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Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2012

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Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2012
作成日: 2012/11/16
石油調査部: 伊原 賢
公開可
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2012
(JOGMEC 石油調査部、世界石油工学者協会 SPE 資料ほか)
筆者は、10 月初旬アラモの砦で有名な米国テキサス州のサンアントニオにて 6 年ぶりに開催された
2012年SPE(Society of Petroleum Engineers:世界石油工学者協会、123カ国の会員数約10万4,000人)
の ATCE(Annual Technical Conference and Exhibition:年次総会)に参加し、最新の石油工学に触れる
機会を得た。得られた情報を基に、Petroleum Engineer の取り組む技術トレンドを探る。
ホームページ: www.spe.org/atce/2012/
1. はじめに
1950年代にM. King Hubbertが唱えたピークオイル論は「原油の生産は資源量に制限される」というこ
とだったが、正しくなかったことが判明した。長期的には資源は有限だが、短中期的にはそうとも言えな
いのだ。
生産能力の限界に筆者を含む技術者は挑戦しているところだ。Hubbertが唱えたピークオイル論は米
国48州ではフィットしていたが、水深1500メートルより深い「超大水深」(例えば、ブラジルのサブソルト)
での近年になってからの探鉱成功などが生産能力拡大に寄与している状態を見ると、ピークオイル論で
は説明に無理が生じる。テキサスA&M大のStephen Holditch教授が提唱した「資源量のトライアングル」
は、非在来型の油やガスは地下から取り出しにくいが、その資源量は豊富なことを示している(図1の下)。
しかし、非在来型の油やガスは、その生産予測が難しい。米国発のシェールガス革命も10年前に、その
ことを予測する者はほとんどいなかった。
近年、石油開発をめぐる環境の変化には、油価の高値変動、イージーオイル(在来型油田)の減退、
新規需要市場の登場、技術者の人材入れ替え、低炭素化、資源ナショナリズムの台頭などが挙げられる。
このような環境変化の下では、国営石油会社NOCの支配力と、国際石油会社IOCの力と技術トレンドとの
関係は図1のようにまとめられると筆者は考えている。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 1 在来型の油やガスの支配状況がもたらす非在来型資源へのシフト
2011年の世界の原油生産は、日量8360万バレル(BP統計)だった。2019年の需要は日量9500万バレ
ルと予想されている。既存の在来型油田の減退を考えれば、単に日量1100万バレル程度を積み増せば
良いという訳ではなく、既存油田の減退も加味すると、日量4500万バレル程度の新規生産が必要となる。
生産能力を新規で日量4500万バレル積み増しさせることには、氷海や大水深(水深300メートル以深)で
の石油開発(図2)に加え、非在来型の油やガスの起源や生産技術をしっかり理解した上で、技術力・投
資・人的資源の投入が必須となる。
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含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所: NHKテレビ 視点論点「海底油田の世界的現状」2010年8月23日放映
図2 大水深での石油開発エリア
このように、埋蔵量へのアクセスが縮小する投資機会に対応した石油開発の対象は、在来型から非在
来型資源へとシフトするだろうが、その開発はどのような技術トレンドをもって進められるのだろうか?
一方、10 月第 1 週に、国内マスコミは「秋田県の由利本荘市の鮎川油ガス田で国内初となるシェール
オイルの試験生産に成功」と大きく報じた。メタンハイドレートに続き、日本国内でも非在来型資源への注
目が高まっている。
このような背景の中、筆者は、米国テキサス州サンアントニオのヘンリーゴンザレス・コンベンションセ
ンター(写真1)にて今年10 月8 日から 10 月10 日にかけて開催された 2012 年SPE の ATCE に参加し、
最新の石油工学に係る情報を収集した。
ここで、石油工学とは、石油・天然ガスの掘削、油層管理、生産に関する技術の総称で、この工学なく
して、地下の石油・天然ガス資源を地上に取り出すことはできないといっても過言ではない。SPE はその
技術者集団だ。
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含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所: 著者撮影
写真 1 ヘンリーゴンザレス・コンベンションセンター(米国テキサス州サンアントニオのダウンタウン)
本稿では、まず 2012 年 SPE の年次総会の概要を述べる。次に年次総会で取り上げられ、筆者が興味
をもったテーマでの議論を時系列に紹介する。
最後に、今回の SPE 年次総会にて得られた情報を参考に、当面の可採埋蔵量の積み増しをコントロ
ールすることになる石油開発技術のトレンドをまとめる。
2. 2012 年 SPE 年次総会の概要
SPE が主催する情報交流の場は、過去の事実を議論する SPE Technical Conference(秋の年次総会ほ
か)、現在の動向を議論する Applied Technology Workshop (ATW)、と未来の技術展開を議論する SPE
Forum から構成される。
今年の SPE 年次総会は、世界中から 11,095 人の参加があり(過去 89 回で最高)、発表論文・ポスター
は約350 件(1500件の応募から選択)で、以下の 6分野/50セッションに分かれて発表された(1. Drilling;
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2. Project, Facilities and Construction; 3. Health, Safety and Environment / HSE; 4. Management and
Information; 5. Production and Operations; 6. Reservoir Description and Dynamics;)。展示会場は、約
9,800m2(3 千坪弱)の広さで大小取り混ぜて、これも過去最高の 473 社が出展した(写真 2、3)。
