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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL <論文>東南アジアのヤシ 佐藤, 孝 東南アジア研究 (1967), 5(2): 230-275 1967-09 http://hdl.handle.net/2433/55375 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 東 南 ア 佐 ジ ア の ヤ シ 孝 藤 Pal msi m Sout he as tAs i a by Takas hiSATO は じ め に 南 の国 は ロマ ンチ ックな もので あ り, ヤ シはその シンボルの よ うに され てい る。寒 い冬 を も つ北 の国か らみれ ば南 の国 はなにか暖い ものが感 じられ , ロマ ンチ ックとい う表 現 が ピ ック リ す るよ うで あるが ,熱帯 の現 実 は必ず しもそのよ うな もので はな く,北国 の冬 と同様 ,あ るい はそれ以上 に きび しい 口が 1年 中続 いてい る とみ る こと も出来 るだ ろ う。 この熱帯 の原住民 に とってヤ シは ロマ ンチ ックな もので はな く,天 か らの恵 みで あ ろ う。 この天 の贈物 は今や温帯 の人 々にとって は,熱帯 か らの大 きな贈物 とな ってお り,その価値 は ます ます高 くな ってゆ く。 200種 に も及んで い るが,人類 にと って有用 な ものは この ヤ シとい って もその種類 は多 く,1 うちの数種 で あ り, その多 くが東南 ア ジアに存在 す る。 ココヤ シは熱帯の海岸近 くに広 く分布 し, ことに熱帯 アジアにおいて東洋人 のえ い智 と器用 さによ って,その利用 の道 が数多 く拓 かれ てい る。同時 に温帯地域 に も莫大 な油脂原料 コプ ラ を提 供 してい る。高温乾燥 気候 の近東 か ら北 アフ リカにか けては, オ ア シスや河 に沿 って ナ ツ メヤ シが植 え られ,砂漠の民 の重要 な食糧 とな り,家畜 の飼料 と もな り,最 も古 い作物 の一 つ とされてい る。 これ に支 え られて 中近東や エ ジプ トの文 明の華 が咲 いた と もいえ よ う。熱帯 ア フ リカの高温多湿 の地帯で は アブ ラヤ シが, おそ ら くは古 くか ら利用 され ていただ ろ うが ,東 洋人 ほ どの知恵 のない原住民 には ココヤ シほ どの利用 の道 もなか ったが ,比 較 的近年 ヨー ロ ッ パ人 によ って開発 され ,その価値 の高 い ことが認 め られ て,温帯 に とってほ重要 な油脂資 源 と な ってい る。熱帯 アメ リカにはババ スヤ シや カル ナ ウバ ヤ シがあ るが, その価値 は上 に述 べ た ヤ シに比べ れば,は るかに低 い。 ビ ンロウを噛む風 習 のあ る熱帯 アジアの原住民 に とって ビ ン ロウ樹 は欠 かせ ない もので ある。 サ ゴヤ シは東南 アジアの一 部の原住民 の主食 サ ゴ澱粉 を提 供 2 3 0 - 2- 佐 藤 :東 南 ア シ ア 0)ヤ シ して くれ るO その大 きな澱 粉 生産 力 は よ うや く注 目を 浴 び よ うと して い る ミラヤ シか らと った液 で , ヤ シ砂糖 や酒 を造 る 。 。 サ トウヤ シやパ ル と もに古 くか ら,楽 しみ の少 な い原住民 に愛 好 され て きた。 これ らの ヤ シにつ いて述 べ てみ たいが , わ た くしの 体験 を 多分 に織 りこみ ,時 にはや や独善 的 な意見 も入 れ て い るので その点 あ らか じめ お許 しを乞 う。 I ==ヤシ c oc onutpal m( Cocosnucl f era) ヤ シといえ ば コ コヤ シを指 す よ うに, この ヤ シは熱帯 の景観 を最 も象 徴 して い る もので あ ろ う 。 空 の上 か ら,焼 けつ くよ うな , そ して填 っぽ い飛行 場 に降 り立 つ 現 代 と違 って ,茸 は 単調 な長 い船 旅 を終 え て港 に近 づ くとき,一 一番先 に 目につ くもの は おそ ら く海岸 に生 え た コ コヤ シ で あ っただ ろ う。 熱帯 の海岸 には ど こにで も見 られ る この ヤ シの 原産 地 につ いて は南 米説 とア ジア説 とが あ って ,は っき り しない 。 コ コヤ シの果実 が 末 か ら海 に落 ち,浮 い て波 に乗 り, 侮 流 によ って流 され ,新 しい土 地 の海 岸 に打 ち上 げ られ , そ こで発芽 して根 を下 ろ し,芽 は 伸び て 大 木 とな り,果 実 をつ け, その果 実 は再 び海 に落 ち,波 に乗 って次 の 鳥- と運 ばれ る 。 ココ ヤ シは この よ うに して熱帯 の 海岸 には ,た とえ , さん ご礁 か らで きた無人 島 に さえ 見 られ るよ うにな った。 コ コヤ シとい う作物 を本 当 に理 解 す るた め に は,原 住民 の生 活 , 特 に食 生 活 と コ コヤ シの結 び つ き,お よび ,c as hcr op と しての コ コヤ シとい う両 面 を深 く見 て いか な けれ ば な らな い。 いず れ の場 合 に も一 番 重要 な もの は果 実 で あ るので , まず果 実 の各 部分 の 名称 につ い て述 べ よ う。 1. 果 実 果 実 の各部 分 の名称 は邦書 を み て も,利用 部 分 の用語 が ま ちま ちで あ り,間違 い を起 こす こ とが あ る 。 果 実 の各 部分 の植 物学 用語 は図 1に示 す とお りで あ るが ,常 に これ らの術 語 が 使 わ れ てい る とは限 らな い。 む しろその よ うな場 合 は少 な い。 i . 外果皮( B)と 申 果 皮( D) を皮 ( hus k)とい い ,内果 髭 ( E) か ら外 果皮 ・申 果皮 を剥 ぐことを刺皮 ( hus ki ng) とい う。申果 皮 の繊 維 c oi r )と して コ コヤ シ0 ) は コ イア ( 重要 な産 品 の一 つ で あ る。 i i . 内果皮 お よび これ に包 まれ nut ),内果皮 を た 部分 全体 を核 ( 殻 ( s hel l ) とい い, これ か ら活性 炭が 作 られ る。 i i i . 内果 皮 の 内側 で ,内鯉 乳 ( F ) 図 1 コ コヤ シの 果 実 と腔 ( A) を取 りまい て褐 色 の薄 い 皮 , - 3- 2 3 1 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 種皮 が あ るが,内腔 乳 に密着 してい るので ほ とん ど問題 に され ないが ,細 粒 コプ ラ ( des i c c at ed c oc onut ) を作 る場 合 には これ を取 り除 かな けれ ばな らない。 i v. 内腔 乳 と腔 の部分 を 肉 または核 肉,果 肉 ( meat )とよぶ が , 腔 は ご く小部分 を 占め るに c opr a)で , コ す ぎな い。原 住民 は核 肉を絞 り,各種 の料理 に用 い る。乾燥 した もの は コプ ラ ( コヤ シの最 も重要 な産 品で あ る。乾燥 す る前 の 内腔 乳 を生 コプ ラと表現 して もいい訳 で ある。 r es hmeatとい う語が用 い られ るが , これ を訳 して新鮮果 肉 とか生果 肉 とい う邦語 英語で は f が あ るが ,植 物学 的 には果 肉で な いか ら,生 コプ ラとい う表 現 の方 が よい。 Ⅴ. ヤ シの水 ( c oc o nutwat er )は内腔 乳の 内側 にたたえ られ ていて飲 用 に供 され る。 2. 原住 民 の食 生 活 と ココヤ シの実 原 住民 が その食 生 活 に どの よ うにヤ シの実 を利用 して い るかをみてみ よ う。 1 ) ヤ シ ミル ク ( c oc o nutmi l k) 成 熟 した果 実 か ら原 住民 は料理 に使 うヤ シ ミル ク- kel apa とい う- イ ン ドネ シアで は s ant an とか s us u を とる。 皮 を剥 ぎ,核 を真 申 ( equat or )で二 つ に割 る。 この おわん の よ う な ものを両 手で持 ち, ククラン (イ ン ドネ シア語 ) とい う器 具 で枝 肉を削 りお とす。 ククラン は大 きな さ じの縁 を鋸歯状 に した鉄製 の器 具で ,木 の台 に打 ちつ けて あ る。 クク ランの ない場 合 は,サ イダ -や ジ ュ- スの栓 を小 さな木片 に打 ちつ け,栓 の ギザ ギザ の縁 で削 る. これ もな い場合 は太 い竹 を割 って- らの よ うに し,先 を鋭 利 に して, これで削 る。 こ うして削 った 白い 細長 いの こ くず の よ うな核 肉を, 目の細 か い深 い ざるに入 れ,水 を加 え た り,水 の 中につ けた り して絞 る と, 白い ミル クの よ うな液 が 出て くる。何 回 も繰返 し,最 後 に絞 り粕 を捨 て る と, ブタや ニ ワ トリ, ア ヒル な どが寄 って きて食 べ る。食 べ残 した粕が たま って くると異 臭 を放 つ よ うにな る。原 住民 のニ ッパ - ウスの周囲 には ,なん と もい えないいや な臭 いが漂 って い る も ので あ るが ,サ ンタ ンの絞 り粕 もこの異臭 の一 成分 を な してい るだ ろ う。 この絞 り粕 には ヤ シ C opr ac akeや C opr ameal )よ り,は るか に多 くの養分 が含 まれて い る。 サ ンタ ンには脂 肪 粕 ( が27% , 蛋 白質 4% ,糖 6% が含 まれ, ビタ ミンA と E も含 まれ てい る。 その組成 か らみ ると 牛 乳 よ りも脂 肪が著 し く多 く, ク リームに近 い。蛋 白質 はグ ロブ リンが主 で , これ は リジ ンに 富 み良 質 の蛋 白質 で あ る。 サ ンタ ンは各種 の料理 に使 われ る。 この 中 に魚干 物 の魚等 - 生魚 や くん製 , ,ニ ワ トリ, ア ヒル ,回教徒 は 山羊や羊 の 肉,回教徒 以外 の者 は豚 や野猪 の 肉 をた き こむ。 また, トウガ ン, レイ シ,- チマ,- ヤ トウ リ, キ ュウ リ, カボチ ャ等 の瓜類 , トマ ト, ナス, ササゲ ,バ ワ ンメ ラー (小 さい赤 い タマネギ),エ ンサ イ,ボス レー ン, バ ヤム (ヒユの類 ) その他 の野菜類 もた き こむO これ に トウガ ラシや ウ コン ( Curc umal onga)等 の香 辛料 を加 えて サ ンタ ン料理 ,す な わ ち カ レーの一 種 を作 る。 タ イや イ ン ドネ シア等 東南 ア ジア の国 で は市場 に行 くと,必ず その 中 には大衆食 堂 が あ り,大 きな なべ が並 んで い る。 その なか には各種 の カ レ-が入 り,希 望 の ものを 自飯 にか けて もらった り,二 ,三 の もの を スープ皿 に 23 2 - 4- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ も らって , ご飯 にか けなが ら食べ るので あ るが ,赤 い サ ンタ ンは トウガ ラシが刻 み こまれ て い て, わ た くしな どは- さ じ食 べ れ ば 口車が火 の よ うにな り, この火 を 消す ため に, ご飯 を た く さん食 べ な けれ ば な らな い。 どの客 も白い ご飯 を 山の よ うに盛 って もらい ,油の ギ ラギ ラ浮 か ん だ赤 や黄 , 白の サ ンタ ン料 理 を喧 喋 と,異 臭 の 申 で平 らげて ゆ く姿 は, ま ことにバ イ タ リテ ィーの溢 れ る もので あ る。 また,ご飯 が た きあが った と き,サ ンタ ンを入 れ て 手早 くまぜ る と, なん と もいえ ない香 りの ご飯 が 出来 る。 これ に ウ コ ンをす って絞 った黄 色 い汁 を入 れ る と,質 黄 の美 しい nas ikoe ni ngが 出来上 が る。 ウ コ ンの ほ ろ苦 い味 と ミル クの芳 香 が して , おい し くもあ り, 栄 養 価 も高 く,ウ コ ンが肝 臓 の特 効薬 クル ク ミンを含 む ので保健 食 で もあ るだ ろ う。 nas ikoeni ngは イ ン ドネ シアで は, お祭 りや お祝 いの時 には欠 かせ な い もの で ,円本 の 赤飯 に 相 当す る もので あ る。 サ ンタ ンは, また , バ ナ ナの葉 な どで也 ん だ 油 っこい五 目飯 に いえ ば- 「 1 本式 に も入 り, い っそ うその 味 を ひ きた たせ てい るO タ イで は もち米 にサ ンタ ンを加 え ,若 い竹 筒 に詰 め ,葉 で 栓 を して これ を火 にか け る。黒 く焦 げた竹 筒 の外 側を剥 ぎ と り, そ の まま売 って い る。衛 生 的で もあ り, な か な か うまい 。 す りお ろ した キャ ッサバ や トウモ ロ コ シに サ ンタ ンとヤ シ砂 糖 を混ぜ て煮 る と,寒天 の よ うに岡 ま り, お 菓子 とな る.街 f L i J i の屋 台 で 売 って い る寒天 で 固め た色 と りど りの美 しい菓子 に も多 くサ ンタ ンが入 って い るO コー ヒ-や コ コアに入 れ る こと も出来 る。 イ ン ドネ シアの 歌 に まで 歌 われ て い る この柿 物性 牛 乳 と も称 す べ き サ ンタ ンは, ま さに欧米 人 の 食生 活 が牛 乳 を離 れ て は考 え られ な いの と同様 な意 義 を もっ て お り, わが国 の 味 噌 な どの比 で はないO サ ンタ ンを 歌 った歌 を一 つ あげて お こ うo Mani s emani s et er l aumani s e,s amas ant andengan gul a,t er l au mani s e. この 歌詞 は ≠サ ンタ ンは本 当 におい しい,砂糖 の よ うにおい しいク とい う意 味 で あ り, イ ン ド ネ シアの い た る所 で 歌 われ , 歌 に合 わせ て 原住民 の踊 り へメナ リー ( menar i )ク が踊 られ る。 歌詞 はい ろい ろあ り,即 興 的 な もの もあ る。 2) ヤ シ油 ( c oc onutoi l ) ヤ シ油 は コプ ラか ら作 られ る もので あ るが ,原 住 艮 の家 庭 で は ヤ シ ミル クか ら作 られ る。数 個 の ヤ シ巣 か らと った 貢 白い ヤ シ ミル クを 鉄 なべ に入 れ て煮 て い る と, 急 に 澄 明にな って く る。水 分 が議 発 して油 だ けが残 って きた ので , この時- つ まみ の塩 を入 れ る C こ うす る と油が 腐 らな い とい う。 ぴん の ない場 合 は竹 筒な どに入 れ て貯 え る。台所 の片 隅 に 油 の に じん だ竹 閏 を よ く見か け る。 こ う して作 った油 は もち ろん蛋 白質 や そ の他 の不 純 物 が ま じって お り,貯 蔵 中 に 多少 変 質 もす るので , コプ ラか らと って精 製 した もの とは違 い, ヤ シ油 の臭 い もい っそ う つ よい。原 住 民 は食 用 油 と して,魚 や バ ナ ナを揚 げ,野菜 を い ため るの に盛 ん に用 い る。皿 に 入 れ灯 心 をつ けて, あか りとす る こと もあ る。時 には ,髪 の毛 や皮 膚 に塗 るので , ポ マ ー ドや 化 粧用 ク リームの代 刺 こもな る。 原住民 は サ ンタ ンや ヤ シ油を盛 ん に食 べ るので ,体 臭 が ヤ シ ー 5- 233 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 油臭 い とい う人 もあ るが ,わ た くし自身原住民 に負 けない ほ どヤ シ油 や サ ンタ ン料理 を食 べ て いたが ,一 度 もその よ うな ことを言 われ た ことはなか った。 おそ ら く汗 な ど分 泌物 によ るので はな く,髪 や体 に塗 った ヤ シ油 その ものの臭 いだ ろ う。 00個 と も称 され る 熱帯で 消費 され るヤ シ果 は 1年 1人 当 り50個 と も1 。 セ イ ロ ンで は 1 49個 に 及ぶ 。 3) ヤ シの水 ( coconutwat er ) ヤ シの水 を ヤ シ ミル クとよんで い る邦書 や外 国書 もあ るが , これ は誤 りと言 えない まで も, その色や成 分 ,利用法 な どか らみて適 切で はない。 ミル クはや は り絞 って とる もので あ る。 イ rkel apa(ヤ シの水)とい う。 これ を混 同す る と利用法 な どの説 明で 誤 られ ン ドネ シアで も ai や す いo 腔 の うか ら発達 した内腔 には,他 の顕花植 物 において は細胞 の分裂 が繰返 され て 内腔 乳 がで きるが , コ コヤ シで は これが最 初水 の状態 で あ るので , この水 の 中には無 数 の第二 次 的 な腔 の う核 の分裂 で生 じた細 胞核 が浮 遊 してい る。核 が有 糸分裂 によ る ものか,無 糸分 裂 によ る もの か は は っき り分 か っていないが , 1-40の核 が細胞膜 で包 まれ て い る。 ヤ シの水 を ろ過 すれ ば 多量 の細 胞核 が分 離 で きるので,純粋 な核物質 の生 化学 的 な研 究 に供 され るだ ろ う。1 )また水 の 中 には生長 作用物質 を含 んで い る こと も証 明 され てい る。 熱 帯 に行 って ヤ シの水 を飲 ん だ人 が ≠ヤ シの水 はおい し くほなか ったク と言 う言葉 を しば し ば聞 く。晴好 的 な問題 で あ るので ,わ た くLが特 に個人 的 な意見 を述 べ る ことはな いが , ≠油 臭 くて まず い ものだ ったク と言 うことを聞 くに及んで は一 言述 べ て, ヤ シの水 の弁護 をす る と と もに, ヤ シの水 の正 しい飲 み方 を説 明すれ ば,この よ うな人 も再 び熱帯 に行 く機会 が あれ ば, 今 度 は き っとヤ シの水 党 にな って くれ るだ ろ う。 ヤ シの水 の糖 分 は開花後 6- 7カ月 目,す なわ ち成 熟 5- 6カ月前 が約 5% と最 高 にな る。 糖 の大部分 は庶 糖 で あ る。 この時 が ヤ シの水 は一 番 うまい。 内果皮 は まだ黒 く固 くな って お ら ず , 内腔 乳 は よ うや く先 の方 で 固 ま り始 めて,薄 い寒天 状 を呈 して い るo成 熟 が進 む につ れ て 表 1)。 こうな ると もはや飲用 には透 き 糖 分 が減 り,成 熟果 で は 2% とな り油 臭 くな って くる( な くな る。 表 1 成熟期のヤシの水の組成( %) 原住民 を呼 んで木 の持 主 を確 かめ, 1個 T 原住 民 は ヤ シの水 を あ ま り飲 まない. も ・ 2 .¶ 」 ー止 . H H 9 3 を指 して "あれ を取 って くれ' Yと頼 む. 山 l の値段 を決 め , だ いたい 6- 7カ月 の果実 h 一 拍所 ・ 'Bal l eye tal ・ ,Tr o Pi s c heundSub t r o Pi s c he ,Ⅰ Ⅰ . We l i u ) i r t s c ha ft s がanz e n,Bd.Ⅰ ( St ut t gar t:1 9 6 2 ) っと も, の どが乾 いたか らとい って ヤ シの 1 ) Ⅴ. M.Cut t e rg fα/. ,"Thei s ol at i onofl i vi ngnuc l e ef r om t hee ndos per m ofCoc ° snuci f e r a, " Sc i e nc e ,Bd.1 1 5,pp.5 2 53.1 9 5 2 . 234 - 6- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ 水 を飲 んで い た ので は ,た ち ま ち未 熟 の果 実 を取 りつ くして しま うだ ろ う。 チ モ ールや セ ラム の原 住 民 は ヤ シの水 を飲 む とマ ラ リア にな る とい って ,む しろ敬 遠 す る傾 向 さえ あ る。 邑二 の賢 人 の教 え とわ た くLは解 して い るO イ ン ド人 は ヤ シの水 を盛 ん に飲 む ら しい C イ ン ド回艮 - o j 成 熟 ヤ シ異 の供 給 は少 な く, イ ン ド国 内の生産 量 は国民 の需要 の 30% にす ぎず ,多 量 の果 実 を 輸入 して い る。 おそ ら くイ ン ド人 は イ ン ドネ シア人 や マ レー人 の よ うには豊 富 にサ ンタ ン料理 を食 べ て は お らず ,栄 養 不 足 に悩 んで い る ことだ ろ う 。 未 熟 な ヤ シ果 を取 って水 を飲 む ことは, この よ うに国民 栄 養 の面 か らみれ ば決 して好 ま しい ことで はな い。水 を飲 む 目的で壊 L f 三 ヤ シを 植 え て い る こと もあ る。 これ は良 質 の コプ ラや サ ンタ ンを大 量 に とる ことが 出来 な い ものが 多 い ので ,都 合 が よい。未 熟 果 を とるので着 果 も多 い 。 ヤ シの木 に猿 の よ うに登 り,樹冠で は葉 柄 を た ど って若 い果 実 を切 りとる ことは難 しい 仕事 で ,頂住民 は誰 で も出来 る とは限 らな い。 足 を前 に踏 ん 張 り両 手で幹 を か か え る よ うに して登 る点 で ,幹 に休 を密 着 させ て登 る 日 本 人 の 木登 りとは違 うが ,これ は ア リそ の他 の毒 虫 に体 を刺 され ない よ うにす る合理 的 な方 法 で あ る。 柔 らか い海岸 の砂 の上 以 外 は,取 った果 実 を高 い 樹上 か ら投 げ る と, ひびが入 り水 が流 れ 出 し て しま うので ,ぶ ら下 げて 降 りて くる。 ヤ シの実 は この時 代が最 も頂 く,成 熟 が進 む とか え っ て軽 くな って くる。病 虫害 を受 けて い ると, この 重い果 実 が ,落 下 して くる ことが あ る。特 に 夕方 か ら夜 にか けて落 ちやす い ので ,木 の下 で涼 を と りなが ら, たたず む ことは危 険で あ る。 取 った実 を切 って ,水 を飲 む よ うに して くれ るが , これ もなか なか巧妙 で あ る。 わ た くLは苦 台湾 で , も らった ヤ シの実 を前 に して水 の飲 み方 につ い てず い分 苦 心 した。 2 人 が か りで 丸 い 実 を押 え,の こぎ りで繊 維 質 の 申果皮 を切 り,堅 い 内果皮 を切 って こぼれ る水 を コ ップに受 け, の こ くず の浮 か ん だ ものを飲 ん だ ことが あ るが ,少 しの うま味 もな く, 油臭 い生 温 か い水 で あ った。 イ ン ドネ シア人 はす ぼ ら し くよ く切れ る刀 で , まず 果 実 の隆線 を斜 め に切取 り, これ を 残 して おい て あ とで さ じの かわ りに使 う。次 に実 を斜 め に切 って ゆ き, 内果皮 の一 部 が あ らわ れ て くると,これ を注 意深 く切 りと る。 白い 内肱 乳にな ると薄 い 白い層 が 出来 て い る- 6カ月で は寒天 状 で あ るが ,7- 8カ月 が で て くると,刀 の匁先 を果 実 に二 ,三 回 切 りこん で , 先 を きれ い に して か ら内腔 乳 を 切 りと る。 こ う して旅 人 に捧 げて だ して くれ る。 タ イや カ ンボ ジアで は果 実 の先 半 分 の 中果 皮 と内果皮 を切 り落 と し, 白い 内腔 乳 を露 出 させ , ち ょうどお椀 jを 当てて飲 むO氷 水 な を被 せ た よ うな形 に して駅 な どで売 って い る。 内 膳浮Lを切 って そ こ- r どと違 って衛 生 的で あ るが ,飲 用 と して は,や や 熟 し過 ぎて い る。 かつ て戦 争 中 注射 用 の蒸留 水 が不 足 した とき, これ に注射 針 を突 き刺 して水 を と り,注 射 に使 われ た。 当時 わ た くLは 山 に住 ん で い て, 1カ月 に 1度海 岸 に行 く任務 が あ ったが ,4 0キ ロメ ー トル の 山道 を歩 くの に力 とな った の は,海岸 で もぎたて の ヤ シの水 が飲 め る ことで あ った。