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朝倉地区光ネットワーク構築と今後の展望 独立行政法人水資源機構
朝倉地区光ネットワーク構築と今後の展望 独立行政法人水資源機構 朝倉総合事業所 寺内ダム管理所長 ◎ 北 川 泰 則 朝倉総合事業所 寺内ダム管理所 木津川ダム総合管理所 1 ○豊原 ●西 誠 博之 1,概要 朝 倉 地 区 の 光 ネ ッ ト ワ ー ク は 、朝 倉 総 合 事 業 所 の 事 務 所 移 転 を 皮 切 り に 、マ イ ク ロ 電 話・フ ァ ッ ク ス・ダ ム 監 視 画 像・事 務 系 L A N 等 を 利 用 で き る 通 信 手 段 を 確 保 す る た め 、両 筑 平 野 用 水 総 合 事 業 所 と 自 営 光 ケ ー ブ ル を 接 続 し 、そ の 後 、寺 内 ダ ム 、陣 屋 川 排 水 機 場 、寺 内 ダ ム 上 流 域 へ 光 ケ ー ブ ル を 延 伸 化 し 、平 成 26年 度 に 完 成 し た 。本 件 は 、光 ネ ッ ト ワ ー ク 完 成 に 至 る ま で の 経 緯 と 今 後 の 展望について報告するものである。 2,はじめに 筑後川局管内の朝倉 地区は、筑後川支川の 小石原川上流に位置す る朝倉総合事業所、両 筑平野用水総合事業所 (江川ダム)及び佐田 川上流に位置する寺内 ダムがある地区である。 なお、朝倉総合事業 所では、小石原ダム建 設事業と寺内ダム管理 事業の両事業を担って い る 。( 図 1 ) 図1 朝倉地区の事業所位置図 3,光ケーブル敷設計画 光ケーブル敷設計画は全て自営線による共架敷設であるため、事業進捗や 予算措置、そして共架する電力会社又は通信事業者所有の電柱使用申請手続 の 関 係 に よ り 適 宜 計 画 を 修 正 し な が ら 実 施 し た 。( 図 2 ) 3 . 1 , 第 1 段 階 ( 事 務 所 移 転 回 線 : 7km) 平 成 19 年 度 に 朝 倉 総 合 事 業 所( 旧 小 石 原 川 ダ ム 建 設 所 )の 事 務 所 移 転 に 伴 い、通信事業者提供の専用回線、多重無線回線、自営光ケーブル回線の各回 線案について比較検討をし、その得失を整理した結果、①通信容量当たりの 1.前 朝 倉 総 合 事 業 所 寺 内 ダ ム 管 理 所 図2.筑後川局管内の多重無線回線と光ケーブル回線 通信コスト・回線容量が優れていること、②期間が限定されている建設事業 所であること、③近隣に多重無線回線を有する拠点事業所が複数点在するこ となどに加え、将来管理用としても活用できる点を考慮し、自営光ケーブル 回線案を採用した。これにより、朝倉総合事業所と両筑平野用水総合事業所 の2施設間(女男石頭首工、江川ダム)を自営光ケーブルで接続した。 3 . 2 , 第 2 段 階 ( 江 川 ダ ム ~ 小 石 原 川 ダ ム : 4km) 平 成 21 年 度 に は 、江 川 ダ ム か ら 小 石 原 川 ダ ム 建 設 予 定 地 付 近 ま で 光 ケ ー ブ ルを延線化し、ダム建設用の河川水位と気象観測の各データを通信事業者の 専用回線から自営光ケーブル回線に切替えた。 3 . 3 , 第 3 段 階 ( 朝 倉 総 合 事 業 所 ~ 寺 内 ダ ム : 5km) 平 成 24 年 度 に は 、朝 倉 地 区 の 3 事 務 所 の 光 ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 の た め 、朝 倉 総合事業所から寺内ダムまでを光ケーブルにて接続し、3事務所間の情報連 携強化となる情報通信網を完成させた。 3 . 4 , 第 4 段 階 ( 寺 内 ダ ム ~ 陣 屋 川 排 水 機 場 : 24km) 平 成 25 年 度 に は 、寺 内 ダ ム の 監 視 画 像 並 び に 国 土 交 通 省 と の 情 報 共 有( 画 像、水管理情報)を図るため、ダムから筑後川合流点の陣屋川排水機場まで 光ケーブルを敷設し、筑後川局管内の久留米地区~朝倉地区の光ネットワー クを完成させた。現在、国土交通省筑後川ダム統合管理事務所との相互画像 伝送により、筑後川流域における防災連携強化の一助を担っている。 3 . 5 , 第 5 段 階 ( 寺 内 ダ ム ~ 木 和 田 地 区 : 10km) 平 成 26 年 度 に は 、ダ ム 上 流 域 の 木 和 田 地 区 ま で 光 ケ ー ブ ル を 敷 設 し た 。