出所: 著者撮影
写真 2 会場の入り口(筆者と技術部の加藤是威職員)
出所: 著者撮影
写真 3 展示会場
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
総会のテーマは、Unconventional Wisdom(非在来型資源の知識)。高値安定の油価(総会開催中の
WTI は 90 ドル/バレル前後)、石油・天然ガスの需要拡大、石油工学技術者の中高年化ほかを反映して、
SPE に属する技術者は利益追求のみならず、人材の確保と非在来型のシェールガスやタイトオイル(中・
軽質油)、大水深開発に注力すべきとのメッセージであった。
シェールガス関連では「シェールガス革命」に代表されるように、水平坑井、多段階の水圧破砕、マイ
クロサイスミックという要素技術の組み合わせ最適化の最前線を体感できた。さらに、貯留層内のナノス
ケールでの可視化、フローモデルといった基礎的研究について大学を中心として発表があり、
JOGMEC-TRC(技術センター)の研究に活かせる多くのヒントを得た。
展示会場では、ソフトウェアや装置などの自社製品の説明・デモに力を入れていた Schlumberger,
Halliburton, Baker Hughes, Weatherford の 4 大石油開発サービス会社は対談スペースも広く設け、常時
飲食物を振る舞っていた。Saudi Aramco, Kuwait Oil Company 等の産油国の国営石油会社のブースは、
人材リクルートの面からも多くの集客が見られ存在感があった。
再生可能エネルギーの台頭もあろうが、世界における石油・天然ガスの一次エネルギー源に占める割
合はゆるがないと予想される。石油・天然ガスの上流業界の好景気継続時に人と技術に注力することで、
上流業界は、巷でいわれる斜陽産業ではなく、石油・天然ガス資源の可採埋蔵量積み増しと環境面にも
考慮した経済的開発に大きく貢献できる産業であり続けられ、本総会における発表論文や展示を見聞き
することで、その実現に必要な技術の進展を実感できた。
油価低迷時の 90 年代に多くの石油会社が、その研究開発活動を低下させた中で、「非在来型の資源
開発を技術・経済面からどこまで在来型に近づけられるか」というのが、今年の SPE 年次総会の命題だ。
2004 年以降の油価の上昇は、大学で石油工学を学ぶ学生数を増やしているが、現在業界に居る人たち
とこれからの若者で業界を支えるには、各自が持つ知見を若者と共有・伝授すること、若者が石油開発
に夢や強い関心を持つべく草の根の啓蒙活動を精力的に行うことが極めて重要だ。
石油開発は、2010年4月に起きたメキシコ湾のマコンド坑井の暴噴・油流出事故や、シェールガス開発
に伴う飲料水用の地下水や地表の汚染と地震発生への疑惑により、負のイメージが強められる傾向にあ
る(特に西洋諸国において)。2020年までに新規生産能力として必要とされる日量4500万バレルを積み
増しするには、環境派のNGOといった世論との理路整然とした透明性のある直接対話を通じて、負のイ
メージを和らげ、社会的受容性(Public Perception)を高め、原油や天然ガスという人類にとってかけがえ
のないエネルギー源を供給してきた業界への理解と支援を勝ち取らねばならない。
その上で、非在来型の油やガスの起源や生産技術(図 3)を理解し、技術力・投資・人的資源の投入が
必須となる。SPE は世の中に対して、事実に基づき、中立で高度な石油工学(Petroleum Engineering)の
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
知見を伝える使命がある(ロビー活動だけではダメ)。負のイメージを良きものに変えるには時間がかか
る。しかし、一旦得た良きイメージを失うのは簡単だ。
シェールオイル
出所: 奥井明彦(2012)、各種資料に基づき作成
図 3 非在来型の油とガスの起源と生産技術
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風力や太陽光といった再生可能エネルギーの台頭もあろうが、世界における石油・天然ガスの一次エ
ネルギー源に占める割合は半分を越え続け、原油需要は2035年には日量9,970万バレル(出所: 国際
エネルギー機関 IEA World Energy Outlook 2012)に達するとも言われる。
「将来の技術開発を担うのは誰か?」というのが、近年の石油開発業界の大きな命題。技術者として石
油開発(いわゆる上流)業界に入る若者が減り続け、業界の平均年齢は、40 歳代後半に入っており、30
歳代が少なく、技術の空洞化の危機が迫る。石油開発サービス会社は、技術の伝承のため、若手や後
進国でのトレーニングにも力を入れているところだ。
JOGMEC からは、報告者の他に、技術部の高木調査役・加藤是威職員、市川ヒューストン所長が参加
した。国内他社からは、三井石油開発(MOECO)1 名、伊藤忠石油開発(CIECO)1 名、JX 開発 3 名で、
JX 開発を除く 2 名はシェールガス関連の発表を中心に聴講していた。学生は早稲田大学の栗原研究室
からの 3 名を確認した。化学関連業界から 5 名ほど(東洋製罐、日本バルガー工業、双日)が参加した。
日本人の参加者は 18 名ほどで昨年の 20 名からは減ったが、早稲田大の森田教授とその学生10 名ほど
の不参加の影響は大きい。日本からの発表は無かった。
3. 2012 年 SPE 年次総会の個別内容
10 月 7 日(日)はトレーニングコース「Shale Oil and Tight Oil Fundamentals」に参加し、シェールオイ
ル・タイトオイル(広義)の基礎知識をブラッシュアップした。10 月 8 日(月)から 10 月 10 日(水)までの 3
日間は、テクニカル・セッションに参加すると共に、展示会場も見て回った。
以下、パネルディカッションの概要、参加したテクニカル・セッションにおいて興味を引いた発表論文
の抄録を中心に記す。
10 月 7 日(日)
① トレーニングコース「Shale Oil and Tight Oil Fundamentals」への参加
 コースの講師は、コロラドのコンサルタント Source Rock Engineering 社の主席技師の
Mr. Steve Hennings が務めた。
 米国が非在来型のシェールオイル・タイトオイル開発に向かった背景: 在来型探鉱
が難。失敗井コストが控除対象に。石油会社の株の 69.5%は機関投資家が握る(業界
1.5%、個人投資家 29%)。機関投資家は石油会社に成長ポテンシャル・リスク低減、
高収益を求める。機関投資家のアセットマネージャーは M&A の対象となる会社を探
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す(収益性の悪い会社はすぐに売ろうとする)。油価の変動は大きい(90 年代終わり 10
ドル/バレル、2008 年 7 月 140 ドル/バレル、2012 年 10 月 90 ドル/バレル)ので、石油
