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第59回抄録 (抄録内容 2014)
第59回 日本集中治療医学会近畿地方会 プログラム・抄録集 会期 会場 会長 2014年 7月 12日 高 槻 現代劇場 梅 垣 修 大阪医科大学集中治療部 第59回 日本集中治療医学会近畿地方会 プログラム・抄録集 会期 2014 年 7月 12日 会場 高 槻 現代劇場 会長 梅 垣 修 大阪医科大学集中治療部 日本集中治療医学会近畿地方会 ご 挨 拶 第 59 回日本集中治療医学会近畿地方会 会長 梅垣 修 今回、第 59 回日本集中治療医学会近畿地方会を担当させていただくことになり、まこ とに光栄に存じます。 さて近年、人口の高齢化、高度医療の発展、国民の医療への期待に伴い集中治療の需要 はますます増加してきております。しかしながら私達の世代が集中治療の道を進み始めた 四半世紀前とは医療環境も劇的に変化し、重症患者であってもプライバシーの保護、治療 環境の快適性維持が必要となってきています。従来から集中治療医学は医師・看護師を中 心としたチーム医療が進んだ環境にありますが、重症病態から社会復帰に向けた効率的治 療にはその他、多職種のパラメディックスの関与と各職種の協調性のとれた職務遂行が重 要であります。 以上のような観点から今回の学会テーマは「集中治療の場でのチーム医療 ― Medical Harmony for Patients ―」とさせていただき、集中治療部でのチーム医療をテーマにし たシンポジウムを企画させていただきました。さらに特別講演及び教育講演、ランチョン セミナーも企画しております。会員の皆様からは多数の演題応募をいただき、非常に密度 の濃いプログラムとなりました。 高槻は京都と大阪の中間地点であり、近畿各地からの交通の便もよくご参加していただ きやすい立地と思っております。皆様からの積極的なご参加を期待しておりますのでよろ しくお願い申し上げます。 また、関係各社の皆様には当地方会への御協賛のお礼を申し上げます。 ―1― 交通アクセス 〒569-0077 大阪府高槻市野見町2−33 TEL : 072-671-1061(9:00∼17:15) 高槻現代劇場 北口 ←至茨木 東海道本線 JR 高槻駅 グリーンプラザ 高槻3号館 南口 至京都→ 三菱東京UFJ銀行 松坂屋 大阪医科大学 付属病院 高 ワークホテル 高槻 槻 セ ン タ ー 街 三井住友銀行 ←至富田 みずき通り 阪急高槻市駅 阪急京都線 至上牧→ 城 北 通 り アソシア高槻 高槻市立 中央図書館 JA高槻 高槻市役所前 北大手 171 京都銀行 八丁啜 交番 高槻警察署 高槻現代劇場 交通のご案内 電車をご利用の場合 ● 阪急京都線「高槻市駅」 から徒歩5分 ○ 阪急梅田から特急で20分 ○ 阪急河原町から特急で約20分 ● JR京都線「高槻駅」 から徒歩12分 ○ JR大阪から新快速で15分 ○ JR京都から新快速で約15分 バスをご利用の場合 ● ● 高槻市営バス 「阪急高槻駅」 から徒歩5分 京阪バス 「阪急高槻」 (京阪枚方発) から徒歩5分 ―2― 会場案内図(文化ホール ) 3F 第2会場 会議室 控室2 応接室 控室1 EV EV 会議室 控室 2F 第3会場 第1・2展示室 EV EV 1F EV EV 会場入口 ―3― 本 部 B2F 楽屋3 第1会場 中ホール EV EV 参加受付 クローク 企業展示・ドリンクサービス 中ホー ル 前ホワイエ PC受付 控室4 控室3 B3F 楽 屋2 第1会場 中ホール EV EV ―4― 楽 屋1 参加者へのご案内 参加についてのご案内 参加受付(B2F 中ホール前 ロビー) 受付時間:9:00 ∼ 16:30 参 加 費:3,000 円 ※功労会員および学生は無料でご参加いただけます。参加受付でその旨お申し出ください。 なお、学生は学生証をご持参、ご提示ください(ご提示のない場合は有料となります) 。 ※プログラム抄録集は会員の方に事前に送付しておりますので各自ご持参下さい。 当日一部 1,000 円にて販売しますが、数に限りがございます。 ※地方会の入会受付も併せておこないますので、未入会の方は手続きをお取りください。 年会費 3,000 円です。 クローク( B 2 F 中ホール前 ロビー) ご利用時間:9:00 ∼ 17:20 ※貴重品、壊れやすいものはお預かりできません。 ランチョンセミナーご参加について ランチョンセミナー参加整理券配布はございません。参加ご希望の方は、直接会場までお越しくだ さい。 書籍・機器展示 開催時間:9:00 ∼ 16:30 開催場所:B2F 中ホール前 ロビー 評議員会・総会 評議員会 開催時間:9:00 ∼ 9:30 場 所:第 1 会場(B2F 中ホール) 総 会 開催時間:13:10 ∼ 13:20 場 所:第 1 会場(B2F 中ホール) 看護部会 開催時間:17:10 ∼ 場 所:第 2 会場(3F 会議室) 打ち合わせ・控室のご案内 特別講演 13:00 ∼ 15:00 控室 3( B3F 楽屋 1) 教育講演 1 14:00 ∼ 16:30 控室 4( B3F 楽屋 2) 教育講演 2 15:00 ∼ 17:30 控室 3( B3F 楽屋 1) 教育講演(看護) 13:00 ∼ 15:00 控室 5( B1F 第 3 リハーサル室) シンポジウム 9:00 ∼ 12:00 控室 5( B1F 第 3 リハーサル室) ランチョンセミナー 1( LS1) 11:30 ∼ 13:30 控室 1( 3F 会議室控室) ランチョンセミナー 2( LS2) 11:30 ∼ 13:30 控室 2( 3F 応接室) 事務局 〒 569-8686 大阪府高槻市大学町 2 番 7 号 大阪医科大学 集中治療部内 第 59 回日本集中治療医学会 近畿地方会事務局 TEL:072( 683)1221 FAX:072( 684)6552 E-mail:[email protected] 運営事務局 ㈱ クレッシー内 〒 561-0861 豊中市東泉丘 4-3-5-1306 TEL:06-6850-8558 FAX:06-6850-8541 E-mail:[email protected] ―5― 座長・演者へのご案内 1. 座長の先生へ ご担当セッション開始時刻の 10 分前までに当該会場前方右の「次座長席」にご着席ください。 各演題の持ち時間は下記のとおりです。 ※時間厳守にご協力ください。 一 般 演 題 発表 7 分 質疑 3 分 特 別 講 演 60 分 教 育 講 演 60 分 シンポジウム 発表 10 分 総合討論 60 分 2. 演者の先生へ 参加受付横の「PC 受付」にご発表開始時刻の 30 分前までにお越しください。 発表データの動作確認を行っていただきます。 PC 受付(B2F 中ホール前 ロビー)9:00 ∼ 16:30 会場では Windows 版 PowerPoint2003, 2007, 2010, 2013 がインストールされた PC を用意します。 発表データは USB フラッシュメモリーまたは CD-ROM に保存の上、 「PC 受付」にご提出ください。尚、 お預かり致しましたデータは必ず消去を致します。 ただし動画を使用する場合、または Macintosh でデータを作成された場合は、必ずご自身の PC にてご 発表ください。 「PC 受付」に発表データ(ご自身の PC でご発表の場合は PC)をご提出いただきましたら、ご発表開始 時刻の 5 分前までに当該会場前方左の「次演者席」にご着席ください。 