Comments
Description
Transcript
『分子生物学 『分子生物学』
第一薬科大学 第 薬科大学 3年生 『分子生物学 分子生物学』』 第4 回 分子生物学研究室 担当:荒牧弘範 (H22 5 10) (H22.5.10) 難病「ハンチントン病」、 原因は酵素の不足 • 手先が勝手に動き、認知障害などの症状を示す遺 伝性の神経難病「ハンチントン病」は、傷ついたDN Aを修復する酵素の不足が原因で発症することを、 が 東京医科歯科大学の岡沢均教授らが突き止めた。 • ハンチントン病は、発症すると脳が萎縮し、やがて 死亡する。患者の細胞では「ハンチンチン」と呼ばれ るたんぱく質を作る遺伝子が通常より長いなどの特 徴があるが、なぜ発症するかは不明だった。 5月7日14時47分配信 読売新聞 難病「ハンチントン病」、 原因は酵素の不足 • 岡沢教授らは、患者に特有のハンチンチンが、切断 されたDNAを修復する酵素と結びつき、働けなくし ていることを発見。通常は生後約100日で死んでし まうハンチントン病のマウスの脳で、この酵素を作る 遺伝子の働きを強めてやると、寿命は130~140 日に延びた。 • 岡沢教授は「ハンチンチンと酵素の結合を邪魔する 化合物や、酵素の補給方法が見つかれば、有効な 治療法になる」と話している。 5月7日14時47分配信 読売新聞 2 遺伝子の複製と保持 SBO DNAの複製の過程について 説明できる A DNAの複製 ① DNAの複製 ポイント • DNAの複製では DNAの複製では、二本鎖それぞれの塩基配列を元にし 二本鎖それぞれの塩基配列を元にし て新しいDNAが二組できる。 • DNAの合成には方向(5’→3’)がある。 DNAの合成には方向(5 →3 )がある。 • 新しいDNAの片方は連続的に合成され、もう一方は不 連続に合成される。 • DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なる が、複製の基本的な機構は同じである。 • DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない。 DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない • 線状DNAの複製では、末端に複製されない部分がある。 • 遺伝子であるDNAは、変化することなく子孫へ伝えられ 遺伝子であるDNAは 変化することなく子孫へ伝えられ なければならないが、自然に起こる変化が生物の多様 性や進化に必要である。 図2 1 DNAの複製 図2‐1 •DNAポリメラーゼ •半保存的 半保存的 ポイント • DNAの複製では DNAの複製では、二本鎖それぞれの塩基配列を元にし 二本鎖それぞれの塩基配列を元にし て新しいDNAが二組できる。 • DNAの合成には方向(5’→3’)がある。 DNAの合成には方向(5 →3 )がある。 • 新しいDNAの片方は連続的に合成され、もう一方は不 連続に合成される。 • DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なる が、複製の基本的な機構は同じである。 • DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない。 DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない • 線状DNAの複製では、末端に複製されない部分がある。 • 遺伝子であるDNAは、変化することなく子孫へ伝えられ 遺伝子であるDNAは 変化することなく子孫へ伝えられ なければならないが、自然に起こる変化が生物の多様 性や進化に必要である。 岡崎フラグメント 原核生物:1000~2000ヌクレオチド 真核生物: 100~ 500ヌクレオチド ポイント • DNAの複製では DNAの複製では、二本鎖それぞれの塩基配列を元にし 二本鎖それぞれの塩基配列を元にし て新しいDNAが二組できる。 • DNAの合成には方向(5’→3’)がある。 DNAの合成には方向(5 →3 )がある。 • 新しいDNAの片方は連続的に合成され、もう一方は不 連続に合成される。 • DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なる が、複製の基本的な機構は同じである。 • DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない。 DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない • 線状DNAの複製では、末端に複製されない部分がある。 • 遺伝子であるDNAは、変化することなく子孫へ伝えられ 遺伝子であるDNAは 変化することなく子孫へ伝えられ なければならないが、自然に起こる変化が生物の多様 性や進化に必要である。 図2 2 DNAのポリメラーゼの反応 図2‐2 ポイント • DNAの複製では DNAの複製では、二本鎖それぞれの塩基配列を元にし 二本鎖それぞれの塩基配列を元にし て新しいDNAが二組できる。 • DNAの合成には方向(5’→3’)がある。 DNAの合成には方向(5 →3 )がある。 • 新しいDNAの片方は連続的に合成され、もう一方は不 連続に合成される。 • DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なる が、複製の基本的な機構は同じである。 • DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない。 DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない • 線状DNAの複製では、末端に複製されない部分がある。 • 遺伝子であるDNAは、変化することなく子孫へ伝えられ 遺伝子であるDNAは 変化することなく子孫へ伝えられ なければならないが、自然に起こる変化が生物の多様 性や進化に必要である。 (2) DNAポリメラーゼの違い 原核生物の大腸菌では5種類 ヒトの場合には15種類 原核生物の大腸菌では5種類、ヒトの場合には15種類 d 複製における末端問題 p19 真核生物の染色体は線状 • 親鎖の3’末端に作られたプ ライマーは除去されるが、 置き換えるた 置き換えるためのDNA合成 合成 反応に必要な3’水酸基が 存在しない。 • その結果、娘鎖の5’末端は その結果 娘鎖の5’末端は プライマーの分だけ短くな ってしまい(図2‐8)、ここで てしま (図 )、 で 短くなった娘鎖が次の複製 の際には親鎖となるので、 反対側の末端が短くなる。 反対側の末端が短くなる • 50 ~60ヌクレオチド短くな る。 真核生物の染色体は線状 • これを繰り返すことによ って、線状の染色体は 複製(細胞分裂)の度 に短くなる。 線状DNAの複製 • 染色体が短くなっても遺伝子に影響しないよ う 、染色体末端 遺伝情報をも な 数 うに、染色体末端に遺伝情報をもたない数ヌ クレオチドの反復配列が存在する。 • ヒトの場合にはTTAGGGの繰り返し配列が存 在する(図2‐9)。 • この部分はテロメアとよばれる。 • 生物種によって異なるが数百回から1,000回 生物種によって異なるが数百回から1 000回 程度くり返されている。 図2 9 テロメアの伸長 図2‐9 テロメアが短くなることを避ける • テロメアが短くなることを避けるために働く酵 素がテロメラーゼである。 • テロメラーゼは逆転写酵素であり、自身に含 まれるRNAをテンプレ トとしてテロメアDNA まれるRNAをテンプレートとしてテロメアDNA を合成する(図2‐9)。 テロメアが短くなることを避ける • テンプレ テンプレートとなるRNAに トとなるRNAに はテロメアの繰り返し単 位と相補的な配列が2回 以上連続して存在してい る。 • テロメアは同じ塩基配列 の繰り返しなので、テロメ ラーゼRNAのひとつの配 列 列でテロメア末端に相補 メ 末端に相補 的結合をし、隣の配列を テンプレ トにしてテ メ テンプレートにしてテロメ ア末端のDNAが合成され る(a)。 テロメアが短くなることを避ける • 繰り返し単位を1回合 成すると、テロメラーゼ が移動 ( )合成を繰 が移動し(b)合成を繰 り返す(c)。 • ここでも合成の方向は 5’→3’であり、テロメラ ーゼで伸長されるのは 、DNA複製で短くなった 鎖の5’末端ではない。 テロメアが短くなることを避ける • テロメラーゼが3’末端を ゼが 末端を 長く伸長した後に、通 常の複製機構により短 くなった鎖が、5’末端側 から から5’ → 3’へ合成され 合成され る。 • テロメラーゼは生殖細 胞やがん細胞に発現し ている。 染色体末端のテロメア構造 • テロメアは、その繰り返 し配列によって染色体 末端にループを形成す プ る(図2‐10)。 • この構造は染色体末端 を保護し、また損傷な どで生じた末端を修復 する際に染色体末端を 区別する指標となる。 • 細胞分裂を経てテロメアが短くなると、細胞は も や分裂 きなくなり、アポ もはや分裂できなくなり、アポトーシス(7章) シ ( 章) を迎え、ひいては生物の寿命にも関係してい るようである。 ポイント • DNAの複製では DNAの複製では、二本鎖それぞれの塩基配列を元にして 二本鎖それぞれの塩基配列を元にして 新しいDNAが二組できる。 • DNAの合成には方向(5’→3’)がある。 