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太陽電池モジュール 単体の太陽電池

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太陽電池モジュール 単体の太陽電池
(2) 太陽電池モジュール
単体の太陽電池(セル)を数十枚まとめたものを太陽電池モジュールといい、所定の電
圧と電流を得るのに必要な数だけモジュールを直列や並列に接続して配列したものを太陽
電池アレイまたはパネルと呼んでいる。
電力用の結晶シリコン太陽電池モジュール構造は一般的にスーパーストレート構造
(Superstrate)である(図 2-3)。これは太陽電池の受光面側にガラスなどの透明基板をお
いて支持板とし、その下に透明な充填材料と裏面シートを用いて太陽電池を封入後、周囲
を枠組みするものである。透明基板には、長波長光を活用する結晶シリコン太陽電池に適
した熱強化白板ガラスなどが利用される。充填材には耐湿性に優れた EVA(Ethylene Vinyl
Acetate)などが利用され、防湿・絶縁のための裏面シートにはアルミニウムをフッ化ビニ
ルフィルム(PVF:Poly-VinylFluoride)で挟んだ構造のシートが利用されている。
図 2-8 太陽電池モジュールの断面構造
(出所) シャープ(株)資料
スーパーストレート構造モジュールの組立工程は、まず、太陽電池セル相互の直列・並
列接続を行い、白板強化ガラスの上に EVA シート、太陽電池セル、EVA シート、裏面シー
トの順で重ね合わせたのち、ラミネート装置に導入する。このラミネート装置は装置内部
を真空排気しながら加熱する装置で、加熱により EVA シートが溶けて太陽電池セルがガラ
スに張り合わされる。枠組みは太陽電池モジュールを屋外で長時間使う際の機械的強度の
補強が目的であり、通常ではアルマイト加工を施したアルミニウムフレームが利用される。
図 2-9 太陽電池モジュールの製造(組立)工程
(出所) シャープ(株)資料
14
(3) 周辺機器
1) パワーコンディショナ
太陽電池で発電された直流電力を交流電力に変換し、商用電源系統に連系する装置であ
る。余剰電力がある場合は、電力会社へ逆潮流する機能を有する。さらに、周波数、電圧、
電流、位相、有効及び無効電力、同期、出力品質(電圧変動、高調波)等を制御しており、
自動運転停止、最大電力追従制御、単独運転防止、自動電圧調整、異常時の解列/停止、
のような機能を持っている。
主要構成部品は直流を交流に変換するインバータであり、IGBT(Insulated Gate Bipolar
Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子(電力用半導体)
で構成されている。シリコン基板上に平面状に p 層と n 層を形成していくプレーナ型(平
面型)と、細くて深い溝を作り,ゲートとゲート酸化膜を埋め込んだトレンチ型がある。
トレンチ型は,プレーナ型に比べてオン抵抗を低減することができる。次世代パワー半導
体の最有力候補である SiC、それを猛追する GaN,さらに酸化モリブデン(MoO3)という
新材料も開発されている。
系統連系保護装置は、太陽光発電システムの系統側やパワーコンディショナの異常を的
確に検出し、パワーコンディショナを停止させるとともに、系統との連系を速やかに遮断
することにより、系統側の安全を確保することを目的としている。
図 2-10
パワーコンディショナの構成
(出所)三洋電機(株) 資料
2) 接続箱
太陽電池モジュールからの直流電力を集め、パワーコンディショナに供給するための装
置である。保守点検時に回路を分離し、点検作業を容易にするのにも役立つ。また、太陽
電池モジュールに故障が発生しても、停止範囲を極力少なくすることもできる。
接続箱には、直流出力開閉器、避雷素子、逆流防止素子、端子台などが設置されている。
3) 分電盤
分電盤は、系統連系するシステムの場合には、パワーコンディショナの交流出力を系統
へ接続するために使用する遮断器を収納している。
15
4) 電力量計
逆潮流ありの系統連系システムにおいて逆潮流した電力量を計測し、電力会社に売電す
る電力料金の算出のための計量器となる。計量法による検定を受けた積算電力量計が使用
される。
図 2-11
分電盤(左図)および電力量計(右図)
(出所)太陽光発電協会(JPEA)
5) 蓄電池
蓄電池を太陽光発電システムに組み込むことにより電力貯蔵を行い、日射量の少ないと
