Comments
Description
Transcript
蛋白質核酸酵素:動植物と細菌のカチオン輸送系の接点
動植物と細菌のカチオン輸送系の接点 中村辰之介 ・魚住信之 細菌のカチオン輸送系は構成遺伝子がほぼすべて確定し,それらの遺伝子をノックアウ Database Center for Life Science Online Service トした変異株も構築された. これらの遺伝子と変異株を組み合わせることで,カチオン輸 送系の構造と機能の関係を調べることができる.また,細菌と動植物のカチオン輸送系の 構造に類似性が見いだされ,互いの種をこえた発現/クロス トークが報告されたことから, 細菌のカチオン輸送系の研究が動植物のカチオン輸送系の理解に寄与できることが明らか となった. 【カチ オ ン輸送 系 】 【 構 造 と機能 】 【種 を こ えた発現 】 は じめ に リカ ツ メ ガ エ ル の卵 母 細 胞 や 酵 母 で 特 定 の イ オ ン輸 送 動 植 物 と細 菌 は, 個 体 /細 胞 内 と外 界 /細 胞 外 空 間 を隔 て る膜 を通 して , カチ オ ン (H+,Na+ ,K+ , 系 を発 現 させ , 電 極 を 用 い て 測 定 さ れ る . しか し , こ Ca2+ な ど)の 摂 取 と排 出 を行 な っ て い る (図1). た と こで用 い られ る電 極 で はイオ ンの 区別 はで きない し,Na+ え ば , 細 菌 や , 動 植 物 細 胞 内 の ミ トコ ン ドリアで は, 電 とK+ が1:1で 子 伝 達 系 に よ り膜 を 隔 て たH+ の 電 気 化 学 的 勾 配 (H+ ル ) に 膜 を隔 て て 反 対 方 向 に 輸 送 駆 動 力 )が 形 成 さ れ , こ れ を利 用 して ,F1F0一ATPase れ る よ う な 場 合 に は, イ オ ン電 流 を 測 定 す る こ とが で に よ り生 命 活 動 の 基 本 通 貨 で あ るATPが き な い . 複 数 の 細 胞 内 膜 系 が あ る動 植 物 細 胞 の 特 定 な つ くられ る . 電 気的 に中性 ( エ レ ク トロニ ュー トラ ( ア ン チ ポ ー ト) さ 動 物 細 胞 の 種 々 の 膜 系 に存 在 す るATPaseはATPを 部 位 の イ オ ン濃 度 測 定 は , 蛍 光 試 薬 と蛍 光 顕 微 鏡 を利 消 費 してNa+ 用 す る 以 外 は, 可 能 で は な い . 細 菌 は 膜 系 が 細 胞 膜 の な どの 電 気 化 学 的 勾 配 を形 成 し, この勾 配 は カ チ オ ン と基 質 の 共 輸 送 系 (シ ン ポ ー タ ー ) に よ み で 真 核 細 胞 よ り も単 純 な た め に, 細 胞 内 イ オ ン量 を り基 質 の 取 込 み に利 用 さ れ る. ま た , カ チ オ ン チ ャ ネ 原 子 吸 光 法 や 放 射 性 同 位 体 を 用 い て 測 定 し, 推 定 容 積 ル に よ りカ チ オ ン濃 度 と電 位 の変 動 が ひ き起 こされ , こ か ら, イ オ ン濃 度 の 経 時 変 化 を 追 う こ とが で き る. 動 れ が 神 経 伝 達 や 細 胞 内 情 報 伝 達 に利 用 さ れ る . この よ 植 物 の体 細 胞 と細 菌 の 膜 に は複 数 の 輸 送 系 が 発 現 して う に カ チ オ ン輸 送 系 は 生 物 の 生 命 維 持 に き わ め て 重 要 い るが , 細 菌 の場 合 に は 関 与 す る遺 伝 子 の 全 塩 基 配 列 な 役 割 を 担 っ て い る. が 決 定 され た こ と も あ り, ノ ッ ク ア ウ トの 作 製 が 容 易 しか しな が ら, カ チ オ ン輸 送 系 の 活 性 測 定 は容 易 で で あ る. 生 育 に 必 須 な 遺 伝 子 で あ っ て も, 細 菌 の 場 合 は な い. 動 植 物 細 胞 の 場 合 に は , 動 物 培 養 細 胞 , ア ブ は そ の遺 伝 子 を 発 現 制 御 可 能 な プ ラ ス ミ ドに乗 せ て 細 Tatsunosuke Nakamura, 千 葉 大 学 薬 学 部 (〒263−8522千 葉 市 稲 毛 区 弥 生 町1−33) [Faculty of PharmaceuticalSciences,Chiba University,Yayoi-cho,Chiba263-8522,Japan]E-mail:[email protected] Nobuyuki Uozumi, 名 古 屋 大 学 生 物 分 子 応 答 研 究 セ ン タ ー (〒464−8601名 University,Nagoya464-8601,Japan]E-mail:[email protected] Current 1988 Topics of Cation Transporters in Animal,Plant and Bacteria 古 屋 市 千 種 区 不 老 町 ) [Bioscience Center,Nagoya Ⅰ 動植物と細菌の カチオ ン輸送系の接点 47 菌 に 導 入 す る こ とで 染 色 体 の 遺 伝 子 破 壊 株 が 得 られ る. 動 植 物 と細 菌 の カ チ オ ン輸 送 系 は,複 数 回膜 を貫通 す る ポ リ トピ ッ ク型 膜 蛋 白質 で あ る . 膜 蛋 白 質 の膜 へ の 組 込 み は,動 物,植 物 ,細 菌 な どの 異 な った 種 に共 通 す る性 質 と, そ れ に 関 与 す る相 同遺 伝 子 が 見 い だ され て い る. 実 際 , 注 意 深 く実 験 を行 な い , 運 が よ け れ ば , カ チ オ ン輸 送 系 は 種 Database Center for Life Science Online Service を こえた機能 的発 現 が とらえ られ る.本稿 で は,細 菌 の カ 図1動 物 細 胞 の イ オ ン輸 送 系 の モデ ル イ オ ン輸 送 性 のATPase, さ ま ざ ま な種 類 の チ ャ ネ ル, そ して ,Na+ /H+ア ンチ ポ ー ター が存 在 チ オ ン輸 送 系 研 究 の 現 状 を 述 イ オ ンの 勾配 と べ (図2) , 動 植 物 と細 菌 の カ 細 胞 内 負の 膜 電 位 が 形 成 され , 形 成 さ れ た イ オ ン 勾配 と電 位 を利 用 して, チ ャ ネ ル とア ンチ ポ ー タ ーが イオ ン の通 過 を行 な う. チ ャ ネ ル と ア ン チ ポ ー タ ー を経 由 した イ オ ン の 動 きが , イ オ チ オ ン輸 送 系 の 接 点 を報 告 す す る. ミ トコ ン ド リア で つ くら れ たATPを 消 費 して , イ オ ン輸 送 性ATPaseで ン の 勾配 と電 位 の変 化 をひ き起 こ す . 動物 に は さま ざ ま な イ オ ン 内膜 系が 存 在 し, 次 に示 す細 る. 菌 の膜 系 よ り も複 雑 で あ る . 