合成 は方向( → ) ある。 • 新しいDNAの片方は連続的に合成され、もう一方は不連 続に合成される。 • DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なるが、 DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なるが 複製の基本的な機構は同じである。 • DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない。 DNAポリメラ ゼだけではDNAの複製はできない。 • 線状DNAの複製では、末端に複製されない部分がある。 • 遺伝子であるDNAは、変化することなく子孫へ伝えられな ければならないが、自然に起こる変化が生物の多様性や ば が が 様 進化に必要である。 末端複製問題 • テロメラーゼ活性がな い体細胞では分裂ごと に短縮がおこり、一定 以上短くなると分裂を 停止し細胞老化が起こ る。 • 真 真正細菌のゲノムやプ 細菌のゲ や ラスミドなど、末端のな い環状DNAではこの問 題は起こらない。 末端複製問題 • テロメラーゼ(逆転写酵 素の一種)によって生 殖細胞やがん細胞では 末端部分の複製が行 われる。 。 d DNAの校正 間違った塩基を持つヌクレオチドが結 合してしまう可能性は皆無ではない。 図2 11 互変異性体による塩基対形成 図2‐11 ミスマッチ • アデニンのアミノ型とイ デ ミノ型の平衡(図2‐11) は通常アミノ型に偏っ ている。 • アミノ型が正しくチミンと 塩基対を形成するのに 対して、イミノ型ではシ トシンと塩基対を形成 する。 間違った塩基を持つヌクレオチドが結 合してしまう可能性は皆無ではない。 • シトシンのイミノ型はグアニンではなくアデニ ンと塩基対を形成する。 • チミンのエノール型はアデニンではなくグアニ ンと塩基対を形成する。 ンと塩基対を形成する ↓ • 多くのDNA合成酵素は1回の反応毎に正確 性を確かめる校正(プルーフリーディング)と いわれる機構を持っている。 図2 12 DNAポリメラーゼの校正機構 図2‐12 3’ →5’エキソヌクレアーゼ活性 エキソヌクレアーゼとエンドヌクレアーゼ • エキソヌクレアーゼ:核酸配列の外側(exo‐)から キ ク ゼ 核酸 外側 から 、すなわち核酸の5'端または3'端から削るように 分解する。DNAポリメラーゼにもエキソヌクレア ーゼ活性があるが、それはDNA複製中のミスを 校正するためであると考えられている。 • エンドヌクレア エンドヌクレアーゼ: ゼ: 核酸配列の内部(endo‐)で 核酸を切断する酵素で、すなわち糸を途中で切 るように核酸を切断する 制限酵素は代表的な るように核酸を切断する。制限酵素は代表的な エンドヌクレアーゼである。 A DNAの複製 ② 組換え機構 • 遺伝子は生物がその生物であるための根源 ある ら、複製 忠実 行われなけれ な であるから、複製は忠実に行われなければな らないが、実際にはDNAが再配列され遺伝子 の組換えが起こる。 コラム 生物進化 • 遺伝子がまったく変化せずに受け継がれるも のであったら、生物は進化しない。 • 遺伝子の組換えと突然変異は、生物進化の 原動力となる。 原動力となる a 相同組換え • 有性生殖する生物は、通常父親由来の染色体 と母親由来の染色体を1組ずつ持っており、そ れぞれの染色体にその生物に必要な遺伝子が 全て含まれているので、各細胞には性染色体を 含まれ る 、各細胞 性染色体を 除いて同じ遺伝子が2組ずつ存在する。 • 同じ遺伝子で占められるふたつの染色体を相同 染色体といい、通常の体細胞分裂では、それぞ れが複製されて新しい細胞に等しく分配され同じ 細胞がふたつになる。 細胞分裂 • 体をつくっている細胞の増殖で行われる分裂 体を く る細胞 増殖 行われる分裂 • 卵や精子の形成で行われる分裂 体をつくっている細胞(体細胞)分裂 • 体をつくっている細胞(体細胞)の分裂では、 分裂前 細胞(母細胞) 分裂後 細胞(娘 分裂前の細胞(母細胞)と分裂後の細胞(娘 細胞)では、基本的には同質の細胞となりま す。 • この細胞分裂を体細胞分裂と呼んでます。 卵や精子(配偶子)の形成で行われる 分裂 • 母細胞に対し娘細胞では染色体数が半減し ます。 • 染色体数が減少するので、この分裂は減数 分裂と呼ばれます。 分裂と呼ばれます • 生殖細胞の減数分裂では、相同染色体の同 遺伝子 染色体間 部分的 入れ替わる じ遺伝子が染色体間で部分的に入れ替わる 相同組換え(図2‐13)が起こるため、同じ親の 子でも全く同じ遺伝子を持つ可能性はほとん どない。 • 相 相同組換えは、通常の体細胞分裂でも起こり 組換 通常 体細胞分裂 も起 得るが、減数分裂の際には特に高頻度で起 こる。 