会社は探鉱からリスクの少ない採掘に移行(探鉱井の減少)。成熟した石油根源岩をタ
ーゲットにした非在来型資源開発へのシフトが見られる(図 4 面的のみならず深度方
向の広がり・連続性を重視)。坑井寿命の長さ(30 年)や坑井数を増やした生産減退率
の低さを重視し、いわゆる石油開発の「機械工場化」が求められている。開発井の成
功確率が 100%に達しつつある非在来型資源開発も登場した。
(2012 年 8 月石油資源開発)
出所: JOGMEC石油調査部
図 4 米国における液体分が豊富な石油根源岩エリアを対象としたタイトオイル開発
 在来型油田開発技術の知識がある技術者を主な受講対象とするコース
 コース内容は、在来型油田との違い(移動した油/残留油、貯留岩の浸透率と貯留岩
に施された人工フラクチャー・自然フラクチャー)、地質の特性、埋蔵量・生産レート、
炭化水素の組成、坑井仕上げ・水圧破砕、開発動向について
 タイトオイルの浸透率<9.87x10-17m2、4%<孔隙率<5%
 シェールオイルの浸透率<9.87x10-19m2、有機物含有率>1%
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
 典型的なシェールの鉱物構成(Barnett): 粘土 10-50%、石英 35-50%、炭酸塩
0-30%、長石 7%、岩片 5%、有機物(ケロジェン:固体/分散/不溶性)<3%、TOC
(Total Organic Carbon)>2wt%
TOC は音波及び比抵抗検層より計算できるが、コアサンプルとの検証が望ましい。
 有機物の熟成度を計るビトリナイト反射率 Ro は 0.6%~2.1%の範囲(Level of Organic
Maturity 8~14)にあると、炭化水素への熟成作用が進む。
 ケロジェンから油への生成温度(60-160℃) 100℃ @地下 3000m
 ケロジェンからガスへの生成温度(150-200℃) 167℃ @地下 5000m
 油ガス田の典型的な炭化水素の組成例: 在来型と非在来型に区別なし(表 1)
出所: SPE資料
 米国における油価の高値安定、ガス価の下落下では、掘削リグのシェールガス狙い
からシェールオイル狙いへの移動が見て取れる。ガス主体のシェール構造(Barnett,
Woodford, Fayetteville)から油主体のシェール構造(Eagle Ford, Bakken, Marcellus)へ
の掘削リグの移動・増加が顕著。掘削リグ数はリーマンショックの 2008 年後期からの一
時期の減少を除けば、上昇。全米で 1800 基ほどの掘削リグが稼働中。
 シェールオイル・エリア: 下の代表的な 3 エリアのほかに Granite Wash, Permian
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
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Delaware, Permian Midland, Uinta, Barnett, Utica, Woodford/Anadarko, Monterey があ
る。シェールの密度は 2.0-2.4 グラム/cc 程度。
Niobrara(ナイオブララ) 12 坑ほどの水平井、初期レート 500-1000bopd、掘進長
11500 フィート、水平長 4000 フィート、15 段階の水圧破砕、1 段階あたり 3000 バレル
の水と 22.5 万パウンドのプロパントを使用。2011 年より開発スタート。
Eagle Ford(イーグルフォード) 掘削コスト 600 万~800 万ドル/坑、初期レート
900boepd(ウェットガス)650 boepd(油)、推定総生産量 65 万バレル(ウェットガス)と
35 万バレル(油)、掘進長 16000-19000 フィート、水平長 3500-5800 フィート、坑井数
1250 坑、坑井間隔 160 エーカー、15 段階の水圧破砕。坑井数 1900(2012 年 1 月)。
2009 年半ばより開発スタート。
Bakken(バッケン) 掘削コスト 750 万ドル/坑で 40 段階の水圧破砕、1 段階の水圧破
砕コスト 10 万ドル、水平長 7500~10000 フィート、初期レートのベスト 5000~
7000boepd(初期レートの維持は 2 ヶ月ほど)。在来型のように生産挙動の評価に PI
(Productivity Index)は使えない。
 米国のシェールオイル生産量は日量100 万バレルへ、2022 年には日量375 万バレル
にまで成長:アップサイドポテンシャルは評価せず(シティグループ調べ)
 シェールオイル開発成功への鍵: オイルの原始埋蔵量、開発コスト、経済性、開発現
場へのアクセス、サポート体制、開発技術、オイルの回収率(約5%、ガスだと約20%)
初期レートをシェールの特性を反映したものと認識するのは早計。初期のレートは
排油面積の小さな部分に支配されている。商業的なシェールオイル井の日産量は
100 バレル以上で C1~C23 の含有率が 1mg/g 以上とされる。
 1段階の水圧破砕の区間に穿孔(パーフォレーション)のクラスターを 5つほど入れる。
クラスター間の距離は 9m 程に縮まった(図 5)。
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出所: SPE資料
図 5 1 段階の水圧破砕の区間に施す穿孔(パーフォレーション)のクラスター(上は 3 つ、下は 5 つ)
 ナイオブララ・シェールはデンバーの北側の Julesburg 堆積盆地に位置し、15,000 坑も
の既存の垂直井があったが(Wattenburgフィールド)、既存井はどれも10バレル/日程
度と低生産レートであった。近年、水平坑井と多段階水圧破砕の併用により、ナイオブ
ララのシェールや炭酸塩岩から中・軽質油が生産できることが判ってきた(Anadarko 社
の Goff 井は油 1100 バレル/日、ガス 250 万立方フィート/日を記録)。1 年に 100 坑の
水平坑井を掘削予定。全体計画では 1,200 坑まで増やす。
ノースダコタ州のバッケン、テキサス州のイーグルフォードと比べ人がかなり住んでい
る(250 万人、70 万戸)。
 関連業界と歩調を合わせ、地域コミュニティと緊密な連絡を取ることが開発の鍵。水井
戸の水質検査も頻繁に実施しているとのこと。水圧破砕に用いるトラック輸送を減らす
べく、水のパイプライン輸送も実施。水圧破砕に用いた水のリサイクル・再利用も実
施。
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 「水平坑井+多段階の水圧破砕」の場合、「垂直井+水圧破砕」に比べ使う水の量は
270 倍ほど多い。従って、水圧破砕によるケーシングパイプの磨耗も環境汚染につな
がる可能性があるとして、ケーシングパイプの圧力も監視。シェールオイルの場合、油
層圧があまり高くないケースもあるため、人工採油法も検討される。
