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1 はじめに 1. 中国の医療保険制度

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1 はじめに 1. 中国の医療保険制度
はじめに
本誌は中国の医療保険への収載と薬価戦略について説明をするが、中国の医療保険のシステ
ムがどのようになっているかをよく理解しないと、医療保険リスト収載の方法もよく理解で
きない。また、薬価戦略についても、日本の薬価制度と中国の薬価制度の違いを、よく理解
しないと、何がどうなってなぜこうなるのか、理解に苦しむ事になる。
日本でのケースでは、医薬品は薬価収載後新発売のパターンが多くあるが、中国ではそのよ
うには行かない。輸入承認を得てから、全国の医療保険償還リストに収載させるまでには、
最低で 3 年∼ 5 年掛かる。それまでコツコツと実績を積み上げ、専門家の評価を得て、専門
家から必要と認められ償還リスト収載の候補に挙げて貰って、初めて会議の議題に載る。そ
して最終会議で承認されて、晴れて医療保険償還リストに収載される。だがそれで OK では
ない。リスト収載されたら、直ぐに病院に採用される訳ではない。次は入札で無事に製品を
落札させて、初めて病院に納品でき医局活動が開始される。本誌では、中国のこの複雑な仕
組みを判り易く実践的に解説したい。今現在、中国で活動されている皆さんや、これから活
動を計画されている皆さんにできるだけ、無駄な回り道をしないで成果があげられるよう
に、著者の成功体験・失敗体験から具体的な戦略をお示しする。
1. 中国の医療保険制度
1.1 中国の保険収載の仕組み
中国の医療保険制度における、日本との仕組みの違いは、保険の給付内容が全国統一的に実
施されていない事である。中国では、現在 3 種類の医療保険が存在し、保険の種類によって
使用できる薬が決められており、提供される医療の内容も違っている。1951 年制定の労働
保 険 条 例 で 実 施 さ れ た 公 費 医 療 保 険 と 労 保 医 療 保 険 か ら 成 る 公 的 保 険 を 引 き 継 い だ「 都 市 労
働 者 基 本 医 療 保 険 」と 、 2 0 0 7 年 に 中 国 政 府 の 国 民 皆 保 険 制 度 を 目 的 に 制 定 さ れ た「 新 型 農 村
医 療 保 険 」、
「 都 市 住 民 基 本 医 療 保 険 」で 全 国 民 の 9 5 % 以 上 を カ バ ー し て い る 。 一 番 内 容 の 充
実 し て い る 保 険 は「 都 市 労 働 者 基 本 医 療 保 険 」で 、 医 療 保 険 の 償 還 リ ス ト に 収 載 さ れ て い る 全
て の 薬 が 使 用 で き る 。 次 に 充 実 し て い る の が「 都 市 住 民 基 本 医 療 保 険 」で 医 療 保 険 の 償 還 リ ス
トの中の一部の薬に使用の制限がされている。
「 新 型 農 村 医 療 保 険 」は 、 約 8 億 5 千 万 人 が 加
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入しているが、使用できる薬は限られている。
「 都 市 労 働 者 基 本 医 療 保 険 」で は 、 医 療 保 険 料
は 給 与 の 1 2 %( 北 京 市 の 場 合 、 各 省 で 違 っ て い る )で 、 企 業 が 1 0 % を 負 担 し 、 個 人 が 2 % を
負担している。
「 新 型 農 村 医 療 保 険 」で は 農 民 一 人 当 た り 年 間 1 0 元 の 保 険 料 に 対 し 、 国 が 1 2 0
元 を 負 担 し て 2007 年 に 保 険 制 度 を 立 ち 上 げ た が、2012 年 に は 国 の 負 担 は 230 元 に ま で 増
額 さ れ て い る 。 政 府 は 中 国 国 民 の 大 半 を カ バ ー し て い る「 新 型 農 村 医 療 」を 充 実 さ せ て 、 底 辺
医 療 の 底 上 げ( レ ベ ル ア ッ プ )を 目 指 し て い る 。 そ の 為 に 、
「 新 型 農 村 医 療 保 険 」で 使 用 が 許 可
さ れ て い る「 国 家 基 本 薬 物 リ ス ト 」に 収 載 さ れ て い る 医 薬 品 の 種 類 を 増 や す 事 が 考 え ら れ て い
る 。 現 在 約 3 0 0 種 類 の 医 薬 品 が「 国 家 基 本 薬 物 リ ス ト 」に 収 載 さ れ て い る が 、こ の リ ス ト に 新