きや夜間の発電しない時間に、負荷の要求する電力量を補うようにすることができる。ま
た、蓄電池を組み合わせることにより、防災型システムに活用されているような災害時の
バックアップ電力の供給や、その他、発電電力急変時の緩衝、およびピーク電力の抑制な
どへ、適用範囲を拡大することができる。
現在利用されている蓄電池としては、電気的性能、価格、寸法、重量、寿命、保守性、
安全性、リサイクル性等を総合的に判断して、鉛蓄電池が幅広く用いられており、その中
でも防災型システム(自立運転切換え有り連系形システム)を建築施設等へ設置する場合
は、シール形鉛蓄電池が一般的に用いられている。
6) その他
計測装置は、太陽電池電力、交流発電電力、日射量、気温などを計測するものである。
表示装置は、発電量をリアルタイムに表示するものであり、場所や条件により LED 表示
型とディスプレイ表示型がある。
16
(4) 太陽電池応用製品
太陽電池を組み込んだ製品も多く開発されている。民生用としては、電卓や時計などに
は古くから利用されている。(表 2-1 を参照)
太陽電池を電源としたソーラー照明灯は、一般に 20W 蛍光灯他を光源に使用したもので
ある。最近は、光源に白色高輝度 LED を特殊電球に組込んだ低価格製品が開発され、商品
化されている。約 15 年の使用が期待できる通電電流値に制御することにより、消費電力を
10W 以下とし太陽電池を小型化、蓄電池及びコントローラを本体内に収納したな一体型の
ソーラー照明灯もある。
図 2-12
ソーラー照明灯
(出所) シャープ(株)資料
表 2-1 太陽電池の応用分野と適用例
応用分野
製品・利用機器群
住宅機器
庭園灯、車庫灯、門灯、換気ファン、温水器、住宅用太陽光発電システム
道路管理施設
各種道路標識、案内板、街路灯、警報装置、トンネル照明
海上標識施設
灯台、各種浮標、投餌器、海洋牧場、ソーラーヨット、洋上発電
通信施設
無線中継局、衛星地上局、各種テレメーター電源
農業施設
ポンプシステム、スプリンクラー、誘殺灯、換気装置
民生機器
電卓、バッテリーチャージャー、時計、ランタン
輸送用機器
空気清浄器、換気装置、ソーラーカー
防災保安機器
雨量・水位・風向計のテレメーター、地震計、アラームシステム、各種検知機
公共産業用施設
移動式照明電源、コンテナ換気、産業等用太陽光発電システム、各種モニュメ
ント電源、公園トイレ換気・照明装置
エネルギー供給施設
ソーラービレッジ電源、ハイブリット発電システム、太陽光発電所
宇宙発電
各種衛星発電装置、気象観測装置電源
(出所) 太陽光発電協会 資料
17
2.2 「太陽光発電システム」のライフサイクルコスト分析
(1) 太陽光発電システムのライフサイクル
太陽光発電システムは、太陽電池セル・モジュールと周辺機器がそれぞれ独立したプロ
セスで生産され、発電する場所に設置する段階で組み合わせて施工される。太陽電池は種
類が多いうえに製造プロセスも複雑であり、多種多様の素材を多段階で製造・加工などが
行われる。
ライフサイクルの最初は、太陽電池および周辺機器の材料として必要な資源を採掘する
ことから始まり、精錬または精製して素材を製造するプロセスに移る。このプロセスは、
国内に限らず、海外で実施するものもある。この場合には、素材製品を輸入することにな
る。これらの素材を使用して太陽電池セルやモジュールおよび周辺機器部品を製造して組
み立てるプロセスとなる。
太陽電池の寿命は 20 年以上ともいわれており、使用期間は長期にわたる。しかし、周辺
機器の電気部品・材料などは交換や修理を必要とする。
太陽電池のリサイクルや廃棄に関する実績は報告されていないが、周辺部品の金属材料
はリサイクルが検討されている。
図 2-13
太陽光発電システムのライフサイクル
運転
保守
リサイクル処理
輸送
太陽光発電使用
輸送
輸送
周辺機器・
部品生産
輸送
素材の生産
輸送
資源の採掘
太陽光発電システム組立
太陽電池生産
輸送
素材の生産
輸送
資源の採掘
廃棄処理︵
埋立・
焼却︶
太陽光発電
システムメーカー
生産設備
素材メーカー
生産設備
部品メーカー
生産設備
(出所) 各種資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
(2) 太陽光発電システムのコスト
日本の太陽光発電システムのコストは、住宅用については新エネルギー財団(NEF)、産
業用については NEDO 技術開発機構の実施している実態調査をもとに算出した結果が毎年
公表されている。
