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PDF版 - 立教大学

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PDF版 - 立教大学
立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科
I
SSN1349−371X
So
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Contents
P1∼2 巻頭インタビュー 「世界で起こる人権侵害に、私達ができること」
発 行:立教大学大学院
21世紀社会デザイン研究科
ヒューマン・ライツ・ウォッチ 土井香苗さん
P3
新任教授紹介 P4∼5 キャンパスの声・修了生紹介
P6
P7
ゼミ紹介
2
1世紀社会デザイン研究科 公開講演会レポート
Vol.15
編集責任:笠原清志
編 集 長:中西豪士
発 行 日:2010年7月2
3日
〒17
1−8
5
01 東京都豊島区西池袋3−34−1
日本初!〈社会組織〉
〈非営利組織〉
〈危機管理〉
3 つの分野を学べる大学院
●巻頭インタビュー●
世界で起こる人権侵害に、私達ができること
遠い外国の人権侵害問題は、ヒトゴトなのでしょうか? 国際人権NGO・ヒューマン・ライツ・ウォッチの東京支社代表・
土井香苗さんに、その活動内容や難しさ、そして私達が人権問題に対して何が出来るのか、お話を伺いました。
際的なプレッシャーを生み出すことが目的であり、私達
まず、ヒューマン・ライツ・ウォッチという
が直接現地に赴いて人権状況を調査した上で世界各国の
団体の活動を教えてください
政府を動かしてそうした行為を止めてもらう為には、原
私達の団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下HR
理原則を守ったメッセージを押し出す必要があるのです。
W)は、主に世界中で起きている人権侵害を解決する為
HRWの起源は、ランダムハウスの社長が始めた活動
のアドボカ
にあります。1
9
7
0年代後半
“ヘルシンキ・ウォッチ”
とい
シー(政策
う名前で、旧ソ連圏の各国において、自由を求めて闘う
提言)活動
ライター達の活動をサポートしたことが出発点です。そ
土井香苗(どいかなえ)さん●1975年神奈川県生まれ。
1
9
9
6年司法試験合格後、
1
9
9
8年東京大学法学部卒。
2000
年から弁護士業務の傍ら日本にいる難民の法的支援な
どにかかわる。
2
0
0
9年4月、ヒューマン・ライツ・ウォッ
チ東京オフィスを設立
をしている
の後、1
9
8
0年代に入り南米で政府・反政府軍間での内戦
NGOです。
が起こるようになると
“アメリカ・ウォッチ”
として新た
アドボカ
な活動を展開するようになりました。ここでは紛争当事
シーという
者の双方について徹底的な調査を実施し軍事・政治的な
のは、日本
面で援助を行うアメリカの行動に対しても批判的な検証
ではまだ、
を行ったことで、その活動に高い信頼を獲得しました。
あまり知ら
こうした緻密な情報収集・処理に基づく活動は、1
9
88年
れていませ
に
“ヒューマン・ライツ・ウォッチ”
として全世界を活動
んが、強い
領域として展開するようになってから現在に至るまで当
権力を傘に
団体の最大の特徴であり強みです。
弱い立場の
実は私自自身もHRWという名前は知っていたものの、
者から略奪
アドボカシー活動を行うNGOというより、むしろ調査研
している人
究機関として認識をしていました。当時私は弁護士とし
に対する国
て難民の弁護を行っており、裁判所へ提出する為の資料
1
る取り締まりも一層厳しくなってきています。ここでは
権利を主張する側と弾圧する側とのイタチごっこが繰り
広げられているのですが、昨年来のイランでの弾圧が良
い例でネットがあるからこそ世間に明るみになった人権
侵害もあり、インターネットの良い面も重要です。
また、これからの日本はソフト・パワーで、急成長で
迫りくる中国との差異化を図らなくてはなりません。そ
うした点から言えば、若者には積極的に海外へ出て行き、
良いところは吸収し、新たなアイディアを生み出して
行って欲しいですね。今の日本はアジアの中でも勢いに
欠けていますが、それでも人権分野においては強力なア
ピールが出来る希少な国です。
2
0
0
9年4月
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」東京オフィス開設記念記者会見
確かに日本は、特に人権侵害をしているイメージはな
いものの、同時に人権保護に秀でていると評価されてい
を探していると、HRWの名前を目にする機会が多かっ
る国でもありません。しかしながらポテンシャルは十分
たのですが、それだけHRWが作成している調査資料は
にあると思います。何を世界に誇れる国になるのか、ア
クオリティが高く、評価されていたということでしょう。
ジアの中で如何にしてリーダーシップを発揮していくか、
外交の中で人権問題をもっとアピールしていくことに、
弁護士という法律の専門家としての立場が
これからの日本の可能性があると私は信じます。
HRWの活動に役立つことはありますか
私たちが日常生活の中で、できるようなことは
難民弁護というのは、一般的に考えられる「正義」が
あるのでしょうか
必ずしも勝つ世界ではないので私自身、苦しくなること
もありますし、難民認定されず、不法滞在者としてやむ
私達は現在、メディアの発達により世界中で起きてい
なく故国へ強制送還される人に対しては、日本を代表し
る人権侵害の事実を簡単に知ることができますが「知
て「ごめんなさい」と言いたくなります。しかし、そこ
る」の次の段階―「自分個人として、人権侵害を無くす
はある程度の距離感を持たなくてはさらに辛くなるので、
ためには何をしたらよいのか」というところで立ち止
「現在の日本の法律ではこうならざるを得なかった。悪
まってしまうかもしれません。しかし、何も大げさに考
いのは私ではなく制度」と割り切ることも必要になって
える必要はありません。例えばブログやツイッターを通
