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第3 問題作成部会の見解 - 独立行政法人 大学入試センター

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第3 問題作成部会の見解 - 独立行政法人 大学入試センター
第3 問題作成部会の見解
地 理 A
1 問題作成の方針
平成 27 年度大学入試センター試験は、平成 11 年3月告示の高等学校学習指導要領(以下「学習
指導要領」という。)による 10 回目の入試に当たる。平成 26 年度試験の結果を踏まえ、以下のよう
な方針で問題作成を行った。
⑴ 学習指導要領への対応
学習指導要領の「地理A」における目標は、「現代世界の諸課題を地理的に考察することに重
点を置いて追究し、現代世界の地理的認識を深めさせるとともに地理的な見方や考え方などを身
に付けさせる」ことにあり、これを問題作成の方針とした。
⑵ 出題内容と出題地域
現代世界の特色や課題に関わる地理的事象を、多面的、多角的に幅広く取り上げた。 大問レ
ベルでは、「世界の諸地域」としてヨーロッパを、「身近な地域」として愛媛県宇和島市を取り上
げた。小問レベルでは、現代世界の特色や課題に関わる問題を、系統地理的、地誌的な考察の方
法を取り入れるかたちで構成し、出題内容とした。また学習指導要領に留意しつつ、世界各地の
問題を満遍なく出題した。
⑶ 出題構成
学習指導要領の趣旨、教科書の学習内容に準拠し、「第1問 地理の基礎的事項」、「第2問 国境を越えた世界の結びつき」、「第3問 ヨーロッパの地誌」、「第4問 世界の諸課題」、「第5
問 愛媛県宇和島市の地域調査」という構成とした。
⑷ 出題内容の工夫
昨年度に引き続き、学習指導要領を踏まえた作問を行った。作業的、体験的な学習をとおして
地理的技能を身に付けられるよう、地図や写真、統計など各種資料を活用しつつ、地理的に考察
することに重点を置いた出題に努めた。
⑸ 大問の設問構成
昨年度と同様、大問数は5題としたが、小問数は昨年度の 36 問から、一昨年度と同じ 33 問に
戻した。地理Bとの共通問題である「地理的技能と地域調査」に関わる大問を、今年度も第5問
として配置した。全体として、文章の正誤問題、選択問題、組合せ問題をバランス良く配置し、
さらに地図・図表・写真を用いた多様な問題を出題することにより、地理的技能や地理的な見
方・考え方を総合的に培う設問構成とした。
2 各問題の出題意図と解答結果
第1問 地理の基礎的事項に関する大問である。基礎的事項として重要と考えられ、他の大問で
触れられていない内容で構成した。問1は時差に関する問であり、日本の経度や西(東)へ
15 度移動するごとに時刻が1時間早まる(遅くなる)ことの知識をみた。問2は気候に関す
る問であり、季節によって南北方向に移動する熱帯収束帯、寒帯前線帯の影響が及ぶ範囲に関
する理解をみた。問3では海底油田の開発が進められている海域の基礎知識を問うた。問4で
は、水産業に関して日本と各国との貿易における結び付きの基本的知識を問うた。問5では世
界のいくつかの斜面地にみられる特徴的な集落や土地利用などの景観の知識を問うた。問6で
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地理A、地理B
はイスラム教を主な宗教とする地域に関する知識を問うた。問7では地形図の読図の基本技能
をみた。問8では地理情報技術の活用に関する基本知識を問うた。
第2問 学習指導要領の「結び付く現代世界」について、「国際貿易」、「交通・通信の発達」、
「人や物の国際間の移動」、「国家間の結合」の各要素について、網羅的かつ体系的に問うた。
「地理A」の学習実態に即し、日本との結び付きに力点を置きつつ、国名を問う際にも学習頻
度が高い国を取り上げるよう配慮を行った。全体をとおして、主題図や統計を読み取る能力を
問うことで受験者の主体的な作業・学習の到達度を図ることを目指した。問1は、日本の貿易
構造について、出題例が少ない時系列データを用いてその変化を問うた。問2は、主題図を
使って特定品目の貿易構造の変化について扱った問題である。問3は、港別の輸入品目と輸入
相手先に関する設問であり、港の立地や後背地の地域的特徴による品目や貿易相手国の違いを
理解できているかを問うた。問4は、国境を越えた資金の結び付きについて、日本の対外直接
投資先を事例とし、大陸を単位として問うた。問5は、国境を越えた人の動きに関する正誤文