動 物 細 胞 は ( 細 菌 と比較 して ) 大 き い た め に, 電極 を用 い た実 験 が で き る. 状 1.Na+ の 排 出 に 必 要 な Na+/H+ ア ン チ ポ ー タ ー 細 菌 の 細 胞 内 にNa+ が 蓄 積 され る ことは,細菌 の生 育 に は 不 都 合 で あ る. このNa+ を 細 胞 内 か ら除 く仕 組 み の 最 も 普 遍 的 で 重 要 な 輸 送 系 は, Na+ とH+ を 交 換 す るNa+ / H+ ア ンチ ポ ー タ ーで あ る . 大 腸 菌 を例 に と る と,Na+ /H+ ア ン チ0タ ー 遺 伝 子nhaA が ク ロー ニ ン グ され1) ,続 いて nhaB2) ,chaA3) 遺 伝 子 が 単 離 さ れ た . こ れ ら の遺 伝 子 を 図2細 菌 (お も に 大 腸 菌 ) の イ オ ン 輸 送 系 の モ デ ル ノ ッ ク ア ウ トさ せ た 大 腸 菌 変 細 菌 細胞 膜 に は電 子 伝 達 系 が あ り,H+ (場 合 に よ りNa+ ) を細 胞 外 へ 放 出 し, そ の電 気 的 化 学 的 勾配 (H+駆 動 力 ) を形 成 す る .H+ 駆 動 力 を 利 用 して ,ATPaseでATPが つ くら れ ,Na+ /H+ ア ン チ ポ ー ター がNa+ 排 出 を,K+ 取 込 み系 がK+ 取 込 み を行 な っ てい る . 細 胞 内pH調 節 はK+ / H+ ア ン チ ポ ー タ ー が行 な っ て い る と推 定 さ れ る . 細 胞 に浸 透 圧 ダ ウ ン シ ョッ クが か か った 場 合 に は, 機 械 刺 激 受 容 チ ャ ネ ルMscLが を減 少 させ る. 細 菌 の 細 胞 膜 は1つ 異 株TO114(ΔnhaA, nhaB,ΔchaA) Δ は細 胞 外 に Na+ を 加 え る と生 育 で き な く 働 き, 細胞 内 か らK+ な どの 低 分 子 を 流 出 させ, 細 胞 内 圧 で あ る た め に, も し, 動 植 物 の膜 蛋 白 質 が 機 能 を も っ て 発 現 で きる な らば, そ の 素 反 応 を検 討 す る 新 た な 手 段 と な り う る. な る4) . この よ うな変 異 を補 う 遺 伝 子 と して , 種 々 の 細 菌 か 1989 48 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.13 (1999) らNa+ /H+ア ンチ ポ ー タ ー遺 伝 子 が ク ロー ニ ング され , 役 割 を担 う と考 え られ る ( 未発表) . これ らの結 果 は, カ 海 洋 細 菌Vibrio チ オ ン の 交 換 輸 送 に, 膜 貫 通 領 域 の 酸 性 ア ミ ノ 酸 が カ alginolyticusか ら もnhaA5) ,nhaB6) 遺 伝 子 が 単 離 さ れ た .NhaAとNhaBは ア ミノ酸 配 列 チ オ ン結 合 部 位 と し て働 く こ と を示 唆 して い る . に 相 同 性 が 見 い だ さ れ な い が ,Na+ /H+対 向 輸 送 (antiport) を もつ5,`6) . NhaAが 精 製 さ れ , プ ロ テ オ リ ポ ソー ム に再 構 成 さ 細 胞 内pHを 調 節 す るK+ /H+ア ン チ ポ ー タ ー H+ 濃 度 が す べ て の 酵 素 の 活 性 に直 接 影 響 す る こ とを れ , 人 為 的 なH+ の 勾 配7)に よ り,Na+ 輸 送 が観 測 され 考 えれ ば, 動 植 物 , 細 菌 を問 わ ず細 胞 内pHの た8) . こ の よ う に し てNhaA単 物 の 生 育 に 重 要 な 役 割 を 担 う こ と は 明 らか で あ る . 動 独 で ,H+ と交 換 し て 調節 が生 Na+ を排 出 す る活 性 が あ る こ とが 確 認 され た. 次 に, ど 物 細 胞 の場 合 に は, シグナ ル に 対 応 して細 胞 内pHを の よ う に し て この ア ン チ ポ ー タ ー はNa+ とH+ を 交 換 化 さ せ る イ オ ン 輸 送 系 の 存 在 は知 ら れ て い る が , 緩 衝 して い る の か と い う機構 が 問 題 と な っ た . この 疑 問 に 液 に曝 され た細 胞 の 内 側 のH+ 濃 度 を積 極 的 に維 持 す る 対 して , 筆 者 ら は , 膜 貫 通 領 域 に保 存 さ れ た 酸 性 ア ミ 仕 組 み は明 確 で は な い. ノ酸 がNa+ Database Center for Life Science Online Service 2. とH+ の 結 合 部 位 に な っ て い る とい う仮 説 を立 て た . こ の 仮 説 を検 討 す る た め に は,NhaAの 膜 変 細 菌 は 広 い 範 囲 の細 胞 外H+ 濃 度 で生 育 す る こ とが で きるの で , 細 胞 内pH調 節 の機 購 に関 して, 動 植 物 細 胞 貫 通 領 域 の 予 測 を し な くて は な ら な い . イ オ ン輸 送 系 以 上 に興 味 が もた れ て い る13) . まだ 多 くの疑 問 が 残 され 膜 蛋 白質 は複 数 の膜 貫 通 領 域 を もち , ポ リ トピ ッ ク (マ て い る が , 海 洋 細 菌V.alginolyticusに ル チ ス パ ン ) 型 膜 蛋 白質 とよ ば れ , 結 晶 化 は 困 難 で 成 題 に対 す る答 え が 最 も明 らか に示 され て い る. こ の 細 功 例 は ま だ 少 な い . そ の た め ,X線 菌 を400mM程 解析 や高分 解能 電 度 のNa+ お いて , この 問 を 含 む 溶 液 に 懸 濁 させ る と, 子 顕 微 鏡 に よ る構 造 解 析 を待 た ず , ア ミノ 酸 配 列 か ら, 酸 性 条 件 で は 細 胞 内pHも ど の部 分 で 何 回膜 を横 切 っ て い る か と い う構 造 (topo− い14) . 細 胞 外 に数mM程 logy) モ デ ル を , そ の ア ミノ 酸 近 傍 の 疎 水 性 親 水 性 度 り込 み ,K+ 流 入 が 細 胞 内 負 の 膜 電 位 ( の 絶 対 値 )を 減 (hydropathy) 少 さ せ , 電 子 伝 達 系 に よ るH+ 排 出 を ひ き起 こす14・15) . NhaAの か ら 推 定 す る こ とが 行 な わ れ て い る. 場 合 に は,12回 の膜 貫 通 領 域 の存 在 を推 定 し, 酸 性 でpH調 節 はされ な 度 のK+ を加 え る と,K+ を取 した が っ て, 細 胞 内 の ア ル カ リ化 に は,K+ 取 込 み と電 推 定 した 膜 貫 通 領 域 の な か に保 存 され た 酸 性 ア ミノ 酸 子 伝 達 系 の 役 割 が 大 きい. 