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ワーク“知る” - 千葉大学 大学院看護学研究科・看護学部

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ワーク“知る” - 千葉大学 大学院看護学研究科・看護学部
平成28年度看護学教育ワークショップ
看護系大学における卒業時到達
目標評価に関する調査報告
千葉大学大学院看護学研究科
附属看護実践研究指導センター
吉本
和住
吉田
黒田
看護学教育研究共同利用拠点
照子(センター長)
淑子、野地 有子、錢 淑君
澄恵(特任准教授)
久美子(報告者)
千葉大学大学院附属看護実践研究指導センター
背 景
• 2011年3月 「学士課程においてコアとなる看護実践能力と卒
業時到達目標(以下、到達目標2011)」の提示
• 看護系大学の増加及び教育環境の変化
• 地域包括ケアの推進、病床機能再編等の医療提供体制の変
革にともなう看護師等の役割・機能の変化の予測
• 看護系大学における教育の質保証に向けた評価の必要性
• 文部科学省委託事業(平成27~29年度)
「医療人養成の在り方に関する調査研究」採択
学士課程における看護実践能力と卒業時到達目標の
達成状況の検証・評価方法の開発
その一環として、本調査を行った。
看護学教育研究共同利用拠点
千葉大学大学院附属看護実践研究指導センター
報告する調査の目的
全国の看護系大学における到達目標
2011の活用の実態と背景要因の解明
以下、委託調査研究全体の年次計画
2015年度:
到達目標2011の活用状況およびその背景要因のヒヤリング調査(国公私立7大学)
全国調査票試案の作成、専門家会議の意見による修正
2016-7年度:
本調査
協力大学における課題解決方策の実施と教育の質改善の効果検証
2017年度:
教育の質改善を行うための自律的な到達目標2011の活用方法の解明
全国の看護系大学における実態と背景要因を踏まえて、教育の質改善を継続するために
有効な、多様性を前提とした評価方法を提言する
看護学教育研究共同利用拠点
千葉大学大学院附属看護実践研究指導センター
方法
1.対象者
248看護系大学(平成27年4月1日現在)の、
1)学部長・学科長・専攻長等の管理責任者1名
2)1~4名の科目責任者
2.調査内容
1)「到達目標2011」の活用実態と背景要因に関する質問
周知度、活用目的、内容の網羅性・妥当性・理解しやすさ等
自大学の卒業時到達目標の評価方法と課題について
自大学で強化すべき・不足な教育内容
2)対象者や大学に関する基本属性に関する質問
看護学教育研究共同利用拠点
千葉大学大学院附属看護実践研究指導センター
3.調査方法:自記式郵送調査
1)依頼状、調査票、返送用封筒のセットを管理責任者宛に
送付し、科目責任者には管理責任者から配布を依頼した。
2)多様な看護領域からの意見を反映したいため、一大学で
可能なら4名までの科目責任者に配布を依頼した。
3)回答は、両者とも返送用封筒(料金後納)で、個別に返送を
依頼した。
4)返送をもって、研究協力への承諾同意を確認した。
4.倫理的配慮
個々の教員による返送、返送をもって承諾同意を確認等の
研究協力への任意性の保障、匿名性の確保、データ分析時の
特定化への配慮等を行った。
看護学教育研究共同利用拠点
千葉大学大学院附属看護実践研究指導センター
結果
Ⅰ.対象者の概要
1.調査票返送数(有効回答数・郵送数)
管理責任者用 72名(29%・248名)
科目責任者用 250名(25.2%・992名)
2.回答者の
専門領域
12
3
基礎看護領域
6 3 12
母性看護領域
小児看護領域
55
成人急性期看護領域
成人慢性期看護領域
24
老年看護領域
29
46
精神看護領域
公衆衛生看護・地域看護領域
在宅看護領域
32
33
N=322
(人)
34
33
看護教育領域
看護管理領域
その他
不明
Ⅰ.対象者の概要(続き)
3.所属大学の種別
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
100
82
62
62
60
40
73
44
81
80
174
156
75
4.所属大学の学士課程開講時期
32
20
48
3
0
回答数
全大学数
5, 1%
5.所属大学の所在地域
26, 8%
北海道
東北
59, 18%
35,
11%
N=322
9, 3%
関東
86, 27%
中部
関西
中国・四国
47, 15%
55, 17%
九州・沖縄
不明
Ⅱ.「到達目標2011」の活用と背景要因
1.「到達目標2011」の認知
2.「到達目標2011」の活用
5, 2%
200
185
180
活用している
160
活用していない
140
84, 26%
120
不明
100
80
60
40
20
55
42