問題である。「地理A」であることに配慮し、教科書に記載されている事柄の中でも基本的な
事項について問うた。問6は、写真を資料として用い、日本への外国人の流入による日本の変
化や対応を問うた。問7も国境を越えた人の移動に関する設問である。立地や観光・ビジネス
需要などによって出入国者数の状況を推定させることで、受験者の学習到達度を問うた。
第3問 ヨーロッパの地域的特徴を自然環境、農業、言語・文化、経済と資源開発、EUの結び
つきという観点から出題した。学習指導要領における「⑵地域性を踏まえてとらえる現代社会
の課題」の「ア 世界の生活文化の地理的考察」に関連する大問である。小問ごとに解説する
と、問1と2は、それぞれ地体構造と気候についての基本的な認識を確認する設問であった。
問3では、地形や気候の自然環境に応じた各地域の農業の特徴を問うた。問4では、エスニッ
ク問題が表出した典型的な都市についての理解を問うた。問5は、いくつかの社会・経済指標
から地域差の傾向を問う総合問題とした。問6は、各国の自然・資源条件と社会・経済的背景
を問う問題であった。問7では、EU(欧州連合)に関して、その拡大や取組などについて基
本的理解を問うた。
第4問 学習指導要領に掲げられた、「地球的課題は地域を超えた課題であるとともに地域に
よって現れ方が異なっていること」への理解を問う大問として、人口、健康、及び食料問題に
関わる問題を作成した。これらの課題には国際的な取組が求められることから、地球的な視野
から大観しつつ、地域性や国ごとの特徴に着目して考察できるよう心掛けた。問1で地球規模
での人口の状況を人口変化の地域差から把握し、問2で具体的な人口に関する状況やそれに起
因する課題についての理解を問うた。問3では大気汚染や安全な水に関わる指標を取り上げる
ことで、人々の健康の問題と社会背景や環境との関連について考えさせた。また、問4で食料
需給の地域的な偏りについて、品目別の供給熱量の割合と穀物自給率とから推察させるととも
に、問5では食料問題として、近年進められつつある食料安全保障に関する取組や課題につい
て取り上げ、こうした地球的課題の解決には国際的な視点からの取組が必要であることへの理
解を問うた。
第5問 学習指導要領の「現代世界の特色と地理的技能」に準拠し、宇和島市と宇和海沿岸を事
例にした地域調査として、地形図、主題図、統計、景観写真を用いた調査結果の考察や調査法
など、地理的思考と地理的技能を問うた。自然環境を概観して、人口や土地利用、産業から地
域を把握し、さらに調査テーマを深める等、高校生による現地調査の流れを重視している。問
1は地勢図により、特徴的な海岸地形や人文事象を読み解く地理的技能を問うた。問2と問3
は、人口ピラミッドと地形図の考察から、地方都市の変化を問うた。問4は、地理の基礎知識
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を用いて漁業の主題図を読み解けるように、会話文で導いた。問5は景観写真と解説文を手掛
かりに、自然条件と農業の特徴を問うた。問6は臨海部に位置する事例地域の特色を踏まえ、
防災と地域づくりをテーマに調査法を問うた。
3 出題に対する反響・意見についての見解
第1問 全般的には地理の基礎的事項や地理的技能に関して幅広く問うた標準的な問題ではある
ものの、一部に問い方が単純すぎる問いがあるとの評価を受けた。第1問は基礎的事項という
大問の性質上、短文問題を含む、オムニバス形式の問題構成になるのはやむを得ないが、問題
作成に当たっては更なる工夫が必要であったように思われる。問1の時差に関する問いと問7
の読図の問いは、標準的であるとの評価を受けた。問2の降水に関する問いは、一部で良問と
の評価を受けた。問3の海底油田開発の問いと問4の水産資源の輸入に関する問いは、問い方
が単純であり、やや難問であるとの評価を受けた。問3や問4のような短文での出題形式の問
題であっても、出題意図をより明確に伝えられる作問を今後は心掛けたい。問5の景観写真の
問は良問との評価もあったが、写真が小さく見にくいとの指摘もあった。写真を提示する際に
は、今後更なる配慮が必要であると思われた。問6のイスラム教に関する問と問8の地理情報
技術に関する問は、標準的な問題ではあったが図表や文章の表現の一部に曖昧な部分があると
の評価を受けた。このような指摘が生まれないよう、問題作成に当たっては更なる検討と確認
が必要であったように思われる。
第2問 折れ線グラフ、散布図、分布図、表、写真といった様々な資料を活用し、小問ごとに独
