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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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Author(s)
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<論文>東南アジアのヤシ
佐藤, 孝
東南アジア研究 (1967), 5(2): 230-275
1967-09
http://hdl.handle.net/2433/55375
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
東
南
ア
佐
ジ
ア
の
ヤ
シ
孝
藤
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msi
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a
by
Takas
hiSATO
は
じ
め
に
南 の国 は ロマ ンチ ックな もので あ り, ヤ シはその シンボルの よ うに され てい る。寒 い冬 を も
つ北 の国か らみれ ば南 の国 はなにか暖い ものが感 じられ , ロマ ンチ ックとい う表 現 が ピ ック リ
す るよ うで あるが ,熱帯 の現 実 は必ず しもそのよ うな もので はな く,北国 の冬 と同様 ,あ るい
はそれ以上 に きび しい 口が 1年 中続 いてい る とみ る こと も出来 るだ ろ う。 この熱帯 の原住民 に
とってヤ シは ロマ ンチ ックな もので はな く,天 か らの恵 みで あ ろ う。 この天 の贈物 は今や温帯
の人 々にとって は,熱帯 か らの大 きな贈物 とな ってお り,その価値 は ます ます高 くな ってゆ く。
200種 に も及んで い るが,人類 にと って有用 な ものは この
ヤ シとい って もその種類 は多 く,1
うちの数種 で あ り, その多 くが東南 ア ジアに存在 す る。
ココヤ シは熱帯の海岸近 くに広 く分布 し, ことに熱帯 アジアにおいて東洋人 のえ い智 と器用
さによ って,その利用 の道 が数多 く拓 かれ てい る。同時 に温帯地域 に も莫大 な油脂原料 コプ ラ
を提 供 してい る。高温乾燥 気候 の近東 か ら北 アフ リカにか けては, オ ア シスや河 に沿 って ナ ツ
メヤ シが植 え られ,砂漠の民 の重要 な食糧 とな り,家畜 の飼料 と もな り,最 も古 い作物 の一 つ
とされてい る。 これ に支 え られて 中近東や エ ジプ トの文 明の華 が咲 いた と もいえ よ う。熱帯 ア
フ リカの高温多湿 の地帯で は アブ ラヤ シが, おそ ら くは古 くか ら利用 され ていただ ろ うが ,東
洋人 ほ どの知恵 のない原住民 には ココヤ シほ どの利用 の道 もなか ったが ,比 較 的近年 ヨー ロ ッ
パ人 によ って開発 され ,その価値 の高 い ことが認 め られ て,温帯 に とってほ重要 な油脂資 源 と
な ってい る。熱帯 アメ リカにはババ スヤ シや カル ナ ウバ ヤ シがあ るが, その価値 は上 に述 べ た
ヤ シに比べ れば,は るかに低 い。 ビ ンロウを噛む風 習 のあ る熱帯 アジアの原住民 に とって ビ ン
ロウ樹 は欠 かせ ない もので ある。 サ ゴヤ シは東南 アジアの一 部の原住民 の主食 サ ゴ澱粉 を提 供
2
3
0
- 2-
佐 藤 :東 南 ア シ ア 0)ヤ シ
して くれ るO その大 きな澱 粉 生産 力 は よ うや く注 目を 浴 び よ うと して い る
ミラヤ シか らと った液 で , ヤ シ砂糖 や酒 を造 る
。
。
サ トウヤ シやパ ル
と もに古 くか ら,楽 しみ の少 な い原住民 に愛
好 され て きた。
これ らの ヤ シにつ いて述 べ てみ たいが , わ た くしの 体験 を 多分 に織 りこみ ,時 にはや や独善
的 な意見 も入 れ て い るので その点 あ らか じめ お許 しを乞 う。
I ==ヤシ c
oc
onutpal
m(
Cocosnucl
f
era)
ヤ シといえ ば コ コヤ シを指 す よ うに, この ヤ シは熱帯 の景観 を最 も象 徴 して い る もので あ ろ
う
。
空 の上 か ら,焼 けつ くよ うな , そ して填 っぽ い飛行 場 に降 り立 つ 現 代 と違 って ,茸 は 単調
な長 い船 旅 を終 え て港 に近 づ くとき,一
一番先 に 目につ くもの は おそ ら く海岸 に生 え た コ コヤ シ
で あ っただ ろ う。 熱帯 の海岸 には ど こにで も見 られ る この ヤ シの 原産 地 につ いて は南 米説 とア
ジア説 とが あ って ,は っき り しない 。 コ コヤ シの果実 が 末 か ら海 に落 ち,浮 い て波 に乗 り, 侮
流 によ って流 され ,新 しい土 地 の海 岸 に打 ち上 げ られ , そ こで発芽 して根 を下 ろ し,芽 は 伸び
て 大 木 とな り,果 実 をつ け, その果 実 は再 び海 に落 ち,波 に乗 って次 の 鳥- と運 ばれ る
。
ココ
ヤ シは この よ うに して熱帯 の 海岸 には ,た とえ , さん ご礁 か らで きた無人 島 に さえ 見 られ るよ
うにな った。
コ コヤ シとい う作物 を本 当 に理 解 す るた め に は,原 住民 の生 活 ,
特 に食 生 活 と コ コヤ シの結 び
つ き,お よび ,c
as
hcr
op と しての コ コヤ シとい う両 面 を深 く見 て いか な けれ ば な らな い。 いず
れ の場 合 に も一 番 重要 な もの は果 実 で あ るので , まず果 実 の各 部分 の 名称 につ い て述 べ よ う。
1. 果
実
果 実 の各部 分 の名称 は邦書 を み て も,利用 部 分 の用語 が ま ちま ちで あ り,間違 い を起 こす こ
とが あ る
。
果 実 の各 部分 の植 物学 用語 は図 1に示 す とお りで あ るが ,常 に これ らの術 語 が 使 わ
れ てい る とは限 らな い。 む しろその よ うな場 合 は少 な い。
i
. 外果皮(
B)と 申 果 皮(
D)
を皮 (
hus
k)とい い ,内果 髭 (
E)
か ら外 果皮 ・申 果皮 を剥 ぐことを刺皮
(
hus
ki
ng) とい う。申果 皮 の繊 維
c
oi
r
)と して コ コヤ シ0
)
は コ イア (
重要 な産 品 の一 つ で あ る。
i
i
. 内果皮 お よび これ に包 まれ
nut
),内果皮 を
た 部分 全体 を核 (
殻 (
s
hel
l
) とい い, これ か ら活性
炭が 作 られ る。
i
i
i
. 内果 皮 の 内側 で ,内鯉 乳 (
F
)
図 1 コ コヤ シの 果 実
と腔 (
A)
を取 りまい て褐 色 の薄 い 皮 ,
- 3-
2
3
1
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
種皮 が あ るが,内腔 乳 に密着 してい るので ほ とん ど問題 に され ないが ,細 粒 コプ ラ (
des
i
c
c
at
ed
c
oc
onut
) を作 る場 合 には これ を取 り除 かな けれ ばな らない。
i
v. 内腔 乳 と腔 の部分 を 肉 または核 肉,果 肉 (
meat
)とよぶ が , 腔 は ご く小部分 を 占め るに
c
opr
a)で , コ
す ぎな い。原 住民 は核 肉を絞 り,各種 の料理 に用 い る。乾燥 した もの は コプ ラ (
コヤ シの最 も重要 な産 品で あ る。乾燥 す る前 の 内腔 乳 を生 コプ ラと表現 して もいい訳 で ある。
r
es
hmeatとい う語が用 い られ るが , これ を訳 して新鮮果 肉 とか生果 肉 とい う邦語
英語で は f
が あ るが ,植 物学 的 には果 肉で な いか ら,生 コプ ラとい う表 現 の方 が よい。
Ⅴ. ヤ シの水 (
c
oc
o
nutwat
er
)は内腔 乳の 内側 にたたえ られ ていて飲 用 に供 され る。
2. 原住 民 の食 生 活 と ココヤ シの実
原 住民 が その食 生 活 に どの よ うにヤ シの実 を利用 して い るかをみてみ よ う。
1
) ヤ シ ミル ク (
c
oc
o
nutmi
l
k)
成 熟 した果 実 か ら原 住民 は料理 に使 うヤ シ ミル ク-
kel
apa とい う-
イ ン ドネ シアで は s
ant
an とか s
us
u
を とる。 皮 を剥 ぎ,核 を真 申 (
equat
or
)で二 つ に割 る。 この おわん の よ う
な ものを両 手で持 ち, ククラン (イ ン ドネ シア語 ) とい う器 具 で枝 肉を削 りお とす。 ククラン
は大 きな さ じの縁 を鋸歯状 に した鉄製 の器 具で ,木 の台 に打 ちつ けて あ る。 クク ランの ない場
合 は,サ イダ -や ジ ュ- スの栓 を小 さな木片 に打 ちつ け,栓 の ギザ ギザ の縁 で削 る. これ もな
い場合 は太 い竹 を割 って- らの よ うに し,先 を鋭 利 に して, これで削 る。 こ うして削 った 白い
細長 いの こ くず の よ うな核 肉を, 目の細 か い深 い ざるに入 れ,水 を加 え た り,水 の 中につ けた
り して絞 る と, 白い ミル クの よ うな液 が 出て くる。何 回 も繰返 し,最 後 に絞 り粕 を捨 て る と,
ブタや ニ ワ トリ, ア ヒル な どが寄 って きて食 べ る。食 べ残 した粕が たま って くると異 臭 を放 つ
よ うにな る。原 住民 のニ ッパ - ウスの周囲 には ,なん と もい えないいや な臭 いが漂 って い る も
ので あ るが ,サ ンタ ンの絞 り粕 もこの異臭 の一 成分 を な してい るだ ろ う。 この絞 り粕 には ヤ シ
C
opr
ac
akeや C
opr
ameal
)よ り,は るか に多 くの養分 が含 まれて い る。 サ ンタ ンには脂 肪
粕 (
が27% , 蛋 白質 4% ,糖
6% が含 まれ, ビタ ミンA と E も含 まれ てい る。 その組成 か らみ ると
牛 乳 よ りも脂 肪が著 し く多 く, ク リームに近 い。蛋 白質 はグ ロブ リンが主 で , これ は リジ ンに
富 み良 質 の蛋 白質 で あ る。 サ ンタ ンは各種 の料理 に使 われ る。 この 中 に魚干 物 の魚等 -
生魚 や くん製 ,
,ニ ワ トリ, ア ヒル ,回教徒 は 山羊や羊 の 肉,回教徒 以外 の者 は豚 や野猪 の 肉
をた き こむ。 また, トウガ ン, レイ シ,- チマ,- ヤ トウ リ, キ ュウ リ, カボチ ャ等 の瓜類 ,
トマ ト, ナス, ササゲ ,バ ワ ンメ ラー (小 さい赤 い タマネギ),エ ンサ イ,ボス レー ン, バ ヤム
(ヒユの類 ) その他 の野菜類 もた き こむO これ に トウガ ラシや ウ コン (
Curc
umal
onga)等 の香
辛料 を加 えて サ ンタ ン料理 ,す な わ ち カ レーの一 種 を作 る。 タ イや イ ン ドネ シア等 東南 ア ジア
の国 で は市場 に行 くと,必ず その 中 には大衆食 堂 が あ り,大 きな なべ が並 んで い る。 その なか
には各種 の カ レ-が入 り,希 望 の ものを 自飯 にか けて もらった り,二 ,三 の もの を スープ皿 に
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2
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佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
も らって , ご飯 にか けなが ら食べ るので あ るが ,赤 い サ ンタ ンは トウガ ラシが刻 み こまれ て い
て, わ た くしな どは- さ じ食 べ れ ば 口車が火 の よ うにな り, この火 を 消す ため に, ご飯 を た く
さん食 べ な けれ ば な らな い。 どの客 も白い ご飯 を 山の よ うに盛 って もらい ,油の ギ ラギ ラ浮 か
ん だ赤 や黄 , 白の サ ンタ ン料 理 を喧 喋 と,異 臭 の 申 で平 らげて ゆ く姿 は, ま ことにバ イ タ リテ
ィーの溢 れ る もので あ る。 また,ご飯 が た きあが った と き,サ ンタ ンを入 れ て 手早 くまぜ る と,
なん と もいえ ない香 りの ご飯 が 出来 る。 これ に ウ コ ンをす って絞 った黄 色 い汁 を入 れ る と,質
黄 の美 しい nas
ikoe
ni
ngが 出来上 が る。 ウ コ ンの ほ ろ苦 い味 と ミル クの芳 香 が して , おい し
くもあ り,
栄 養 価 も高 く,ウ コ ンが肝 臓 の特 効薬 クル ク ミンを含 む ので保健 食 で もあ るだ ろ う。
nas
ikoeni
ngは イ ン ドネ シアで は, お祭 りや お祝 いの時 には欠 かせ な い もの で ,円本 の 赤飯 に
相 当す る もので あ る。 サ ンタ ンは, また , バ ナ ナの葉 な どで也 ん だ 油 っこい五 目飯 に いえ ば-
「
1
本式
に も入 り, い っそ うその 味 を ひ きた たせ てい るO タ イで は もち米 にサ ンタ ンを加
え ,若 い竹 筒 に詰 め ,葉 で 栓 を して これ を火 にか け る。黒 く焦 げた竹 筒 の外 側を剥 ぎ と り, そ
の まま売 って い る。衛 生 的で もあ り, な か な か うまい
。
す りお ろ した キャ ッサバ や トウモ ロ コ
シに サ ンタ ンとヤ シ砂 糖 を混ぜ て煮 る と,寒天 の よ うに岡 ま り, お 菓子 とな る.街 f
L
i
J
i
の屋 台 で
売 って い る寒天 で 固め た色 と りど りの美 しい菓子 に も多 くサ ンタ ンが入 って い るO コー ヒ-や
コ コアに入 れ る こと も出来 る。 イ ン ドネ シアの 歌 に まで 歌 われ て い る この柿 物性 牛 乳 と も称 す
べ き サ ンタ ンは, ま さに欧米 人 の 食生 活 が牛 乳 を離 れ て は考 え られ な いの と同様 な意 義 を もっ
て お り, わが国 の 味 噌 な どの比 で はないO サ ンタ ンを 歌 った歌 を一 つ あげて お こ うo
Mani
s
emani
s
et
er
l
aumani
s
e,s
amas
ant
andengan gul
a,t
er
l
au mani
s
e.
この 歌詞 は ≠サ ンタ ンは本 当 におい しい,砂糖 の よ うにおい しいク とい う意 味 で あ り, イ ン ド
ネ シアの い た る所 で 歌 われ , 歌 に合 わせ て 原住民 の踊 り へメナ リー (
menar
i
)ク が踊 られ る。
歌詞 はい ろい ろあ り,即 興 的 な もの もあ る。
2) ヤ シ油 (
c
oc
onutoi
l
)
ヤ シ油 は コプ ラか ら作 られ る もので あ るが ,原 住 艮 の家 庭 で は ヤ シ ミル クか ら作 られ る。数
個 の ヤ シ巣 か らと った 貢 白い ヤ シ ミル クを 鉄 なべ に入 れ て煮 て い る と, 急 に 澄 明にな って く
る。水 分 が議 発 して油 だ けが残 って きた ので , この時- つ まみ の塩 を入 れ る
C
こ うす る と油が
腐 らな い とい う。 ぴん の ない場 合 は竹 筒な どに入 れ て貯 え る。台所 の片 隅 に 油 の に じん だ竹 閏
を よ く見か け る。 こ う して作 った油 は もち ろん蛋 白質 や そ の他 の不 純 物 が ま じって お り,貯 蔵
中 に 多少 変 質 もす るので , コプ ラか らと って精 製 した もの とは違 い, ヤ シ油 の臭 い もい っそ う
つ よい。原 住 民 は食 用 油 と して,魚 や バ ナ ナを揚 げ,野菜 を い ため るの に盛 ん に用 い る。皿 に
入 れ灯 心 をつ けて, あか りとす る こと もあ る。時 には ,髪 の毛 や皮 膚 に塗 るので , ポ マ ー ドや
化 粧用 ク リームの代 刺 こもな る。 原住民 は サ ンタ ンや ヤ シ油を盛 ん に食 べ るので ,体 臭 が ヤ シ
ー 5-
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東 南 ア ジア研 究
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油臭 い とい う人 もあ るが ,わ た くし自身原住民 に負 けない ほ どヤ シ油 や サ ンタ ン料理 を食 べ て
いたが ,一 度 もその よ うな ことを言 われ た ことはなか った。 おそ ら く汗 な ど分 泌物 によ るので
はな く,髪 や体 に塗 った ヤ シ油 その ものの臭 いだ ろ う。
00個 と も称 され る
熱帯で 消費 され るヤ シ果 は 1年 1人 当 り50個 と も1
。
セ イ ロ ンで は 1
49個 に
及ぶ 。
3) ヤ シの水 (
coconutwat
er
)
ヤ シの水 を ヤ シ ミル クとよんで い る邦書 や外 国書 もあ るが , これ は誤 りと言 えない まで も,
その色や成 分 ,利用法 な どか らみて適 切で はない。 ミル クはや は り絞 って とる もので あ る。 イ
rkel
apa(ヤ シの水)とい う。 これ を混 同す る と利用法 な どの説 明で 誤 られ
ン ドネ シアで も ai
や す いo
腔 の うか ら発達 した内腔 には,他 の顕花植 物 において は細胞 の分裂 が繰返 され て 内腔 乳 がで
きるが , コ コヤ シで は これが最 初水 の状態 で あ るので , この水 の 中には無 数 の第二 次 的 な腔 の
う核 の分裂 で生 じた細 胞核 が浮 遊 してい る。核 が有 糸分裂 によ る ものか,無 糸分 裂 によ る もの
か は は っき り分 か っていないが , 1-40の核 が細胞膜 で包 まれ て い る。 ヤ シの水 を ろ過 すれ ば
多量 の細 胞核 が分 離 で きるので,純粋 な核物質 の生 化学 的 な研 究 に供 され るだ ろ う。1
)また水 の
中 には生長 作用物質 を含 んで い る こと も証 明 され てい る。
熱 帯 に行 って ヤ シの水 を飲 ん だ人 が ≠ヤ シの水 はおい し くほなか ったク と言 う言葉 を しば し
ば聞 く。晴好 的 な問題 で あ るので ,わ た くLが特 に個人 的 な意見 を述 べ る ことはな いが , ≠油
臭 くて まず い ものだ ったク と言 うことを聞 くに及んで は一 言述 べ て, ヤ シの水 の弁護 をす る と
と もに, ヤ シの水 の正 しい飲 み方 を説 明すれ ば,この よ うな人 も再 び熱帯 に行 く機会 が あれ ば,
今 度 は き っとヤ シの水 党 にな って くれ るだ ろ う。
ヤ シの水 の糖 分 は開花後 6- 7カ月 目,す なわ ち成 熟 5- 6カ月前 が約 5% と最 高 にな る。
糖 の大部分 は庶 糖 で あ る。 この時 が ヤ シの水 は一 番 うまい。 内果皮 は まだ黒 く固 くな って お ら
ず , 内腔 乳 は よ うや く先 の方 で 固 ま り始 めて,薄 い寒天 状 を呈 して い るo成 熟 が進 む につ れ て
表 1)。 こうな ると もはや飲用 には透 き
糖 分 が減 り,成 熟果 で は 2% とな り油 臭 くな って くる(
な くな る。
表 1 成熟期のヤシの水の組成(
%)
原住民 を呼 んで木 の持 主 を確 かめ, 1個
T
原住 民 は ヤ シの水 を あ ま り飲 まない. も
・
2
.¶ 」
ー止 .
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9
3
を指 して "あれ を取 って くれ'
Yと頼 む.