住宅用システムの場合、2005 年度のシステムコストは 65 万円/kW、発電単価は 46 円
/kWh となっている。産業用の場合には、周辺機器や設置工事のコストが大きくなるため、
18
システムコストは 88.5 万円/kW と割高になっている。
図 2-14
住宅用太陽光発電システムのコスト推移(日本)
(万円/kW、円/kWh)
(万kW)
142.2
500
累計導入量(万kW)
400
113
システムコスト
(万円/kW)
86
300
63.7
200
45.3
33
100
発電単価
(円/kWh)
3.1
2.4
6
4.3
9.1
13.3
20.9
0
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(年度)
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005
システムコスト(万円
/kW)
発電単価(円/kWh)
370
200
170
120
104
102
93
84
75
72
68
67
65
260
140
120
82
72
71
65
54
52
51
48
47
46
(出所) 経済産業省および新エネルギー財団(NEF)の資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
表 2-2 住宅用太陽光発電システムの平均価格(実績)
(千円/kW)
年度
2003
2004
2005
太陽電池
451
(65%)
441
(65%)
428
(65%)
付属機器
163
(24%)
160
(24%)
159
(24%)
設置工事
76
(11%)
74
(11%)
74
(11%)
システム合計
690
675
661
(出所) 新エネルギー財団(NEF)資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
表 2-3 産業用太陽光発電システムの平均価格(フィールドテスト用の実績)
(千円/kW)
年度
2003
2004
2005
太陽電池
インバータ
382
108
(43%)
(12%)
387
108
(42%)
(12%)
370
97
(42%)
(11%)
架台・鋼材
接続箱
90
17
(10%)
(2%)
84
15
(9%)
(2%)
84
17
(9%)
(2%)
キュービクル
保護装置
12
12
(1%)
(1%)
19
11
(2%)
(1%)
20
9
(2%)
(1%)
計測装置
表示装置
35
29
(4%)
(3%)
50
34
(5%)
(4%)
48
32
(5%)
(4%)
29
172
(3%)
(19%)
41
178
(4%)
(19%)
44
160
(5%)
(18%)
4
(0%)
5
(1%)
4
(0%)
基礎工事費
装置据付費
表示装置工事
システム合計
890
932
885
(出所) NEDO 技術開発機構の資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成
19
(3) 太陽電池モジュールの製造コスト
多結晶シリコンおよびアモルファスシリコンの太陽電池モジュールに関しては、詳細な
LCA 評価が実施されている。表 2-4 は製造工程別、表 2-5 は要素別に試算した結果を示す。
いずれも、生産規模を年間 10MW(1 万 kW)、1GW(100 万 kW)、100GW(1 億 kW)
という 3 ケースを設定しているが、現在の 1 工場当たりの生産規模は 20∼300MW 程度と
幅はあるが、10M ケースと 1GW ケースの間に位置する。
表 2-4
LCA による太陽電池モジュール製造における投入エネルギーおよびコスト
生産規模 10MW
製造工程
多結晶シリコン型
生産規模 1GW
コスト
エネルギー
コスト
エネルギー
コスト
(円/W)
(MJ/W)
(円/W)
(MJ/W)
(円/W)
391.3
100%
26.7
シ リコ ン製造
原料輸送
水ガラス化
析出・精製
高純度カーボン製造
SiO2還元
Si精製
方向性凝固
ウェハ製造
インゴット鋳造
スライス
建屋・照明・空調
セル製造
基板表面処理
PN接合形成
反射防止膜
基板裏面処理
裏面電極処理
表面電極処理
セル特性検査
モ ジ ュ ー ル組立
保護ガラス
アルミ枠
充填材
裏面シート
その他
アモルファスシリコン型
73.9
0.8
9.1
9.0
28.6
11.2
8.7
6.5
94.1
30.2
62.2
1.8
111.4
12.9