細 胞 外pHが を部 位 特 異 的 に変 異 導 入 を行 な い, そのア ミノ酸 がNa+ で は, この 細 菌 の細 胞 内H+ 濃 度 は よ り酸 性 に保 た れ て の 排 出 に必 要 で あ る こ と を示 した9) . い くつ か 立 て られ い る15,16) . 細 胞 内 酸 性 化 は ,NhaAの たNhaAの Na+ /H+ア ンチ ポー タ ーの 役 割 が 重 要 で あ るが, この 系 トポ ロ ジ ー モ デ ル の な か で12回 膜 貫 通モデ ア ル カ リの条 件 よ う に起 電 的 な ル が 正 し い こ とが , 細 菌 の 膜 蛋 白 質 トポ ロ ジー を決 め だ けで は細 胞 内pHが7.7∼7.8に る 方 法 と し て 広 く用 い ら れ て い るphoA融 る こ との 説 明 が で き な い . ア ル カ リ条 件 で , 外 液 に膜 れ10) , 次 に2次 合 法 で示 さ 元 結 晶 解 析 で 確 認 さ れ た11) . 厳 密 に調 節 さ れ て い 透 過 性 ア ミ ン を加 え る と, ア ミ ンが 中 性 の 形 で 細 胞 膜 一般 的 に , 同 一 の 膜 に は , 同 じ イ オ ン を輸 送 す る複 を透 過 し, 細 胞 内 の ほ うが 濃 度 が 高 いH+ を消 費 し, プ 数 の イ オ ン輸 送 系 が 存 在 す る .Na+ 排 出 を行 な う細 菌 ラ ス に 荷 電 した ア ミン とな り蓄 積 され る17) . この よ うに , の2種 類 の ア ンチ ポ ー タ ー ,NhaAとNhaBの 場合 に 膜 透 過 性 ア ミン添 加 に よ り, 細 胞 内 酸 性 のH+ 勾 配 を人 は , ア ミ ノ酸 配 列 に相 同 性 が み つ け ら れ な い よ う に構 為 的 に な くす こ とが で き る. ア ミ ン添 加 後 , 細 胞 内 か 造 も異 な っ て い る12) .NhaAは らK+ が 流 出 し, そ れ に伴 い細 胞 内 のH+ が 増 加 す る . 偶 数 回 ,NhaBは 回 の 膜 貫 通 領 域 を も つ .NhaAとNhaBは 奇数 ,Na+ と K+ 流 出 とH+ 増 加 は, 細 胞 内pHが7.7∼7.8に なるま H+ の 交 換 の比 率 が 異 な るが , 両 者 と もH+ との 交 換 で で 続 き , 止 ま る . この 結 果 は , 細 胞 内pHを Na+ を 排 出 す る 輸 送 系 で あ る.NhaBの K+/H+ア ンチ ポ ー タ ー が 存 在 す る と仮 定 す る と最 も 自 NhaBの 場 合 に も, 膜 貫 通 領 域 に保 存 され た 酸 性 ア ミ ノ 酸 が 存 在 然 に 説 明 で き る15) .V.alginolyticusと す る. 部 位 特 異 的 変 異 導 入 を行 な い , この 部 位 が カ チ 細菌 オ ンの 輸 送 に 必 須 で あ る こ と を確 認 した .NhaBで 粒 細 菌Rhizobium も, 膜 貫 通 領 域 の 酸 性 ア ミ ノ酸 が カ チ オ ン の輸 送 に重 要 な 1990 調節する 同 じ現 象 が 他 の ( 大 腸 菌17) ,Nitrosomonas/Nitrosobactor18) ,根 meliloti19) )ばか りで は な く, 緑 藻20) に も観 測 され , 広 く生 物 界 で 同 じ系 が細 胞 内pH調 節に 49 動植物と細菌の カチオ ン輸送系の接点 働 い て い る可 能 性 が あ る . 細 胞 内pHを (fkuAB) 調 節 す るK+ /H+ア ン チ ポ ー タ ー の実 体 は, そ の 変 異 株 も遺 伝 子 も取 られ て い な か っ た の で 長 込 み 系 で あ る と予 想 して い るが , まだ 確 認 して い な い . い 間 不 明 で あ っ た . 最 近 , 根 粒 細 菌R.melilotiか Fku系 ら候 以 外 に , この 菌 は大 腸 菌 と同 じTrk系 を も つ が27・29) ,Ktr系 (trkAH 補 遺 伝 子 を取 る こ とが で きた19) . 根 粒 を形 成 で きないR. とsupD) melilotiの 変 異 株 の な か に , 細 胞 外 で は 生 育 で き るが植 大 腸 菌 にな く, 新 た なK+ 取 込 み 系 で あ る30) .Ktr系 物 細 胞 内 で は生 育 で きな い 株 が あ っ た . この 株 は, ア 構 成 す るKtrBは ル カ リ環 境 下 でK+ が お も な外 部 カチ オ ン で あ る と生 育 あ る .KtrBは す る こ とが で き な い の で ,pH調 Na+ 一ATPaseを 節 (2旦adaptation) に 関 与 す る遺 伝 子 に 変 異 が あ る と考 え,pha-と た .pha一 を 補 うDNA断 名付け 片 を選 択 し, 塩 基 配 列 を決 定 し,7種 類 の 膜 蛋 白 質 の 遺 伝 情 報 (phaABCDEFG) Database Center for Life Science Online Service と相 同 性 が あ る遺 伝 子 が 大 腸 菌 の 染 色 体 に も み られ る28) . 筆 者 ら は, これ を 大 腸 菌 で 未 同 定 のK+ 取 を の 遺 伝 子 (ktyAB) は 膜 蛋 白 質 で ,KtrAは , 腸 内 連 鎖 球 菌Enterococcus 構 成 す るNtpオ を 親水性 蛋 白質 で hiraeの ペ ロンの下 流 にあ る NtpJ31) と相 同 性 が あ る.ntpJは ,E.hiraeのNa+ 輸 送 蛋 白 質 の 遺 伝 子 で は な くて ,K+ 取 込 み系 の一 部 を構 成 す る遺 伝 子 で あ るの で ,ktrBと 呼 び 方 を変 更 す る こ み つ けた .pha一 変 異 株 は, ア ル カ リ条 件 で膜 透 過 性 ア とを筆 者 ら は提 案 した30).全 塩 基 配 列 が 報 告 され て い る ミ ン を加 え て も, 細 胞 内 か らK+ の流 出 が起 きな い. こ 細 菌 の う ち約2/3の 種 類 で,ktyAとktrBが の こ と は,Phaシ か っ た . また , どち らか1つ ス テ ム (PhaABCDEFG) が ,K+ /H+ ア ンチ ポ ー タ ー 活 性 を もつ こ とを示 唆 してい る .pha遺 た が ってKtrAとKtrBは2つ 伝 子 と相 同 性 が あ る 遺 伝 子 が 黄 色 ブ ド ウ 球 菌Sta- 構 成 して い る と考 え られ る . phylococcus 節 の 主 要 戦 略 は ,K+ 取 込 み で1つ のK+ 取 込 み 系 を K+ 取 込 み 系 の 遺 伝 子 は 明 らか とな った が, まだ,K+ aureus21) と, 枯 草 菌22・23) か ら も見 い だ され た . 