山
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の値段 を決 め , だ いたい 6- 7カ月 の果実
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っと も, の どが乾 いたか らとい って ヤ シの
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234
-
6-
佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
水 を飲 んで い た ので は ,た ち ま ち未 熟 の果 実 を取 りつ くして しま うだ ろ う。 チ モ ールや セ ラム
の原 住 民 は ヤ シの水 を飲 む とマ ラ リア にな る とい って ,む しろ敬 遠 す る傾 向 さえ あ る。 邑二
の賢
人 の教 え とわ た くLは解 して い るO イ ン ド人 は ヤ シの水 を盛 ん に飲 む ら しい
C
イ ン ド回艮 - o
j
成 熟 ヤ シ異 の供 給 は少 な く, イ ン ド国 内の生産 量 は国民 の需要 の 30% にす ぎず ,多 量 の果 実 を
輸入 して い る。 おそ ら くイ ン ド人 は イ ン ドネ シア人 や マ レー人 の よ うには豊 富 にサ ンタ ン料理
を食 べ て は お らず ,栄 養 不 足 に悩 んで い る ことだ ろ う
。
未 熟 な ヤ シ果 を取 って水 を飲 む ことは,
この よ うに国民 栄 養 の面 か らみれ ば決 して好 ま しい ことで はな い。水 を飲 む 目的で壊 L
f
三
ヤ シを
植 え て い る こと もあ る。 これ は良 質 の コプ ラや サ ンタ ンを大 量 に とる ことが 出来 な い ものが 多
い ので ,都 合 が よい。未 熟 果 を とるので着 果 も多 い
。
ヤ シの木 に猿 の よ うに登 り,樹冠で は葉
柄 を た ど って若 い果 実 を切 りとる ことは難 しい 仕事 で ,頂住民 は誰 で も出来 る とは限 らな い。
足 を前 に踏 ん 張 り両 手で幹 を か か え る よ うに して登 る点 で ,幹 に休 を密 着 させ て登 る 日 本 人 の
木登 りとは違 うが ,これ は ア リそ の他 の毒 虫 に体 を刺 され ない よ うにす る合理 的 な方 法 で あ る。
柔 らか い海岸 の砂 の上 以 外 は,取 った果 実 を高 い 樹上 か ら投 げ る と, ひびが入 り水 が流 れ 出 し
て しま うので ,ぶ ら下 げて 降 りて くる。 ヤ シの実 は この時 代が最 も頂 く,成 熟 が進 む とか え っ
て軽 くな って くる。病 虫害 を受 けて い ると, この 重い果 実 が ,落 下 して くる ことが あ る。特 に
夕方 か ら夜 にか けて落 ちやす い ので ,木 の下 で涼 を と りなが ら, たたず む ことは危 険で あ る。
取 った実 を切 って ,水 を飲 む よ うに して くれ るが , これ もなか なか巧妙 で あ る。 わ た くLは苦
台湾 で , も らった ヤ シの実 を前 に して水 の飲 み方 につ い てず い分 苦 心 した。 2 人 が か りで 丸 い
実 を押 え,の こぎ りで繊 維 質 の 申果皮 を切 り,堅 い 内果皮 を切 って こぼれ る水 を コ ップに受 け,
の こ くず の浮 か ん だ ものを飲 ん だ ことが あ るが ,少 しの うま味 もな く, 油臭 い生 温 か い水 で あ
った。 イ ン ドネ シア人 はす ぼ ら し くよ く切れ る刀 で , まず 果 実 の隆線 を斜 め に切取 り, これ を
残 して おい て あ とで さ じの かわ りに使 う。次 に実 を斜 め に切 って ゆ き, 内果皮 の一 部 が あ らわ
れ て くると,これ を注 意深 く切 りと る。 白い 内肱 乳にな ると薄 い 白い層 が 出来 て い る-
6カ月で は寒天 状 で あ るが ,7- 8カ月
が で て くると,刀 の匁先 を果 実 に二 ,三 回 切 りこん で ,
先 を きれ い に して か ら内腔 乳 を 切 りと る。 こ う して旅 人 に捧 げて だ して くれ る。 タ イや カ ンボ
ジアで は果 実 の先 半 分 の 中果 皮 と内果皮 を切 り落 と し, 白い 内腔 乳 を露 出 させ , ち ょうどお椀
jを 当てて飲 むO氷 水 な
を被 せ た よ うな形 に して駅 な どで売 って い る。 内 膳浮Lを切 って そ こ- r
どと違 って衛 生 的で あ るが ,飲 用 と して は,や や 熟 し過 ぎて い る。 かつ て戦 争 中 注射 用 の蒸留
水 が不 足 した とき, これ に注射 針 を突 き刺 して水 を と り,注 射 に使 われ た。 当時 わ た くLは 山
に住 ん で い て, 1カ月 に 1度海 岸 に行 く任務 が あ ったが ,4
0キ ロメ ー トル の 山道 を歩 くの に力
とな った の は,海岸 で もぎたて の ヤ シの水 が飲 め る ことで あ った。仕事 を終 え て ヤ シの実 を二 ,
三 個持 って,再 び 山 に帰 って くるが , 山 の冷 気 にひた り,新 鮮 度 の落 ちた ヤ シの水 を飲 む こと
は, もはや魅 力 の あ る もので はな か った。 もいで か ら時 間 の経 った ヤ シの水 は,気 の抜 けた サ
--7
235
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
イダ ーの よ うな ものだ。暑 い 日中,汗 にぬれ て ヤ シの木 の下 にた ど り着 き,大 きな実 を両 手 に
持 ち,息 もつ かず , ど くりど くりと飲 む と きの気持 は格別 で あ る。 ス トロ-を使 った り, コ ッ
プ に と った り,氷 や砂糖 を入 れ て飲 んで は本 当の昧がで ない。胸 を伝 って ヤ シの水 が,汗 にぬ
れ た シ ャツを さ らにぬ らす と ころに味 が あ る。適 度 の甘 さと炭酸 が 口中 に しみ渡 るとき冷気 さ
え感 じ られ る。 わ た くLと行 を共 に した人 は皆 ヤ シの水 の うま さを讃 え た。
原住民 に
≠
水 を飲 む か らヤ シの実 を取 って くれ'
Y と頼 め ば, たい ていは成 熟 した もはや飲 用
に適 さな い ものを取 って くれ る。 これ には理 由が あ る。旅 人 が水 を飲 んで みて, かね てか ら聞
いていたおい しさのないの に失望 して,果実 を投 げ捨 て ると,旅人 の去 った あ と,果 実 を半分
に割 って 中 の生 コプ ラをす っか り頂 だ いす るので あ る。 わ た くLは, おい しい水 を飲 み, さ ら
に実 を半分 に割 らせ , とって おいた ヤ シの さ じで寒天 状 の 内膳 乳 をす くい と り,す っか りい た
だいて しま う。
ヤ シの水 は熱帯 に住 む温 帯 の人 に と って は欠 かせ ない飲 物 で あ ったが, この ごろは どの よ う
な 田舎 に行 って も コー ラや ジ ュ- スの類 が はん らん して いて, ヤ シの水 の うま さが忘 れ られ て
ゆ くのをわ た くLは淋 し く思 う。
4) そ
の
他
幼果で しぶ 味 が な く食 用 にな る ものが あ る。 カブ カ ンラ ンの よ うな味が す るといわれ て い る
が, わた くLは原住民 が その よ うに利用 してい るの を見 た こと も, わた くし自身 味 わ った こと
0-80%以上 が幼采 の うちに落果 す るので ,この よ う
もない 。1果房 に40-50果 も着 くが,その 7
な利用 の道が あれ ば好都 合で あ る。発芽 に先 だ って,腔 の直下 に発達 す る栄 養球 は ヤ シ リンコ
(
c
oc
onutappl
e,haus
t
or
i
um)と称 され る。 これ は腔 と通導組 織 によ って直 結 し,酵素 を分 泌
して 内膳 乳 を分解 し,養分 を月
引 こ供 給 す る器 官 で ,次第 に大 き さを増 して 内腔 い っぱい に拡 が
る。 発芽 後 2年以上 も存在 して 内腔 乳 をす っか り分 解 し,芽 生 の発育 に吸収 され て消滅 す る。
ヤ シ リンゴは少 し甘 味 が あ り,原 住民 のr
ll
には これ を愛 好 す る ものが い る。 ヤ シの苗床 で発芽
1
1
1
の実 を害 す る もの にネズ ミや野猪 もい るが ,最 も防除 し難 い もの は人 間 とい う害獣 で あ る,
と書 かれ た本 が あ る。苗床 か ら盗 み 出 して果 を裂 き, リンゴを と って食 べ るか らで あ る。 わた
くLは初 めて 口に した時 は,海綿 質 の 肉の ほのかな甘 さが気 に入 ったが ,やが てその吐気 を催
す よ うな ヤ シ油 の臭 いが い や にな り, い ま思 い 出 しただ けで も, こめかみ の あた りが痛 んで く
るよ うだ。 しか し,その 中 に含 まれ る油脂 を分 解 す る強 い酵素 を と り出 して消化剤 の よ うな医
薬 がで きない ものか とい う しろ うと考 えを もって い る。
Ⅰ
二
il果皮 は コイア と して
コプ ラと共 に重
要 な輸 出農産 物 で あ るが ,原 住 民 は剥 ぎ とった繊維 を木づ ちで たた き, よ って綱 を作 る。 ニ ッ
パ - ウスの中 に入 ると,天 井 か らぶ ら下 げ られ た太 い この網 の下端 が くすぶ って い る。蚊除 け
にな るとい う。 また タバ コの火 をつ け るの に もよい。 半 分 に 割 られ た 内果皮 はお椀 と して食
器 に用 い,柄 をつ けて ひ しゃ くとす る。花 ぴんや タバ コぽん セ ッ トに細工 され た ものを 日本 で
236
- 8-
佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
目にす る こと もあ る。- び の友 を張 って弦 楽 器 の胴 に さ
れ て い るのを ど こかで見 た よ うな気 がす る。発芽 孔 (
図1
C)の あ る方 は猿 の顔 に似 て い る(図 1右)。 口に当 た る
と ころの 内側 に肱 が あ る。二 つ の 目に相 当す る と ころは
退 化 した肺 の あ った と ころで ,発 生 的 には コ コヤ シは三
つ の膝 か らな って お り,果実 の横 断両 は三 角形 を して い
る。 まれ に退化 の途 中 に あ る 2脈 の もの,退 化 前 の 3肱
の ものが あ り,一 つ の果 実 か ら 2本 や 3本 の ヤ シの木 の
仕 え て い る ものが あ る(
写 真 1)。それ は と もか くと して,
底 に孔 の あい た方 も巧 みな使 い途 が あ る (サ トウヤ シの
項 参 照 )。 長 い形 の果 実 は コプ ラ生産 上 か らは 不良 巣 と
され て い るが , nutが小 さ く長 い ものが 多 い ので細 工 し
て , き ざみ タバ コ入 れ な どを 作 る。磨 けば黒 地 にかす り
の王
柾紋 がで て美 しい。 しか し人半 の 申 果皮 や 内果皮 は仏
炎 や枯 葉 な どと共 に燃料 に使 われ た り, 灰 に して カ リ肥
写真 1 三つの肱か ら発芽 した
ココヤシ
(
筆 者撮影)
料 と し, また はそ の ま ま園 に還 元 して有 機 質 の補 給 に役 立 て られ る
。
3. 果 実以 外 の利 用
末 展 開 の若 い葉 の小 葉 を縦 に裂 い て,握 りこぶ し大 の小 さな笠 を編 む 。
小
に米 を入 れ て煮 る
と寵 い っぱい に膨 らむ。 そ の ま ま弁 当 と してぶ ら下 げて ゆ く。 ちま きの よ うに葉 の香 りが ご飯
に うつ って い る。葉 を乾燥 して敷 物 を織 る。未 霞関 の葉 の葉 柄 を縦 に割 って アーチ型 にす る と
写 真 2), また
薄黄 色 い小葉 が 垂 れ下 が り美 しい。 これ は人 を 歓迎 す る とき村 の入 口に飾 られ (
結婚 式場 の周囲 に張 りめ ぐらされ ると明 るい雰 囲気 とな る。花梗 を切 って と る甘 い樹 液 か らは
砂糖 が 作 られ , また発酵 す れ ば ヤ シ
酒 とな る。 しか し, コ コヤ シは責 重
な果 実 が採 れ るので ,樹液 を探 って
木 を 弱 らす ことは損 失で あ る。 イ ン
ドで は コ コヤ シか らこの よ うに して
砂糖 や酒 を とる ことが多 いが , イ ン
ドネ シアで は他 に用途 の少 な い サ ト
ウヤ シか ら, タ イや カ ンボ ジアで は
パ ル ミラヤ シか ら砂糖 や酒 を と る こ
とが 多い。木 の生 長点 は ヤ シの芽 と
称 して サ ラダ に した り, サ ンタ ン料
写真 2 ココヤシの未展開の黄色い葉を両側に飾 った
がいせん門 人を歓迎するときにつ くる。
(
TanahAi
rKi
t
a よ り)
- 9-
23
7
東南 ア ジア研究
第 5巻 第 2号
理 に して賞味 す る。芽 を とれ ばそ の ヤ シ樹 は枯死 して しま う。 ヤ シの芽 はいわ ば王侯 の食 べ物
で あ る。 わた くLも二 ,
三 度 口にす る機会 にめ ぐまれ た。 ヨー ロ ッパ人 はキ ャベ ツと称 す るが ,
わた くLは味 と舌触 りか ら竹 の子 といいたい。植 物学 的 にみ て も単子 葉植 物 の生長点 とい う点
at
ap) にな るが ,サ ゴヤ シや パ ル ミラヤ
で , この語 はぴ った り して い る。 葉 は屋根 ふ き材料 (
シの方 が よいO 材 はその ま ま柱 や橋 に使 われ るO 幹 の外側 の組織 は堅 く, 磨 けば 美 しいので
por
c
upi
newoodの名 で呼 ばれ , 細工物等 に使 われ る。 葉 柄 の下 側 に生 えて い る茶 色 の毛 茸 を
か き落 と して集 め,火打石 で火 を起 こす ときに用 い る。 も ぐさの よ うによ く火 がつ く。
原 住民 の生 活 ,特 に食 生 活 にお け る ココヤ シの意 義 につ いて多 くのペ ー ジを さいた。- ワイ
ア ンギ タ ーや ウ ク レレの音 に合 わせ て, ヤ シの菓 蔭 で フ ラダ ンスを踊 るポ リネ シア の美女 達 の
姿 はえが けなか ったが ,熱帯 の原 住民 とヤ シの結 びつ きにつ いて は, あ る程 度伝 え る ことが 出
来 たので はな い か と思 う。熱帯植 物 を集 め た温室 で ココヤ シを 目に され る こと もあ るだ ろ う。
しか し,温 室 のヤ シは最 も出来 の悪 い イ ミテ ー シ ョンで あ る.熱帯 の強烈 な太 陽の照 りつ け る
海岸 に生 え た, あの力強 く, けだか い姿 ,真 赤 な夕焼 けの空 に黒 く写 し出 され た シル エ ッ ト,
や は り熱帯 その もの に行 かな けれ ば真 の ヤ シの姿 は見 られ ない。
4. 世界 市場 にみ られ る コプ ラ
as
hc
r
op と しての ココヤ シをみ てみ よ う.
次 に コ コヤ シの もつ他 の一 面 c
ココヤ シの 内腔 乳 を乾燥 した ものが コプ ラで あ り, コプ ラを圧搾 または抽 出 して得 た池 を ヤ
c
oc
onutoi
l
) とい う。 コプ ラを ヤ シ油 に換 算 す る場合 はその60% とす
シ油 とか ココナ ッ ト池 (
る。
油脂 の生産 量 と輸 出量 に関す る統 計 は表 2の通 りで あ る。 この表 を見 れ ば,植 物性 油脂 の生
産 量で は大豆 油 ,落花生油 , ひまわ り池 ,綿実 油 に次 いで ヤ シ油 ,パ ー ム池 (
パ ー ムカーネル
池 を含 む) の順 で あ るが ,輸 出量 は ヤ シ油 を第 2位 と し,パ ーム池 が第 4位 で あ る。 この よ う
に生産 地 にお け る消費 よ り,先 進 国 に輸 出 され る割合 の大 きい ことが他 の油脂 と大 い に違 うと
ころで あ る。池 にな る前 の段 階 ,す なわ ち果 実 と して原 住民 に消費 され る量 を加 えれ ば ヤ シは
おそ ら くラ ッカセ イ と肩 を並べ る もので あ ろ う。
ヤ シ油 は調理 用 や マー ガ リン, シ ョー トニ ングな どの食 用 油 と され , また工業用 と して も重
要 で あ るが ,化学 洗剤 の発達 で ,石 けん原料 と して の利用 が減 ったので ,食 用 油 と しての比 重
が ひ じ ょうに増 して きた。 そ のため コプ ラや ヤ シ油 の品質が以前 よ りい っそ う重 視 され る。脂
肪 酸が 多 く品質 の悪 い ヤ シ油 も,脱臭脱色 し,水 素添 加 で 品質 を改善 す る ことは 出来 るが,費
用 が かか るので ,優良 な代 替 油脂 の あ る場合 は,品質 の悪 い ヤ シ油 は食 用油 と して は使 われ な
くな る。
低 開発国 か らの コプ ラはい っそ う品質 の良 い ものを輸 出 しな けれ ばな らない。 コプ ラの品質
0% が調製 に,1
0% が輸 出まで の貯蔵 の良否 にかか ってお り,調製 の良否 は
を左 右 す る もの は9
2
3
8
- 1
0-
佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
表 2 油脂の世界生産量と輸出量(
1
963年)
90% が水 分 パ ーセ ン トに, 10% が剥皮 か ら
(
単位 :1
0
00トン)
s
pl
i
t
t
i
ng)まで の時 間 の長 短 や集 積
核割 り(
ロ
ロロ
目
生 産 量
実
場 所 の良否 にか か って い る とみ られ よ う。
棉
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リ
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油
油
油
生
フ
ま
い 。pl
ant
at
i
onで は調製設 備 や貯蔵 施設 が
オ そ
の広 い 生産 地 が 形成 され な けれ ば な らな
花
菜
され なけれ ばな らな い。 そ して良 質 コプ ラ
大ひ
は, 調製段 階 の改 善 が コプ ラ生産 地-徹 底
落
豆
植 物 性 食 用 油
先進 国 - の コプ ラの 輸 出 を 伸 ばす ため に
油
油
輸出量
. 2,
2
6
8 ≒
2
6
8
2,
45
4 ;
9
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,
45
4
2,2
95
3
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1
,
0
89
1
2
4
他
953
1
66
計
1
3・
804 1 3
,3
96
完 備 して い る ものが 多いが , 世 界市場 にあ
ヤ シ 油 類
らわれ て くる コプ ラの大半 は pl
ant
at
i
onよ
mal
lhol
der (主 と して原 住民農
りむ しろ s
家 を指 す)の もので あ る。 特 に フ ィ リピ ン
.物 "産
ので , ヤ シの作物上 , 経営 上 の特 質 を考 え
なが らそ の要点 を述 べ てみ よ う。
5. 栽
培
総
1
) 繁殖 用果 実 と帯 の素 質
2,1
95
池
1
,
261
70
3,
89
8
計
372
1
,3
2
5
3
60
5
29
0
2,
21
4
1 2
9 5
0
2
4
2 6
亜 そ
t
i
onで もその栽培法 には大 きな 違 いが な い
核
ム
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油
油
パパ ス カ ー ネ ル 池
業 用油脂
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aる もので あ る。 s
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1
,
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1
,
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,
489
9,1
4
4
轟
の
計
計
出所 :科学技術庁資源局 『ココヤシ資源に関する
再 評 価 調査報 告 』1
9
66
コ コヤ シは60年 , 70年 の長 期 にわた って
収穫 が続 け られ るので , も し佳産 力 の低 い木 を植 えれ ば, それ は60年 ,70年 ,時 には文 字 どお
り100年 の 不作で あ る。 まず住産 力 の大 きい ものを柵 え る ことで あ る。 これ につ いて はい ろい
ろの説 が あ り,い ろい ろの手段 が と られ て い る
。
よい年産 を上 げて い る木 の果実 を種子 用 にす
J
l
る ことが以前 か ら行 なわれ てい るが , これ は コ コヤ シが普通 ,他 家授 精 で あ るため (同 じ花 j
で は雄 花 が先 に咲 くので ,雌 花 は他 の木 の花粉 によ って授 精 す る。 みつ ば ちが花 の まわ りに飛
びか って い るので 虫媒花 で あ る)父 の木が分 か らな いので大 した効果 が ない といわれ て い る。
セ イ ロ ンで は ヤ シ産 業 は ひ じ ょうに重要 で あ るので ,政府 は ココヤ シに関 して ひ じ ょうに力を
入 れ て研 究 を してい る 。 こ こで は 10年余 り前 か ら,年 100個以上 の果実 をつ け る多収 の木 を選 ん
で人 工交配 を し,得 た果実 を ,森林 で好 く取 り囲 まれ た と ころに植 えて , こ こを採 種 閲 と し,
占い ココヤ シ間 の更 新 の ための繁殖 用果実 を生産 す る試 みが始 め られ て い るので , その成 果が
期 待 され る 。2) 植付 後 7- 8年 して結 果 し始 め ,15年 くらい か ら結果最 盛期 に入 るので あ るか
2) Ed
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,No.7
,
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6
0.1
955.
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2
39
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
ら育 種 に本 格 的 に取組 む人 は少 ない し,栄養 繁殖 の 出来 ない こと も優良 品種 の育成 を 困難 に し
て い る。 イ ン ドの Cent
r
alCoc
onutRes
ear
chの Gangol
l
y と Pandal
aiが , 根 際の樹皮 を輪
状 剥皮 した部分 に各種 の生長 ホル モ ンを処理 して不 定根 を発生 させ た こと さえ
られ て い る
Na
t
u
r
eで報 じ
(
Na
t
u
r
e
,1
6Sept
.
,1
961
) くらいで あ るか ら, も し不 定芽 を発生 させ栄養繁殖 に成
功 すれ ば農業上 ひ じ ょうに大 きな功績 とな るだ ろ う。 この よ うな研究 は, 日本 において も温室
で 出来 る。
自家用 に植 え る場合 はたい して問題 にな らないだ ろ うが , 換 金 作物 と して s
mal
lhol
der や
pl
ant
at
i
onで栽 培 す るには,必ず生産 力の高 い木 で な けれ ばな らない。品種 の育成 や繁殖 用果
実 の生産 が国家 的規模 で研究 ,開発 され る ことを期 待 してい るわ けで あ るが ,差 し当た り現在
どうすれ ばよいか とい う問題 に直面 して い る。 これ に対 処 す るには次 の二つ の手段 が あ る。
i
. 生産 力の高 い木 , あ るい は園 か ら種子 用果 実 を とる-
生産 力 の検 定 には 1樹 か ら 6異
を と り,その 内腔 乳 重 を測 って平 均 し,これ に1
年 間の収穫 果数 を乗 じてその木 の生産 力 とす る。
i
i
. 苗床 において優良 な形 質 の ものを選 抜 す る-
苗床 に植 えてか ら 5カ月以 内 に発芽 す る
もの,初期 生育 が 旺盛 な もの,葉 柄 が太 くて短 い もの ,幅の広 い葉 を数 多 く着 け,根数 の多 い
もの の生産 力が高 い ことが各地 の過 去 の調査 で 明 らか に され てい る 。3)
そ して i
iに重点 を 置 くことが極 めて大 切で あ る。 その他 ,ヤ シの水 は,苗床 に植 えてか ら2
00
日間 くらい はあ って,発 芽 と初期成 育 に とって大- ん大 切 な役 割 を果 たす ものの よ うで ,水 の
ない もの は種子 と して不適 で あ る。 また振 ってみて ヤ シ リンゴが離れ て コロ コロす る もの も除
く。
重 みで果 実 が葉 柄か らはみ 出 してい るよ うな木 (1果 1.