今 後、小石原川ダム導水路建設の進捗状況に応じて、工事用監視カメラ、工事 現場付近の河川水位及び気象観測の情報収集用として活用するとともに、施 設管理開始後は監視制御システムの伝送路として利活用する計画である。 4 , 通 信 回 線 の IP 化 4.1,水資源機構の通信回線 水資源機構の多重無線回線は、各拠点における無線設備の整備とともに国 土交通省の無線設備を共用する形で全国回線が構築され、電話、データ等の 通信を中心に利用している。 4 . 2 , 水 資 源 機 構 筑 後 川 局 管 内 の IP 統 合 通 信 網 水資源機構では、通信回線利用の効率化、設備更新費の縮減を実現するた め 、国 土 交 通 省 回 線 の IP 化 に 合 わ せ て 多 重 無 線 回 線 の IP 化 を 行 う と と も に 、 多 重 無 線 回 線 と 光 ケ ー ブ ル 回 線 と を 接 続 し た IP 統 合 通 信 網 を 計 画 す る こ と で 、 平 成 25 年 度 に 全 国 に 先 駆 け て 筑 後 川 局 管 内 IP 化 の 実 現 に 至 っ た 。 多重無線回線と光ケーブル回線との接続により、相互補完、迂回などによ る信頼性向上が図られただけでなく、多重無線回線の機器構成を簡素化(2 台構成から1台構成)することで設備更新費用の縮減が可能となる。 ま た 、セ キ ュ リ テ ィ ー 面 で は 、機 構 以 外 の 回 線 を 利 用 す る 場 合 は 、VPN、V-LAN 等によりネットワークを分離し、国土交通省とのデータ回線の接続について は、ファイアウォールによりセキュリティーを確保している。 5,朝倉地区光ケーブル利用による効果 5.1,維持管理コストの縮減 ダム建設及び管理用にて観測している河川水位・気象データの収集にあた っては、通信事業者による専用回線を使用しており、観測所付近を通過する 自営光ケーブルへの切替えにより通信コストの縮減を図っている途中である。 5.2,カメラ監視画像の伝送 小 石 原 川 ダ ム 建 設 の 本 格 的 な 工 事 着 手 を 前 に 、工 事 用 監 視 カ メ ラ を 設 置 す る こ と で 工 事 進 捗 状 況 の 把 握 が 容 易 と な り 、合 理 的 な 監 督 体 制 に 繋 が る 。ま た 、寺 内 ダ ム 管 理 で の 洪 水 調 節 等 の 防 災 業 務 に も 活 用 で き 、総 合 事 業 所 と し ての連携強化に繋がる。 5.3,通信回線 ダム建設予定地付近は、移動体無線の受信感度が悪く、通信事業者の通話 手段も限られているため、災害時の通信確保が課題である。移動体無線を光 ケ ー ブ ル で 延 長 化 し 、中 継 機 能 の 増 強 に よ っ て 通 話 範 囲 の 拡 大 が 可 能 と な る 。 その他、工事監督用の内線電話を延長化して総合事業所と現場間の連絡に も利用できる。 6,光ネットワークによる今後の展望 6.1,Web会議システムの導入 朝倉地区独自の専用Web会議システムを導入することで、今後小石原川 ダム完成後における3ダムの統括的な運用管理と連携強化が図れるものと期 待される。 6.2,CCTVカメラの増強 ダム上下流域の施設監視及び河川流況監視を行うためのCCTVカメラを 増強することで、防災業務における下流巡視の補完的役割、管理業務の効率 化・職員の負担軽減に繋がるものと期待される。 6.3,関係機関との情報共有 関係機関(地方自治体、消防署等)とは、ダム防災情報をはじめ多岐に渡 って情報交換を行っている。特にダム放流は下流河川区域の人命にも関わる 内容のため、的確にスピーディに情報を伝達しなければならない。従来まで の電話、ファックス、メール等による情報媒体に加え、ダム監視画像等の高 品質の情報提供が行えるよう、光ネットワークの活用方法について検討する ところである。 6.4,光ネットワークのループ化 現状の光ケーブルは、朝倉総合事業所を起点に樹枝状式に広がっているた め、ケーブル断線時は広範囲に渡り通信停止が及ぶ。今後、残り区間のケー ブル敷設によりループ状とし、高い信頼性が確保できるよう整備を進める計 画 で あ る 。( 図 3 ) 図3.朝倉地区光ケーブル回線系統図(将来展望) 7,終わりに 当初予定の朝倉地区光ケーブルによる光ネットワーク網は完成したところ ではあるが、今後、光ケーブル回線のメリットを生かした運用方法を考えな がら、小石原川ダム建設への事業推進並びに将来の朝倉地区ダム群連携に係 わ る 事 業 推 進 の た め に 筑 後 川 局 管 内 IP ネ ッ ト ワ ー ク 網 と 相 ま っ て 、更 な る 光 ネットワーク回線の構築に努めていきたい。