3. ご発表データについての注意事項 ご発表データは、下記の要領でご準備ください。 OS:Windows2003 以降 Windows7 対応 アプリケーション:PowerPoint2003, 2007, 2010 画面解像度:XGA(1024 × 768 ドット) フォントは文字化けを防ぐため以下のフォントを推奨します。 日本語:MS ゴシック、MSP ゴシック、MS 明朝、MSP 明朝 英 語:Century、Century Gothic ご自身の PC にてご発表の場合 必ずバックアップデータを USB メモリまたは CD-R にて持参してください。 D-sub15 ピンによるモニター出力が必要です。事務局で D-sub15 ピンの接続ケーブルをご用意いたし ますので、ご持参いただく PC から D-sub15 ピンへの変換コネクタが必要な場合には各自でご用意く ださい。D-sub15 ピン以外では接続できません。 スクリーンセーバー、ウイルスチェック、ならびに省電力設定はあらかじめ解除しておいてください。 ―6― Cable Side PC Side VGA Cable (Sample) 電源ケーブルを必ず持参してください。バッテリーでのご使用はトラブルの原因となります。 PC の画面解像度は XGA(1024 × 768 ドット)でお願いします。 ※プロジェクターへの投影解像度は XGA(1024 × 768 ドット)ですので、ワイド設定で作成されたデータは、 上下に空白が生じて投影されます。 ※解像度の設定は下記の方法で行ってください。 デスクトップ画面でマウスを右クリック→プロパティ→設定→画面の解像度を 1024 × 768 に合わせる。 ご発表が終わりましたら、必ず各会場の「PC 卓」にて PC を受け取ってください。 ―7― 1 第 会場 中ホール 9:00 第 2 会場 会 議 室 3 第 会場 第1・2展示室 9:00∼9:30 9:00 ∼ 評議員会 16:30 9:30∼9:40 開会挨拶 10:00 9:40∼10:50 シンポジウム 座長:西 信一 講師:竹田 健太 智之 允 宏伸 奈津子 慎一郎 山田 山崎 11:00 小西 吹田 根本 共催:ホスピーラ・ジャパン 9:40∼10:50 一般演題(医師)1 一般演題(医師)2 中毒、鎮静、その他 呼 吸 D1 1 D1 7 座長:三住 拓誉 10:50∼12:00 D2 1 D2 7 座長:内山 昭則 10:50∼12:00 一般演題(医師)3 一般演題(医師)4 臨床研究 たこつぼ型心筋症、その他 D3 1 D3 7 座長:足立 健彦 D4 1 D4 7 座長:福井 道彦 12:00 12:10∼13:10 12:10∼13:10 ランチョンセミナー 1 座長:南 敏明 講師:内野 博之 共催:コヴィディエンジャパン 13:00 ランチョンセミナー 2 座長:嶋岡 英輝 聡、 川上 美絵子 共催:エドワーズライフサイエンス 講師:檜垣 13:10∼13:30 総会 13:30∼14:30 14:00 13:50∼14:50 特別講演 座長:梅垣 修 講師:西山 隆 共催:丸石製薬 15:00 教育講演(看護) 座長:高田 講師:瀬尾 弥寿子 龍太郎 座長:藤野 裕士 講師:西 憲一郎 共催:旭化成ファーマ 16:00 16:10∼17:10 教育講演 2 座長:志馬 伸朗 講師:松田 直之 共催:小野薬品工業 17:10∼17:20 閉会挨拶 一般演題(医師)5 感染症 1 D5 1 D5 6 座長:小林 敦子 14:30∼15:20 14:40∼15:10 一般演題(看護)1 鎮静 鎮痛 N1 1 N1 3 15:00∼16:00 教育講演 1 17:00 13:30∼14:30 座長:宮原 聡子 15:10∼15:40 一般演題(看護)2 呼 吸 N2 1 N2 3 座長:平良 15:40∼16:20 貴子 一般演題(看護)3 リハビリテーション N3 1 N3 4 座長:山室 俊雄 16:20∼17:00 蘇 生 D6 1 D6 5 座長:塩川 泰啓 15:20∼16:20 一般演題(医師)7 術後合併症、小児 D7 1 D7 6 座長:竹内 宗之 16:20∼17:10 一般演題(看護)4 その他 N4 1 N4 4 座長:原田 一般演題(医師)6 愛子 一般演題(医師)8 感染症 2 D8 1 D8 5 座長:安宅 17:10∼ 看護部会 ―8― 一晃 機 器 展 示 9:40∼11:40 中ホール ロビー プログラム 第 1 会場( 中ホール ) 評議員会 9:00 ∼ 9:30 開会挨拶 9:30 ∼ 9:40 シンポジウム 9:40 ∼ 11:40 共催:ホスピーラ・ジャパン株式会社 座長:西 信一(兵庫医科大学集中治療医学科) 集中治療の場でのチーム医療 ― We don t need Dr. Black Jack. Medical Harmony for Patients. ― S-1 集中治療におけるチーム医療 ― 専従医の立場として ― ○竹田 健太 兵庫医科大学 集中治療医学科 S-2 集中治療室における薬剤師の取り組みについて ○山田 智之 大阪医科大学附属病院 薬剤部・感染対策室 S-3 集中医療におけるチーム医療 ― 理学療法士の立場から ― ○山崎 允 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 S-4 当院における臨床工学技士の ICU での関わり ○小西 宏伸、山口 智、林 昌孝、有家 礼次、岩崎 孝敏 大阪医科大学附属病院 臨床工学室 S-5 ICU におけるチーム医療 ○吹田 奈津子 日本赤十字社和歌山医療センター ICU S-6 大学附属病院の集中治療部における pediatric intensive care のための multidisciplinary アプローチ ∼ cardiac team を platform として ○根本 片山 大地 宮田 慎太郎 1)、島田 亮 1)、文元 聰志 1)、小田中 豊 2)、尾崎 智康 2)、岸 勘太 2)、 博視 2)、島川 修一 2)、青松 友槻 2)、松村 秀樹 2)、長谷川 昌史 3)、出口 志保 4)、 史広 4)、下山 雄一郎 4)、日下 裕介 4)、門野 紀子 4)、日下 知行 4)、梅垣 修 4)、 郁 5) 1 )大阪医科大学附属病院 小児心臓血管外科、2 )同 小児科、3 )同 周産期センター・新生児部門、 4 )同 集中治療部、5 )同 看護部リエゾン精神看護専門看護師 ―9― 総 会 13:10 ∼ 13:30 特別講演 13:50 ∼ 14:50 共催:丸石製薬株式会社 座長:梅垣 修(大阪医科大学集中治療部 部長) わが国における被ばく医療 西山 隆 神戸大学大学院医学研究科 外科系講座災害・救急医学分野 特命教授 教育講演 1 15:00 ∼ 16:00 共催:旭化成ファーマ株式会社 座長:藤野 裕士(大阪大学麻酔集中治療医学講座 教授) 最近の敗血症治療 (SSCG と日本版敗血症診療ガイドラインの相違点) 西 憲一郎 1)2) 1 )関西医科大学 麻酔科学講座 講師 2 )関西医科大学枚方病院 総合集中治療部 副部長 教育講演 2 16:10 ∼ 17:10 共催:小野薬品工業株式会社 座長:志馬 伸朗(京都医療センター救命救急センター長) 集中治療管理におけるカテコラミンの適正使用 2014 松田 直之 名古屋大学大学院医学系研究科 閉会挨拶 17:10 ∼ 17:20 ― 10 ― 救急・集中治療医学分野 第 2 会場( 会議室 ) 一般演題(医師)1 9:40 ∼ 