仕事 を終 え て ヤ シの実 を二 , 三 個持 って,再 び 山 に帰 って くるが , 山 の冷 気 にひた り,新 鮮 度 の落 ちた ヤ シの水 を飲 む こと は, もはや魅 力 の あ る もので はな か った。 もいで か ら時 間 の経 った ヤ シの水 は,気 の抜 けた サ --7 235 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 イダ ーの よ うな ものだ。暑 い 日中,汗 にぬれ て ヤ シの木 の下 にた ど り着 き,大 きな実 を両 手 に 持 ち,息 もつ かず , ど くりど くりと飲 む と きの気持 は格別 で あ る。 ス トロ-を使 った り, コ ッ プ に と った り,氷 や砂糖 を入 れ て飲 んで は本 当の昧がで ない。胸 を伝 って ヤ シの水 が,汗 にぬ れ た シ ャツを さ らにぬ らす と ころに味 が あ る。適 度 の甘 さと炭酸 が 口中 に しみ渡 るとき冷気 さ え感 じ られ る。 わ た くLと行 を共 に した人 は皆 ヤ シの水 の うま さを讃 え た。 原住民 に ≠ 水 を飲 む か らヤ シの実 を取 って くれ' Y と頼 め ば, たい ていは成 熟 した もはや飲 用 に適 さな い ものを取 って くれ る。 これ には理 由が あ る。旅 人 が水 を飲 んで みて, かね てか ら聞 いていたおい しさのないの に失望 して,果実 を投 げ捨 て ると,旅人 の去 った あ と,果 実 を半分 に割 って 中 の生 コプ ラをす っか り頂 だ いす るので あ る。 わ た くLは, おい しい水 を飲 み, さ ら に実 を半分 に割 らせ , とって おいた ヤ シの さ じで寒天 状 の 内膳 乳 をす くい と り,す っか りい た だいて しま う。 ヤ シの水 は熱帯 に住 む温 帯 の人 に と って は欠 かせ ない飲 物 で あ ったが, この ごろは どの よ う な 田舎 に行 って も コー ラや ジ ュ- スの類 が はん らん して いて, ヤ シの水 の うま さが忘 れ られ て ゆ くのをわ た くLは淋 し く思 う。 4) そ の 他 幼果で しぶ 味 が な く食 用 にな る ものが あ る。 カブ カ ンラ ンの よ うな味が す るといわれ て い る が, わた くLは原住民 が その よ うに利用 してい るの を見 た こと も, わた くし自身 味 わ った こと 0-80%以上 が幼采 の うちに落果 す るので ,この よ う もない 。1果房 に40-50果 も着 くが,その 7 な利用 の道が あれ ば好都 合で あ る。発芽 に先 だ って,腔 の直下 に発達 す る栄 養球 は ヤ シ リンコ ( c oc onutappl e,haus t or i um)と称 され る。 これ は腔 と通導組 織 によ って直 結 し,酵素 を分 泌 して 内膳 乳 を分解 し,養分 を月 引 こ供 給 す る器 官 で ,次第 に大 き さを増 して 内腔 い っぱい に拡 が る。 発芽 後 2年以上 も存在 して 内腔 乳 をす っか り分 解 し,芽 生 の発育 に吸収 され て消滅 す る。 ヤ シ リンゴは少 し甘 味 が あ り,原 住民 のr ll には これ を愛 好 す る ものが い る。 ヤ シの苗床 で発芽 1 1 1 の実 を害 す る もの にネズ ミや野猪 もい るが ,最 も防除 し難 い もの は人 間 とい う害獣 で あ る, と書 かれ た本 が あ る。苗床 か ら盗 み 出 して果 を裂 き, リンゴを と って食 べ るか らで あ る。 わた くLは初 めて 口に した時 は,海綿 質 の 肉の ほのかな甘 さが気 に入 ったが ,やが てその吐気 を催 す よ うな ヤ シ油 の臭 いが い や にな り, い ま思 い 出 しただ けで も, こめかみ の あた りが痛 んで く るよ うだ。 しか し,その 中 に含 まれ る油脂 を分 解 す る強 い酵素 を と り出 して消化剤 の よ うな医 薬 がで きない ものか とい う しろ うと考 えを もって い る。 Ⅰ 二 il果皮 は コイア と して コプ ラと共 に重 要 な輸 出農産 物 で あ るが ,原 住 民 は剥 ぎ とった繊維 を木づ ちで たた き, よ って綱 を作 る。 ニ ッ パ - ウスの中 に入 ると,天 井 か らぶ ら下 げ られ た太 い この網 の下端 が くすぶ って い る。蚊除 け にな るとい う。 また タバ コの火 をつ け るの に もよい。 半 分 に 割 られ た 内果皮 はお椀 と して食 器 に用 い,柄 をつ けて ひ しゃ くとす る。花 ぴんや タバ コぽん セ ッ トに細工 され た ものを 日本 で 236 - 8- 佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ 目にす る こと もあ る。- び の友 を張 って弦 楽 器 の胴 に さ れ て い るのを ど こかで見 た よ うな気 がす る。発芽 孔 ( 図1 C)の あ る方 は猿 の顔 に似 て い る(図 1右)。 口に当 た る と ころの 内側 に肱 が あ る。二 つ の 目に相 当す る と ころは 退 化 した肺 の あ った と ころで ,発 生 的 には コ コヤ シは三 つ の膝 か らな って お り,果実 の横 断両 は三 角形 を して い る。 まれ に退化 の途 中 に あ る 2脈 の もの,退 化 前 の 3肱 の ものが あ り,一 つ の果 実 か ら 2本 や 3本 の ヤ シの木 の 仕 え て い る ものが あ る( 写 真 1)。それ は と もか くと して, 底 に孔 の あい た方 も巧 みな使 い途 が あ る (サ トウヤ シの 項 参 照 )。 長 い形 の果 実 は コプ ラ生産 上 か らは 不良 巣 と され て い るが , nutが小 さ く長 い ものが 多 い ので細 工 し て , き ざみ タバ コ入 れ な どを 作 る。磨 けば黒 地 にかす り の王 柾紋 がで て美 しい。 しか し人半 の 申 果皮 や 内果皮 は仏 炎 や枯 葉 な どと共 に燃料 に使 われ た り, 灰 に して カ リ肥 写真 1 三つの肱か ら発芽 した ココヤシ ( 筆 者撮影) 料 と し, また はそ の ま ま園 に還 元 して有 機 質 の補 給 に役 立 て られ る 。 3. 果 実以 外 の利 用 末 展 開 の若 い葉 の小 葉 を縦 に裂 い て,握 りこぶ し大 の小 さな笠 を編 む 。 小 に米 を入 れ て煮 る と寵 い っぱい に膨 らむ。 そ の ま ま弁 当 と してぶ ら下 げて ゆ く。 ちま きの よ うに葉 の香 りが ご飯 に うつ って い る。葉 を乾燥 して敷 物 を織 る。未 霞関 の葉 の葉 柄 を縦 に割 って アーチ型 にす る と 写 真 2), また 薄黄 色 い小葉 が 垂 れ下 が り美 しい。 これ は人 を 歓迎 す る とき村 の入 口に飾 られ ( 結婚 式場 の周囲 に張 りめ ぐらされ ると明 るい雰 囲気 とな る。花梗 を切 って と る甘 い樹 液 か らは 砂糖 が 作 られ , また発酵 す れ ば ヤ シ 酒 とな る。 しか し, コ コヤ シは責 重 な果 実 が採 れ るので ,樹液 を探 って 木 を 弱 らす ことは損 失で あ る。 イ ン ドで は コ コヤ シか らこの よ うに して 砂糖 や酒 を とる ことが多 いが , イ ン ドネ シアで は他 に用途 の少 な い サ ト ウヤ シか ら, タ イや カ ンボ ジアで は パ ル ミラヤ シか ら砂糖 や酒 を と る こ とが 多い。木 の生 長点 は ヤ シの芽 と 称 して サ ラダ に した り, サ ンタ ン料 写真 2 ココヤシの未展開の黄色い葉を両側に飾 った がいせん門 人を歓迎するときにつ くる。 ( TanahAi rKi t a よ り) - 9- 23 7 東南 ア ジア研究 第 5巻 第 2号 理 に して賞味 す る。芽 を とれ ばそ の ヤ シ樹 は枯死 して しま う。 ヤ シの芽 はいわ ば王侯 の食 べ物 で あ る。 わた くLも二 , 三 度 口にす る機会 にめ ぐまれ た。 ヨー ロ ッパ人 はキ ャベ ツと称 す るが , わた くLは味 と舌触 りか ら竹 の子 といいたい。植 物学 的 にみ て も単子 葉植 物 の生長点 とい う点 at ap) にな るが ,サ ゴヤ シや パ ル ミラヤ で , この語 はぴ った り して い る。 葉 は屋根 ふ き材料 ( シの方 が よいO 材 はその ま ま柱 や橋 に使 われ るO 幹 の外側 の組織 は堅 く, 磨 けば 美 しいので por c upi newoodの名 で呼 ばれ , 細工物等 に使 われ る。 葉 柄 の下 側 に生 えて い る茶 色 の毛 茸 を か き落 と して集 め,火打石 で火 を起 こす ときに用 い る。 も ぐさの よ うによ く火 がつ く。 原 住民 の生 活 ,特 に食 生 活 にお け る ココヤ シの意 義 につ いて多 くのペ ー ジを さいた。- ワイ ア ンギ タ ーや ウ ク レレの音 に合 わせ て, ヤ シの菓 蔭 で フ ラダ ンスを踊 るポ リネ シア の美女 達 の 姿 はえが けなか ったが ,熱帯 の原 住民 とヤ シの結 びつ きにつ いて は, あ る程 度伝 え る ことが 出 来 たので はな い か と思 う。熱帯植 物 を集 め た温室 で ココヤ シを 目に され る こと もあ るだ ろ う。 しか し,温 室 のヤ シは最 も出来 の悪 い イ ミテ ー シ ョンで あ る.熱帯 の強烈 な太 陽の照 りつ け る 海岸 に生 え た, あの力強 く, けだか い姿 ,真 赤 な夕焼 けの空 に黒 く写 し出 され た シル エ ッ ト, や は り熱帯 その もの に行 かな けれ ば真 の ヤ シの姿 は見 られ ない。 4. 世界 市場 にみ られ る コプ ラ as hc r op と しての ココヤ シをみ てみ よ う. 次 に コ コヤ シの もつ他 の一 面 c ココヤ シの 内腔 乳 を乾燥 した ものが コプ ラで あ り, コプ ラを圧搾 または抽 出 して得 た池 を ヤ c oc onutoi l ) とい う。 コプ ラを ヤ シ油 に換 算 す る場合 はその60% とす シ油 とか ココナ ッ ト池 ( る。 油脂 の生産 量 と輸 出量 に関す る統 計 は表 2の通 りで あ る。 この表 を見 れ ば,植 物性 油脂 の生 産 量で は大豆 油 ,落花生油 , ひまわ り池 ,綿実 油 に次 いで ヤ シ油 ,パ ー ム池 ( パ ー ムカーネル 池 を含 む) の順 で あ るが ,輸 出量 は ヤ シ油 を第 2位 と し,パ ーム池 が第 4位 で あ る。 この よ う に生産 地 にお け る消費 よ り,先 進 国 に輸 出 され る割合 の大 きい ことが他 の油脂 と大 い に違 うと ころで あ る。池 にな る前 の段 階 ,す なわ ち果 実 と して原 住民 に消費 され る量 を加 えれ ば ヤ シは おそ ら くラ ッカセ イ と肩 を並べ る もので あ ろ う。 ヤ シ油 は調理 用 や マー ガ リン, シ ョー トニ ングな どの食 用 油 と され , また工業用 と して も重 要 で あ るが ,化学 洗剤 の発達 で ,石 けん原料 と して の利用 が減 ったので ,食 用 油 と しての比 重 が ひ じ ょうに増 して きた。 そ のため コプ ラや ヤ シ油 の品質が以前 よ りい っそ う重 視 され る。脂 肪 酸が 多 く品質 の悪 い ヤ シ油 も,脱臭脱色 し,水 素添 加 で 品質 を改善 す る ことは 出来 るが,費 用 が かか るので ,優良 な代 替 油脂 の あ る場合 は,品質 の悪 い ヤ シ油 は食 用油 と して は使 われ な くな る。 低 開発国 か らの コプ ラはい っそ う品質 の良 い ものを輸 出 しな けれ ばな らない。 コプ ラの品質 0% が調製 に,1 0% が輸 出まで の貯蔵 の良否 にかか ってお り,調製 の良否 は を左 右 す る もの は9 2 3 8 - 1 0- 佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ 表 2 油脂の世界生産量と輸出量( 1 963年) 90% が水 分 パ ーセ ン トに, 10% が剥皮 か ら ( 単位 :1 0 00トン) s pl i t t i ng)まで の時 間 の長 短 や集 積 核割 り( ロ ロロ 目 生 産 量 実 場 所 の良否 にか か って い る とみ られ よ う。 棉 わ種 リ lの 油 油 油 生 フ ま い 。pl ant at i onで は調製設 備 や貯蔵 施設 が オ そ の広 い 生産 地 が 形成 され な けれ ば な らな 花 菜 され なけれ ばな らな い。 そ して良 質 コプ ラ 大ひ は, 調製段 階 の改 善 が コプ ラ生産 地-徹 底 落 豆 植 物 性 食 用 油 先進 国 - の コプ ラの 輸 出 を 伸 ばす ため に 油 油 輸出量 . 2, 2 6 8 ≒ 2 6 8 2, 45 4 ; 9 57 3, 806 / 1 , 45 4 2,2 95 3 99 1 , 0 89 1 2 4 他 953 1 66 計 1 3・ 804 1 3 ,3 96 完 備 して い る ものが 多いが , 世 界市場 にあ ヤ シ 油 類 らわれ て くる コプ ラの大半 は pl ant at i onよ mal lhol der (主 と して原 住民農 りむ しろ s 家 を指 す)の もので あ る。 特 に フ ィ リピ ン .物 "産 ので , ヤ シの作物上 , 経営 上 の特 質 を考 え なが らそ の要点 を述 べ てみ よ う。 5. 栽 培 総 1 ) 繁殖 用果 実 と帯 の素 質 2,1 95 池 1 , 261 70 3, 89 8 計 372 1 ,3 2 5 3 60 5 29 0 2, 21 4 1 2 9 5 0 2 4 2 6 亜 そ t i onで もその栽培法 には大 きな 違 いが な い 核 ム ー 油 油 パパ ス カ ー ネ ル 池 業 用油脂 mal lhol derで も pl ant aる もので あ る。 s ム - パ パ f で は, ほ とん どが s mal lhol derの生産 によ シ ヤ 仁 油 他 1 , 04 8 3 95 1 , 443 性 油 脂 11 , 3 22 2,1 1 4 動 物 油 1 , 022 7 70 31 , 489 9,1 4 4 轟 の 計 計 出所 :科学技術庁資源局 『ココヤシ資源に関する 再 評 価 調査報 告 』1 9 66 コ コヤ シは60年 , 70年 の長 期 にわた って 収穫 が続 け られ るので , も し佳産 力 の低 い木 を植 えれ ば, それ は60年 ,70年 ,時 には文 字 どお り100年 の 不作で あ る。 まず住産 力 の大 きい ものを柵 え る ことで あ る。 これ につ いて はい ろい ろの説 が あ り,い ろい ろの手段 が と られ て い る 。 よい年産 を上 げて い る木 の果実 を種子 用 にす J l る ことが以前 か ら行 なわれ てい るが , これ は コ コヤ シが普通 ,他 家授 精 で あ るため (同 じ花 j で は雄 花 が先 に咲 くので ,雌 花 は他 の木 の花粉 によ って授 精 す る。 みつ ば ちが花 の まわ りに飛 びか って い るので 虫媒花 で あ る)父 の木が分 か らな いので大 した効果 が ない といわれ て い る。 セ イ ロ ンで は ヤ シ産 業 は ひ じ ょうに重要 で あ るので ,政府 は ココヤ シに関 して ひ じ ょうに力を 入 れ て研 究 を してい る 。 こ こで は 10年余 り前 か ら,年 100個以上 の果実 をつ け る多収 の木 を選 ん で人 工交配 を し,得 た果実 を ,森林 で好 く取 り囲 まれ た と ころに植 えて , こ こを採 種 閲 と し, 占い ココヤ シ間 の更 新 の ための繁殖 用果実 を生産 す る試 みが始 め られ て い るので , その成 果が 期 待 され る 。2) 植付 後 7- 8年 して結 果 し始 め ,15年 くらい か ら結果最 盛期 に入 るので あ るか 2) Ed i t o r i alCo mme nt ," TheCe yl o nc o c o nuts e e d gar de n, " Wo r l d Cr o ps ,Vo l .7 ,No.7 , p.2 6 0.1 955. -l lI - 2 39 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 ら育 種 に本 格 的 に取組 む人 は少 ない し,栄養 繁殖 の 出来 ない こと も優良 品種 の育成 を 困難 に し て い る。 イ ン ドの Cent r alCoc onutRes ear chの Gangol l y と Pandal aiが , 根 際の樹皮 を輪 状 剥皮 した部分 に各種 の生長 ホル モ ンを処理 して不 定根 を発生 させ た こと さえ られ て い る Na t u r eで報 じ ( Na t u r e ,1 6Sept . ,1 961 ) くらいで あ るか ら, も し不 定芽 を発生 させ栄養繁殖 に成 功 すれ ば農業上 ひ じ ょうに大 きな功績 とな るだ ろ う。 この よ うな研究 は, 日本 において も温室 で 出来 る。 自家用 に植 え る場合 はたい して問題 にな らないだ ろ うが , 換 金 作物 と して s mal lhol der や pl ant at i onで栽 培 す るには,必ず生産 力の高 い木 で な けれ ばな らない。品種 の育成 や繁殖 用果 実 の生産 が国家 的規模 で研究 ,開発 され る ことを期 待 してい るわ けで あ るが ,差 し当た り現在 どうすれ ばよいか とい う問題 に直面 して い る。 これ に対 処 す るには次 の二つ の手段 が あ る。 i . 生産 力の高 い木 , あ るい は園 か ら種子 用果 実 を とる- 生産 力 の検 定 には 1樹 か ら 6異 を と り,その 内腔 乳 重 を測 って平 均 し,これ に1 年 間の収穫 果数 を乗 じてその木 の生産 力 とす る。 i i . 苗床 において優良 な形 質 の ものを選 抜 す る- 苗床 に植 えてか ら 5カ月以 内 に発芽 す る もの,初期 生育 が 旺盛 な もの,葉 柄 が太 くて短 い もの ,幅の広 い葉 を数 多 く着 け,根数 の多 い もの の生産 力が高 い ことが各地 の過 去 の調査 で 明 らか に され てい る 。3) そ して i iに重点 を 置 くことが極 めて大 切で あ る。 その他 ,ヤ シの水 は,苗床 に植 えてか ら2 00 日間 くらい はあ って,発 芽 と初期成 育 に とって大- ん大 切 な役 割 を果 たす ものの よ うで ,水 の ない もの は種子 と して不適 で あ る。 また振 ってみて ヤ シ リンゴが離れ て コロ コロす る もの も除 く。 重 みで果 実 が葉 柄か らはみ 出 してい るよ うな木 (1果 1. 5kg,1宋房 6采 とすれ ば 9kg あ る) は葉 柄が果房 を支 え る力の弱 い もので低 収性 とされ て い るが , この よ うな性 質 を持 った もの は mal lhol derや pl ant at i on 苗床 にお け る選抜 で排 除で きる もので あ る。 タイや カ ンボ ジアの s において は この よ うな木 を見 か け る ことが多 い。 わた くLが カ ンボ ジア にいた時 ,数 人 の地主 か ら相 談 を受 けた。 かれ らは ココヤ シの Pl ant at i on をや りたいが, 種子 用 の果 実 を取 り寄せ るの にはマ レ- と シ ンガポ-ルの いずれが良 いだ ろ うか, 出来 れ ばセイ ロ ンか らで も輸入 した い とい うことで あ った。 わ た くLが恐 れ るの は,この よ うに して取 り寄せ られ た繁殖用果実 は, まず iの条件 にあ ってい るか ど うか不 明で あ る こと, 果実 の単 価 が ひ じょうに高 くつ いてい る 上 に遠路 の輸 送で発芽率 も低 くな るので i iの苗床 において思 い切 った選抜 が加 え られ ないので はないか とい うことで あ る。 iの条件 に合 っていて もな おか つ i iの条件 を満足 させ るため には 酉の 5 0% が棄却 され な けれ ばな らない といわれ て い る。 4 )iの条件 が不 明の場 合 には このパ - 3 ) D.R.A.Ede n,L ' Co c onuti mpr o ve me ntbys e eds el e c t i o n, "i b i d. ,Vo l .1 5 ,No.6 ,pp.2 6 42 6 8.1 9 6 3 . 4) Edi t o r i alCo mme nt ," Spo tl i ghto nc o c o nut , "i bi d. ,Vo l .l l ,No.9 ,p.3 07 .1 9 5 9. 2 4 0 - 1 2- 佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ セ ン トは さ らに増 加す るだ ろ うOや は り pl ant at i on や s mal lhol derの種子 用果実 は巨射勺で求 iに重点 を 置いてゆ くべ きで あ ろ う。 良 い品種 (品種 といえ るか ど うか現在 の と ころ疑 わ め ,i しいが)を導入 して調査 し,遺 伝 的 に も良 い繁殖用果実 を作 り,硬 布 す る仕事 はや は り国家機 闇 において行 なわれ るべ きだ ろ う 〕 2) 適 地 と植 付 ココヤ シが海辺 や川岸 に多 く見 られ ると ころか ら地下水 の高 い と ころが適 す るよ うに思 い誤 って はい けない 動 。 ココヤ シは最 も停滞水 を嫌 うもので あ る。ただ海辺 は潮 の干満 で地下水両 が き,川で は流水 によ って常 に根 に酸素 の供 給が あ るか らよいので あ る。好塩植 物 ( Hal ophyt e) といわれ ,発芽 や生育 に海水 は少 しの害 も及 ぼ さない。 イ ン ドの あ る地方 で は新 しくココヤ シ を植 え る ときは塩 を植 穴 に施 す とさえいわれ てい るが ,塩 は必ず しも必須 の もので はない。 し か し,海 水の洗 うと ころに生 えてい る もの は,海水 が各種 の成 分 を豊 富 に含 んで い るため,敬 量成分 の欠乏 は全 くみ られ ない。 これ はわた くLが前 か らいだいてい る,圃場 か ら流 亡 した成 分 をい ろい ろの場 所- 池 や川 を含 めて- で阻止 して植 物j 生 産 や動物生産 に結 びつ け,再 び 圃 場-還 元 して農業生産 を,地 力各,維持 して い こ うとい う素 朴 な理 想 ,その理 想 の最 後 の網 を くぐって侮-逃 れ去 った成分 を少 しで もす くい上 げ る点 で ,海 藻や マ ング ロー ブの よ うに強 力で はないが , ココヤ シは唯一一 の 作物 と評 価 してい るO 背後 に相 当高 い山を ひかえ,緩 い傾斜 で海岸 に向か ってい るよ うな土地 は ココヤ シの栽 培 に 最 も適 す る。 ここで はt l 」 の降水 が地下 を通 って海岸 に向か って い るので , 1 年 中 ココヤ シの根 は豊富 な水 と養分 の補給 を受 け るか らで あ る。 この よ うな土地 が価値 の少 ない雑 木 に被 われて い るのを見 ると,実 に惜 しい感 じがす る。 9- 1 0カ月の苗床期 間 車 に選抜 され た苗 を定植 す る。柏 穴掘 りは労 力を多 く要 す る作業 と さ j ewar deneが報告 して い る 。5) 四輪 トラ れ てい る。わ た くLが かね てか ら考 えていた ことを W i クターにつ けた pos thol ebor erを利用 して, -一 辺 3フ ィー トの正方形 の 四隅 と[ ト央 に 由 径 1 フ ィー トの穴合計 五つ を あけ, ここに剥皮 した hus k や堆肥等 の有機 物 や肥料 を入 れ , 真 申の 穴 に筒 を移植 す る ことによ り,従 来 の柿 穴掘 りは著 し く簡易 にな り,木の生育 も劣 らない。 2 人 で操 作 出来 るポータ ブルの ものが あれ ば,密林 の伐採跡 で , トラクターの進入 が難 しいよ う な と ころに も入 って植 穴掘 りが 出来 る。 