5kg,1宋房 6采 とすれ ば 9kg あ る)
は葉 柄が果房 を支 え る力の弱 い もので低 収性 とされ て い るが , この よ うな性 質 を持 った もの は
mal
lhol
derや pl
ant
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i
on
苗床 にお け る選抜 で排 除で きる もので あ る。 タイや カ ンボ ジアの s
において は この よ うな木 を見 か け る ことが多 い。 わた くLが カ ンボ ジア にいた時 ,数 人 の地主
か ら相 談 を受 けた。 かれ らは ココヤ シの Pl
ant
at
i
on をや りたいが, 種子 用 の果 実 を取 り寄せ
るの にはマ レ- と シ ンガポ-ルの いずれが良 いだ ろ うか, 出来 れ ばセイ ロ ンか らで も輸入 した
い とい うことで あ った。 わ た くLが恐 れ るの は,この よ うに して取 り寄せ られ た繁殖用果実 は,
まず iの条件 にあ ってい るか ど うか不 明で あ る こと, 果実 の単 価 が ひ じょうに高 くつ いてい る
上 に遠路 の輸 送で発芽率 も低 くな るので i
iの苗床 において思 い切 った選抜 が加 え られ ないので
はないか とい うことで あ る。 iの条件 に合 っていて もな おか つ i
iの条件 を満足 させ るため には
酉の 5
0% が棄却 され な けれ ばな らない といわれ て い る。
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)iの条件 が不 明の場 合 には このパ -
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佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
セ ン トは さ らに増 加す るだ ろ うOや は り pl
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derの種子 用果実 は巨射勺で求
iに重点 を 置いてゆ くべ きで あ ろ う。 良 い品種 (品種 といえ るか ど うか現在 の と ころ疑 わ
め ,i
しいが)を導入 して調査 し,遺 伝 的 に も良 い繁殖用果実 を作 り,硬 布 す る仕事 はや は り国家機
闇 において行 なわれ るべ きだ ろ う
〕
2) 適 地 と植 付
ココヤ シが海辺 や川岸 に多 く見 られ ると ころか ら地下水 の高 い と ころが適 す るよ うに思 い誤
って はい けない
動
。
ココヤ シは最 も停滞水 を嫌 うもので あ る。ただ海辺 は潮 の干満 で地下水両 が
き,川で は流水 によ って常 に根 に酸素 の供 給が あ るか らよいので あ る。好塩植 物 (
Hal
ophyt
e)
といわれ ,発芽 や生育 に海水 は少 しの害 も及 ぼ さない。 イ ン ドの あ る地方 で は新 しくココヤ シ
を植 え る ときは塩 を植 穴 に施 す とさえいわれ てい るが ,塩 は必ず しも必須 の もので はない。 し
か し,海 水の洗 うと ころに生 えてい る もの は,海水 が各種 の成 分 を豊 富 に含 んで い るため,敬
量成分 の欠乏 は全 くみ られ ない。 これ はわた くLが前 か らいだいてい る,圃場 か ら流 亡 した成
分 をい ろい ろの場 所-
池 や川 を含 めて-
で阻止 して植 物j
生 産 や動物生産 に結 びつ け,再 び
圃 場-還 元 して農業生産 を,地 力各,維持 して い こ うとい う素 朴 な理 想 ,その理 想 の最 後 の網
を くぐって侮-逃 れ去 った成分 を少 しで もす くい上 げ る点 で ,海 藻や マ ング ロー ブの よ うに強
力で はないが , ココヤ シは唯一一
の 作物 と評 価 してい るO
背後 に相 当高 い山を ひかえ,緩 い傾斜 で海岸 に向か ってい るよ うな土地 は ココヤ シの栽 培 に
最 も適 す る。 ここで はt
l
」
の降水 が地下 を通 って海岸 に向か って い るので
,
1
年 中 ココヤ シの根
は豊富 な水 と養分 の補給 を受 け るか らで あ る。 この よ うな土地 が価値 の少 ない雑 木 に被 われて
い るのを見 ると,実 に惜 しい感 じがす る。
9- 1
0カ月の苗床期 間 車 に選抜 され た苗 を定植 す る。柏 穴掘 りは労 力を多 く要 す る作業 と さ
j
ewar
deneが報告 して い る 。5) 四輪 トラ
れ てい る。わ た くLが かね てか ら考 えていた ことを W i
クターにつ けた pos
thol
ebor
erを利用 して, -一
辺 3フ ィー トの正方形 の 四隅 と[
ト央 に 由 径 1
フ ィー トの穴合計 五つ を あけ, ここに剥皮 した hus
k や堆肥等 の有機 物 や肥料 を入 れ , 真 申の
穴 に筒 を移植 す る ことによ り,従 来 の柿 穴掘 りは著 し く簡易 にな り,木の生育 も劣 らない。 2
人 で操 作 出来 るポータ ブルの ものが あれ ば,密林 の伐採跡 で , トラクターの進入 が難 しいよ う
な と ころに も入 って植 穴掘 りが 出来 る。 またその よ うな状態 で植付 け る ことが地 力の消耗 の早
い熱言昔で は効果 の あ る ことで あ るか ら, この よ うな機械 の効用 は大 きいだろ うO果樹 で試 み ら
れ る爆薬 を使 っての植 穴掘 りも考 え られ るだ ろ う。
3) 栽椙 の密 度 と様 式
I
E方形値 や正三 角形植 が行 なわれ る。枝 の張 る樹 木 と違 い, その葉 の展開す る範 囲が 円形 で
5
) R.Wi
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43
84
40.1
9
5
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- 1
3-
2
41
東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
あ り, その 円の直 径 はおおむね 1
0mで あ る。一 辺 が 1
0m の正 方形 ,あ るいは正三 角形櫨 で は,
ha当 りそれ ぞれ 1
00, 11
5本 とな る。 肥 沃 度 の低 い土 地 で は 1
40-1
50本 とい った密植 が行 なわ
れ る。収穫 の 際の労 力を考 え る と,木 に登 る こと 自体 の労力が 相 当 に大 きいので疎植 で 1果房
の収 量 の大 きい ことが好 ま しい。土 地 の肥 沃 度 を高 め 1樹 の生産 力 を大 にす る方 が得 策 とわ た
くLは考 えて い る。Chi
l
dは bouquet植 と称 す る方法 をすすめて い る。 す なわ ち,中心点 か ら
半径 5m の 円をえが き, この 円周 に沿 って 8本植 え る(隣 りの木 との間 隔 は約 4m とな る)。 こ
の よ うな bouquetを地積 内 にまんべ ん な く配 す る。 この方法 で は除草 や施肥 作業 が容 易で,衣
畜 の放牧 もで き,収 量 も高 い とい う。
コ コヤ シは bouquet植 の よ うな特 別 の様 式 を除 い て は,葉 の拡 が りか ら栽植 密度 が決 め られ
00-1
50本 の線 は今 後 も永久 に変 わ る もので な く, 栽植 密 度 に関す る論
るので ,大体 ha当 り1
議 は他 の果樹 に比 べ て少 ないO ここで思 い 出す の は藤村 の詩 やヤ シの実'
!の一 節 ≠
枝 はな お影
をや なせ るク で あ る。 これ は植 物学 的 には誤 りで あ る。幹 が二又 に分 かれ て い る木 をわ た くL
は一 回見 た ことはあ るが , これ は奇型 で ,植 物学 で は興 味 を もって究 明 され て い るO コ コヤ シ
の葉 は, しか し,枝 の よ うに長大 で頑 丈 な もので あ る。果 実 を と りに登 った原 住民 の足場 と し
て も全 く太 い枝 と変 わ らな い力 を もって い る。
4) 管理 ,間作 ,肥 培
生育初期 の管理 は ひ じょうに大切 で , これ は次 に述 べ るア ブ ラヤ シで も同様 で ,主 と して雑
草 や ,伐 り倒 した林 木 の株 か らの旺盛 な萌芽 を除 くことで あ るが ,除草剤 の開発 で管理 労 力 は
大 幅 に削減 出来 るよ うにな った。
ゴ ムや ア ブ ラヤ シと同様 , ココヤ シ栽 培 の一 つ の特 質 は,植 付 けてか ら相 当期 間,間作が 出
来 る ことで あ る。 メイズや 陸稲 ,豆類 の よ うな短期 作物 か ら,パ イ ンア ップルや バ ナナの他 コ
コヤ シと気候条 件 に対 す る要 求 の似 た ロブスター コー ヒーや カカオの よ うに結果樹 令 に達 す る
ことが早 く, また ヤ シの葉 で多少被 蔭 の あ る方 がむ しろ好 ま しい よ うな作物 を選 び, ヤ シ果 の
収穫 まで に投 下資本 を多少 な りと も回収 し, また pl
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on に働 く労働者 の 自給食 糧 を生産
す るな どの 目的で間 作す る. コー ヒーの調製機械 は高価 で あ るが , カカオの乾燥 に使 う設備 は
安 価 の上 , コプ ラの乾燥 に も転 用 で きるの で, カカオの方が よ り合理 的で あ る。Seychel
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esで
は ココヤ シの被 蔭 が ち ょうどよいので 肉柱 を栽 培 して い るが , これ は長期 の間作で あ る。 ケニ
hew nutを植 えて い る。 ココヤ シの早 期落果 の原
ヤで は ヤ シの間 隔を約 9m と し,間作 に cas
因 とな る Cor
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Phaga) とい う害 虫 を攻撃 す ると ころの mag
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hew nut に好 んで棲 息す るか らで あ る 06) しか
し,将 来 ヤ シ園 と して立派 な生産 を上 げて ゆ くため には コ- ヒ-や カ カオ等 ことに メイズや陸
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佐 藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ
稲等 の栽 培 よ りは緑肥 作物 や被覆 作 物 と して Ce
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a 等 の豆科 作物 を栽 培す る
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on の マ ネ - ジ ャ-の腕 の
のが よ いわ けで , この辺 の かね あいが難 しい と ころで あ り,pl
みせ ど ころで もあ ろ う。
結 果最盛 期 にあ る ココヤ シが 1年 間 に 1ha か ら奪 う NPK の量 は表 3に示 す とお りで あ る。
特 に K20 の収 奪 量が 多 い。 施 肥 の効果 が収 量 に反 映 して くるの は 3年 後 で あ るが , これ は早
魅 の影 響 と同様 で あ る(
後 出)。化学 肥 料 の効 果 の高 い こと も実証 され て い るが ,緑 肥 や堆厩 肥
mal
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derに は実 行 され やす い。Mozambi
queの エ ステ ー
等 の有 機質 の施 用 も効 果 が 高 く,s
トで は家畜 を ヤ シ園で 飼養 す るのが特 長で あ るが , kraalとい う方 法 は約 100頭 の牛 を 6本 の
ヤ シの木 を含 む地 域 に 1晩 囲む。 その あ とす ぐここを 巾耕 して踏圧 の害 を防 ぐとと もに糞尿 を
す き込 ん で しま う。舎 飼 の場 合 は敷 わ ら材料 を毎 日入 れ て ゆ き, 4- 6カ月後 これ を と り出 し
て ヤ シ閲 に施 すが ,1頭 の牛 で 1年 に 100本 の木 に厩肥 を施 す ことが 出来 る 。7'イ ン ドで も間作
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sの よ うな永 年 牧草 を植 え て畜産 との結 び
つ きで地 力維持 を計 る研 究 が行 なわれ て い る 。8)
こ こで一 つ 問題 が あ る。有機 物 は,木 の生産 力を増 し,化学 肥料 を併用 す る ときはその吸収
Or
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)の産 卵
率 を高 め る効 果 もあ るが , ヤ シ類 の大 害 虫 サ イ カ クカブ トム シ (
ふ化 場 と化 す る ことで あ る 。9) これ を ど う解 決 す るか。 答 は比 較 的簡単 で あ る。 有 機 物 を お と
りと して カブ トム シの幼 虫 や さな ぎを殺 す か , カブ トム シは未 熟 な有機 物 に産 卵 す るので よ く
腐熟 した もの を用 い る。 わ た くLはむ しろ前 者 に重点 を お きた い。 その かわ り,産 卵場所 を経
過 習性 を考 え て 3カ月 に 1回 は調 べ て卵 や幼 虫 , さな ぎを捕 殺 す る。逃 れ て成 虫 とな った もの
は ヤ シの樹 冠 を調べ て刺 殺 す る。
BHC等 の殺 虫剤 を砂 や おが くず に混ぜ て 樹 冠 に詰 めて おい
表 3 結果最盛期のココヤシの年間養分吸収量
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ha) 1p 205 1
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ha):K20 1
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東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
て も予 防的効 果 が あ る. この害 虫 を おかす菌 やバ クテ リヤ, ウイル ス, ネマ トーダ も知られ ,
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olには あま り
捕食 昆 虫 や捕食 動物 も知 られ て い るが , 今 の と ころ この害 虫 の bi
,各 国で研究 が続 け られ て い る。灯 火誘穀 も効 が あ るといわれ て い る。
期 待が もてないが 10)
ココヤ シは植 えて か ら 4- 5年 して初 めて幹 が地上 に現 われ て くる。幹 の太 さはすで に この
時 まで に決 ま って お り,それ以後 の肥 培管理 を い くらよ くして も, い ったん形成 され た幹 を太
くす る ことは 出来 ない。同 じ単子 葉植 物 の竹 を思 い起 こせ ば よい。竹 の子 の時 の根元 の太 さは
終 生変 わ らない。 したが って ヤ シの幹 の まだ見 え ない この 4- 5年 は ひ じ ょうに大 切 な時期 で
あ る。木 が生長 して も辛 苦 ,虫害 ,肥料不足等 で生長点 の活動 が衰 え た時 はその部分 の幹 が細
くな る。 ココヤ シの幹 は, その木 の盛 衰 を物語 る生 活史 といえ よ う。葉 は木 の若 い間 は 1年 に
1
4- 1
5枚 ,大 き くな ると11
-1
3枚展 開 して くる。 1年 に平 均 1
2枚 ,だいた い 1カ月 に 1枚 の割
夜には花 房 が生 じ,実 を
合 で展 開 して くる とみて よい。 そ して植 付 けて 7年 冒 くらい か ら各菓 月
結ぶ よ うにな る。開花 後 1
2カ月 すれ ば成熟 す るので , 1本 の木 に年 中いつ で も開花 中の もの か
ら成熟 期 に達 した もの まで 1
2の各段 階の果 実が み られ る(
写 真 3)。 ヤ シの水 を飲 む と き開花後
6- 7カ月 の果実 をつ けた果房 も,
す ぐわ か るわ けで あ る。樹 冠 にはだ
いたい 3年分 36枚 くらいの葉 がつ い
て い るか ら,幹 の まわ りを一 周 して
い る菓痕 を数 えれ ば樹 令 が推 定 され
る。 また樹 高 は若 い ときはよ く伸 び
るが ,結 果盛 期 に入 れ ばだ いた い 1
年
30cm とみ て よいか ら, 樹 高 をみ て
もおお よその樹令 の見 当はつ くが ,
葉痕 を数 えれ ば正確 とな る。葉痕 が
写 真 3 開花中のものか ら成熟果までが同じ木の上
に同時に見 られるココヤシ(
筆者撮影)
240あ った とす ると樹 令 は27とな る。
わ た くLは この よ うに計 算 して原 住民 を驚 ろか し,信頼 をか ちえてか ら聞 き と りに着手 す る こ
とが あ った。 この人 に は うそやで た ら目は言 えな い と思 い こませ るので あ る。
5枚の葉 と約 1
0個 の花房 の anl
age が分 化 L形成 され
生長点 において は展 開 に至 るまで の約 1
つ つ あ る。辛 苦 や肥料 等 の影響 は この分 化 ,形成 中の葉 にあ らわれ ,発育 を抑 え るので ,展 開
した とき菓 面 積 の少 な い貧弱 な葉 とな る。主 と して この葉 の同化 によ って肥 大 す る果実 は落果
もひ ど く充 実 も悪 い。 したが って, これ らの影響 は 3年以 降 に現 われ て くるので あ る。世 界 の
957年 か ら1
958年 の初 め にか けて ひ じ ょうに
コプ ラの70-80% を供給 す る フ ィ リピ ンの生産 が 1
8カ月 にわた って降雨量 が異 常 に少 なか ったため といわれ るが , これ な どほ 予測
減 ったの は ,1
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佐藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ
され た ことで あ り,世 界 の 油脂 の需要 とい う広 い視 野 か らは当然対 策 を立 て る ことが 出来 るは
ず で あ った。
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これ ほ ど コ コヤ シの 重 要 性 の高 い フ ィ リピ ンで , 今大 きな脅威 とな って い る ものが y
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adangの名 で知 られ て い る ココヤ シの病 気 で , ル ソ ン畠の
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具だ けで も1
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万本 の ヤ シが これ で壊 滅 したo病理 学 者 や生理 学 者 が この研 究 に投 離 した結
果 ,ウ イル ス病 説 が 有 力 で ,病 原 の c
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erを追跡 し, El
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s(イ ガ コウゾ リナ
属-
キ ク科 ) とい う雑 草 が この病 気 とひ じ ょうにf
男係 の深 い ことが つ き とめ られ た ol
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'防 除
の前 途 に光 明 が見 えて きた とは いえ ,有 効 な処 置が と られ るまで には多 くの ヤ シが なお被 害 を
うけて倒れ て い くことだ ろ う。 フ ィ リピ ンで は子 供 が生 まれ る と何本 かの ヤ シを植 え る慣 習が
あ り, これ が今 日の フ ィ リピ ンの コプ ラ生産 の大 きな背 景 とな って い る ことを思 うと き , 自分
とと もに生 長 して きた ヤ シが ,愛 情 を か け て きた ヤ シが ,た くさん の実 をつ けて家 族 の蓉 Lを
支 え て きて くれ た ヤ シが , こ う して不 明 の病 魔 におか され て施 す術 もな く立 木 の ま ま枯 れ て ゆ
]も早 く c
adangc
adangの原 因 が解 明 され , 防 除 の
くことは耐 え られ ない気持 で あ ろ う。 1し
手段 が構 ぜ られ ん ことを フ ィ リピ ン農民 の ため に祈 らず にはい られ な い。
5) 収
穫
植 付 けて か ら普 通種 は 7- 8年 ,嬢 生種 は 4- 5年 して初 めて収穫 が 出来 るよ うにな る。前
2カ月 か か るので , 1本 の木 の樹 冠 には成 熟 果
に も述 べ た よ うに,開花 か ら成 熟 まで は お よそ 1
をつ けた果 房 か ら,開花 中の花 房 , さ らに まだ仏炎 に包 まれ た もの まで各 段 階 の もの が み られ
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nで は 2カ月 に 1回 の周期 で収穫 が 行 なわれ るO木 に登 る場 合 は 1人 1日25本 の
る。pl
0-1
5haに 1人 の割合 で 労働者 を配 さな けれ ば な らな い。
収穫 しか 出来 ない ので ,収穫 の た め 1
竹 の先 に匁 物 をつ けて下 か ら収穫 す る場 合 は2
50
本 の木 を処理 で き るので 1
0倍 の 1
0
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50
haに
1人 の収穫 人夫 を 当て る ことが 出来 る
。
しか し木 が 高 くなれ ば これ も能 率 悪 くな るだ ろ う。 か
ね て か ら, マ レー等 で はサ ル を訓 練 して収穫 す る ことを知 って いたが , た また まテ レビで , マ
レ-の ブタオザ ル を使 って ヤ シの実 を とる貧 しい舌年 と土 地 の名家 の娘 との悲 恋物語 を み た 。
物語 も俳 優 の演 技 も幼 稚 な もので あ ったが , ヤ シの実 を と るサ ル の演技 はす ぼ ら しか った
。
下
の男 の綱 さば き と,張 りあ げ る声 に よ ってサ ル は手 と足 を使 って 1個 1個 の実 を ぐる ぐる回 し
てね じ切 って下 - 落 とす。菓 先 か ら次 の木 の葉 先 - と飛 び移 って ゆ く素早 さは あ るが , 1個 1
個相 当 な時 間 と労 力 を か けてね じ切 るの は あ ま り能 率が よ い とは思 わ れ なか った。 サ ル は複 雑
な樹 冠 を め ぐって も,首 の綱 を た どって も との所 - 出て くるほ ど買 いが ,成 熟 采 と未 成熟 果 を
見 分 け るほ どには賢 くな いので ,綱 と声 とで下 か らサ ル使 いが指 示 を与 え るわ けで あ る。人 間
の場 合 ,登 るのが たいへ ん で あ り, これ は た しか にサ ル に劣 るが ,一 刀 で 1回 の収穫 采 のつ い
j木 に
た果 房 を切 り落 とす点 は能率 が よいo木登 りを楽 にす るため に イ ン ドネ シア の個人 所有 o
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東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
は足 が か りの ため幹 に深 い切 傷 を入 れ て い るが , これ は維 管束 を切 り,癒 創 組織 ので きな い ヤ
シには ひ じ ょうに悪 い ことで あ り,また Rync
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rus(象 鼻 虫 )の よ うな害 虫 の産 卵 を たす け
る場 所 に な るので好 ま しい ことで は ないo持 ち運 び 出来 るは しごを か け るな り, トラ クタ ー に
装 備 され た f
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ckerで木 の まわ りを 回 りなが ら収穫 をす る と同時 に中排 まで行 な うよ うに
で もす れ ば能率 は よ くな るだ ろ う。 しか し,これ は木 に登 れ な い者 の考 え る ことで あ り,これ に
よ って どれ だ け能率 が よ くな るか ,生産 費 が安 くな るか は十 分 検 討 しな けれ ば な らな い。交 配
や調査 を す る研 究者 用 の登 はん具 も考 え られ て い る。木 が高 くなれ ば な る ほ ど労 力 がか か り,
一 方 木 は老令 に な って生産 力 が衰 え て くる。 イ ン ドで は高 い老 令樹 の幹 の途 中 に梶 を は め , こ
れ に土 や 有 機 物 を詰 め て不 定根 を 発 生 させ て後 , 梶 の直 下 か ら切 って植 え か え る 更新 法 もあ
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る 。12'優 良 な木 を集 め て採 種 園 を作 るよ うな場 合 には適 用 で き るだ ろ うが ,大 きな pl
の全部 の木 を この よ うな方 法 で更新 す る ことは実 際上 考 え られ ない. コプ ラの生産 に不適 な接
生 種 と コプ ラ生産 に適 した普通 種 との交配 で樹 高 の低 い コプ ラ生産 用 の品 種 を育成 す る試 み の
あ るの は当然 で ,その よ うな木 の 出現 が待 望 され る。 Seychel
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esの よ うに 自然 落果 を待 って収
穫 す る と ころで は, 熟 す る と落果 しや す い品種 を植 え て い る 。1
3
'収穫 の労 力 が た い- ん はぶ け
るが,や は り適 熟 の もの を切 り落 と して収穫 す るのが コプ ラの収 量 も品質 もよ く,東 南 ア ジア
や イ ン ド, セ イ ロ ン等 コプ ラの主 産 地 はみ な この方 法 に よ って い る。
農家 の近 くに植 え られ て い る 自家 用 の ヤ シは鈴 成 りに な って い る ものが 多 いが , これ を標準
に して は い けない。原 住民 の 問 で は, ヤ シは人 間 の言 葉 が わ か るので家 の近 くの木 は実 を た く
さん な ら して人 間 を喜 ば して くれ る とい う伝説 が あ るが , これ は家 の まわ りの木 は ,台 所 の残
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壇 や汚水 ,人 の排 潤 物 を豊 富 に与 え られ るの と,広い 地 積 を 占め て い るためで あ る。pl
で は 1本 当 り年 30-60果 の範 囲 で あ る。 しか し,一 つ の可 能性 を上 げて お こ う。 イ ン ドで は十
ha当 り32,500采 を得 たO これ は一 般 の収 量 3750果 の約 9倍
分 な施 肥 と漕 概 に よ って 1年 に 1
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)
で あ った 。1
降雨 の配 分 が よ く,土壌 水 分 が常 に豊 富 で あ って も果 樹 の 隔年 結果 に似 た現 象 が あ らわれ る。
周年 結果 して い るので , 隔年 で は ない が ,収 量 の多少 に,一 つ の リズ ムが 生 じて くる。
老 木 とな り, もはや経済 的生産 を上 げ な くな った園 は新植 して逐次 老 木 を伐 り倒 し, な るべ
く園 全体 と して の生産 を下 げず に更 新 す る必要 が あ るが , イ ン ド,特 に西 ベ ンガル地 方 で は こ
の よ うな老 木 を伐 り倒 す ことは残 酷 だ と して , 自然 に枯死 す るの を待 つ と ころ もあ る。 フ ィ リ
ピ ンで は台風 の頻 ぽん に襲来 す る地 方 や,海岸 で 海蝕 を受 けて根 もとの浮 き上 が る と ころで は
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佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
根 部 の一 方 の地 面 に穴 を 掘り,木 を押 し倒 して地 面 に接 した方 の幹 か ら新 根 を発 生 させ る. 古
を と るO こ う して木 の若 返 りの計 ら
い根 も活動 を続 けて い る。 曲 が った 樹歳 は 再び垂恵 の位 置1
れ る こ とが あ る 。15)
6) 調
製
収穫 され た果 実 は適 熟 の もの はた だ ちに,や や早 目に収穫 され た もo
)は堆積 して 1カ月 ほ ど
追 熟 させ てか ら,剥皮 す る(
写 真 4)。 剤皮 は一見 簡単 な よ うだ が, や ってみ る となか なか難 し
い。 そ こで ,機 械 で剥皮 すれ ば, とい う考 え が浮 かぶ の は当然 で , こ うして い ろい ろの剥皮 機
が 考案 され て い るよ うで あ るが, わ た くしの知 る範 囲の機械 は ,いず れ も人 間 の手 で や る操 作
を機 械 で行 な うとい う機 構 の ため ,能 率 が悪 く,高 価 で もあ るの で , い っ こ うに現 地 で利 用 さ
れ て い ない
。
か え って手 で剥 皮 す る方 が能率 よ く,労賃 も安 い た めで あ る。pl
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onの優 秀
な労 働者 は 1日 6時 間働 いて 2000個 1
6
), す なわ ちだ いた い 1個 1
0秒 くらいの 割 合 で 剥皮 して
いる
。
しか し普 通 の労働者 で は , この半 分 くらいで あ る
。
も し機 械 を 開 発 す るな ら, 果 実 を
husk と nl
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t に分 けず に縦 か横 に貢 二 つ に割 るよ うな機 構 で あれ ば能率 が よい ので は ないだ ろ
うか 。特 に天 日乾 燥 して い る と ころで は乾 燥 場 が広 くとれ るので この方 法 が適 用 で き るだ ろ う。
剥 皮 した nutは永 く放 置す る と核 肉が変 質 す る
ので , な るべ く早 く割 って乾 燥 させ るの が よ い。
核割 り (
spl
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t
i
ng) も優 秀 な労働 者 で は 1日 9000
個 を処理 す るが ,普 通 は この∬ くらいで あ る。 前
仁
‖初皮 した もの を翌 朝 割 る. 重 い ナ タで 1撃 か 2
撃 して半 分 に割 る。 ヤ シの水 が こぼ れ るが , これ
はか な りの養 分 を含 んで い るので (
表 1), 捨 て る
ことな く家 畜 の飲料 にす るの が よ い。 これ はパ ン
を や くと きの イ ー ス トと して も使 え る
o
割 った もの はす ぐには生 コプ ラを shel
lか ら剥
ぎと りに くいので その ま ま乾 燥 す る。 水 分 7- 8
% まで乾 燥 す るの に 目乾 で は能 率 が よ く, 5- 6
日で あ るが , それ以 上 の乾 燥 は 仁
丹乞で は ひ じ ょう
に能率 が悪 く困難 で あ る。 核 割 り後 , 口乾 して い
hel
lか ら容 易 に剥 げ るよ うに な る
ると コプ ラが s
lを除 いて仕上 げを火 力乾 燥 に よ るの か
ので ,shel
写真 4
ココヤシの果実の剥皮作業 背後にみ
えるココヤシの幹には登 りやすいよう
に大 き く切 りこみがつけられている。
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東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
よい。 コ コヤ シ栽 培地 は多雨 の と ころが多 い が,熱 帯 で は多 くし ゅう両 性 で あ るので ,雨 に さ
え 当 て な けれ ば よ く乾 燥 す る。割 った もの を も し放 置 して お くと,高温 多湿 の もとで はわず か
4時 間 で 腐敗 作用 が起 こ り始 め , 8時 間 後 には粘気 を帯 びて くる。 この よ うな もの を乾 燥 して
も良質 の コプ ラは得 られ な いので ,天 候 に支配 され る 目乾 だ けに頼 って いて は危 険で あ る。 セ
mal
lhol
derに通 す る簡易乾 燥 設 備 で は 17)
, 壁 は ヤ シの 葉 ぶ きに して い
イ ロ ンで研 究 され た s
hel
lを そ の ま ま用 い る。 核 割 り した もの を 日乾 し
るので施 設 費 が極 めて安 く, ま た燃 料 には s
て後 , この乾燥 室 で仕上 げ る場 合 には,燃 料 の s
hel
lは 自園生産 の 60% , あ らか じめ 日乾 しな
hel
lはそ の ま ま燃 や して も煙 が 出ず 火 力 も強 いが ,も
い場 合 は90% の 範 囲 内で まか なえ る。 s
hel
lを い ったん 炭 に して用 い る と,1
60% 必要 とな り, 自国 で生産 した s
hel
lだ けで は まか
しs
なえ な くな る。 出来 上 が った コプ ラは 白 く美 しいが 3カ月以 上 の貯 蔵 は難 しい ので硫黄 の煙 で
処理 す る と貯蔵 性 が増 す 。 この よ うに s
mal
lhol
der で も良 質 の コプ ラ生産 が 出来 るよ うに な
った 。
乾燥 を終 わ った と きの コプ ラの水 分 は5.