 シェールオイル開発の 6 ステージ: シェール層の分析、探鉱、生産パイロット試験、
生産パイロット試験の増強、商業生産パイロット、商業生産。
 本トレーニングコースには、31 名が受講。
8 日(月)午前
午後
②Opening General Session: Making Unconventionals Conventional
③Keynote Luncheon: Energy Outlook; At the Intersection of Geopolitics,
Macroeconomics, and Technology
④展示会場
⑤University Alumni Reception: University of Tulsa
⑥ドキュメンタリー映画「SWITCH」鑑賞
② オープニングセッション: Making Unconventionals Conventional
 20 世紀までは、地下から取り出しにくいとされた「非在来型」の石油・天然ガス資源開
発を、地下から取り出しやすい「在来型」の開発レベルに近づけるための課題と展望
についてのパネルディスカッション
 課題: コミュニケーション(業界と政府・利害関係者との関わり)、持続性のある開発
(北米から世界への展開)、技術進歩に伴う開発コストの低減、環境との調和(社会的
受容性を勝ち取る啓蒙・対話活動)
 エネルギー関連の大手コンサルティング会社 IHS-CERA の Chief Energy Strategist で
ある David Hobbs 氏が司会。
パネリストは、大手石油開発サービス会社 Halliburton の CEO David Lesar 氏、
ExxonMobil の上級副社長 Mark Albers 氏、インデペンデントの石油会社 Pioneer
Natural Resources 社長 Tim Dove 氏、Texas A&M 大 Stephen Holditch 教授の 4 名(写
真 4 の左から右へ)。
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出所: 著者撮影
写真 4 オープニングセッションのパネリスト
 シェールガス開発に伴う飲料水用の地下水や地表の汚染疑惑に対して、水圧破砕に
用いた水の坑井からの戻り水(フローバック)のリサイクルが主流になりつつある。
Halliburton の CEO である David Lesar 氏が水圧破砕に用いる水を会場で飲んでその
安全性を示したのは印象的なプレゼン(あまり美味しいものではないが体に害なしと
のアピール)。
 米国で非在来型ガス(タイトガス、コールベッドメタン、シェールガス)のガス全体生産
量に占める割合は 2040 年に 75%まで増加と予想。しかし、世界的に見れば、非在来
型のガス開発はまだ始まったばかり。米国はその大学のような知識・経験の発信源と
なっている。とはいえ、テキサス州西の Wolfcamp シェールにて 10 年以上開発活動を
実施する Pioneer Natural Resources 社にしても、同社社長 Tim Dove 氏によれば、クッ
キーカッターのようにルーチンワークで開発できるレベルにはないという。
 IEA の 2012 年予測では、2035 年時点で石油や天然ガスは世界のエネルギー源の
51%を担う。
 そのためには、技術力・投資・人的資源の投入が必須となる。SPE は世の中に対して、
事実に基づき、安全と環境保護の視点から、中立で高度な技術的知見を伝える使命
がある(ロビー活動だけはダメ)。作業の安全性に対する過信は禁物。負のイメージを
良きものに変えるには時間がかかる。しかし、良きイメージを失うのは簡単だ。技術者
は現状の技術解説では、社会的受容性を勝ち取るのに十分ではないことを認識すべ
き。
 安全にかかる文化をその価値、行動をよく分析し、トップマネージメントが率先して、業
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
界全体として、世の中から正のイメージで見られるように継続して、安全の文化を構築
していくことが大事。安全に係る少数意見にも耳を傾ける必要がある。
 石油開発の安全管理は、トップマネージメントが率先して、地球環境保護の見地から、
世論と透明性のある直接対話を行うことで実現できる。
③ Keynote Luncheon: Energy Outlook; At the Intersection of Geopolitics, Macroeconomics,
and Technology
 オープニングセッションにて司会を務めたIHS-CERAのChief Energy Strategistである
David Hobbs 氏が「地政学・マクロ経済・技術との関わりの中でエネルギーの将来をど
う見るか?」についてスピーチ。
 シェールガス開発と LNG 貿易との関係: 2010 年米国の国内ガス生産の 23%はシェ
ールガスからのものとなり、米国のガス輸入量は 2007 年から 2010 年の間に 43%も減
少した。2035 年には天然ガスの実質輸出国となる見方あり。米国内では現に発電・自
動車に大きな変化が起きている。例えば、シェールガス革命で進む米国の自動車燃
料のガスシフト(特に LNG 駆動トラックの普及の可能性:フリーウェイに小型の LNG タ
ンク)。
一方、中国では 2020 年までに国内ガス生産が 50%増との見方。非在来型ガスの占め
る割合は 12%に。「シェールガス」が世界のエネルギー事情を一変させる可能性が指摘。
 将来の見通しには広い視野を持つ(例えばこれから 10 年間の油価は 50~150 ドル/
バレル)。地政学・マクロ経済・技術との関わりの中では、変化の少ないものは少ない。
資源の多様化とサプライチェーンの確立が大事。また、技術革新は状況を大きく変え
ることにも忘れてはならない。
④ 展示会場
 過去 88 回を含め年次総会の史上最多となる 473 ブースでは、ソフトウェアや装置など
の自社製品の説明・デモに力を入れていた Schlumberger や Halliburton は対談スペー
スを広く設け、常時飲食物も振る舞っていた。Saudi Aramco 等のブースは多くの集客
が見られ存在感があった。
 掘削機器は、地域ごと・時々刻々と変化する自然環境を相手として、直接目視できな
い地中奥深くの状態をリアルタイムで把握して適当な処置を選択するという緻密で高
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
度な技術が用いられていることを、実機を見ることによって実感。
 CMG 社のソフトウェア(SPE153535 関連): ノースダコタ州Bakken シェール層(孔隙率
4-12%、浸透率 0.005-1 ミリダルシー[md]、有機物含有率 8%)に掘削され、多段階
水圧破砕を実施した水平坑井に対し、どのような手順で油層シミュレーションを行うか
のプレゼン。マイクロサイスミックのデータをシミュレーターに取り込み、計算セルの中