またその よ うな状態 で植付 け る ことが地 力の消耗 の早 い熱言昔で は効果 の あ る ことで あ るか ら, この よ うな機械 の効用 は大 きいだろ うO果樹 で試 み ら れ る爆薬 を使 っての植 穴掘 りも考 え られ るだ ろ う。 3) 栽椙 の密 度 と様 式 I E方形値 や正三 角形植 が行 なわれ る。枝 の張 る樹 木 と違 い, その葉 の展開す る範 囲が 円形 で 5 ) R.Wi j ewar de ne,"Mec hani s at i o nonc oc o nutpl ant at i o ns , "i bi d"Vo l .1 0 ,No.1 0,pp. 43 84 40.1 9 5 8. - 1 3- 2 41 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 あ り, その 円の直 径 はおおむね 1 0mで あ る。一 辺 が 1 0m の正 方形 ,あ るいは正三 角形櫨 で は, ha当 りそれ ぞれ 1 00, 11 5本 とな る。 肥 沃 度 の低 い土 地 で は 1 40-1 50本 とい った密植 が行 なわ れ る。収穫 の 際の労 力を考 え る と,木 に登 る こと 自体 の労力が 相 当 に大 きいので疎植 で 1果房 の収 量 の大 きい ことが好 ま しい。土 地 の肥 沃 度 を高 め 1樹 の生産 力 を大 にす る方 が得 策 とわ た くLは考 えて い る。Chi l dは bouquet植 と称 す る方法 をすすめて い る。 す なわ ち,中心点 か ら 半径 5m の 円をえが き, この 円周 に沿 って 8本植 え る(隣 りの木 との間 隔 は約 4m とな る)。 こ の よ うな bouquetを地積 内 にまんべ ん な く配 す る。 この方法 で は除草 や施肥 作業 が容 易で,衣 畜 の放牧 もで き,収 量 も高 い とい う。 コ コヤ シは bouquet植 の よ うな特 別 の様 式 を除 い て は,葉 の拡 が りか ら栽植 密度 が決 め られ 00-1 50本 の線 は今 後 も永久 に変 わ る もので な く, 栽植 密 度 に関す る論 るので ,大体 ha当 り1 議 は他 の果樹 に比 べ て少 ないO ここで思 い 出す の は藤村 の詩 やヤ シの実' !の一 節 ≠ 枝 はな お影 をや なせ るク で あ る。 これ は植 物学 的 には誤 りで あ る。幹 が二又 に分 かれ て い る木 をわ た くL は一 回見 た ことはあ るが , これ は奇型 で ,植 物学 で は興 味 を もって究 明 され て い るO コ コヤ シ の葉 は, しか し,枝 の よ うに長大 で頑 丈 な もので あ る。果 実 を と りに登 った原 住民 の足場 と し て も全 く太 い枝 と変 わ らな い力 を もって い る。 4) 管理 ,間作 ,肥 培 生育初期 の管理 は ひ じょうに大切 で , これ は次 に述 べ るア ブ ラヤ シで も同様 で ,主 と して雑 草 や ,伐 り倒 した林 木 の株 か らの旺盛 な萌芽 を除 くことで あ るが ,除草剤 の開発 で管理 労 力 は 大 幅 に削減 出来 るよ うにな った。 ゴ ムや ア ブ ラヤ シと同様 , ココヤ シ栽 培 の一 つ の特 質 は,植 付 けてか ら相 当期 間,間作が 出 来 る ことで あ る。 メイズや 陸稲 ,豆類 の よ うな短期 作物 か ら,パ イ ンア ップルや バ ナナの他 コ コヤ シと気候条 件 に対 す る要 求 の似 た ロブスター コー ヒーや カカオの よ うに結果樹 令 に達 す る ことが早 く, また ヤ シの葉 で多少被 蔭 の あ る方 がむ しろ好 ま しい よ うな作物 を選 び, ヤ シ果 の 収穫 まで に投 下資本 を多少 な りと も回収 し, また pl ant at i on に働 く労働者 の 自給食 糧 を生産 す るな どの 目的で間 作す る. コー ヒーの調製機械 は高価 で あ るが , カカオの乾燥 に使 う設備 は 安 価 の上 , コプ ラの乾燥 に も転 用 で きるの で, カカオの方が よ り合理 的で あ る。Seychel l esで は ココヤ シの被 蔭 が ち ょうどよいので 肉柱 を栽 培 して い るが , これ は長期 の間作で あ る。 ケニ hew nutを植 えて い る。 ココヤ シの早 期落果 の原 ヤで は ヤ シの間 隔を約 9m と し,間作 に cas 因 とな る Cor ei dbug ( Ambl yPe l t acoco Phaga) とい う害 虫 を攻撃 す ると ころの mag i mot oア リ( Oeco PhyZ Z as p. =or angeyel l ow ant )が cas hew nut に好 んで棲 息す るか らで あ る 06) しか し,将 来 ヤ シ園 と して立派 な生産 を上 げて ゆ くため には コ- ヒ-や カ カオ等 ことに メイズや陸 6 ) R・ J. A. W.Le ve r ," Agr i c ul t ur ei nt hei s l andsoft heWe s t e r nPac i Bc , "i bi d. ,Vol .1 5 ,No. 4 , pp.1 46 1 5 3.1 9 6 3 . 2 4 2 - 1 4- 佐 藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ 稲等 の栽 培 よ りは緑肥 作物 や被覆 作 物 と して Ce nt r o s e maPub e s c e ns ,Pue r ar i a♪has e o l o l ' de s , Cal o Po go ni um muc uno i de s ,Muc unaat e r r i ma,Cr o t al ar i as t r i at a 等 の豆科 作物 を栽 培す る ant at i on の マ ネ - ジ ャ-の腕 の のが よ いわ けで , この辺 の かね あいが難 しい と ころで あ り,pl みせ ど ころで もあ ろ う。 結 果最盛 期 にあ る ココヤ シが 1年 間 に 1ha か ら奪 う NPK の量 は表 3に示 す とお りで あ る。 特 に K20 の収 奪 量が 多 い。 施 肥 の効果 が収 量 に反 映 して くるの は 3年 後 で あ るが , これ は早 魅 の影 響 と同様 で あ る( 後 出)。化学 肥 料 の効 果 の高 い こと も実証 され て い るが ,緑 肥 や堆厩 肥 mal lhol derに は実 行 され やす い。Mozambi queの エ ステ ー 等 の有 機質 の施 用 も効 果 が 高 く,s トで は家畜 を ヤ シ園で 飼養 す るのが特 長で あ るが , kraalとい う方 法 は約 100頭 の牛 を 6本 の ヤ シの木 を含 む地 域 に 1晩 囲む。 その あ とす ぐここを 巾耕 して踏圧 の害 を防 ぐとと もに糞尿 を す き込 ん で しま う。舎 飼 の場 合 は敷 わ ら材料 を毎 日入 れ て ゆ き, 4- 6カ月後 これ を と り出 し て ヤ シ閲 に施 すが ,1頭 の牛 で 1年 に 100本 の木 に厩肥 を施 す ことが 出来 る 。7'イ ン ドで も間作 に Br ac har i ab r i z ant ha と St yl o t hant hi sgr ac i l i sの よ うな永 年 牧草 を植 え て畜産 との結 び つ きで地 力維持 を計 る研 究 が行 なわれ て い る 。8) こ こで一 つ 問題 が あ る。有機 物 は,木 の生産 力を増 し,化学 肥料 を併用 す る ときはその吸収 Or yc t e sr h i no c e r o s )の産 卵 率 を高 め る効 果 もあ るが , ヤ シ類 の大 害 虫 サ イ カ クカブ トム シ ( ふ化 場 と化 す る ことで あ る 。9) これ を ど う解 決 す るか。 答 は比 較 的簡単 で あ る。 有 機 物 を お と りと して カブ トム シの幼 虫 や さな ぎを殺 す か , カブ トム シは未 熟 な有機 物 に産 卵 す るので よ く 腐熟 した もの を用 い る。 わ た くLはむ しろ前 者 に重点 を お きた い。 その かわ り,産 卵場所 を経 過 習性 を考 え て 3カ月 に 1回 は調 べ て卵 や幼 虫 , さな ぎを捕 殺 す る。逃 れ て成 虫 とな った もの は ヤ シの樹 冠 を調べ て刺 殺 す る。 BHC等 の殺 虫剤 を砂 や おが くず に混ぜ て 樹 冠 に詰 めて おい 表 3 結果最盛期のココヤシの年間養分吸収量 Nl b/ ac( kg/ ha) 1p 205 1 b/ ac( kg/ ha):K20 1 b/ ac( kg/ ha) 莱( 葉柄 を含 めて) : 3 2( 3 6 ) 1 3( 1 4. 5 ) 3 5( 3 9 ) l l( 1 2 ) 果 31( 3 5 ) 1 3( 1 4. 5 ) 7 7( 8 7 ) 6 6( 7 4 ) 2 7( 3 0 ) 実* 計 ; 1 2 3( 1 3 8 ) *収量3 0 0 0 呆/ a c /午( 7 50 0 果/ ha/午) 出所 :Anon. ,"I mpr ovi ngc oc o nutyi e l dsbyNPK manur i ng, "Wo r l dCr o ps, Vol .9,No.9( 1 9 57 )pp.3 7 9 3 81. 7 ) R.Chi l d,"The c oc onut i ndus t r yi n Por t ugue s eEas tAf r i ca, "i bi d. ,Vol .7 ,No.1 2, pp.48 8 492.1 9 5 5. 8 ) R.W i j ewar de ne,"Me c hani s at i o non c oc onutpl ant at i on. " 9 ) C.Kur i an & G.B.Pi l l ai ," Rhi noc e r osbe et l e, "Wo r l dCr o ps ,Vol .1 6 ,No.1 ,pp.2 0 2 4. 1 9 6 4. - 1 5- 2 4 3 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 て も予 防的効 果 が あ る. この害 虫 を おかす菌 やバ クテ リヤ, ウイル ス, ネマ トーダ も知られ , ol ogi calc ont r olには あま り 捕食 昆 虫 や捕食 動物 も知 られ て い るが , 今 の と ころ この害 虫 の bi ,各 国で研究 が続 け られ て い る。灯 火誘穀 も効 が あ るといわれ て い る。 期 待が もてないが 10) ココヤ シは植 えて か ら 4- 5年 して初 めて幹 が地上 に現 われ て くる。幹 の太 さはすで に この 時 まで に決 ま って お り,それ以後 の肥 培管理 を い くらよ くして も, い ったん形成 され た幹 を太 くす る ことは 出来 ない。同 じ単子 葉植 物 の竹 を思 い起 こせ ば よい。竹 の子 の時 の根元 の太 さは 終 生変 わ らない。 したが って ヤ シの幹 の まだ見 え ない この 4- 5年 は ひ じ ょうに大 切 な時期 で あ る。木 が生長 して も辛 苦 ,虫害 ,肥料不足等 で生長点 の活動 が衰 え た時 はその部分 の幹 が細 くな る。 ココヤ シの幹 は, その木 の盛 衰 を物語 る生 活史 といえ よ う。葉 は木 の若 い間 は 1年 に 1 4- 1 5枚 ,大 き くな ると11 -1 3枚展 開 して くる。 1年 に平 均 1 2枚 ,だいた い 1カ月 に 1枚 の割 夜には花 房 が生 じ,実 を 合 で展 開 して くる とみて よい。 そ して植 付 けて 7年 冒 くらい か ら各菓 月 結ぶ よ うにな る。開花 後 1 2カ月 すれ ば成熟 す るので , 1本 の木 に年 中いつ で も開花 中の もの か ら成熟 期 に達 した もの まで 1 2の各段 階の果 実が み られ る( 写 真 3)。 ヤ シの水 を飲 む と き開花後 6- 7カ月 の果実 をつ けた果房 も, す ぐわ か るわ けで あ る。樹 冠 にはだ いたい 3年分 36枚 くらいの葉 がつ い て い るか ら,幹 の まわ りを一 周 して い る菓痕 を数 えれ ば樹 令 が推 定 され る。 また樹 高 は若 い ときはよ く伸 び るが ,結 果盛 期 に入 れ ばだ いた い 1 年 30cm とみ て よいか ら, 樹 高 をみ て もおお よその樹令 の見 当はつ くが , 葉痕 を数 えれ ば正確 とな る。葉痕 が 写 真 3 開花中のものか ら成熟果までが同じ木の上 に同時に見 られるココヤシ( 筆者撮影) 240あ った とす ると樹 令 は27とな る。 わ た くLは この よ うに計 算 して原 住民 を驚 ろか し,信頼 をか ちえてか ら聞 き と りに着手 す る こ とが あ った。 この人 に は うそやで た ら目は言 えな い と思 い こませ るので あ る。 5枚の葉 と約 1 0個 の花房 の anl age が分 化 L形成 され 生長点 において は展 開 に至 るまで の約 1 つ つ あ る。辛 苦 や肥料 等 の影響 は この分 化 ,形成 中の葉 にあ らわれ ,発育 を抑 え るので ,展 開 した とき菓 面 積 の少 な い貧弱 な葉 とな る。主 と して この葉 の同化 によ って肥 大 す る果実 は落果 もひ ど く充 実 も悪 い。 したが って, これ らの影響 は 3年以 降 に現 われ て くるので あ る。世 界 の 957年 か ら1 958年 の初 め にか けて ひ じ ょうに コプ ラの70-80% を供給 す る フ ィ リピ ンの生産 が 1 8カ月 にわた って降雨量 が異 常 に少 なか ったため といわれ るが , これ な どほ 予測 減 ったの は ,1 1 0 ) D.R.A.Ede n,"Coc o nuti mpr o vementby seeds e l e c t i o n. " 2 4 4 - 1 6- 佐藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ され た ことで あ り,世 界 の 油脂 の需要 とい う広 い視 野 か らは当然対 策 を立 て る ことが 出来 るは ず で あ った。 el l o w これ ほ ど コ コヤ シの 重 要 性 の高 い フ ィ リピ ンで , 今大 きな脅威 とな って い る ものが y dangc adangの名 で知 られ て い る ココヤ シの病 気 で , ル ソ ン畠の mot t l ede c l i neす なわ ち ca 1J 具だ けで も1 0 00 万本 の ヤ シが これ で壊 滅 したo病理 学 者 や生理 学 者 が この研 究 に投 離 した結 果 ,ウ イル ス病 説 が 有 力 で ,病 原 の c ar r i erを追跡 し, El e ♪hant o Pusmo l l i s(イ ガ コウゾ リナ 属- キ ク科 ) とい う雑 草 が この病 気 とひ じ ょうにf 男係 の深 い ことが つ き とめ られ た ol l '防 除 の前 途 に光 明 が見 えて きた とは いえ ,有 効 な処 置が と られ るまで には多 くの ヤ シが なお被 害 を うけて倒れ て い くことだ ろ う。 フ ィ リピ ンで は子 供 が生 まれ る と何本 かの ヤ シを植 え る慣 習が あ り, これ が今 日の フ ィ リピ ンの コプ ラ生産 の大 きな背 景 とな って い る ことを思 うと き , 自分 とと もに生 長 して きた ヤ シが ,愛 情 を か け て きた ヤ シが ,た くさん の実 をつ けて家 族 の蓉 Lを 支 え て きて くれ た ヤ シが , こ う して不 明 の病 魔 におか され て施 す術 もな く立 木 の ま ま枯 れ て ゆ ]も早 く c adangc adangの原 因 が解 明 され , 防 除 の くことは耐 え られ ない気持 で あ ろ う。 1し 手段 が構 ぜ られ ん ことを フ ィ リピ ン農民 の ため に祈 らず にはい られ な い。 5) 収 穫 植 付 けて か ら普 通種 は 7- 8年 ,嬢 生種 は 4- 5年 して初 めて収穫 が 出来 るよ うにな る。前 2カ月 か か るので , 1本 の木 の樹 冠 には成 熟 果 に も述 べ た よ うに,開花 か ら成 熟 まで は お よそ 1 をつ けた果 房 か ら,開花 中の花 房 , さ らに まだ仏炎 に包 まれ た もの まで各 段 階 の もの が み られ ant at i o nで は 2カ月 に 1回 の周期 で収穫 が 行 なわれ るO木 に登 る場 合 は 1人 1日25本 の る。pl 0-1 5haに 1人 の割合 で 労働者 を配 さな けれ ば な らな い。 収穫 しか 出来 ない ので ,収穫 の た め 1 竹 の先 に匁 物 をつ けて下 か ら収穫 す る場 合 は2 50 本 の木 を処理 で き るので 1 0倍 の 1 0 0-1 50 haに 1人 の収穫 人夫 を 当て る ことが 出来 る 。 しか し木 が 高 くなれ ば これ も能 率 悪 くな るだ ろ う。 か ね て か ら, マ レー等 で はサ ル を訓 練 して収穫 す る ことを知 って いたが , た また まテ レビで , マ レ-の ブタオザ ル を使 って ヤ シの実 を とる貧 しい舌年 と土 地 の名家 の娘 との悲 恋物語 を み た 。 物語 も俳 優 の演 技 も幼 稚 な もので あ ったが , ヤ シの実 を と るサ ル の演技 はす ぼ ら しか った 。 下 の男 の綱 さば き と,張 りあ げ る声 に よ ってサ ル は手 と足 を使 って 1個 1個 の実 を ぐる ぐる回 し てね じ切 って下 - 落 とす。菓 先 か ら次 の木 の葉 先 - と飛 び移 って ゆ く素早 さは あ るが , 1個 1 個相 当 な時 間 と労 力 を か けてね じ切 るの は あ ま り能 率が よ い とは思 わ れ なか った。 サ ル は複 雑 な樹 冠 を め ぐって も,首 の綱 を た どって も との所 - 出て くるほ ど買 いが ,成 熟 采 と未 成熟 果 を 見 分 け るほ どには賢 くな いので ,綱 と声 とで下 か らサ ル使 いが指 示 を与 え るわ けで あ る。人 間 の場 合 ,登 るのが たいへ ん で あ り, これ は た しか にサ ル に劣 るが ,一 刀 で 1回 の収穫 采 のつ い j木 に た果 房 を切 り落 とす点 は能率 が よいo木登 りを楽 にす るため に イ ン ドネ シア の個人 所有 o l l ) Edi t o r i alCo mme nt ," Cadangcadang, "Wo rld C ro ps ,Vol .1 5 ,No. 7 ,p.3 0 0. 1 963. - 1 7- 2 4 5 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 は足 が か りの ため幹 に深 い切 傷 を入 れ て い るが , これ は維 管束 を切 り,癒 創 組織 ので きな い ヤ シには ひ じ ょうに悪 い ことで あ り,また Rync ho ♪ho rus(象 鼻 虫 )の よ うな害 虫 の産 卵 を たす け る場 所 に な るので好 ま しい ことで は ないo持 ち運 び 出来 るは しごを か け るな り, トラ クタ ー に 装 備 され た f rui tpi ckerで木 の まわ りを 回 りなが ら収穫 をす る と同時 に中排 まで行 な うよ うに で もす れ ば能率 は よ くな るだ ろ う。 しか し,これ は木 に登 れ な い者 の考 え る ことで あ り,これ に よ って どれ だ け能率 が よ くな るか ,生産 費 が安 くな るか は十 分 検 討 しな けれ ば な らな い。交 配 や調査 を す る研 究者 用 の登 はん具 も考 え られ て い る。木 が高 くなれ ば な る ほ ど労 力 がか か り, 一 方 木 は老令 に な って生産 力 が衰 え て くる。 イ ン ドで は高 い老 令樹 の幹 の途 中 に梶 を は め , こ れ に土 や 有 機 物 を詰 め て不 定根 を 発 生 させ て後 , 梶 の直 下 か ら切 って植 え か え る 更新 法 もあ ant at i on る 。12'優 良 な木 を集 め て採 種 園 を作 るよ うな場 合 には適 用 で き るだ ろ うが ,大 きな pl の全部 の木 を この よ うな方 法 で更新 す る ことは実 際上 考 え られ ない. コプ ラの生産 に不適 な接 生 種 と コプ ラ生産 に適 した普通 種 との交配 で樹 高 の低 い コプ ラ生産 用 の品 種 を育成 す る試 み の あ るの は当然 で ,その よ うな木 の 出現 が待 望 され る。 Seychel l esの よ うに 自然 落果 を待 って収 穫 す る と ころで は, 熟 す る と落果 しや す い品種 を植 え て い る 。1 3 '収穫 の労 力 が た い- ん はぶ け るが,や は り適 熟 の もの を切 り落 と して収穫 す るのが コプ ラの収 量 も品質 もよ く,東 南 ア ジア や イ ン ド, セ イ ロ ン等 コプ ラの主 産 地 はみ な この方 法 に よ って い る。 農家 の近 くに植 え られ て い る 自家 用 の ヤ シは鈴 成 りに な って い る ものが 多 いが , これ を標準 に して は い けない。原 住民 の 問 で は, ヤ シは人 間 の言 葉 が わ か るので家 の近 くの木 は実 を た く さん な ら して人 間 を喜 ば して くれ る とい う伝説 が あ るが , これ は家 の まわ りの木 は ,台 所 の残 ant at i on 壇 や汚水 ,人 の排 潤 物 を豊 富 に与 え られ るの と,広い 地 積 を 占め て い るためで あ る。pl で は 1本 当 り年 30-60果 の範 囲 で あ る。 しか し,一 つ の可 能性 を上 げて お こ う。 イ ン ドで は十 ha当 り32,500采 を得 たO これ は一 般 の収 量 3750果 の約 9倍 分 な施 肥 と漕 概 に よ って 1年 に 1 4 ) で あ った 。1 降雨 の配 分 が よ く,土壌 水 分 が常 に豊 富 で あ って も果 樹 の 隔年 結果 に似 た現 象 が あ らわれ る。 周年 結果 して い るので , 隔年 で は ない が ,収 量 の多少 に,一 つ の リズ ムが 生 じて くる。 老 木 とな り, もはや経済 的生産 を上 げ な くな った園 は新植 して逐次 老 木 を伐 り倒 し, な るべ く園 全体 と して の生産 を下 げず に更 新 す る必要 が あ るが , イ ン ド,特 に西 ベ ンガル地 方 で は こ の よ うな老 木 を伐 り倒 す ことは残 酷 だ と して , 自然 に枯死 す るの を待 つ と ころ もあ る。 フ ィ リ ピ ンで は台風 の頻 ぽん に襲来 す る地 方 や,海岸 で 海蝕 を受 けて根 もとの浮 き上 が る と ころで は 1 2 ) T.A.Davi s ," Re j uve nat i onofc oc o nutpal ms , "i bi d. ,Vol .1 4,No.8 ,pp.2 56 2 5 9.1 9 6 2・ ' Thecoc o nuti ndus t r yofSe ychel l e s , "i bi d. ,Vol .5 ,No.l l ,pp・43 7 4 41 ・ 1 3 ) F.D.Yvon,' 1 9 5 3. chani s at i o no nc oc onutpl ant at i on. " 1 4 ) R.W i j e war de ne,`M̀e 2 46 -1 8- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ 根 部 の一 方 の地 面 に穴 を 掘り,木 を押 し倒 して地 面 に接 した方 の幹 か ら新 根 を発 生 させ る. 古 を と るO こ う して木 の若 返 りの計 ら い根 も活動 を続 けて い る。 曲 が った 樹歳 は 再び垂恵 の位 置1 れ る こ とが あ る 。