10:50 [ 中毒、鎮静、その他 ] D1-1 座長:三住 拓誉(神戸大学医学部附属病院 集中治療部) 著明な代謝性アシドーシスを呈したシアン中毒の 1 例 ○山本 朋納、金田 和久、加賀 慎一郎、晋山 直樹、山本 啓雅、山村 仁、溝端 康光 大阪市立大学医学部付属病院 D1-2 コハク酸シベンゾリン中毒に起因する低血糖・ペーシング不全に対し、 血液浄化により改善が得られた 1 例 ○長田 俊彦 1)、三木 豊和 2)3)、的井 愛紗 1)、武東 義成 1)、石田 丈貴 1)、多田 祐介 1)、 原 悠也 1)、藤本 善大 1)、宇佐美 哲郎 1)、矢田 憲孝 1)、廣田 哲也 1) 1 )淀川キリスト教病院救 急診療科、2 )同 集中治療科、3 )同 総合内科 D1-3 術後 ICU 管理中にプロポフォール症候群が疑われた一症例 ○堀 直人、佐藤 創、江藤 孝史、大橋 直紹、竹田 健太、西 信一 兵庫医科大学病院 集中治療部 D1-4 頚椎術後、デクスメデトミジン持続投与下の人工呼吸管理中に 心停止を起こした 1 症例 ○村上 幸一、大森 睦子、倉迫 敏明、仁熊 敬枝、八井田 豊、仙田 正博、 山岡 正和、稲井 舞夕子、上川 竜生、古島 夏奈、吹田 晃享、出口 美希 姫路赤十字病院 麻酔科 D1-5 PMMA-CHDF が有効であった急性重症膵炎の 2 症例 ○口分田 美奈 1)、稲富 理 2)、小泉 祐介 3)、喜多 理香 4)、橋本 賢吾 4)、藤井 恵美 4)、 岸本 卓磨 4)、今宿 康彦 5)、山根 哲信 4)、浜本 徹 4)、辻田 靖之 4)、田畑 貴久 4)、 高橋 完 4)、安藤 朗 2)3)、江口 豊 4) 1 )滋賀医科大学附属病院 医師臨床研修センター、2 )同 消化器内科、3 )同 血液内科、4 )同 救急・集中治療部、 5 )同 麻酔科 D1-6 甲状腺機能低下症による心嚢液貯留が胸部打撲を機に見つかり、 試験開胸術を要した一例 ○池田 真悠実、岡澤 祐樹、植田 浩司、下薗 崇宏、美馬 裕之、山崎 和夫 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔・集中治療部 D1-7 乳癌術後の化学療法中、ドセタキセルによる多臓器障害を伴う 重症全身性浮腫をきたした症例 ○多田羅 康章 1)、服部 洋一郎 1)、松尾 佳代子 1)、荻野 充利 2) 1 )明石医療センター 麻酔科、2 )同 乳腺外科 ― 11 ― 一般演題(医師)3 10:50 ∼ 12:00 [ 臨床研究 ] D3-1 座長:足立 健彦(田附興風会医学研究所 北野病院) ネーザルハイフローの水消費量についての実験的検討 ― 流量の影響 ― ○富田 敏司 1)、平尾 収 1)、山下 健次 1)、田中 成和 1)、榎谷 佑亮 1)、西村 信哉 1)、 森 隆比古 2) 1 )大阪府立急性期・総合医療センター 麻酔科、2 )同 医療情報部 D3-2 Nasal High Flow を用いて管理した小児 40 例の後方視的研究 ○重川 周、橘 一也、竹内 宗之、京極 都、水口 壮一、堀口 佑、山下 智範、 文 一恵、津田 雅世、旗智 武志、清水 義之、木内 恵子 大阪府立母子保健総合医療センター D3-3 敗血症における感染巣別のプロカルシトニン値とノルアドレナリン投与量 ○小谷 祐樹 1)、辻本 登志英 1)、亀井 純 1)、是永 章 1)、山 置塩 裕子 1)、千代 孝夫 2) 一幸 1)、山田 裕樹 1)、 1 )日本赤十字社和歌山医療センター集中治療部、2 )同 救急部 D3-4 神戸大学附属病院集中治療部における誤嚥性肺炎に対する薬物療法 ○岡田 卓也 1)、三住 拓誉 2)、江木 盛時 2)、溝渕 知司 1) 1 )神戸大学医学部附属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部 D3-5 非心臓術後または内科疾患で集中治療部に入室しランジオロールの持続投与を 行った 33 症例の検討 ○山下 智範、内山 昭則、宇治 満喜子、滝本 浩平、吉田 健史、柏 庸三、 酒井 佳奈紀、平松 大典、大田 典之、井口 直也、藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療科 D3-6 大動脈弁置換術単独施行された大動脈弁狭窄症患者に対し、 長期に ICU 管理を必要とした症例の検討 ○安本 寛章 1)、徳平 夏子 2)、田畑 雄一 2)、井上 美帆 2)、三井 誠司 2)、黄瀬 ひろみ 2)、 木村 彰夫 2)、橋本 悟 2)、佐和 貞治 1) 1 )京都府立医科大学医学部附属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部 D3-7 重症 ARDS に筋弛緩薬を使用した症例の検討 ○小山有紀子、吉田 健史、宇治 満喜子、井口 直也、大田 典之、平松 大典、 酒井 佳奈紀、内山 昭則、藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療部 ― 12 ― ランチョンセミナー 1 12:10 ∼ 13:10 共催:コヴィディエンジャパン株式会社 座長:南 敏明(大阪医科大学 麻酔科 教授) 神経集中治療における脳保護・蘇生を考える 内野 博之 東京医科大学 麻酔科学講座 教育講演(看護) 13:30 ∼ 14:30 座長:高田 弥寿子(国立循環器病研究センター 看護部) チーム再考 ∼いいチームってなんだろう∼ 瀬尾 龍太郎 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部 一般演題(看護)1 14:40 ∼ 15:10 [ 鎮静・鎮痛 ] N1-1 座長:宮原 聡子(大阪市立総合医療センター 集中治療部) 救命救急センターにおける Behavioral Pain Scale( BPS )導入 ― 看護師の疼痛に対する意識・行動の変化と問題点 ― ○小松 永莉子、宇良 郁美、浅川 寿 奈良県立医科大学附属病院 高度救命救急センター ICU N1-2 CAM-ICU を用いた膵頭十二指腸切除術後患者のせん妄発症の実態調査 ○高田 佳澄、桑原 淳子、小泉 素子、白石 由美 地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター ICU N1-3 集中治療室における BPS 導入の取り組み ○吉田 真穂 1)、石西 央樹 1)、辻本 雄大 1)、榊 裕美 2)、高木 美由紀 1)、西浦 聡子 1) 1 )奈良県立医科大学付属病院 C 棟 3 階 集中治療室、2 )奈良県立医科大学医学部 看護学科 成人看護学 一般演題(看護)2 15:10 ∼ 15:40 [ 呼吸 ] N2-1 座長:平良 貴子(六甲アイランド甲南病院 集中治療部) 人工呼吸管理患者への鎮痛・鎮静プロトコル導入過程における医療者の 鎮静鎮痛管理に対する認識への影響 ○寺本 佳菜 1)、小川 哲平 1)、辻本 雄大 1)、犬童 隆太 1)、松葉 晃平 1)、高木 美由紀 1)、 西浦 聡子 1)、井上 聡己 2) 1 )奈良県立医科大学附属病院 C 棟 3 階、2 )同 麻酔科 ― 13 ― N2-2 当院 ICU における人工呼吸器管理の現状と再挿管関連因子の検討 ○永田 明恵 1)、西浦 聡子 2)、内藤 祐介 1)、安宅 一晃 1)、井上 聡己 2)、川口 昌彦 1) 1 )奈良県立医科大学 麻酔科学教室、2 )奈良県立医科大学附属病院 集中治療部 N2-3 当院における呼吸ケアチームの活動と今後の課題 ○泉 仁美 1)、田村 直子 2)、木田 真紀 3)、堀 晋之助 4)、橋本 幹也 5)、中島 希実 5) 1 )和歌山県立医科大学附属病院 看護部管理室、2 )同 循環器内科病棟、3 )同 救急集中治療部、 4 )海南医療センター リハビリテーション科、5 )和歌山県立医科大学附属病院 臨床工学センター 一般演題(看護)3 15:40 ∼ 16:20 [ リハビリテーション ] N3-1 座長:山室 俊雄(奈良県立医科大学附属病院) 術後患者が GICU から車椅子で退室する為の取り組み ∼早期離床の阻害因子を明らかにする∼ ○足立 朱里、大原 里佳、前田 梨紗、鳥前 円、内田 真弓、辻 佐世里 関西医科大学附属枚方病院 N3-2 循環維持困難のため長期臥床となった患者への看護を振り返って ― リハビリテーションを進める中で有効であった看護と多職種との連携 ○水戸 秀彰、岡崎 由佳、鈴木 美冴、高藤 志織、谷前 侑加、道本 一枝、 虫明 佐百合 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立急性期・総合医療センター ICU・CCU・SCU N3-3 重症患者におけるリハビリテーション開始時期の検討 ○馬越 尚美、今市 晃平、本田 愛子、谷口 孔明、三宅 めぐみ、花本 千晶、内田 真弓、 辻 佐世里 関西医科大学附属枚方病院 総合集中治療部 N3-4 離床時のルートトラブル減少に向けての取り組み ∼ 「離床時ルート確認チェックリスト」を作成して∼ ○坂本 紗友里、川端 祐子、水谷 美保、瀬脇 純子 公立大学法人 大阪市立大学医学部附属病院 ICU ― 14 ― 一般演題(看護)4 16:20 ∼ 17:00 [ その他 ] N4-1 座長:原田 愛子(国立循環器病研究センター 看護部) ICU における PNS( Partnership Nursing System )導入後の課題 ○相澤 千草 1)、小越 優子 1)、小寺 利美 2) 1 )滋賀医科大学医学部附属病院 ICU、2 )滋賀医科大学医学部附属病院 N4-2 「児童期」にある重症熱傷患児の看護 ∼ ICU における発達課題を考慮した関わりの一症例∼ ○木藤 摩矢、寺内 久美子、山根 堂代、森 里加子 公立豊岡病院、但馬救急救命センター ICU 病棟 N4-3 ICU 退室後訪問による看護の振り返り ∼患者の意見を反映した改善策の検討∼ ○大西 弥生、三宅 望美、井垣 美紗子、今中 陽子、馬場 和美 独立行政法人国立病院機構京都医療センター 看護部 集中治療室 N4-4 ICU で実践した看取りに向けた倫理的意思決定支援 ∼チームアプローチの視点から∼ ○宮田 郁 1)、永田 祐子 1)、岩本 千聡 1)、浅水 宏和 1)、角田 みゆき 1)、濱田 恵美 1)、 福富 美樹 1)、尾崎 智康 2)、岸 勘太 2)、片山 博視 2)、小澤 英樹 3)、根本 慎太郎 4)、 梅垣 修 5) 1 )大阪医科大学附属病院 看護部、2 )大阪医科大学 小児科学教室、3 )同 心臓血管外科、4 )同 小児血管外科、 5 )同 集中治療部 看護部会 17:10 ∼ ― 15 ― 第 3 会場( 第 1・2 展示室 ) 一般演題(医師)2 9:40 ∼ 10:50 [ 呼吸 ] D2-1 座長:内山 昭則(大阪大学医学部附属病院 集中治療部) 急性呼吸不全をきたした慢性 GVHD の 1 例 ○藤野 光洋、堤 貴彦、狩野 謙一、吉田 浩輔、藤井 雅士、濱中 訓生、田中 博之、 竹下 淳、別府 賢、笹橋 望、志馬 伸朗 京都医療センター D2-2 頚髄腫瘍が原因で急性Ⅱ型呼吸不全を来した 1 症例 ○猪飼 浩樹、熊澤 淳史、青柳 健一、小畠 久和、小原 章敏 市立堺病院 救急集中治療部 D2-3 2 型呼吸不全をきたし診断に苦慮した重症筋無力症クリーゼの 1 例 ○是永 章 1)、辻本 登志英 1)、山田 裕樹 1)、山 千代 孝夫 2) 一幸 1)、亀井 純 1)、置塩 裕子 1)、 1 )日本赤十字社和歌山医療センター集 中治療部、2 )同 救急部 D2-4 アスペルギルス菌塊塞栓による気管支チェックバルブを生じたと考えられる症例 ○松浦 秀記、井上 聡己、野村 泰充、西和田 忠、安宅 一晃、川口 昌彦 奈良県立医科大学麻酔科学教室 集中治療部 D2-5 縦隔腫瘍による気道閉塞に対し、異なった治療法を選択した 2 症例 ○喜多 加枝 1)、三住 拓誉 2)、江木 盛時 2)、溝渕 知司 1) 1 )神戸大学医学部附属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部 D2-6 体外式膜型人工肺を用い、食道癌術後の呼吸不全患者を救命できた一症例 ○今川 憲太郎 高槻赤十字病院 麻酔科 D2-7 急速な胸水ドレナージにより再膨張性肺水腫をきたした 1 例 ○谷 大輔、松本 充弘、前田 英里、山本 泰史、二宮 万理恵、西田 朋代、 香河 清和、高田幸治 市立豊中病院 麻酔科 ― 16 ― 一般演題(医師)4 10:50 ∼ 12:00 [ たこつぼ型心筋症、その他 ] D4-1 座長:福井 道彦(大津市民病院 救急診療科・集中治療部) 麻酔導入時にたこつぼ型心筋症を発症し手術中止となったが、 再手術のために周術期管理を行った一症例 ○山下 健次 1)、橋本 明佳 3)、下川 亮 1)、平尾 収 1)、田中 成和 1)、川村 篤 4)、 西村 信哉 1)、森 隆比古 2) 1 )大阪府立急性期・総合医療センター 麻酔科、2 )同 医療情報部、3 )大阪大学医学部付属病院 麻酔科、 4 )大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 D4-2 脊髄クモ膜下麻酔後にタコツボ型心筋症を伴う頭蓋内硬膜下血腫を来した一症例 ○村田 裕、宮崎 嘉也、足立 健彦 田附興風会医学研究所北野病院 麻酔科・集中治療部 D4-3 肺炎を契機に status dystonicus を発症し、長期人工呼吸管理が必要であった一症例 ○眞弓 あずさ、竹内 宗之、橘 一也、木水 友一、水口 壮一、重川 周、堀口 佑、 寺田 雄紀、山下 智範、文 一恵、津田 雅世、籏智 武志、清水 義之、木内 惠子 大阪府立母子保健総合医療センター D4-4 自己免疫性溶血性貧血に肺塞栓症を合併し、急速な転帰を辿った一例 ○山本 真義 1)、端野 琢哉 2)、井手 岳 2)、藤原 周一 2)、野村 文彦 2)、矢部 光一郎 2)、 南 有紗 3)、井尾 克宏 4)、三好 隆史 4)、永井 謙一 4) 1 )関西電力病院 神経内科、2 )同 救急集中治療センター、3 )同 消化器・肝胆膵内科、4 )同 血液内科 D4-5 末梢挿入型中心静脈カテーテル( PICC )に伴う上肢静脈血栓症から 肺動脈塞栓症を発症し、外科的に PICC を抜去した一例 ○岡澤 佑樹、川上 大裕、池田 真悠実、植田 浩司、下薗 崇宏、美馬 裕之、 山崎 和夫 神戸市立医療センター中央市民病院 D4-6 高位頸髄損傷患者における、 High Tidal Volume Ventilation 管理を行った 3 例について ○酒谷 佳世、川副 友、柴田 尚明、米満 尚史、上田 健太郎、山添 真志、 木田 真紀、島 幸宏、岩崎 安博、加藤 正哉 和歌山県立医科大学 救急集中治療部 D4-7 自然気胸が原因と考えられる空気塞栓により脳梗塞を発症した一例 ○大嶋 圭一、植田 浩司、下薗 崇広、美馬 裕之 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科 ― 17 ― ランチョンセミナー 2 12:10 ∼ 13:10 共催:エドワーズライフサイエンス株式会社 座長:嶋岡 英輝(大阪市立総合医療センター 集中治療部 部長) EV1000 がクリティカルケアの現場に新風をもたらす ― チーム医療への応用 ― 檜垣 聡(医師)、川上 美絵子(看護師) 京都第二赤十字病院 救命救急センター 一般演題(医師)5 13:30 ∼ 14:30 [ 感染症 1 ] D5-1 座長:小林 敦子(宝塚市立病院 中央検査室・感染制御部) ARDS と DIC を合併した重症真菌性敗血症の一例 ○奥 佳菜子 1)、楠 宗矩 2)、岡本 明久 1)、山木 壮 3)、梅垣 岳志 2)、濱野 宣行 1)、 西 憲一郎 1)、廣田 喜一 2)、新宮 興 2) 1 )関西医科大学附属枚方病院 総合集中治療部、2 )関西医科大学 麻酔科学講座、3 )同 外科学講座 D5-2 劇症肝炎に対する脳死分割肝移植後に侵襲性アスペルギルス症に罹患した一例 ○酒井 佳奈紀、滝本 浩平、内山 昭則、藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療部 D5-3 外傷後の肺動脈血栓への細菌感染が疑われた一例 ○浅香 葉子 1)、瀬尾 龍太郎 1)、渥美 生弘 2)、山崎 和夫 1) 1 )神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科、2 )同 救命救急センター D5-4 発見が遅れた敗血性ショック・小腸壊死に対し小腸切除術施行し救命するも、 治療断念となった統合失調症患者の一例 ○赤澤 彰 1)、喜多 理香 2)、橋本 賢吾 2)、牛塲 彩 2)、藤井 恵美 2)、岸本 卓磨 2)、 松下 美季子 2)、大内 政嗣 2)、山根 哲信 2)、浜本 徹 2)、藤野 和典 3)、辻田 靖之 2)、 田畑 貴久 3)、高橋 完 2)、松村 一弘 3)、江口 豊 3) 1 )滋賀医科大学医学部附属病院 医師臨床教育センター、2 )同 救急・集中治療部、3 )同 救急集中治療医学講座 D5-5 早期集中治療によって重篤化を回避しえた産褥期敗血症性ショックの 1 例 ○文 一恵 1)、橘 一也 1)、清水 義之 1)、籏智 武志 1)、津田 雅世 1)、木内 恵子 2)、 竹内 宗之 1) 1 )大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科、2 )同 麻酔科 D5-6 迅速抗原検査が陰性であり PCR で診断を確定し得た重症 インフルエンザウイルス肺炎の 2 例 ○宮本 恭兵、酒谷 佳世、安田 真人、柴田 尚明、川副 友、木田 真紀、島 幸宏、 岩 安博、加藤 正哉 和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座 ― 18 ― 一般演題(医師)6 14:30 ∼ 15:20 [ 蘇生 ] D6-1 座長:塩川 泰啓(近畿大学 集中治療部) 大量腹水患者が上部消化管内視鏡中に腹部コンパートメント症候群 ( ACS:abdominal compartment syndrome )を発症し急変した 1 症例 ○信正 千尋、加藤 之紀、小尾口 邦彦、福井 道彦、渡邊 宏樹、蒲池 正顕、和田 享、 宮 勇輔 大津市民病院 救急診療科・集中治療部 D6-2 極めて短時間の経過により死亡した小児出血性ショック脳症症候群を 強く疑った 1 例 ○前田 英里、二宮 万理恵、谷 大輔、山本 泰史、松本 充弘、香河 清和、西田 朋代、 高田 幸治 市立豊中病院 D6-3 APRV および脳低温療法にて管理した病的肥満患者の蘇生後症例 ○橋本 賢吾 1)、江口 豊 1)、松村 一弘 1)、辻田 靖之 1)、松下 美季子 1)、高橋 完 1)、 田畑 貴久 1)、藤野 和典 1)、浜本 徹 1)、大内 政嗣 1)、山根 哲信 1)、今宿 康彦 2)、 岸本 卓磨 1)、藤井 恵美 1)、牛場 彩 1)、喜多 理香 1) 1 )滋賀医科大学附属病院 救急集中治療部、2 )同 麻酔科 D6-4 頚部血腫による気道偏位と上気道浮腫のため ICU に 緊急入室後 VV-ECMO も考慮しながら緊急挿管を行なった症例 ○木下 真央 1)、徳平 夏子 2)、澤田 麻衣子 1)、西尾 健志 3)、新井 啓仁 3)、伊藤 博士 4)、 八木 克史 5)、木村 彰夫 2)5)、黄瀬 ひろみ 2)、佐和 貞治 1)5)、橋本 悟 2) 1 )京都府立医科大学付属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部、3 )同 耳鼻咽喉科、4 )同 消化器外科、 5 )同 医療機器管理部 D6-5 CPA 蘇生当日、緊急開腹手術を施行した十二指腸穿孔 2 例の周術期経験 ○江藤 孝史、佐藤 創、小濱 華子、井出 岳、大橋 直紹、堀 直人、竹田 健太、 西 信一 兵庫医科大学 集中治療医学科 ― 19 ― 一般演題(医師)7 15:20 ∼ 16:20 [ 術後合併症、小児 ] D7-1 座長:竹内 宗之(大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科) 術後きわめて早期に発症した食道亜全摘術後再建結腸壊死の症例 ○木村 詩織、瀬川 一、谷本 圭司、田中 具治、福田 和彦 京都大学医学部附属病院 麻酔科 集中治療部 D7-2 拡大胸腺摘除術術後に筋無力症性クリーゼを発症し、 治療に難渋した重症筋無力症の一症例 ○堀田 有沙、中本 あい、吉川 範子、大平 直子、立川 茂樹 一般財団法人 住友病院 麻酔科 D7-3 術後に vasoplegic syndrome をきたした 1 症例 ○中尾 権太、日下 裕介、出口 志保、大地 史広、下山 雄一郎、門野 紀子、 日外 知行、梅垣 修 大阪医科大学 集中治療部 D7-4 両 VAD 導入後 5 か月の集中治療を経て植え込み型 LVAD 単独下の心移植待機に 移行しえた小児劇症型心筋炎の 1 例 ○前畠 慶人 1)、鳥越 史子 1)2)、内山 昭則 1)、高橋 邦彦 2)、小垣 滋豊 2)、上野 高義 3)、 澤 芳樹 3)、藤野 裕士 1) 1 )大阪大学医学部付属病院 集中治療部、2 )同 小児循環器内科、3 )同 心臓血管外科 D7-5 経皮的心肺補助と持続的血液濾過透析を用いて救命し得た小児劇症型心筋炎の一例 ○杉浦 順子、二川 晃一、出口 文華、山本 智久、岡本 慎司、奥田 隆彦 近畿大学医学部奈良病院 麻酔科 D7-6 肺動脈絞扼術を先行させた心室中隔欠損症に対する根治術時に cardiac ECMO を 使用した集学的治療によって救命しえた 18 トリソミー患児の 1 例 ○文元 聰志 1)、島田 亮 1)、小澤 英樹 1)、根本 慎太郎 2)、小田中 豊 1)、尾崎 智康 1)、 岸 勘太 1)、片山 博視 3)、廣川 文鋭 4)、宮崎 信一郎 5)、出口 志保 1)、大地 史広 1)、 日下 祐介 1)、下山 雄一郎 1)、門野 紀子 1)、日外 知行 1)、梅垣 修 6) 1 )大阪医科大学 胸部外科、2 )大阪医科大学附属病院 小児心臓血管外科、3 )同 小児科、4 )同 消化器外科、 5 )同 麻酔科、6 )同 集中治療室 ― 20 ― 一般演題(医師)8 16:20 ∼ 17:10 [ 感染症 2 ] D8-1 座長:安宅 一晃(奈良県立医科大学 麻酔科) 肺炎球菌感染症により電撃性紫斑病を来した一例 ○谷 泰弘 1)、辻本 登志英 1)、山田 裕樹 1)、山 