きます。
じて自分の見た映画や読んだ本の感想を述べてみるとい
また、虐殺などが行われる現場というのは壮絶で、そ
うことでも十分です。国民一人一人がメディア化した現
こでは加害者と被害者の持つ力が圧倒的にアンバランス
代社会においては、自分が持っている情報発信手法の中
です。そうした状況における人権侵害を止めるためには、
で、見たことを伝える・知っている事実を伝える・情報
力の無い人々が権力を振るう者と対等に戦う為の武器が
が載っているウェブサイトを教える、ということが可能
必要となり、その武器こそが法律であり、法律に定めら
なのです。
れた「人権」なのだと私は考えます。そうしてみると、
小さいようですが、こうした一歩一歩がいくつも重な
最初から意識して弁護士を目指していた訳ではないので
りあうことで、最終的には国民の声として、政府に声を
すが、法律家という立場から人権侵害問題に立ち向かう
届けることになり、人権侵害を無くす大きな一歩になる
ことが出来るのは、非常に良かったと思います。
かもしれません。
グローバル化の時代になり人権侵害を取り巻く状況に
ヒューマン・ライツ・ウォッチ
何か変化がありましたか
1
9
7
8年、ヘルシンキ協約の人権条項を旧ソ連各国が守っ
ているかモニターする為に設立。
設立後1
0年で、
モニター
対象を旧ソ連国だけでなく、全世界に拡大。3
0年以上に
わたり、典型的な人権問題のみならず、子供・女性・難
民など、社会の周辺に追いやられた人々の尊厳の実現に
も取り組む。また最先端のテクノロジーを駆使し証拠を
発掘しながら国際法に基づいて加害者の責任を追及する。
世界各地に2
7
5名強のスタッフを有し、約80カ国の人権状
況について、
報告書やブリーフィングペーパーを毎年100
本以上発表
ht
tp://www.hrw.org/j
a/home
この地球上に人権侵害が存在するということでは、グ
ローバル化の前も後も変わりません。そもそも人権侵害
というのは、権力を有する者がその力を自身の欲のため
に乱用するということです。欲というのは人間の本質で
あり決して切り離すことは出来ないものですから、その
欲によって引き起こされる人権侵害は、たとえ減らすこ
とは出来たとしても、なくすことは出来ないと、残念な
がら思います。
ブログなど新たに誕生したウェブ上のツールは手軽に
書き込みができて影響力が大きいだけに、それらに対す
2
新任教授紹介
21世紀社会デザイン研究科に、この4月から加わった新たな先生方をご紹介し
ます。なお石川先生、長先生は、本年から専任教員としての着任となりますの
で、一昨年、昨年に引き続き、再度メッセージをいただきました。
石川 治江 先生
皆様こんにちは。石川治江です。福祉・介護の領域と、NPOについては
一応専門領域ですが、どれも一筋縄ではいかない領域です。そしてますます
存在意義が高まってきていると実感しています。
現在、NPO法人ケア・センターやわらぎと社会福祉法人にんじんの会の
理事長を兼務していますので、現場感覚はかなりあると自負しています。さ
まざまな課題や問題の真実は現場にあります。頭の中の学びだけでなく、活
動現場やそこで働く人々との出会いは皆様を良い方向へ進化させていくと
確信しています。
さらに刺激や気づきなどがみずからの糧になるよう願っています。
いしかわはるえ●社会福祉法人にんじんの会理事長、特定非営利活動法人ケア・センターやわらぎ代表理事。1978年に立川駅エレベーター設置運動を開
始、1
9
8
7年にケア・センターやわらぎを設立、1997年には社会福祉法人にんじんの会を設立。『NPO実践講座』(2000ぎょうせい)など著書論文多数
内山 節 先生
私の本拠地は群馬県の上野村という山村です。山に囲まれていて、ここで
は春から秋までは朝ウグイスの声で目を覚まします。畑をつくったり、山の
森の手入れをしたり、釣りをしたり、村の人たちとちいきづくりをしたり
…、と村では楽しく暮らしているのですが、仕方なく東京にも出てきます。
村の人たちは「村で収入がない人だから、東京に出稼ぎにいくのも仕方ない」
と言っています。
専門は哲学ですが、現代哲学は哲学とは何かという共通する視点を失って
いるので、実に自由です。
立教大学ではその感覚を伝えられればと思っています。毎日何をしている
のかと聞かれると「息をしている」と答えている内山です。
うちやまたかし●哲学者。群馬県の山村、上野村に暮らす。立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任教授、東京大学大学院人文社会系研究
所兼任講師などを歴任。NPO法人「森づくりフォーラム」代表理事。
『清浄なる精神』、『共同体の基礎理論』など著書多数
長 有紀枝 先生
昨年4月特任教員として着任しましたが、この4月から専任教員として、
皆さんの指導にかかわることになりました。改めて、どうぞよろしくお願い
いたします。
大学院で学ぶ、修士論文を書く、というのは、様々な人や事象との対話の
過程です。教員、キャンパスの仲間はもちろんのこと、研究の対象となる組
織や事象、インタビューをさせていただく方々、時や空間を超えて、文献と
いう形で出会う、古今東西の研究者・先達。そして最後は、自分自身です。
自分は何にこだわって、何を学ぶために、大学院までやってきたのか、何を、
どのような視点から明らかにしたいのか。誰(何)に対して、どのように貢
献したいのか。またとない貴重な時間です。どうぞ、心ゆくまで自分と向き
合って、実りの多い院生生活・研究生活を送ってください。
おさゆきえ●認定NPO法人難民を助ける会理事長、
認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム共同代表理事。
専門は人間の安全保障、
平和構築、国際人
道法、
ジェノサイド研究など。『スレブレニツァ あるジェノサイドをめぐる考察』
(2009東信堂)、
『地雷問題ハンドブック』
(1997自由国民社)など著書多数
3
9期Z安倍 昭恵(あべあきえ)さん
9期Z中谷 尚高(なかたになおたか)さん
“人生やる気になれば何でもできるんだ”
の精神で大学での勉強に挑戦!