細 菌 の 細 胞 内pH調 同 時 にみ つ だ け もつ 細 菌 は な い . し 取 込 み の 機 構 は 不 明 で あ る. 最 近 ,K+ 取 込 み 系 の膜 蛋 系 , 電 子 伝 達 系 ,Na+ /H+ア ン チ ポ ー タ ー の助 け を 得 白 質TrkH/KtrB, て, 最 終 的 に は細 胞 内pHで 系 に も, 細 菌 のK+ チ ャネ ル (KcsA)32)のK+ 選 択 透 過 活 性 が 制 御 され たK+ /H+ お よび 酵 母 や高 等 植 物 のK+ 取 込 み ア ン チ ポ ー タ ー で な さ れ る と推 定 して い る. 孔33)と類 似 し た 構 造 が 見 い だ され た34) . これ に 関 して 3. KtrB選 は ,Ⅱ −1項 で も う少 し詳 し く説 明 す る. 推 定 さ れ る 細 胞 内 膨 圧 上 昇 に 必 須 なK+ の 取 込 み 系 細 菌 のK+ 取 込 み 系 の 研 究 は ,Epsteinに よ り大 腸 菌 で 始 め られ た24) . 彼 は多 くのK+ 取 込 み 系 の 変 異 株 を単 離 し, 染 色 体 上 に8カ BoothとBakkerが 所 の 遺 伝 子 座 を決 め た . 次 に , す る と, 予 想 どお り活 性 変 異 が み られ た35) .細 菌のすべ て のK+ チ ャ ネ ル のC末 端 と,K+ 取 込 み 系 の 親 水 性 サ ブ ユニ ッ トKtrA/TrkA30・36) に 共 通 す る ア ミノ酸 配 列 が 所 が どの よ 保 存 さ れ て い て34) , さ らに, 動 物 の 電 位 依 存K+ チ ャネ う な遺 伝 情 報 を もっ て い る の か を明 らか に した25) .大腸 ル の 親 水 性 蛋 白質 ( β サ ブ ユ ニ ッ ト)37) との 間 に も関 連 菌 はKdp系 とい う3種 類 のK+ 取 込 が 示 唆 さ れ た . この よ うに,K+ 輸 送 を め ぐる細 菌 と動 は, 最 も親 和 性 が 高 いK+ の取 込 み 植 物 の チ ャ ネ ル と トラ ン ス ポ ー タ ー の構 造 と機 能 の 相 ,Kup系 み 系 を もつ.Kdp系 系 で あ り,KdpABCと され るPタ 加 わ り, そ れ ら の8カ 択 透 過 孔 の ア ミノ酸 に部 位 特 異 的 に変 位 を導 入 ,Trk系 い う3種 類 の膜 蛋 白質 か ら構 成 イ プ のATPaseで あ る.Kup系 関 に注 意 が 注 が れ て い る. は, 推 定12 回 の膜 貫 通 領 域 を もつ 膜 蛋 白 質 (Kup)の ひ とつ で ,K+ 4. 輸 送 系 を構 成 す る.Trk系 ル は,TrkH( また はTrkG) と い う膜 蛋 白 質 と, 親 水 性 蛋 白質TrkAとSapDか な るK+輸 浸 透 圧 ダ ウ ン シ ョ ッ ク に 働 く機 械 刺 激 受 容 チ ャ ネ ら 機 械 刺 激 受 容 チ ャ ネ ル と は , 膜 に か か る膨 圧 や 引 張 送 系 で あ る . この よ う に3種 類 のK+ 取 込 み り力 に よ り制 御 さ れ る チ ャ ネ ル の 総 称 で あ る. 細 菌 ば か りで は な く動 物 細 胞 で も, 電 極 を 用 い た 研 究 か ら そ 系 は構 成 蛋 白質 を ま っ た く異 に す る. K+ 取 込 み 系 の 研 究 は 海 洋 細 菌V.alginolyticusで も の よ うな チ ャ ネ ル が 存 在 す る こ とが わ か っ て い る . こ 進 め られ て い る. こ の 菌 か ら3種 類 のK+ 取 込 み系 の遺 の 分 類 に入 る最 初 の チ ャ ネ ル 遺 伝 子mscL(mechano− 伝 子 sensitive channel (fkuAB,trkAHsupD,ktrAB) が 単 離 さ れ た26-30) . そ の うち の 最 も親 和 性 が低 いFku系 の遺 伝 子 large conductance) が ,Kungの グ ル ー プ に よ っ て 大 腸 菌 か ら取 られ た38) .MscLのX線 1991 Ⅱ 50 蛋 白質 核 酸 酵 素 表1細 Vol.44 No.13 (1999) 菌 と動 植 物 で相 同性 が あ る チ ャネ ル と トラン スポ ー タ ー 細 菌 のチ ャ ネ ル と トラ ンス ポ ー タ ー と して そ の 役 割 が 言 及 され て い る場 合 は , 文 献43∼47を 性 をGenetyx-Mac(Software Development) 結 晶 構 造 解 析 も, 昨 年 末 のScience誌 Database Center for Life Science Online Service 引 用 した . 推 定 され るア ミノ酸 配 列 の相 同 で 比較 し, 全 体 で 何 % の ア ミノ 酸 が 一 致 す る か を表 示 した . に 報 告 さ れ た39) . 配 列 が 高 度 に保 存 され て い る特 徴 が あ る. 酵 母 , 動 物 , 細 菌 細 胞 が 低 張 液 に 曝 さ れ て , 細 胞 内 に水 が 流 入 し細 植 物 に は この ほか に ,2回 ,4回 ,8回 の 膜 貫 通 型 が 見 胞 膜 に膨 圧 が か か る とMscLが 開 き, 細 胞 内 の物 質 を い だ さ れ て い る が , す べ てK+ 透 過 部 位 の 孔 の ア ミノ酸 細 胞 外 に 出 せ る よ う に す る こ とで , 細 胞 が 壊 れ る こ と 配 列 は保 存 さ れ て お り, ス ー パ ー フ ァ ミ リー を 形 成 し を防 ぐ生 理 的 役 割 がMscLに て い る. 細 菌 のK+ チ ャネ ルKcsAは あ る と考 え られ て い た. し か しなが ら, 第 二 の機 械 刺 激 受 容 チ ャネルmscS遺 の た め か ,mscLを 欠 失 さ せ たamscL大 伝子 腸 菌 は浸 透 圧 シ ョ ック に対 して 弱 くな らなか った40) .MscLの 生 理的 流 チ ャ ネ ル の ホ モ ロ グで32) ,2回 の膜 貫 通 領 域 と, その 間 に挟 まれ たPル の チ ャ ネ ル のX線 ー プ か らな る (M1-P-M2) に よ る3次 導 入す る こ れ た33) .KcsA4個 とで 初 め て 示 さ れ た41).V.alginolyticusは , 低張 液 に 過 孔 の 実 体 も明 ら か に さ れ た . 曝 さ れ る と溶 菌 しや す い .mscLは この 菌 を浸 透 圧 ダ ウ ン シ ョ ック に対 して抵 抗 性 に した . 最 近 ,mscS遺 もク ロ ーニ ン グ され42) ,MscLとMscSは 伝子 ア ミノ酸 配 列 に相 同 性 が 見 い だ さ れ な い こ とが 明 ら か と な っ た . 