19.7
8.6
12.9
25.2
20.6
11.6
111.9
50.6
9.7
9.2
17.4
25.0
478.6
19%
0%
2%
2%
7%
3%
2%
2%
24%
8%
16%
0%
28%
3%
5%
2%
3%
6%
5%
3%
29%
13%
2%
2%
4%
6%
100%
11.5
0.1
1.4
1.2
4.5
3.4
0.4
0.6
6.6
4.1
2.4
0.1
2.6
0.2
0.9
0.3
0.2
0.5
0.6
0.0
6.0
1.1
3.5
0.6
0.3
0.5
14.3
43%
0%
5%
4%
17%
13%
1%
2%
25%
15%
9%
0%
10%
1%
3%
1%
1%
2%
2%
0%
22%
4%
13%
2%
1%
2%
100%
セル製造
基板
透明電極形成
a-Si膜形成
裏面電極形成
パターニング
特性検査
人件費
照明・空調
モ ジ ュ ー ル組立
保護ガラス
アルミ枠
充填材
裏面シート
その他
300.2
8.7
56.8
116.1
10.9
25.9
1.4
80.0
0.3
178.4
84.4
15.5
15.4
29.0
34.1
63%
2%
12%
24%
2%
5%
0%
17%
0%
37%
18%
3%
3%
6%
7%
4.8
0.5
1.2
1.7
0.6
0.5
0.0
0.0
0.3
9.5
1.8
5.6
1.0
0.5
0.6
34%
3%
8%
12%
4%
3%
0%
0%
2%
66%
13%
39%
7%
3%
4%
薄膜結晶シリコン型
ウェハ製造
セル製造
モ ジ ュ ー ル組立
生産規模 100GW
100% 1 6 8 . 8
100%
13.0
100% 1 1 0 . 7
23.2
0.5
1.4
3.0
13.0
3.7
1.1
0.6
40.9
7.5
32.7
0.7
33.4
3.1
5.9
1.7
3.1
10.1
7.2
2.2
71.3
26.3
5.3
7.7
14.4
17.7
106.4
14%
0%
1%
2%
8%
2%
1%
0%
24%
4%
19%
0%
20%
2%
3%
1%
2%
6%
4%
1%
42%
16%
3%
5%
9%
10%
100%
5.3
0.0
0.9
0.5
2.3
1.4
0.2
0.0
2.9
1.3
1.6
0.0
1.3
0.1
0.4
0.1
0.1
0.2
0.3
0.0
3.5
0.5
1.8
0.5
0.2
0.4
5.9
41%
0%
7%
4%
18%
11%
2%
0%
22%
10%
12%
0%
10%
1%
3%
1%
1%
2%
2%
0%
27%
4%
14%
4%
2%
3%
100%
24.4
0.0
5.6
9.8
2.3
3.4
0.2
3.1
0.1
82.0
32.0
8.9
4.7
17.5
18.9
23%
0%
5%
9%
2%
3%
0%
3%
0%
77%
30%
8%
4%
16%
18%
1.2
0.0
0.4
0.5
0.2
0.1
0.0
0.1
4.7
0.7
3.1
0.3
0.3
0.3
20%
0%
7%
8%
3%
2%
0%
0%
2%
80%
12%
53%
5%
5%
5%
82.8
100%
5.0
100%
3.9
19.1
59.8
5%
23%
72%
1.3
0.8
3.0
26%
15%
59%
エネルギー
(MJ/W)
100%
7.8
100%
13.2
0.3
0.8
1.7
7.2
2.1
0.6
0.4
19.5
2.0
17.1
0.4
18.4
1.6
3.3
0.7
1.6
6.0
4.1
1.0
59.6
22.0
4.5
6.4
12.1
14.7
70.9
12%
0%
1%
2%
7%
2%
1%
0%
18%
2%
15%
0%
17%
1%
3%
1%
1%
5%
4%
1%
54%
20%
4%
6%
11%
13%
100%
3.0
0.0
0.5
0.3
1.2
0.8
0.1
0.0
1.3
0.4
0.8
0.0
0.7
0.1
0.2
0.1
0.1
0.1
0.2
0.0
2.8
0.5
1.4
0.4
0.2
0.3
4.0
38%
0%
6%
4%
15%
10%
1%
0%
17%
5%
10%
0%
9%
1%
3%
1%
1%
1%
3%
0%
36%
6%
18%
5%
3%
4%
100%
4.3
0.0
0.9
2.7
0.2
0.3
0.0
0.2
0.0
66.6
26.0
7.2
3.8
14.2
15.3
6%
0%
1%
4%
0%
0%
0%