授業はもちろん懇談会でも
知的好奇心を刺激されています
主人が総理大臣時代、多くの国に同行
し各国の首脳夫人と懇談したり、夫人プ
ログラムに参加しました。そして専門分
野を持ち、しっかりした自分の意見を
持っているご夫人方に大いに刺激を受けました。私も何か専
門的な知識を身につけたい、今までもっと勉強しておけば良
かった・・・色々な想いをめぐらせていましたが、それでも
当時は大学で勉強するなどということは考えてもいませんで
した。しかし昨年初めて東京マラソンに挑戦し、フルマラソ
ンを完走したことで、
“人生やる気になれば何でもできるん
だ”ということに気づきました。
実際通い始めてみるととても楽しく、今までいかに表面的
にしか物事を考えていなかったかということを実感する毎日
です。自分の頭でもう一歩突っ込んで考えてみること、それ
は自分がどういう人間なのかということの追及にもなります。
そして私はこれまで、
“人からどう思われるか”ということば
かりに気を遣ってきたんだ・・・という気づきにもなりまし
た。これからは自分の本心を語ることによって、どんな人と
でもお互い認め合えるような人間関係を作っていけるのでは
ないかと期待しています。そして2
1世紀社会デザイン研究科
での勉強を通して世の中のために今後私ができることを探し
ていきたいと思っています。よろしくお願い致します。
今から1年ほど前、通信制大学のゼミ
等を通じて漠然と大学院への進学を考え
ていました。そんな折ゼミの同期生から
21世紀社会デザイン研究科の存在を聞き
ました。初めはどんな研究科なのか、皆目見当がつきません
でした。本研究科は私の専攻分野である危機管理学分野のほ
か、コミュニティデザイン学や社会組織理論といった、これ
までの考えに囚われない非常にユニークな領域を研究対象に
しています。同期生は個性豊かで素晴らしい方ばかりで、院
生室や授業で意見を交わすなかで、私は非常に知的好奇心を
刺激されています。授業中はもちろんのこと、授業終了後の
先生と有志での懇親会では、授業の枠を超えた様々な話題と
それに伴う意見が飛び出し、社会人大学院ならではの幅広さ
と奥深さを感じています。その一方2
0代の方や留学生の方と
の交流もあり、自分自身の凝固まった考えを解きほぐすよい
きっかけを与えていただいています。入学してまだ3カ月。
ようやく仕事と学業の両立した生活に慣れてきましたが、こ
れからが本番です。卒業への最大の関門である修士論文の作
成に備えて、自分自身の考えを早急に固め、先輩の方々や同
期生の皆さんと、時には楽しく時には苦しみ、切磋琢磨して
自分自身の目標達成に邁進してゆきたいと思います。
1968年、東京生まれ。高校卒業後航空自衛隊入隊。1995年幹部任官、
現在に至る。離婚を契機に2007年4月産業能率大学経営情報学部
(通
信教育課程)に入学。本年3月卒業。本研究科では、職業と関連深
い危機管理学分野を主に専攻。授業後の懇親会には原則出席が信条
1
9
6
2年6月1
0日生。東京都出身。安倍晋三衆議院議員の妻として選
挙区である山口県と東京の往復の日々
8期Z岡田 真一郎(おかだしんいちろう)さん
8期Z周 暁穎(しゅうぎょうえい)さん
闘病生活を乗り越え入学。
学びの日々はまさに青春そのもの
“21世紀”
での2年間は
人生における財産です!