で、出来たフラクチャーに数ダルシーとシェールマトリックスと比べ、千倍程度の浸透
率を与える。シミュレーション技術の進歩により、多段階の水圧破砕によって出来た複
雑なフラクチャー・ネットワークの中のガスの流れの再現も簡便にできるようになった。
生産挙動のヒストリーマッチング作業も 1 週間から 1 日程度に短縮。
⑤ University Alumni Reception: University of Tulsa
 8 日夕に開催されたタルサ大の石油工学科の同窓会に出席し、旧友や恩師と親交を
深めた。高油価安定に伴う、石油・天然ガス上流の仕事量や大学での石油工学専攻
学生数の増加は明らかであり、皆忙しさを口にしながらも、晴れやかな表情での歓談
の輪が広がった(写真 5)。
出所: 著者撮影
写真5 タルサ大留学時の同窓Dr. Jansen(ノルウェーStatoil)とシェール開発や大水深開発で雑談
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 同窓会出席後、Weatherford 社の友人とドキュメンタリー映画「SWITCH」を鑑賞。我々
のエネルギーの課題に対して、実践的でバランスのとれた解決策を見つけるための
教育プログラムとして、2012 年米国にて制作。エネルギーの開発現場の映像がふん
だんにある。
www.switchenergyproject.com
映画のメッセージ: エネルギーは我々の時代の最も重要な課題である。 それは、経
済、環境、食料、水、人口、すべてに影響を与える。これらの問題を理解するためには、
まずエネルギーを理解する必要がある。それが、この映画プロジェクトの目標である。
我々は効率的にエネルギーを取得する必要がある。エネルギー効率は、CO2 排出量
を削減し、価格を安定させ、電源を拡張して、お金を節約できる。そして私たち一人一
人は、今日から、影響を与えることができる。
10 月 9 日(火)午前 ⑥Technical Session: Shale Case Study
⑦Topical Luncheon: Survey Management Implications for Unconventional
Reservoirs
午後 ⑧Technical Session: Creating Value With Unconventional
⑨Annual Reception and Banquet
⑥ シェール開発のケーススタディ
 SPE 159089: テキサス州とルイジアナ州にまたがる Haynesville シェールの一定エリ
アにおいて、貯留層の圧力低下を考慮した、次の坑井配置の最適化を OSF(Offset
Severity Factor)という標準化パラメーターを導入して評価。近隣の既存フラクチャーと
の導通を如何に避けるかが、次の坑井からの生産が成功するかどうかの鍵。単独井の
みで開発を終えるよりも複数井の導入の方が生産増に有効とのこと。EXCO Resources
社の発表。
 SPE 159755: マイクロサイスミック技術では捉えられないシェール層の脆性破壊を層
序学的特性、鉱物分布、応力分布を考慮してシミュレートするソフトを開発。このソフト
を使えば、綺麗な割れ目の面的な広がりになるか、または、複雑な割れ目網になるか
が分かるという。Barnett シェールと Piceance 堆積盆地のタイトガスのデータを用いて
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
検証。ソフト会社 Stimulation Petrophysics Consulting と Texas Christian 大の発表。
 SPE 159227: 中国の四川堆積盆地の Qiongzhusi シェール層の開発ヒストリー。TOC
(Total Organic Carbon)は 2~3wt%と良好で、米国の Woodford シェールに性状が似て
いる。1段階の水圧破砕の区間に穿孔(パーフォレーション)のクラスターを 3つほど入
れる。6 段階の水圧破砕を 4 日間で実施。水ベースの流体(slick-water:ポリマーを少
量混ぜて坑井内の圧損を低減)を使う。Halliburton と PetroChina の発表。
 SPE 159586: 米国ノースダコタ州の Williston 堆積盆地の Bakken シェール層の開発ヒ
ストリー。外径 4-1/2 インチのライナー仕上げの裸坑に仕上げる水圧破砕の段数は増
加(2006 年 8 段->2011 年 40 段)。生産レート 660~1914boepd。Whiting Petroleum
社と Baker Hughes の発表。
 SPE 160480: Bakken シェール層に掘られ、約300mの間隔で隣接する水平井の坑底
の圧力導通の計測とその解釈について。水圧破砕で作られた割れ目の長さは 240~
300 メートル。互いに導通した水平井の坑底圧力を計測・解釈することは、割れ目情報
の把握に有効。Daneshy Consultants 社と Petro-Hunt 社の発表。
⑦ トピカル・ランチョン: 非在来型貯留層を調査する際のインプリケーション
 非在来型貯留層を掘削時に調査する際の注意点: 水圧破砕に用いる水資源の保護。
良質な貯留層(スイートスポット)の探査。1 つの坑口位置から掘削される坑井数の増
加(52~60 坑)に伴う坑跡衝突の回避。有効な調査ツールの選択(例えばジャイロ調
査の手を抜かない)。掘削レポート作成にかける時間。
 坑跡がよく把握できると、それは貯留層モデルにも反映され、可採埋蔵量の増加にも
つながる。
⑧ 非在来型の石油・天然ガス資源の開発で生み出される価値
 米国の石油生産量は2008年まで下げ止まらなかった(1995年860万バレル/日、2000
年 800 万バレル/日、2008 年 690 万バレル/日)のだが、2009 年より一転して増産
(2009 年 740 万バレル/日、2010 年 770 万バレル/日、2011 年 810 万バレル/日)に転
じた。3 年連続の増産は 25 年振りの快挙で、2008 年の経済危機を考えると信じがたい
事実。これに大きく貢献したのが、シェールオイルの生産だ。シェールオイルの生産
にもシェールガス同様に水圧破砕技術が使われる。
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切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
 水圧破砕と出来た割れ目の支持材(プロッパント)が、シェールオイルの貯留岩から坑
井への流路を如何に確保するかの鍵となる技術であることは言うまでもない。
 高品質なプロッパントと増加する生産レートや総推定生産量との関係をイメージ化(図
6)。シェールオイル開発の場合、油価が 50 ドル/バレル以上だと、内部利益率は急に
上昇することが判ってきた。
図6
出所: SPE 資料に基づき作成