15) 6) 調 製 収穫 され た果 実 は適 熟 の もの はた だ ちに,や や早 目に収穫 され た もo )は堆積 して 1カ月 ほ ど 追 熟 させ てか ら,剥皮 す る( 写 真 4)。 剤皮 は一見 簡単 な よ うだ が, や ってみ る となか なか難 し い。 そ こで ,機 械 で剥皮 すれ ば, とい う考 え が浮 かぶ の は当然 で , こ うして い ろい ろの剥皮 機 が 考案 され て い るよ うで あ るが, わ た くしの知 る範 囲の機械 は ,いず れ も人 間 の手 で や る操 作 を機 械 で行 な うとい う機 構 の ため ,能 率 が悪 く,高 価 で もあ るの で , い っ こ うに現 地 で利 用 さ れ て い ない 。 か え って手 で剥 皮 す る方 が能率 よ く,労賃 も安 い た めで あ る。pl ant at i onの優 秀 な労 働者 は 1日 6時 間働 いて 2000個 1 6 ), す なわ ちだ いた い 1個 1 0秒 くらいの 割 合 で 剥皮 して いる 。 しか し普 通 の労働者 で は , この半 分 くらいで あ る 。 も し機 械 を 開 発 す るな ら, 果 実 を husk と nl l t に分 けず に縦 か横 に貢 二 つ に割 るよ うな機 構 で あれ ば能率 が よい ので は ないだ ろ うか 。特 に天 日乾 燥 して い る と ころで は乾 燥 場 が広 くとれ るので この方 法 が適 用 で き るだ ろ う。 剥 皮 した nutは永 く放 置す る と核 肉が変 質 す る ので , な るべ く早 く割 って乾 燥 させ るの が よ い。 核割 り ( spl i t t i ng) も優 秀 な労働 者 で は 1日 9000 個 を処理 す るが ,普 通 は この∬ くらいで あ る。 前 仁 ‖初皮 した もの を翌 朝 割 る. 重 い ナ タで 1撃 か 2 撃 して半 分 に割 る。 ヤ シの水 が こぼ れ るが , これ はか な りの養 分 を含 んで い るので ( 表 1), 捨 て る ことな く家 畜 の飲料 にす るの が よ い。 これ はパ ン を や くと きの イ ー ス トと して も使 え る o 割 った もの はす ぐには生 コプ ラを shel lか ら剥 ぎと りに くいので その ま ま乾 燥 す る。 水 分 7- 8 % まで乾 燥 す るの に 目乾 で は能 率 が よ く, 5- 6 日で あ るが , それ以 上 の乾 燥 は 仁 丹乞で は ひ じ ょう に能率 が悪 く困難 で あ る。 核 割 り後 , 口乾 して い hel lか ら容 易 に剥 げ るよ うに な る ると コプ ラが s lを除 いて仕上 げを火 力乾 燥 に よ るの か ので ,shel 写真 4 ココヤシの果実の剥皮作業 背後にみ えるココヤシの幹には登 りやすいよう に大 き く切 りこみがつけられている。 ( TanahAi rKi t a より) s ," Rej uve nat i onofco c onutpal ms. " 1 5 ) T.A.Davi 1 6 ) F.C.Co o ke," Copr apr o duct i on by t hesmal lhol der , "Wo r l dCy o Ps ,Vol .8,No.1 2 ,pp. 48 9 491 .1 9 56. ー 1 9- 2 47 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 よい。 コ コヤ シ栽 培地 は多雨 の と ころが多 い が,熱 帯 で は多 くし ゅう両 性 で あ るので ,雨 に さ え 当 て な けれ ば よ く乾 燥 す る。割 った もの を も し放 置 して お くと,高温 多湿 の もとで はわず か 4時 間 で 腐敗 作用 が起 こ り始 め , 8時 間 後 には粘気 を帯 びて くる。 この よ うな もの を乾 燥 して も良質 の コプ ラは得 られ な いので ,天 候 に支配 され る 目乾 だ けに頼 って いて は危 険で あ る。 セ mal lhol derに通 す る簡易乾 燥 設 備 で は 17) , 壁 は ヤ シの 葉 ぶ きに して い イ ロ ンで研 究 され た s hel lを そ の ま ま用 い る。 核 割 り した もの を 日乾 し るので施 設 費 が極 めて安 く, ま た燃 料 には s て後 , この乾燥 室 で仕上 げ る場 合 には,燃 料 の s hel lは 自園生産 の 60% , あ らか じめ 日乾 しな hel lはそ の ま ま燃 や して も煙 が 出ず 火 力 も強 いが ,も い場 合 は90% の 範 囲 内で まか なえ る。 s hel lを い ったん 炭 に して用 い る と,1 60% 必要 とな り, 自国 で生産 した s hel lだ けで は まか しs なえ な くな る。 出来 上 が った コプ ラは 白 く美 しいが 3カ月以 上 の貯 蔵 は難 しい ので硫黄 の煙 で 処理 す る と貯蔵 性 が増 す 。 この よ うに s mal lhol der で も良 質 の コプ ラ生産 が 出来 るよ うに な った 。 乾燥 を終 わ った と きの コプ ラの水 分 は5. 5% 以下 で な けれ ば な らな い。 これ以上 で は 貯 蔵 中 adus tの発 生 が多 くな る。 Copr adus tは害 虫 の被 害 で で き る もの で搾 油 の 際邪 にか び や Copr 魔 にな る。 さ らに悪 い こ とは, これ らによ って遊 離 脂 肪 酸 の量 が増 え て ,品質 が悪 くな る こと で あ る。 コプ ラには厚 味 もあ って 1個 の コプ ラにつ い て も水 分 の分 布 は一 様 で な いので ,一 定 試 料 中の平 均水 分含 量 を な るべ く正 確 かつ 迅速 に測 定 す る必要 が あ る。 この 目的 に沿 った水 分 測 定機 も開発 され て きたので 1 8 ) ,多種 多様 の s mal lhol derの コプ ラも水 分 パ ーセ ン トを基準 に して 等 級 がつ け られ ,品質 改 善 - の意 欲 を高 め て ゆ くだ ろ う0- 万水 分 パ ー セ ン トが低 けれ ば 絶 対 に虫害 が な い とい うわ けで はな い。現在 貯 蔵 中 の防 虫剤 と して ほ ど レス リンが あ るが 高価 で あ る。 コプ ラの入 った麻袋 の列 か ら散布 で き る安 価 な薬 剤 の開発 が望 まれ て い る。 輸 入 側 か らは現 在 の H.A. D.( hot ai rdr i ed),F. M.S.( f ai rmer chant abl es undr i ed),S. D. , ま た従 来 の ( s mokedr i ed)等 の格 付 けよ りも, もっ と統 一 され た格 付 けが設 け られ る こと19) 外 観 や燃 や して み て そ の燃 え具 合 で判 定 す るとい うだ けで な く,搾 った池 に よ って等 級 を決 め る こ とが強 く望 まれ て い る。 Copr a cake とか Copr a 今 後 コプ ラの生 産 地 にお い て搾 油工 業 が盛 ん に な る ことは, 絞 粕 ( meal ,poonacとい う)を 飼料 を経 て土 地 - の還 元 を考 えれ ば好 ま しい ことで あ るが, コプ ラの 生産 に季 節 的 消長 の あ る場 合 は工場 の運営 が能率 的で な い とい う弱点 を もって い る。 ま た,原 1 7 ) Z bi d. 1 8 ) G.Aye r s t ," De t e r mi nat i o nofmo i s t ur ei nc o pr a, "W orl d Cro ps ,Vo l .1 2 ,No.7 ,pp.2 6 5 Co pr agr adi ng, "i b i d. ,Vo l .1 4,No.2 ,pp.5 7 5 8.1 9 6 2;D. H. 2 6 6 .1 9 6 0;J. A.Mc Far l ane," Ro mne y,' L Me as ur e me ntofmo i s t ur ei nc o mme r c i alc o pr a, "i b i d. ,Vo l .1 4,No.9 ,pp.2 9 3 2 9 6.1 9 6 2 . 1 9 ) Ano n. ," Co pr aqual i t y, "i b i d. ,Vo 1 .9 ,No.4,p.1 6 2 .1 9 5 7. 2 4 8 - 2 0- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ 住民 がサ ンタ ンか らヤ シ油 を と る ことか ら,生 の 内魅 乳 か ら直 接 ヤ シ油を と る ことが考 え られ るの は当然 で , フ ィ リピ ンで は この研 究 が行 なわれ て お り20) , また米 人 S.Hi l l i erが一 方 の 口 か ら果 実 を入 れ る と,他 の 口か ら油 ので て くる機械 を試 作 した。 コプ ラか ら搾 油 す るの に比 べ て行程 が少 な くな り,収 油 率 もよ く,絞 粕 も蛋 白質 が多 く, 飼料 価値 が高 いが ,池 の保存性 が 悪 く,絞 粕 も乾 燥 しな けれ ば な らな い。工 業 化 に は今後 い っそ うの研 究 が必要 で あ ろ う。 細粒 コプ ラ ( des i ccat edcoconut ) とい うの は , 適 熟 の果 実 を と り,剥反 して s hel lを は ぎ と り,丸 o jまま 内腔 乳を取 出 し,褐 色 の種皮 を削 りと り,真 白の部 分 の みを細 断 して 1 40 -1 70o F 0 ( 60 -77o C)の熱 風で乾 燥 し水分 2% 以下 にす る。 コプ ラと して は最 高 級 品 で , セ イ ロ ンや フ 0 ィ リピ ンで生産 ,輸 出 され ,菓子 の材 料 に使 われ るo ケ ーキや ビスケ ッ トに入 って い る小 さ く 刻 まれ た半 透 明 の もの が それ で ,注 意 して 噛 む とかす か に ココナ ッ トの香 りがす る。 6. そ の 他 1) コイア ( coi r ) セ イ ロ ンの よ うに コイア の生産 に も コプ ラと同様 な ウ ェイ トを 開 い て い るE gで は, コイア に 通 した品種 ,す なわ ち,長 実 種 で核 が小 さ く, した が って コプ ラの量 の少 な い もの を栽 培 して いる 。 成 熟 前 に コイア を とるので コプ ラは問題 にな らな い。 しか し コプ ラ用 の品種 で も コイア r et t i ng)の期 間 は相 当 に長 い。 も しコプ の値 段 の よい場 合 はそれ に転 換 す る。 レ ッテ ィ ング ( ラを と った もの か ら コイア が とれ れ ば好都 合で あ るが,成 熟 異 か らと った コイア は色沢 ,強 度 が劣 るので 問題 にな らなか った が,最 近 コイア を捲縮 した もの を , ゴ ム加工 して 自動車 や汽室 の座 席 の ク ッシ ョン材 料 にす るため ,わ が国 も大 量の コイア を輸入 して い るが, この場 合 色沢 は問 題 にな らない。 強度 も綱 の場 合 ほ どには要 求 され ない と考 え, コプ ラを と った成 熟 異 の コ イア の テ ス トを専 門家 に依 頼 した と ころ,何 とか間 に 合 うとの解答 を得 たが , これ は な お今 後 確 か め る必要 が あ る 。 2) 活 性 炭 s hel lか ら作 った活性 炭 の需要 は, 今 日もな お工 業面 に多 い が, わ た くし達 の身 ぢ か に も冷 蔵 庫 の脱 臭剤 と して使 われ る ことを テ レビや新 聞 の コマ ー シ ャルで 目にす る ことが多 い O セイ ロ ンの よ うに政府 の指 導 で炭 に して大 量 輸 出 して い る国 もあ るが,大半 は燃料 にす るか, その ま ま放 F f l T lされ て い る。 しか し大 量 に集 め て換 金性 を与 え る ことは pl ant at i on 以 外 で はなか な か難 しい ことで あ ろ う。 熱 帯 が混郡 の先 進 国へ 贈 る大 きな 油脂資 源 で あ る ココヤ シ栽 培 と これ か らの熱 帯 の開 発 に も つ コ コヤ シの意義 につ いて述 べ たつ も りで あ るが,十 分理 解 され な か った とす れ ば, それ は ヤ シの責 任 で な くわ た くしの表 現 の拙 劣 さと資料 不 足 の責 任 で あ る。 2 0 ) Edi t or i alComment ,"Oi lf r om f r es h coconut s, "i b i d. ,Vo1 .9 ,No.8 ,p.31 6.1 9 57. - 21- 249 第 5巻 第 2号 東南 ア ジア研 究 Ⅲ ア プラヤ シ oi lpal m( EE aei sgui ne ens i s ) ココヤ シが海辺 の華麗 な ヤ シの女王 な ら,ア ブ ラヤ シは どっ しりと した,力強 い陸の王者 と で も言 え よ う. その姿 だ けで はな い。油脂 生産 力の最 も大 きな作物 で あ る点 で も( 表 4)作物 の 王 と呼ぶ にふ さわ しい。 油脂 作 物 ≡含 碧 セ ‡≡ _ 二 二 1 , 3 3 0 ( 1,4 96 ) 68 ; …5 : / 2 , 2 i c . 6 2 H.Te mpa ny The t r op sassources of (19 5 4 )p p - 66. " 産量l l b/ c k ( a h g/ a) 二 ;: 2 0 8 1 1 9 40 0 1 8 5 3 7 8 9 0 4 三‡ : ( 23 4) 3 4) ( 1 ( 45 0) ( 20 8) ( 42 5) (101 7) 惹 52(;…喜 1'…喜≡ ・ 3 9 7 ' ' 4; : ㌢̀,571) 2, 0 0(2,20) 780 7 ve g e tbl i l sand fat Wo r l rop ≡日 0 V ol.6 ,No. 生 8 1 ラ肉ル実子 : 7 0 0 (78 ) 6 0 0 (65 ) 三 池 7 ' ( 霊な ・ ネ u 出所 . ア ブ ラ ギ ( Al er i t i sm o nt a a) 言 〃 ブ リ n : h (k g/ a ) 〃 ブ ー i 力 〃 リ オ 率 20 コ果 力 果 種 ヤ シ 子 去 三 48 〃 タ ア ブ ラ ヤ 産 〃 イ イ タ マ マズ リ マネ シ カ ラ ワゴ ヒ ダ ヒ ア ナ コ ツ 生 生産 物 の 表4 a ) (1 5 e o E' : 06 ( 8 s ," d 1 8) C s, ココヤ シの よ うに伝播 力 のな い この ヤ シは,永 く熱帯西 ア フ リカにあ って,わず か に原住民 が原始 的な方法 で池 を と り,利用 して いた にす ぎな い。 この油脂 が ヨー ロ ッパ人 の注 意 を ひ く よ うにな ったの は 1 9 世 紀 に入 って か らの ことで あ り,作物 と して注 目を浴 び るよ うにな ったの 91 1年 ドイ ツ人 S c ha dtとベル ギ ー人 Hal l e tが東 スマ トラに pl a nt at i o nを は じめ てか らで は1 あ るO戦前 , この ヤ シに 目をつ けた 日本 人 は, スマ トラにエ ステー トを もち, い よい よ本 格 的 な生産 を上 げ る段 階 に入 った と ころで戦争 にな り, その事業 は挫折 して しま った。 この作物 の特性 や栽 培法 につ いて簡単 に述 べ てみ よ う。 種子 は苗 床 に播 くが,発芽 が困難 なので , これ を促進 させ るため い ろい ろの研 究 が行 なわれ て お り, 高温処理 の効果 が認 め られ て い る。発芽 を 出来 るだ け斉一 に して苗 床 で選 抜 を加 え る ことは栽 培 に成 功 す る第 一 歩 で あ る.苗 床 で約 1年 仕立 てて 定植す る。栽 植密度 は ココヤ シよ 3 0-1 8 0本 で あ る。 定植 してか ら 2- 3年 す る と薬 液 に雄 花房 が あ らわ りやや密植 で ha当 り1 れ る。 ココヤ シと違 い,雄 花 と雌 花 は別 々の花房 につ く。雄 花房 と雌 花房 はおおむね各葉 月 夜に 交互 に現 われ て くる。 ココヤ シよ り早 く,定植後 3- 4年 で最 初 の収穫 が あ る。1 0年 くらいで 盛 果期 に達 し,以後 その生産 を続 け3 0 -3 5 年 で高 さ約 1 2mに達 し,経済 年令 を終 わ る。若 い間 2 5 0 - 2 2- 佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ は 1年 に 1 0- 1 4果 房 を生産 す るが,樹 令 が進 み ,木 が 高 くな る につ れ て 7- 8個 に減 少 す るが, 1果 房 の重 さが増 して くるので , 高 い木 で の 作業 を考 え れ ば ,収穫 の効 率 は高 くな る と言 え よ う。大 き な果 房 で は 70kg( 4800果 を含 む)に及 ぶ もの もあ るが,普 通 は 20kg (数 百 個 の果 実 を 含 む ) 以 下 で あ る。 果 房 は次 の よ うな構 成 で あ る。 30-40% / 果 榎 ,竃 等 外 , 中果 皮 一 果 肉 果房 :果 実 l 核 60-70% 内果 皮 一 殻 内跳 乳- 核 肉す な わ ち カ ー ネ ル ( kernel ) 果 肉 は約 25% , カ ー ネ ル は約 50% の 油 脂 を含 む 。 果 肉 と殻 , カ ー ネ ル の割 合 は種 々あ り, この割 合 に よ って次 の よ うな タ イプ に分 け られ る。 i _ Co ngoと Marc o c ar ya- 果 肉薄 く,果 実 重 の 30-40% を 占め る にす ぎな い ,殻 が厚 い o i i . Dur a( De l i種 も これ に入 る)i i i . Te ne rai v. Pi s i fe ra- 果 肉 は40-70% ,殻 は iよ り薄 い o 果 肉厚 く60% ,殻 は薄 い。 Du raxPi s i fera の h e t e r o z ygo uss e gr e gant . 殻 は な く, カー ネル は繊 維 質 で 包 まれ て い る.栽 培 は され て い な い 。 Ⅴ. Po i s s o ni( Di wakkawakka と もい う)- 果 実 の下 部 が心 皮 の変 形 した油 分 を 含 む部 分 で包 まれ て い る。 ア フ リカに は果 肉 が薄 く,核 の大 きい もの ,殻 の厚 い もの が 多 く, ア ジア に栽 培 され て い る も の は反 対 に果 肉が厚 く,核 の小 さい もので あ る が , これ は 1 848年 レユ ニ オ ンか モ - リシア スか ら 2本 , ア ム ステ ル ダ ムの植 物 園 か ら 2本 の計 4本 の苗 が ボ ゴ -ル の植 物 園 に届 け られ た が , この わず か 4本 に 由来 す る もの が優 良 な De l iタ イプ と して スマ トラを は じめ , 東 南 ア ジア で 栽 培 され て い る。 そ の後 導入 され た もの で , これ に優 る もの が一 つ もな か った こ とは ち ょっ と 奇妙 で もあ るが,幸 運 で もあ った。 これ らの タ イ プの 問 の交 雑 も可 能 で あ る。 短 幹 で は らば う 性 質 の あ るア メ リカ原 産 Amer E.me l ano c o c c a)を も含 め て の育 種 が行 な われ て お り21) , 将 来 油 脂 生産 力 が は i canoi lpal m( るか に大 き く,品質 の点 で も,現 在 の樟 赤 色 の 油よ りもカ ロチ ン含 量 の少 な い もの , あ るい は 全 く含 ま な い無 色 の 油 を生 産 す る品 種 ,短 幹 で 収穫 作業 の容 易 な品 種 ,耐 病 性 の 品種 が育 成 さ れ るだ ろ う。特 にア ブ ラヤ シの将 来 の発 展 は育 種 の成 果 にか か って い る よ うに思 わ れ る。 病 虫 害 も相 当 に多 い ので ,適 地 の選 定 と防 除 は極 め て重 要 で あ る。施 肥 で 生 産 力 は い っそ う 高 ま るだ ろ う。葉 分 析 等 の研 究 も行 な わ れ 22),適 正 な施 肥 量 の指 示 も得 られ る。 ア ブ ラヤ シの一 つ の大 きな特 質 は, な るべ く果 実 を傷 め な い よ うに収穫 し,収穫 後 24時 間以 内 に熱 処理 ( 55o C の蒸 気 処理 )を して酵 素 の働 きを抑 え て お くと遊 離 脂 肪 酸 が 1.5% 以 下 の良 質 5- 6% とな り,もはや良 の油 が とれ るが , これ よ り熱 処理 が遅 れ る と変 質 して遊 離 脂 肪 懐 が 3. 21 ) H.Tempany,"Thet r o pi c sass o ur c esofve get abl eoi l sandf at s , "i b i d. ,Vol .6 ,No.2 , pp.6 2 6 6.1 9 5 4. 1 agni e r,"Fo l i ardi agnos i s ,i t sappl i c at i o nt ot r opi caloi lc r o ps , "i b i d. , 2 2 ) P.Pr e vot& M.01 Vol .1 5 ,No.7,pp.31 2 -31 6.1 9 63. - 23- 2 51 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 質 の池 は とれ な い。熟処理 した果 実 は圧 搾法 あ るいは抽 出法 でパ ーム油 ( pal m oi l )を とる。 果 肉の柏 は飼料 とな るが, コプ ラの絞粕 よ り価値 は低 い。核 は割 って, 内腔 乳 す なわ ち カーネル pal m ker neloi l ) を取 り出 し,乾燥 して多 くは輸 出 され る。 カーネル か らはパ ー ムカーネル 池 ( が とれ るが, これ はヤ シ油 と同 じよ うな性 状 で ,用途 も同 じで あ る。 pl ant at i on と して は,製 油工場 の規模 か らみて少 な くと も 800ha以上 な けれ ば有 利 で ない。 , 収穫 を機械化 して 能率 を上 げ る ことを最 も進 園 の管理 を機械 化 す る ことは容 易 で あ るが 23) r ui t め なけれ ば な らない と思 う。 ココヤ シの と ころで述 べ た よ うな トラクターに装備 され た f pi cker によ る収穫 が考 え られ る。 以上 述 べ て きた と ころか ら分 か るよ うに, ア ブ ラヤ シは典型 的 な pl ant at i oncr opで あ り, この もとで最 も真 価 を発揮 す る もので あ るが ,第 2次大 戦後植 民地 が独 立 し,民 族感 情 か ら外 国資本 によ る pl ant at i on の維持 ,新設 が困難 とな った。 その最 も著 しい例 は イ ン ドネ シアで, 1 964年 に至 る も, なお戦前 の生産 量 に達 しな い。 マ ラヤで は 1 91 7年 Kual aSel angorに最初 の pl ant at i on がで きて以来 , その ほ とん どが pl ant at i onで あ り,1 964年 には戦前 の生産 量 の 4 倍近 くまで伸 びて い る。 ア フ リカで は従来 か ら自然 林 ( nat ur algr ove)も含 めて s mal lhol der と pl ant at i on が並行 して発展 して きたが ,特 に戦後 は大 きな pl ant at i on を作 るよ りも,新 し mal lhol derを入植 させ ,協 同で工場 を もつ傾 向が 強 く, 1日 4 トン くら い適 地 を開発 して ,s oneermi l lの設立 で , ア フ リカのパ ーム池生産 は伸 び いの果 実 を処理 す る工場 ,す なわ ち ,pi てい る。東 南 ア ジアで も民族感情 を考 えれ ば, この よ うな方 向- の発展 が い ちお う望 ま しいだ ろ う。 この際,ア ブ ラヤ シの製 油 プ ラ ン トに 日本 の工 業技 術 が寄与 で きないだ ろ うか。従 来 こ の種 の プ ラ ン トは, ほ とん ど英 国 , フ ラ ンス, ベルギ ー, オ ラ ンダ, ドイ ツの よ うな ヨー ロ ッ パ の もので 占め られ ていた。 