高3の秋にネフローゼ症候群を発症し、
約2年の入院生活の中で大学進学を断念。
その後も闘病は続き、気づけば20代のす
べてを自宅での療養に費やしていました。
焦りを感じつつも昨日と同じ今日を送るしかなかった日々。
再発をくり返すたびに失われていった将来への自信。入院し
た年から干支がぐるりひと回りした頃、そんな自分の人生に
久々の目標が見つかりました。それが2
1世紀社会デザイン研
究科へのチャレンジです。
それまでは自分自身と向き合う時間ばかりだった私にとっ
て、本研究科での学びの毎日はまさに遅れてきた青春そのも
の。病気を忘れるほどの充実感を日々味わっています。研究
のテーマは悪性腫瘍の一種である肉腫の患者たちが命をかけ
て行った活動の分析。人生のテーマは父である四代目江戸家
猫八の後を継ぐこと。まったく違うテーマの中に自分の道を
切り開いていきたいと思っています。様々な経験をもつ学友
との交流はそうした意味においても多くの気づきを与えてく
れます。
33歳の今、私の人生は目標いっぱい。そして今日とは違う
明日を迎えることができるようになりました。さらに学業と
修業に励み、本研究科を修了したら二代目江戸家小猫を襲名
します。
私は日本へ来た時、日本の文化と習慣を体験す
るため、老人ホームでボランティアとして働いた。
その時日本の高齢者に対する施策水準の高さに深
く感心した。それがきっかけで、高齢者福祉につ
いての興味を掻きたてられた。そして去年祖母が脳梗塞で寝たきりになり、
介護をしていた親の負担を軽減するために私は高齢者福祉を学ぶ決意を固
めた。急速な高齢化と共に、我が家と似たような問題を持つ家庭が増える
だろうと思い、私は日本の高齢者に対する制度・施策をモデルとして、中国
の高齢者福祉を推進したいと考えていた。その時、21世紀社会デザイン研
究科は既存の学問分野の融合により新たな領域を開拓できる研究科である
ことを知って、ここでなら私の研究したいことが深く体系立てられると思
い、受験を決意した。
入学の時に結構迷ったが、今この不安は消えた。先生方はとても親切で、
留学生である私のことを配慮し、私の疑問に丁寧に答えて下さり、研究の
基本的な進め方を教えて頂いてとても感動している。
入学して1年の私は、講義やゼミで知識の習得はもちろん、論理的な思
考法や研究の方法など今まで習うことがなかった新たな研究の作法を学ぶ
ことができ、非常に有意義な留学生活を送っている。また、先輩方(本研
究科の経験や知識が豊富な同級生は私にとっては先輩です)との意見交換
や討論重視型の演習などを通じ、多角的な視点が徐々に持てるようになっ
てきた。本研究科での2年間は私の今後の人生における大きな宝となると
思う。
1
9
7
7年生まれ。都立戸山高校卒。長期療養を経て本研究科に入学。
父は動物ものまね芸の四代目江戸家猫八。ただいま二代目小猫を目
指して修業中
1985年、中国・上海生まれ。2007年上海大学経営管理学部を卒業し、
同年10月に来日する。一年半にわたり、日本語学校で日本語を習得
した後、2009年4月、本研究科に入学
4
9期Z岩崎 緑(いわさきみどり)さん
9期Z竹内 勇人(たけうちゆうと)さん
研究科の恵まれた環境を
活かすのは自分次第
池袋の人に愛される学校、
「立教学院」
を目指して
高齢福祉、障碍福祉の分野を取材して
きたことから、街の設備整備に関心を
持っています。最近は駅にエレベーター
が設置され、多機能トイレも増えてきま
したが、せっかく整備されても必要な人にとって使いにく
かったり、危険だったり、管理上の問題で使えないなど、不
思議な光景をあちこちで目にします。
「ユニバーサルデザイン」
「共生社会」
「生活の質」といった
お題目(認識?)のもとでもこのような整備になるのは、世
代間理解、障碍理解の難しさが現われているのだと思います。
ですが良いように捉えれば、設備整備を通して相互理解を進
められると考え、とくに多機能トイレに注目しています。行
政や施設、建築関係者、そして一般市民に働きかけるために
は、福祉の枠を超え、現代社会の問題として共生を考えたい
と、21世紀社会デザイン研究科を受験しました。
研究科の授業は、理論や研究姿勢を学ぶことはもちろん、
実践的な活動の参考にもなります。さまざまなバックグラウ
ンドを持つ仲間との語らいから、物事を多角的に考えるヒン
トを貰うことも。入学から3か月が経ち、この恵まれた環境
を活かすのは自分次第だと、気持ちを新たにしているところ
です。
この研究科を通して私が達成したい夢
は、
「立教学院」を池袋の人に愛される学
校にすることです。
私の「立教学院」での生活は、今年で
17年目に突入しました。そんな私が最近良く考えることがあ
ります。それは、
「立教学院」が池袋にある価値は何なのかと
いうことです。
この池袋という街は、多くの商業・娯楽施設があり沢山の
若者が集まってくる華やかな一面を持つ一方、東京の中でも
五指に入る程、ホームレスの方々が多いという陰の一面も持
ち合わせています。
私は、この池袋の持つ暗い一面を21世紀社会デザイン研究
科から変えていきたい。市民性や社会問題に興味を持つ、年
齢も職業経験も多様な先生・生徒が力を合わせ、池袋を「立
教学院」から変革する。池袋にある「立教学院」が、そして
21世紀社会デザイン研究科が、この役割を担うことこそ、社
会デザイン学をうたう我が研究科の在るべき姿であり、最大
の挑戦ではないでしょうか。
そしてその結果、「立教学院が池袋にあって本当に良かっ
た」と人々に言ってもらえた時、
「立教学院」が池袋にある価
値を示せたことになるのではないかと私は思うのです。