 ノースダコタ州のバッケン、テキサス州のイーグルフォード、コロラド州のナイオブララ
において「タイトオイル」の開発が盛んになってきた(図 4)。
 開発課題: 貯留層の挙動把握、多段階水圧破砕の手順、水圧破砕後の戻り水(フロ
ーバック)と生産量の関係、水圧破砕の作業員の確保、坑井のモニタリング(圧力・温
度)、地上の坑井位置の削減、フラクチャリング流体の選定が挙げられており、開発業
者(石油会社)はベストプラクティスを求めつつ、石油サービス会社と協力して、開発を
行っているところ。
⑨ Annual Reception and Banquet
 出席者約 900 名。
 Technical & Professional Awards Presentation
 2012 SPE President Ganesh Thakur (Chevron) gave his “State of the Society” address
and passed the presidential gavel to 2013 SPE President Egbert Imomoh (AFREN):アフ
リカ人初となる SPE 会長(写真 6)。
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出所: 著者撮影
写真 6 Annual Reception and Banquet での新旧 SPE 会長
10 月 10 日(水)午前 ⑩Technical Session: Shale Gas and Oil Well Performance
⑪SPE President’s Luncheon
午後 ⑫Education, Recruiting and Training for the Unconventional World
⑩ シェールガス井やシェールオイル井の生産挙動
 シェールガス井やシェールオイル井の生産減退率は高く、1坑あたりの生産レートは在来
型よりオーダーが1ケタ小さいため、生産量の確保には従来型より多くの井戸数を必要と
する(図 7)。生産レートの減退率は高いものの、年を追って増加傾向にある。
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出所: SPE 資料
図 7 シェールオイル・ガスの日産量の推移例
 1 つの坑口位置から複数の水平部分を持つ坑井も出現した。いわゆる水平坑井である。
通常の垂直・傾斜井に比べ岩石との接触体積が多くとれるため 1 坑あたりの生産性を数倍
に増やすことができ、1980 年代後半より石油開発に広く使われるようになった。水平部分
の長さが 2 ㎞を超える水平坑井や、水平部分への多段階水圧破砕も広く適用されるように
なってきた。割れ目が貯留層中に広がらず上下に成長し、他の貯留層や帯水層につなが
ってしまうと、ガス回収に支障を来す。割れ目に関する情報を多く得るために、マイクロサ
イスミックという観測技術も登場した。割れ目が形成される際に発生する地震波を観測し、
それを解析して割れ目の広がりを評価、ガス回収の効率向上に必要な割れ目のマッピン
グを提供する。ただこれは新しい分、高度な技術で、作業の計画・実行・分析・解釈に厳密
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さを加える必要があるとされている。
水平坑井、水圧破砕、マイクロサイスミックの 3 要素技術を実践すれば効率的にシェール
ガスを開発できる、というわけにはいかない。シェールガスを経済的に地下から取り出す、
技術サイクルを習得する必要がある。まず地化学検層データから炭酸塩や黄鉄鉱、粘土、
石英といったシェールの鉱物組成を分析。これを知ることで、シェール内の孔隙率および
水飽和率がわかり、シェールの浸透率とシェール中のガス量の推定につながる。地化学
検層データからは粘土分のタイプもわかるため、水圧破砕で使う圧入流体の仕様を決め
るのに役立つ(図 8)。
出所: SPE 資料
図 8 シェールの浸透率と水圧破砕で使う圧入流体の検討
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 次に電気的イメージと音波による検層データから、割れ目を貯留岩にもともとあったものと
掘削によりできたものに分類し、シェール中で最も浸透率の高い箇所を見つけ出す。地層
圧力の計測も必要だ。水平掘りや傾斜堀り、ガンマ線検層などの掘削・検層技術で貯留岩
の特性を把握して岩盤内の流体挙動シミュレーションを実施し、ガスの生産量と可採埋蔵
量増加に結びつける(図 9)。シェール層にあるナノレベル(10-9m)の狭い隙間では、ガス
の圧力が低くなっても、分子 1 個 1 個がその壁の間を跳ね返りながら進む「クヌーセン拡
散:Knudsen diffusion」と呼ばれる現象が起き、流れやすくなるらしいことも分かってきた。
出所: SPE 資料
図 9 貯留岩の特性を把握した岩盤内の流体挙動シミュレーションのイメージ
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 SPE 159584: 「スリップ:気相と液相の流れの差」と「クヌーセン拡散」をモデル上で表
現するため、毛細血管モデルを多孔質体内での実ガスの流れが表現できるように修
正。シェール・マトリックス(シェール本体)と水圧破砕でできた割れ目をつなぐ孔隙は
圧力の変化に応じて収縮する。収縮度合いの微分で拡散を表現できると仮定したモ
デルを開発。テキサス大の発表。
 SPE 159558: シェール中のガス量(孔隙内とシェールの有機物に吸着の2種類)の推
定に用いる実験法の紹介。実験法の違いにより推定ガス量に差が出てくる。
ExxonMobil 研究所の発表。
 SPE 159207: テキサス州 Eagle Ford シェール開発のデータ分析。2012 年 2 月時点、
10 郡で掘削された 1433 坑の内 1431 坑の生産井が対象。初期レートの減退率は 70
~80%。推定総生産量(EUR)は石油換算で 20 万バレル、上位 6%程度が 50 万バレ
ル。ベストの EUR は 100 万バレル。Eagle Ford シェール開発状況を把握するのにベス
トな論文。ただ、郡別の評価なので、シェールの特性把握までには至らず。堆積深度
毎の評価が待たれる。G.S. Swindell 氏(コンサルタント)の発表。
<水圧破砕におけるガスとフラクチャリング流体の動き>
 フラクチャリング流体の取り扱いについては、大量の水(1 坑井あたり 3,000~
10,000m3)の利用に対する配慮と、水確保に関する不安材料解消の両面から、水圧破
砕後に地上に戻る水(フローバック)を処理して再利用することが主流になりつつある
(図 10)。
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図 10
 フローバックを再利用するために必要な水処理の主要なポイントは次の 3 点。
イ) 塩分濃度の低減
ロ) 浮遊固形分(TSS:Total Suspended Solid)の除去