日本 の工業 界が今 ただ ちに研究 を始 め な けれ ば,今後大 いに発展 す る と思 われ るア ブ ラヤ シの製 油 プ ラ ン トは ヨー ロ ッパ に独 占され て しま うだ ろ う。製 油工場 の設 備費 は製糖 工場 と澱 粉工場 の 中間で あ り, 製 油技 術 も同様 その中間で あ ると言 われ て い る。 自然条件 は ゴ ム と酷 似 して お り,年 雨量 は 1 800-2000mm以 上 で季節配分 が よ く,長 い乾燥 期 のない と ころが よ い。 マ ラヤで は生産 の低 い ゴム園が ア ブ ラヤ シに置 きかえ られつつ あ る。 ゴム園の求 心的 な道路網 や輸送機 関 はその ままヤ シ果 の収穫 に役 立 つ。 マ ラヤの収量 が コ ンコ 等 ア フ リカの収量 よ り多 いの は 日照 量が 多 い か らだ と言 われて い る。 この よ うな適 地 は東南 ア ジア に多 い。 ボル ネオ, スマ トラ, マ ラヤを は じめ, モル ッカ, ニ ューギニ ア等 には熱帯 降雨林 に被 われ た未 開発 の広 大 な平 地 や台地 が あ る. ここが ア ブ ラヤ シ の ため に開発 されれ ば, それ こそ無 限 の油脂 の宝庫 にな るだ ろ う。南米 には奴 隷 と共 に古 く入 り,各地 に散見 され たが,長 ら く発展 しなか った。 近年 にな り, コスタ リカ, エ クア ドル , ホ 2 3 ) J. S.Gunn& W.Bo a," Mec hani c almai nt e nanc eofoi lpal m pl ant at i o ns , "i bi d. ,Vo l .1 4, No.7 ,pp.21 421 9.1 9 6 2 . 2 5 2 -2 4- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ ンジ ュ ラス, メキ シ コ等 の 中南 米 に は Uni t edFr ui tCompany の保護 の下 に,多 くの オ イルパ ant at i onが あ る。 現在 は末 だ生産 量 は少 ないが , 中南 米 の地 域 には適 地 が広 くあ る - ムの pl の で ,将 来 重要 な産 業 と して の発 展 の可 能性 が高 い。東 南 ア ジア に とって も競 争 相 手 にな るだ ろ う。 この ヤ シにつ いて は多 くのペ ー ジを さか なか った。東 南 ア ジアで は新 参者 で あ り,主 と して pl ant at i on cr op と して発 展 し,原 住民 との食 生 活 のつ なが りもな い。 そ うい った面 で はた し か にお も しろ味 の な い作物 で あ る。油 脂 生産 に対 して無 限 の可 能性 を もっ この オ イルパ ー ムに 興 味 と好 奇心 を持 つ 人 の, それ を さ らにか き立 て るため にあえ て深 入 りしな いで お こ う。 ただ 一 言 ,将 来 この ヤ シは 油 脂 生産 の王 座 を 占め るよ うに な るだ ろ う。 I I I サ ゴヤ シ s agopal m ( Met roxyZ onrumphi i ,M.s aga) サ ゴ ヤ シ !それ はわ た くLに と って は忘 れ る ことの 出来 ない もので あ る。 わ た くLが 20代 の 終 りか ら30才 にか けて , ア ンボ ンとセ ラム ( Cer am)島 で過 ご した 3年 間 この ヤ シで 生命 をつ ないで きた か らで あ る。 この方 面 で飢 餓 との闘 いを した 日本 人 は多少 と もこの ヤ シの 恩恵 に浴 して い るはず で あ る。戦 前 ,佐 々木 喬博士 はニ ューギ ニア や モル ッカ方面 を 調査 され , この ヤ シにつ いて報 告 され て い るが ,他 に 日本 人 と して調査 した人 は な い よ うで あ る。戦後 ,佐 々木 博 士 と長戸 博 士 が熱 帯 農業 誌上 に この ヤ シの有用 な ことを報 告 して い る 。24) Mar coPol o( 1 270-1 295) や Fr anzDr ake ( 1 578) な ど東 南 ア ジア を 訪 れ た人 々に よ って , サ ゴが東 南 ア ジア の 一 部 の住民 の 重要 な食 糧 に な って い る こ とが ヨ- ロ ッパ に 紹 介 され た。 Fr anzDr akeは,あ る木 の幹 か ら粉 が とれ , これ か ら菓子 が 作 られ , この菓子 は 1 0年 後 に もな us( 1 741 )は有 名 な彼 の著書 He r b ar i um お食 べ られ るほ ど保 存 性 が 高 い と述 べ て い る。 Rumphi Amb o i ne ns eに,サ ゴ ヤ シにつ いて初 めて詳 しい記 載 を して い る。 ア ンボ ンや セ ラムで は sago, emboel i ng とか ker s oel a,マ ラヤで は r oembi a とか r embi a と呼 ん で い る。 先 年 ジ ャバ で は r わ た くLが南 タ イの Kauchong 近 くの農家 で 聞 い た と ころで は, サ グ ー と呼 ん で い た。 東 南 ア ジアで は広 く米 が主食 と され るが , この東 の端 の ニ ューギ ニアや その周 縁 の モル ッカ群 島等 の原 住 民 の主 食 は この ヤ シか らとった澱粉- サ ゴで あ る。 1. 植 物 学 的記 載 ,分 布 お よ び生 育条 件 サ ゴ ヤ シの もつ 大 きな生産 力 や 澱 粉 の採 取 法 を知 るた め に は是 非 必要 なので ,一 応 型 通 りに 植 物学 的 な記 載 や分布 ,生育 条 件 等 につ いて述 べ よ う。 サ ゴ澱 粉 の とれ るヤ シには Me t r o xyl o nrum♪hi i ,M.s a guの ほか二 ,三 の種 が あ る。葉 柄 に 2 4 ) 佐 々木喬 「西イ リアンの未利用澱粉資源サゴヤシ」『熱 帯 農 業 』Vo l .1 ,No.3 ,pp.1 2 2 -1 2 4.1 9 5 8; 長戸一雄 「 特別研究,サ ゴヤシ」i bi d. ,Vo l .1 0 ,No.3 ,pp.1 8 6 -1 8 8.1 9 6 7 . - 2 5- 2 5 3 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 とげの多 い M. r um♪h i iと, とげの ない M.s a gu とは異 名 同種 とす る学者 もあ る 025) 幹 か ら 澱粉 の とれ る もの には, fl ab e Z i fe r ) サ トウヤ シ ( Ar e n ga s ac c har i fe r a), パ ル ミラヤ シ ( Bo r as s us 扇 ヤ シと もい う- 等 数種 の ヤ シや,ソテ ツの類 もあ るが ,採取 量 はサ ゴヤ シ とは比 較 にな らない ほ ど少 ない。 モル ッカや ニ ューギ ニア に 自生 して い るサ ゴ ヤ シ ( M. r umPhi i )( 写 真 5)は,幹 の直 径 60- 1 00 cm,高 さ1 0m以上 に も達 す る。 幹 の外 の堅 い層 は, 厚 さ 4-5cm で , そ の 内部 は澱粉 を含 ん だ柔組織 ,す なわ ち pi t hで あ る。長大 な羽状 複葉 は 4-6m に も達 す る。葉 柄 は強敵 で , 特 にその基 部 の幹 を抱 いて い る部分 は幅広 く,後 で述 べ るよ うに細工 して各種 の容器 や澱粉 採取 5恥 幅 8-1 0cm で,屋根 ふ き材料 な どに使 われ の装 置の重要 な部 品 とな る。小葉 は長 さ 1- 1. る。若 い ときは葉 柄 の裏側 には長 い とげの あ る木 が多 いが ,大 き くな るとな くな る。花芽 は木 の頂上 ,生長点 の先 にで き,雄大 な 円錐 花序 に な る。幹 の中 に貯 え られ た澱 粉 は この花 の形成 と結実 にす っか り使 いつ くされて しま う。 コウモ リがぶ ら下 が るよ うにな った時 は幹 の 中の澱 粉 がす っか りな くな った しる しだ と住民 は信 じて い る。 そ して 間 もな く木 は枯 れて しま う。 こ の よ うに一 度 開花 ,結 実 す ると枯 れ て しま う点 で コ コヤ シや ア ブ ラヤ シ, あ るいは これ か ら述 べ る他 の ヤ シ類 とた い- ん違 う点 で あ る。 M. r um♪hi iはモル ッカ,す なわ ち, ブル ー, セ ラム,- ル マ- ラ等 を中心 と して , 南 はケ ィ,アル諸 島,東 はニ ューギニア に至 る地 域 に 自生 して お り, M. s a guはマ ラヤ, ボル ネオ, ジ ャバ , スマ トラ, ミンダナオ, タイの南 部 に至 る範 囲 に 自生 し, まれ に栽 培 されて い る。海 岸 か ら,時 には500-700m の高地 に至 るまで広 い範 囲 にみ られ る。 降雨 が あ る と湛水 し,何 日 間 も水 が ひか ない よ うな湿 地帯 に密 林 を な して生 えて い る。 この よ うな土 地 は海岸 近 くの低 地 に多 い。 モル ッカで はニ ッパ ヤ シが混生 して い る こと もあ るが ,サ ゴヤ シ林 の周縁 にニ ッパ ヤ シの生 えて い る こ とが 多 い。 だ い たい,ニ ッパ ヤ シの生 え る湛水 地 と陸の 中間地帯 が ,サ ゴヤ シの適地 の よ うで あ る。湿 地 で な くて も生 え るが ,生育 が劣 り,澱 粉 の収量 が少 ない。 も し, わた くした ちが初 めて サ ゴの 自生林 に入 ろ うとす るときには,長 ズ ボ ンを は き,手首 まで包 む 長 そで の上衣 を着 ,- ル メ ッ トを被 り,杖 を持 つ のが よい。原 住民 がサ ゴ採 取 に入 るため に敷 いた幅狭 い板 - とい って も,サ ゴ澱粉 を採 った あ との幹 を裂 いた もの- の上 を歩 き, とき どきほ体 の平 衡 を失 な って湿地 に足 を踏 み こみ, 汚水 が入 って重 くな った くつ を気 に しなが ら 進 んで ゆ く。安 定 を失 な って も周 囲 のサ ゴの葉 を持 た ない方 が よい。葉 柄 の大 きな とげが刺 さ るか らで あ る。 この時 杖 が役 に立 つ 。下 ばか りに気 を と られ て い る と頭 に とげの触 れ る危 険が あ る。ヘ ル メ ットは この時保護 して くれ る。薄 暗 い まで に陽 は射 しこまないが, シ ャツや ズ ボ ンはす っか り汗 に濡 れ,額 か らは汗 が, 冷汗 もま じって流 れて くる。上 を 向 けば大小 のサ ゴヤ 2 5 ) E.Mas s al& J .Barrau,"Paci 丘cs ubs i s t e nc ec r o ps -s ago , "Wo r l dCr o ps ,Vo l ・8 ,No・5 , pp.1 7 7 -1 8 0.1 9 5 6 . 254 - 2 6- 佐藤 :東南 ア ジアの ヤ シ シ の葉 が茂 り, す っか り空 を か くして い る。 そ の 上 を赤 道直 下 の太 陽 が焼 けつ くよ うに照 りつ けて い る ことだ ろ う。微 風 も吹 か な い。 熱 帯林 の植 物 純生 産 量 が考 え られて い るよ りは るか に少 な い と す る生 態学 者 に も是 非 調 べ て も らいた い光 景 で あ る。 豊 富 な水 と,沈 積 す る養 分 で , そ の植 物 生 産 は き っ と 最 大値 に 達 して い るだ ろ う。 とは い え 1 00% の湿 度 と蒸 せ 返 るよ うな暑 さの た め, 不快 指 数 も最 高値 に達 し, 澱 粉 を探 った粕 の腐 った酢 っぱ い臭 い が漂 い,初 めて訪 ね た人 は胸 が 悪 くな るだ ろ う 。 小 さな虫 も飛 んで きて , は だを 刺 す。 原 住 民 は, わず か の ものを 身 に ま とい, は だ しで どん どん林 の奥 へ と進 ん で い く。 この よ うな 湿地 に も, と ころ ど ころに水 のつ か な い と ころが残 っ て お り, そ こで澱 粉 を採 取 して い る。横 には よ ど 写真 5 サ ゴ ヤ シ ( TanahAi rKi t aより) ん だ よ うに静 か に流 れ て い る小 川 や時 には枯葉 を煮 出 した よ うな褐 色 の溜 り水 が あ る。 モ ル ッカで は この よ うに 自生 して いて特 に栽 培 して い る もの はな いが , も し栽 培 す る とす れ ば, 長 さ 50-60cm の小 さな 吸枝 ( s ucker - 根 芽 と もい う) を根 を少 しつ けて切 りと って植 え る。 わ た くしは た だ 1度 だ け, 1人 の原 住 民 が 吸枝 を この よ うに と って きて , サ ゴ林 のす け た と ころに補植 して い るのを見 た ことが あ る。 吸枝 を植 え る と, 3年 ほ ど して幹 が地上 に現 わ れて くる。 そ して これ に また吸枝 が次 々と発 生 して くるの で永 久 的 な サ ゴ林 が形 成 され る. 澱 粉採 取 の ため開花 前 に伐 り倒 され た もの は, 種子 が で きな いが , 自然状 態 で も,種子 に よ る繁 殖 は ご くまれ で あ る。 そ の理 由は,種子 が成熟 す る と,葉 柄 の基 部 の と ころに落 ち, そ こで発 芽 す るが, うま く地 上 に落 ちて 生育 す る こ とが少 な いか らだ といわれて い る。有 用 な ヤ シで こ の よ うに栄 養 繁殖 ので き るの はサ ゴ ヤ シとナ ツメヤ シで あ る。 品種改 良 の全 く行 な わ れて いな いサ ゴ ヤ シに と って ,将 来 品種 改 良 を行 な う上 に, この こ とは大 きな プ ラスにな るだ ろ う。 環境 条 件 の よい場 合 は,植 付 けて か ら1 0- 1 2年 で ,悪 い場 合 は 1 5-20年 で収穫 期 に達 す る。 しか しこれ は最 初 の植 付 か ら収穫 期 に達 す るまで の年数 で あ って , 吸枝 が叢 生 して くるので , この 中 の強健 な ものを段 階的 に残 して ゆ けば , それ以 後 の収穫 の周期 は短 縮 され て くる訳 で あ る。西 ジ ャバ で は, 1株 は常 に 5本 にな るよ うに,叢 生 して くる吸枝 を取 り除 いて い るが, セ ラムで は この よ うな管理 や配 慮 は して いな い。 自生 の サ ゴ林 は広 大 で,現在 の ま まで は利用 さ れず に朽 ちて ゆ くもの も多 いが, 地 形 な どか ら採 取 しや す い と ころは 当然 この よ うな管理 を し て もい いわ けで あ る。 これ を や らな いのを怠 惰 と責 め る こ と も, 間 引 きを 強制 す る こと も適 当 2 5 5 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 で はな い。原 住民 の考 え方 を理 解 す るため に, わ た くしの体験 した ことを述 べ よ う。 0 本 も束 に して植 え る0 ≠こんな に 1カ所 にた く セ ラムの原 住民 はサ ツマイモの苗 を 5本 も1 さん の苗 を植 え る とイモが た くさん とれ な いで はな いかク とた しな め る と, かれ らはた だ ちに ≠あな たは何 を言 うのか, こん な にた くさん百 を植 えて も少 ししか イモが採 れ な いの に, あな たの言 うよ うに苗 を 1カ所 1本 しか植 えな けれ ば,収穫 は ほ とん どないで はないか〃 と真剣 な 顔 で反論 して くる。 かれ らには作物 の競合 とか共 倒れ とい った観念 が ない ので あ る。 この考 え 方 は おそ ら くセ ラム島民 に限 った ことで はない だ ろ う。 またサ ツマイモ に限 った ことで もな い だ ろ う。文化 や教育 の低 い と ころの農民 には共 通 した考 えで あ ろ う ( 子 供 を た くさん産 んで お くとい う低 開発 国 の人 々の共 通 した習慣 ?に も, この心理 が働 いて い るので はな いだ ろ うか)。 この蒙 を啓 くには実物教育 しかな い。 しか しい きな りサ ゴヤ シの吸枝 の間 引 きを強制 す れ ば原 住民 の大 きな 抵 抗 にあ うだ ろ う。 まず サ ツマイ モで競合 の 様 相 を見 せ て納得 させ る ことで あ る。 わた くしのいた村 の人 達 は,今 もサ ツマ イモはわた くしの教 えた通 り,宙 を 1本 づ つ植 え て い る ことだ ろ うと信 じて い る。 しか し残 念 なが らサ ゴヤ シに この理 屈 を教 え るまで には至 ら な か った。 た くさんで て くる吸枝 はい っこ うに間 引かな い。競合 で結果 の よ くな い ことは明 ら かで あ る。 も し, これ を適 当 に間 引いて ゆ けば澱 粉 の生 産 は大 い に増 す だ ろ う し,収穫 の労力 も節 減 され るだ ろ う。 サ ゴヤ シの葉 は 6mに も及ぶ ので,植 付 は ha当 り1 0 0 本 ,あ るい はそれ 以下 と し, 出て くる吸枝 を間 引いて ,段 階的 な子 株 ,孫 株 , --を生 や し,親株 の葉 の問 か ら もれて くる 日光 を全部 吸収 して 同化 の効率 を 1 0 0 %発揮 させ る。 2. 収 穫 サ ゴ澱 粉 の採 取 の ことをサ ゴ打 ち ( s agopo kol ) とい う。 これ は澱 粉採 取 の一 つ の作業 で あ る pi t hの削 りと りを意 味す る言葉 で あ る。収穫 期 は pi t hの澱 粉 の量が最 高 に達 した時 で ,こ の時 は花 が抽 出す る直 前 で あ るが,外 観 的 には葉 が立 つ とき, といわれて い る。平地 と山の方 とで は多少 収穫 適 期 の徴 候 が違 うよ うで あ る。原住 民 は収穫 適 期 を知 り, しか もその澱 粉 の畳 まで も ピタ リとあて る。 わ た くLは セ ラムに原 住民 と-諸 に住 んで いて, 1日に 1度 は原 住民 の無知 や頑 迷 にあ きれ果 て, あ るい は愛 想 をつ かす ことが あ った。 また 1日に 1回 はかれ らの 知恵 やす ぐれ た技術 に感 嘆す る ことが あ った。今 日なおかれ らの勘 の良 さ,観 察 力 の鋭 さに敬 服 して い る ことに この一 事 が あ るO わた くしが やこの木 は も う収穫 期 にな って い るだ ろ うO と 言 うと ≠い や,今伐 り倒 して も水 だ け しか とれ な い。 あ と 6カ月待 て〝 とい う。 6カ月経 って やも う収穫 出来 るだ ろ うク と聞 くと ≠ 残 念 な が らまだ適期 にな って いな い。 もうあ と 4カ月待 澱 粉採 取 を させ ると, て' 'と言 う。 も し ≠ 約束 の 6カ月経 ったか らo と言 って無理 に切 り倒 し, それ は全 く原住民 の言 うとお り,水 ばか りで,澱 粉 は驚 くほ ど少 ない。 当時 わた くLは この原 因が分 か らなか ったが,今 日の知識 を もってすれ ば, おそ ら く水 に溶 けた糖 の形 で幹 の 中 にあ hos phor yl as e の よ うな酵素 の働 きで急激 に澱 る ものが収穫 期 (開花期 が近 づ くと)にな ると p 2 5 6 -2 8- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ 粉 に変 わ るので あ ろ う。 これ はサ ツマ イモ等 の イモへ の澱 粉 の蓄 積 とは異 な るよ うで あ る。 お そ ら く生物化学 の分 野 において も興 味 の あ る ことだろ う。 図2 A a:na nl B b:くさび a: s aha ni l ⊃ : go t i c: t o man d: 水 くみ道具 かれ らは適 期 に達 した と判 断 した木 を 伐 り倒 し,幹 に縦 に くさびを打 込 んで二 つ に割 る。 こ の中 に入 り,竹 で作 ったサ ゴ打器 ( naniとい う)で 1-2c m の厚 さに pi t hを削 って い く(図 2A)0 naniは竹 製 の他 に小 さな三 角 形を した鉄 の爪 (2平 方 cm くらいの)を木 に打 込 んで柄 をつ け た もの もあ る。手 は休 まず打 ち続 けな が ら,足 で は削 った ものを こね回 して い る。 この作業 は 一見単 純 で少 しの技 術 もい らな い よ うで あ るが,や って み ると難 しい 。 削 るの に夢 中 にな って い ると足 の方 が お ろそ か にな る。足 に気 を取 られて い ると大 き く削 りとって しまった りす る。 薄 く削 り,足 で もむ こ とは澱 粉採 取 に きわめて意義 の あ る ことで あ り,科学 的 で あ る。削 った pi t h に水 を注 いで 澱 粉を採 るので あ るが, 首 スマ トラにいた Ⅰ氏 は スマ トラで は 優良 品柾 は pi t hを切 って その ま ま焼 けば食 べ られ る。 ち ょうど餅 の よ うな もの だ と話 して いたが,わ た く Lは残 念 なが らその よ うな経験 がない。 も しこの よ うな優 良 品種 が あ るとすれ ばい っそ うす ぼ ら しい ことで あ る。 ケ イ諸 島で は原 住民 は pi t hを その ま ま食 べ る こと もあ ると言 われ て い る。 澱 粉の採 取 法 にはい ろい ろあ るが, モル ッカで一般 に行 なわれ て い る方法 は原 住民 の方 法 と し て は最 も進 んだ もの と思 われ るので述 べ て み よ う(図 2B), ( 写真 6)。 サ ゴヤ シの葉 柄 の幅広 くな った基 部 の部 分 を用 い , その大 きい方 の一端に コ コヤ シの葉鞘 の網 の よ うにな った繊 維 を ahaniと呼ぶ 取 り付 けて,ふ るい とす る。 この装 置を s りとった pi t hを入 れて運 んで きて ,s ahaniに入 れ , 。 サ ゴの葉 柄 を乾燥 して作 った箕 に,削 水 を加 えて こね回す と,水 と澱 粉 だ けが ふ るいを通 って流 れ 出す。 サ ゴの葉 柄 で 作 った三 角形 の器 に トウの ひ もを付 け,端 を釣 竿 の よ うな竹 の端 につ けた もので ,3-4m 先 の水溜 りや小 川 の水 を ,魚 を釣 り上 げ るよ うに巧 み に吸 上 げ る。 この手練 は全 くす ぼ ら しい。水 と波 粉 は沈殿 槽 ( got i )に集 ま る。got iは pi t hを削 り とった古 い幹 の両 端 にサ ゴヤ シの葉柄 の基 部を継 ぎた した もので,安 定 よ く置いて あ る。一端 か らは さ らに次 の got iに水 が流 れ 出す よ うに して あ る。 しか し大 半 の澱 粉 は最 初 の got iで沈 精 す る。 got iに滑 った生 搬 粉 は 竹筒 な どに入 れ た りす る こと もあ るが, 通 常 サ ゴの古 い葉 で -2 9- 2 5 7 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 編 んで竹 の たが を はめたバ スケ ッ ト ( t oman とい う) に入 れて運搬 や貯 蔵 をす る。 これ にい っぱい 0kg あ る。 20kg,30 生澱 粉 を入 れ るとだいたい 1 kg入 る 大 きな トマ ンもあ るが 10kg トマ ンが多 く用 い られ る。 い った い, 1本 の木 か ら, どれ だ けの澱 粉が とれ る ものだ ろ うか。 わた くしの経験 で は普 通 30-40トマ ン ( 生澱 粉 300-400kg)で最 生澱 粉 800kg)で あ った。文献 をみ 高 は80トマ ン( て もだいたい この収 量 は妥 当で あ るが, 中 には著 し く少 ない報告 もあ る .26)これ は Me t r o x yl o nの 種 に もよ るが, また原 住民 の と った澱 粉 には相 当 の不 純物 も入 って お り,水分 も一 定 でな いので , は っき り した ことは分 か らない。生 澱 粉 ( 水 分 35 % くらい) は 1人 1日 1 kg摂 れ ば十分 で あ る。1 本 のサ ゴで 1 年 間遊 ん で食 べ て ゆ ける勘定 にな る。 