以 上 , 筆 者 らの 研 究 を 中 心 に し て , 細 菌 の カ チ オ ン で1つ . 昨年 , こ 元構造 解析 結果 が報告 さ 伝 子 をV.alginolyticusに 役 割 は,mscL遺 , 動 物 の 内 向 き整 の チ ャ ネ ル を構 成 し,K+ 透 B.Trk/Ktr K+ トラ ン ス ポ ー タ ーKtrABの トで あ るKtrBは で4回 KtrBと 膜 蛋 白質 サ ブ ユ ニ ッ ,KcsA様M1−P−M2構 造 が分 子 内 くり返 され た チ ャネ ル 構 造 を とる と推 定 された34) . 同 様 な 構 造 を, 大 腸 菌TrkH, 輸 送 系 の現 状 を 解 説 した . 次 に , 動 植 物 の カ チ オ ン輸 み 系Trk1,Trk2, 送 系 と の 関 連 と今 後 の 方 向 を述 べ る . も見 い だ せ る34) .Trk/Ktr系 酵 母 のK+ 取 込 高 等 植 物 のK+ 取 込 み 系HKT1に のK+ トラ ンス ポ ー ター に は チ ャ ネ ル 構 造 が 存 在 し, 基 本 的 な 構 造 に 類 似 点 が あ る こ とが わ か り, チ ャ ネ ル と トラ ン ス ポ ー タ ー の 関 係 と し て 興 味 あ る今 後 の課 題 とい え る.KtrBがK+ 1. 細 菌 と 動 植 物 の カ チ オ ン 輸 送 系 の 相 同 性 動 植 物 と細 菌 の 数 多 くの チ ャ ネ ル と トラ ン ス ポ ー タ 取込 み ト ラ ン ス ポ ー タ ー と し て 機 能 す る に は親 水 性 サ ブ ユ ニ ッ トKtrAが 必 要 で あ る30) . 動 物 の 電 位 依 存 性K+ チ ー の 間 に, 種 を こ え て ア ミ ノ酸 配 列 上 に相 同 性 が 見 い ャ ネ ル に も膜 蛋 白 質 α サ ブユ ニ ッ トに 親 水 性 の β サ ブ だ せ る. 例 を表1に ユ ニ ッ トが 結 合 し て い る37) . しか し, 酵 母 (Trk1,2) 示 す . 以 下 に,K+ 輸 送 体 に焦 点 を 絞 って説 明す る. や 植 物 (HKT1) のK+ A.Kch 質 が 必 要 で あ る とい う報 告 は され て い な い. また ,Kdp 細 菌 のKch45) は, 動 物 の 神 経 , 心 臓 細 胞 で 活 発 に 機 系 とKupの トラ ン ス ポ ー タ ー に 親 水 性 蛋 白 な か に は,Trk/Ktr系 に み られ るK+ 透 過 能 し て お り, 最 も機 能 解 析 が 進 ん で い るShaker型K+ 孔 構 造 が まだ 見 っ か っ て い ない (Guy:私 信 ).Trk/Ktr チ ャ ネ ル (6回膜 貫 通 型 )の ホ モ ロ グ で あ る . 植 物 で も 系 の 構 造 が 推 定 さ れ た こ とで , こ の トラ ン ス ポ ー タ ー す で に 数 種 類 ホ モ ロ グ 遺 伝 子 が ク ロ ー ン化 さ れ て い る. のK+ 輸 送 機 構 の解 明 が 進 む と期 待 で き る. K+ チ ャネ ル は種 を こ え てK+ 透 過 部 位 の 孔 の ア ミノ 酸 1992 動植物 と細菌のカチオ ン輸送系の接点 C.Kup 51 こ の こ と は, も し, マ ル チ ス パ ン型 膜 蛋 白質 が 細 菌 膜 大 腸 菌 のKupの ホ モ ロ グが 糸 状 菌48}や 高 等 植 物49,50) へ 正 規 の 状 態 で組 み 込 まれ る こ とが あ れ ば, 動 植 物 の か ら 見 い だ さ れ て い る. これ らの トラ ン ス ポ ー タ ー は イ オ ン輸 送 系 が 細 菌 で 機 能 を も っ て 発 現 す る 可 能 性 を 細 胞 外 か ら内 へK+ を輸 送 す る . さ らに , こ の ホモ ログ 示 唆 し て い る . カ チ オ ン トラ ン ス ポ ー タ ー に つ い て は, の 遺 伝 子 が ヒ トの 遺 伝 子 に も見 い だ せ る と報 告 され て 大 腸 菌 に お け る機 能 発 現 の 報 告 は1998年 い る50) . た . 筆 者 らは , 植 物 のShaker型K+ 以前 はなかっ チ ャネル (KAT1, AKT2)51,56) が 大 腸 菌 のK+ 取 込 み 変 異 を相 補 す る こ と 2. 大 腸 菌 に お け る 植 物K+ トラ ン スポ ー ター の活 性 発 現 と ス ク リー ニ ン グ 系 の 開 発 原 核 細 胞 由 来 の 膜 蛋 白質 を活 性 発 現 させ る の な ら大 Database Center for Life Science Online Service を 見 いだ した57) .Ⅱ −1項 に 記 した とお り, 大 腸 菌 の3種 類 の 主 要 なK+ 取 込 み 系 (Kdp,Kup,Trk) K+ トラ ン ス ポ ー タ ーKAT1やAKT2と と植 物 の は相 同 性 は な 腸 菌 , 真 核 細 胞 由 来 の膜 蛋 白質 を活 性 発 現 さ せ る の な く, 構 造 の 点 か ら は ま っ た く別 の イ オ ン トラ ン ス ポ ー ら酵 母 また は 動 物 細 胞 と い う の が い ま まで の 常 識 で あ タ ー で あ る. 大 腸 菌 の こ の3種 る . な か で も, 動 植 物 細 胞 の カ チ オ ン トラ ン ス ポ ー タ の変 異 株 は低 い濃 度 のK+ 培 地 で は増 殖 で きな い . とこ ーの機能 解析 には ,突 然変 異体 の作 製 が可能 でバ ック ろ が ,KAT1,AKT2を 類 の トラ ンス ポ ー タ ー 発 現 させ る と, 低 いK+ 濃 度 の グ ラ ン ド (内 在 性 ) 活 性 の低 い発 現 系 が 構 築 可 能 な 酵 培 地 で増 殖 した (図3) . ま た, 植 物 のAtKupト 母 は 有 効 な遺 伝 子 発 現 系 で あ る . 実 際 にK+ 取 込 み 系 が ポ ー タ ー に つ い て も大 腸 菌 のKup変 欠 損 した 酵 母 の 突 然 変 異 体 を用 いて , 植 物 のK+ トラ ン 遺伝 子 変 異 株 の 活 性 を相 補 した49) . 植 物 のK+ トラ ンス ポー タ ー が 細 菌 で も機 能 発 現 す る こ とは 正 規 の コ ン フ ォ メ ー の 機 能 解 析 も行 なわ シ ョン を大 腸 菌 膜 で 保 持 して い る こ と を強 く示 唆 して れ た.動 物細胞 を用 いて行 なわ れ る電気 生理 学測定 を い る. そ こで , そ れ ま で 実 験 的 に証 明 され て い な か っ 補 完 す る 発 現 系 と し て, ①1次 た ,Shaker型K+ ス ポ ー タ ー のKATI51) が 単 離 され,KAT54) ,AKTI52) やHKT153) やHKT153) ス ク リーニ ング系 とし ラ ンス 異 を 含 む3種 類 の チ ャ ネ ル の トポ ロ ジ ー を大 腸 菌 の発 て便 利 , ② 長 期 にお け る生 理 条件 で の細胞 への影 響 を調 べ ら れ る, 点 で 有 効 で あ る. 