233, 72%
28
9
3
0
活用していない方の活用意向
11
26
N=322
活用してみたい
47
活用する必要は
ない
不明
3.「到達目標2011」の活用頻度からみた活用方法
0
50
カリキュラムの検討
150
73
全学的な教育内容の網羅性のチェック
35
随時、教員評価
35
随時、学生評価
126
124
101
47
卒業時の自己評価
88
60
学生のガイダンス使用
34
卒業時の教員評価
33
8
250
134
53
各科目の教育内容の検討
200
132
69
学生の学習成果の確認
継続教育活用
100
61
83
77
29
よく活用する
ときどき活用する
回答者の全数は、
項目によって異なり、
234~238の範囲であった
4.「到達目標2011」を活用していない理由(自由記述) 一部抜粋
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
教員が知らない、学習していない
大学独自のものがあるため(ほぼ同じ、求めるレベルが高すぎる)
領域の特徴的看護があまり明確に盛り込まれていない
参考にするが、日常的に使ってはいない
卒業生を受け入れる臨床からは抽象的すぎる
活用しようと試みたが、項目が多く別のものにした
各項目のレベルがないので使いにくい
1枚に収まらないので、用いにくい
活用方法を具体的に示せない
領域では活用していないが、大学のディプロマポリシーやカリキュラムポリシーには
反映されている
領域の考え方が優先され、教員全体での統合的な活用の検討にいたっていない
前大学では活用していたが、現在は興味のない教員が多すぎる
教員体制が整わない現時点ではしていない
5-1.「到達目標2011」への意見
0%
教育に必要な内容の網羅
20%
40%
32
60%
80%
218
39
100%
12 20
全くそう思う
分かりやすい
27
165
80
26
20
ほとんどそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
学士課程の到達レベル
として妥当
19
社会や各領域におけるニー
ズに対応している
15
171
88
21
19
全くそう思わない
不明
159
100
23
22
N=322
5-2.「到達目標2011」への意見(自由記述) 一部抜粋
<到達目標のコア、ミニマムエッセンシャルズの検討が必要>
• 開発段階では議論があったが、結果はミニマムではない
• 意識した結果、「つめこみ」のカリキュラムになり、教員、学生双方が疲弊している
• 教員、学生、臨床の看護師、全ての人に活用可能なように、もう少し整理が必要
• 学生のレベル差があるため、何を押さえておけば、学生自身の力で伸びていけるかを
考えて、授業・実習で関わっている
• 学生の就職先を考えると、個々の到達目標の妥当性の考えがゆれる
• 学士力と看護実践能力は別の能力だと思う。それを混同した評価方法の開発は、理
想的ではあるが、現実的でないのではないか
• 資格を有した看護職との違いが何か学生にあまり伝わらない
<必要な教育内容>
• 地域包括ケアシステムの実現に向けた看護実践能力についての議論が必要
• 対象者の捉え方、対象者の体験の理解のすすめ方といった能力が埋もれている
• 領域の特徴、専門性は埋もれている
• 社会に出てから躓きがちな対人関係や多重課題対応力などがもう少し含まれるとよい
<個々の大学における、育成すべき、具体的な人材育成像が描きにくい>
• 基礎教育での到達としての具体性が見えにくい
• 看護職者の役割は拡大しており、時代に合わせた大幅な看護職者像を点検する時期
• 学習成果をここまで細分化して示すと、個性や大学の考えを反映する余地がないよう
に思う
5-2.「到達目標2011」への意見(自由記述) 一部抜粋 続く
<個々の教育方法・評価への示唆やガイドが必要>
•
基本的な考え方に大いに賛成であるが、状況に応じて、どのように考え、実践できる
かが、さらに重要である(教育方法の検討が必要)
•
必要な内容は網羅され、学士レベル、修士レベル、博士レベルのどれにも通じるよ
うに思えるが、(表現が)抽象的であり、判断する人の基準で評価が異なる
教員によって到達レベルの解釈が異なるので、解説書があると助かる
細項目は大学で設定が必要だと思うが、レベル設定を判断する根拠が必要
•
•
<活用する際の教員間の連携・体制に関する課題>
•
•
•
•
理想とする目標のため、可能なかぎり盛り込んでも一つの領域では到達できない。
領域間の連携が課題。教員能力の個人差も大きい現状を早急に縮めて、到達目標
達成に向けた取組が必要。
教員のバックグラウンドが多様であることから、表現、用いる言葉の吟味が必要
大学全体のカリキュラム構築の段階から取り入れないと活用が難しい
他領域の教員との話し合いに有効
実施して
いない
18%
6-1.