20kg と し,1 佐 々木博士 は 1本 の澱 粉収量 を約 1 写真 6 サ ゴ澱粉 の採取 s ahani ,got i , t o manが見える。水 くみおけば 図のものとは違い,サ ゴの葉柄 の幅広いところで作 ったもので ある。 人 1年 の摂取量 を約 1 20kg と して い るので ,1人 ( TanahAi rKi t a よ り) 1年 1本 の割合 とい う点 で は一 致 す る.実 際は一 家 親族 で サ ゴ打 にゆ くO子 供 や犬 , ニ ワ トリ まで連 れ,小 屋 が げを して サ ゴ打 の問 そ こで生 活 をす る。 自然 林 とはいえ,村 の所有地 は決 ま って い る。セ ラムで はサ ゴ打 は男 の仕事 で あ るが,女子 供 も削 った pi t hを運 ん だ り して手伝 う。 南西 ニ ューギニアで はサ ゴ打 は婦 人 の仕事 と されて お り,死 んで埋 葬 され た と き,墓 の上 にか の女 が生前使 って いた naniと水 汲 みのかめを飾 る習 わ しとな って い る。 大人 も子 供 も トマ ンを天 秤棒 で担 ぎ,女 は頭 にのせ て, い そい そ と山へ帰 って くる。 そ して しば ら くは休 む。 しか し, たいて いの場 合 この休 み は安 息 で は な くて, マ ラ リヤの再 発 で苦 し む とい った方 が よい。サ ゴ林 の生 活 は高 い湿気 と暑 さで, それ ほ ど体 に こたえ るので あ る。 回 復 して しば ら くは山の畑等 で働 き,二 ,三 カ月 もす ると再 びサ ゴ打 に出か けて行 く。 これが か れ らの生 活 の繰 返 しで あ り, おそ ら くは今 日もなお続 いて い る ことだ ろ う。 こ う して と った澱 粉 は大部 分が 自家用 で あ るが,物 々交換 に使 われ, また現 金 で取 引 され る こと もあ る。 3. 調 理 と 加 工 サ ゴを主食 と して い るモル ッカの原 住民 の問 には次 の よ うな独特 な調理 法 が広 く行 なわれ て い る。 1) パ ペ ダ ( papeda) .Barrau,"Paci f i cs ubs i s t e nc ec r ops -s ago. " 2 6 ) E.Mas s al& ∫ 2 5 8 - 3 0- 佐 藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ 1 一 番 多 い調理 法 で あ る。土製 の容器 に生 サ ゴを入 れ ,少 量 の水 で とき,慢拝 しなが ら熱湯 を 注 ぐ。煮 立 った湯 を注 ぐと透 明 にな る。熱 が足 りない と白いの りの よ うにな るが,かれ らほ無 頓 着 で あ る。 ち ょうどかた くりの よ うで あ るが,パ ペ グはの りの腐 った よ うな臭 いが して い る ので,初 めて の人 には よほ ど飢 えて いな けれ ば食 欲 の お こ らない しろ もので あ る。食 べ なれ る とこの臭気 もい っこ う気 にな らず ,む しろその臭 いを,味を,楽 しむ よ うにな る。 これを箸 か 1本 の- らの よ うな もので巧 み に巻 きあげて皿 の スープの上 に落 と し, 口をつ けてすす るので あ るが, さ じを用 いて もよい。 こん な言葉 が あ る や 魚 を食 べ,野菜 を食 べ ,パ ペ ダを食 べ よ〃 つ ま りこの三 つ を 口の中で混ぜ て食 べ ると調和 が とれて おい しい とい う意味 で あ る。 なかなか 満腹感 が得 られ ないので,つ いた くさん食 べ ると腹 が水 で い っぱい にな る。消化 も良 い か らす ぐ空腹 にな る。熱 い問 にパ ペ グを竹 筒 に入 れ,バ ナナの葉 で栓 を して弁 当 とす ること も多 い。 竹 を割 ると,冷 えて 固 まったパ ペ ダは ち ょうどうい ろ うの よ うな感 じがす るが,臭気 はい っこ う衰 えて いない。 これを指 です くい とって食 べ る 。 2 ) サ ゴ レンペ ン ( s agol e mpe n,または単 に l e mpe n) 適 温 の澱 粉 を竹 製 のふ るい にか け る。粉 が細 かす ぎて もい けない.一 方 ,竹 を燃 や して その 1 0 c mx7 c mン : 2 c m くらい)の並 んだ素焼 きの焼 器 を 置いて熟 す る。 竹 は火 上 に レンペ ンの型 ( 力が強 く畑雄三 出 ない。 この熟 した容器 にふ るった粉 を軽 くつ め, バ ナナの葉 を被せ て お くと, やがて桃褐 色 の レンペ ンが焼 き上 が る。 レンペ ン作 りはすべ て婦 人 の仕事 で あ る。温 かい問 に 食 べ ると柔 らか く,舌触 りもよ く,なかなか おい しいO焼 く前 にヤ シ砂糖 の塊 を巾 に入 れて お くと レ ンペ ンの中 に黒 砂糖 が溶 け こむ。 レンペ ンには もはや生澱 粉 の異臭 も酸 っぱ味 もない。 ヨー ロ ッパ 人 も レンペ ンをサ ゴヤ シのパ ンと称 し,温 かい問 に食 べ れば うまい と評 価 して い る。 しか し原住民 にと って レ ンペ ンは重要 な保存食 で あ り, いわば田パ ンで あ る。 ヤ シの葉 で編 ん だ亀 に入 れ,台所 のか ま どの上 につ る して お くと,高温 多湿 の この地方 で も数 カ月 かびず に保 存 が 出来 る。 1個 は約 1 60 grで, 大人 は 1日 5個食 べれ ば栄養上十 分 とされて い る。 1年 に 1 8 2 5個 とな り,30 0 kgの乾燥 粉 か ら作 られ るので, これ は生 澱粉 にすれ ば約 40 0 kgに相 当 し, 生殿粉 1人 1日 1 kg摂 る場 合 とほぼ等 しい。 かれ らが何 日も出向 くときは, な にが しかの レ Nyc t i c e b ust ar di gr adusb o r ne anusとい う猫大 の草食 動物) の燥製 肉, ココヤ ンペ ンと クス ( シ果,塩等 を持 って ゆ く o L L J 道 で食 事 をす る場 合 , 1人 が森 の中-入 って ゆ く。や がて長 い竹 筒 を担 いで帰 って くる。 ヤ シ酒 が入 って い る 。 かれ らは必ず ヤ シ酒 を採 って い る木 の あ る場 所 の近 くで休 み,昼食 を摂 るので あ る。 この ドプ ロ クで渇 きを いや し,堅 い レ ンペ ンをか じ り,ヤ シの実 を割 って生 コプ ラを食 べ , クスの 肉を しゃぶ る。 そ して男 は天 秤棒 を担 ぎ,女 は荷 物 を カ コイア (タ コの木 の一 種 の葉 を綴 って作 った雨 具)で くるんで頭 に載せ , 山道を登 ってゆ く。 3 ) シノ リ ( s i nor i ) 火 の上 の鉄 なべ に薄 く油 を しき,水 を加 えて多少 湿 ら した生澱 粉 を入 れて撹拝 して い ると, - 31- 2 5 9 東南 ア ジア研究 第 5巻 第 2号 やがて半透 明の部分 がで き,粉 は多少 ほ ぐれ,一部 は餅 のよ うにねぼ って くる。 これを シノ リ とい う。初 め にサ ンタ ンや生 コプ ラの削 った ものを混ぜてお くとい っそ う風 味がで る。わた く しの感 じでは最 も米 飯 に近 い もので,原住民 もこれを好 む。 生澱粉 は水分 3 0-40%,乾燥 した もので 1 2-1 8%,脂肪 と蛋 白質 はほ とん ど含 まない。生澱 粉 は貯蔵 中 に発酵作用 で ビタ ミンBは増 すが他 の ビタ ミンは含 まない。 このよ うに完全 な澱粉 質食 で あ り, タ ピオ カやバ レイ シ ョ澱粉 と同様 で あ るが, その穀粉粒 は顕微鏡的 には容易 に区 別 で きる し, また性質 も異 な ってい る。 しか し用途 はタ ピオ カ澱 粉 の代用品的性格 が強 い。 モ ル ッカの原住民 の体 力が弱 く,貧血 してい るのをサ ゴの栄養的欠 陥 に帰 してい るむ きもあ る。 事実, この地方 の住民,特 に子供 た ちは 目に生気 が な く,腹 が膨 れ, まるで ヒ ョウタ ンを並 べ たよ うな感 じを与 え る。 これ は澱 粉 の過剰摂取 に もよ るだ ろ うが,腹 を抑 えてみ ると,へ その 下 まで石 のよ うに固い。 マ ラ リヤにおか され, ひ臓 が肥大 して い るためで あ る。原住民 は脂肪 や蛋 白質 の摂取 には,かれ らな りに相 当気 を配 ってお り,海岸近 くの住民 は ココヤ シや魚を と り, 山の住民 は海岸 か らココヤ シを運 び, ニ ワ トリを飼 い,野猪 や クス,川魚を と り,野菜を 池でいためて食 べ る。前 に述 べ た " 魚 を食 べ,野菜 を食 べ,パ ペダを食 べ よク の言葉 は栄養 の 面 か らい って も含蓄 のあ る言葉 であ る。時 にはイナゴやバ ッタの類 を と り,女 は頭 の まげの中 に仕舞 い こみ,農 作業 を終 わ って食事 の時,取 出 して焼 いて食 べてい る。原住民 はよ く4-5 c m の指 くらいの太 さのよ く肥 えた白い幼虫を とって くる。頭 を爪先 で ち ょっと切 って殺 す。 白い 液 が出 るO これは SPh e n o l ) h o r uso b s c u r u sとい う象鼻虫 の幼虫であ る.原住民 は これを oel ar s ago(サ ゴのヘ ビ)とよんで い る。 わた くLは確か に澱粉粕 を丹念 にかいて この虫を とって い た よ うに記憶 してい るが, これは活物寄生 であ るので, そん なはず はないわ けで あ るか ら, あ t hを削 ったあとの生長点 の部分 だ ったか もわか らない。 この幼虫 はサ ンタ ンの スー るいは pi プ に入 れた り, ヤ シ油で揚 げて食 べ る。蛋 白質 と脂肪 の塊 の よ うな この虫 は原住民 の最 も上等 な料理 ,珍 味の一つで あ る.わた くLが島を去 るとき,親 しか った原住民 の一人 が t h これ をあ なた にごちそ うす ると言 いなが ら約束 の果 たせ なか ったのは残 念 だ' !と言 って いたが,原住民 の食 べ る物 は ほとん ど食 べ たわた くLも, トカゲ の肉 と, このサ ゴの虫 を食べ ることの出来 な か った ことだ けが, 今 もって残 念で あ る。サ ゴ澱粉 の栄養的欠 陥を この虫 が埋 めて くれ ること は全 く天 の配剤 と言 えない こともないが,しか し,この虫 は ココヤ シの ところで述 べた Or yc t e s とともにサ ゴヤ シの大害虫 で あ る。 こう して幼虫 を とることによ って この害虫 の繁殖 をあ る程 度抑 えてい るともみ られ る。 4 . 澱 粉以外 の もの サ ゴヤ シは原住民 にとって澱粉 の他 に も生活 に必要 な数 々の ものを提供 して くれ る。菜 はヤ シ類 の うちで最 も優 れた屋根ふ き材料 で あ る。竹 の軸 に葉 を折 って重 ねなが ら,青竹 の表皮 を 剥 いだ ものをひ もと して編 んでゆ く。 これ をア タ ップ ( at ap)とい う。 これ を重 ねあわせて ゆ 2 6 0 -3 2- 佐藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ けは 雨水 を 防 ぎ, 風 通 しの よ い 屋根 とな るO ニ ッパ ヤ シの屋 根 よ りもちが よい。 タ イ の Kau- chongで も屋 根 ふ き に葉 を 利用す るだ けで ,氾 粉 は と って い な い とい う こ とで あ った 。 小 葉c J ) 中 軸 だ けを束 ね る と, 腰 の 強 い ほ うき とな る。 葉 軸 の断 面 は三 「 ‖]形 を して い る。乾 燥 させ た もu jを ガバ ガバ とい う 。 軽 くて 丈 夫 で ,市 ね 合わせ る とす きr I 肘)i l 1来な いi T , i T f とな る。 頂 住民 U ) 家 で は貴 地 を 問 わ ず 広 く用 い られ て い る。 また , カ ヌ ー O jr t f 摘玄に長 く張 出 した わ くし 刃. ' ; , i E 二, 良 い ガバ ガバ を 結 わ え つ けて 浮 子 と して カ ヌ -山安 定 を は か る。 5 . サ ゴ林 の 人 口 扶 養 カ サ ゴの 自生 して い る面 積 は西 イ リア ンだ けで も 6 56, 300haに迅 す る とい う。 1人 11 」生 渥細 ) 1 kg,サ ゴ 1本 の生 股 粉 収 量 を 365kg,収 穫 まで の年 数 を 1 0年 ,ha 当 りの栽 栢 密 度 1 00本 とす れ ば l 九a l O人 の人 口扶 養 力 が あ り, 西 イ リア ンだ けで 6, 563, 000人 に豊 嵩 な主 食 を捉 供 す る こ とが 出 来 る。 この 地 方 の住 民 を現 在 50 万 人 とす れ ば 1 2倍 以 上 の人 口扶 養 力 が あ る。 これ は杜付 か ら収穫 まで を 1 0年 と して の 試 算 で あ るが , 前 に述 べ た よ うに発 生 す る吸枝 の段 階 的 な生 育 に よ り, この年 数 は ず っ と縮 ま るだ ろ う。 吸枝 の 間 引によ る適正 密 度 , 生 産 力 の大 きな 品 種の 栽 帖 によ って , 人 口扶 養 力 は さ らに増 す だ ろ う。佐 々木 博二 日 こよれ ば この よ うな見 積 りは 極 め て甘 す ぎ る もの で , 自然 林 は ご く内輪 に見 桔 もって , 1年 1ha 1本 o j収 穫 と して い る。 また Zwol l eは 1年 に 1haか ら62. 5本 が収 穫 で き, これ か ら 7031-9844kg の生 サ ゴ (水 分 35-40 潔 ) が とれ る と して い る C こ0 )よ うに試 鈴 が ま ち ま ちで あ る こ とは , サ ゴの 調査 が十 分 行 な わ れて い な い と も継 され よ う。 空 中 写 真 を 利用 す れ ば サ ゴ林 の面 積 t / j推 定 は容 ^ i T j / J で あ ろ う0 6. 貿 易上 に あ らわ れ るサ ゴヤ シの 産 品 この よ うに モ ル ッカや ニ ュー ギ ニ ア の頂 住民 に と って有 用 な サ ゴ ヤ シ も他 の地 域 にお い て は ど うで あ ろ うか 。世 界 貿 易 に あ らわ れ て くるサ ゴヤ シの 産 品 は澱 粉 と尭 + i l 身性象 牙 で あ るo M.s al o mo ne ns e( Co e l o c o c c uss o l o mo ne ns i s ) お よび M. ami c ar um ( =C.ami c ar um また は , C. c ar o l i ne ns i s )は ソ ロモ ン彊鳥 に 白生 し, 玉 突 の玉 くらい の大 き さo j堅 い 内肪 乳 を乾燥 す る と象 牙 の よ うに な りボ タ ン等 の 細 工 物 が で き るC ) )で , 古 くか ら集 め られ て ヨー ロ ッパ 等 に 輸 出 され た が , プ ラス チ ックの た め植 物性 象 牙 の価値 は下 が り, 1 9 25年 には 1 570トンが ,1 955 年 には わ ず か 1 9. 5トンが ソ ロモ ン群 島か ら 輸 出 され た .27'象牙 ヤ シC / )一 種 と して の サ ゴ ヤ シの 価 値 は ほ とん ど考 え な くて よ い 。 これ らの ヤ シ もソ ロモ ンで は澱 粉 が採 取 され て い る。 L i J I て くるサ ゴ混沌 )は主 と して モ ル ッカ よ りt J _ し 直 イ ン ドネ シア ,サ ラワ ク, マ ラヤ, 貿 易統 計 に l タ イ等 で , M .s aguか ら原 注艮 が採 った粗 澱 粉 を現 地 の華 僑の小 1 場 で,布 で こ して精 製 した もC )で , 粗 描 粉 に は6 0 , C も' 以 上 の 不純 物 を含 む ことが あ る とい わ れ る。 サ ゴパ ール は タ ピオ カパ - ル と同 じよ う に して 作 られ る し, 用途 も同 じ くス ー プ 等 に入 れ られ る。 これ は華 僑 の巧 み な 技 術 に よ る。 か れ らは迅 f l H ! _ の精製附粉をふ るいで こ し,天 井 か らぶ ら下 げ られ た麻袋 に入 れ , 2 7 ) R. A.Le ve r ," i vo r ynutpal ms , "Wo r l dCr op s ,Vol .1 6 ,No.1 ,p. 6 7.1 9 6 4. -3 3- 2 6 1 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 前 後 に振 り動 かす と澱 粉 は袋 の中で丸 い粒 にな って くる。取 り出 して竹製 の粗 い. ふるい を通 し て 同 じ大 き さの粒 を集 め る。薄 く池 を敷 いた鉄 なべ に入 れて適 当 に熟 を加 え,静 か に撹 拝 し, 1 2時 間冷 やす と堅 くな り,大部分 は透 明 とな る。 これ を 2回繰 返 す と全 部 の粒 が透 明 にな る。 1 5人 くらいの小工場 で,サ ゴパ ール 1日に 400kg を製造 す る。 7. サ ゴヤ シの将来性 直 接食 用 と し, あ るいは飼料 と して世 界 の食 糧生産 に寄与 す る,収 量 を増加 させ て換 金性 の 高 い もの にす る, サ ゴを原料 と して澱 粉工業 や食 品工業 を開発 す る, とい うサ ゴにつ いて大 き な夢 をわ た くLは 持 って い る。 サ ゴヤ シの特 質 か らすれ ば この よ うな 夢 の実現 の 可 能性 は あ る。 なぜ な ら-- , サ ゴは他 の作物 や有用樹 種 には ほ とん ど適 さない よ うな湿 地 を好 む。 この よ うな湿 地 は山腹 や丘 を洗 った雨水 が溜 り,肥 料成 分 の沈積 す るところに多 く, また この よ う な土地 は土壌 侵蝕 の起 こる恐 れ もない。 サ ゴは前 に も述 べ た よ うに種子 によ って繁殖 す る こと が少 ないので,現在 の 自生林 以外 に適地 は まだ豊富 に残 ってい るだ ろ う。 モル ッカや ニ ューギ ニア だ けで な く,広 くボル ネオや スマ トラ等 に見 出す ことが 出来 るだ ろ う。 わ た くしの熟 知 し て い るセ ラムにつ いて だ けみて も,海岸 に近 い平坦 地 が価値 のない雑 木 に被 われて い ると ころ が多 い。 海岸 に沿 って低 い土堤 を巡 らす ことによ って サ ゴ林 適地 を造成 す る ことが 出来 よ う。 bas i nmet ho d)か らヒ ン トを得 て , ご く小面 積 の周囲 を低 い土 わ た くLは果樹 の水盤 潅翫法 ( s i nを作 り,雨水 を溜 め,あ るい は潅概 して ここ- 1∼数株 のサ ゴを栽 培 すれ ば, 堤 で囲 んで ba i t hの採取 や幹 の運搬 が容易 にな るとい う方法 を考 えて い る。サ ゴ澱 粉 の採取 収穫 に際 して ,p を機械 化 して労働生 産性 を高 め るため には,サ ゴ林 へ の機 械 の搬入 , あ るいは澱 粉採取場 - の 幹 の運 び出 しとい うことが ど う して も必要 で あ り,現在 の 自然林 で は ご く一 部 を除 いて は, そ の いず れ もが ほ とん ど不可能 に近 いか らで あ る. ただ機 械化 に対 して一 つ の エ ピソー ドを上 げ て お こう。 当時 セ ラム島 にいた 日本 の海軍 が原 住民 の能率 悪 い澱 粉採取 を機械 化 して能率 を上 t hを削 りとる機械 を作 った。 pi t hは早 く げよ うと単 純 に考 え た。 自動車 の動 力 をはず して pi 削れ たが澱 粉 の収 量 は誠 に少 なか った。 これ は澱 粉粒 が細胞膜 の中 にあ り,膜 を破 らない こと には取 出せ ない とい う植 物学 の基 礎 的 に して極 めて初 歩的 な知識 に欠 けて いたためで,この点 , 薄 く削 り,足 で十分 もむ とい う伝統 的 な方法 を守 り,少 しも安 易 な方 法 を とろ うと しない原 住 民 は賢 明 といえ よ う。 しか し, この伝 統的 な方法 で は労働生産性 の極 めて低 い こと も事 実 で あ る。 も し澱 粉採取 を工 業化 しよ うとすれ ば技術 的 には採 取 その もの は容易 で あ ろ う し, ニ ュー ギニアや モル ッカ以外 の地 で は, その よ うな機械 も開発 され て い るよ うで あ る。 しか し, サ ゴ が原住民 の主食 にだ け止 まって い る限 りは伝統 的 な,労働生産性 の低 い方法 が存在 す る ことに は意 義 が あ る。 かれ らが生 活 に真剣 に取組 む た めの良 い方 法 で あ る。 も しこれが安 易 に とれ る よ うにで もなれ ば,他 に大 した労働 もない島の人 々をい よい よな まけ者 に堕落 させ て しま うだ ろ う。 しか し, も しかれ らが生 活 の 向上 を望 み, その方 の欲望 がわ いて きた な ら換 金性 を高 め 2 6 2 -3 4- 佐 藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ る方 法 を, さ らには澱 粉 工 業 - と発 展 さす ことを考 え るの は 当然 で あ ろ う。 しか し同時 に 自然 )ヤ シ林 か ら管理 の 手の入 った ヤ シ杯 - , さ らに栽 培 ヤ シ林 - と発 展 させ な けれ ば原料 まかせ U は閥 もな く枯 渇 して しま うだ ろ う。 現 在 まで 組 織 的 ,科 学 的 な品 種 改良 : ま全 く行 な わ れ て い な い U )で 自然 林 は変 異 の宝 庫 で , 百 種素材 にが 欠 か な い だ ろ う。 福 住艮 が 優良 と称 す る もU ), 多収 と称 す る もの , / i長 が早 く収穫 硯 に連 す る ことが早 い と称 す る もo _ ), とげの な い もの等 の株 か ら吸枝 を集 め る. もち ろん原 住 民 の評 価 す る もの は環境 の変 異 に よ る もの も含 まれ て い る。 こ う して比 較 調査 す れ ば 1 5年 を 山 で ず して い ち お う優 良 品 種 が決 定 され るだ ろ う。 あ とは 吸枝 に よ る栄 養 繁殖 に よ って増 殖 す れ ば よ い。 ant at i oncr opの ゴ ムや ア ブ ラヤ シ, 茶 , サ イザ ル等 に比 べ て サ ゴ ヤ シは pl an代表 的 な pl ant at i on に よ って の み 開発 され る も t at i oncr op と して の条 件 を完 全 に備 え て い る し, また pl / )年 数 が 他 の 作 物 に 比 べ て の とわ た くLは 考 え て い るが, 植 付 か ら最 初の収 穫 にい た る まで C 1. 5- 2倍 長 くか か る点 に大 きな弱点 が あ り,サ ゴ ヤ シの pl ant at i on を作 ろ うとす る企 業 家 は 当分 現 わ れ て こな い だ ろ う。 わ た くLは主 と して 2 0数 年 前 の 記憶 を も と に書 い た。 サ ゴ につ いて は相 当詳 し く知 って い る と 自負 して い た が , 筆 を と って み る と不確 か な点 が 多 いO も う一 度 セ ラム を訪 れ る機 会 が あれ ば 8 ミリカメ ラを携 行 して ,筆 で は書 き表 わせ ない と ころ を写 して きた い と思 って い るが , あ の サ ゴ林 の薄 暗 い茂 み の な か で果 た して う ま く写 し出せ るだ ろ うか と心 配 して い る。 Ⅳ サ トウヤ シ sugarpa1 m( ArengasacchaT ・ i f eraorpi nnata)とパ ル ミラヤ シ (オ オ ギ ヤ シと もい う) pal myra pal m ( BoT ・ aS S uSnabe t i f er) ヤ シは生 育 が進 む と, そ の pi t h に減 粉 を蓄 積 す る もの で , 開 花 結 実 し始 め る と この澱 粉 は だ ん だ ん 花 , 果 実 に移 り, 糖 や脂 肪 そ の 他 に変 わ って ゆ く 。 開 花 は, コ コヤ シ, ア ブ ラヤ シ, poサ トウ ヤ シ, パ ル ミラヤ シ, ナ ツ メ ヤ シの よ うに長 年 月にわ た り次 々 と開花 して ゆ く場 合 ( 1 ycar pi c )と, サ ゴ ヤ シの よ うに一 定 の樹 令 に透 して は じめ て 開 花 結 実 し, 間もな く枯 死 す る monocar pi c)とが あ る。 