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微細加工技術を用いた薄型燃料電池の開発

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微細加工技術を用いた薄型燃料電池の開発
微細加工技術を用いた薄型燃料電池の開発
神奈川県産業技術センター 化学技術部 環境安全チーム
○伊藤健、国松昌幸
1. はじめに
小型・薄型の燃料電池は、携帯電話、ゲーム機器、オーディオ機器、パソコンなどの電子機器に搭載でき
る新しい高性能電源として期待されている。一般的に燃料電池は、固体高分子膜に燃料極触媒及び空気極触
媒を塗布した膜電極接合体(MEA)を中心に、その両側に燃料拡散層と集電効果を持つカーボンペーパーを配
置し、さらにその外側に燃料供給のための流路及び集電板(セパレーター)を配置する複雑な構造がとられ
ている。セパレーターの薄型化は様々な検討が行われているが、決定的な解決策は見つかっておらず、マイ
クロ燃料電池の実用化には新しい集電板加工技術が必要である。また、高電圧化するには電池を複数直列に
接続する必要があるが電池体積が増大するため、電池本体の容積から得られるエネルギーが小さくなってし
まう。そこで本研究では、電池の小型化を実現するために微細加工技術を用いてセパレーターを薄くすると
共に燃料供給溝の細線化を進める事で燃料を効果的に供給できるマイクロ燃料電池について検討した。
2. 実験方法
①電池の作製:作製した電池構造を図 1 に示す。セパレーターは以下の順に作製した。シリコン基板に導
電層を薄膜形成した後、レジストに紫外線を照射して燃料供給用細線溝パターンを転写し、現像を行って犠
牲層を形成した。スルファミン酸ニッケル浴を用いて電鋳処理を行った。シリコン基板及びレジストを剥離
した後、個々のセパレーターに切り分けた。MEA は一般的な製法により作製し、空気極、燃料極触媒(Pt)
量は 0.5 mg/cm2 とした。触媒を塗布したテフロンシートで固体高分子膜 Nafion®112 (50 m 厚)を挟み込ん
だ後、熱圧着を行って MEA を得た。最後に MEA とセパレーターを熱圧着して燃料電池を作製した。
②電池の評価:リファレンスとして通常の電池構造である MEA と燃料供給用溝(L/S=1 mm, L/S とは溝幅
と間隔のこと)を持つカーボンセパレーター及びカーボンシートを有する燃料電池(Reference)を作製し、比較
として上記燃料電池からカーボンシートを除いたもの(Sample B)、そして①で作製した金属セパレーター
L/S=0.1 mm~0.5 mm を用意した。燃料として水素ガスを 10 mL/min で供給し発電試験を行った。発電評
価にはポテンシオスタットを用いて 5 mV/s の掃引速度で電圧―電流測定を行い、インピーダンス評価を開回
路電位に対して振幅 10 mV(周波数 10kHz~1Hz)にて行った。すべての評価は室温にて行った。
3. 結果と考察
電流―電圧特性を図 2 に示す。Sample C–100 の最大出力密度は 109 mW/cm2 であり、Sample A におけ
る最大出力密度 118 mW/cm2 に対してほぼ同等の出力密度を得た。また、図 3 に示すように L/S が低下する
につれて最大出力密度も線形的に低下することが確認された。一方、Sample B では出力密度が最も小さい
ことからガス拡散の効率が出力密度に影響を与えることがわかった。インピーダンス評価の結果から、リフ
ァレンスのオーム抵抗は 0.15 Ωcm2 であり、L/S=100 のそれは 0.26 Ωcm2 とやや劣る値であったが、L/S
の低下に伴いオーム抵抗が増加することがわかった。以上の結果より、L/S の高精度化により電池性能を向
上させることが可能であり、本研究で作製したマイクロ燃料電池は薄型化に大きく貢献できると考えられる。
今後は実用化に向けて、さらなる出力の向上と耐久性の向上を検討していく。
図1 マイクロ燃料電池の構造
図 2 各電池の電流–電圧特性
図3 最大出力密度の L/S 依存性
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