自の出題がなされている、国境を越えた結びつきについてさまざまな知識を活用して地理的現
象や統計情報などを問うものであり標準的な問題といえる、といった意見があった一方、一部
に「地理A」の学習状況では取り扱うことが少ない内容の出題が見られ、詳細な知識や高い情
報処理能力を必要とするという意見もあり、今後の作題に当たっては留意したい。各問に関し
ては、問1、5、6、7はそれぞれ、おおむね標準的なレベルの設問であり、良問であったと
の評価を受けた。問2、3、4はそれぞれ、「地理A」としては一部難解な内容を含んでいた
という意見があったが、今後の作題に当たっては留意したい。
第3問 本大問は、図やグラフ等の資料から地理的な思考力を多面的に問うたとして好評価を得
た。難易度については、教育研究団体からは易から標準的、高等学校教科担当教員からは標準
的から一部やや難と、評価は必ずしも一致しない。その背景として、やや詳しい知識を問う面
もあったとの高校教員側の指摘に留意したい。小問ごとにみると、問1~3はいずれについて
も、おおむね容易な基本的・標準的な問題との評価を得た。問4や6は、教育研究団体から
は、基本的な問題との評価を得たものの、高校教員側からは詳細な知識が必要で難問との評価
を受けた。問5は、今後も出題を期待される良問との評価を受けた一方で、図が読み取りにく
いとの指摘もあった。問7は、教育研究団体からは平易すぎるとの意見もあったが、高校教員
側からは標準的な問題との評価を得た。
第4問 高等学校での学習の範囲で解答可能な、標準的な小問で構成される大問として評価され
た。グラフや表により地理的な見方や考え方を問う大問であった一方、地図を用いた問題を作
成してほしいとの要望があった。ページ数の制約があるため難しい課題ではあるが、引き続き
検討していきたい。各小問の評価は以下のとおりであった。問1は地域別の出生率と死亡率を
判断させる標準的な問題で良問との評価を得ており、問2と問4は標準的な問題との評価で
あった。問3については、このテーマで取り上げることの少ない国が含まれているとの指摘が
あった一方で、日頃の学習から解答を推察できる良問との評価を得た。問5について、やや細
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地理A、地理B
かい時事的な知識が必要との指摘を受けたものの、解答は可能であり標準的であるとの評価も
得ている。
第5問 「地理B」の共通問題として、「地理A」の学習内容にも配慮したものであったとの評価
を受けた。全体としては標準的、良い出来栄えの大問との評価を受けたが、平易な問題がある
との指摘もあり、以下の点を踏まえつつ、オーソドックスな出題にとどまらず、一歩踏み込ん
だ地理的思考力を問う大問を目指して今後も努力したい。問1は読図問題であり、基礎的な小
問であったと評価を得た。問2と問3は人口ピラミッドと地形図の年代変化を問う小問であ
り、平易という意見があったが、問題文の丁寧な読み取りが必要な小問であるとの評価もあっ
た。問4は地域の漁業について、主題図と地勢図との比較が難しいという点は改善の余地が
あったが、地区別の特徴が捉えやすく、主題図と会話文を活かした良問との評価も得た。問5
は、農業景観の特徴を問う基礎的小問、良問との評価を得たが、写真が不鮮明との意見があ
り、今後の作題では留意したい。問6は新傾向の防災をテーマとした調査法を問う小問であ
り、平易との意見もあるが、地域調査の大問のまとめとして適切との意見があった。
4 今後の問題作成に当たっての留意点
⑴ 地図・図表・写真(画像)を多く用い、全般的に地理的な見方や考え方及び地理的技能を活用
させる問題が多いとの評価を得た。一方で、やや知識偏重の設問が多かったという指摘もあり、
今後の作問で留意する必要がある。
⑵ 図や写真が不鮮明なため、解答が難しい問題があったという意見があった。本来カラーである
地勢図をグレースケールで表示することによる情報の欠損に注意すべきであるという指摘もあ
り、地図や写真を用いた作問に当たって今後も留意したい。
⑶ 全体として、高等学校教科担当教員・教育研究団体等からは学習成果を適正に問う学習指導要
領の趣旨に沿った作問であるとの評価を受けたが、今後も作業的・体験的な学習を通じて地理的
技能を高めることを重視する「地理A」に即した問題作成を継続したい。
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地 理 B
1 問題作成の方針