0%
0%
94%
37%
10%
5%
20%
22%
0.4
0.0
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
3.6
0.5
2.3
0.2
0.2
0.3
10%
0%
5%
5%
0%
0%
0%
0%
0%
90%
13%
58%
5%
5%
8%
(出所) 山田・小宮山 「太陽光発電工学」 (2002 年)をもとに日本エネルギー経済研究所作成
20
表 2-5 太陽電池モジュールの要素別ライフサイクルコスト試算例
(a) 多結晶シリコン型
生産規模 10MW
材料
設備運転
設備製造
照明・空調
建屋
人件費
廃熱回収
Si回収
合 計
生産規模 1GW
コスト(円/W)
エネルギー
(MJ/W)
186.9
13.9
93.0
1.5
4.3
91.7
0.0
0.0
391.3
13.8
12.5
0.1
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
26.7
48%
4%
24%
0%
1%
23%
0%
0%
100%
コスト(円/W)
52%
47%
0%
1%
0%
0%
0%
0%
100%
111.1
6.9
29.7
0.8
1.7
19.4
0.0
-0.7
168.9
66%
4%
18%
0%
1%
11%
0%
0%
100%
生産規模 100GW
エネルギー
(MJ/W)
7.9
5.9
0.0
0.1
0.0
0.0
-0.3
-0.6
13.1
コスト(円/W)
60%
45%
0%
1%
0%
0%
-2%
-5%
100%
77.9
3.7
15.6
0.6
1.1
12.1
0.0
-0.3
110.7
70%
3%
14%
1%
1%
11%
0%
0%
100%
エネルギー
(MJ/W)
5.1
3.0
0.0
0.0
0.0
0.0
-0.2
-0.3
7.8
65%
38%
0%
0%
0%
0%
-3%
-4%
100%
(b) アモルファスシリコン型
生産規模
10MW
セル製造
材料
設備製造
設備運転
人件費
モジュール組立
材料
設備製造
設備運転
人件費
照明・空調
建屋
合 計
生産規模
1GW
(単位:円/W)
生産規模
100GW
14.1
196.3
3.9
80.0
3%
41%
1%
17%
2.3
16.6
1.1
3.1
2%
16%
1%
3%
1.7
1.9
0.3
0.2
2%
3%
0%
0%
147.1
8.4
0.4
20.6
0.3
7.4
478.5
31%
2%
0%
4%
0%
2%
100%
64.8
3.7
0.2
12.5
0.1
2.1
106.5
61%
3%
0%
12%
0%
2%
100%
52.6
3.0
0.2
10.1
0.0
0.9
70.9
74%
4%
0%
14%
0%
1%
100%
(出所)山田・小宮山 「太陽光発電工学」 (2002 年)をもとに日本エネルギー経済研究所作成
システム製造時の材料コストや投入エネルギー量は、システムに用いる太陽電池の型と、
量産規模に大きく影響される。一般にシリコン系の中では、単結晶シリコン型が最も多く、
薄膜型(アモルファス、積層型など)は少ない。コスト面では、シリコン結晶系は原料の
ケイ石を溶融還元して金属シリコンにする過程で多量のエネルギーを消費する問題がある
一方、アモルファスでもプラズマ放電でシリコンを基板に蒸着するのに大規模設備が必要
となる。
1) 太陽電池セル・モジュール用素材
(a) シリコン材料
日本では全量を工業用金属シリコンとして輸入し、国内ポリシリコン(多結晶)メーカ
ーが多結晶を製造し、シリコンウエーハメーカーに供給している。つまり、ケイ石の採掘
および金属シリコンへの還元プロセスは海外で実施されるため、作業コストおよびエネル
ギーの投入は不要となる。結果的に、船舶による輸送コストを含めた輸入金属シリコンの
価格に依存する。
(b) 化合物半導体用希少金属材料
化合物半導体には多くの希少金属が使用されている。これらのうち、CIS・CIGS 系が今
後は増加する見通しである。
21
インジウムは、亜鉛、鉛鉱石、スズ鉱石などの副産物として生産される。国内供給量の
約 50%は輸入であるが、約 15%が国内でも生産される。残りは、スクラップ再生品となっ
ている。
ガリウムは、亜鉛精鉱の副生物として生産された金属ガリウム、および輸入金属ガリウ
ムを利用する。また、使用済みガリウム製品から回収されるスクラップも利用される。
セレンの主な原料は、非鉄金属製錬の銅電解スライムであるが、日本は金属セレンとし
