推進します。
・ケアハウス
58床程度(整備推進)
・介護老人福祉施設
100 床(整備推進)
・認知症対応型グループホーム 18床(整備推進)
②認知症施策の推進
地域包括支援センターに認知症地域支援専門員を配置するとともに、医療
機関や介護サービスの事業所、地域の関係機関をつなぐ連携支援などを行い
ながら、認知症の人やその家族を支援する相談業務や、認知症の人に対して
効果的な支援が行われる体制の構築や、認知症初期集中支援チームを配置し、
初期の支援を、包括的、集中的に行い、自立生活のサポートを推進します。
③新たな介護予防体制の構築
生活支援コーディネーターの配置や協議体などを設置し、新たな担い手や
サービスの開発を行い、地域における支え合い体制づくりを推進し、高齢者
の社会参加及び生活支援・介護の予防の充実を図ります。
また、医療・介護の限られた資源で支えられる地域づくりを実現するため、
介護保険事業者に加え、NPO 法人や民間事業者、地域コミュニティなどが
提供する地域において実施可能な介護予防・日常生活支援総合事業の確立を
目指します。
【連携・協働】
多職種協働で地域の医療・介護サービスの資源の把握や課題の抽出と対応策
の検討を行い、在宅医療・介護を一体的に提供できる体制の構築を推進します。
また、地域包括ケア体制に関わる関係者のスキルアップ研修等を積極的に実
施し、在宅療養者や家族の「願い」に応えられる人材育成に取り組んでいきま
す。
12
第3章
登米市における地域包括ケア体制の長期的な課題
1.人口構造の変化による課題
コーホート変化率法による人口推計では、2015 年から 2040 年まで
の 25 年の間に支えられる世代(80 歳以上)の人口が 106.9%に増え、
支える世代(20 歳~59 歳)の人口が 69.0%まで激減すると予想される。
また、支える世代と支えられる世代の比率が 2015 年現在が 3.9 対1
人であるのに対し、2040 年には 2.6 対1人と大きく変わってくること
から、医療や介護の体制のみならず、地域住民のくらしを支える土台とな
る、コミュニティや住環境の維持さえも困難になってくると考えられます。
※人口推計は、平成22年~平成25年の住民基本台帳の数値(毎年4月1日現在)
を基に、年齢毎3年後の人口変化率の平均を用いて推計しています。
13
2.医療提供体制における将来的な課題
①一次診療(外来診療)の提供体制
2040 年における一次診療の需要は、現在と比較して 83.0%まで減る
と予測されますが、働く世代の人口が 69.0%まで激減することで、就業
構造に変化が無い場合、供給量は 16.9%不足すると考えられます。
※外来患者推移予測は、平成 25 年 4 月分の国民健康保険及び後期高齢者医療費に
おける受診実績を年代別(5歳毎)人口で割り受診率を求め、将来の人口予測に乗
じたもの
また、開業医の高齢化に伴う後継者の問題や、年々増え続ける認知症に
対応可能な医療機関の確保など、これまで以上に一次診療の体制維持が困
難になってくることが懸念されます。
市内医療機関の分布
市立病院
市立診療所
民間病院
開業医
14
②二次診療(入院治療など)体制
2040 年には、二次診療(入院)の需要が 86.6%まで減ると予測され
ますが、介護スタッフも 69.0%に激減することから、需要に対する供給
量が 20.3%不足すると考えられます。
また、医師や看護師、リハビリテーションスタッフなどの確保の課題な
どもあり、市立病院における急性期医療体制の維持のため、一次診療(外
来)体制について、かかりつけ医と病院の役割分担を進めるとともに、公
共交通機関に頼らざるを得ない高齢者等が、かかりつけ医に通院が可能と
なるように、地域公共交通ネットワークの整備も重要になってきます。
さらに、全国的な小
児科医、産科医の不足
から、広域的な小児科
・産科の夜間急患や救
急の受け入れ、入院等
への対応も困難になっ
てくると予想されるこ
とから、県が策定する