総合商社、レコード会社勤務を経てフリーライターに。現在は、地
元の武蔵野市で共生のまちづくりの活動を行っている他、高齢者施
設のミニデイサービスで文章講座の講師をしています
2010年3月立教大学経営学部国際経営学科卒。小・中・高・大と立
教で過ごし、10年以上部活動として野球に励む。大学2年の時に、
ムハマド・ユヌス氏の講演に触発され『社会起業家』になるために、
本
研究科にて修行中
松井佳奈江さん
松沢佳苗さん
21世紀社会デザイン研究科 博士課程前期(2期)
修了。大学を卒業後、国立大学で事務官として勤
務。その後、文部科学省へ転任し、現在は、生涯
学習政策局生涯学習推進課にて勤務。
21世紀社会デザイン研究科 博士課程前期(7期)
修了。野中ゼミ所属。新潟大学在学時、アフリカ
へ 行 き、現 場 と 日 本 で 伝 え ら れ て い る こ と の
ギャップを体感し、ジャーナリズムに関心を持つ。
この9月より新聞記者に。
文部科学省に勤務して、3年が経った頃、大学院で学びたいと思
うようになりました。生涯学習政策に携わる一員として、これから
は、NPOなど「民」との協働という視点に、行政の新たな役割が
あるのではないかと考え、その可能性を追求したいと強く思うとと
もに、これから求められる行政の姿を、行政組織の外から考える機
会を持つことで、より視野を広げたいと思い、職場の理解を得て、
萩原なつ子先生の門戸を叩くことに決めました。
期待に胸を膨らませ、大学院生としての生活がスタートしたもの
の、実際は、とにかく時間との闘いでした。平日は、大学院の授業
が終わった後、職場に戻り深夜まで残業することも少なくありませ
んでした。授業の課題についても、往復の通勤電車の中や、休日の
時間を使って何とか間に合わせたことを記憶しています。休日の時
間は、仕事の挽回にも当てる必要があり、今振り返ると、二足の草
鞋で走り続けていた2年間でした。
在籍中に考えたことや感じたことは、今でも大きな財産になって
います。行政の仕事は、ともすれば単一的に進めることも可能でしょ
うが、大学院で学んだ“考えるクセ”がいい意味でそれを許してく
れません。また、師に導かれながら、調べ考えたことやゼミで議論
したことなどをまとめて整理していくプロセスを経て修士論文を書
き上げた事実は、今も自分の糧になっています。
「人と議論をすることはこんなにも楽しい」。在学中の2年間、日々
の授業で、シンポジウムで、学校帰りの飲み屋で、私はいつも胸を
躍らせていました。
入学したばかりの頃に、ある人からもらった言葉を思い出します。
「人にとって大事なのは、上か下かでも、右か左かでもない、開い
ているか閉じているかだ」。研究科には、立場も考えもまったく違う
学生たちが「もっと学びたい」という共通点のもとに集まっていま
す。そしてそのような場での議論は、いつも(否応なく)開かれて
いました。
「学びたい」という純粋な気持ちのままに、自由に自分ら
しく大学院生活を送れたことを心から感謝しています。
修士論文では、
「日本社会における表現の自由と沈黙」として、
2008
年に起きた映画「靖国」上映自粛問題を事例に、言論・表現に対す
る自主規制の構造について研究しました。研究を進めるなかで、制
度の上では等しく表現の自由を保障されているにもかかわらず、実
社会では、自主的な規制によって、その権利を自ら手放し狭めてい
るという状況が見えてきました。表現の自由について学問的に深く
思考する時間をもてたことは、ジャーナリストを目指す私にとって、
この先かけがえのない財産になっていくはずです。実践と思考の間
を行き来すること、いつも「開かれた」自分でいること、人との縁
を大切にすること。2年間で得たすべてのことが私の宝物です。
5
ゼミ紹介
21世紀社会デザイン研究科では、今年度1
5のゼミを開講しています。
今回はこのうち1年生の募集を行わなかったところ以外の1
2のゼミ
について紹介いたします。
赤井田健造ゼミ
笠原清志ゼミ
中村陽一ゼミ
危機管理学分野
社会組織理論分野
コミュニティデザイン学分野
企業と大学の二足のわらじを履かれている赤井
田先生。大学で学んだことが、社会ではどのよ
うに利用されているのか知ることができるのが
このゼミの魅力です。研究テーマは危機管理で
すが、ゼミでは組織の問題など社会デザインに
関わる テーマまで幅広い 議 論 が な さ れ ま す。
様々なバックグラウンドを持った学生が集まっ
ており、刺激を受けることは間違いありません。
個人の問題意識と自主性を尊重し、共に考え、
共に行動できるグループです。
ゆっくりと穏やかな笠原先生の口調で始まるゼ
ミでは、毎回、「マイクロクレジット」「障害
者雇用」「NGOと企業」「共産主義の崩壊」
など、実に多様で幅広いテーマを取り上げます。
これら諸課題を社会組織論的視点から鮮やかに
紐解き、さらに組織を構成する人間論にまで踏
み込みます。ゼミの後半では学生個々の意見を
引き出し、らせん状の知の階段を登る如く議論
を深めご指導いただけます。歴史の縦軸と地域
や国境をこえる横軸を重ねると、2
1世紀社会の
今と明日が鮮やかに浮かびます!
研究テーマは、NPO・NGO・CSR・ソー
シャルキャピタル・介護など様々。中村先生は、
国内外の地域現場を歩き、市民活動サイドから
行政・企業との共同研究、政策提言にとり組み、
大学・研究機関との間を往復!!!スーパーマ
ンのような先生の幅広いネットワークとエネル
ギーと丁寧なご指導(昼夜問わず)に吸い寄せ
られるようにゼミ生が集まり、多種多彩の才能
を開花しています。百花繚乱のゼミ生と16
0人の
修了生。ぜひ、一緒に研究してみませんか?