たに 700 種類の医薬品を追加すると発表している。後程詳しく説明するが、当然、このリス
トの医薬品は、甲リストの医薬品の為、自己負担なしの 100% 無償で償還される。リストを
充実させる事は、国家の負担を益々重くする。その為に、
「 国 家 基 本 薬 物 リ ス ト 」に 収 載 さ れ
る と 、償 還 価 格 は 更 に 低 い 価 格 が 要 求 さ れ 、現 在 の 償 還 価 格 か ら 3 0 ∼ 5 0 % の ダ ウ ン に な る 。
その代わり使用される市場は今までとは比較にならない程大きくなり、全体には薄利になる
が量でカバーする事ができる為、ジェネリックメーカーにとってはチャンスにもなる。
1.2 中国医療保険の償還制度
中国の医療保険は、外来と入院で対応が違っている。医療費の無駄使いを防ぐ為に、日本の
制度に学んで、外来の保険償還と入院の保険償還が区別されている。
「都市労働者基本医療保
険」
「 都 市 住 民 基 本 医 療 保 険 」と「 新 型 農 村 医 療 保 険 」の そ れ ぞ れ の 仕 組 み に つ い て 説 明 す る 。
「 都 市 労 働 者 基 本 医 療 保 険 」で は 、 外 来 の 保 険 償 還 は 、 医 療 保 険 料 の 個 人 が 負 担 し て い る 掛 け
金 を 個 人 の 口 座 に 積 み 立 て 貯 金 を し て お り( 省 に よ っ て 、 企 業 が 拠 出 し て い る 1 0 % の 中 か ら
1 ∼ 2 % を 個 人 の 口 座 に 加 え て い る )、 こ の 範 囲 で 償 還 さ れ て い る 。 入 院 の 保 険 償 還 は 、 企 業
が拠出した保険金を集めた基金から償還される仕組みになっている。従って外来の保険償還
は、自分の口座の積立金がなくなれば、それ以後の医療費は全額自己負担になる。逆に自分
の口座に多くの残額がある場合、両親や子供の為に使用する事もできる。入院での費用負担
は、基金が支払う為、安心して治療が受けられる。
「 都 市 住 民 基 本 医 療 保 険 」で は 、 被 保 険 者 は 3 つ の 病 院 と 1 つ の 地 域 コ ミ ニ ュ テ ィ ー セ ン タ ー
を選んで、自分の指定病院として登録する。外来診察の時は、最初に地域コミニュティーセ
ンターを受診するように決められている。年間の自己負担の支払い限度額は 600 元でそれ以
上 支 払 う 事 は な い 。国 の 負 担 割 合 は 5 0 % で 天 井 ラ イ ン( 年 間 国 の 負 担 す る 限 度 額 )は 2 0 0 0 元 。
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2.6 EDL に収載させる為の工夫
省の医療保険の償還リストに収載されると、その省では医療保険で償還されるようになるの
で、売り上げも一気に 20 倍∼ 30 倍になり、MR を増強し市場開拓が本格的になってくる。
問題はこのような省をいくつ作れるかになる。更に次なる展開として、底辺の拡大にも注力
し な け れ ば な ら な い 。 兎 に も 角 に も 省 の 医 療 保 険 償 還 リ ス ト に 収 載 さ れ る 事( 票 数 )を 増 や さ
ないといけない。また、全国の専門家会議で招集される専門家を押さえる対策も必要になっ
てくる。ここで大切なのは、中華医学会でその領域の分科会年会が開催される時に、開催地
で専門家の研究会を主宰し、著名な専門家へ製品の良い評価の情報を提供し、啓蒙活動をす
る事である。専門家は色々な場所で顔を合わせているので、専門家同士の序列もはっきりし
ており、上からの意見に逆らう事はできない。また、中国は面子を重んじる傾向が強い為、
相手の面子を潰すような事はしない。従って著名な専門家から の推薦はとても重要で、臨床
開発の段階から著名な専門家に臨床試験を依頼して、人間関係を構築しておく努力が必要に
なる。全国の専門家会議が近づくと、自社製品のデータを紹介する冊子を作成し、これとい
っ た 専 門 家 を 訪 問 し て 、説 明 と 依 頼 の 為 に 全 国 を 回 る 事 に な る 。会 議 の 会 場 を 突 き 止 め る と 、
秘かに入り口付近で会議への参加メンバーをチェックする為に社員を張り込ませて、参加し
た専門家を調べ情報収集と、対策を検討する。晴れて全国医療保険償還リストに収載された
からと言って安心はできない。何故か ? それは、前項で述べたように、省単位で 15% の範