平成 27 年度大学入試センター試験は、平成 11 年3月告示の高等学校学習指導要領(以下「学習
指導要領」という。)に基づく 10 回目の入試に当たる。平成 26 年度試験の結果を踏まえ、以下のよ
うな方針で問題作成を行った。
⑴ 学習指導要領への対応
学習指導要領の「地理B」における目標は、「現代世界の地理的事象を体系立てて地理的に考
察することに重点を置いて追究し、現代世界の地理的認識を深めさせるとともに地理的な見方や
考え方などを身に付けさせる」ことにあり、これを問題作成の方針とした。
⑵ 出題内容と出題地域
世界の地理的事象を主な対象として、現代世界の地理的な認識に関わる地理的事象を、多面
的、多角的に幅広く取り上げた。 大問レベルでは、地誌的な考察地域として北極圏地域を、「身
近な地域」として愛媛県宇和島市を取り上げた。小問レベルでは、日本を含めた世界の諸地域か
ら満遍なく出題し、出題内容・出題地域ともに、偏りのない出題を心掛けた。
⑶ 出題構成
学習指導要領の趣旨、教科書の学習内容に準拠し、「第1問 世界の自然環境」、「第2問 エ
ネルギーと産業」、「第3問 都市・村落、生活文化」、「第4問 北極圏地域の地誌」、「第5問 現代世界の諸課題」、「第6問 愛媛県宇和島市の地域調査」という構成とした。
⑷ 出題内容の工夫
学習指導要領に沿って、「地理B」で問うべき基本的な学習内容を出題するように努めた。地
理の特色である地図を活用し、グラフや表、写真(画像)の読み取りも含め、出題内容や問いか
け方において、多様な出題をする旨を心掛けた。同時に単なる受験上の知識を問うのではなく、
世界の諸地域に関わる地理的認識とその背景に関する理解を問うように腐心した。
⑸ 大問の設問構成
大問数は、昨年度と同様の6題とし、小問数は昨年度より1問少なくして 35 問とした。「地理
A」との共通問題である「地理的技能と地域調査」に関わる大問を、今年度も第6問として配置
した。全体として、文章の正誤問題、選択問題、組合せ問題をバランス良く配置し、さらに地
図・図表・写真を用いた多様な形式の問題を出題することにより、地理的技能や地理的な見方・
考え方を総合的に培う設問構成とした。
2 各問題の出題意図と解答結果
第1問 自然環境の地域性を世界的視野から扱うことを目的に、内的作用と外的作用などの地形
に関する小問や、河川や植生分布の特徴を基に気候、地形などの総合的な知識をみる小問を設
定した。問1ではプレートの移動方向に基づいて世界のプレート境界の特徴に関する知識を問
うた。問2では衛星画像の読み取りから、海岸地形の形状に関する知識を問うた。問3では大
河川の年流出高と流量の極大時期を基に、河川流域の気候帯の理解をみた。問4では山地周辺
の植生分布と気候や地形との関係に関する理解をみた。問5では全球の土地被覆(植生分布)
と緯度帯、大地形、気候帯との関係に関する理解をみた。問6では2大海洋(太平洋、大西
洋)への河川流入量から、大地形の配置や降水量分布などの世界の自然環境の総合的な知見を
問うた。正答率は、問3と問5では低く、他の問題では平均的であった。全体としてはやや難
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地理A、地理B
しい大問となったようである。
第2問 垂直的に各産業を独立別個に捉えるだけでなく、多様な産業が水平的に連関している点
を強調すべく、多角的に資源と産業についての理解を問うことを大問の基本方針とした。問1
では鉱産資源について出題し、国策レベルでの資源戦略と調和する地理的理解力を問うてい
る。問2ではレアメタルについて、その鉱産資源としての一般的な特徴から近年のリサイクル
環境産業までの基本的な理解力を試す形式とした。問3では鉄鋼業と造船業に着目し、その立
地の傾向や国別の特徴を相互に理解し、判断する力を問うている。問4では自動車産業の生産
と輸出のパターンから自国内でのマーケットの規模と時系列的な変化を読み取らせることで、
その背景をイメージさせながら解答を導くかたちとなっている。問5では一見従来の試験問題
にみなれない冠婚葬祭業という業種を取扱いながら、高齢者の問題なども想起させる出題意図
がある。問6ではこれまでの産業を支える研究開発を問うのが意図であった。
第3問 都市と村落にみられる地域性や現代の生活文化における特色、課題・問題について、そ
の理解を問うことを目的とした。その際に、「現代世界の居住問題、都市問題の地域性」、「都
市・村落や消費、余暇」などの点を下位のテーマとし、問1では農村地域の土地利用を、問2