石川治江ゼミ
カプリオ・マークゼミ
野中章弘ゼミ
社会組織理論分野
危機管理学分野
コミュニティデザイン学分野
初年度であり少人数でのスタート。ゼミ生それ
ぞれの研究分野にきめ細やかな指導がなされま
す。各自の問題意識を話し合うので、自然と課
題を共有し研究の幅が広がりそうです。先生は
多彩な経歴の持ち主であり、大らかで頼りがい
があります。外資系組織に秘書として勤務後、
居酒屋、喫茶店、手紬工房など経営して、福祉
の道にすすまれたとか。現在も特定非営利活動
法人ケア・センターやわらぎ代表理事として活
躍されています。現場でのお話も興味深い!皆
さんも、ぜひ遊びにきてください。
カプリオ先生は、20世紀の朝鮮史がご専門の歴
史研究家で、日本と朝鮮半島の関係について、
様々な側面から研究されています。先生は「学
生自らが責任を取る」という哲学を持たれなが
らも、主体的に学びを深めようとする学生の良
きアドバイザーとして、常に門戸を開いておい
てくださいます。ゼミでは、先生が豆から挽い
て淹れてくださったコーヒーを飲みながら、多
国籍メンバーが和やかでアットホームな雰囲気
の中、お互いに刺激を受けながら研究を行って
います。
野中ゼミでは、「たくさんの真実、ひとつの事
実」という視点を大切にしています。複雑な社
会現象に対して、歴史的文脈でとらえ、論理的
に合理的に説明できるように、事実の積み重ね
から研究を出発し、ジャーナリズムの本来的な
役割を考えながら徹底的に議論します。同時に
マイノリティーの意見も大切にする広い視野を
育てます。沖縄、長崎などにも出向き、現地取
材を行う合宿を行い、生の声を聞くことを大切
にする厳しくも有意義なゼミです。
内山節ゼミ
川村仁弘ゼミ
萩原なつ子ゼミ
社会組織理論分野
危機管理学分野
コミュニティデザイン学分野
内山先生は群馬県上野村と東京とを行き来する
哲学者です。穏やかで優雅な雰囲気の中、ゼミ
生は活発な議論と個別指導を通じて研究を深め
られます。洗練された智と共に、伝統的生活様
式と自然への深い理解が統合された先生の言葉
には、常にゼミ生の創造性を触発する力があり
ます。おのずから、新しい視点と着想から物事
を 捉 え よ う と せ ざ る を 得 ま せ ん。各 々 の 研 究
テーマの本質と対峙するゼミ生にとって、唯一
無二の魅力がある内山ゼミです。
川村先生の専門分野は危機管理学の中でも行政
分野ですが、ゼミ生は実に様々な研究テーマに
取組んでいます。川村ゼミでは、「論文とは何
か」という論文作成の基礎から始まります。そ
してゼミ生一人ひとりに対応した懇切丁寧なご
指導を頂くことが出来ます。論文作成の迷路に
入りかけた時、一筋の光となることでしょう。
世代や国籍を超えて様々なバックグラウンドを
持ったゼミ生が集まっています。
萩原先生はNPO・市民社会・ジェンダー・環
境教育等がご専門であり多様な視点から論文指
導をして頂ける点が魅力です。幅広い学問領域
を扱う先生の下には今年度も20名を越える多彩
なメンバーが集まりました。ゼミ生の研究テー
マは環境・医療・教育・ジェンダー・WLB等、
多岐に渡っています。その為、分からない事を
率直に言葉にする姿勢を尊重される風土があり
ます。ゼミ生全員が集まる事で、様々な視点か
ら問題を見つつ、賑やかな雰囲気で明るく知的
な議論が展開されています。
長有紀枝ゼミ
齋藤哲男ゼミ
渡辺元ゼミ
危機管理学分野
危機管理学分野
コミュニティデザイン学分野
素敵な笑顔で、インテリジェンスな雰囲気溢れ
る長先生ですが、ご専門は、人間の安全保障、
平和構築、国際人道法、ジェノサイド研究など
多様な分野に渡り、また2つのNGOの代表を
兼務される実務家でもあります。ゼミでは、多
くの修羅場をくぐられてきた長先生の実体験を
踏まえたお話から、平和や紛争についての本質
的な議論が行われ、知的で活発な議論が繰り広
げられています。また専門分野を越え、一人ひ
とりに的確な指導をして頂けるのも長ゼミの魅
力のひとつです。
齋藤ゼミではグローバル社会での企業の社会貢
献活動や経営上のリスクマネジメントをテーマ
に議論が行われています。ゼミ生は年代も経歴
も様々ですが、その分いろいろな意見が聞ける
ので新たな視点を得る場にもなります。論文指
導では、長年の現場経験と豊富な国際情勢など
の知識を持つ先生から的確なアドバイスをいた
だけます。また、海外勤務先でのエピソードが
聞けることも齋藤ゼミの魅力です。先生の親身
な指導のもと、ゼミ生はより良い修士論文執筆
を目指して邁進しています。
渡辺ゼミの主な研究領域は市民社会論、NPO
などのコミュニティデザイン学。でも、ゼミ生
の 研 究 テ ー マ は 多 種 多 彩 で、個 性 的 な 面 々 が
揃っています。ゼミは緊張感がありつつも和や
かな雰囲気。時には飴を舐めながら、もしくは
キャラメルを頬張りながら、優しく厳しい先生
の指導を受けています。「各々の修士論文執筆
の土壌作り」。ゼミの一義的な役割について先
生はこう説明します。論文執筆にあたっての私
たちの悩み・疑問にはいつも親身できめ細かい
アドバイスをいただけます。
6
公
21世紀社会デザイン研究科 世紀社会デザイン研究科 1 21世紀社会デザイン研究科主催公開講演会