5% 以下 で な けれ ば な らな い。 これ以上 で は 貯 蔵 中
adus
tの発 生 が多 くな る。 Copr
adus
tは害 虫 の被 害 で で き る もの で搾 油 の 際邪
にか び や Copr
魔 にな る。 さ らに悪 い こ とは, これ らによ って遊 離 脂 肪 酸 の量 が増 え て ,品質 が悪 くな る こと
で あ る。 コプ ラには厚 味 もあ って 1個 の コプ ラにつ い て も水 分 の分 布 は一 様 で な いので ,一 定
試 料 中の平 均水 分含 量 を な るべ く正 確 かつ 迅速 に測 定 す る必要 が あ る。 この 目的 に沿 った水 分
測 定機 も開発 され て きたので 1
8
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,多種 多様 の s
mal
lhol
derの コプ ラも水 分 パ ーセ ン トを基準 に
して 等 級 がつ け られ ,品質 改 善 - の意 欲 を高 め て ゆ くだ ろ う0- 万水 分 パ ー セ ン トが低 けれ ば
絶 対 に虫害 が な い とい うわ けで はな い。現在 貯 蔵 中 の防 虫剤 と して ほ ど レス リンが あ るが 高価
で あ る。 コプ ラの入 った麻袋 の列 か ら散布 で き る安 価 な薬 剤 の開発 が望 まれ て い る。
輸 入 側 か らは現 在 の H.A.
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, ま た従 来 の
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ed)等 の格 付 けよ りも, もっ と統 一 され た格 付 けが設 け られ る こと19)
外 観 や燃 や して み て そ の燃 え具 合 で判 定 す るとい うだ けで な く,搾 った池 に よ って等 級 を決 め
る こ とが強 く望 まれ て い る。
Copr
a cake とか Copr
a
今 後 コプ ラの生 産 地 にお い て搾 油工 業 が盛 ん に な る ことは, 絞 粕 (
meal
,poonacとい う)を 飼料 を経 て土 地 - の還 元 を考 えれ ば好 ま しい ことで あ るが, コプ ラの
生産 に季 節 的 消長 の あ る場 合 は工場 の運営 が能率 的で な い とい う弱点 を もって い る。 ま た,原
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佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
住民 がサ ンタ ンか らヤ シ油 を と る ことか ら,生 の 内魅 乳 か ら直 接 ヤ シ油を と る ことが考 え られ
るの は当然 で , フ ィ リピ ンで は この研 究 が行 なわれ て お り20)
, また米 人 S.Hi
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erが一 方 の 口
か ら果 実 を入 れ る と,他 の 口か ら油 ので て くる機械 を試 作 した。 コプ ラか ら搾 油 す るの に比 べ
て行程 が少 な くな り,収 油 率 もよ く,絞 粕 も蛋 白質 が多 く, 飼料 価値 が高 いが ,池 の保存性 が
悪 く,絞 粕 も乾 燥 しな けれ ば な らな い。工 業 化 に は今後 い っそ うの研 究 が必要 で あ ろ う。
細粒 コプ ラ (
des
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ccat
edcoconut
) とい うの は , 適 熟 の果 実 を と り,剥反 して s
hel
lを は ぎ と
り,丸 o
jまま 内腔 乳を取 出 し,褐 色 の種皮 を削 りと り,真 白の部 分 の みを細 断 して 1
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-1
70o
F
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(
60
-77o
C)の熱 風で乾 燥 し水分 2% 以下 にす る。 コプ ラと して は最 高 級 品 で , セ イ ロ ンや フ
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ィ リピ ンで生産 ,輸 出 され ,菓子 の材 料 に使 われ るo ケ ーキや ビスケ ッ トに入 って い る小 さ く
刻 まれ た半 透 明 の もの が それ で ,注 意 して 噛 む とかす か に ココナ ッ トの香 りがす る。
6. そ の 他
1) コイア (
coi
r
)
セ イ ロ ンの よ うに コイア の生産 に も コプ ラと同様 な ウ ェイ トを 開 い て い るE
gで は, コイア に
通 した品種 ,す なわ ち,長 実 種 で核 が小 さ く, した が って コプ ラの量 の少 な い もの を栽 培 して
いる
。
成 熟 前 に コイア を とるので コプ ラは問題 にな らな い。 しか し コプ ラ用 の品種 で も コイア
r
et
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ng)の期 間 は相 当 に長 い。 も しコプ
の値 段 の よい場 合 はそれ に転 換 す る。 レ ッテ ィ ング (
ラを と った もの か ら コイア が とれ れ ば好都 合で あ るが,成 熟 異 か らと った コイア は色沢 ,強 度
が劣 るので 問題 にな らなか った が,最 近 コイア を捲縮 した もの を , ゴ ム加工 して 自動車 や汽室
の座 席 の ク ッシ ョン材 料 にす るため ,わ が国 も大 量の コイア を輸入 して い るが, この場 合 色沢
は問 題 にな らない。 強度 も綱 の場 合 ほ どには要 求 され ない と考 え, コプ ラを と った成 熟 異 の コ
イア の テ ス トを専 門家 に依 頼 した と ころ,何 とか間 に 合 うとの解答 を得 たが , これ は な お今 後
確 か め る必要 が あ る
。
2) 活
性
炭
s
hel
lか ら作 った活性 炭 の需要 は, 今 日もな お工 業面 に多 い が, わ た くし達 の身 ぢ か に も冷
蔵 庫 の脱 臭剤 と して使 われ る ことを テ レビや新 聞 の コマ ー シ ャルで 目にす る ことが多 い
O
セイ
ロ ンの よ うに政府 の指 導 で炭 に して大 量 輸 出 して い る国 もあ るが,大半 は燃料 にす るか, その
ま ま放 F
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lされ て い る。 しか し大 量 に集 め て換 金性 を与 え る ことは pl
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on 以 外 で はなか な
か難 しい ことで あ ろ う。
熱 帯 が混郡 の先 進 国へ 贈 る大 きな 油脂資 源 で あ る ココヤ シ栽 培 と これ か らの熱 帯 の開 発 に も
つ コ コヤ シの意義 につ いて述 べ たつ も りで あ るが,十 分理 解 され な か った とす れ ば, それ は ヤ
シの責 任 で な くわ た くしの表 現 の拙 劣 さと資料 不 足 の責 任 で あ る。
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第 5巻 第 2号
東南 ア ジア研 究
Ⅲ ア プラヤ シ oi
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ココヤ シが海辺 の華麗 な ヤ シの女王 な ら,ア ブ ラヤ シは どっ しりと した,力強 い陸の王者 と
で も言 え よ う. その姿 だ けで はな い。油脂 生産 力の最 も大 きな作物 で あ る点 で も(
表 4)作物 の
王 と呼ぶ にふ さわ しい。
油脂 作
物 ≡含 碧
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ココヤ シの よ うに伝播 力 のな い この ヤ シは,永 く熱帯西 ア フ リカにあ って,わず か に原住民
が原始 的な方法 で池 を と り,利用 して いた にす ぎな い。 この油脂 が ヨー ロ ッパ人 の注 意 を ひ く
よ うにな ったの は 1
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世 紀 に入 って か らの ことで あ り,作物 と して注 目を浴 び るよ うにな ったの
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1年 ドイ ツ人 S
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nを は じめ てか らで
は1
あ るO戦前 , この ヤ シに 目をつ けた 日本 人 は, スマ トラにエ ステー トを もち, い よい よ本 格 的
な生産 を上 げ る段 階 に入 った と ころで戦争 にな り, その事業 は挫折 して しま った。
この作物 の特性 や栽 培法 につ いて簡単 に述 べ てみ よ う。
種子 は苗 床 に播 くが,発芽 が困難 なので , これ を促進 させ るため い ろい ろの研 究 が行 なわれ
て お り, 高温処理 の効果 が認 め られ て い る。発芽 を 出来 るだ け斉一 に して苗 床 で選 抜 を加 え る
ことは栽 培 に成 功 す る第 一 歩 で あ る.苗 床 で約 1年 仕立 てて 定植す る。栽 植密度 は ココヤ シよ
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8
0本 で あ る。 定植 してか ら 2- 3年 す る と薬 液 に雄 花房 が あ らわ
りやや密植 で ha当 り1
れ る。 ココヤ シと違 い,雄 花 と雌 花 は別 々の花房 につ く。雄 花房 と雌 花房 はおおむね各葉 月
夜に
交互 に現 われ て くる。 ココヤ シよ り早 く,定植後 3- 4年 で最 初 の収穫 が あ る。1
0年 くらいで
盛 果期 に達 し,以後 その生産 を続 け3
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年 で高 さ約 1
2mに達 し,経済 年令 を終 わ る。若 い間
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5
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佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
は 1年 に 1
0- 1
4果 房 を生産 す るが,樹 令 が進 み ,木 が 高 くな る につ れ て 7- 8個 に減 少 す るが,
1果 房 の重 さが増 して くるので , 高 い木 で の 作業 を考 え れ ば ,収穫 の効 率 は高 くな る と言 え よ
う。大 き な果 房 で は 70kg(
4800果 を含 む)に及 ぶ もの もあ るが,普 通 は 20kg (数 百 個 の果 実 を
含 む ) 以 下 で あ る。 果 房 は次 の よ うな構 成 で あ る。
30-40%
/
果 榎 ,竃 等
外 , 中果 皮 一 果 肉
果房
:果 実
l
核
60-70%
内果 皮 一 殻
内跳 乳- 核 肉す な わ ち カ ー ネ ル (
kernel
)
果 肉 は約 25% , カ ー ネ ル は約 50% の 油 脂 を含 む
。
果 肉 と殻 , カ ー ネ ル の割 合 は種 々あ り, この割 合 に よ って次 の よ うな タ イプ に分 け られ る。
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果 肉薄 く,果 実 重 の 30-40% を 占め る にす ぎな い ,殻 が厚 い o
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i種 も これ に入 る)i
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果 肉 は40-70% ,殻 は iよ り薄 い o
果 肉厚 く60% ,殻 は薄 い。 Du
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殻 は な く, カー ネル は繊 維 質 で 包 まれ て い る.栽 培 は され て い な い 。
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wakkawakka と もい う)-
果 実 の下 部 が心 皮 の変 形 した油 分 を 含 む部
分 で包 まれ て い る。
ア フ リカに は果 肉 が薄 く,核 の大 きい もの ,殻 の厚 い もの が 多 く, ア ジア に栽 培 され て い る も
の は反 対 に果 肉が厚 く,核 の小 さい もので あ る が , これ は 1
848年 レユ ニ オ ンか モ - リシア スか
ら 2本 , ア ム ステ ル ダ ムの植 物 園 か ら 2本 の計 4本 の苗 が ボ ゴ -ル の植 物 園 に届 け られ た が ,
この わず か 4本 に 由来 す る もの が優 良 な De
l
iタ イプ と して スマ トラを は じめ , 東 南 ア ジア で
栽 培 され て い る。 そ の後 導入 され た もの で , これ に優 る もの が一 つ もな か った こ とは ち ょっ と
奇妙 で もあ るが,幸 運 で もあ った。
これ らの タ イ プの 問 の交 雑 も可 能 で あ る。 短 幹 で は らば う 性 質 の あ るア メ リカ原 産 Amer
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a)を も含 め て の育 種 が行 な われ て お り21)
, 将 来 油 脂 生産 力 が は
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るか に大 き く,品質 の点 で も,現 在 の樟 赤 色 の 油よ りもカ ロチ ン含 量 の少 な い もの , あ るい は
全 く含 ま な い無 色 の 油 を生 産 す る品 種 ,短 幹 で 収穫 作業 の容 易 な品 種 ,耐 病 性 の 品種 が育 成 さ
れ るだ ろ う。特 にア ブ ラヤ シの将 来 の発 展 は育 種 の成 果 にか か って い る よ うに思 わ れ る。
病
虫 害 も相 当 に多 い ので ,適 地 の選 定 と防 除 は極 め て重 要 で あ る。施 肥 で 生 産 力 は い っそ う
高 ま るだ ろ う。葉 分 析 等 の研 究 も行 な わ れ 22),適 正 な施 肥 量 の指 示 も得 られ る。
ア ブ ラヤ シの一 つ の大 きな特 質 は, な るべ く果 実 を傷 め な い よ うに収穫 し,収穫 後 24時 間以
内 に熱 処理 (
55o
C の蒸 気 処理 )を して酵 素 の働 きを抑 え て お くと遊 離 脂 肪 酸 が 1.5% 以 下 の良 質
5- 6% とな り,もはや良
の油 が とれ るが , これ よ り熱 処理 が遅 れ る と変 質 して遊 離 脂 肪 懐 が 3.
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東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
質 の池 は とれ な い。熟処理 した果 実 は圧 搾法 あ るいは抽 出法 でパ ーム油 (
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)を とる。 果
肉の柏 は飼料 とな るが, コプ ラの絞粕 よ り価値 は低 い。核 は割 って, 内腔 乳 す なわ ち カーネル
pal
m ker
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を取 り出 し,乾燥 して多 くは輸 出 され る。 カーネル か らはパ ー ムカーネル 池 (
が とれ るが, これ はヤ シ油 と同 じよ うな性 状 で ,用途 も同 じで あ る。
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on と して は,製 油工場 の規模 か らみて少 な くと も 800ha以上 な けれ ば有 利 で ない。
, 収穫 を機械化 して 能率 を上 げ る ことを最 も進
園 の管理 を機械 化 す る ことは容 易 で あ るが 23)
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め なけれ ば な らない と思 う。 ココヤ シの と ころで述 べ た よ うな トラクターに装備 され た f
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cker によ る収穫 が考 え られ る。
以上 述 べ て きた と ころか ら分 か るよ うに, ア ブ ラヤ シは典型 的 な pl
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opで あ り,
この もとで最 も真 価 を発揮 す る もので あ るが ,第 2次大 戦後植 民地 が独 立 し,民 族感 情 か ら外
国資本 によ る pl
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on の維持 ,新設 が困難 とな った。 その最 も著 しい例 は イ ン ドネ シアで,
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964年 に至 る も, なお戦前 の生産 量 に達 しな い。 マ ラヤで は 1
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7年 Kual
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angorに最初 の
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on がで きて以来 , その ほ とん どが pl
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onで あ り,1
964年 には戦前 の生産 量 の 4
倍近 くまで伸 びて い る。 ア フ リカで は従来 か ら自然 林 (
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と pl
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on が並行 して発展 して きたが ,特 に戦後 は大 きな pl
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on を作 るよ りも,新 し
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derを入植 させ ,協 同で工場 を もつ傾 向が 強 く, 1日 4 トン くら
い適 地 を開発 して ,s
oneermi
l
lの設立 で , ア フ リカのパ ーム池生産 は伸 び
いの果 実 を処理 す る工場 ,す なわ ち ,pi
てい る。東 南 ア ジアで も民族感情 を考 えれ ば, この よ うな方 向- の発展 が い ちお う望 ま しいだ
ろ う。 この際,ア ブ ラヤ シの製 油 プ ラ ン トに 日本 の工 業技 術 が寄与 で きないだ ろ うか。従 来 こ
の種 の プ ラ ン トは, ほ とん ど英 国 , フ ラ ンス, ベルギ ー, オ ラ ンダ, ドイ ツの よ うな ヨー ロ ッ
パ の もので 占め られ ていた。 日本 の工業 界が今 ただ ちに研究 を始 め な けれ ば,今後大 いに発展
す る と思 われ るア ブ ラヤ シの製 油 プ ラ ン トは ヨー ロ ッパ に独 占され て しま うだ ろ う。製 油工場
の設 備費 は製糖 工場 と澱 粉工場 の 中間で あ り,
製 油技 術 も同様 その中間で あ ると言 われ て い る。
自然条件 は ゴ ム と酷 似 して お り,年 雨量 は 1
800-2000mm以 上 で季節配分 が よ く,長 い乾燥
期 のない と ころが よ い。 マ ラヤで は生産 の低 い ゴム園が ア ブ ラヤ シに置 きかえ られつつ あ る。
ゴム園の求 心的 な道路網 や輸送機 関 はその ままヤ シ果 の収穫 に役 立 つ。 マ ラヤの収量 が コ ンコ
等 ア フ リカの収量 よ り多 いの は 日照 量が 多 い か らだ と言 われて い る。
この よ うな適 地 は東南 ア ジア に多 い。 ボル ネオ, スマ トラ, マ ラヤを は じめ, モル ッカ, ニ
ューギニ ア等 には熱帯 降雨林 に被 われ た未 開発 の広 大 な平 地 や台地 が あ る. ここが ア ブ ラヤ シ
の ため に開発 されれ ば, それ こそ無 限 の油脂 の宝庫 にな るだ ろ う。南米 には奴 隷 と共 に古 く入
り,各地 に散見 され たが,長 ら く発展 しなか った。 近年 にな り, コスタ リカ, エ クア ドル , ホ
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佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
ンジ ュ ラス, メキ シ コ等 の 中南 米 に は Uni
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tCompany の保護 の下 に,多 くの オ イルパ
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onが あ る。 現在 は末 だ生産 量 は少 ないが , 中南 米 の地 域 には適 地 が広 くあ る
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の で ,将 来 重要 な産 業 と して の発 展 の可 能性 が高 い。東 南 ア ジア に とって も競 争 相 手 にな るだ
ろ う。
この ヤ シにつ いて は多 くのペ ー ジを さか なか った。東 南 ア ジアで は新 参者 で あ り,主 と して
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op と して発 展 し,原 住民 との食 生 活 のつ なが りもな い。 そ うい った面 で はた し
か にお も しろ味 の な い作物 で あ る。油 脂 生産 に対 して無 限 の可 能性 を もっ この オ イルパ ー ムに
興 味 と好 奇心 を持 つ 人 の, それ を さ らにか き立 て るため にあえ て深 入 りしな いで お こ う。 ただ
一 言 ,将 来 この ヤ シは 油 脂 生産 の王 座 を 占め るよ うに な るだ ろ う。
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I サ ゴヤ シ s
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サ ゴ ヤ シ !それ はわ た くLに と って は忘 れ る ことの 出来 ない もので あ る。 わ た くLが 20代 の
終 りか ら30才 にか けて , ア ンボ ンとセ ラム (
Cer
am)島 で過 ご した 3年 間 この ヤ シで 生命 をつ
ないで きた か らで あ る。 この方 面 で飢 餓 との闘 いを した 日本 人 は多少 と もこの ヤ シの 恩恵 に浴
して い るはず で あ る。戦 前 ,佐 々木 喬博士 はニ ューギ ニア や モル ッカ方面 を 調査 され , この ヤ
シにつ いて報 告 され て い るが ,他 に 日本 人 と して調査 した人 は な い よ うで あ る。戦後 ,佐 々木
博 士 と長戸 博 士 が熱 帯 農業 誌上 に この ヤ シの有用 な ことを報 告 して い る 。24)
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270-1
295) や Fr
anzDr
ake (
1
578) な ど東 南 ア ジア を 訪 れ た人 々に よ って ,
サ ゴが東 南 ア ジア の 一 部 の住民 の 重要 な食 糧 に な って い る こ とが ヨ- ロ ッパ に 紹 介 され た。
Fr
anzDr
akeは,あ る木 の幹 か ら粉 が とれ , これ か ら菓子 が 作 られ , この菓子 は 1
0年 後 に もな
us(
1
741
)は有 名 な彼 の著書 He
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お食 べ られ るほ ど保 存 性 が 高 い と述 べ て い る。 Rumphi
Amb
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eに,サ ゴ ヤ シにつ いて初 めて詳 しい記 載 を して い る。 ア ンボ ンや セ ラムで は sago,
emboel
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a,マ ラヤで は r
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a とか r
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a と呼 ん で い る。 先 年
ジ ャバ で は r
わ た くLが南 タ イの Kauchong 近 くの農家 で 聞 い た と ころで は, サ グ ー と呼 ん で い た。 東 南
ア ジアで は広 く米 が主食 と され るが , この東 の端 の ニ ューギ ニアや その周 縁 の モル ッカ群 島等
の原 住 民 の主 食 は この ヤ シか らとった澱粉- サ ゴで あ る。
1. 植 物 学 的記 載 ,分 布 お よ び生 育条 件
サ ゴ ヤ シの もつ 大 きな生産 力 や 澱 粉 の採 取 法 を知 るた め に は是 非 必要 なので ,一 応 型 通 りに
植 物学 的 な記 載 や分布 ,生育 条 件 等 につ いて述 べ よ う。
サ ゴ澱 粉 の とれ るヤ シには Me
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guの ほか二 ,三 の種 が あ る。葉 柄 に
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) 佐 々木喬 「西イ リアンの未利用澱粉資源サゴヤシ」『熱 帯 農 業 』Vo
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,No.3
,pp.1
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長戸一雄 「
特別研究,サ ゴヤシ」i
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東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
とげの多 い M.
