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合わせること(2002) - 山梨県総合教育センター
特別寄稿 「あわせること」 山梨県教育庁義務教育課 秋山哲夫 1「あわせる」こと 音楽を創り上げる活動,たとえば合唱・合奏を思い浮かべてください。子供たちはリズムやメ ロディー,ハーモニー,そして音色などを「合わせよう」と耳を働かせていると思います。ま た,「あわせる」ためには,子供たち一人一人が基準をもち,合っている・合っていないという 状態をその場で判断しているはずです。 音楽活動の中で「あわせる」ということには,単に音程やリズム等が揃っている状態を指すだ けではなく,気持ちや息なども入ってくることは,先生方も十分ご承知のことと思います。小学 校低学年では,音楽に合わせて体でリズムをとったり,手足を揺らしたりしながら楽しそうに歌 っている姿をよく拝見します。子供たちは思い思いに音楽表現をしているように見えますが,実 は体全体で音楽を感じ,みんなと一緒に何かを表したいという願いをもっているのではないかと 思います。また,小学校中学年から高学年,中学生になると合唱活動で指揮に合わせてリズムを とりながら歌う姿を拝見します。演奏する仲間と一体感を感じながら,音楽を表現する,何かを 伝えるという喜びを感じていることは,歌っているその表情からも見てとれますね。 ここで大切なのは,子供たちが「何に」合わせようとしているのか,そして「何を」合わせよ うとしているのかということです。みんなで一緒に歌ったり楽器を演奏することで得る感動体 験,楽しい音楽活動を基盤に,子供たちがより音楽を深く楽しんでいくことができるよう,この 「あわせる」ということに注目していきたいと思います。 2「ユニゾン」をあわせること ユニゾンできれいに音が一つに聴こえた時の喜びは,美しいハーモニーを創り上げた時と同じ くらい大きいと思います。子供たちがこのことを実感しているかどうかで,二声以上になって も,音を聴く意識が変わってきます。斉唱を行うときに,ユニゾンで演奏するときに隣にいる友 だちの声やリコーダーの音を,子供は聴いていますか。子供たちが楽しそうに元気に歌う姿は, それだけで教える喜びを与えてくれます。その子供たちが,これからも先生と同じように音楽を 楽しんでいくことができるように,音が合ったときの美しさを体験させてあげて下さい。そし て,発達段階に応じて「合った」状態と認められたときは,大いにほめてあげましょう。 3 「合った状態」を知ること さて,前項ともかかわりますが,合っている状態に気づかせる過程では,子供たちの前にいら っしゃる先生が音程について「高い」「低い」などの助言をしてあげる場面も必要です。その次 には「合ってるかな?」と自分で調整させたり,録音した演奏を聴きながら客観的に判断させた りする場面も想定されます。このようなステップを踏みながら,子供たちは音が合っている状態 を,より判断できるようになります。よく合った状態がわかると,不協和音などの響きについて も,敏感に反応するようになります。この表現で身に付けた聴く力は,鑑賞でも生きてくること でしょう。最近は音楽の授業でも使われるようになってきたチューニングメーター等も便利です が,最終的には子供たちが「耳」で判断できるようにさせたいですね。 4 「友だち」とあわせること 平成14年度は,新学習指導要領を受けての中学校での小アンサンブルや,小学校でのグルー プ学習を多く拝見してきました。これまでもアンサンブル学習の有効性は言われてきたわけです が,「音楽をつくっていく過程で子供達一人一人の興味関心,習熟度に応じた課題設定が可能に なる」「子供達が,より主体的に学習活動をすすめることができる」などの点が多くの先生方に 認められてきた結果であると思います。 しかし,数多くの可能性をもった学習形態ではありますが,気を付けなければならない点もあ ります。たとえば,アンサンブルだグループ学習だということで,先生方が子供達から離れてし まい,その時間に身に付けさせたい力の定着が不十分のまま終わってしまうことはありません か。教えるべきことはしっかり教え,その力を使って子供たちが感性を働かせて自分たちで音楽 を創っていくことが,本来この活動の趣旨であると思います。よく支援という言葉を聞きます が,支援とは離れた位置にいて行うことではなく,より一人一人の子供に寄り添い,その子に応 じた指導を行うことなのではないでしょうか。アンサンブル活動では,より一人一人の子供の姿 が見えやすくなります。主体的に子供達が活動する中で,個に応じた指導を行ってあげてくださ い。 5 「視点」をあわせること 楽しい音楽活動を基盤とした授業を通して,その時間に身に付けさせたい力について「おおむ ね満足できる」状況であるかを,先生方は評価をされていますね。平成14年度は,この評価に ついては昨年夏の教育課程研究協議会,音教連の大会,研究授業,サークルの研究会等でお話を させていただきました。評価規準については,各学校で教育課程が異なるわけですから一校一校 全く同じという訳にはいかないでしょう。しかし,類似した題材では近隣の学校でお互い参考に できることも多いのではないでしょうか。地域の研究会などで年間指導計画や評価計画,評価規 準表などを持ち寄り,お互いに評価についての研究を深め,評価の視点を合わせていくことは, 客観的な評価のためにも大切なことです。サークルなどで研究授業を実施されるときは,授業者 の先生とともに参観者の先生方も一緒に評価を行い,後の研究会で評価の妥当性について協議を するなどの研鑽がされることを期待します。 また,同じ子供たちをはぐくんでいく学区内の小学校と中学校で連携し,お互いがどのような 教育課程を通して,どのような時期に,どんな授業を実施しているのかを知ることも,大事なこ とです。小学校の鑑賞共通教材,中学校の歌唱・鑑賞の共通教材がなくなりました。ともする と,重複した教材を用いてしまうことも出てくるでしょう。小中学校で,お互いの教育課程を知 ることは,縮減された授業時数対策としても有効であると考えます。 学校現場の多忙化が言われて久しくなります。しかし多忙化の中で先生方の交流が少なくなっ てしまうことは,本当に寂しいことです。子供たちが音楽を合わせて楽しむように,先生方も視 点を合わせ,情報交換をして,音楽教育について語り合っていただくことは,子供たちの楽しい 授業に還元されるはずです。子供たちにとって,「今も ることを,期待しております。 これからも 楽しい音楽」の授業であ