月 「絆を結び直す∼生活困難者支援へのNPOの挑戦」
13 ○コーディネーター:高橋紘士(21世紀社会デザイン研究科教授)
○講師:奥田知志氏(牧師、北九州ホームレス支援機構理事長、ホームレス支
日 援全国ネットワーク代表)
/清水康之氏(NPO法人ライフリンク理事長)/中
¹ 野しずよ氏(NPO法人ワーカーズわくわく代表、市民セクターよこはま代表)
開講演会
2 21世紀社会デザイン研究科、社会デザイン研究所主催公開講演会
月 「社会デザインのなかでのCSR
20 ―いまめざすべきもの、求められるもの」
日 ○コーディネーター:中村陽一(21世紀社会デザイン研究科教授)/
¼ 中原美香(CSRインターンシップ・プログラムコーディネーター)
○講師:関正雄氏(株式会社損害保険ジャパン理事・CSR統括部長)
○パネリスト:岸本幸子氏(NPO法人パブリックリソースセンター理
事・事務局長)/服部篤子氏(CAC―社会起業家研究ネットワーク代表)
/新谷大輔氏(株式会社 三井物産戦略研究所研究員)/遠藤理恵氏
(セールスフォース・ドットコム ファンデーション)/平田裕之氏(地
1世紀社会デザイン研究科
球環境パートナーシッププラザ)/ 北山晴一(2
公的施策のみによる生活困難
者支援の限界が見えてきている
今、これまでの制度の枠を超え
教授)
た支援の必要性が高まっていま
す。そんな中で「ホームレス」
研究科主催の公開講演会「社会デザインのなかで
「自殺」
「地域支援」をテーマに活動されている三団
のCSR―いまめざすべきもの、求められるもの」が、
体のリーダーの方々に、生活困難者支援の課題と展
多くの参加者を得て2月2
0日に開催されました。北
望について語っていただきました。
山晴一研究科委員長(当時)による主催者挨拶に続
まずコーディネーターである高橋紘士氏から「自
き、関正雄氏によるCOP15やISO2
6
0
00などのグ
助と互助の関わりを失った人々がいかにして絆
ローバルな課題での基調講演、続いて2部のパネル
を結びなおすことが可能なのか」という問題提起が
ディスカッション「CSRインターンシップ・プログ
なされました。奥田知志氏は、路上生活者には「ハ
ラムの成果と課題」が議論され、最後に「社会デザ
ウスレス(物理的困窮)」と「ホームレス(関係性の
インのなかでのCSR」をめぐるパネルディスカッ
困窮)
」
という2つの困窮があることを指摘。持続性
ションの3部構成となっていました。
のある伴走的コーディネートによるトータルな支援
今講演会の目的は、本研究科が民産学協働で5年
の必要性について語
間にわたって取り組んできた「CSRインターンシッ
られました。
プ・プログラム」の成果を振り返ると同時に、あら
清水康之氏は、自
ためてダイナミックに変化しつつある2
1世紀社会の
殺者は「死にたい」
なかでのCSRのあり方を参加者と考え、その議論を
というより「もう生
共有することでした。
きられない」と思っ
基調講演では、COP1
5会議に実際に参加した立場
て亡くなっていくと
で、関氏による現地からの緊張感が伝わってくる報
した上で、
「自殺の実態を正しく捉えなければ、効果
告があり、またISO2
6
0
0
0における最終調整段階の状
的な対策の実現は不可能」ということを具体的な
況に加え、今や「CSRからSR」へと考え方が変化
データや事例から強調されました。
しつつあることなどの報告は、日頃余り聞く機会が
中野しずよ氏は「困っている人たちと、どう一緒
ない参加者の興味をそそる内容で貴重な機会となっ
に生きていくか」という、これからの地域活動にお
たのではないでしょうか。
ける考え方を紹介。支えとは絆のことであり、その
さらに、それに続く2つのパネルディスカッショ
支えを強くすることの大切さについて話されました。
ンでは新谷大輔氏、遠藤理恵氏、平田裕之氏に本学
最後のディスカッションでは「自己責任論によっ
の北山晴一教授、中村陽一教授が加わり、CSRイン
て無責任でいる社会ではなく、社会の責任を果たせ
ターンシップ・プログラムの5年間の活動での総括、
る社会が必要」
(奥田氏)
「
、100年に一度の危機はチャ
そして今後のCSRのあり方などの議論がなされま
ンスでもある。この闇をしっかり見つめよう」
(清水
した。そこではそれぞれのパネリストの方の貴重な
氏)
、
「支援を受ける人が、ありがとうと言われる環
意見も聞くことができ、中村教授による明快な議事
境を作りたい」
(中野氏)など、多くの示唆に富んだ
のコーディネイトで参加者に時間を忘れさせるもの
発言が聞かれました。
となりました。
最後に高橋氏は「伴走的支援」が共通のキーワー
最後に、CSRインターンシップ・プログラムは5
ドであると指摘。
「支援が必要な人たちも資源であり、
年目の2
0
0
9年度で終了となりましたが、立教大学と
そういう人達を支援する社会が活性化される。重い
して、そして2
1世紀社会デザイン研究科としてのCS
課題がかえって私たちを力づけていく」と語り、今
R研究への取り組みは(社会デザイン研究所が引き
後の社会のあり方を問う濃い内容となった講演会は
継ぐ形で)ますます充実させていきたいとの言葉で