地域医療計画において、
医療圏ごとの適正な病
床機能の変性とそれに
伴う医師の配置(配分)
も必要になってきます。
※入院患者動態は、平成 25 年 4 月分の国民健康保険及び後期高齢者
医療費における受診実績を年代別(5歳毎)人口で割り受診率を求め、
将来の人口予測に乗じたもの
③療養病床の不足
市内の療養病床は豊里病院の30床のみであり常に満床となっていま
す。そのため、高齢者が急性期病院を退院する際に、高齢独居や高齢者単
独世帯などで在宅療養が困難な場合、他自治体の療養病床に転院せざるを
得ないケースが多いことから、在宅療養体制の確立と一体的に整備を進め
ることが必要と考えています。
④在宅療養(施設入所も含む)体制
今後、ますます在宅療養の需要が高まることが予想されますが、居宅で
医療を提供するにあたっては、一般診療時間外での対応や移動も伴うこと
から、医師が少なく担当するエリアも広い登米市においては、これまで以
上に増えてくる需要に対し、市内全域に在宅医療を提供していくことが困
難になることが予想されます。
15
また、安心して在宅療養が選択できるよう、急変時にも、すみやかに患
者を受け入れることができるバックベッドの確保や、緊急時に対応できる
在宅医療と介護に関する情報共有ツールの確立も欠かせません。
さらに、医師とともに在宅療養を支える訪問看護ステーションにおいて
も将来的な看護師不足により、訪問看護サービスを維持することも困難に
なってくることも懸念されます。
加えて、より良い療養生活を目指すうえで、在宅における口腔ケアの普
及や薬剤管理などを行う訪問薬剤指導などの体制も確立していく必要が
あります。
また、病院から退院する際に、在宅に向けた機能訓練を行う老人保健施
設や、居宅等において適切な介護が受けられない方が入所する、特別養護
老人ホームにおいても看護師の確保が困難となり、機能の維持が困難にな
ってくると思われます。
在宅療養支援診療所(365 日、24 時間対応)
エリアマップ
登米診療所
登米診療所エリア
上沼診療所
上沼診療所エリア
やまと在宅診療所
登米
やまと在宅診療所
登米エリア
16
参考:地域包括ケア体制の指標となる在宅死亡(看取り)率について
平成 24 年度衛生統計年表から、在宅療養体制の指標とも言われる在宅
死亡(看取り)率を算出してみると、登米市の在宅死亡(看取り)率は、
県内市部の平均より低く、13 市のうち 7 位にあたります。
その内、自宅での死亡(看取り)率は県内市部の平均より高く、13 市
中 3 位で、自宅における在宅療養体制は比較的充実しているといえます。
しかし、特別養護老人ホームにおける死亡(看取り)率については、13
市中最下位で、県平均の6分の1となっており、施設における看取り体制
の整備が進んでいないといえます。
※在宅死亡(看取り)率は、平成24年衛生統計年表(第10表)のうち、自宅死亡者数と老人ホームでの死亡者数を死
亡者総数で割った率。
<基データは、宮城県平成24年衛生統計年表から引用>
17
3.介護サービス提供体制における将来的な課題
介護サービスにおける将来予測については、認定率の変化や制度上の変更も
考えられることから、第6期介護保険事業計画で算定した 2025 年までの推計
値としていますが、介護給付サービス、介護予防サービス共に、ほとんどのサ
ービスで大きく需要が伸びていくことや人口構造の変化により介護スタッフ不
足が予測されることから、プロの手を極力必要としない「地域における支え合
い体制」の構築・推進が不可欠になると予想されます。
◎要支援・要介護認定者数の推移
人口推移予測と要支援・要介護認定率等の推移を基に、将来的な認定者
数を推計したところ、2030 年まで大幅に認定者数が増え、その後も少し
ずつ認定者が増えることが予測されます。
18
◎介護給付サービスの需要予測
(引用元:高齢者福祉計画・第 6 期介護保険事業計画データ)
①居宅サービス
2015 年のサービス量(利用回数)を 100 とした場合に、2025 年ま