ハ) スケール生成物質(TDS:Total Dissolved Solid ほか)の除去
イ)は様々な添加剤の作用を妨げる、地中における地化学的反応で固体が析出してガ
ス流路を閉塞する恐れがあるためと推定される。
ロ)はガス流路の閉塞と関連するほか、摩擦低減剤の効果が弱まることを警戒するから
だ。
ハ)は坑内や地層中でスケールが付着し、岩石の孔隙やガス流路の閉塞をもたらすか
らだ。ハ)において処理すべきスケール生成物質には、フローバックに溶解している自
然界の放射性物質(NORM:Naturally Occurring Radioactive Material)も含まれる。フロ
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ーバックに地下の放射性物質が溶解することはシェールガス開発に特有の問題では
なく、溶解している放射性物質の強度もそのままならば健康に全く問題ないレベルだ。
しかし、フローバックの再利用によってその濃度が上昇し、水に対する溶解度の限界を
超えるとスケールとなって沈積し、ある程度の強度の放射線源となることが警戒される。
 天然ガスの開発・生産活動は、浅部の帯水層や地表の水源を汚染するリスクをはらむ。
干ばつ時の掘削や水圧破砕用の水確保も容易ではない。規制や水質検査、米国環
境保護局 EPA、米国議会、産ガス州政府との連絡調整がリスク軽減に必要だ。それら
をクリアした上でシェールからのガス生産が可能となる。
 ペンシルベニア州の Marcellus シェールにおいては、「生産水とフローバックのリサイ
クル」は必須な作業になろうとしている。そのきっかけは 2011 年 4 月半ばに州の環境
保護局から出された「15 の水処理プラントが Marcellus シェールにおける生産水とフロ
ーバックの処理を中止」という通知にある。処理された水を河川に投棄することも中止
された。ペンシルベニア州ではそれまでフラクチャリング流体の 3 分の 2 がリサイクル
されていた。シェールガス開発業者は、環境論者、政治家、地権者と開発の是非を巡
って係争の場に立たされている。Marcellus シェールにてガス開発を行う業者の一つ
Range Resources 社では、生産水とフローバックをほぼ 100%リサイクルしている。4 月
半ばのペンシルベニア州環境保護局からの通知は、その方向性を強めるものだった。
ピッツバークの水処理業者Kroff Oil Services 社はフローバックの 100%リサイクルの実
践面と安全面を説いている。Range Resources 社のフローバックのリサイクルは 2009 年
8 月に始まり、2010 年には 96%のリサイクルに成功した。フローバックのリサイクルと生
産水の処理を行っていくうちに、新鮮な水がいつもフラクチャリング流体に必要でない
ことも分かってきた
 ペンシルベニア州の環境保護局は、坑井位置、周辺自治体、ガスの生産、開発業者/
オペレーターの情報を公開している(FracFocus.org)。
 フラクチャリング流体の水は、ガスの本格生産開始前に 10~30%が地表に戻る。フラ
クチャリング流体用の水を運搬するトラック代もばかにならない。その意味でもリサイク
ルは水圧破砕のコスト減につながる。ガス井から回収された水は、地表のピットに貯め
られる。坑井元の簡易的な水処理装置で水をある程度浄化し、再利用する技術も実用
化されている(ハリバートン社の水処理技術 CleanWave)。トラックに搭載された
CleanWave 装置はコロラド・ノースダコタ・ルイジアナ州で稼働中だ。大気チェックも行
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っている。
 テキサス州では産出水の地下への処分圧入コストが安いため、フラクチャリング流体
の再利用は 5%に留まっている(テキサス大の調査)。しかし、同州の Eagle Ford シェ
ールの開発ブームは干ばつ地での水の大量利用となるので、坑井元での水処理・再
利用は、その必要性が高まるだろう。
 多くの水圧破砕をより少ない水で行う際の教訓としては、ある程度汚れた水を再利用
する技術が大事だ(処理して飲料水に近い水を作ることではない)。カナダの Horn
River シェールでは塩分濃度の高い帯水層からの水をフラクチャリング流体に活用し
ている。フラクチャリング流体の質についての共通の基準(バリウム、硫酸塩の含有
量)はまだない。
 フラクチャリング流体のリサイクリングの経済性は、ペンシルベニア州の水処理プラント
が Marcellus シェールからの生産水とフローバックの受入・処理を完全に終えた時、突
然悪くなるだろう。坑排水の地下への圧入はペンシルベニア州では認められていな
いため、州外(オハイオ州)への長距離輸送が必要となる。圧入チャージは 1.5~2 ド
ル/バレル、輸送トラック代は 100 ドル/時が相場だ。
 坑排水のピット貯留がかなわない場合には、坑排水を坑井元で浄化することになる
(Vapor Recompression)。Purestream Technology 社のチャージは 3.5~7.5 ドル/バレ
ルだそうだ。
 Marcellus シェールからの水の特徴として、海水よりずっと塩分濃度が高く、ストロンチ
ウムやラジウムを含む。1日100万ガロン(3,785m3)の水処理能力を持つプラントは400
トンの廃棄物を出す。フローバック中のバリウム含有量は 3 グラム/リットル~17 グラム/
リットルだ。バリウム、鉄分、ストロンチウム、硫酸塩、スケール*の取り扱いが大事にな
る。カートリッジ型フィルターでは固形分の 15~20%しか除去できない(テキサス A&M
大 Burnett 教授)。坑排水の圧入と水の処理・浄化のコスト比較が必要だ。
 開発業者はベストプラクティスを求めつつ、石油サービス会社と協力して、開発作業を
行っているところだが、情報公開の徹底、地元住民との対話がシェールガス開発作業
の継続の前提となるだろう。
*
溶解限度を超えて析出した固形物。水中に存在する化合物の内、ある種のものは、水に対する溶解度が有限であり、その濃度が溶解度
を超えるとスケール(またはスラッジ)を生成する。スケールが生成されると、管路においては管路抵抗の増大、ヒーターや熱交換器では熱
効率の低下をきたし、更に進めば、管路が閉塞される。スケール対策は、各種設備の効率と安全性を維持する上で、重要な役割を持つ。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に
含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何ら
かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
⑪ SPE President’s Luncheon
 Mr. Egbert Imomoh, 2013 SPE President, Non-Executive Chairman and Co-Founder at