幕を閉じました。
講演会は締められました。
7
6 21世紀社会デザイン研究科主催公開講演会
月 「市民セクターの強化に向けた資金支援のあり方―受け手も育ち、出し手も育つ助成とは?―」
26 ○コーディネーター:渡辺元(21世紀社会デザイン研究科教授、市民社
会創造ファンド副運営委員長)
日 ○講師:山岡義典氏
(法政大学現代福祉学部教授) /梅村敏幸氏 (中
¼ 央労働金庫 総合企画部CSR企画次長)/深尾昌峰氏(京都地域創造基金
2
1世紀社会デザイン研究科
公開講演会
5 21世紀社会デザイン研究科主催公開講演会
月 「挑戦へのチャンスと支える仕組み―資金の開発と循環」
29 ○コーディネーター:石川治江(21世紀社会デザイン研究科教授)
○講師:井上英之氏 (ソーシャル・ベンチャー・パートナーズ東京代表、
日 慶應義塾大学講師)
/鴨崎貴泰氏 (公益財団法人信頼資本財団事務局長)
¼ /松原明氏(市民活動を支える制度をつくる会副代表)/山本浩治氏
理事長) /牧野昌子氏 (ちば市民活動・市民事業サポートクラブ(NPOク
ラブ)代表理事) /米田佐知子氏 (神奈川子ども未来ファンド事務局長)
「受け手も育ち、出し手も育つ助成」について、各
助成団体の代表者、研究者の方を迎えて講演会が行
われました。最初に山岡義典氏による基調講演が行
(巣鴨信用金庫・としまビジネスサポートセンター・ビジネスコーディネー
ター) /中村陽一 (21世紀社会デザイン研究科教授)
われました。
「効果的な助成プログラムの開発と運営
を行っていくためのポイント」という題目で、助成
日本ではNPO法の施行から
活動においての
「用語における概念の不明瞭さ」
「終
、
約4万の団体が設立され、若手
了後の総括評価報告書作成の不十分さ」といった具
の社会起業家が台頭し、新しい
体的な問題点の指摘、また「助成先との付き合い方」
市民社会形成のための基盤が整
といったご自身の経験に立ったお話しをしていただ
い始めています。しかし、この
きました。
ような組織は資金・財源確保といった潜在的な問題
その後、各助成団体の方々か
を抱えており、リーマン・ショック以降の景気後退
らそれぞれの団体の事業内容と
の影響から一層深刻
その特徴についてのプレゼン
な事態に直面してい
テーションをしていただきまし
ます。それらの支援
た。それを受けてのパネルディスカッションとなり、
の仕組みとして市民
大学院生、行政、NPO関係者という多様な参加者達
ファンドの形成やN
からの質問もなされ、大盛況の会となりました。
POの体制強化を実
最後に「助成活動にいかに人を巻き込んでいくか、
践している方々を講
連携のポイント」について各団体代表者に対して、
師に迎えて講演会が催されました。
本研究科教授の渡辺
前半は、社会起業家の育成・輩出に取り組む井上
元氏から質問がなさ
氏、区内初の行政機関内ビジネスサポートセンター
れ、米田佐知子氏は
の山本氏、信頼から資本を創発するモデルの構築に
「相手をいかに知る
挑戦する信頼資本財団の鴨崎氏、NPO支援を先駆的
か」、牧 野 昌 子 氏 は
に行ってきたシーズの松原氏、本研究科教授でもあ
「ヒアリングを通し
る中村氏に、自己紹介を兼ねて諸氏のユニークな活
て繋がりをつくる」
、
動とその現状についてスピーチしていただきました。
深尾昌峰氏は「より多様な人の力をいかに見つけ出
後半のセッションは、コーディネーターである石
し、繋ぎ合わせていくのか」
、梅村敏幸氏は「人との
川氏からの問題提起を中心に進められました。新た
関係性から学ぶことを大切にする」との回答をなさ
な日本のNPOモデル形成に関しては「学びながら広
れました。何れの回答においても「組織と組織」で
がっていくコミュニティが日本には合っている」
(井
はなく「人と人」がいかに付き合っていくかに重点
上氏)
、
「つながりというソーシャルキャピタルによ
が置かれており、本講演会の題目の「市民セクター
る非貨幣領域が重要となる」
(中村氏)、
「日本はボラ
の強化に向けた資金支援のあり方」に対する答えが
ンティア精神が高いので、それをどう取り入れてい
ここに見えたように思いました。
くか」
(松原氏)
、資金の創造に関しては「ソーシャ
ルキャピタルが資本を生み出す」
(鴨崎氏)、
「中小企
今号の編集スタッフ
業が地域で発展すれば、後から利益はついてくる」
(山本氏)という言葉が印象的でした。終盤には石
川氏のカネを血液に例えた「いかに栄養分(成果)
のある血(カネ)を流していくか」という言葉が会
場全体に深い共感を呼んでいました。過渡期にある
NPOやソーシャルベンチャーのさらなる飛躍の可
能性を感じさせられる講演会となりました。
8
相木暢子、安達元彦、長田
健太郎、勝田祥子、木田優
子、金文杰、倉形美樹、黄
馨儀、小林由紀男、杉原学、
‹橋薫、高野智恵、中西豪
士、韓賢淑、馬越弥生(8
期)、
岩間初音、太田差恵子、喜
内尚彦、木舟辰平、金美智
子、高珮、佐藤瑠美、三
瓶恭佑、冨田眞紀子、中谷
尚高、原井梢衣、矢野正高、
山田好徳(9期)
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