て輸入している。
(c) その他材料
太陽電池のモジュールや周辺機器には、電極、電線、構造材などとして、鉄、アルミニ
ウム、銅などの金属、およびが多く使用されている。
アルミニウム製品の原料としてはアルミニウム地金、アルミニウム合金地金、アルミニ
ウム再生地金などがある。アルミニウム地金、アルミニウム合金地金は、ほぼ全量を輸入
に依存しており、各種用途で使われている。アルミニウム再生地金も各種用途で利用され
ており、国内の再生地金のほか、一部でアルミニウムくずを輸入し、利用している。
銅は、輸入した銅鉱石から国内の銅製錬所で生産した電気銅(銅地金)が各種用途に使
用されている。また、銅スクラップ、製錬工程での副産物等についても、比較的多く使用
されている。
2) 太陽電池セル
結晶シリコン系の場合、金属シリコンの材料コストとともに、インゴット製造、ウェハ
製造、セル基板上のプロセスなど、多種類の製造装置とエネルギーを要する。
アモルファスシリコン系の場合、シリコン結晶およびウェハの製造プロセスが不要であ
るが、気相中での積層プロセスを行うため、高価な製造装置を利用し、投入エネルギーも
多くなる。
化合物半導体の CIS や CIGS 系などの場合も、ガラス基板に数種の素材を積層するため、
材料コストよりも製造装置のコスト比率が高くなる。
3) 太陽電池モジュール
太陽電池モジュールの構造はシリコン結晶系と薄膜系とでは多少異なるが、モジュール
組立コストの内訳は、保護ガラス、アルミ枠、充填材、裏面シートなどの材料費用が約 8
割を占め、製造設備、投入エネルギー、人件費のコスト比率は低いといえる(表 2-5)。材
料の中では、保護ガラスのコストが最も比率が高い(表 2-4)。
(4) 太陽光発電システム周辺機器
周辺機器の合計価格(2005 年度実績値)は、住宅用で 159 円/W(表 2-2)、産業・業
務用で 307 円/W(表 2-3)となっている。周辺機器のうち、パワーコンディショナ(イ
ンバータ)が主要構成品であり、90∼100 円/W である。住宅用(出力 3∼3.5kW)の場
合、システムとして 30 万円前後の販売価格となっている。
22
周辺機器のうち、パワーコンディショナについてはライフサイクル・インベントリ分析
事例があるため、製造時の投入エネルギーを参考にした。その他の機器は、既存の製品(開
閉器、配線材料など)をもとに推計することがでいる。
住宅用は屋根の傾斜を利用するために鋼材は多くないが、産業用や業務用などのように、
屋上の平面に設置する場合には年間を通して太陽の光を最も効率よく受けるように、地面
に対してある程度の傾斜をつけて設置するために、多くの架台および鋼材が必要となる。
表 2-6 周辺機器製造時の投入エネルギー
(出所) NEDO 平成 14 年度報告書 「即効的・革新的エネルギー環境技術開発に関する LCA 調査」
表 2-7 パワーコンディショナ製造における投入エネルギー
電力
石油
(kWh/kW) (MJ/kW)
重量(kg/台)
素材
鉄鋼
9.9
(61%)
1.52
アルミ
2.36
(14%)
12.5
33
7.18
銅
0.96
(6%)
0.494
絶縁材料ほか
3.11
(19%)
2.83
製造エネルギー
合計
16.33
石炭
(MJ/kW)
ガス
(MJ/kW)
62.7
1.22
78.8
9.15
12
26.494
52.18
36.1
142.72
36.1
(出所) 山田・小宮山 「太陽光発電工学」 (2002 年)を参考に日本エネルギー経済研究所作成
(5) 太陽光発電システムの設置・施工コスト
設置工事および電気工事は人件費と考えられるが、先に示した表 2-2 および表 2-3 によ
れば、住宅用で 74 円/W、産業・業務用で 208 円/W となっている。
(6) 太陽光発電システムの使用段階コスト
太陽電池モジュールの寿命は 20∼30 年といわれており、特別なメンテナンスの必要もな
い。ただし、パワーコンディショナは耐久年数が 15 年とされ、部品の交換が必要になるが
大きな費用にはならない。
太陽光発電システムは発電設備であるため、『電気事業法』により規制されており、「自
家用電気工作物」として扱われ、保守規定に従って定期的に点検する必要がある。ただし、
住宅用などの 20kW 未満の小出力太陽光発電システムは「一般用電気工作物」として扱わ
れるため、法的な定期点検は課されていない。
一般に、産業・業務用の場合、年間に 1 万円程度、住宅用の場合には 10 年間で 4 万円程