AFREN plc の SPE 会長の就任挨拶: 会員主体の協会としたい。共に活動することが
協会発展の道(標語: SPE IS YOU AND YOU ARE SPE)。技術課題として、回収率
の向上(35%→65%)、石油工学の教育と啓蒙を挙げたい。安全基準の徹底(大水深
開発、多段階の水圧破砕)も大事。
 SPE の現状: 会員数は 10 万 4 千人を超えた(一般 123 カ国から 75395 人、103 カ国
から学生 29367 人@2011 年末)。
 SPE 役員と名誉会員の紹介。顕著な活動を行った SPE 支部の表彰。
⑫ 非在来型石油・天然ガス開発に必要な教育、リクルート、トレーニング
 非在来型石油・天然ガス開発に必要な人材確保と育成についてのフリーディスカッシ
ョン。
 新しい世代への対応、OJT やインターンシップ、トレーニングコースの受講による技術
のブラッシュアップが当面のアクションとして大事。
4. まとめ
 現在埋蔵量の大半(80%弱)が産油国の NOC に握られている環境下では、IOC や独立系石油会社
(インデペンデント)は、新規油田開発よりも既発見油田からの生産促進に軸足を置かざるを得なく、
投資機会は縮小していると考える。
 縮小する投資機会に対応した開発技術のトレンドを整理するには、石油価格変動下における石油開
発技術の適用とそれを担う人材確保の行方という観点から物事を分析する必要がある。今回の SPE
年次総会からの情報を基に技術トレンドを考えてみた。
 SPE 年次総会は、いうまでもなく、石油工学者(Petroleum Engineers)にとって 1 年で最大の展示を備
えた学会で、学術的にも最も権威があると言われている。今回も米国の大学を中心に、多くの大学院
生が発表を行っていたが、英語も流暢で論理構成もしっかりしており、業界の技術者の裾野の広がり
は世界的に維持できていると感じた。アジアの貢献としては、米国留学中の中国人やインド人の学
術発表数が多く、彼らが石油工学の発展に寄与しているのは、もはや常識である。日本人も早稲田
大学を卒業した若い人が、そのまま当地の大学院に進学し石油工学を勉強し、米国企業へ就職、あ
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かの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一
切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
るいは就職を目指している姿が見られる。
 SPE 年次総会の一環として 10 月 8 日夕に開催されたタルサ大の石油工学科の同窓会に出席し、旧
友や恩師と親交を深めた。高油価に伴う、石油・天然ガス上流の仕事量や大学での石油工学専攻学
生数の増加は明らかであり、晴れやかな表情での歓談の輪が広がった。
 展示場では、例年通り Schlumberger, Halliburton, BJ Services, Baker Hughes, Weatherford といったソ
フト・ハードをコンサルティング(専門家)とともにオペレーターに提供できる大手の石油開発サービ
ス会社がスペースも多くとり、観衆を集めていた。ここ数年の傾向だが、製品のカタログを渡すという
よりも、大型スクリーンでのPC画面やDVDの上映が目に付く。油層シミュレーションモデルの紹介で
は、油層全体が 3 次元にまた時間経過と共に、油層飽和率の変化が視覚的に適切に捉えられるイン
ターフェイスがパソコン画面上で実現できるのは、7 年程前から一般的な技術になっている。2004 年
来、高い油価が継続し、油田操業により多くのお金が掛けられ、リモートモニタリング技術や動く 3 次
元油層モデルを使って、生産量増加のための坑井の追掘や改修といった油層管理の意思決定時間
の短縮が図られている。もちろん、油田の現場を良く知り、データをよく見極める目を持った専門家
の存在が、その前提としてあるが、大手サービス会社の油田操業現場への技術提供がかなり細部に
まで進んでいる。極論すれば、油田操業会社の技術者はサービス会社の提供する技術の良し悪し
を判断・管理する役目になっている様に感じられた(詳しい技術の中身の理解はあまり要求されな
い)。
 現在埋蔵量の大半(80%弱)が産油国の NOC に握られている環境下では、IOC や独立系石油会社
(インデペンデント)は、新規油田開発よりも既発見油田からの回収率向上や生産効率向上を目指し
た技術(EOR/IOR、水平坑井、多段階の水圧破砕)の適用や非在来型資源(タイトオイル、シェール
ガス)の開発に軸足を移している。一般に油価の高騰下では、技術改良・技術開発が進む。油価の
長期的な動きを十分意識しつつ、開発資材コストの高騰と、改良・開発された技術の適用の度合い
が、当面の可採埋蔵量の積み増しをコントロールすることになる。
 また、展示場では、サウジアラムコが 2005 年来、人材リクルートのコーナーを大きく設けている(いい
人材が展示場には溢れている?)。確認埋蔵量 2,600 億バレル・日産 900 万バレルを誇る世界最大
の原油供給者サウジアラムコ。一方、BP ブースはマコンド坑井の暴噴・油流出事故の影響をひきず
っているのか、展示会場の端にあった。良きイメージは失うのは簡単だが、回復するには時間がか
かる。
 年次総会では、例年 3 日目に SPE 会長主催の昼食会が催される。石油・天然ガスの掘削、油層管理、
生産に関する技術はメジャーのみならず、可採埋蔵量の 80%弱を支配する産油国の国営石油会社、
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インド・中国ほかへと、全世界的な広がりを見せている。SPE 会長の挨拶も、石油開発技術のグロー
バル化を強く意識し、環境対策をとりつつ、可採埋蔵量の積み増しを着実に進め、石油需要の伸び
にも応える供給努力を続け、世の中から良いイメージをもたれるようにしたいとのメッセージであった。
SPEの新会長Egbert Imomoh氏はナイジェリア人であり、アフリカから初めての会長であるためか、会
場にはアフリカからの参加者が目立った。
 SPE のみならず、AAPG(地質)、SEG
(物探)などの技術会議に出て、最新動
向を肌で感じ、かつ、発表を行うことは
大変貴重な経験であり、日本の若手技
術者の認知・技術レベルの底上げには
欠かせないと考える。世界における石
油・上流産業における日本のステータ
ス向上のためにも若手技術者の積極的
な参加・発表が望まれる。
 来年の年次総会は、米国ルイジアナ州
のニューオリンズで 9 月 30 日~10 月 2
日の日程で開催予定。
<参考資料>
SPE-ATCE2012 Conference Program
SPE-ATCE2012 Proceedings (CD)
これら参考資料は、石油調査部に 1 セット保管。
以上
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