図2 13 染色体の相同組換え 図2‐13 ホリディ構造 ((a)減数分裂の際に対合し )減数分裂の際に対合し た相同染色体二本鎖 (b)それぞれ 方の鎖の同 (b)それぞれ一方の鎖の同 じ位置にニックが入る。 (c)切断された鎖がもう 方 (c)切断された鎖がもう一方 の二本鎖に侵入して交 差する。 (d)侵入した鎖はリガーゼ によって相手側で結合 するととも するとともに、交差点が 交差点が 移動する。 相同組換え機構(1) • • ニックが入った鎖と同じ クが入 た鎖と同じ 鎖が切断され(黒印e、f )結合すると(g) 一部 )結合すると(g)、 部 がヘテロ二本鎖になる がその前後は変化しな い(h)。 切断された鎖が もう一方の二本鎖に侵 入して交差する。 入して交差する 侵入した鎖はリガーゼ によって相手側で結合 するとともに、交差点が 移動する。 相同組換え機構(2) • 初めのニックと反対側 の鎖が切断され(青印i 、j)結合すると(k)、ヘ )結合すると( ) テロ二本鎖を介して以 降 染色体 降の染色体DNAが入れ が入れ 替わり(l)、相同組換え が起 る が起こる。 図2 14 相同組換え機構 図2‐14 コラム ヒトの配偶子の多様性 • 減数分裂における染色体の分配はランダム 起 る 、相同組換 な も に起こるため、相同組換えがなかったとしても 、23対の染色体をもつヒトの配偶子の染色体 23 には 2 =800万通り以上の組み合わせがあ には、2 る。 ポイント • DNAの複製では DNAの複製では、二本鎖それぞれの塩基配列を元にして 二本鎖それぞれの塩基配列を元にして 新しいDNAが二組できる。 • DNAの合成には方向(5’→3’)がある。 合成 は方向( → ) ある。 • 新しいDNAの片方は連続的に合成され、もう一方は不連 続に合成される。 • DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なるが、 DNA複製に関わる酵素は原核生物と真核生物で異なるが 複製の基本的な機構は同じである。 • DNAポリメラーゼだけではDNAの複製はできない。 DNAポリメラ ゼだけではDNAの複製はできない。 • 線状DNAの複製では、末端に複製されない部分がある。 • 遺伝子であるDNAは、変化することなく子孫へ伝えられな ければならないが、自然に起こる変化が生物の多様性や ば が が 様 進化に必要である。 b 遺伝子の転位 トランスポゾン • 相同組換えと異なり 相同組換えと異なり、染色体の塩基配列に全く 染色体の塩基配列に全く 相同性のない部分に転位するDNA配列があり、 トランスポゾンという。 トランスポゾンという • トランスポゾンは、大腸菌のプラスミドのように染 色体と独立した存在ではなく 染色体に組み込 色体と独立した存在ではなく、染色体に組み込 まれているが、染色体内あるいは染色体間の異 なる座へ移動する。 • トランスポゾン自体はDNAの配列であるが、 1. その転写産物のRNAから逆転写されたDNAが転位 するもの するも 2. DNAが直接転位するもの 1.転写産物のRNAから逆転写さ れたDNAが転位するもの • RNAを介するトランスポゾンは真核生物にし を介する ポゾ 真核生物 か存在しない。 • トランスポゾンではもちろんDNAは元の位置 に残る。 に残る 2 DNAが直接転位するもの 2.DNAが直接転位するもの • DNA型トランスポゾンは原核生物にも真核生 ポゾ 核生物 も真核生 物にも存在する。 • DNA型トランスポゾンでは – トランスポゾンから複製されたDNAが転位するも の。 – トランスポゾン自体が切り出されて新しい場所へ 転位するもの。 トランスポゾン • 多くのトランスポゾンは両端に逆方向繰り返 し配列があり(図2‐15a)、転位を行う酵素(トラ ンスポザーゼ)によって認識されて染色体か ら切り出される。 • いくつかのトランスポゾンではその間にトラン スポザーゼの遺伝子を持ち、更に薬剤耐性 因子など他の遺伝子を含むものもある。 因子など他の遺伝子を含むものもある トランスポゾンが挿入される基本 的な反応機構 • 標的部位(この場合 AATTC)の両鎖が切断さ れ( ) それぞれ突出 れ(b)、それぞれ突出し た一本鎖(c)に切り出さ れたトランスポゾンが結 ポゾ が 合した後(d)、標的部 位の隙間が埋められる が (e)。 トランスポゾンが挿入される基本 的な反応機構 • そのため、転位したトランスポゾンの両側に 標的部位 同方向繰り返 配列 き、 は標的部位の同方向繰り返し配列ができ、こ の特異的な配列からトランスポゾンが転位し てきたことが分かる。 図2 15 トランスポゾン 図2‐15 カーネーション(赤) きよらかな慕情