亀井 純 1)、千代 孝夫 2) 一幸 1)、是永 章 1)、置塩 裕子 1)、 1 )日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部、2 )同 救急部 D8-2 肺炎球菌感染症に伴う電撃性紫斑病の 1 救命 ○村上 紗羅 1)、名倉 功二 2)、熊澤 淳史 1)、青柳 健一 1)、小畠 久和 1)、小原 章敏 1) 1 )市立堺病院 集中治療科、2 )同 総合内科 D8-3 肺炎球菌感染症に合併した電撃性紫斑病 ○山条 純基、荒井 祐介、成宮 博理、平木 咲子、大岩 祐介、岡田 遥平、市川 哲也、 小田 和正、榊原 謙、石井 亘、檜垣 聡、飯塚 亮二、北村 誠 京都第二赤十字病院 救命救急センター D8-4 左踵膿疱から Toxic Shock Syndrome( TSS )を呈した MRSA 感染の 1 例 ○荒井 裕介、小田 和正、大岩 祐介、平木 咲子、岡田 遥平、榊原 謙、石井 亘、 成宮 博理、檜垣 聡、飯塚 亮二、北村 誠 京都第二赤十字病院 救命救急センター D8-5 ショックが遷延した Toxic Shock Syndrome に対し、PMMA-CHDF を含む 集学的治療により救命し得た症例 ○平山 尚史 1)、稲富 理 2)、喜多 理香 3)、橋本 賢吾 3)、藤井 恵美 3)、岸本 卓磨 3)、 今宿 康彦 4)、山根 哲信 3)、浜本 徹 3)、辻田 靖之 3)、高橋 完 3)、安藤 朗 2)、 江口 豊 3) 1 )滋賀医科大学 医師臨床教育センター、2 )同 消化器内科、3 )同 救急・集中治療部、4 )同 麻酔科 ― 21 ― ― 22 ― 指定演題 特別講演 教育講演 1・2 教育講演( 看護 ) シンポジウム ランチョンセミナー 1・2 特別講演 わが国における被ばく医療 西山 隆 神戸大学大学院医学研究科 外科系講座災害・救急医学分野 特命教授 わが国における被ばく医療は、2011 年 3 月に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島 第一原子力発電所事故を経て転換期を迎えている。それまでは、1979 年 3 月の米国スリー マイルアイランド原子力発電所の事故を契機に原子力安全委員会により「原子力発電所周 辺の防災対策について(1980 年) 」がとりまとめられ、1999 年 9 月 30 日の JCO ウラン加工 工場で起きた臨界事故を教訓に数回の改訂を行いながら従来の救急医療、災害医療との整合 性を図り、初期、二次及び三次被ばく医療機関からなる緊急被ばく医療体制が整備されてき た。原子力施設の従事者と周辺住民とを区別しないことを基本理念としたもので、オフサイ トセンター (以下 OFC)の整備や放射線被ばく事故に直接巻き込まれた人々を診断・治療す るだけでなく一般公衆を放射線被ばく及び汚染から守るためのもであった。しかしながら、 福島の事故では OFC や被ばく医療機関が十分な機能を果たせず、住民避難にも混乱を来し その体制が改めて見直されている。今後は原子力災害対策重点区域を原子力施設から概ね半 径 5 ㎞を目安とした「予防的防護措置を準備する区域(PAZ) 」 、同様に 30 ㎞を目安とした 「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ) 」 、さらに「プルーム通過時の被ばくを避けるため の防護措置を実施する地域(PPA) 」を設定し、原子力施設の状況に応じて緊急時活動レベ ル(EAL)を「警戒事態」 、 「施設敷地緊急事態」 、 「全面緊急事態」に区分し、各区分にお ける、原子力事業者、国および地方公共団体のそれぞれが果たすべき役割を明らかにされて いる。また、被ばく医療は、原子力施設において原子力緊急事態に至らない場合(労災事故) や産業用照射、非破壊検査、放射線治療装置など放射性同位元素の使用施設等(放射線使用 事業所;全国 6,306 施設 2012 年)における被ばく患者発生時にも適応される。偶発的、意 図的な事故の可能性は今後も常に存在し、そのため日常的に被ばく医療の整備やその運用に 熟知しておくことは医療従事者の責務でもある。 「天災は忘れた頃来る」で有名な寺田寅彦氏はその随筆『小爆発二件』の中で「ものをこ わがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなか むつかしいことだと思われた。 」とも述べている。物事を必要以上に恐れたり全く恐れを抱 いたりしないことはたやすいが、物事を正しく恐れることは難しいという意味である。今回 は福島原発事故を通じた被ばく医療体制の問題や過去の放射線事故事例(局所被ばくや高線 量全身被ばく患者)などを通じて、被ばく医療では何が問題で何を正しく恐れその危険に備 えていくのかを考えてみる。 ― 24 ― 教育講演1 最近の敗血症治療 (SSCG と日本版敗血症診療ガイドラインの相違点) 西 憲一郎 1)2) 1 )関西医科大学 麻酔科学講座 講師 2 )関西医科大学枚方病院 総合集中治療部 副部長 敗血症は、 「感染症が原因の全身性炎症反応症候群(SIRS) 」と定義され、救急・集中治療 領域では広く定着している。一方で各診療科においては、それぞれで扱う感染症が SIRS や ショックなどの全身状態の悪化を引き起こしても単なる感染症の重症化として捉えていて、 敗血症であると認識していない場合も多い。2004 年に発表された Surviving Sepsis Campaign guidelines( SSCG)は敗血症の認知と治療の標準化という点では、最も臨床応用され ているガイドラインではあるが、人種間格差や日本においてエビデンスを蓄積してきた治療 が含まれないなどの問題点もあった。そこで 2012 年に、日本集中治療医学会から「日本版 敗血症診療ガイドライン」が発表された。両ガイドラインにおいて多くの項目で共通する部 分も多いが、SSCG では採択されていないものや、中には正反対の推奨をしている項目もあ る。例えば、early goal-directed therapy(EGDT)は、両ガイドラインでエビデンスレベル も高く、敗血症性ショックに対する循環管理のスタンダードと言ってよい。しかし、EGDT に反応しない場合の治療に関しては、SSCG では低容量ステロイドが推奨されているが、 我々が従来行ってきて臨床的に効果を上げてきた PMX-DHP に関しては記載すらされてい ない。また免疫グロブリンに関しては、日本版敗血症診療ガイドラインでは、一定の効果を 認めているにも関わらず、SSCG では推奨しないとされている。 この辺りの相違が今後の敗血症治療のあり方を左右していく事になると推測される。しか し、これらのガイドラインの優劣をつける必要もなく、各国、各施設の事情を考慮し、その 時点で最良と思われる治療を選択していくことが重要であると考える。このような相違点と、 当院での敗血症治療での成績を踏まえて今後の敗血症診療について考えたい。 ― 25 ― 教育講演2 集中治療管理におけるカテコラミンの適正使用 2014 松田 直之 名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 【 はじめに 】循環管理におけるカテコラミンの使用は、病態生理学に基づいた深い理解が必 要である。全身性炎症や不全心において、ショックの病態生理学的評価と薬理学的観点に 則って、最小量で最大の効果を得るカテコラミンの使用が期待される。