i 殿粉 採 取 に はサ ゴ ヤ シの よ うな もの が適 す る。 サ トウ ヤ シは澱 もの ( 粉 を と る こと もあ るが, サ ゴ ヤ シに比 べ る と収 量 は は るか に少 な い。澱 粉 の 代 りに糖 分 を含 ん だ樹液 を と るの に は コ コヤ シ, ナ ツ メ ヤ シ, サ トウ ヤ シ,パ ル ミラヤ シ, ニ ッパ ヤ シ, クジ ャ クヤ シ ( ki t ulort oddypal m, Car yo i aur e ns )等 が適 してい る O この うちサ トウ ヤ シ とパ ル ミ ラヤ シは砂 糖 を と るの に最 も適 した もの で , 現 地 で は共 にサ トウ ヤ シ と呼 ん で い るが , 真 の サ e nga s ac c har i fe r aの万 で あ る トウ ヤ シは Ar O イ ン ドや マ ラヤ, 中 国 の南 部 等 に も分 布 す る が , 熱 帯の 多雨 地 帯 に属 す るス マ トラや ジ ャバ , ボル ネ オ, セ レベ ス, モ ル ッカ群 島 に特 に多 い。 パ ル ミラヤ シは タ イや カ ンボ ジア等 乾燥 期の 良 く続 くむ しろ雨 の比 較 的少 な い地 帯 に多 く - 3 5- 2 6 3 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 分布 して い るよ うで あ るが, 根 は水温 に強 く水 田の あぜ 道等 に も多 い。 セ ラム にい た とき, サ トウ ヤ シか ら砂 糖 や酒 を作 るの を監督 す る ことが わ た くしの仕事 の一 つ で あ った。 カ ンボ ジア の調査 で は, 各 地 でパ ル ミラヤ シの糖 液 採 収 を見 る ことが 出来 た。 menar i わ た くLは, セ ラムの原 住民 達 が ヤ シ酒 を飲 み, 歌 を うた い, メナ リー ( 原 住民 eaの の お ど り)を お ど って騒 いで い る情 景 が 目に浮 か ん で くる。 ダ マール (フタバ ガキ科 Shor 樹 脂 )をバ ナ ナの葉 で巻 い たた い まつ の光 は 弱 く,村 の周 囲 は真 黒 な森 で 囲 まれ て い る。 突 然 森 の一 部 がパ ッと明 る くな り,暗 い夜 空 に大 きな炎 の柱 の よ うに燃 え上 が る。 あ とはパ テパ チ と一 面 の火 の粉 が 明滅 して, た くさん の電灯 のつ い た町 を遠 くか ら眺 めて い るよ うに美 しいO 酒 で興 奮 した原 住民 が サ トウヤ シに火 をつ けた ので あ る。 サ トウ ヤ シは シ ュ ロの よ うに黒 い剛 毛 に包 まれ て い る。 この毛 が こ う して燃 え上 が るので あ る。夜 の暗 黒 に耐 え られ な くな った原 住民 は,時 々 こ う して サ トウヤ シに火 をつ けて楽 しむ悪 い癖 が あ る。 木 は枯 れ な い まで も相 当 に傷 む こ とだ ろ うO昼 間見 る と全 く汚 ら しい ヤ シで あ る0 8 01の 利用 法 が あ る とタ ミール の民 謡 は歌 って い るが, Rumphi usは ≠ポ ロの サ ロ ンを ま とった ヤ シ酒 中 毒 の土 人 の よ うに う らぶ れ た風 態 の ヤ シク と評 して い るが, この ヤ シか ら原 住 民 の好 む酒 が とれ る こと と思 い あわせ , ピ ック リの言葉 で あ る。 羽状 葉 もカサ カサ に ひか らび た感 じで灰 緑 色 を呈 し, 小葉 は少 しね じ れ, 清 々 と した感 を与 え ない。 幹 の上 か ら下 - と抽 出 して くる大 きな ち り払 い をぶ ら下 げ た よ うなか っ こ うの花房 も不休 栽 で あ る( 写 真 7)。 これ に比 べ,パ ル ミラヤ シは扇 を拡 げ た よ うに 美 しい掌状 葉 をつ け, す っき りとそび えて い る。 ア ンコール ワ ッ トに生 えて い る もの は壮 麗 な石 造 物 の美 しい ア クセサ リー とな り,水 田地 帯 に茂 っ て い る もの は単 調 な景 色 を ひ きた たせ て い る。 この よ うな姿 の違 い は あ って も, この二 つ の ヤ シか らは砂 糖 を と り, ヤ シ酒 をつ くる。 いず れ も 組 織 的 な栽 培 は して い な いが,原 住民 の生 産 と消 費 は大 きな量 に達 して い る 。 1 .糖 ・ , 夜 の 採 取 詳 しい植 物学 的 な記載 は省 くが, サ トウヤ シは 単 生 花 で,雌 雄 同株 ,パ ル ミラヤ シは雌 雄 異 株 で あ る。 サ トウ ヤ シは雄 の花 房 ( 原 住民 は これ を雌 の花 房 と間違 って呼 ん で い る) の み か ら樹 液 を と るが,パ ル ミラヤ シで は両 株 と も液 を とる。 サ ト ウ ヤ シは 7- 1 0年 生 ,パ ル ミラヤ シは 1 4-1 9年 生 で初 めて花 房 が抽 出 して くるので , そ の時糖 液採 2 6 4 -3 6- 写真 7 サ トウヤシ 四つの花房が見え る。採液は していない。 ( 南カ リマンタンにて正垣博士撮影) 佐 藤 :東南 ア ジアの ヤ シ 取 に取 りか か る。 サ トウ ヤ シはその後 お お むね 2- 3年 , パ ル ミラヤ シで は 30- 40年 間 も採液 が続 け られ る。 まず , 幹 に 1本 の竹 の は しごを縛 りつ け る.竹 の は しごは 足 をか け るた め枝 を 4- 5cm 板 して 抑 反った 1本 の太 い 竹 で あ るD樹 冠 の 古 い邪 魔 な薬 を取 除 き, 作業 に便 利 な よ うに足 場 を よ くす る フ ィ リピ ンで は, コ コヤ シか ら採 波 す る場 合 に,木 か ら木 - と 2段 に竹 を漉 し, こ 。 れ を伝 って 作業 す るので , 1本 1本 登 る必要 が な く能 率 が よい 。 花 板を, た だ切 って も樹 液 は 出て こな い。 それ まで に行 な う前 処理 が必要 で, この技 術 は二 足 も熟 練 を要 す る もの で, 秘伝 の よ うに され て い る。 イ ン ドで は この仕事 は特 別 の 階級 や家 族 に 限 られ て い る とい う 。 セ ラムで も この技 術 を持 った者 は 1村 に 1人 くらい しか い ない。 サ トウ ヤ シで は, 選 ん だ雄 花 房 につ いて, まず二 ,三 のつ ぼみ を ナ イ フで切 って みて, 切 Fは ナ イ フ が粘 つ けば い よい よた た き始 め る O 木 づ ちで果 梗 o jJ郡 司を撞 くまんべ ん な くた た く。 イ ン ドで は, コ コヤ シか ら採 液 す る場 合には 吉 日を選 ん だ り, つ ちは プチ毛 の庇 の大 腿 骨 で 作 り, 魔力 を増 す た め メ ン ドリの 血 と砂 を混ぜ で 廿 の空 洞 につ め る とい った よ うな い ろい ろの迷 信 が行 な われ て い る . た た く者 は 時 々つ ぼみ を少 し切 って, 樹液 の粘 り気 の状 態 をみ て い る。 こ う して 数 口∼十 数 日,も う これ以 上 粘 り気 が増 さな くな った時 ,果 房 を果 棟 の と ころか ら切 り落 とす 。 この時 は,果 梗 も柔 らか くな って お り, お そ ら く内部 の組織 は相 当 に破 壊 され て い るだ ろ う。 切r Jには- チ等 が群 が らな い よ うに,コ コヤ シの繊 維 な どで包 ん で お く。二 ,三 「lして , 先 を さ らに切 りとる と, い よ い よ糖 液 が 滴 り落 ちて くる 。 パ ル ミラヤ シは少 し く操 作 が違 う。 雌花 1 j ] ・ で はつ ぼみ が クル ミ大 とな った と き,直 径 2- 3cm の丸 い棒 2本 の 一蹴を結 ん だ道 具 を 用 い る。 この棒 の冊 に挟 んで押 さえ-) け るO この作業 を約 3[ : lF H F ] 続 け る と, その部 分 が さび色 とな って L j J ・ の先 端 10cm くらい を切 りと る。 そ して よ く液 が 打 ぼ く傷 を受 けた よ うにな る 0 4 日 目に花 f 出 るよ うに,手 で つ ぼ み の部 分 を こす る 。 この 作業 を また 4 Hほ ど続 け, さ らに切 口を少 し切 りとって 容 L J 封二受 け る。 雄 花 j ) , f ・ も掛けと房 と同様 な処理 をす るが , 違 う点 は 1回に 1花房 の うち 2個 の ジ : Lウテ ィ花 につ いて C / jみ行 な う。 2本 の棒 もや や 扇平 で あ る。 これ で ジ ュウテ ィ花 を 写 真 8)。 その圧 力 のか け方 に コツが あ るよ うで あ 挟 ん で此闘Eと同様 ダ イダ イ と締 めつ け る ( る. 3 HE ]に ジ ュウ テ ィ花 の端 を 5- 6cm 平 らに切 り, 2本u jジ ュウテ ィ花 を 1個 の容 器 に受 けて お くo それ か ら 3- 4 E 川根ま毎 F 1切 Ll を薄 く切 l _ )と り,手 で 花を絞 るよ うに して 波の 山 る の を促 す 。 この よ うに して も, 4割c j _ )木 は液 が うま く出 ない と) 京住1 引 まみ て い る。 1本 の木 か ヤ シ と同様 にた た くこ と もあ る。 コ コヤ シの場 合 は仏 炎 か ら抽 出す る前 に仏 灸 を縛 り, その上 か らた た く。 なぜ この よ うにた た い た り,締 めつ けた りす る前 処理 が必要 なのか,科 学 的 な説 明 は見 当た らな いが. Ochs eは果 梗 に炎 症 を起 こさせ る と説 明 して お り, Copel andは この液 の挺 出 は 内 - 3 7- 265 東 南 ア ジア研究 第 5巻 第 2号 部 か らの圧 力 によ る もので は な く,傷 自身 の活 力 に よ る, と述 べ て い る。 わ た くLは enzym の面 か ら 究 明 して ゆ けば 解 明で き るので は ない か と考 えて い る。 日本 の シ ュ ロで も これ らの処理 をす れ ば き っ と糖 液 が とれ るだ ろ う。 切 口につ って糖 液 を受 け る容 器 は, セ ラ ムで はサ ゴ ヤ シの葉 柄 の基 部 の広 い と ころ を薄 く剥 い で二 つ に折 り,縁 を トウで しっ g か りとぬ い合 わせ た もので, 1個 に 5-6 入 る。絶 対 にぬ い 目か ら液 の漏 れ る ことが な く, 軽 くて扱 い よい。 ヤ シ酒採 取 には節 写真 8 パル ミラヤシの雄花房に糖液採取の前処理 を している。 この作業を木の上で行なうの であるが,特に分か りやすいように地上で 実演 している。( 筆者撮影) を抜 い た長 い竹 筒 を用 い るが, これ は よ く洗 う こと も, 消毒 す る こと も出来 な いので,糖 液 の 0-1 5c m,長 さ 40-50 c m 発 酵 が早 く,砂 糖 を作 る場 合 には不 適 当で あ る。カ ンボ ジア で は直 径 1 の竹 筒 ( 外 皮 を剥 ぎ と り軽 くして あ る)に トウの ひ もをつ けた もの を用 い る。 容器 は よ く洗 い, 煙 や火 力 で乾 燥 をか ね て滅 菌 消毒 をす る。 イ ン ドや マ ラヤで は容器 の 内側 に石 灰 を塗 って発 酵 を抑 え る こと もあ る。朝 夕 2回木 に登 り,容 器 を交 換 し, 切 口を その都 度 薄 く切 りと り, 液 の 溶 出 を よ くす る。 セ ラムで は 自然 生 の ヤ シか ら採 液 す るの で,森 の 中 を相 当遠 くまで巡 って 集 め な けれ ば な らな いが, カ ンボ ジア で は お そ ら く植 え た ので あ ろ う, ヤ シは い た る と ころに あ 0個 り,特 に家 の 周囲 に多 い ので ,採液 の 能率 が よい。 パ ル ミラヤ シの場 合 , 1人 1日お よそ 3 の竹 筒容 器 を朝 夕交 換 す るが, これ は 1 5-20本 の木 に登 る こ とに な る。糖 液 の組成 につ いて は Chi l d,秦 サ トウ ヤ シやパ ル ミラヤ シの もの は見 当 た らな いが , コ コヤ シで は次 の通 りで あ る ( 考文献)0 比重 ( 84o F)1 . 0 58- 1 . 077 仝 固形物 1 5. 2-1 9. 7g/1 00 cc 庶糖 1 2. 3-1 7. 4g/1 00c c 灰分 0. ll -0. 41 g/1 00 c c 蛋 白質 0. 2 3-0. 32g/100 c c 暑 い熱 帯 の ことで あ り,糖 液 はす ぐ発 酵 を始 め るので , これ を防 ぐため, あ る種 の苦 い樹 皮 や木 片 を入 れ る。カ ンボ ジア で は pope l( Vat i c ahar mandi ana)とい うフタバ ガキ科 の樹 皮 を 使 う。樹 皮 中 の タ ンニ ンが有 効 な よ うで あ る。 収 量 は木 に よ って大 差 が あ るが, これ は技 術 や環境 ,採 液 の時 期 等 に よ る もので あ ろ うが, 木 の遺 伝 的 な素 質 に もよ るだ ろ う。原 住民 の き き取 り調査 だ けで は全 くわ か らない。 サ トウ ヤ 266 - 3 8- 佐藤 :東南 ア ジアの ヤ シ シ は Ber negg に よ る と, 1柁厨 は 2- 5カ月 間毎 し 12 -47の液 を 出す。 1年 に 3- 5本 の花 房 を順 次採液 して ゆ くので 1本 の木 で 5 0 0 -6 0 0 7とな る。ha当 り1 00本 ,砂 糖 の歩 留 り1 0% と す れ ば 50 00-6000kgの ヤ シ砂糖 が とれ る ことに な る。パ ル ミラヤ シは 11-1 2月 か ら翌 年 の 4 - 5月 の問, す なわ ち乾燥 期 に採液 す る0 5月以 降 は s ucr os eが gl ucos eにな るので砂糖 の製 造 には適 さな くな る 。1本 の木 か ら 1日 1任肩 2 7 ,2花 房 を採 液 す る とす れ ば 5カ月で 6 0 0 /と な り, ほぼサ トウヤ シに等 しい。糖 度 はわ た くLが カ ンボ ジア で handr ef lact omet erで測 った と ころに よ る と 9-1 2, O b '(5本 の木 に つ い て) で あ った。 コ コヤ シで は採 液 量 は, これ ら二 つ の ヤ シよ り大 分少 な い よ うで あ る。 2. 砂 糖 の 作 り 方 新損 な液 は甘 いが, その ま まで は ほ とん ど飲 まれ ない.頂 住 民 は た くさん飲 む と頭 が痛 くな る とい い, 体 に毒 だ と もい う。 ミツパ テな どが入 って い るた め粗布 で こ して , 鉄 鍋 に入 れて煮 る。 沸 騰 す るまで は強 火 で , そ の 後 ・ : ま弱火 で煮 つ め る。 浮 か / Lで くる不 純 物 は泡 とい っ しょに 何 回 もす くい取 る。 モル ッカで は泡 の加減 をみて いて , い よい よ煮 つ ま って きて ,大 きな泡 が canar ynutorJavaal mond, Cananum c o mmune )の実 を 盛 上 が るよ うにな る とカナ リー樹 ( 細 か く砕 い た もの を一一 一 つ まみ投 げ こむ 。 この泡 は た ち ま ち浮上 が らl i :くな り,小 さな泡 とな る. カナ リーの実 は ち ょうど クル ミの よ うに 油 が 多 く, 消泡 剤 の役 をす るわ けで あ る C カナ リーの 他 に ク ミリ ( kemi r iorcandl enut ,Al e ur i t i smo l uc c ana) の実 を砕 いて用 い る こと もあ るO カ ンボ ジアで は この よ うな もの は 用い られ て い な いO ジ ャバで は煮 つ ま った もの を竹 筒 に流 しこみ,口乾 か 火力乾 燥 す る と,砂糖 が 固 ま り,竹 筒 が 裂 け るよ うにな る 。 しか し一 般 には, ココヤ シの殻 の発芽 孔 の あい た方 の半 分 を用 い る。漏 ら ない よ うに孔 に木 の葉 を 1枚敷 い て , この上 か ら濃 縮糖液 を ひ し ゃ くで す くって流 しこむ。 銅 の液 を全 部 流 しこん だ頃 には,最 初 の もの は間 ま って お り,昭 次 取上 げて底 の発 芽 孔 に外 か ら 口を当てて プ ッと吹 くと容 易 に砂糖 の塊 りが取 出せ る. その手 噺 と手 際 の よ さは, 日本 の店豆 l ' i で よ く菓子 を焼 いて い る職 人 の巧 妙 さと変 わ らない。 この焦茶 色 のお わん の形 を した砂 糖 を 2 個合 わせ て丸 い玉 に し, バ ナ ナ の葉 で包 む。 これ をわ ん糖 ( gul amanko)また は ,gul aJava, gul aMal acca等 ともい い ( gul aは砂糖 , mankoはおわ ん の意 味),市 場 で売 って い る。 カ ン ボ ジアで わ た くしの見 た もの は,鉄 鍋 で煮 つ ま った もの を,女 が ひ らた い木 の棒 で強 くか き回 して い た。 これ は甘 燕 か ら黒糖 を造 る場 合 と同株 , 結 岸1 校 を 作 って い るので あ るO こう して 出 来 た ヤ シ砂糖 を石 油缶 に入れ て華 僑 に売 る 。 華 僑 は これ を回転根 の よ うな一 定 の形 に して市 場 に出す 。 以前 は ヤ シの葉 を 幅 3 c m くらい に裂 いて帝二 径 1 0 cm くらい の輪 を作 り, 板 の 上に並 べ , これ を指 で押 さえて底 か ら柔 らか い糖 液 が漏 らな い よ うに して流 しこみ, 日蔭 で乾 か し, 1 0偶 1包 と し, ヤ シの葉 で くるんで い た とい われ るが、 市場 に 出 うな形 を して いるが, 華 僑 が加工 した ものばか りの よ うで あ る 。 ー3 9- て い る もの は, これ と同 じよ これ を s c ars r acとい う。 色 2 6 7 東南 ア ジア研究 第 5巻 第 2号 は淡黄 色 で あ る。水 分含 量 が多 い ためか, す ぐ溶 け出 し,発 酵 し,か び る。 ココヤ シ糖 液 か ら 砂糖 を造 るイ ン ドの小 工場 で は明ぽ ん を入 れて不 純物 を除 い た り,濃縮液 に結 晶糖 を加 えて結 晶を促進 させ るよ うな方 法 も行 なわれ る。 カ ンボ ジアで は濃 縮液 を土 が め に数 カ月貯 えて結 晶 s ugarcandy)を造 る こと もあ る。 ヤ シ砂 糖 はいず れ も同 じよ うな風 味 を もち,甘庶 の黒糖 糖 ( とは違 って い る。原 住民 は料理 に用 い るよ りもむ しろ種 々の菓子 に使 い, またはその ま ま食 べ て い る。 コー ヒや紅茶 に入 れ るの には適 さない。 糖 液 は短 時 間で発酵 す るので大壷 の原料 を広 い地 域 か ら集 め る ことは難 し く, ヤ シ砂糖 の製 造 を工業化 す る ことは ち ょっ と考 え られ ない。 3. ヤ シ酒 t o ddy,a r r ae k 糖 液 は採 取 後短時 間で発 酵 し, そ の まま酒 とな る. これを セ ラムで は s i gelとい うが, 一般 oddy と呼 ばれて い る。s i gelは またサ トウヤ シその ものの呼称 で もあ る。 白 く濁 り, か には t す か な甘 味 と苦 味 が あ り,一 種 の爽快 味 ももち, いわ ゆ る ドプ ロクで あ る。 さ らに発 酵 が進 め ば良質 の酢 がで き る。 カ ンボ ジアで は ドプ ロクに多少 加工 をす る ことが あ る。一 一度沸騰 させ て かめ に入 れ,パ ル ミラヤ シの葉 柄 の 1片 と, とげの多 い トウの小 さい根 を 1- 2本入 れて お く と早 く発 酵 す る。 これ を24時 間後 に こ し,煮 て発酵 を抑 えて売 る。 なお発酵 を お こす前 , また は途 中で い ろい ろの香味料 を入 れ る ことが あ るO これ は商人 が一 種 の秘法 と して い るが,一 例 car damon, El e t t ar i ac ar damo mum) ,シ ョウガ, コシ ョウ, ウ コ ン を上 げ る と, シ ョウズ ク ( 等 を粉末 に して い ろい ろの割合 で混ぜ た ものを入 れ る。 しか し街 頭 で竹 筒 を並 べて売 って い る ヤ シ酒 は加工 されて い ない ものが多 い。 ヤ シ酒 は ほ とん ど 1年 中売 って い るよ うで あ る。 原 住民 や華僑 は ヤ シの糖液 の発 酵 した ドプ ロクを ドラム缶 に入 れ,長 い竹 筒 をつ けて冷却 管 opiと称 して い るが, 一 と し,蒸溜 す る。 ア ル コール分 の多 い酒 とな るo セ ラムで は これを s r ack の名 で知 られて い る。 イ ン ドや マ ラヤで は多 くコ コヤ シか ら, ア ラブで はナ ツ 般 には ar r ackを造 って い る メヤ シか ら ar 。 サ トウヤ シもパ ル ミラヤ シもひ じ ょうに多 く見 られ るが,採液 されて い るの は一 部 のよ うで, その意 味で は ヤ シ砂糖 や ヤ シ酒 の潜在 生 産 量 は大 きい といえ よ う。 精 液採 取 か ら砂糖 や酒 の製 造 の工程 は原 始 的 な方 法 で行 なわれて い るよ うに見 え るが, この 間 には極 めて科 学 的 ない ろい ろの手段 が と られて お り, まだ科学 的 に解 明 されて い ない点 の あ る こと も見逃せ ない。樹液 の採取 は名人技 とはいえ,何 らか の科学性 の あ る もの と思 われ る。 容器 の消毒 , 消泡剤 ,結 晶核 の形成 等 は近 代科学 において広 く用 い られて い るの と原理 は同 じ で あ る。わん糖 の型 ぬ き も簡単 で実 に巧妙 で あ る。一見 全 く原始 的 な よ うで あ るが, その環境 に応 じた最 も合理 的 な もので あ ろ う。一概 に軽視 して しま うことな く見 なお きな ければ な らな い だ ろ う。 2 6 8 - 4 0- 佐 藤 :東 南 ア ジア の ヤ シ 4. そ の 他 砂糖 や 酒の他 に, これ らの ヤ シには い ろい ろ利用 の 通 が あ るが, そ の一 端 を上 げ よ う。 サ トウヤ シの幹 を包 んで い る黒 い繊 維 で ロープや ブ ラシが 作 られ る。 果 実 をむ いて 砂 糖潰に して つ まみ もの にす る とい うが , わ た くLは原住民 が そ の よ うな もの を 作 って い るのを 兄 た こ とは ない。生 長点 す なわ ちヤ シの芽 は コ コヤ シと同様 高級 野菜 とな る。 幹 の周縁 部 の材 は ひ じ ょうに堅 い。原 住民 は樋 (とい)にす る。 わ た くLは これで 作 った は し箱 を も って い る。黒 地 に 斑 紋 の あ る美 しい こ0 )材 で ステ ッキ も作れ るが, もっ といい ものが 作れ そ うで あ る。 大 半 o jも の はいつ まで も朽 ちず に, が い骨 の よ うに黒 い姿 , J i : 森 の 中 に さ ら して い る。 パ ル ミラヤ シの葉 は, サ ゴ ヤ シの葉 と と もに屋 根 ふ き材 料 のア タ ップを編 む の に最 も優 れ た もので あ る。未熟 の果 実 か ら内膳 乳 を取 りだ し, そ の寒天 状 の丸 くて や や ひ らたい玉 を水 につ けて 克 って い る. コ コヤ シの寒天 状 の 内壮乳 に似 て い るが , さ らにおい しい食 べ もので あ る. しか し,成熟 す る と堅 く,コプ ラの よ うに脂 肪 は含 まれ て い ない 。s he1 1は活性 炭 の頂 料 に な る か もわ か らない が昆二 産はL i J T 来 ない。捨 て て全 く顧 み られ ない。 しか し,才色芽 F l lの長 い幼 根 は珍 味 と され て い るが, タ イや カ ンボ ジア の原 住 民 が利用 して い るのを わ た くLは見 た ことが ない 。 V ナ ツ メ ヤ シ dat epal m( Phoeni x dact yt i fera) コ コヤ シが熱 帯 の海 辺 に見 られ るよ うに, ナ ツメヤ シは乾燥 地 帯 の シ ンボル で あ る。