での需要量予測をグラフにしてみると、訪問入浴介護以外のサービスで大
きく伸びることが予想されます。
19
20
②地域密着型サービス
重度者を対象とした夜間も含めたサービスの提供や、今後増えることが
見込まれる認知症に対応できるサービスの需要が高まるとが予想されま
す。
また、通いを中心として、必要に応じて訪問サービスや宿泊などができ
る複合型のサービスなど整備も必要とされています。
③施設サービス
介護老人福祉施設については、要介護世帯におけるの独居世帯や高齢者
単独世帯の増加が予想されることから、今後ますます需要が高まるものと
見込まれます。
(需要量の推移予測については、施設の整備予定数による)
④住宅改修・居宅介護支援
住宅改修費については、介護予防の取り組みを強化していく中で、需要
が伸びていくと予想されます。
また、居宅介護支援についても、認定者数の推移に伴い増加してくるこ
とが予想されます。
21
◎予防給付によるサービスの推移
(引用元:高齢者福祉計画・第 6 期介護保険事業計画データ)
①介護予防サービス
介護予防サービスのうち、訪問介護サービスと通所介護サービスについ
ては、平成 29 年度から介護予防・日常生活支援総合事業に移行しますが、
これまでのサービスに加え、NPO や地域の団体などによる新たなサービス
の構築が必要になってきます。
また、訪問入浴介護以外のサービスについても大きく伸びると予想されま
すが、特に介護予防リハビリテーションが 2.5 倍に伸びることが予想され
ることから、スタッフの確保が困難になってくることが予想されます。
22
23
②地域密着型介護予防サービス
今後、ますます増えてくると予想される、認知症に対応できるサービス
の需要が高まることが予想されています。
また、通いを中心として、必要に応じて訪問サービスや宿泊などができ
る複合型のサービスや、自立度が高くグループホームなどに入居している
認知症要支援者などに提供される介護サービスの充実も求められていま
す。
④住宅改修(予防給付)・介護予防支援
住宅改修費については、介護予防の取り組みを強化していく中で、需要
が伸びていくと予想されます。
また、介護予防支援についても、認定者数の推移に伴い増加してくる
ことが予想されます。
24
4.地域・健康づくりの将来的な課題
市民のくらしを支える基盤となる、健康づくりや地域コミュニティについて
は、市民の健康寿命が宮城県内でも男性がワースト2位、女性がワースト3位
となっており、そのことが、医療費や介護給付費の増大に繋がっています。
また、地域におけるコミュニティや隣組の繋がりも年々希薄になってきてお
り、軽度の要支援者が自立した生活を送ることも厳しくなってくると予想され
ます。
登米市の健康寿命
参照元:宮城県 第2次みやぎ21健康プラン(市町村別健康寿命)H22
健康づくりの課題
①脳血管疾患(脳卒中)による死亡率が高い
地域的に塩分摂取量が多く、脳血管疾患(脳卒中)による死亡率が全国平
均の約1.7倍になっています。
参照元:H20-24 標準化死亡比(厚生労働省統計資料)
25
また、脳血管疾患(脳卒中)は、要支援・要介護となった主な原因の 18.5%
(1位)となっており、特に要介護4以上では 30%以上になっていることから、
一度発症するとその後の生活に大きな影響をおよぼすことがわかります。
要支援・要介護となった主な原因(第3位まで)
高血圧や糖尿病・心房細動・メタボリックシンドロームになっている人は、
その発症リスクが高まることから、地域全体で、塩分・脂肪・糖分を控えめ
にした食事やウォーキングなどの軽い運動を日常生活に取り入れるなど生活
習慣の改善を進めていく必要があります。
引用元:厚生労働省(平成 20~24 年
人口動態保健所・市区町村別統計)
(参考)平成26年度特定健診の結果から
●LDL(悪玉)コレステロールの平均値が高い。
男性:30代後半から50代半ばにかけて高い傾向にある。
女性:閉経となる40代後半から70代半ばにかけて高い傾向にある。中