さらに、カテコラミ ンは、個々人の病態変化の中で、時系列で反応性が変化する。また、高容量で開始すること や、不要なカテコラミンを漫然と使用することは禁忌である。本講では、カテコラミンの適 正使用を、病態生理学と薬理学の観点から解説し、全身性炎症やショックにおけるカテコラ ミンの適正使用の理解を深めるものとする。 【 講演概要 】 1. カテコラミン受容体について(β受容体サブタイプの歴史と役割、α受容体サブタイプの 歴史と役割) 2. 細胞内カルシウム緩衝機構について(筋小胞体の役割、SARCA の役割、ホスホランバン の役割、NCX の役割) 3. カテコラミン受容体シグナルに対する病態修飾作用 4. 陽性変力作用と陽性変時作用の適正管理 5. 血管の ON-OFF について(EDRF と EDHF とα1 受容体) 6. 細菌のカテコラミンセンサーについて 7. 線維芽細胞のカテコラミン受容体について 8. カルシウム感受性増強薬と NCX 活性化薬の創薬基盤について 9. β遮断薬の役割 【 結語 】カテコラミン受容体反応性が低下する病態として、炎症管理は極めて重要である。 全身性炎症において、カテコラミン使用のストラテジーを定めると良い。最小で最大の効果 を得るためのカテコラミンの適正使用を解説する。 ― 26 ― 教育講演(看護) チーム再考 ∼いいチームってなんだろう∼ 瀬尾 龍太郎 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科・集中治療部 「先生の講義を聴いて勉強にはなったんですけど…、自分の施設では全く役に立ちません!」 21 世紀になり、各施設でチーム医療という言葉が根付いてきた。RST(呼吸サポートチー ム) 、NST(栄養サポートチーム) 、PCT(緩和ケアチーム)など、多職種が関与する様々な チームが有機的に活動を行い、そのチームの有用性を実感できてきていることがその理由の 一つであろう。 ここで私たち医療者は、より質の高い医療の提供と患者安全の確保のために、いまいちど 立ち止まって考える必要がある。 チーム医療 とは何なのだろうか。RST/NST/PCT と いった特別な名前がついているチームが行う医療のことを指すのであろうか。もしそうでな いならば、 チーム とは何を指すのだろうか。そして、何をもって「良いチームである」 「良いチーム医療ができている」と言えるのだろうか。 冒頭の発言は、私が講義をする際にしばしばいただくコメントである。講義で得た知識が チームとしての行動に結びつかないというのだ。程度の差こそあれ、ほとんどの医療者は 種々の講義を聴講した際にこのように感じた経験があるのではないだろうか。もちろん私も 例外ではない。この発言の背景には色々な要因があると思われるが、いずれにしてもチーム 医療という点でまだまだ発展できる余地があることを示していると感じる。 本講では、より良いチーム医療を実践するための有用な概念や知識を紹介する。個人同士 の関係から組織のあり方、そして組織の発展に関して、現場の実例を絡めてお話する予定で ある。 …この手の内容は、ご経験のとおり、講義や本で知識を得てもすぐに利用できることはな く、使おうと思ってもうまくいかないことの方が多い。しかし、こういったことに対して 各々のチームメンバーが興味を持って接することが、良い チーム医療 の提供につながる はずであると私は信じている。 安全な患者管理と安全な職場作りにおいて、何らかのお役にたてれば幸いである。 ― 27 ― シンポジウム S- 1 集中治療におけるチーム医療 ― 専従医の立場として ― ○竹田 健太 兵庫医科大学 集中治療医学科 【 概要 】兵庫医科大学集中治療部(ICU)は、14 床を 6 名の専従医で担当している。原則、専 従医のみで 24 時間の管理を行っており、クローズ型の ICU を運営している。外科術後症例、 内科・小児科の重症化症例、院内急変症例が ICU に入室患者である。3 次救急に関しては、 救命センターが別部門のため、完全に分離した状態である。 【 症例の内訳 】2013 年は、974 症例(男性 640、女性 334 症例) (予定手術 710 症例、緊急手 術 179 症例、緊急入室 85 症例) 、年齢は中央値 68 歳(1 歳∼ 95 歳) 、在室日数は 4.6 日であっ た。心臓血管外科を筆頭に外科術後症例が約 85%を占めていた。 【 他職種との連携 】すべての症例で、主治医と相談のうえ、治療方針を決定し、専従医が ICU 看護師とともに全身管理を行っている。原則、専従医 1 名で勤務を行っているので、看 護師との患者の状態を共有することは容易かもしれない。随時、医師からの問題点、看護師 からの問題点を話し合い、状態を共有している。 また、ICU 内の医療機器(人工呼吸管理、体外循環機器、血液浄化機器など)の点検を臨 床工学士が行っている。人工呼吸管理の患者、抜管前後の患者の呼吸リハビリにも積極的に 理学療法士が介入している。また、2013 年度より ICU が新病棟の急性医療総合センターに 移転し、院内サテライト薬局が併設され、薬剤師が常駐するようになった。サテライト薬局 の薬剤師が、ICU 病棟の使用薬剤のアドバイス(併用禁忌、投与方法、薬剤情報など)を提 供してくれるようになった。現在、日勤開始時に ICU 患者にかかわる職種(医師、看護師、 臨床工学士、理学療法士、薬剤師など)が集合し、専従医が主導する在室患者に対してのラ ウンドカンファレンスを毎日行っている。具体的には、専従医から患者情報の提供と一日の 治療方針を提示し、その治療方針を行っていくのに必要な情報を各職種と共有している。言 い換えれば、医師、看護師だけでなく他の職種も含めた ICU 患者を中心としたチームを結 成していることになる。 今回、ICU におけるチーム医療実践とこのチームの中での専従医が果たす役割について 紹介したい。 ― 28 ― シンポジウム S- 2 集中治療室における薬剤師の取り組みについて ○山田 智之 大阪医科大学附属病院 薬剤部・感染対策室 2007 年に厚生労働省より通知された「集中治療室(ICU)における安全管理指針」におい て、各医療従事者の役割が明記されており、その中で薬剤師は処方内容を含めた治療計画へ の関与や、薬剤投与の適切性の確認、在庫管理等を行うことが望ましいとされている。また、 2008 年度の診療報酬改定において、救急・集中治療の患者に対しても薬剤管理指導料の算 定が認められるようになり(2014 年 4 月現在 430 点) 、近年救急・集中治療領域における薬 剤師の積極的な関与に期待が高まってきていると言える。さらに、2010 年の医政局長通知 「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」では、薬剤の専門家である 薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益であるとされており、一般薬のほか に、麻薬・毒薬・向精神薬、特定生物由来製品、その他多くのハイリスク薬などの薬剤が使 用される救急・集中治療領域では、薬剤師の果たす役割は大きいと考えられる。現在、大阪 医科大学附属病院(以下当院)の ICU では、ICU 専任の薬剤師 1 名と兼任の薬剤師 1 名の体 制で病棟業務を行っている。従来、当院 ICU における病棟薬剤師の業務は、病棟に配置さ れた医薬品の管理が主であり、直接患者の処方内容や治療計画に関与することは少なかった。 