「あなたの領域における
卒業時目標の実施」
(科目責任者250名の回答より)
卒
業
後
だいたい
実施して
いる
26%
どちらとも
いえない
18%
0
在
学
中
実施して
いる
23%
あまり実
施してい
ない
13%
N=250
OSCE
ペーパーテスト
★
★ 看護技術チェック
「2011」による自己評価
★
「2011」による相互評価
「2011」による教員評価
大学独自ツールによる自己評価
★
大学独自ツールによる相互評価
★ 大学独自ツールによる教員評価
「2011」による卒業生調査
「2011」による卒業生就職先調査
大学独自ツールによる卒業生調査
大学独自ツールによる卒業生就職先調査
卒業生の上司からのヒヤリング
卒業生自身の評価のヒヤリング
卒業生と交流ある教員からヒヤリング
臨地で卒業生と会う教員からヒヤリング
その他
不明
2%
20
40
60
80
43
125
138
91
3
49
152
13
102
13
3
45
25
71
57
31
52
12
100
120
140
160
7. 学生の到達度評価における判断の困難さ
N=322
具体的な表現でないと学生自身が判断に迷う
108
114
援助の対象者の状況に伴う到達度の判断が難しい
63
106
臨地における安全対策や倫理的配慮との兼ね合い
で経験可能かどうか判断が難しい
62
104
学生の成長に伴う変化の判断が難しい
49
99
学生の到達度としては妥当でも、援助する対象者
への適切性の視点から、判断に迷う
46
100
最終の到達目標との関連で、各科目の到達度評価
の設定や判断に迷う
37
0
全くそう思う
108
50
100
ほとんどそう思う
150
200
250
8. 今後、貴大学で強化が必要、現在不足していること
0
20
40
60
80
100
日本の今後を意識したカリキュラム構築
60
87
新たな必要性に合わせ開拓する力の育成
47
93
理解協力に向けた地域住民や関係機関への広報
47
74
看護職の必要性を現状分析できる力の育成
45
64
異文化対応力の育成
43
93
卒業生に地域社会から期待されるニーズアセスメント
40
83
看護と社会の関連を理解し、社会を変える意識への教育
37
66
地域社会における看護のニーズを自大学教育に活用
36
76
社会で生き抜く力の育成
24
77
研究を用いた探求心の育成
24
86
実践の場で辛いことがあっても乗り切れる力の育成
22
70
療養の場を移行する時期の支援の強化
22
70
アクションを起こし、前進しようとする行動力の育成
16
89
根拠に基づいて実践を変えてくための文献活用力の育成
16
67
自身の力量補足のための教育、環境・支援体制
16
67
アサーティブなコミュニケーション力の育成
15
67
「指導」「見守り」で可能な技術経験を増やす支援体制… 14
42
問題解決力の育成 13
57
看護職として最善をつくす態度を身につける教育の実施 10
35
多職種連携の経験や学習の教育環境・支援体制の整備 9
49
不足している
やや不足している
120
N=322
140
160
考 察
• 「到達目標2011」を活用していると回答した教員のうち、8割
以上がカリキュラム検討や内容の網羅性の確認に活用し、
各大学のディプロマポリシーやカリキュラムポリシーに反映さ
れている現状も把握できた
• 「到達目標2011」は、基本的な考え方には支持を得ている
が、以下の観点で課題や必要性があると考えられた
–
–
–
–
具体的な教育方法、レベル解釈や基準に関する課題
個々の大学の人材育成像の明確化への活用促進
卒業時到達評価への活用促進(活用しやすさの向上)
個々の大学での活用を促進するモデル実践例の必要性
– 現代社会の変化に即した教育内容の再検討、それらに基いた到達
目標のコア、ミニマムエッセンシャルズの検討
看護学教育研究共同利用拠点
千葉大学大学院附属看護実践研究指導センター
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