大 腸 菌 に お け る真 核 細 胞 由 来 の膜 蛋 白 質 の 活 性 発 現 に つ い て は成 功 例 は 限 られ て い た . こ れ は, 大 腸 菌 と真 核 生 物 の 膜組 成,膜 へ の輸送 機構 ,折 りた た み機 構 な ど が 異 な る こ とや,大腸 菌 での糖 鎖修 飾 な ど の機 能 欠 損 が 予 想 さ れ , 実 際 の検 討 が 多 くな され な か っ た た め と想 像 され る . しか し 1993年 , 種 々 の抗 が ん 剤 に対 し て耐 性 を ひ き起 こす 機 能 を も っ たMDR1/P糖 蛋 白質 が 図3植 糖 鎖非 修飾 で機 能 を もって大 腸 菌 で 発 現 し た55) . 前 述 した よ う に, 細 菌 と動 物K+ チ ャ ネ ル とK+ トラ ン ス ポ ー タ ー は 細 菌 細 胞 膜 に 機 能 を も っ て 発 現 す る 大 腸 菌 に は2種 類 の膜 系 ( 外 膜 と 内膜 )が あ る. 外 膜 に はK+ が 自由 に通 過 で き る孔 が あ る. 内 膜 は カ チ オ ン な ど の透 過 の 障 壁 に な る . 内 膜 に は さ ま ざ ま な 物 質 を透 過 させ る トラ ン ス ポ ー タ ー が 存 在 し,K+ 透 過 の た め に はTrk,Kdp,Kup系 が あ る. こ れ ら,3種 のK+ 輸 送 系遺 伝 子 に 変 異 を導 入 し た変 異 株 は, 外 部 に100mMのNaCIを 植 物 の イ オ ン輸 送 系 の 間 に は 基 本 構 造 に相 同性 が み える. 含 む 培 地 で は30mMのK+ きな い . 植 物 のK+ トラ ンス ポ ー タ ー 遺伝 子 を導 入 す る と,10mNのK+ がな い と生 育 で 濃 度 で も生 育 で きる よ うに なる .植 物 のK+ トラ ンスポ ー タ ーが 細 菌 細 胞 膜 に正 しく組 み込 まれ てい る と示 唆 され る49,57). 1993 52 蛋 白質 核 酸 酵 素 Vol.44 No.13 (1999) 現 系 で 決 定 した . 疎 水 性 プ ロ ッ トか らは8カ 所 の膜 貫 通 推 定 部 位 が 予 想 され た が , 実 際 は6回 膜 貫 通 で , い ま まで 推 定 さ れ て い た トポ ロ ジ ー で あ る こ と を確 認 し 10) 11) た57) . 真 核 細 胞 由 来 の 膜 蛋 白 質 の構 造 解 析 に も原 核 細 胞 の 大 腸 菌 を 用 い る こ とが 可 能 で あ る こ とが 示 され た . 12) おわ りに 13) 14) 細 菌 の イ オ ン輸 送 系 と動 植 物 の イ オ ン輸 送 系 の 間 に は , 機 能 だ け で な く構 造 的 に も共 通 性 が 見 い 15) だ さ れ る. 大 腸 菌 に お け る 動 植 物 の カ チ オ ン トラ ンス ポ ー タ ー の機 能 的 相 補 が報 告 さ れ た . これ らの 結 果 は, 16) 以 下 の よ うな 期 待 と課 題 を 生 み 出 し た . 17) Database Center for Life Science Online Service ① 動 植 物 の イ オ ン輸 送 系 の 構 造 と機 能 解 析 系 , 大 量 発 現 系 と して , 細 菌 を 用 い る. ② 植 物 の 生 育 環 境 適 応 域 を広 げ る ( 耐 塩 ・耐 乾 植 物 18) 191 を創 造 す る ) 目 的 で , 細 菌 の イ オ ン輸 送 系 を植 物 に 導 入 す る. 20) ③ 動 物 の マ ル チ ス パ ン型 膜 蛋 白 質 の小 胞 体 膜 へ の 組 21) 込 み 機 構 解 明 の た め に, モ デ ル 系 と して 細 菌 の マ ル チ ス パ ン型 膜 蛋 白 質 の細 胞 膜 へ の組 込 み機 構 を研 究 す る. こ の3種 の テ ー マ は, そ れ ぞ れ か な り重 要 な 内 容 を 含 ん で い る . 今 後 , 種 を こ え た カ チ オ ン トラ ン ス ポ ー タ ー の 研 究 成 果 が 導 き 出 さ れ る こ とを期 待 し て い る . 22) 23) 24) 筆者 らの研究 をサポー トして くれ た多 くの研究者 に, ここに感 謝 の意 を表します. 文 献 (文献 番 号 を 太 字 に した もの は と く に重 要 で あ る こ とを示 す ) 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9] 1994 Karpel, R., Olami, Y., Taglicht, D., Schuldiner, S., Padan, E. : J. Biol. Chem., 263,10408-10414 (1988) Pinner, E., Padan, E., Schuldiner, S.: J. Biol. Chem., 267, 11064-11068 (1992) Ivey, D. M., Guffanti, A. A., Zemsky, J., Pinner, E., Karpel, R., Padan, E., Schuldiner, S., Krulwich, T. A. : J. Biol. Chem., 268, 11296-11303 (1993) Ohyama, T., Igarashi, K., Kobayashi, H.: J. Bacteriol., 176, 4311-4315 (1994) Nakamura, T., Komano, Y., Itaya, E., Tsukamoto, K., Tsuchiya, T., Unemoto, T. : Biochim. Biophys. Acta, 1190, 465-468 (1994) Nakamura, T., Enomoto, H., Unemoto, T.: Biochim. Biophys. Acta, 1275, 157-160 (1996) Nakamura, T., Hsu, C., Rosen, B. P.: J. Biol. Chem., 261, 678-683 (1986) Taglicht, D., Padan, E., Schuldiner, S.: J. Biol. Chem., 266, 11289-11294 (1991) Nakamura, T., Komano, Y., Unemoto, T.: Bio- 25) 26) 27) 28) 29) 301 31) 32) 33) chim. Biophys. Acta, 1230, 170-176 (1995) Rothman, A., Padan, E., Schuldiner, S.: J. Biol. Chem., 271, 32288-32292 (1996) Williams, K. A., Kaufer, U. G., Padan, E., Schuldiner, S., Kuhlbrandt, W. : EMBO J., 18, 35583563 (1999) Enomoto, H., Unemoto, T., Nishibuchi, M., Padan, E., Nakamura, T. : Biochim. Biophys. Acta, 1370, 77-86 (1998) Booth, I. R.: Microbiol. Rev., 49, 359-378 (1985) Tokuda, H., Nakamura, T., Unemoto, T.: Biochemistry, 20, 4198-4203 (1981) Nakamura, T., Tokuda, H., Unemoto, T.: Biochim. Biophys. Acta, 776, 330-336 (1984) Nakamura, T., Kawasaki, S., Unemoto, T.: J. Gen. Microbiol., 138, 1271-1276 (1992) Nakamura, T., Tokuda, H., Unemoto, T. : Biochim. Biophys. Acta, 692, 386-396 (1982) Kumar, S., Nicholas, D. J. D. : Biochim. Biophys. Acta, 765, 268-274 (1984) Putnoky, P., Kereszt, A., Nakamura, T., Endre, G., Grosskopf, E., Kiss, P., Kondorosi, A.: Mol. Microbiol., 28, 1091-1101 (1998) Tromballa, H.-W.: Biochim. Biophys. Acta, 904, 216-226 (1987) Hiramatsu, T., Kodama, K., Kuroda, T., Mizushima, T., Tsuchiya, T.: J. Bacteriol., 180, 66426648 (1998) Kosono, S., Morotomi, S., Kitada, M., Kudo, T. Biochim. Biophys. Acta, 1409, 171-175 (1999) Ito, M., Guffanti, A. A., Oudega, B., Krulwich, T. A. : J. Bacteriol., 181, 2394-2402 (1999) Rhoads, D. B., Waters, F. B., Epstein, W.: J. Gen. Physiol., 67, 325-341 (1976) Stumpe, S., Schlosser, A., Schleyer, M., Bakker, E. P.: in Handbook of Biological Physics (ed. Konings, W. N., Kaback, H. R., Lolkema, J. S.), Vol. 2, pp. 473-500, Elsevier Science B. V., Amsterdam (1996) Nakamura, T., Suzuki, F., Abe, M., Matsuba, Y., Unemoto, T. : Microbiology, 140,1781-1785 (1994) Nakamura, T., Matsuba, Y., Yamamuro, N., Booth, I. R., Unemoto, T. : Biochim. Biophys. Acta, 1219, 701-705 (1994) Nakamura, T., Katou, Y., Shimizu, Y., Matsuba, Y., Unemoto, T. : Biochim. Biophys. Acta, 1277, 201-208 (1996) Nakamura, T., Yamamuro, N., Stumpe, S., Unemoto, T., Bakker, E. P. : Microbiology, 144, 22812289 (1998) Nakamura, T., Yuda, R., Unemoto, T., Bakker, E. P. : J. Bacteriol., 180, 3491-3494 (1998) Murata, T., Takase, K., Yamato, I., Igarashi, K., Kakinuma. Y.: J. Biol. Chem., 271, 10042-10047 (1996) Schrempf, H., Schmidt, O., Kummerlen, R., Hinnah, S., Muller, D., Betzler, M., Steinkamp, T., Wagner, R. : EMBO J., 14, 5170-5178 (1995) Doyle, D. A., Cabral, J. M., Pfuetzner, R. A., Kuo, 53 動植 物と細菌の カチオ ン輸送系の接点 34] 35) 36) 37) 38) 39) 40) Database Center for Life Science Online Service 41) 42) 43) 44) 45) 46) 47) 48) 49] 50) A., Gulbis, J. M., Cohen, S. L., Chait, B. T., MacKinnon, R. : Science, 280, 69-77 (1998) Durell, S. R., Hao, Y., Nakamura, T., Bakker, E. P., Guy, H. R. : Biophys. J., 77, 775-788 (1999) Tholema, N., Bakker, E. P., Suzuki, A., Nakamura, T. : FEBS Lett., 450, 217-220 (1999) Schlosser, A., Hamann, A., Bossemeyer, D., Schneider, E., Bakker, E. P. : Mol. Microbiol., 9, 533-543 (1993) Gulbis, J. M., Mann, S., MacKinnon, R.: Cell, 97, 943-952 (1999) Sukharev, S. I., Blount, P., Martinac, B., Blattner, F. R., Kung, C. : Nature, 368, 265-268 (1994) Chang, G., Spencer, R. H., Lee, A. T., Barclay, M. T., Rees, D. C. : Science, 282, 2220-2226 (1998) Sukharev, S. I., Blount, P., Martinac, B., Kung, C.: Annu. Rev. Physiol., 59, 633-657 (1997) Nakamaru, Y., Takahashi, Y., Unemoto, T., Nakamura, T. : FEBS Lett., 144,170-172 (1999) Levina, N., Totemeyer, S., Stokes, N. R., Louis, P., Jones, M. A., Booth, I. R. : EMBO J., 18,17301737 (1999) Calamita, G., Bishai, W. R., Preston, G. M., Guggino, W. B., Agre, P.: J. Biol. Chem., 270, 2906329066 (1995) Weissenborn, D. L., Wittekindt, N., Larson, T. J.: J. Biol. Chem., 267, 6122-6131 (1992) Milkman, R. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 3510-3514 (1994) Baker, K. E., Ditullio, K. P., Neuhard, J., Kelln, R. A. : J. Bacteriol., 178, 7099-7105 (1996) Wallace, B., Yang, Y., Hong, J., Lum, D. : J. Bacteriol., 172, 3214-3220 (1990) Banuelos, J. A., Klein, R. D., Alexander, S. J., Rodriguez-Navarro, A. : EMBO J., 14. 3021-3027 (1995) Kim, E. J., Kwak, J. M., Uozumi, N., Schroeder, J. I.: Plant Cell, 10, 51-62 (1998) Santa-Maria, G. E., Rubio, F., Dubcovsky, J., Rodriguez-Navarro, A. : Plant Cell, 9, 2281-2289 (1997) Anderson, J. A., Huprikar, S. S., Kochian, L. V., Lucas, W. J., Gaber. R. F. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 89, 3736-3740 (1992) Sentenac, H., Bonneaud, N., Minet, M., Lacroute, F., Salmon, J. M., Gaymard, F., Grignon, C. : Science, 256, 663-665 (1992) Rubio, F., Gassmann, W., Schroeder, J. I.: Science, 270, 1660-1663 (1996) Uozumi, N., Gassmann, W., Cao. Y., Schroeder, J. I.: J. Biol. Chem., 270, 24276-24281 (1995) Bibi, E., Gros, P., Kaback, H. R. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 9209-9213 (1993) Cao. Y., Ward, J. M., Kelly, W. B., Ichida, A. M., Gaber, R. F., Anderson, J. A., Uozumi, N., Schroeder, J. I., Crawford. N. M. : Plant Physiol., 109, 1093-1106 (1995) Uozumi, N., Nakamura, T., Schroeder, J. I., Muto, S. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 9773-9778 (1998) 51) 52) 53) 54] 55] 56) 57] 中村 辰 之 介 略 歴 :1975年 東 京 大 学薬 学 部 修 了 . 大学 院 を経 て,1978 年 千 葉 大 学 生 物 活 性 研 究 所 助 手 .1985∼1986年 カ で ボ ス ドク.1987年 アメリ 千 葉 大 学 薬 学部 助 手. 魚住 信 之 略 歴 :1986年 1989年 名 古 屋 大 学 農 学 部 卒 業 . 大 学 院 を 経 て, 名 古 屋 大 学 工 学 部 助 手 .1993∼1994年 で ボ ス ドク .1995年 ア メ リカ 名古 屋 大 学 生物 分 子 応答 セン ター助 教授 . 両者 に共 通 す る研 究 テー マ :カチ オ ン輸送 系の役 割 と輸 送 機 構 の解 明 . 関 心 事 :種 を こ えた カチ オ ン輸 送膜 蛋 白質 の構 造 と膜 へ の 組 込 み機 構 . 大 阪 府 立母 子 保 健 総 合 医療 セ ン タ ー研 究 所 免 疫 部 門 ボ ス ドク ・流 動 研 究 員 ・大 学 院 生 若 干 名 研 究 内容 :ケ モ カ イ ン と造 血 , 免疫 系 形成 / ケモ カ イ ン と血 管 形成 / ケ モ カ イ ン に よる細 胞 内 シ グナ ル伝 達 / 発生 , 免 疫 系 に お け る新 しい ケ モ カイ ンの機 能/ ほか 参 考文 献 :Nature,382,635(1996) ;Nature,393,591 (1998);PNAS,96,5663(1999) ;実 験 医 学,17,727, 1082(1999) 応 募資 格 :研 究 に意 欲 を もつ 理 系大 学 学部 卒 , お よ び大 学 院 修 士 ・博 士 課 程 修 了 者 勤務 地 : 層 大 阪府 和 泉 市 室 堂 町 身分 :ボス ドク ( 博 士 課 程 修 了 者) また は これ と同等 と 認 めた 人 は 日本 学 術 振 興 会研 究員 を称 す る こ とが で き る. あ るい は 当部 門 流 動 研究 員 . 大学 院 生 は大 阪 大 学 大 学 院 医学 研 究 科 院 生 ( 本部 門 は大 阪大 学 連携 大 学 院 ). 提 出 書 類 :ボ ス ドク ・流 動 研 究 員 :履 歴 書 ( 写 真 添 付 ), 簡 単 な 研 究 歴 と業 績 リ ス ト. 習 得 し て い る 実 験 技 術 も 簡 単 に お 書 き 添 え くだ さ い . 大 学 院 生 :下 記 ま で 連 絡 くだ さ い . (出 願 :平 成11年12月 ) 採 用 期 間 :ボ ス ドク ・流 動 研 究 員 は 年 度 ご との 契 約 で , 最 長 で 平 成16年3月 まで . 問 合 せ 先 :〒594-1101大 阪 府 和 泉 市 室 堂 町840 大 阪 府 立 母 子 保 健 総 合 医療 セ ン タ ー研 究 所 免 疫 部 門 長澤丘司 Te1.0725-56-1220ext.5301FAX0725-57-3021 E-mail:[email protected] 1995