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iと, とげの ない M.s
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gu とは異 名 同種 とす る学者 もあ る 025) 幹 か ら
澱粉 の とれ る もの には,
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サ トウヤ シ (
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a), パ ル ミラヤ シ (
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扇 ヤ シと もい う-
等 数種 の ヤ シや,ソテ ツの類 もあ るが ,採取 量 はサ ゴヤ シ
とは比 較 にな らない ほ ど少 ない。
モル ッカや ニ ューギ ニア に 自生 して い るサ ゴ ヤ シ (
M.
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写 真 5)は,幹 の直 径 60-
1
00
cm,高 さ1
0m以上 に も達 す る。 幹 の外 の堅 い層 は, 厚 さ 4-5cm で , そ の 内部 は澱粉 を含
ん だ柔組織 ,す なわ ち pi
t
hで あ る。長大 な羽状 複葉 は 4-6m に も達 す る。葉 柄 は強敵 で , 特
にその基 部 の幹 を抱 いて い る部分 は幅広 く,後 で述 べ るよ うに細工 して各種 の容器 や澱粉 採取
5恥 幅 8-1
0cm で,屋根 ふ き材料 な どに使 われ
の装 置の重要 な部 品 とな る。小葉 は長 さ 1- 1.
る。若 い ときは葉 柄 の裏側 には長 い とげの あ る木 が多 いが ,大 き くな るとな くな る。花芽 は木
の頂上 ,生長点 の先 にで き,雄大 な 円錐 花序 に な る。幹 の中 に貯 え られ た澱 粉 は この花 の形成
と結実 にす っか り使 いつ くされて しま う。 コウモ リがぶ ら下 が るよ うにな った時 は幹 の 中の澱
粉 がす っか りな くな った しる しだ と住民 は信 じて い る。 そ して 間 もな く木 は枯 れて しま う。 こ
の よ うに一 度 開花 ,結 実 す ると枯 れ て しま う点 で コ コヤ シや ア ブ ラヤ シ, あ るいは これ か ら述
べ る他 の ヤ シ類 とた い- ん違 う点 で あ る。
M.
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iはモル ッカ,す なわ ち, ブル ー, セ ラム,- ル マ- ラ等 を中心 と して , 南 はケ
ィ,アル諸 島,東 はニ ューギニア に至 る地 域 に 自生 して お り, M.
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guはマ ラヤ, ボル ネオ,
ジ ャバ , スマ トラ, ミンダナオ, タイの南 部 に至 る範 囲 に 自生 し, まれ に栽 培 されて い る。海
岸 か ら,時 には500-700m の高地 に至 るまで広 い範 囲 にみ られ る。 降雨 が あ る と湛水 し,何 日
間 も水 が ひか ない よ うな湿 地帯 に密 林 を な して生 えて い る。 この よ うな土 地 は海岸 近 くの低 地
に多 い。 モル ッカで はニ ッパ ヤ シが混生 して い る こと もあ るが ,サ ゴヤ シ林 の周縁 にニ ッパ ヤ
シの生 えて い る こ とが 多 い。 だ い たい,ニ ッパ ヤ シの生 え る湛水 地 と陸の 中間地帯 が ,サ ゴヤ
シの適地 の よ うで あ る。湿 地 で な くて も生 え るが ,生育 が劣 り,澱 粉 の収量 が少 ない。 も し,
わた くした ちが初 めて サ ゴの 自生林 に入 ろ うとす るときには,長 ズ ボ ンを は き,手首 まで包 む
長 そで の上衣 を着 ,- ル メ ッ トを被 り,杖 を持 つ のが よい。原 住民 がサ ゴ採 取 に入 るため に敷
いた幅狭 い板 -
とい って も,サ ゴ澱粉 を採 った あ との幹 を裂 いた もの-
の上 を歩 き, とき
どきほ体 の平 衡 を失 な って湿地 に足 を踏 み こみ, 汚水 が入 って重 くな った くつ を気 に しなが ら
進 んで ゆ く。安 定 を失 な って も周 囲 のサ ゴの葉 を持 た ない方 が よい。葉 柄 の大 きな とげが刺 さ
るか らで あ る。 この時 杖 が役 に立 つ 。下 ばか りに気 を と られ て い る と頭 に とげの触 れ る危 険が
あ る。ヘ ル メ ットは この時保護 して くれ る。薄 暗 い まで に陽 は射 しこまないが, シ ャツや ズ ボ
ンはす っか り汗 に濡 れ,額 か らは汗 が, 冷汗 もま じって流 れて くる。上 を 向 けば大小 のサ ゴヤ
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6-
佐藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
シ の葉 が茂
り, す っか り空 を か くして い る。 そ の
上 を赤 道直 下 の太 陽 が焼 けつ くよ うに照 りつ けて
い る ことだ ろ う。微 風 も吹 か な い。 熱 帯林 の植 物
純生 産 量 が考 え られて い るよ りは るか に少 な い と
す る生 態学 者 に も是 非 調 べ て も らいた い光 景 で あ
る。 豊 富 な水 と,沈 積 す る養 分 で , そ の植 物 生 産
は き っ と 最 大値 に 達 して い るだ ろ う。 とは い え
1
00% の湿 度 と蒸 せ 返 るよ うな暑 さの た め, 不快
指 数 も最 高値 に達 し, 澱 粉 を探 った粕 の腐 った酢
っぱ い臭 い が漂 い,初 めて訪 ね た人 は胸 が 悪 くな
るだ ろ う
。
小 さな虫 も飛 んで きて , は だを 刺 す。
原 住 民 は, わず か の ものを 身 に ま とい, は だ しで
どん どん林 の奥 へ と進 ん で い く。 この よ うな 湿地
に も, と ころ ど ころに水 のつ か な い と ころが残 っ
て お り, そ こで澱 粉 を採 取 して い る。横 には よ ど
写真 5 サ ゴ ヤ シ
(
TanahAi
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aより)
ん だ よ うに静 か に流 れ て い る小 川 や時 には枯葉 を煮 出 した よ うな褐 色 の溜 り水 が あ る。
モ ル ッカで は この よ うに 自生 して いて特 に栽 培 して い る もの はな いが , も し栽 培 す る とす れ
ば, 長 さ 50-60cm の小 さな 吸枝 (
s
ucker
-
根 芽 と もい う) を根 を少 しつ けて切 りと って植
え る。 わ た くしは た だ 1度 だ け, 1人 の原 住 民 が 吸枝 を この よ うに と って きて , サ ゴ林 のす け
た と ころに補植 して い るのを見 た ことが あ る。 吸枝 を植 え る と, 3年 ほ ど して幹 が地上 に現 わ
れて くる。 そ して これ に また吸枝 が次 々と発 生 して くるの で永 久 的 な サ ゴ林 が形 成 され る. 澱
粉採 取 の ため開花 前 に伐 り倒 され た もの は, 種子 が で きな いが , 自然状 態 で も,種子 に よ る繁
殖 は ご くまれ で あ る。 そ の理 由は,種子 が成熟 す る と,葉 柄 の基 部 の と ころに落 ち, そ こで発
芽 す るが, うま く地 上 に落 ちて 生育 す る こ とが少 な いか らだ といわれて い る。有 用 な ヤ シで こ
の よ うに栄 養 繁殖 ので き るの はサ ゴ ヤ シとナ ツメヤ シで あ る。 品種改 良 の全 く行 な わ れて いな
いサ ゴ ヤ シに と って ,将 来 品種 改 良 を行 な う上 に, この こ とは大 きな プ ラスにな るだ ろ う。
環境 条 件 の よい場 合 は,植 付 けて か ら1
0- 1
2年 で ,悪 い場 合 は 1
5-20年 で収穫 期 に達 す る。
しか しこれ は最 初 の植 付 か ら収穫 期 に達 す るまで の年数 で あ って , 吸枝 が叢 生 して くるので ,
この 中 の強健 な ものを段 階的 に残 して ゆ けば , それ以 後 の収穫 の周期 は短 縮 され て くる訳 で あ
る。西 ジ ャバ で は, 1株 は常 に 5本 にな るよ うに,叢 生 して くる吸枝 を取 り除 いて い るが, セ
ラムで は この よ うな管理 や配 慮 は して いな い。 自生 の サ ゴ林 は広 大 で,現在 の ま まで は利用 さ
れず に朽 ちて ゆ くもの も多 いが, 地 形 な どか ら採 取 しや す い と ころは 当然 この よ うな管理 を し
て もい いわ けで あ る。 これ を や らな いのを怠 惰 と責 め る こ と も, 間 引 きを 強制 す る こと も適 当
2
5
5
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
で はな い。原 住民 の考 え方 を理 解 す るため に, わ た くしの体験 した ことを述 べ よ う。
0
本 も束 に して植 え る0 ≠こんな に 1カ所 にた く
セ ラムの原 住民 はサ ツマイモの苗 を 5本 も1
さん の苗 を植 え る とイモが た くさん とれ な いで はな いかク とた しな め る と, かれ らはた だ ちに
≠あな たは何 を言 うのか, こん な にた くさん百 を植 えて も少 ししか イモが採 れ な いの に, あな
たの言 うよ うに苗 を 1カ所 1本 しか植 えな けれ ば,収穫 は ほ とん どないで はないか〃 と真剣 な
顔 で反論 して くる。 かれ らには作物 の競合 とか共 倒れ とい った観念 が ない ので あ る。 この考 え
方 は おそ ら くセ ラム島民 に限 った ことで はない だ ろ う。 またサ ツマイモ に限 った ことで もな い
だ ろ う。文化 や教育 の低 い と ころの農民 には共 通 した考 えで あ ろ う (
子 供 を た くさん産 んで お
くとい う低 開発 国 の人 々の共 通 した習慣 ?に も, この心理 が働 いて い るので はな いだ ろ うか)。
この蒙 を啓 くには実物教育 しかな い。 しか しい きな りサ ゴヤ シの吸枝 の間 引 きを強制 す れ ば原
住民 の大 きな 抵 抗 にあ うだ ろ う。 まず サ ツマイ モで競合 の 様 相 を見 せ て納得 させ る ことで あ
る。 わた くしのいた村 の人 達 は,今 もサ ツマ イモはわた くしの教 えた通 り,宙 を 1本 づ つ植 え
て い る ことだ ろ うと信 じて い る。 しか し残 念 なが らサ ゴヤ シに この理 屈 を教 え るまで には至 ら
な か った。 た くさんで て くる吸枝 はい っこ うに間 引かな い。競合 で結果 の よ くな い ことは明 ら
かで あ る。 も し, これ を適 当 に間 引いて ゆ けば澱 粉 の生 産 は大 い に増 す だ ろ う し,収穫 の労力
も節 減 され るだ ろ う。 サ ゴヤ シの葉 は 6mに も及ぶ ので,植 付 は ha当 り1
0
0
本 ,あ るい はそれ
以下 と し, 出て くる吸枝 を間 引いて ,段 階的 な子 株 ,孫 株 , --を生 や し,親株 の葉 の問 か ら
もれて くる 日光 を全部 吸収 して 同化 の効率 を 1
0
0
%発揮 させ る。
2. 収
穫
サ ゴ澱 粉 の採 取 の ことをサ ゴ打 ち (
s
agopo
kol
) とい う。 これ は澱 粉採 取 の一 つ の作業 で あ
る pi
t
hの削 りと りを意 味す る言葉 で あ る。収穫 期 は pi
t
hの澱 粉 の量が最 高 に達 した時 で ,こ
の時 は花 が抽 出す る直 前 で あ るが,外 観 的 には葉 が立 つ とき, といわれて い る。平地 と山の方
とで は多少 収穫 適 期 の徴 候 が違 うよ うで あ る。原住 民 は収穫 適 期 を知 り, しか もその澱 粉 の畳
まで も ピタ リとあて る。 わ た くLは セ ラムに原 住民 と-諸 に住 んで いて, 1日に 1度 は原 住民
の無知 や頑 迷 にあ きれ果 て, あ るい は愛 想 をつ かす ことが あ った。 また 1日に 1回 はかれ らの
知恵 やす ぐれ た技術 に感 嘆す る ことが あ った。今 日なおかれ らの勘 の良 さ,観 察 力 の鋭 さに敬
服 して い る ことに この一 事 が あ るO わた くしが やこの木 は も う収穫 期 にな って い るだ ろ うO と
言 うと
≠い
や,今伐 り倒 して も水 だ け しか とれ な い。 あ と 6カ月待 て〝 とい う。 6カ月経 って
やも う収穫 出来 るだ ろ うク と聞 くと ≠
残 念 な が らまだ適期 にな って いな い。 もうあ と 4カ月待
澱 粉採 取 を させ ると,
て'
'と言 う。 も し ≠
約束 の 6カ月経 ったか らo と言 って無理 に切 り倒 し,
それ は全 く原住民 の言 うとお り,水 ばか りで,澱 粉 は驚 くほ ど少 ない。 当時 わた くLは この原
因が分 か らなか ったが,今 日の知識 を もってすれ ば, おそ ら く水 に溶 けた糖 の形 で幹 の 中 にあ
hos
phor
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as
e の よ うな酵素 の働 きで急激 に澱
る ものが収穫 期 (開花期 が近 づ くと)にな ると p
2
5
6
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8-
佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
粉 に変 わ るので あ ろ う。 これ はサ ツマ イモ等 の イモへ の澱 粉 の蓄 積 とは異 な るよ うで あ る。 お
そ ら く生物化学 の分 野 において も興 味 の あ る ことだろ う。
図2 A
a:na
nl
B
b:くさび
a:
s
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⊃
:
go
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i c:
t
o
man d:
水 くみ道具
かれ らは適 期 に達 した と判 断 した木 を 伐 り倒 し,幹 に縦 に くさびを打 込 んで二 つ に割 る。 こ
の中 に入 り,竹 で作 ったサ ゴ打器 (
naniとい う)で 1-2c
m の厚 さに pi
t
hを削 って い く(図 2A)0
naniは竹 製 の他 に小 さな三 角 形を した鉄 の爪 (2平 方 cm くらいの)を木 に打 込 んで柄 をつ け
た もの もあ る。手 は休 まず打 ち続 けな が ら,足 で は削 った ものを こね回 して い る。 この作業 は
一見単 純 で少 しの技 術 もい らな い よ うで あ るが,や って み ると難 しい
。
削 るの に夢 中 にな って
い ると足 の方 が お ろそ か にな る。足 に気 を取 られて い ると大 き く削 りとって しまった りす る。
薄 く削 り,足 で もむ こ とは澱 粉採 取 に きわめて意義 の あ る ことで あ り,科学 的 で あ る。削 った
pi
t
h に水 を注 いで 澱 粉を採 るので あ るが, 首 スマ トラにいた Ⅰ氏 は スマ トラで は 優良 品柾 は
pi
t
hを切 って その ま ま焼 けば食 べ られ る。 ち ょうど餅 の よ うな もの だ と話 して いたが,わ た く
Lは残 念 なが らその よ うな経験 がない。 も しこの よ うな優 良 品種 が あ るとすれ ばい っそ うす ぼ
ら しい ことで あ る。 ケ イ諸 島で は原 住民 は pi
t
hを その ま ま食 べ る こと もあ ると言 われ て い る。
澱 粉の採 取 法 にはい ろい ろあ るが, モル ッカで一般 に行 なわれ て い る方法 は原 住民 の方 法 と し
て は最 も進 んだ もの と思 われ るので述 べ て み よ う(図 2B), (
写真 6)。 サ ゴヤ シの葉 柄 の幅広
くな った基 部 の部 分 を用 い
,
その大 きい方 の一端に コ コヤ シの葉鞘 の網 の よ うにな った繊 維 を
ahaniと呼ぶ
取 り付 けて,ふ るい とす る。 この装 置を s
りとった pi
t
hを入 れて運 んで きて ,s
ahaniに入 れ ,
。
サ ゴの葉 柄 を乾燥 して作 った箕 に,削
水
を加 えて こね回す と,水 と澱 粉 だ けが
ふ るいを通 って流 れ 出す。 サ ゴの葉 柄 で 作 った三 角形 の器 に トウの ひ もを付 け,端 を釣 竿 の よ
うな竹 の端 につ けた もので ,3-4m 先 の水溜 りや小 川 の水 を ,魚 を釣 り上 げ るよ うに巧 み に吸
上 げ る。 この手練 は全 くす ぼ ら しい。水 と波 粉 は沈殿 槽 (
got
i
)に集 ま る。got
iは pi
t
hを削 り
とった古 い幹 の両 端 にサ ゴヤ シの葉柄 の基 部を継 ぎた した もので,安 定 よ く置いて あ る。一端
か らは さ らに次 の got
iに水 が流 れ 出す よ うに して あ る。 しか し大 半 の澱 粉 は最 初 の got
iで沈
精 す る。 got
iに滑 った生 搬 粉 は 竹筒 な どに入 れ た りす る こと もあ るが, 通 常 サ ゴの古 い葉 で
-2
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2
5
7
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
編 んで竹 の たが を はめたバ スケ ッ ト (
t
oman とい
う) に入 れて運搬 や貯 蔵 をす る。 これ にい っぱい
0kg あ る。 20kg,30
生澱 粉 を入 れ るとだいたい 1
kg入 る 大 きな トマ ンもあ るが 10kg トマ ンが多
く用 い られ る。 い った い, 1本 の木 か ら, どれ だ
けの澱 粉が とれ る ものだ ろ うか。 わた くしの経験
で は普 通 30-40トマ ン (
生澱 粉 300-400kg)で最
生澱 粉 800kg)で あ った。文献 をみ
高 は80トマ ン(
て もだいたい この収 量 は妥 当で あ るが, 中 には著
し く少 ない報告 もあ る .26)これ は Me
t
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nの
種 に もよ るが, また原 住民 の と った澱 粉 には相 当
の不 純物 も入 って お り,水分 も一 定 でな いので ,
は っき り した ことは分 か らない。生 澱 粉 (
水 分 35
% くらい) は 1人 1日 1
kg摂 れ ば十分 で あ る。1
本 のサ ゴで 1
年 間遊 ん で食 べ て ゆ ける勘定 にな る。
20kg と し,1
佐 々木博士 は 1本 の澱 粉収量 を約 1
写真 6 サ ゴ澱粉 の採取 s
ahani
,got
i
,
t
o
manが見える。水 くみおけば
図のものとは違い,サ ゴの葉柄
の幅広いところで作 ったもので
ある。
人 1年 の摂取量 を約 1
20kg と して い るので ,1人
(
TanahAi
rKi
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a よ り)
1年 1本 の割合 とい う点 で は一 致 す る.実 際は一 家 親族 で サ ゴ打 にゆ くO子 供 や犬 , ニ ワ トリ
まで連 れ,小 屋 が げを して サ ゴ打 の問 そ こで生 活 をす る。 自然 林 とはいえ,村 の所有地 は決 ま
って い る。セ ラムで はサ ゴ打 は男 の仕事 で あ るが,女子 供 も削 った pi
t
hを運 ん だ り して手伝 う。
南西 ニ ューギニアで はサ ゴ打 は婦 人 の仕事 と されて お り,死 んで埋 葬 され た と き,墓 の上 にか
の女 が生前使 って いた naniと水 汲 みのかめを飾 る習 わ しとな って い る。
大人 も子 供 も トマ ンを天 秤棒 で担 ぎ,女 は頭 にのせ て, い そい そ と山へ帰 って くる。 そ して
しば ら くは休 む。 しか し, たいて いの場 合 この休 み は安 息 で は な くて, マ ラ リヤの再 発 で苦 し
む とい った方 が よい。サ ゴ林 の生 活 は高 い湿気 と暑 さで, それ ほ ど体 に こたえ るので あ る。 回
復 して しば ら くは山の畑等 で働 き,二 ,三 カ月 もす ると再 びサ ゴ打 に出か けて行 く。 これが か
れ らの生 活 の繰 返 しで あ り, おそ ら くは今 日もなお続 いて い る ことだ ろ う。 こ う して と った澱
粉 は大部 分が 自家用 で あ るが,物 々交換 に使 われ, また現 金 で取 引 され る こと もあ る。
3. 調 理 と 加 工
サ ゴを主食 と して い るモル ッカの原 住民 の問 には次 の よ うな独特 な調理 法 が広 く行 なわれ て
い
る。
1) パ ペ ダ (
papeda)
.Barrau,"Paci
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ops
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ago.