度という事例がある。ただし、保証期間である 10 年の後に万一故障した場合は、修繕費用
が発生する。
23
(7) 太陽光発電システムのリサイクル・廃棄コスト
太陽光発電システムのリサイクルおよび廃棄処理は確立されていないが、NEDO の調査
では太陽電池モジュールのアルミフレーム、鉄製架台を分別してリサイクルすることを想
定している。
(図 2-15 参照)
廃棄の場合には、処分場までの輸送および処分の際にエネルギーを投入する必要がある。
アルミニウムや鉄をリサイクルの場合、リサイクル処理工場までに輸送や回収するために
エネルギーを投入する必要があるが、新規製造に比べると投入エネルギーは小さい(表 2-8
参照)。実際のコストは不明である。
図 2-15
太陽光発電システムの廃棄工程の想定
(出所)NEDO 平成 14 年度調査報告書「即効型高効率太陽電池技術開発に関する LCA 調査」
表 2-8 リサイクル・廃棄時の投入エネルギー
(単位:J/W)
廃棄のみ
リサイク ル
輸送(リサイクル相当)
アルミニウム
リサイクル処理
鉄
廃棄
輸送(廃棄相当)
中間処理
最終処分
新規製造
アルミニウム
鉄
合 計
一部リサイクル
0
0
0
0
64
14
42
7
0
0
0
246
7
59
180
39
8
25
4
-2,476
-1,779
-698
64
-2,193
(出所)NEDO 平成 14 年度調査報告書「即効型高効率太陽電池技術開発に関する LCA 調査」
24
(8) 太陽光発電システムのライフサイクルコスト
先述のライフサイクル評価と同様の文献で実施された太陽光発電システムのライフサイ
クル評価を表 2-9 に示す。太陽光発電システムは、太陽電池モジュールをはじめとする製
造段階コストの比率が高く、設置も含めた初期投資が大きい。使用段階では太陽電池以外
の部品の修繕・保守費用がかかるだけで、非常にコストは小さい。
表 2-9 太陽光発電システムのライフサイクル評価結果
注) 3.5kW システムを対象とした数値を 1W あたりに換算
(出所) 山田・小宮山 「太陽光発電工学」 (2002 年)をもとに日本エネルギー経済研究所作成
3kWの太陽光発電モジュールでは年間 3150∼3300kWh/kW の発電量となる。電力会社
の家庭用電力価格は約 22 円/kWh とすれば、単純計算でも年間に約 7 万円の電気料金を
削減できることになるが、実際には電気料金システムの設定で 10 万円以上の削減効果が生
まれる。この計算では導入コストの回収には 15 年から 20 年程度かかると見られるが、今
後太陽光発電システムの価格の低下によりコストの回収期間は短縮される。
25
2.3 「太陽光発電システム」の普及に伴う産業へのインパクト分析
(1) 太陽光発電システムの普及とコストの見通し
NEDO 技術開発機構(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では太陽光発電の技術開
発の方向性を示すため、2004 年 6 月に「2030 年に向けた太陽光発電ロードマップ
(PV2030)」
を策定している。この中では、2030 年に太陽光発電の目指す姿として今後 2030
年までの期間は太陽光発電の本格的な市場形成期と捉え、太陽光発電がその利用拡大によ
りエネルギー資源問題や地球環境問題に対応した主要エネルギー源の一つとなるための認
知と信頼獲得の期間と位置付けている。また、太陽光発電の制約のない利用拡大を実現し、
2030 年までに累積導入量を 100GW、発電量として家庭用電力の 1/2 程度、全電力に占め
る太陽光発電量を 10%と想定している。
経済性の改善では 2030 年までに汎用電力並みの発電コスト(7 円/kWh 程度)を達成し、
経済性の面で他のエネルギーとの競合を可能としている。また、太陽光発電の利用形態を
従来の系統連系から電力系統に過度の負担をかけない新しいシステム形態に転換するとと
もに、広範囲な場所や状況での利用を実現することを目指している。
技術開発ではモジュール製造コストの低減が最重要課題であり、2020 年 75 円/W、2030
年 50 円/W 以下を目指した性能向上のための技術革新、新しいコンセプトの太陽電池の開
発を必要としている。
図 2-16
太陽光発電システムのコストロードマップ
(出所)NEDO 技術開発機構「PV2030」(2004 年 6 月)
26
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