5 000年 の昔 よ り現在 の イ ラクの人 々に よ って栽 培 されて きた最 も古 い作物 の一 つ で あ る。 そ の果 実 は f l 近 東 か ら北 ア プ リか こ至 る40 00万 の住民 の主 食 の一 部 にな って い 現在 もな おパ キ ス タ ン以西 T る。炭水 化 物 の他 に脂 肪, 蛋 白雷 , ビタ ミンを含 んで い る。 ア ラブの社 会 で は, ナ ツメヤ シの 乾 果 と羊 の ミル クで 客 を もて なす ことが礼 儀 と されて い る。餌料 と して も価値 が高 く, 手 にい っぱ いの乾 異 は 1こん の乾 草 よ りも羊 の肥 育 に効 果 が あ る といわ れて い る。 今 まで述 べ た ヤ シと異 な り, 極 端 な乾燥 気 候 を好 む。年雨 量 1 00 mm に も満 た な い よ うな砂 漠 で , 昼 間 は 40oC を越 す よ うな 高 温 , 夜 間 は OoC 近 くに も下 が るよ うな と ころで 栽 培 され る。 この よ うな土 地 の空 気 は極 度 に乾 燥 して い るが,決 して水 の ない不 毛 の地 に生育 す る とい う もので は ない 。 オア シスや 川岸 で 豊富 な水 の得 られ る と ころで栽 培 され る。 この よ うな地 域 は西 パ キ スタ ンか ら以西 ,地 中海 に至 る 中 近 東 , モ ロ ッコに至 る北 ア フ リカに見 られ, こ こで 8% が 占め られ て い る。 カ リフ ォル ニア や メキ シ コに もわず か なが ら栽 培 され 世界 の生 産 量 の9 て い る。 周年 多雨 か半 年 は雨 期 の あ る東南 ア ジア には全 く栽 培 され て い ないO も しこの よ うな と ころで栽 培 す れ ば,栄 養 往長 は旺盛 で あ るが結果 しな い。 イ ラ ンで は 山 の雪 どけの水 が川 に 氾濫 す る とき,ヤ シの周囲 に低 い堤 を設 けて これ に水 を調え る。水 が土壌 に十 分 吸収 され る と, こ こを耕 して コムギや野菜 , 飼料 作物 を植 え る。深 層 に入 った水 は ヤ シに吸収 され る。 こ う し て これ らの作物 の収穫 を あ げ,吐 胃 を維持 す る 。 川 の ない と ころで は,水 は 漕削 用 の配 水 管 に - 41- 269 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 よ って遠 くの水 源 か ら導かれ, または, 井戸 を掘 って濯翫 す る。 よい収穫 を上 げ るため には 1 000-1 500 mm/年,最 も暑 い時期 には 1 20-1 85mm/月 の水 が必要 と言 われ る。 樹 冠 には 1 00-1 20枚 の葉 がつ いて お り,他 の ヤ シに比 べ て著 し く多 い。 ナ ツメヤ シの樹 冠 を 特 に黒 々と感 じるのは このためで あ る。 1年 に 1 0-1 2枚 の葉 が展 開 して くるので,葉 の生命 は 約1 0年 も続 くこ とにな る。 雌雄異株 で あ り, サ ゴヤ シと同様 普通 は吸枝 によ る栄 養 繁殖 で あ る。果 実 は直 径 2. 5c m,長 さ 5c m で , 1果房 に 1 000-1 400個 つ く。 果 房 は 25kg に達 す る もの 0kg くらいで あ る。カ リフ ォル ニアで は 1年 に 1本 の木 で 1 00 kg の収量 が あ もあ るが普 通 は 1 るが, ア ラブで は平 均 20 kg にす ぎない。 これ は主 と して濯 離水 の不足 と濯概方 法 や 園 の管理 の拙劣 さによ る といわれ る。収穫 期 は周年 で あ るが,土壌 水 分 等 の影響 によ り,主 収穫 期 が あ る。昔 か ら適 期 に雄 花房 を切 って雌花房 に結 びつ けて お くと,結果 が良 い と信 じられて きたが, 今 日なお イ ラクの人 々は この方 法 を実行 して い る。 これ は人工授 粉 の最 も古 い技術 で あ ろ う。 またア ラブの栽 培家 は, あ る特 別 の株 か ら花 粉 を とる習慣 が あ るが, これ は経験 か ら, あ る木 の花 粉 が他 の木 の もの よ り果 実 の収 量や品質 ,熟 期 に好影響 を与 え る とい うことを知 って い た か らで あ る。 この ことは , Swi ngl e( 1 928)が初 めて メタキ セ ニア の現 象 と して学 界 に発表 し, この事 実 を科学 的 に証 明 した。 また,交配 不親 和性 の例 も知 られてい る。 果 実 が黄赤色 に変 わ りだ した ころが栄養分 の一番 多い時 で, ア ラブの住 民 は この時 の ものを 食 べ るが,非 常 に渋 く,普通 の人 には食 べ られ ない。乾燥 させ る と,渋 味 が な くな り甘 味 を増 して くる。 これ は貯 蔵 が き く。 ち ょうど干 柿 の よ うで あ るが, わ た くLは干 柿 の方 が は るか に うまい と思 う。 ナ ツメヤ シは果 実 の他 に, い ろい ろの ものをア ラブの原 住民 に提 供 して くれ る。 r ac kをつ くり,核 肉は焼 いて コ- ヒ- の代 用 と し,池 もとれ る。 油粕 果榎 か らと った液 で ar は飼料 とな る。林 木 の少 ない これ らの地方 で は材 は燃 料 や柱 に使 われ る。葉 は屋根ふ き材料 や, 編 んで マ ッ トやバ スケ ッ トを作 るの に用 い る。 また過 越節 ( Pas s over )や聖 き木 の主 日 ( Pal m Sunday)の よ うな宗 教 的 な祝 日にキ リス ト教 徒 や ユ ダヤ教徒 の飾 りに使 われ,回教徒 の祝 日の 門 の飾 りに使 われ る。薬草 削こ相 当す る繊 維 か らは ロ-プを編 み,生長点 は野菜 と して サ ラダそ の他 の料理 に使 う。 この よ うに, ナ ツメヤ シは ココヤ シとひ じょうに よ く似 た利用 の道 が あ り, 砂漠 の民 の生活 に と って欠 くことの出来 ない もので あ る。 ピ ラ ミッ ドと ラクダ とヤ シの組合 わせ で 日本 人 に もナ ツメヤ シの イ メー ジは浮 か んで くるだ ろ うが,乾 采 は あ ま りな じみが ない。年 間400 0トン程 度 を輸入 して い るが,年 に よ る変異 が大 きい。数年前 , イ ラ ンが片貿易 を是 正 す るため 日本 に大 量 のナ ツメヤ シの乾采 の輸入 を要請 し て きた ことが あ る。急 に需要 が 伸 び るもので もない。生産 地 か ら輸 出 され る量 は 30万 トン近 い が,年 によ る伸 びは ほ とん どない。 ア ラブの民 が現在 す べて満 ち足 りて い る とは思 えない。 そ の意 味で, ア ラブの世 界 の中で今後増産 が 必要で あ ろ う。 2 7 0 -4 2- 佐藤 :東南 ア ジアの ヤ シ 東 南 ア ジア を: / l i ; i いて, わ た くLは まれ に これ ら しきヤ シを見 か け る ことは あ るが, それ は た だ風 致 木 と して庭 や 公 鼠 に 植 え られ た もの にす ぎない。 残 念 なが ら この ヤ シにつ いて の 経験 帆,体験r J 勺知 識 は ない。 \ ノ ' l ビン ロ ウ bet el ,pi nang( ArecaCat echu) 肯 空 に 細 く1 主っす ぐに 伸 び た幹 , か っ こうのい い羽状 葉 , コ コヤ シと と もに熱 帯 の美 しきを 象徴 す るヤ シで あ る( 写真 L 主9). 台湾 , li 一 国南部 か ら東 南 ア ジア,イ ン ドを経 て, マ ダ ガ ス カル , ア フ リカ0 )一 部 に至 る広 い範 囲で , 男女 を問 わず大 人 は歯 が赤 く染 ま り,所 か まわず赤 いつ ば を 吐 く。 舗 装 され た都 会 の 街 路 や て い し脚 の下 の道 に も赤 いつ ば の 跡 が散 乱 して い る。 しか し, この ごろは バ ンコ クの よ うな大 都 会で は,赤 い 日を した 申 年: ・ の人 は見 か けな い し,赤 いつ た人 が多 い。 道端 で バ スを待 って い た老 婆 が荷 物 の 中か ら小 さな箱 を取 出 した 。 車には淡 黄緑 の葉 っぱが数 枚 と クル ミ大 の果 実 が二 ,三 個 ,小 さな ナ イ フ.飾 り物 を施 して栓 を した小 さな容 器 ,小 石 大 の黒 い塊 り, これ だ けが入 って い る 。 老婆は まず果 実 を 1個 取 出 し. ナ イ フで ゆ っ くりとて い ね い に,楽 しむ よ うに皮 をむ き,淡 褐 色 を した 内 肺乳 を半 分 に割 って 口-入 れ た。次 に葉 っぱを 1 枚取 出 し,小 さな容 器 の栓 を抜 いて トン トンと指 で た たい て 白い粉 を葉 の上 に のせ , さ らに黒 い塊 りの小 さなか け らものせ , 包 んで 口に入 れ た。 そ して も ぐも ぐと噛 んで い たが, や がて チ ュ ッとつ ばを飛 ば した。赤 褐 色 のつ ばが飛 んで 地 面 を汚 な く染 め た。 この果 実 が ビ ンロウの実で あ る。 あ の 美 しい ビ ンロウの イ メ ー ジ とは お よそ違 った もの で あ る。市 場 に行 くと生 采 の もの,水 で 煮 て薄 く 写真 9 ビ ン ロ ウ ( Ta na hAi rKi t aより) 切 って干 した もの, さ らに これ に多少 加工 した もの な どを売 って い る。淡 縁 の葉 っぱは キ ンマ ( be t e lvi ne,Pi pe rb e l l e )で ,農家 の庭 先 の市 射 日光 の強 く当 た らない と ころ に支柱 を立 て て 自 家 用 に植 えて い る。 ココヤ シの葉 を切 って きて少 しR蔭 をつ くり, 規模 をや や大 き くして植 え, 市場 - 出す 農 家 もあ る。 初 めて熱 帯 の調査 に来 た人 が コシ ョウ とよ く間違 え る の も当然 で コ シ ョウ科 の作物 で あ る。市 場 に行 くと何 枚 も重 ね た葉 を売 って い るが, これ は収穫 した もの を香 味 を増 す た め 数 時 間積 重 ね て少 し 発 酵 させ た もので あ る。 町 はず れ の通 りに小 さな机 を 出 し - 43- 271 東南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 て, この葉 っぱを何 枚か, ときには タバ コを巻 くカサ カサ した丁 字 の葉 っぱ も並 べ て売 って い る。 ち ょっと哀れ な よ うな気 もす るが,本 当の紙 幣を払 って葉 っぱを買 って ゆ く者 が い るか ら ユ ーモア も感 じられ る。 白い粉 は石灰 で, セ ラムで は貝殻 や生 サ ンゴを焼 いて作 る。 タイや カ ンボ ジア の市場 には赤 い練 粉 を売 って い るが, これ は石 灰 に着 色 した もので あ り, キ ンマの葉 cut ch orcat echu) っぱに ち ょっ と塗 って噛む。 黒 い塊 は マ ング ロー ブか ら抽 出 した カ ッチ ( で あ る. これ ら一 式 の道具 はいつ も手 離 さず に持 って いて,時 々ゆ っ くりとビ ンロウ噛 みを た しなむ。各地 で多少 違 い, セ ラムで はキ ンマの葉 よ りも花 穂 (ジ ュウテ ィ花) を多 く使 い, カ ッチは用 い ない。 時 には タバ コもい っ し ょに噛 む。 セ ラムで親 しか った老村長 は小 さな容器 に この三 つ の ものを入 れ,棒で たんね ん にす りつぶ して, す っか り歯 の抜 けた 口へ は う りこんで いた。 わ た くLも以前何 度 か ビ ンロウ噛み をや った ことが あ る。 ビ ンロウのや に臭 さ, キ ンマ が舌 にひ りひ りと し, 口中は焼 けるよ うな感 じで あ り, 噛 めば噛む は ど ビ ンロウの実 が小 さ く 砕 け, ザ ラザ ラと してつば を吐 く。 ま ざれ もな く赤 いつ ばが 出た。 しか し原 住民 の よ うに うま くつ ばは飛 ば ない0- 度 わた くLは頭 が フ ラフ ラし出 した ことが ある. ち ょうど何 か に酔 った ki l lに よる と,この よ うな感 じで あ った 。ビ ンロウの実 に酔 った のだ。麻薬 的作用 が あ る0Bur よ うな ビ ンロウは悪 い種類 だ と して い る。乾燥 した ビ ンロウの実 で は このよ うな作用 は ない よ うで あ る。 ビ ンロウ噛み の風 習 がいつ まで 続 いて ゆ くだ ろ うか。少 な くとも都会 に住 む者 の間で は ます ます す たれて ゆ くだ ろ うが,農村 で は根 強 く残 って ゆ くだ ろ う。 タバ コと違 って キ ンマの栽 培 出来 ない温帯 - の普及 は ほ とん ど考 え られ ない。喫煙 が体 に少 しも益 しない のに反 して ビ ンロ ウ噛 みは駆 虫 的効果 が あ り,歯 や歯 ぎんを丈夫 にす る といわれて お り,そ の科学 的根 拠 もあ る。 しか し過 度 にな る と胃腸 を害 し精 力 を減退 させ る。 ビ ンロウの実 は生 薬 と して も多 く使 われ る。 FAO の貿易 統計 にの る ほ ど世 界 的 な産 品で は ないが, ビ ンロウ噛 み の風 習 の ある国 の問で は乾燥 した ものの取 引 もあ る。以前 は 日本 で もビ ンロウを歯 みが きの-原料 と して使 って いた。 幹 の周縁 部 の堅 い材 は磨 くと美 しい。桂 離宮 の桂 棚 の何 か に使 われて い るよ うな説 明を聞い た ことが あ る。 Li v i s t o nas ub gZ o b o s a)で あ り, 同 じヤ シ科 で あ るが,これ は 宮 崎県 青 島にあ るのほ ど ロウ ( 掌状葉 で,亜 熱帯 か ら温帯南 部 にみ られ るヤ シで あ る。 ビ ンロウの優 雅 さも美 しさ もないが, ヤ シといえば何 か ロマ ンチ ックな感 情 を もつ 日本 人 に と っては け っこ う観光 価値 は あるよ うだ。 Ⅶ トウ r at t an( CaE amuss pp.その他) トウは2 00種以上 に及ぶ蔓性 の ヤ シ科植 物 の総 称で あ るが,利用 されて い る トウは Ca l amus 属 の もので あ る。幹 や葉 に とげが あ り, これ を他 の樹 木 にか らめて そ の樹 冠 の上 へ と伸 びて ゆ 2 7 2 -4 4- 佐藤 :東 南 ア ジアの ヤ シ く。 密林 に適 応 した植 物 で あ る。 トウを栽 培 す る ことは ない。密林 に 自生 す る ものを採 取 して くる。乾燥 し, 太 い ものは磨 い て そ の ま ま トウいす等 の菅 に し,基部 の節 の詰 ま った ものは ステ ッキ に作 る。細 い もの は丸 の 肌 、る まま」 。 太 い もo jを裂 いて 肉を削 り,撒 くして各種 のか ごを編 む。原 住民 は家 を建 て る際, 柱 と柱 を結 わえ る ujに トウを使 う 。 弾力が あ 吊 重 税 で ,針 金 0 )よ うに さび る心配 が ない。 セ ラ ムで は 野猪 と りのわ なや 弓 のつ るに使 って い た。密林 に入 り裸で, とげ の多 い トウの採 取 は な か なか冊 の折 れ る仕蹄 こ達 い ないが, トウだ けで は な く,一 般 に原 住民 は栽 培 す る労苦 よ りも 自然 生 の ものを とる労苦 の方 を い とわ ない。安 い価 格で 仲買人 に買 われ , 集 めて 輸 出 され る。 新 しい合成 材料 の開発 に よ って 高 価 な トウ細 工 品 は抑 え られ るだ ろ うが, そ の独 特 の風 格 はや は り請 え られ るだ ろ う。 トウいす に腰 か けて涼 を とって い る人 は多 いが, そ の トウが熟 , 精 の密 林 か ら原 住民 が苦 労 して採 取 し,何 人 か の手 を経 て きた もので あ る ことを感 じる人 は少 ない だ ろ う。 1 Ⅲ ニ ッパ ヤ シ ni papal m (NI pafruti cans) 川岸 の,特 に海 に近 くな って水 の流 れ が ほ とん どな くな り,満 潮 時 には海水 が逆 流 して くる よ うな と ころ, こ こは川 の奔 流 も,海 の騒 が しさ もな く,照 りつ ける太 陽 の下 で静 か に眠 った よ うに よ どんで い る と ころで , ここに葉 を水 に差 し並 べ た よ うに! 上え茂 って い るのが ニ ッパ ヤ シで あ る。 この ヤ シは幹 が地上 に現 われ て こない ほ ど短 い 。 原 住民 の家 を ニ ッパ - ウス とい う J j材 料 に な る。 花板 を切 って糖 液 を とる とい う ことで あ るが, くらいで ,小 葉 は屋 限ふ きや 壁c わた くLは一 一度 も見 た ことが ない 。 生 えて い る と ころが容 易 に近寄 れ ない の と, 渉 出 穂液 の 量 が少 な いか らで あ ろ う。 集果 で あ るが容 Ll J に離 れて一 つづ つ の果 実 にな る。海 岸 の波 打 ち際 に 果 実 が よ く転 が って い る。一 端 が さ さ らの よ うに な って い る。 そ の繊 維 の束 は ひ げそ りの ブ ラ シにな る。 セ ラムの 淘 岸で拾 った この果 実 の ブ ラシを わ た くLは 今 も持 って い る。 ほ とん ど利 用 す る ことの ない この ヤ シは, 陸 か ら流 され て きた養 分 や シル トの集積 す る と こ ろで , 渥 -流 れ去 る成 分 を食 い 止 め, これ を利用 して繁茂 して い る生態 的 には最 も優 れ た植 物 が,地 形 的 に人 の利用 す るには誠 に不 便 な と ころに壬 生えて い る。 Ⅸ サ ラ ッカs al ak ( ZaZ accaedul i s) ニ ッパ ヤ シと同 じよ うに幹 が地上 に 山て こない。果 実 は地 際近 くにで きる。 トカゲ の皮 に包 まれ た よ うな ピ ンポ ンの玉大 の果 実 は ジ ャバ の庶民 の果 物 で あ る。 ス ラバ ヤか らマ ラ ンへ ゆ く 汽 車の なかで , ジ ャバ の人 か ら二 ,三 個 も らって食 べ た のが後 に も先 に もた だ 1回 だ けだ った が, 咋 l ]0 )ことo jよ うに見 えて い る。 そ の味 のす ぼ ら しさか らで は ない . ま きを た いて走 る汽 ー 45- 2 7 3 東 南 ア ジア研 究 第 5巻 第 2号 車 の窓 か ら飛 び こんで きた大 きな火 の粉 で ズ ボ ンを焦 が した 3等車 の中 の思 い 出 とと もにで あ る。少 し く渋 味 と くせ のあ る甘 味 と香 り, わた くLには おい しい果 物 とは思 え なか った。 babas s u,Or b i gn yaMar t i ana),葉 か らろ うの とれ るカ 南米 には油脂 の とれ るババ スヤ シ ( car naubawaxpal m,Co Pe r ni c i ac e r i fe r a) ,中南米 には ク リの よ うな味 を ル ナ ウバ ロウヤ シ ( i baye( peachpal m,Gu i l i e l maut i l i s )等 が あ るoいずれ もその経済 価値 ,将 来性 は大 もつ Pej き くは ない よ うで あ る。残 念 なが らわた くLは一 度 も これ らの ヤ シを見 た ことが ない.東南 ア ジアには無縁 の もので あ る。 結 び ヤ シと原 住民 との結 びつ きに重点 を 置いて述 べ て きたが, その将来性等 について も多少 の示 唆を与 え る ことが 出来 た とすれ ば, わた くLに とっては望外 の喜 びで あ る。 ヤ シの産 品 につ いて生産 量 や貿易 の状 況, 価格,需要供給 の関係 な ど経済 的 な面 には ほ とん ど触 れ なか った。 これ は極 めて大 切 な ことで あ るので, それぞれ専 門 の書 を参考 に して いた だ きたい。 謝 辞 筆 を とる機会 を与 え られ,激 励 とご指 導 をいただいた京 都大学東南 ア ジア研究 セ ンタ∼本 間 武教授 , タ イ国 の実情 や マ レイ語 につ いて有益 な助言 をいただいた同石 井米 雄教授 ,坪 内良博 助手,数 々の文 献 を お貸 しいた だ い た京 都大学 農学 部長 谷川浩教授 ,写真 の掲載 を許 され た名 古屋大学 医学 部正垣 幸男博士 , コイア の検定 を して いただいた月星 ゴム株 式会社技 術 部,昆 虫 や製造 について教示 を受 けた兵庫 農科大学 岩 田久二雄 ,河本 正 彦両 教授 , 神戸大学 農学 部清水 俊秀教授 にそれぞれ深 く感謝 いた します。 付 記 2 0数年前 わた くLは イ ン ドネ シア のセ ラム 島で 3年 間ア タ ップ とガバ ガバ と竹 で 作 った家 に 住 み,原 住民 と共 に,米 の ご飯 を食 べ る ことな く生 活 した。夜 は ダマ ール を くべ て灯 火 と し, ki l lの本 , ジ ャバで 入 手 した シ ンガポ-ル の 植 物 園で故 郡場先 生 か ら分 けて いただいた Bur Oc hs e( 英文)や Heyneの原書 や大 谷光 瑞 の本 を読 んで熱 帯農業 に対 す る情 熱 を燃 や し, 昼 は 開墾,農耕 の他 にサ ゴ打 ち, ヤ シ油 作 り, ヤ シ砂 糖 ヤ シ酒作 り, ア タ ップ編 み な どの作業 に精 進 した。 その記憶 のあ る間 にいつ か ヤ シにつ いて書 いてみたい と考 えて いた。 その機会 を与 え られ た ので 記憶 をた ど り,文献で確 かめ, さ らに新 しい知識 も得 て よ うや く書 きあげた。再 読 して駄 筆 の多い のに驚 く。8 ミリで も うつせ ば即座 に了解 して いただ ける ことで も, 原 住民 の す ぐれ た テ クニ ックを筆で書 くことは難 しい.百 聞一見 に しかずで ある. ヤ シ砂 糖 作 りな どは バ ンコクや プ ノ ンペ ンの空港近 くで も見 られ るだ ろ う。 こち らの技術 を見 せ る前 に, まず原住 2 7 4 -4 6- 佐 藤 :東 南 ア ジ アの ヤ シ 民 の技 術 の一 端 を 知 る こ と も意 義 の あ る こ と と思 う。 参 考 文 献 Ano n." Dat ePal ms , "Wo r l dCr o ps ,Vo l .1 5 ,No.4.1 9 6 3 . Ano n・"Dat e si nPaki s t an, "Wo r l dCr o ps ,Vo l .1 0 ,No.8.1 9 58 . tal ・Tr o Pi s c heundSub t r o Pi s c heWe l t u ) i r t s c ha ft 頭勉nz e n,BdI ,Ⅰ Ⅰ .St ut t gar t:1 9 6 2. Bal l e ye l l ,I . H.A Di c t i o nar yo ft heEc o no mi cPr o duc t so ft heMal a yPe ni ns ul a.London:1 93 5. Bur ki c o nut s .London:1 9 6 4. Chi l d,R.Co nt r o duc t i o nt ot heBo t anyo fTr o l ) i c alCr o ps .London:1 9 6 5. Co bl e y,LSIAnI Co ur t e nay,p. p.Pl ant at i o nAgr i c ul t ur e.Lo ndo n:1 9 6 5. nahAi rKi t a,Dj akar t a. De kke r ,N. A. D.Ta 科学技術庁資源局 『ココヤ シ資源 に関す る再評価調査報告』1 9 6 6. 同 『池ヤ シに関す る諸研究 ( 釈)』1 96 7. 回 『ヤ シ栽培法( 釈) 』原著 Pr udhomme,E.LeCo c o t i e r.Par i s:1 9 06 . 同 『南洋物産誌 コプ ラ編 ( 複写)』 Lan,J,Le sPl ant e sZ ndo c hi no i s e sdeGr andeCul t ur e.Hanoi:1 9 2 8 . McBul l ." Dat e si n Mor o c c o , "Wo r l dCr o ps ,Vo l .1 3 ,No.7.1 9 61. McCur r ac h,J. 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