でも、50代~60代にかけて特に高くなる傾向にある。
※LDL コレステロール
平成26年度特定健診結果より
26
●HbA1cの平均値が非常に高い。
男性:30代後半から40代にかけて急激に高くなり、その後も高くなっていく。
女性:40代後半から急激に高くなり、その後も徐々に高くなっていく。
平成26年度特定健診結果より
●収縮時血圧が高い傾向にある
男女とも、加齢とともに高くなる傾向にありますが50代あたりから、平均値が
要指導値を超え、その後も右肩上がりに高くなる傾向にある。
平成26年度特定健診結果より
③子どもの肥満が多いことから、将来的に生活習慣病を発症するリスクが高い
27
③虫歯の子供が多い
④就労世代(勤務者)への働きかけができていない
社会保険や組合健保加入者へのアプローチが少なく、生活習慣病発症前の
世代への啓発が進んでいない。
⑤在宅や施設への口腔ケアの普及が進んでいない
⑥特定保健指導該当となった方の指導利用率が低い
一次健診の受診率は 61.3%(ベスト4)と高い方ですが、特定保健指導の
対象となった方の利用率が 6.9%(ワースト4)と低い方となっており、一次
健診の受診が重症化予防に繋がっていない。
引用元:平成 25 年度法定報告保険者別結果一覧表
28
第4章
地域包括ケア体制構築に向けた重点目標
地域包括ケア体制の推進については、現在ある地域課題等の解決のための施
策を進めながら、将来的に予想される課題についても、早期から準備を進めて
いく必要があります。
【各種データの分析から】
人口動態や、現在の年齢別受診率から試算すると、2040 年には若年層の大
幅な人口の減少により医療サービスの需要量が、外来で 83%、入院で 87%に
減ることが予測されます。
一方、高齢者福祉計画・第 6 期介護保険事業計画における試算では、高齢者
人口の増加にともなう要支援・要介護者の増加で2025年には介護サービス
の需要量が 30%程度増加すると見込まれています。
将来的には、サービスの中心が、急性期医療から療養、そして介護に移行し、
在宅療養の需要が高まることが予想されますが、2040 年に 20 歳以上、60
歳未満の支える世代の人口が69%まで減ることから、医療・介護スタッフが
不足することで十分なサービスを提供し続けることが困難になってくることが
予想されます。
このことから、将来的な課題解決のためには、医療・介護・福祉の充実だけ
ではなく、市民自らが取り組む健康づくりや自助・互助による各種介護予防へ
の取組みについても多職種協働により普及することが不可欠になってきます。
そのため、将来的な課題に対応すべく登米市においては当面の間、次の事項
を重点項目に掲げ、多職種協働によりあらゆる施策を講じて将来的な課題を未
然に防ぐための取り組みを推進します。
29
重
点
項
目
健 康:食生活の改善や運動習慣の醸成と健康意識の高揚を図る
ことによる、支援を必要としない「元気高齢者」づくり
医 療:地域医療体制の維持・強化のための、医療スタッフの確
保と在宅療養体制の充実
介 護:要介護者を減らすため、自らが取り組む介護予防の推進
を図るとともに、認知症や要支援となり日常生活におい
て支援が必要になっても住み慣れた地域において互いの
支え合いの中で安心して生活を続けることができる地域
づくり
連 携:医療と医療、医療と介護、さらに地域を含めた連携を進
めながら、医療・介護・福祉サービスなどの情報の一元
化と共有化を図るとともに、各施策において現場の意見
が反映され、多職種が協働で施策を推進できる体制づく
り
なお、この方針については、登米市地域包括ケア推進会議において、国の施
策や法令、各種制度などの改正、宮城県地域医療計画の改定、地域の実情など
により、適宜修正しながら進めるものとして、登米市における地域包括ケア体
制構築に向け、進むべき方向性を示した「羅針盤」と位置付けており、具体的
な各種施策については、別冊として作成します。
30
Fly UP