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5
8
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0-
佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
1
一
番 多 い調理 法 で あ る。土製 の容器 に生 サ ゴを入 れ ,少 量 の水 で とき,慢拝 しなが ら熱湯 を
注 ぐ。煮 立 った湯 を注 ぐと透 明 にな る。熱 が足 りない と白いの りの よ うにな るが,かれ らほ無
頓 着 で あ る。 ち ょうどかた くりの よ うで あ るが,パ ペ グはの りの腐 った よ うな臭 いが して い る
ので,初 めて の人 には よほ ど飢 えて いな けれ ば食 欲 の お こ らない しろ もので あ る。食 べ なれ る
とこの臭気 もい っこ う気 にな らず ,む しろその臭 いを,味を,楽 しむ よ うにな る。 これを箸 か
1本 の- らの よ うな もので巧 み に巻 きあげて皿 の スープの上 に落 と し, 口をつ けてすす るので
あ るが, さ じを用 いて もよい。 こん な言葉 が あ る や
魚 を食 べ,野菜 を食 べ ,パ ペ ダを食 べ よ〃
つ ま りこの三 つ を 口の中で混ぜ て食 べ ると調和 が とれて おい しい とい う意味 で あ る。 なかなか
満腹感 が得 られ ないので,つ いた くさん食 べ ると腹 が水 で い っぱい にな る。消化 も良 い か らす
ぐ空腹 にな る。熱 い問 にパ ペ グを竹 筒 に入 れ,バ ナナの葉 で栓 を して弁 当 とす ること も多 い。
竹 を割 ると,冷 えて 固 まったパ ペ ダは ち ょうどうい ろ うの よ うな感 じがす るが,臭気 はい っこ
う衰 えて いない。 これを指 です くい とって食 べ る
。
2
) サ ゴ レンペ ン (
s
agol
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mpe
n,または単 に l
e
mpe
n)
適 温 の澱 粉 を竹 製 のふ るい にか け る。粉 が細 かす ぎて もい けない.一 方 ,竹 を燃 や して その
1
0
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mx7
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mン
:
2
c
m くらい)の並 んだ素焼 きの焼 器 を 置いて熟 す る。 竹 は火
上 に レンペ ンの型 (
力が強 く畑雄三
出 ない。 この熟 した容器 にふ るった粉 を軽 くつ め, バ ナナの葉 を被せ て お くと,
やがて桃褐 色 の レンペ ンが焼 き上 が る。 レンペ ン作 りはすべ て婦 人 の仕事 で あ る。温 かい問 に
食 べ ると柔 らか く,舌触 りもよ く,なかなか おい しいO焼 く前 にヤ シ砂糖 の塊 を巾 に入 れて お
くと レ ンペ ンの中 に黒 砂糖 が溶 け こむ。 レンペ ンには もはや生澱 粉 の異臭 も酸 っぱ味 もない。
ヨー ロ ッパ 人 も レンペ ンをサ ゴヤ シのパ ンと称 し,温 かい問 に食 べ れば うまい と評 価 して い る。
しか し原住民 にと って レ ンペ ンは重要 な保存食 で あ り, いわば田パ ンで あ る。 ヤ シの葉 で編 ん
だ亀 に入 れ,台所 のか ま どの上 につ る して お くと,高温 多湿 の この地方 で も数 カ月 かびず に保
存 が 出来 る。 1個 は約 1
60
grで, 大人 は 1日 5個食 べれ ば栄養上十 分 とされて い る。 1年 に
1
8
2
5個 とな り,30
0
kgの乾燥 粉 か ら作 られ るので, これ は生 澱粉 にすれ ば約 40
0
kgに相 当 し,
生殿粉
1人 1日 1
kg摂 る場 合 とほぼ等 しい。 かれ らが何 日も出向 くときは, な にが しかの レ
Nyc
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anusとい う猫大 の草食 動物) の燥製 肉, ココヤ
ンペ ンと クス (
シ果,塩等 を持 って ゆ く
o
L
L
J
道 で食 事 をす る場 合 , 1人 が森 の中-入 って ゆ く。や がて長 い竹
筒 を担 いで帰 って くる。 ヤ シ酒 が入 って い る
。
かれ らは必ず ヤ シ酒 を採 って い る木 の あ る場 所
の近 くで休 み,昼食 を摂 るので あ る。 この ドプ ロ クで渇 きを いや し,堅 い レ ンペ ンをか じ り,ヤ
シの実 を割 って生 コプ ラを食 べ , クスの 肉を しゃぶ る。 そ して男 は天 秤棒 を担 ぎ,女 は荷 物 を
カ コイア (タ コの木 の一 種 の葉 を綴 って作 った雨 具)で くるんで頭 に載せ , 山道を登 ってゆ く。
3
)
シノ リ
(
s
i
nor
i
)
火 の上 の鉄 なべ に薄 く油 を しき,水 を加 えて多少 湿 ら した生澱 粉 を入 れて撹拝 して い ると,
- 31-
2
5
9
東南 ア ジア研究
第 5巻
第 2号
やがて半透 明の部分 がで き,粉 は多少 ほ ぐれ,一部 は餅 のよ うにねぼ って くる。 これを シノ リ
とい う。初 め にサ ンタ ンや生 コプ ラの削 った ものを混ぜてお くとい っそ う風 味がで る。わた く
しの感 じでは最 も米 飯 に近 い もので,原住民 もこれを好 む。
生澱粉 は水分 3
0-40%,乾燥 した もので 1
2-1
8%,脂肪 と蛋 白質 はほ とん ど含 まない。生澱
粉 は貯蔵 中 に発酵作用 で ビタ ミンBは増 すが他 の ビタ ミンは含 まない。 このよ うに完全 な澱粉
質食 で あ り, タ ピオ カやバ レイ シ ョ澱粉 と同様 で あ るが, その穀粉粒 は顕微鏡的 には容易 に区
別 で きる し, また性質 も異 な ってい る。 しか し用途 はタ ピオ カ澱 粉 の代用品的性格 が強 い。 モ
ル ッカの原住民 の体 力が弱 く,貧血 してい るのをサ ゴの栄養的欠 陥 に帰 してい るむ きもあ る。
事実, この地方 の住民,特 に子供 た ちは 目に生気 が な く,腹 が膨 れ, まるで ヒ ョウタ ンを並 べ
たよ うな感 じを与 え る。 これ は澱 粉 の過剰摂取 に もよ るだ ろ うが,腹 を抑 えてみ ると,へ その
下 まで石 のよ うに固い。 マ ラ リヤにおか され, ひ臓 が肥大 して い るためで あ る。原住民 は脂肪
や蛋 白質 の摂取 には,かれ らな りに相 当気 を配 ってお り,海岸近 くの住民 は ココヤ シや魚を と
り, 山の住民 は海岸 か らココヤ シを運 び, ニ ワ トリを飼 い,野猪 や クス,川魚を と り,野菜を
池でいためて食 べ る。前 に述 べ た "
魚 を食 べ,野菜 を食 べ,パ ペダを食 べ よク の言葉 は栄養 の
面 か らい って も含蓄 のあ る言葉 であ る。時 にはイナゴやバ ッタの類 を と り,女 は頭 の まげの中
に仕舞 い こみ,農 作業 を終 わ って食事 の時,取 出 して焼 いて食 べてい る。原住民 はよ く4-5
c
m
の指 くらいの太 さのよ く肥 えた白い幼虫を とって くる。頭 を爪先 で ち ょっと切 って殺 す。 白い
液 が出 るO これは
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sとい う象鼻虫 の幼虫であ る.原住民 は これを oel
ar
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ago(サ ゴのヘ ビ)とよんで い る。 わた くLは確か に澱粉粕 を丹念 にかいて この虫を とって い
た よ うに記憶 してい るが, これは活物寄生 であ るので, そん なはず はないわ けで あ るか ら, あ
t
hを削 ったあとの生長点 の部分 だ ったか もわか らない。 この幼虫 はサ ンタ ンの スー
るいは pi
プ に入 れた り, ヤ シ油で揚 げて食 べ る。蛋 白質 と脂肪 の塊 の よ うな この虫 は原住民 の最 も上等
な料理 ,珍 味の一つで あ る.わた くLが島を去 るとき,親 しか った原住民 の一人 が t
h
これ をあ
なた にごちそ うす ると言 いなが ら約束 の果 たせ なか ったのは残 念 だ'
!と言 って いたが,原住民
の食 べ る物 は ほとん ど食 べ たわた くLも, トカゲ の肉 と, このサ ゴの虫 を食べ ることの出来 な
か った ことだ けが, 今 もって残 念で あ る。サ ゴ澱粉 の栄養的欠 陥を この虫 が埋 めて くれ ること
は全 く天 の配剤 と言 えない こともないが,しか し,この虫 は ココヤ シの ところで述 べた
Or
yc
t
e
s
とともにサ ゴヤ シの大害虫 で あ る。 こう して幼虫 を とることによ って この害虫 の繁殖 をあ る程
度抑 えてい るともみ られ る。
4
. 澱 粉以外 の もの
サ ゴヤ シは原住民 にとって澱粉 の他 に も生活 に必要 な数 々の ものを提供 して くれ る。菜 はヤ
シ類 の うちで最 も優 れた屋根ふ き材料 で あ る。竹 の軸 に葉 を折 って重 ねなが ら,青竹 の表皮 を
剥 いだ ものをひ もと して編 んでゆ く。 これ をア タ ップ (
at
ap)とい う。 これ を重 ねあわせて ゆ
2
6
0
-3
2-
佐藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ
けは 雨水 を 防 ぎ, 風 通 しの よ い 屋根 とな るO ニ ッパ ヤ シの屋 根 よ りもちが よい。 タ イ の Kau-
chongで も屋 根 ふ き に葉 を 利用す るだ けで ,氾 粉 は と って い な い とい う こ とで あ った
。
小 葉c
J
)
中 軸 だ けを束 ね る と, 腰 の 強 い ほ うき とな る。 葉 軸 の断 面 は三 「
‖]形 を して い る。乾 燥 させ た
もu
jを ガバ ガバ とい う
。
軽 くて 丈 夫 で ,市 ね 合わせ る とす きr
I
肘)i
l
1来な いi
T
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T
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とな る。 頂 住民 U
)
家 で は貴 地 を 問 わ ず 広 く用 い られ て い る。 また , カ ヌ ー O
jr
t
f
摘玄に長 く張 出 した わ くし
刃.
'
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二, 良
い ガバ ガバ を 結 わ え つ けて 浮 子 と して カ ヌ -山安 定 を は か る。
5
. サ ゴ林 の 人 口 扶 養 カ
サ ゴの 自生 して い る面 積 は西 イ リア ンだ けで も 6
56,
300haに迅 す る とい う。 1人 11
」生 渥細 )
1
kg,サ ゴ 1本 の生 股 粉 収 量 を 365kg,収 穫 まで の年 数 を 1
0年 ,ha 当 りの栽 栢 密 度 1
00本 とす れ
ば l
九a l
O人 の人 口扶 養 力 が あ り, 西 イ リア ンだ けで 6,
563,
000人 に豊 嵩 な主 食 を捉 供 す る こ
とが 出 来 る。 この 地 方 の住 民 を現 在 50
万 人 とす れ ば 1
2倍 以 上 の人 口扶 養 力 が あ る。 これ は杜付
か ら収穫 まで を 1
0年 と して の 試 算 で あ るが , 前 に述 べ た よ うに発 生 す る吸枝 の段 階 的 な生 育 に
よ り, この年 数 は ず っ と縮 ま るだ ろ う。 吸枝 の 間 引によ る適正 密 度 , 生 産 力 の大 きな 品 種の
栽 帖 によ って , 人 口扶 養 力 は さ らに増 す だ ろ う。佐 々木 博二
日 こよれ ば この よ うな見 積 りは 極 め
て甘 す ぎ る もの で , 自然 林 は ご く内輪 に見 桔 もって , 1年 1ha 1本 o
j収 穫 と して い る。 また
Zwol
l
eは 1年 に 1haか ら62.
5本 が収 穫 で き, これ か ら 7031-9844kg の生 サ ゴ (水 分 35-40
潔 ) が とれ る と して い る
C
こ0
)よ うに試 鈴 が ま ち ま ちで あ る こ とは , サ ゴの 調査 が十 分 行 な わ
れて い な い と も継 され よ う。 空 中 写 真 を 利用 す れ ば サ ゴ林 の面 積 t
/
j推 定 は容 ^
i
T
j
/
J
で あ ろ う0
6.
貿 易上 に あ らわ れ るサ ゴヤ シの 産 品
この よ うに モ ル ッカや ニ ュー ギ ニ ア の頂 住民 に と って有 用 な サ ゴ ヤ シ も他 の地 域 にお い て は
ど うで あ ろ うか 。世 界 貿 易 に あ らわ れ て くるサ ゴヤ シの 産 品 は澱 粉 と尭
+
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身性象 牙 で あ るo
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) お よび M.
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=C.ami
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は , C.
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)は ソ ロモ ン彊鳥 に 白生 し, 玉 突 の玉 くらい の大 き さo
j堅 い 内肪 乳 を乾燥
す る と象 牙 の よ うに な りボ タ ン等 の 細 工 物 が で き るC
)
)で , 古 くか ら集 め られ て ヨー ロ ッパ 等 に
輸 出 され た が , プ ラス チ ックの た め植 物性 象 牙 の価値 は下 が り, 1
9
25年 には 1
570トンが ,1
955
年 には わ ず か 1
9.
5トンが ソ ロモ ン群 島か ら 輸 出 され た .27'象牙 ヤ シC
/
)一 種 と して の サ ゴ ヤ シの
価 値 は ほ とん ど考 え な くて よ い 。 これ らの ヤ シ もソ ロモ ンで は澱 粉 が採 取 され て い る。
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I
て くるサ ゴ混沌 )は主 と して モ ル ッカ よ りt
J
_
し
直 イ ン ドネ シア ,サ ラワ ク, マ ラヤ,
貿 易統 計 に l
タ イ等 で , M .s
aguか ら原 注艮 が採 った粗 澱 粉 を現 地 の華 僑の小 1 場 で,布 で こ して精 製 した
もC
)で , 粗 描 粉 に は6
0
,
C
も'
以 上 の 不純 物 を含 む ことが あ る とい わ れ る。 サ ゴパ ール は タ ピオ カパ
- ル と同 じよ う に して 作 られ る し, 用途 も同 じ くス ー プ 等 に入 れ られ る。 これ は華 僑 の巧 み な
技 術 に よ る。 か れ らは迅 f
l
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の精製附粉をふ るいで こ し,天 井 か らぶ ら下 げ られ た麻袋 に入 れ ,
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,Vol
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,No.1
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1
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
前 後 に振 り動 かす と澱 粉 は袋 の中で丸 い粒 にな って くる。取 り出 して竹製 の粗 い.
ふるい を通 し
て 同 じ大 き さの粒 を集 め る。薄 く池 を敷 いた鉄 なべ に入 れて適 当 に熟 を加 え,静 か に撹 拝 し,
1
2時 間冷 やす と堅 くな り,大部分 は透 明 とな る。 これ を 2回繰 返 す と全 部 の粒 が透 明 にな る。
1
5人 くらいの小工場 で,サ ゴパ ール 1日に 400kg を製造 す る。
7. サ ゴヤ シの将来性
直 接食 用 と し, あ るいは飼料 と して世 界 の食 糧生産 に寄与 す る,収 量 を増加 させ て換 金性 の
高 い もの にす る, サ ゴを原料 と して澱 粉工業 や食 品工業 を開発 す る, とい うサ ゴにつ いて大 き
な夢 をわ た くLは 持 って い る。 サ ゴヤ シの特 質 か らすれ ば この よ うな 夢 の実現 の 可 能性 は あ
る。 なぜ な ら--
,
サ ゴは他 の作物 や有用樹 種 には ほ とん ど適 さない よ うな湿 地 を好 む。 この
よ うな湿 地 は山腹 や丘 を洗 った雨水 が溜 り,肥 料成 分 の沈積 す るところに多 く, また この よ う
な土地 は土壌 侵蝕 の起 こる恐 れ もない。 サ ゴは前 に も述 べ た よ うに種子 によ って繁殖 す る こと
が少 ないので,現在 の 自生林 以外 に適地 は まだ豊富 に残 ってい るだ ろ う。 モル ッカや ニ ューギ
ニア だ けで な く,広 くボル ネオや スマ トラ等 に見 出す ことが 出来 るだ ろ う。 わ た くしの熟 知 し
て い るセ ラムにつ いて だ けみて も,海岸 に近 い平坦 地 が価値 のない雑 木 に被 われて い ると ころ
が多 い。 海岸 に沿 って低 い土堤 を巡 らす ことによ って サ ゴ林 適地 を造成 す る ことが 出来 よ う。
bas
i
nmet
ho
d)か らヒ ン トを得 て , ご く小面 積 の周囲 を低 い土
わ た くLは果樹 の水盤 潅翫法 (
s
i
nを作 り,雨水 を溜 め,あ るい は潅概 して ここ- 1∼数株 のサ ゴを栽 培 すれ ば,
堤 で囲 んで ba
i
t
hの採取 や幹 の運搬 が容易 にな るとい う方法 を考 えて い る。サ ゴ澱 粉 の採取
収穫 に際 して ,p
を機械 化 して労働生 産性 を高 め るため には,サ ゴ林 へ の機 械 の搬入 , あ るいは澱 粉採取場 - の
幹 の運 び出 しとい うことが ど う して も必要 で あ り,現在 の 自然林 で は ご く一 部 を除 いて は, そ
の いず れ もが ほ とん ど不可能 に近 いか らで あ る. ただ機 械化 に対 して一 つ の エ ピソー ドを上 げ
て お こう。 当時 セ ラム島 にいた 日本 の海軍 が原 住民 の能率 悪 い澱 粉採取 を機械 化 して能率 を上
t
hを削 りとる機械 を作 った。 pi
t
hは早 く
げよ うと単 純 に考 え た。 自動車 の動 力 をはず して pi
削れ たが澱 粉 の収 量 は誠 に少 なか った。 これ は澱 粉粒 が細胞膜 の中 にあ り,膜 を破 らない こと
には取 出せ ない とい う植 物学 の基 礎 的 に して極 めて初 歩的 な知識 に欠 けて いたためで,この点 ,
薄 く削 り,足 で十分 もむ とい う伝統 的 な方法 を守 り,少 しも安 易 な方 法 を とろ うと しない原 住
民 は賢 明 といえ よ う。 しか し, この伝 統的 な方法 で は労働生産性 の極 めて低 い こと も事 実 で あ
る。 も し澱 粉採取 を工 業化 しよ うとすれ ば技術 的 には採 取 その もの は容易 で あ ろ う し, ニ ュー
ギニアや モル ッカ以外 の地 で は, その よ うな機械 も開発 され て い るよ うで あ る。 しか し, サ ゴ
が原住民 の主食 にだ け止 まって い る限 りは伝統 的 な,労働生産性 の低 い方法 が存在 す る ことに
は意 義 が あ る。 かれ らが生 活 に真剣 に取組 む た めの良 い方 法 で あ る。 も しこれが安 易 に とれ る
よ うにで もなれ ば,他 に大 した労働 もない島の人 々をい よい よな まけ者 に堕落 させ て しま うだ
ろ う。 しか し, も しかれ らが生 活 の 向上 を望 み, その方 の欲望 がわ いて きた な ら換 金性 を高 め
2
6
2
-3
4-
佐 藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ
る方 法 を, さ らには澱 粉 工 業 - と発 展 さす ことを考 え るの は 当然 で あ ろ う。 しか し同時 に 自然
)ヤ シ林 か ら管理 の 手の入 った ヤ シ杯 - , さ らに栽 培 ヤ シ林 - と発 展 させ な けれ ば原料
まかせ U
は閥 もな く枯 渇 して しま うだ ろ う。
現 在 まで 組 織 的 ,科 学 的 な品 種 改良 :
ま全 く行 な わ れ て い な い U
)で 自然 林 は変 異 の宝 庫 で , 百
種素材 にが 欠 か な い だ ろ う。 福 住艮 が 優良 と称 す る もU
), 多収 と称 す る もの , /
i長 が早 く収穫
硯 に連 す る ことが早 い と称 す る もo
_
), とげの な い もの等 の株 か ら吸枝 を集 め る. もち ろん原 住
民 の評 価 す る もの は環境 の変 異 に よ る もの も含 まれ て い る。 こ う して比 較 調査 す れ ば 1
5年 を 山
で ず して い ち お う優 良 品 種 が決 定 され るだ ろ う。 あ とは 吸枝 に よ る栄 養 繁殖 に よ って増 殖 す れ
ば よ い。
ant
at
i
oncr
opの ゴ ムや ア ブ ラヤ シ, 茶 , サ イザ ル等 に比 べ て サ ゴ ヤ シは pl
an代表 的 な pl
ant
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on に よ って の み 開発 され る も
t
at
i
oncr
op と して の条 件 を完 全 に備 え て い る し, また pl
/
)年 数 が 他 の 作 物 に 比 べ て
の とわ た くLは 考 え て い るが, 植 付 か ら最 初の収 穫 にい た る まで C
1.
5- 2倍 長 くか か る点 に大 きな弱点 が あ り,サ ゴ ヤ シの pl
ant
at
i
on を作 ろ うとす る企 業 家 は
当分 現 わ れ て こな い だ ろ う。
わ た くLは主 と して 2
0数 年 前 の 記憶 を も と に書 い た。 サ ゴ につ いて は相 当詳 し く知 って い る
と 自負 して い た が , 筆 を と って み る と不確 か な点 が 多 いO も う一 度 セ ラム を訪 れ る機 会 が あれ
ば 8 ミリカメ ラを携 行 して ,筆 で は書 き表 わせ ない と ころ を写 して きた い と思 って い るが , あ
の サ ゴ林 の薄 暗 い茂 み の な か で果 た して う ま く写 し出せ るだ ろ うか と心 配 して い る。
Ⅳ サ トウヤ シ sugarpa1
m(
ArengasacchaT
・
i
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eraorpi
nnata)とパ ル ミラヤ シ
(オ オ ギ ヤ シと もい う) pal
myra pal
m (
BoT
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aS
S
uSnabe
t
i
f
er)
ヤ シは生 育 が進 む と, そ の pi
t
h に減 粉 を蓄 積 す る もの で , 開 花 結 実 し始 め る と この澱 粉 は
だ ん だ ん 花 , 果 実 に移 り, 糖 や脂 肪 そ の 他 に変 わ って ゆ く
。
開 花 は, コ コヤ シ, ア ブ ラヤ シ,
poサ トウ ヤ シ, パ ル ミラヤ シ, ナ ツ メ ヤ シの よ うに長 年 月にわ た り次 々 と開花 して ゆ く場 合 (
1
ycar
pi
c
)と, サ ゴ ヤ シの よ うに一 定 の樹 令 に透 して は じめ て 開 花 結 実 し,
間もな く枯 死 す る
monocar
pi
c)とが あ る。 i
殿粉 採 取 に はサ ゴ ヤ シの よ うな もの が適 す る。 サ トウ ヤ シは澱
もの (
粉 を と る こと もあ るが, サ ゴ ヤ シに比 べ る と収 量 は は るか に少 な い。澱 粉 の 代 りに糖 分 を含 ん
だ樹液 を と るの に は コ コヤ シ, ナ ツ メ ヤ シ, サ トウ ヤ シ,パ ル ミラヤ シ, ニ ッパ ヤ シ, クジ ャ
クヤ シ (
ki
t
ulort
oddypal
m,
Car
yo
i
aur
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)等 が適 してい る
O
この うちサ トウ ヤ シ とパ ル ミ
ラヤ シは砂 糖 を と るの に最 も適 した もの で , 現 地 で は共 にサ トウ ヤ シ と呼 ん で い るが , 真 の サ
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nga s
ac
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har
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aの万 で あ る
トウ ヤ シは Ar
O
イ ン ドや マ ラヤ,
中
国 の南 部 等 に も分 布 す る
が , 熱 帯の 多雨 地 帯 に属 す るス マ トラや ジ ャバ , ボル ネ オ, セ レベ ス, モ ル ッカ群 島 に特 に多
い。 パ ル ミラヤ シは タ イや カ ンボ ジア等 乾燥 期の 良 く続 くむ しろ雨 の比 較 的少 な い地 帯 に多 く
- 3
5-
2
6
3
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
分布 して い るよ うで あ るが, 根 は水温 に強 く水 田の あぜ 道等 に も多 い。
セ ラム にい た とき, サ トウ ヤ シか ら砂 糖 や酒 を作 るの を監督 す る ことが わ た くしの仕事 の一
つ で あ った。 カ ンボ ジア の調査 で は, 各 地 でパ ル ミラヤ シの糖 液 採 収 を見 る ことが 出来 た。
menar
i
わ た くLは, セ ラムの原 住民 達 が ヤ シ酒 を飲 み, 歌 を うた い, メナ リー (
原 住民
eaの
の お ど り)を お ど って騒 いで い る情 景 が 目に浮 か ん で くる。 ダ マール (フタバ ガキ科 Shor
樹 脂 )をバ ナ ナの葉 で巻 い たた い まつ の光 は 弱 く,村 の周 囲 は真 黒 な森 で 囲 まれ て い る。 突 然
森 の一 部 がパ ッと明 る くな り,暗 い夜 空 に大 きな炎 の柱 の よ うに燃 え上 が る。 あ とはパ テパ チ
と一 面 の火 の粉 が 明滅 して, た くさん の電灯 のつ い た町 を遠 くか ら眺 めて い るよ うに美 しいO
酒 で興 奮 した原 住民 が サ トウヤ シに火 をつ けた ので あ る。 サ トウ ヤ シは シ ュ ロの よ うに黒 い剛
毛 に包 まれ て い る。 この毛 が こ う して燃 え上 が るので あ る。夜 の暗 黒 に耐 え られ な くな った原
住民 は,時 々 こ う して サ トウヤ シに火 をつ けて楽 しむ悪 い癖 が あ る。 木 は枯 れ な い まで も相 当
に傷 む こ とだ ろ うO昼 間見 る と全 く汚 ら しい ヤ シで あ る0 8
01の 利用 法 が あ る とタ ミール の民
謡 は歌 って い るが, Rumphi
usは ≠ポ ロの サ ロ ンを ま とった ヤ シ酒 中 毒 の土 人 の よ うに う らぶ
れ た風 態 の ヤ シク と評 して い るが, この ヤ シか ら原 住 民 の好 む酒 が とれ る こと と思 い あわせ ,
ピ ック リの言葉 で あ る。 羽状 葉 もカサ カサ に ひか らび た感 じで灰 緑 色 を呈 し, 小葉 は少 しね じ
れ, 清 々 と した感 を与 え ない。 幹 の上 か ら下 - と抽 出 して くる大 きな ち り払 い をぶ ら下 げ た よ
うなか っ こ うの花房 も不休 栽 で あ る(
写 真 7)。 これ に比 べ,パ ル ミラヤ シは扇 を拡 げ た よ うに
美 しい掌状 葉 をつ け, す っき りとそび えて い る。
ア ンコール ワ ッ トに生 えて い る もの は壮 麗 な石 造
物 の美 しい ア クセサ リー とな り,水 田地 帯 に茂 っ
て い る もの は単 調 な景 色 を ひ きた たせ て い る。
この よ うな姿 の違 い は あ って も, この二 つ の ヤ
シか らは砂 糖 を と り, ヤ シ酒 をつ くる。 いず れ も
組 織 的 な栽 培 は して い な いが,原 住民 の生 産 と消
費 は大 きな量 に達 して い る
。
1
.糖 ・
,
夜 の 採 取
詳 しい植 物学 的 な記載 は省 くが, サ トウヤ シは
単 生 花 で,雌 雄 同株 ,パ ル ミラヤ シは雌 雄 異 株 で
あ る。 サ トウ ヤ シは雄 の花 房 (
原 住民 は これ を雌
の花 房 と間違 って呼 ん で い る) の み か ら樹 液 を と
るが,パ ル ミラヤ シで は両 株 と も液 を とる。 サ ト
ウ ヤ シは 7- 1
0年 生 ,パ ル ミラヤ シは 1
4-1
9年 生
で初 めて花 房 が抽 出 して くるので , そ の時糖 液採
2
6
4
-3
6-
写真 7 サ トウヤシ 四つの花房が見え
る。採液は していない。
(
南カ リマンタンにて正垣博士撮影)
佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
取 に取 りか か る。 サ トウ ヤ シはその後 お お むね 2- 3年 , パ ル ミラヤ シで は 30- 40年 間 も採液
が続 け られ る。
まず , 幹 に 1本 の竹 の は しごを縛 りつ け る.竹 の は しごは
足 をか け るた め枝 を 4- 5cm 板
して 抑 反った 1本 の太 い 竹 で あ るD樹 冠 の 古 い邪 魔 な薬 を取 除 き, 作業 に便 利 な よ うに足 場 を
よ くす る
フ ィ リピ ンで は, コ コヤ シか ら採 波 す る場 合 に,木 か ら木 - と 2段 に竹 を漉 し, こ
。
れ を伝 って 作業 す るので , 1本 1本 登 る必要 が な く能 率 が よい
。
花 板を, た だ切 って も樹 液 は 出て こな い。 それ まで に行 な う前 処理 が必要 で, この技 術 は二
足
も熟 練 を要 す る もの で, 秘伝 の よ うに され て い る。 イ ン ドで は この仕事 は特 別 の 階級 や家 族 に
限 られ て い る とい う
。
セ ラムで も この技 術 を持 った者 は 1村 に 1人 くらい しか い ない。 サ トウ
ヤ シで は, 選 ん だ雄 花 房 につ いて, まず二 ,三 のつ ぼみ を ナ イ フで切 って みて, 切 Fは ナ イ フ
が粘 つ けば い よい よた た き始 め る
O
木 づ ちで果 梗 o
jJ郡 司を撞 くまんべ ん な くた た く。 イ ン ドで
は, コ コヤ シか ら採 液 す る場 合には 吉 日を選 ん だ り, つ ちは プチ毛 の庇 の大 腿 骨 で 作 り, 魔力
を増 す た め メ ン ドリの 血 と砂 を混ぜ で 廿 の空 洞 につ め る とい った よ うな い ろい ろの迷 信 が行 な
われ て い る
.