疇で、リストの出し入れがあるからである。特に、今までリストに収載されていなかった省
( 票 に な っ て い な い )は 要 注 意 で あ る 。 必 ず 、 追 加 で 専 門 家 対 策 を し て 、 は じ き 出 さ れ な い よ
うにする必要がある。
2.7 成功例
私が中国の総経理として中国に赴任し、MR と一緒に病院を訪問した時の事だが、どの病院
でも MR は薬剤部を訪問しないで、直接医局を訪問している事が気になっていた。その MR
の 上 司 に 確 認 す る と 、 薬 剤 部 の 主 任( 薬 剤 部 長 )は メ ー カ ー と 面 談 し な い か ら 、 薬 剤 部 に は 訪
問していないとの答えであり、どのメーカーも同じ訪問パターンであった。私はこれはチャ
ン ス だ と 思 い 、積 極 的 に 薬 剤 部 の 主 任 に ア ポ イ ン ト を 取 ら せ て 面 談 を し た 。薬 剤 部 の 主 任 は 、
メ ー カ ー の 総 経 理 が 会 い た い と 依 頼 す る と、 会 社 の TOP の 面 子 を 潰 す と い け な い と 思 い、
多くの先生が時間を割いて面談してくれる事ができた。この時の対応が大切で、一回の訪問
で終わらないように、必ず宿題をつくり、次回の訪問を約束するようにした。私のこの時の
共通のテーマは、病棟薬剤師の活動をどうしているかであり、実際に日本の病院の薬剤部で
も 、 当 時 は 悩 み の 多 い テ ー マ で あ っ た 。 そ こ で 、 中 国 の 病 院 薬 学 専 業 委 員 会( 日 本 病 院 薬 剤
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資料 3 最高小売価格設定方式法案
出 荷 価 格( 輸 入 価 格 )に 、 積 み 上 げ 幅 を 設 置
工 場 出 荷 価 格( 輸 入 価 格 )の 価 格 帯 別 に 積 み 上 げ 可 能 額 を
設定しその枠内で販売価格を申請する
例
工場出荷価格
上乗せ価格幅
10 元以下
30%
10 ∼ 40 元
20%+1 元
40 ∼ 200 元
15%+3 元
資 料 4 医 薬 品 工 場 出 荷 価 格 調 査 法( 抜 粋 )
第一条 薬 品 価 格 管 理 を 強 化 し、 薬 品 出 荷 価 格 の 調 査 を 規 範 す る 為 に、
《中 華 人 民 共 和 国 価 格
法 》、
《 中 華 人 民 共 和 国 薬 品 管 理 法 》及 び《 中 華 人 民 共 和 国 薬 品 管 理 法 実 施 条 例 》に よ っ
て、本方法を制定した。
第二条 国家発展改革委組織の定価権限範囲に属する工場薬品出荷価格調査に適用する。
第 三 条 国 家 発 展 改 革 委 組 織 の 薬 品 の 工 場 出 荷 価 格 調 査 は 薬 品 価 格 審 査・評 価 中 心 に 実 施 さ れ 、
或いは、省級価格管理部門に委託して実施する。
第四条 薬品の工場出荷価格調査はわが国における薬品を生産或いは分装する工場出荷価格を
実地に調査する行為で、国家発展改革委は法律によって価格調査を行う重要な形式で
ある。
第五条 薬品の工場出荷価格調査は客観公正、科学謹厳、公開透明の原則に従うべきである。
第六条 国家発展改革委は薬品価格制定と調整の需要によって、本級定価範囲内からある薬品
を選んで生産企業に指定期間の工場出荷価格などを調査する。
第七条 薬品の工場出荷価格調査の内容は薬品の工場出荷価格及び販売などの情況を含む。
第 八 条 薬 品 生 産 企 業 は 調 査 要 求 に 従 い「 生 産 企 業 及 び 薬 品 基 本 情 況 調 査 表 」
( 添 付 書 類 一 )と「 薬
品の工場出荷価格調査表」
( 添 付 書 類 - 2 - 二 )を 実 際 に 記 入 し 、 以 下 の 資 料 も 提 供 す る :
( 一 )企 業 声 明 書 : 提 供 し た 関 連 資 料 の 合 法 性 と 真 実 性 に 法 律 責 任 を 負 う 声 明 で
ある。
( 二 )関 連 法 律 書 類 : 企 業 営 業 許 可 書 、 薬 品 登 録 許 可 書 、 労 働 契 約 な ど 。
( 三 )薬 品 の 研 発 関 連 資 料 : 新 薬 証 明 書 、 特 許 証 明 書 、 国 家 表 彰 証 明 書 な ど 。
( 四 )販 売 政 策 関 連 資 料 : 販 売 契 約 な ど 。
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