では大都市の模式的な街路パターンを問うた。問3と問4は近年の都市における環境対策や諸
問題についての正誤を問うたもの。問5及び問6では、余暇・消費活動についての知識を問う
た。
第4問 北極圏のその周辺地域を事例に、地域の諸相を多面的・多角的に考察し、地誌的な見
方・考え方を問う大問とした。なじみの薄い北極海とその周辺を地図からイメージさせつつ、
教科書でも扱われていることの多いヨーロッパから北極圏全体、さらにその関係国・地域へと
空間スケールを拡大するというストーリーを意識した。問1と問2では、自然環境として、土
壌や植生、気候を問う小問であり、問3は自然環境を背景とした生活文化の例として、先住民
の文化について問うた。問4は港湾都市に、問5はエネルギー資源に着目し、事例地域の国と
都市の経済的・社会的特徴を問うた。問6は、北極海とその周辺における近年の動向を踏ま
え、北極海の開発や国際関係を考察させることを意図した。
第5問 国や地域別の経済発展の度合いと教育や健康、環境問題、戦争・紛争と武器、難民の避
難・受入れなどに、発展途上国・新興国・先進工業国がそれぞれ関与していることを考察させ
る問題を作成した。問1は発展途上国の人口・医療・教育など、社会経済的基盤に関わる問題
への理解を問うた。問2は、世界的な問題である水需要を取り上げ、先進工業国及び新興国に
おける消費活動や生産活動について考察させた。問3は、世界各地域の環境問題の発生が人為
的、経済的要因を伴うことを問いかけた。問4は、武器の流通を通じて各国の軍備の必要性の
背景となる国際関係や工業力について考えさせている。問5は、主な難民発生地域及び紛争や
政治的要因など難民が生じる背景を考察させている。
第6問 宇和島市と宇和海沿岸を事例にした地域調査として、地形図、主題図、統計、景観写真
を用いた調査結果の考察や調査法など、地理的思考と地理的技能を問うた。自然環境を概観し
て、人口や土地利用、産業から地域を把握し、さらに調査テーマを深める等、高校生による現
地調査の流れを重視している。問1は地勢図により、特徴的な海岸地形や人文事象を読み解く
地理的技能を問うた。問2と問3は、人口ピラミッドと地形図の考察から、地方都市の変化を
問うた。問4は、地理の基礎知識を用いて漁業の主題図を読み解けるように、会話文で導い
た。問5は景観写真と解説文を手掛かりに、自然条件と農業の特徴を問うた。問6は臨海部に
位置する事例地域の特色を踏まえ、防災と地域づくりをテーマに調査法を問うた。
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3 出題に対する反響・意見についての見解
第1問 全般的に自然環境についての基本的な知識を問う標準的な問題であったとの評価をいた
だいた。問1のプレートに関する問いと問2の海岸地形に関する問い、問4の山地周辺の植生
分布の問は、標準的な基本知識を問う問題であったとの評価を受けた。問3の世界の大河川の
問と問5の緯度帯別植生分布の問いは、良問との評価を受けた一方で、やや難問であったとの
評価もあった。問3で取り上げた河川に関する指標については、一部の指標が解答の参考にな
らないとの評価もあり、更なる吟味が必要であると思われる。また、問5に示した図のよう
に、新しいデータに基づく図を使った問題作成には、今後、特に注意して難易度の調整を行う
必要があると思われた。
第2問 問題の構成については、幅広い分野からの出題であったとの評価を受けたが、一部に教
科書では扱われない指標や、時事問題に関する知識も要求されるとの指摘も受けた。全般的な
難易度では標準的であった。問1・2は主要な生産地に関する基本的な知識があれば標準的な
問題との指摘があった。問3は日本と世界を共に考えさせる問題であるとの評価を受けた。問
4は深い知識と地理的技能を要するとの評価を受けた。問5は教科書で取り扱われない指標と
の指摘も受けたが、今後の地域社会を考える上で必要な方向性と考えている。問6でも一人あ
たりの国内研究費やその財源についての知識を求められて難しいとの指摘や、研究者数などの
指標も有用ではないか、との意見も受け、今後の出題に活かしていくことを検討したい。
第3問 現代の諸課題や消費行動の変化などについて、深い思考力を問う問題がバランス良く出
題されたと評価された。一方で、もう少し工夫が必要な問もあるとの意見もあった。アメリカ
の土地利用について示した図からタウンシップ制を読み解く問1、都市の街路についてのモデ
ル図を判断させた問2は、ともに平易とされた。ただし後者については、正答率は、それほど