た た く者 は 時 々つ ぼみ を少 し切 って, 樹液 の粘 り気 の状 態 をみ て い る。 こ う して
数 口∼十 数 日,も う これ以 上 粘 り気 が増 さな くな った時 ,果 房 を果 棟 の と ころか ら切 り落 とす 。
この時 は,果 梗 も柔 らか くな って お り, お そ ら く内部 の組織 は相 当 に破 壊 され て い るだ ろ う。
切r
Jには- チ等 が群 が らな い よ うに,コ コヤ シの繊 維 な どで包 ん で お く。二 ,三 「lして , 先 を さ
らに切 りとる と, い よ い よ糖 液 が 滴 り落 ちて くる
。
パ ル ミラヤ シは少 し く操 作 が違 う。 雌花 1
j
]
・
で はつ ぼみ が クル ミ大 とな った と き,直 径 2- 3cm の丸 い棒 2本 の 一蹴を結 ん だ道 具 を 用 い る。
この棒 の冊 に挟 んで押 さえ-)
け るO この作業 を約 3[
:
lF
H
F
]
続 け る と, その部 分 が さび色 とな って
L
j
J
・
の先 端 10cm くらい を切 りと る。 そ して よ く液 が
打 ぼ く傷 を受 けた よ うにな る 0 4 日 目に花 f
出 るよ うに,手 で つ ぼ み の部 分 を こす る
。
この 作業 を また 4 Hほ ど続 け, さ らに切 口を少 し切
りとって 容 L
J
封二受 け る。 雄 花 j
)
,
f
・
も掛けと房 と同様 な処理 をす るが , 違 う点 は 1回に 1花房 の うち
2個 の ジ :
Lウテ ィ花 につ いて C
/
jみ行 な う。 2本 の棒 もや や 扇平 で あ る。 これ で ジ ュウテ ィ花 を
写 真 8)。 その圧 力 のか け方 に コツが あ るよ うで あ
挟 ん で此闘Eと同様 ダ イダ イ と締 めつ け る (
る. 3 HE
]に ジ ュウ テ ィ花 の端 を 5- 6cm 平 らに切 り, 2本u
jジ ュウテ ィ花 を 1個 の容 器 に受
けて お くo それ か ら 3- 4 E
川根ま毎 F
1切 Ll
を薄 く切 l
_
)と り,手 で 花を絞 るよ うに して 波の 山 る
の を促 す 。 この よ うに して も, 4割c
j
_
)木 は液 が うま く出 ない と)
京住1
引 まみ て い る。 1本 の木 か
ヤ シ と同様 にた た くこ と もあ る。 コ コヤ シの場 合 は仏 炎 か ら抽 出す る前 に仏 灸 を縛 り, その上
か らた た く。
なぜ この よ うにた た い た り,締 めつ けた りす る前 処理 が必要 なのか,科 学 的 な説 明 は見 当た
らな いが. Ochs
eは果 梗 に炎 症 を起 こさせ る と説 明 して お り, Copel
andは この液 の挺 出 は 内
- 3
7-
265
東 南 ア ジア研究
第 5巻 第 2号
部 か らの圧 力 によ る もので は な く,傷 自身
の活 力 に よ る, と述 べ て い る。 わ た くLは
enzym の面 か ら 究 明 して ゆ けば 解 明で き
るので は ない か と考 えて い る。 日本 の シ ュ
ロで も これ らの処理 をす れ ば き っ と糖 液 が
とれ るだ ろ う。
切 口につ って糖 液 を受 け る容 器 は, セ ラ
ムで はサ ゴ ヤ シの葉 柄 の基 部 の広 い と ころ
を薄 く剥 い で二 つ に折 り,縁 を トウで しっ
g
か りとぬ い合 わせ た もので, 1個 に 5-6
入 る。絶 対 にぬ い 目か ら液 の漏 れ る ことが
な く, 軽 くて扱 い よい。 ヤ シ酒採 取 には節
写真 8 パル ミラヤシの雄花房に糖液採取の前処理
を している。 この作業を木の上で行なうの
であるが,特に分か りやすいように地上で
実演 している。(
筆者撮影)
を抜 い た長 い竹 筒 を用 い るが, これ は よ く洗 う こと も, 消毒 す る こと も出来 な いので,糖 液 の
0-1
5c
m,長 さ 40-50
c
m
発 酵 が早 く,砂 糖 を作 る場 合 には不 適 当で あ る。カ ンボ ジア で は直 径 1
の竹 筒 (
外 皮 を剥 ぎ と り軽 くして あ る)に トウの ひ もをつ けた もの を用 い る。 容器 は よ く洗 い,
煙 や火 力 で乾 燥 をか ね て滅 菌 消毒 をす る。 イ ン ドや マ ラヤで は容器 の 内側 に石 灰 を塗 って発 酵
を抑 え る こと もあ る。朝 夕 2回木 に登 り,容 器 を交 換 し, 切 口を その都 度 薄 く切 りと り, 液 の
溶 出 を よ くす る。 セ ラムで は 自然 生 の ヤ シか ら採 液 す るの で,森 の 中 を相 当遠 くまで巡 って 集
め な けれ ば な らな いが, カ ンボ ジア で は お そ ら く植 え た ので あ ろ う, ヤ シは い た る と ころに あ
0個
り,特 に家 の 周囲 に多 い ので ,採液 の 能率 が よい。 パ ル ミラヤ シの場 合 , 1人 1日お よそ 3
の竹 筒容 器 を朝 夕交 換 す るが, これ は 1
5-20本 の木 に登 る こ とに な る。糖 液 の組成 につ いて は
Chi
l
d,秦
サ トウ ヤ シやパ ル ミラヤ シの もの は見 当 た らな いが , コ コヤ シで は次 の通 りで あ る (
考文献)0
比重 (
84o
F)1
.
0
58- 1
.
077
仝 固形物
1
5.
2-1
9.
7g/1
00
cc
庶糖
1
2.
3-1
7.
4g/1
00c
c
灰分
0.
ll
-0.
41
g/1
00
c
c
蛋 白質
0.
2
3-0.
32g/100
c
c
暑 い熱 帯 の ことで あ り,糖 液 はす ぐ発 酵 を始 め るので , これ を防 ぐため, あ る種 の苦 い樹 皮
や木 片 を入 れ る。カ ンボ ジア で は pope
l(
Vat
i
c
ahar
mandi
ana)とい うフタバ ガキ科 の樹 皮 を
使 う。樹 皮 中 の タ ンニ ンが有 効 な よ うで あ る。
収 量 は木 に よ って大 差 が あ るが, これ は技 術 や環境 ,採 液 の時 期 等 に よ る もので あ ろ うが,
木 の遺 伝 的 な素 質 に もよ るだ ろ う。原 住民 の き き取 り調査 だ けで は全 くわ か らない。 サ トウ ヤ
266
- 3
8-
佐藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
シ
は Ber
negg に よ る と, 1柁厨 は 2- 5カ月 間毎 し
12
-47の液 を 出す。 1年 に 3- 5本 の花
房 を順 次採液 して ゆ くので 1本 の木 で 5
0
0
-6
0
0
7とな る。ha当 り1
00本 ,砂 糖 の歩 留 り1
0% と
す れ ば 50
00-6000kgの ヤ シ砂糖 が とれ る ことに な る。パ ル ミラヤ シは 11-1
2月 か ら翌 年 の 4
- 5月 の問, す なわ ち乾燥 期 に採液 す る0 5月以 降 は s
ucr
os
eが gl
ucos
eにな るので砂糖 の製
造 には適 さな くな る 。1本 の木 か ら 1日 1任肩 2
7
,2花 房 を採 液 す る とす れ ば 5カ月で 6
0
0
/と
な り, ほぼサ トウヤ シに等 しい。糖 度 はわ た くLが カ ンボ ジア で handr
ef
lact
omet
erで測 った
と ころに よ る と 9-1
2,
O
b
'(5本 の木 に つ い て) で あ った。 コ コヤ シで は採 液 量 は, これ ら二 つ
の ヤ シよ り大 分少 な い よ うで あ る。
2. 砂 糖 の 作 り 方
新損 な液 は甘 いが, その ま まで は ほ とん ど飲 まれ ない.頂 住 民 は た くさん飲 む と頭 が痛 くな
る とい い, 体 に毒 だ と もい う。 ミツパ テな どが入 って い るた め粗布 で こ して , 鉄 鍋 に入 れて煮
る。 沸 騰 す るまで は強 火 で , そ の 後 ・
:
ま弱火 で煮 つ め る。 浮 か /
Lで くる不 純 物 は泡 とい っ しょに
何 回 もす くい取 る。 モル ッカで は泡 の加減 をみて いて , い よい よ煮 つ ま って きて ,大 きな泡 が
canar
ynutorJavaal
mond,
Cananum c
o
mmune
)の実 を
盛 上 が るよ うにな る とカナ リー樹 (
細 か く砕 い た もの を一一
一
つ まみ投 げ こむ 。 この泡 は た ち ま ち浮上 が らl
i
:くな り,小 さな泡 とな る.
カナ リーの実 は ち ょうど クル ミの よ うに 油 が 多 く, 消泡 剤 の役 をす るわ けで あ る
C
カナ リーの
他 に ク ミリ (
kemi
r
iorcandl
enut
,Al
e
ur
i
t
i
smo
l
uc
c
ana) の実 を砕 いて用 い る こと もあ るO
カ ンボ ジアで は この よ うな もの は 用い られ て い な いO
ジ ャバで は煮 つ ま った もの を竹 筒 に流 しこみ,口乾 か 火力乾 燥 す る と,砂糖 が 固 ま り,竹 筒 が
裂 け るよ うにな る
。
しか し一 般 には, ココヤ シの殻 の発芽 孔 の あい た方 の半 分 を用 い る。漏 ら
ない よ うに孔 に木 の葉 を 1枚敷 い て , この上 か ら濃 縮糖液 を ひ し ゃ くで す くって流 しこむ。 銅
の液 を全 部 流 しこん だ頃 には,最 初 の もの は間 ま って お り,昭 次 取上 げて底 の発 芽 孔 に外 か
ら
口を当てて プ ッと吹 くと容 易 に砂糖 の塊 りが取 出せ る. その手 噺 と手 際 の よ さは, 日本 の店豆
l
'
i
で よ く菓子 を焼 いて い る職 人 の巧 妙 さと変 わ らない。 この焦茶 色 のお わん の形 を した砂 糖 を 2
個合 わせ て丸 い玉 に し, バ ナ ナ の葉 で包 む。 これ をわ ん糖 (
gul
amanko)また は ,gul
aJava,
gul
aMal
acca等 ともい い (
gul
aは砂糖 , mankoはおわ ん の意 味),市 場 で売 って い る。 カ ン
ボ ジアで わ た くしの見 た もの は,鉄 鍋 で煮 つ ま った もの を,女 が ひ らた い木 の棒 で強 くか き回
して い た。 これ は甘 燕 か ら黒糖 を造 る場 合 と同株 , 結 岸1
校 を 作 って い るので あ るO こう して 出
来 た ヤ シ砂糖 を石 油缶 に入れ て華 僑 に売 る
。
華 僑 は これ を回転根 の よ うな一 定 の形 に して市 場
に出す 。 以前 は ヤ シの葉 を 幅 3
c
m くらい に裂 いて帝二
径 1
0
cm くらい の輪 を作 り, 板 の
上に並
べ , これ を指 で押 さえて底 か ら柔 らか い糖 液 が漏 らな い よ うに して流 しこみ, 日蔭 で乾 か し,
1
0偶 1包 と し, ヤ シの葉 で くるんで い た とい われ るが、 市場 に
出
うな形 を して いるが, 華 僑 が加工 した ものばか りの よ うで あ る
。
ー3
9-
て い る もの は, これ と同 じよ
これ を s
c
ars
r
acとい う。 色
2
6
7
東南 ア ジア研究
第 5巻 第 2号
は淡黄 色 で あ る。水 分含 量 が多 い ためか, す ぐ溶 け出 し,発 酵 し,か び る。 ココヤ シ糖 液 か ら
砂糖 を造 るイ ン ドの小 工場 で は明ぽ ん を入 れて不 純物 を除 い た り,濃縮液 に結 晶糖 を加 えて結
晶を促進 させ るよ うな方 法 も行 なわれ る。 カ ンボ ジアで は濃 縮液 を土 が め に数 カ月貯 えて結 晶
s
ugarcandy)を造 る こと もあ る。 ヤ シ砂 糖 はいず れ も同 じよ うな風 味 を もち,甘庶 の黒糖
糖 (
とは違 って い る。原 住民 は料理 に用 い るよ りもむ しろ種 々の菓子 に使 い, またはその ま ま食 べ
て い る。 コー ヒや紅茶 に入 れ るの には適 さない。
糖 液 は短 時 間で発酵 す るので大壷 の原料 を広 い地 域 か ら集 め る ことは難 し く, ヤ シ砂糖 の製
造 を工業化 す る ことは ち ょっ と考 え られ ない。
3. ヤ シ酒 t
o
ddy,a
r
r
ae
k
糖 液 は採 取 後短時 間で発 酵 し, そ の まま酒 とな る. これを セ ラムで は s
i
gelとい うが, 一般
oddy と呼 ばれて い る。s
i
gelは またサ トウヤ シその ものの呼称 で もあ る。 白 く濁 り, か
には t
す か な甘 味 と苦 味 が あ り,一 種 の爽快 味 ももち, いわ ゆ る ドプ ロクで あ る。 さ らに発 酵 が進 め
ば良質 の酢 がで き る。 カ ンボ ジアで は ドプ ロクに多少 加工 をす る ことが あ る。一
一度沸騰 させ て
かめ に入 れ,パ ル ミラヤ シの葉 柄 の 1片 と, とげの多 い トウの小 さい根 を 1- 2本入 れて お く
と早 く発 酵 す る。 これ を24時 間後 に こ し,煮 て発酵 を抑 えて売 る。 なお発酵 を お こす前 , また
は途 中で い ろい ろの香味料 を入 れ る ことが あ るO これ は商人 が一 種 の秘法 と して い るが,一 例
car
damon,
El
e
t
t
ar
i
ac
ar
damo
mum)
,シ ョウガ, コシ ョウ, ウ コ ン
を上 げ る と, シ ョウズ ク (
等 を粉末 に して い ろい ろの割合 で混ぜ た ものを入 れ る。 しか し街 頭 で竹 筒 を並 べて売 って い る
ヤ シ酒 は加工 されて い ない ものが多 い。 ヤ シ酒 は ほ とん ど 1年 中売 って い るよ うで あ る。
原 住民 や華僑 は ヤ シの糖液 の発 酵 した ドプ ロクを ドラム缶 に入 れ,長 い竹 筒 をつ けて冷却 管
opiと称 して い るが, 一
と し,蒸溜 す る。 ア ル コール分 の多 い酒 とな るo セ ラムで は これを s
r
ack の名 で知 られて い る。 イ ン ドや マ ラヤで は多 くコ コヤ シか ら, ア ラブで はナ ツ
般 には ar
r
ackを造 って い る
メヤ シか ら ar
。
サ トウヤ シもパ ル ミラヤ シもひ じ ょうに多 く見 られ るが,採液 されて い るの は一 部 のよ うで,
その意 味で は ヤ シ砂糖 や ヤ シ酒 の潜在 生 産 量 は大 きい といえ よ う。
精 液採 取 か ら砂糖 や酒 の製 造 の工程 は原 始 的 な方 法 で行 なわれて い るよ うに見 え るが, この
間 には極 めて科 学 的 ない ろい ろの手段 が と られて お り, まだ科学 的 に解 明 されて い ない点 の あ
る こと も見逃せ ない。樹液 の採取 は名人技 とはいえ,何 らか の科学性 の あ る もの と思 われ る。
容器 の消毒 , 消泡剤 ,結 晶核 の形成 等 は近 代科学 において広 く用 い られて い るの と原理 は同 じ
で あ る。わん糖 の型 ぬ き も簡単 で実 に巧妙 で あ る。一見 全 く原始 的 な よ うで あ るが, その環境
に応 じた最 も合理 的 な もので あ ろ う。一概 に軽視 して しま うことな く見 なお きな ければ な らな
い だ ろ う。
2
6
8
- 4
0-
佐 藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ
4. そ
の
他
砂糖 や 酒の他 に, これ らの ヤ シには い ろい ろ利用 の 通 が あ るが, そ の一 端 を上 げ よ う。
サ トウヤ シの幹 を包 んで い る黒 い繊 維 で ロープや ブ ラシが 作 られ る。 果 実 をむ いて 砂 糖潰に
して つ まみ もの にす る とい うが , わ た くLは原住民 が そ の よ うな もの を 作 って い るのを 兄 た こ
とは ない。生 長点 す なわ ちヤ シの芽 は コ コヤ シと同様 高級 野菜 とな る。 幹 の周縁 部 の材 は ひ じ
ょうに堅 い。原 住民 は樋 (とい)にす る。 わ た くLは これで 作 った は し箱 を も って い る。黒 地 に
斑 紋 の あ る美 しい こ0
)材 で ステ ッキ も作れ るが, もっ といい ものが 作れ そ うで あ る。 大 半 o
jも
の はいつ まで も朽 ちず に, が い骨 の よ うに黒 い姿 ,
J
i
:
森 の 中 に さ ら して い る。
パ ル ミラヤ シの葉 は, サ ゴ ヤ シの葉 と と もに屋 根 ふ き材 料 のア タ ップを編 む の に最 も優 れ た
もので あ る。未熟 の果 実 か ら内膳 乳 を取 りだ し, そ の寒天 状 の丸 くて や や ひ らたい玉 を水 につ
けて 克 って い る. コ コヤ シの寒天 状 の 内壮乳 に似 て い るが , さ らにおい しい食 べ もので あ る.
しか し,成熟 す る と堅 く,コプ ラの よ うに脂 肪 は含 まれ て い ない 。s
he1
1は活性 炭 の頂 料 に な る
か もわ か らない が昆二
産はL
i
J
T
来 ない。捨 て て全 く顧 み られ ない。 しか し,才色芽 F
l
lの長 い幼 根 は珍
味 と され て い るが, タ イや カ ンボ ジア の原 住 民 が利用 して い るのを わ た くLは見 た ことが ない 。
V ナ ツ メ ヤ シ dat
epal
m(
Phoeni
x dact
yt
i
fera)
コ コヤ シが熱 帯 の海 辺 に見 られ るよ うに, ナ ツメヤ シは乾燥 地 帯 の シ ンボル で あ る。5
000年
の昔 よ り現在 の イ ラクの人 々に よ って栽 培 されて きた最 も古 い作物 の一 つ で あ る。 そ の果 実 は
f
l
近 東 か ら北 ア プ リか こ至 る40
00万 の住民 の主 食 の一 部 にな って い
現在 もな おパ キ ス タ ン以西 T
る。炭水 化 物 の他 に脂 肪, 蛋 白雷 , ビタ ミンを含 んで い る。 ア ラブの社 会 で は, ナ ツメヤ シの
乾 果 と羊 の ミル クで 客 を もて なす ことが礼 儀 と されて い る。餌料 と して も価値 が高 く, 手 にい
っぱ いの乾 異 は 1こん の乾 草 よ りも羊 の肥 育 に効 果 が あ る といわ れて い る。
今 まで述 べ た ヤ シと異 な り, 極 端 な乾燥 気 候 を好 む。年雨 量 1
00
mm に も満 た な い よ うな砂
漠 で , 昼 間 は 40oC を越 す よ うな 高 温 , 夜 間 は OoC 近 くに も下 が るよ うな と ころで 栽 培 され
る。 この よ うな土 地 の空 気 は極 度 に乾 燥 して い るが,決 して水 の ない不 毛 の地 に生育 す る とい
う もので は ない 。 オア シスや 川岸 で 豊富 な水 の得 られ る と ころで栽 培 され る。 この よ うな地 域
は西 パ キ スタ ンか ら以西 ,地 中海 に至 る 中 近 東 , モ ロ ッコに至 る北 ア フ リカに見 られ, こ こで
8% が 占め られ て い る。 カ リフ ォル ニア や メキ シ コに もわず か なが ら栽 培 され
世界 の生 産 量 の9
て い る。 周年 多雨 か半 年 は雨 期 の あ る東南 ア ジア には全 く栽 培 され て い ないO も しこの よ うな
と ころで栽 培 す れ ば,栄 養 往長 は旺盛 で あ るが結果 しな い。 イ ラ ンで は 山 の雪 どけの水 が川 に
氾濫 す る とき,ヤ シの周囲 に低 い堤 を設 けて これ に水 を調え る。水 が土壌 に十 分 吸収 され る と,
こ こを耕 して コムギや野菜 , 飼料 作物 を植 え る。深 層 に入 った水 は ヤ シに吸収 され る。 こ う し
て これ らの作物 の収穫 を あ げ,吐 胃 を維持 す る
。
川 の ない と ころで は,水 は 漕削 用 の配 水 管 に
- 41-
269
東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
よ って遠 くの水 源 か ら導かれ, または, 井戸 を掘 って濯翫 す る。 よい収穫 を上 げ るため には
1
000-1
500
mm/年,最 も暑 い時期 には 1
20-1
85mm/月 の水 が必要 と言 われ る。
樹 冠 には 1
00-1
20枚 の葉 がつ いて お り,他 の ヤ シに比 べ て著 し く多 い。 ナ ツメヤ シの樹 冠 を
特 に黒 々と感 じるのは このためで あ る。 1年 に 1
0-1
2枚 の葉 が展 開 して くるので,葉 の生命 は
約1
0年 も続 くこ とにな る。 雌雄異株 で あ り, サ ゴヤ シと同様 普通 は吸枝 によ る栄 養 繁殖 で あ
る。果 実 は直 径 2.
5c
m,長 さ 5c
m で , 1果房 に 1
000-1
400個 つ く。 果 房 は 25kg に達 す る もの
0kg くらいで あ る。カ リフ ォル ニアで は 1年 に 1本 の木 で 1
00
kg の収量 が あ
もあ るが普 通 は 1
るが, ア ラブで は平 均 20
kg にす ぎない。 これ は主 と して濯 離水 の不足 と濯概方 法 や 園 の管理
の拙劣 さによ る といわれ る。収穫 期 は周年 で あ るが,土壌 水 分 等 の影響 によ り,主 収穫 期 が あ
る。昔 か ら適 期 に雄 花房 を切 って雌花房 に結 びつ けて お くと,結果 が良 い と信 じられて きたが,
今 日なお イ ラクの人 々は この方 法 を実行 して い る。 これ は人工授 粉 の最 も古 い技術 で あ ろ う。
またア ラブの栽 培家 は, あ る特 別 の株 か ら花 粉 を とる習慣 が あ るが, これ は経験 か ら, あ る木
の花 粉 が他 の木 の もの よ り果 実 の収 量や品質 ,熟 期 に好影響 を与 え る とい うことを知 って い た
か らで あ る。 この ことは
,
Swi
ngl
e(
1
928)が初 めて メタキ セ ニア の現 象 と して学 界 に発表 し,
この事 実 を科学 的 に証 明 した。 また,交配 不親 和性 の例 も知 られてい る。
果 実 が黄赤色 に変 わ りだ した ころが栄養分 の一番 多い時 で, ア ラブの住 民 は この時 の ものを
食 べ るが,非 常 に渋 く,普通 の人 には食 べ られ ない。乾燥 させ る と,渋 味 が な くな り甘 味 を増
して くる。 これ は貯 蔵 が き く。 ち ょうど干 柿 の よ うで あ るが, わ た くLは干 柿 の方 が は るか に
うまい と思 う。
ナ ツメヤ シは果 実 の他 に, い ろい ろの ものをア ラブの原 住民 に提 供 して くれ る。
r
ac
kをつ くり,核 肉は焼 いて コ- ヒ- の代 用 と し,池 もとれ る。 油粕
果榎 か らと った液 で ar
は飼料 とな る。林 木 の少 ない これ らの地方 で は材 は燃 料 や柱 に使 われ る。葉 は屋根ふ き材料 や,
編 んで マ ッ トやバ スケ ッ トを作 るの に用 い る。 また過 越節 (
Pas
s
over
)や聖 き木 の主 日 (
Pal
m
Sunday)の よ うな宗 教 的 な祝 日にキ リス ト教 徒 や ユ ダヤ教徒 の飾 りに使 われ,回教徒 の祝 日の
門 の飾 りに使 われ る。薬草
削こ相 当す る繊 維 か らは ロ-プを編 み,生長点 は野菜 と して サ ラダそ
の他 の料理 に使 う。 この よ うに, ナ ツメヤ シは ココヤ シとひ じょうに よ く似 た利用 の道 が あ り,
砂漠 の民 の生活 に と って欠 くことの出来 ない もので あ る。
ピ ラ ミッ ドと ラクダ とヤ シの組合 わせ で 日本 人 に もナ ツメヤ シの イ メー ジは浮 か んで くるだ
ろ うが,乾 采 は あ ま りな じみが ない。年 間400
0トン程 度 を輸入 して い るが,年 に よ る変異 が大
きい。数年前 , イ ラ ンが片貿易 を是 正 す るため 日本 に大 量 のナ ツメヤ シの乾采 の輸入 を要請 し
て きた ことが あ る。急 に需要 が 伸 び るもので もない。生産 地 か ら輸 出 され る量 は 30万 トン近 い
が,年 によ る伸 びは ほ とん どない。 ア ラブの民 が現在 す べて満 ち足 りて い る とは思 えない。 そ
の意 味で, ア ラブの世 界 の中で今後増産 が 必要で あ ろ う。
2
7
0
-4
2-
佐藤 :東南 ア ジアの ヤ シ
東 南 ア ジア を:
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いて, わ た くLは まれ に これ ら しきヤ シを見 か け る ことは あ るが, それ は た
だ風 致 木 と して庭 や 公 鼠 に 植 え られ た もの にす ぎない。 残 念 なが ら この ヤ シにつ いて の 経験
帆,体験r
J
勺知 識 は ない。
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l ビン ロ ウ bet
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nang(
ArecaCat
echu)
肯 空 に 細 く1
主っす ぐに 伸 び た幹 , か っ こうのい い羽状 葉 , コ コヤ シと と もに熱 帯 の美 しきを
象徴 す るヤ シで あ る(
写真
L
主9). 台湾 ,
li
一
国南部 か
ら東 南 ア ジア,イ ン ドを経 て, マ ダ ガ ス カル ,
ア フ リカ0
)一 部 に至 る広 い範 囲で , 男女 を問 わず大 人 は歯 が赤 く染 ま り,所 か まわず赤 いつ ば
を 吐 く。 舗 装 され た都 会 の 街 路 や て い し脚 の下 の道 に も赤 いつ ば の 跡 が散 乱 して い る。 しか
し, この ごろは バ ンコ クの よ うな大 都 会で は,赤 い 日を した 申 年:
・
の人 は見 か けな い し,赤 いつ
た人 が多 い。 道端 で バ スを待 って い た老 婆 が荷 物
の 中か ら小 さな箱 を取 出 した 。
車には淡 黄緑 の葉
っぱが数 枚 と クル ミ大 の果 実 が二 ,三 個 ,小 さな
ナ イ フ.飾 り物 を施 して栓 を した小 さな容 器 ,小
石 大 の黒 い塊 り, これ だ けが入 って い る
。
老婆は
まず果 実 を 1個 取 出 し. ナ イ フで ゆ っ くりとて い
ね い に,楽 しむ よ うに皮 をむ き,淡 褐 色 を した 内
肺乳 を半 分 に割 って 口-入 れ た。次 に葉 っぱを 1
枚取 出 し,小 さな容 器 の栓 を抜 いて トン トンと指
で た たい て 白い粉 を葉 の上 に のせ , さ らに黒 い塊
りの小 さなか け らものせ , 包 んで 口に入 れ た。 そ
して も ぐも ぐと噛 んで い たが, や がて チ ュ ッとつ
ばを飛 ば した。赤 褐 色 のつ ばが飛 んで 地 面 を汚 な
く染 め た。 この果 実 が ビ ンロウの実で あ る。 あ の
美 しい ビ ンロウの イ メ ー ジ とは お よそ違 った もの
で あ る。市 場 に行 くと生 采 の もの,水 で 煮 て薄 く
写真 9
ビ ン ロ ウ
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aより)
切 って干 した もの, さ らに これ に多少 加工 した もの な どを売 って い る。淡 縁 の葉 っぱは キ ンマ
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l
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)で ,農家 の庭 先 の市 射 日光 の強 く当 た らない と ころ に支柱 を立 て て 自
家 用 に植 えて い る。 ココヤ シの葉 を切 って きて少 しR蔭 をつ くり, 規模 をや や大 き くして植 え,
市場 - 出す 農 家 もあ る。 初 めて熱 帯 の調査 に来 た人 が コシ ョウ とよ く間違 え る の も当然 で コ シ
ョウ科 の作物 で あ る。市 場 に行 くと何 枚 も重 ね た葉 を売 って い るが, これ は収穫 した もの を香
味 を増 す た め 数 時 間積 重 ね て少 し 発 酵 させ た もので あ る。 町 はず れ の通 りに小 さな机 を 出 し
- 43-
271
東南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
て, この葉 っぱを何 枚か, ときには タバ コを巻 くカサ カサ した丁 字 の葉 っぱ も並 べ て売 って い
る。 ち ょっと哀れ な よ うな気 もす るが,本 当の紙 幣を払 って葉 っぱを買 って ゆ く者 が い るか ら
ユ ーモア も感 じられ る。 白い粉 は石灰 で, セ ラムで は貝殻 や生 サ ンゴを焼 いて作 る。 タイや カ
ンボ ジア の市場 には赤 い練 粉 を売 って い るが, これ は石 灰 に着 色 した もので あ り, キ ンマの葉
cut
ch orcat
echu)
っぱに ち ょっ と塗 って噛む。 黒 い塊 は マ ング ロー ブか ら抽 出 した カ ッチ (
で あ る. これ ら一 式 の道具 はいつ も手 離 さず に持 って いて,時 々ゆ っ くりとビ ンロウ噛 みを た
しなむ。各地 で多少 違 い, セ ラムで はキ ンマの葉 よ りも花 穂 (ジ ュウテ ィ花) を多 く使 い, カ
ッチは用 い ない。 時 には タバ コもい っ し ょに噛 む。 セ ラムで親 しか った老村長 は小 さな容器 に
この三 つ の ものを入 れ,棒で たんね ん にす りつぶ して, す っか り歯 の抜 けた 口へ は う りこんで
いた。 わ た くLも以前何 度 か ビ ンロウ噛み をや った ことが あ る。 ビ ンロウのや に臭 さ, キ ンマ
が舌 にひ りひ りと し, 口中は焼 けるよ うな感 じで あ り, 噛 めば噛む は ど ビ ンロウの実 が小 さ く
砕 け, ザ ラザ ラと してつば を吐 く。 ま ざれ もな く赤 いつ ばが 出た。 しか し原 住民 の よ うに うま
くつ ばは飛 ば ない0- 度 わた くLは頭 が フ ラフ ラし出 した ことが ある. ち ょうど何 か に酔 った
ki
l
lに よる と,この
よ うな感 じで あ った 。ビ ンロウの実 に酔 った のだ。麻薬 的作用 が あ る0Bur
よ うな ビ ンロウは悪 い種類 だ と して い る。乾燥 した ビ ンロウの実 で は このよ うな作用 は ない よ
うで あ る。
ビ ンロウ噛み の風 習 がいつ まで 続 いて ゆ くだ ろ うか。少 な くとも都会 に住 む者 の間で は ます
ます す たれて ゆ くだ ろ うが,農村 で は根 強 く残 って ゆ くだ ろ う。 タバ コと違 って キ ンマの栽 培
出来 ない温帯 - の普及 は ほ とん ど考 え られ ない。喫煙 が体 に少 しも益 しない のに反 して ビ ンロ
ウ噛 みは駆 虫 的効果 が あ り,歯 や歯 ぎんを丈夫 にす る といわれて お り,そ の科学 的根 拠 もあ る。
しか し過 度 にな る と胃腸 を害 し精 力 を減退 させ る。
ビ ンロウの実 は生 薬 と して も多 く使 われ る。
FAO の貿易 統計 にの る ほ ど世 界 的 な産 品で は
ないが, ビ ンロウ噛 み の風 習 の ある国 の問で は乾燥 した ものの取 引 もあ る。以前 は 日本 で もビ
ンロウを歯 みが きの-原料 と して使 って いた。
幹 の周縁 部 の堅 い材 は磨 くと美 しい。桂 離宮 の桂 棚 の何 か に使 われて い るよ うな説 明を聞い
た ことが あ る。
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a)で あ り, 同 じヤ シ科 で あ るが,これ は
宮 崎県 青 島にあ るのほ ど ロウ (
掌状葉 で,亜 熱帯 か ら温帯南 部 にみ られ るヤ シで あ る。 ビ ンロウの優 雅 さも美 しさ もないが,
ヤ シといえば何 か ロマ ンチ ックな感 情 を もつ 日本 人 に と っては け っこ う観光 価値 は あるよ うだ。
Ⅶ
トウ r
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pp.その他)
トウは2
00種以上 に及ぶ蔓性 の ヤ シ科植 物 の総 称で あ るが,利用 されて い る トウは Ca
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属 の もので あ る。幹 や葉 に とげが あ り, これ を他 の樹 木 にか らめて そ の樹 冠 の上 へ と伸 びて ゆ
2
7
2
-4
4-
佐藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ
く。 密林 に適 応 した植 物 で あ る。
トウを栽 培 す る ことは ない。密林 に 自生 す る ものを採 取 して くる。乾燥 し, 太 い ものは磨 い
て そ の ま ま トウいす等 の菅 に し,基部 の節 の詰 ま った ものは ステ ッキ に作 る。細 い もの は丸 の
肌
、る
まま」
。
太 い もo
jを裂 いて 肉を削 り,撒 くして各種 のか ごを編 む。原 住民 は家 を建 て る際,
柱 と柱 を結 わえ る ujに トウを使 う
。
弾力が あ 吊
重
税 で ,針 金 0
)よ うに さび る心配 が ない。 セ ラ
ムで は 野猪 と りのわ なや 弓 のつ るに使 って い た。密林 に入 り裸で, とげ の多 い トウの採 取 は な
か なか冊 の折 れ る仕蹄 こ達 い ないが, トウだ けで は な く,一 般 に原 住民 は栽 培 す る労苦 よ りも
自然 生 の ものを とる労苦 の方 を い とわ ない。安 い価 格で 仲買人 に買 われ , 集 めて 輸 出 され る。
新 しい合成 材料 の開発 に よ って 高 価 な トウ細 工 品 は抑 え られ るだ ろ うが, そ の独 特 の風 格 はや
は り請 え られ るだ ろ う。 トウいす に腰 か けて涼 を とって い る人 は多 いが, そ の トウが熟 ,
精 の密
林 か ら原 住民 が苦 労 して採 取 し,何 人 か の手 を経 て きた もので あ る ことを感 じる人 は少 ない だ
ろ う。
1
Ⅲ
ニ ッパ ヤ シ ni
papal
m (NI
pafruti
cans)
川岸 の,特 に海 に近 くな って水 の流 れ が ほ とん どな くな り,満 潮 時 には海水 が逆 流 して くる
よ うな と ころ, こ こは川 の奔 流 も,海 の騒 が しさ もな く,照 りつ ける太 陽 の下 で静 か に眠 った
よ うに よ どんで い る と ころで , ここに葉 を水 に差 し並 べ た よ うに!
上え茂 って い るのが ニ ッパ ヤ
シで あ る。 この ヤ シは幹 が地上 に現 われ て こない ほ ど短 い
。
原 住民 の家 を ニ ッパ - ウス とい う
J
j材 料 に な る。 花板 を切 って糖 液 を とる とい う ことで あ るが,
くらいで ,小 葉 は屋 限ふ きや 壁c
わた くLは一
一度 も見 た ことが ない
。
生 えて い る と ころが容 易 に近寄 れ ない の と, 渉 出 穂液 の 量
が少 な いか らで あ ろ う。 集果 で あ るが容 Ll
J
に離 れて一 つづ つ の果 実 にな る。海 岸 の波 打 ち際 に
果 実 が よ く転 が って い る。一 端 が さ さ らの よ うに な って い る。 そ の繊 維 の束 は ひ げそ りの ブ ラ
シにな る。 セ ラムの 淘 岸で拾 った この果 実 の ブ ラシを わ た くLは 今 も持 って い る。
ほ とん ど利 用 す る ことの ない この ヤ シは, 陸 か ら流 され て きた養 分 や シル トの集積 す る と こ
ろで , 渥 -流 れ去 る成 分 を食 い 止 め, これ を利用 して繁茂 して い る生態 的 には最 も優 れ た植 物
が,地 形 的 に人 の利用 す るには誠 に不 便 な と ころに壬
生えて い る。
Ⅸ
サ ラ ッカs
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accaedul
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s)
ニ ッパ ヤ シと同 じよ うに幹 が地上 に 山て こない。果 実 は地 際近 くにで きる。 トカゲ の皮 に包
まれ た よ うな ピ ンポ ンの玉大 の果 実 は ジ ャバ の庶民 の果 物 で あ る。 ス ラバ ヤか らマ ラ ンへ ゆ く
汽 車の なかで , ジ ャバ の人 か ら二 ,三 個 も らって食 べ た のが後 に も先 に もた だ 1回 だ けだ った
が, 咋 l
]0
)ことo
jよ うに見 えて い る。 そ の味 のす ぼ ら しさか らで は ない . ま きを た いて走 る汽
ー 45-
2
7
3
東 南 ア ジア研 究
第 5巻 第 2号
車 の窓 か ら飛 び こんで きた大 きな火 の粉 で ズ ボ ンを焦 が した 3等車 の中 の思 い 出 とと もにで あ
る。少 し く渋 味 と くせ のあ る甘 味 と香 り, わた くLには おい しい果 物 とは思 え なか った。
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ana),葉 か らろ うの とれ るカ
南米 には油脂 の とれ るババ スヤ シ (
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,中南米 には ク リの よ うな味 を
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maut
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)等 が あ るoいずれ もその経済 価値 ,将 来性 は大
もつ Pej
き くは ない よ うで あ る。残 念 なが らわた くLは一 度 も これ らの ヤ シを見 た ことが ない.東南 ア
ジアには無縁 の もので あ る。
結
び
ヤ シと原 住民 との結 びつ きに重点 を 置いて述 べ て きたが, その将来性等 について も多少 の示
唆を与 え る ことが 出来 た とすれ ば, わた くLに とっては望外 の喜 びで あ る。
ヤ シの産 品 につ いて生産 量 や貿易 の状 況, 価格,需要供給 の関係 な ど経済 的 な面 には ほ とん
ど触 れ なか った。 これ は極 めて大 切 な ことで あ るので, それぞれ専 門 の書 を参考 に して いた だ
きたい。
謝
辞
筆 を とる機会 を与 え られ,激 励 とご指 導 をいただいた京 都大学東南 ア ジア研究 セ ンタ∼本 間
武教授 , タ イ国 の実情 や マ レイ語 につ いて有益 な助言 をいただいた同石 井米 雄教授 ,坪 内良博
助手,数 々の文 献 を お貸 しいた だ い た京 都大学 農学 部長 谷川浩教授 ,写真 の掲載 を許 され た名
古屋大学 医学 部正垣 幸男博士 , コイア の検定 を して いただいた月星 ゴム株 式会社技 術 部,昆 虫
や製造 について教示 を受 けた兵庫 農科大学 岩 田久二雄 ,河本 正 彦両 教授 , 神戸大学 農学 部清水
俊秀教授 にそれぞれ深 く感謝 いた します。
付
記
2
0数年前 わた くLは イ ン ドネ シア のセ ラム 島で 3年 間ア タ ップ とガバ ガバ と竹 で 作 った家 に
住 み,原 住民 と共 に,米 の ご飯 を食 べ る ことな く生 活 した。夜 は ダマ ール を くべ て灯 火 と し,
ki
l
lの本 , ジ ャバで 入 手 した
シ ンガポ-ル の 植 物 園で故 郡場先 生 か ら分 けて いただいた Bur
Oc
hs
e(
英文)や Heyneの原書 や大 谷光 瑞 の本 を読 んで熱 帯農業 に対 す る情 熱 を燃 や し, 昼 は
開墾,農耕 の他 にサ ゴ打 ち, ヤ シ油 作 り, ヤ シ砂 糖 ヤ シ酒作 り, ア タ ップ編 み な どの作業 に精
進 した。 その記憶 のあ る間 にいつ か ヤ シにつ いて書 いてみたい と考 えて いた。 その機会 を与 え
られ た ので 記憶 をた ど り,文献で確 かめ, さ らに新 しい知識 も得 て よ うや く書 きあげた。再 読
して駄 筆 の多い のに驚 く。8 ミリで も うつせ ば即座 に了解 して いただ ける ことで も, 原 住民 の
す ぐれ た テ クニ ックを筆で書 くことは難 しい.百 聞一見 に しかずで ある. ヤ シ砂 糖 作 りな どは
バ ンコクや プ ノ ンペ ンの空港近 くで も見 られ るだ ろ う。 こち らの技術 を見 せ る前 に, まず原住
2
7
4
-4
6-
佐 藤 :東 南 ア ジ アの ヤ シ
民 の技 術 の一 端 を 知 る こ と も意 義 の あ る こ と と思 う。
参
考
文
献
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A.
D.Ta
科学技術庁資源局 『ココヤ シ資源 に関す る再評価調査報告』1
9
6
6.
同
『池ヤ シに関す る諸研究 (
釈)』1
96
7.
回
『ヤ シ栽培法(
釈)
』原著 Pr
udhomme,E.LeCo
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s:1
9
06
.
同
『南洋物産誌 コプ ラ編 (
複写)』
Lan,J,Le
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9
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McCur
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C.Pal
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heWo
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d.New Yor
k:1
96
0.
南方農林協会 『南洋の栽培事業』東京 :1
9
4
4.
南洋協会 『オイルパームの研究』来貢 :1
93
0.
熱帯農業研究会 『東南 アジア諸国における農作物の改良 と技術交流の可能性 に関す る研究 (
油脂の部)』
東京 :1
96
5.
西川五郎 『工芸作物学』東京 :1
9
6
0.
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臨時産業調査局 『ヤ シ栽培法 (
釈)』 原著 Pr
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Samps
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C.TheCo
c
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m.Londo
n:1
9
2
3
.
佐藤正 己 『有用植物分類学』東京 :1
95
7.
佐藤孝 「サ トウヤ シとヤ シ砂糖,ヤ シ酒 」『熱帯農業』Vo
l
.3
,No.1
.1
9
5
9.
台湾総督府農業試験所 『台湾農家便覧』台北 :1
9
4
4.
Te
mpany,H.& D.
H・Gr
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6・第 11回太平洋学術会議資料
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