高いわけではなく難易度としては適切であったと考えている。問3は、2点配点の問で、比較
的容易に解答できると想定したものであったが、評価においても基本的とされた。問4と問6
は、ともに日本を扱ったものであり、前者は農山村における近年の諸問題を、後者は消費行動
についての時系列の変化を問うた。共に標準的であるとの評価であった。問6は、想定してい
たよりも高い正答率であったが、問いの形式としては意義のあるものであると考えている。
第4問 北極圏とその周辺地域の地誌として、バランス良く出題された大問として評価された。
地理的基礎知識で対応できる標準的、かつ容易な問題との評価がみられる一方で、北極圏の事
例は珍しく、細かい知識を問う小問や難易度が高い小問に対する意見もあった。以下の評価を
踏まえ、より地誌的思考を問う大問の作成に向けて努力したい。問1と問2は、植生・土壌・気
候の基礎的知識があれば比較的に平易な小問であり、地域差の明確な雨温図の出題は良問とし
て評価された。問3は、分布地域と民族的特徴から基本的知識で容易に解けるとの評価がある
一方、写真の不鮮明さに対して、今後は配慮が必要である。問4は、4都市の特徴を問う小問
であり、なじみのない都市もあり難易度が高いとの指摘を受けた。問5のエネルギー資源の問い
は、基本的な学習の成果が問われる標準的な小問との評価を得た。問6は、地理的知識や時事
情報があれば容易に解答できる小問という評価である一方、難易度が高いとの指摘もあった。
第5問 現代世界の諸課題を、発展途上国、貿易、環境、軍備、難民など幅広く取り扱った設問
で構成されている。全体的に基本的な知識を問う標準的な問題であるとの評価を受けたもの
の、一部で高校地理の学習範囲との関係で検討が必要との意見もあった。問1~3及び問5
は、全体的に基本的な知識で解答可能な基本的レベルの問題との評価を受けた。問1で一部の
指標の判別がやや難、問2では初見のデータであるとの指摘もあったが、問2では特徴の明瞭
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地理A、地理B
な国を選択させて難易度を調整した。問4は、新規性のある指標を扱ったためか、戸惑った受
験者も多かった難問であるとの評価を受けた。地理学習の範囲との関係で問題が残るとの指摘
もあったが、武器自体の学習がない中でも、現代世界の諸課題の一つである紛争に、各国が
様々な形で異なる特徴を持ちながら関与していることを考察させることを狙いとしており、
リード文冒頭でその意図を反映させた。
第6問 全体としては標準的、よい出来栄えの大問との評価を受けたが、平易な問題があるとの
指摘もあり、以下の点を踏まえつつ、オーソドックスな出題にとどまらず、一歩踏み込んだ地
理的思考力を問う大問を目指して今後も努力したい。問1は読図問題であり、基礎的な小問で
あるとの評価を得た。問2と問3は人口ピラミッドと地形図の年代変化を問う小問であり、平
易という意見があったが、問題文の丁寧な読み取りが必要な小問であるとの評価もあった。問
4は地域の漁業について、主題図と地勢図との比較が難しいという点は改善の余地があった
が、地区別の特徴が捉えやすく、主題図と会話文を活かした良問との評価も得た。問5は、農
業景観の特徴を問う基礎的小問、良問との評価を得たが、写真が不鮮明との意見があり、今後
の作題では留意したい。問6は新傾向の防災をテーマとした調査法を問う小問であり、平易と
の意見もあるが、地域調査の大問をまとめとして適切、との意見があった。
4 今後の問題作成に当たっての留意点
⑴ 主題図・グラフ・統計資料・景観写真等を多用して地理的思考力を試そうという設問形式は評
価されているが、一部に解答に当たって参考にならない設問があったという指摘もあり、地図や
図表の提示の仕方に工夫をした問い方になるように努めたい。
⑵ 例年以上に細かい知識が問われたという指摘があり、大問間の難易の差が大きいという意見も
あることから、難易度の調整にはこれまで以上に細心の注意を払っていきたい。
⑶ 全体として、学習指導要領に基づいた基礎的・基本的な教科書レベルの問題を中心に、地理的
知識をもとにした考察力や思考力を必要とする問題まで幅広く包含したバランスのとれた問題と
評価されたと考えている。一方で、高校の現場で教えていない内容が多く出題されたために難易
度が上がったという意見もあり、教科書に準拠した出題については特に留意したい。
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