しかし現在では、医薬品の適正な管理のみならず、日々の患者モニタリング、カンファレン スへの参加、処方内容の提案を行うほか、クリーンベンチを設置し薬剤師による混合調製業 務はもちろん ICU スタッフへの教育なども行うようになった(図) 。本シンポジウムでは、 ICU における薬剤師の取り組みについて当院を例に紹介したいと思う。 ICUカンファレンス 午前 注射薬混合調製業務 カンファレンス結果に基づき、 処方内容の見直し・修正を行う 翌日の個人注射薬処方内容の確認 薬剤部業務 ICU患者の状態把握・投与薬剤の確認 請求薬品の補充 午後 注射薬混合調製業務 カルテ入力・薬歴作成 図 当院における ICU 担当薬剤師業務の流れ ― 29 ― 随時病棟スタッフへの情報提 供 およびコンサルテ ーショ ン 薬物投与設計・相互作用の確認・TDM・配合変化情報など ICU患者の状態把握・投与薬剤の確認 定数配置薬の使用状況確認および薬品請求 シンポジウム S- 3 集中医療におけるチーム医療 ― 理学療法士の立場から ― ○山崎 允 兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 【 概要 】兵庫医科大学病院リハビリテーション部には、理学療法士 27 名、作業療法士 12 名、 言語聴覚士 6 名が所属し、日々臨床業務を行っている。 当院集中治療室(ICU)におけるリハビリテーション介入件数は心臓血管外科や消化管外科 をはじめとする外科症例が約 8 割を占める。残りは内科や小児領域などでの急性増悪症例であ る。外科症例のほとんどは術前から依頼され ICU 在室期間を含めた周術期の介入を行ってい る。しかし緊急手術の場合などでは ICU から依頼を受け、術後に介入開始となる場合もある。 【 集中治療領域における理学療法士の介入目的 】集中治療における理学療法士の目的として、 早期離床と合併症予防・改善が挙げられる。 早期離床はモビライゼーションとも呼ばれ、全身状態に問題がなければ座位・立位・歩行 などの動作練習を段階的に進めていくものである。昨年米国集中治療医学会にて発表された PAD ガイドラインにおいても早期からの離床・運動療法は強いエビデンスをもって推奨さ れ、PAD ケアバンドルでは不穏・せん妄の予防のための方策として挙げられている。また スムーズな早期離床を行うためには、術後の治療方針に合わせた鎮静・鎮痛管理が必要不可 欠であり、理学療法においてもその鎮静のレベルや鎮痛の程度に合わせた介入が必要となる。 全身状態が不良であるなどの原因によって早期離床が進められない場合は、合併症予防が 行われる。合併症予防に関しては、呼吸器合併症予防と関節可動域の維持などが挙げられる。 また呼吸器合併症が起こってしまった場合は、その改善に努める必要がある。 【 集中治療領域における他職種との連携 】当院では集中治療領域における他職種との連携を 進めるため、各ユニットにおいてカンファレンスという形での情報交換の場が設けられてい る。ICU では毎朝、症例にかかわる職種(医師、看護師、臨床工学士、理学療法士、薬剤師 など)を交えてラウンドカンファレンスが行われており、ICU 専従医から症例の状態と治療 方針が提示され、リハビリテーションを含めた一日のスケジュールが決められる。 また人工呼吸器装着のまま ICU を退室した場合、呼吸サポートチーム(RST)が院内ラウ ンドを通じて症例や病棟スタッフなどに対するサポートを行っている。当院の RST は集中 治療医、専門・認定看護師、臨床工学技士、理学療法士、歯科医師、歯科衛生士から構成さ れる。具体的なチーム介入内容としては人工呼吸器のウィーニング・抜管、離床、看護ケア、 口腔ケアなどが挙げられる。 今回、当院の集中治療におけるチーム医療の実践とその中での理学療法士の関わりについ て紹介できればと思う。 ― 30 ― シンポジウム S- 4 当院における臨床工学技士の ICU での関わり ○小西 宏伸、山口 智、林 昌孝、有家 礼次、岩崎 孝敏 大阪医科大学附属病院 臨床工学室 平成 19 年 4 月より施行された改正医療法では、医療機関における医療機器の保守点検・ 安全使用に関する体制を整えることが義務付けられ、当院では医療機器の専門職である臨床 工学技士(CE)が、概ねその役割を担っている。 現在、16 名の CE が臨床工学室に所属しており、中央機器管理業務、血液浄化業務、手 術室業務、そして今年の 6 月から新たに心臓カテーテル業務を加え、4 セクションに分かれ て業務を行っている。 ICU 業務においては専従の CE スタッフを設けておらず、各種医療機器の保守点検をは じめ、呼吸療法や血液浄化療法、補助循環装置の操作・維持管理などの臨床技術提供を、各 セクションに配属されているスタッフと連携を図りながら行っている。 勤務体制は現状、日勤のみである為、院内に不在となる休日及び夜間帯の緊急対応はオン コール体制である。 厚生労働省より公表された平成 26 年診療報酬改定では、特定集中治療室管理料 1 算定に ついて、加算の施設基準として「専任の臨床工学技士が、常時、院内に勤務している」と 明記された。当院がこの施設基準を満たすには、現在の人数では実現できない為、スタッフ の確保が必要である。 更に当院の事業計画として、2016 年には新棟が建設され、手術室は 13 部屋から 20 部屋に 7 室の増室、ICU は 8 床から 20 床に 12 床の増床と、大幅に増設される予定である。レイア ウトは、現在手術室と ICU が同一フロアで隣接しているが、新棟は別フロアになる事が決 定しており、スタッフの確保だけではなく ICU 専任 CE の配置を視野に入れた体制作りが 必要と考える。 ― 31 ― シンポジウム S- 5 ICU におけるチーム医療 ○吹田 奈津子 日本赤十字社和歌山医療センター ICU チーム医療とは、さまざまな医療職が専門性を最大に発揮し、かつ、連携・協働して提供 する医療のことであり、安全で質の高い医療を提供するためのものである。近年は診療報酬 改定のなかでも、他職種の連携を促すような内容が多くなっている。 院内では RST、NST、ICT、褥瘡ケアチームなど病院によりさまざまなチームが他職種 と連携し活動している。そのチームの中での看護師の果たす役割としては、機能的・有機的 に連携できるように調整すること、ケアの内容を患者の生活にあったものにすることなどが 考えられる。 ICU では、患者の特性からもともと治療には他職種が関わる事が多く、院内のなんらかの チームが関わるということもあるが、1 日の治療をすすめること自体がチーム活動になって いることが多いと感じている。その際のチームというのは、時間をかけて作っていくという ものではなく、患者の状況・治療・処置・看護ケアなどによって、さまざまな職種が集まり 患者のために活動する、というものである。その場合、看護師には ICU での診療の補助と日 常生活の世話という業のなかで、マネジメント能力を最大限に発揮することが必要である。 チーム医療の対象である患者ケアに最大の効果を得るためには、協働する医療職がそれぞ れの専門職としての知識と自信をもち、またそれを最大限に発揮しあえる関係性が必要であ る。今回は、ICU のなかで看護師がどのようにその役割を果たしていくか、またどのよう な課題があるかについて述べたい。 ― 32 ― シンポジウム S- 6 大学附属病院の集中治療部における pediatric intensive care のための multidisciplinary アプローチ ∼ cardiac team を platform として ○根本 片山 出口 日下 慎太郎 1)、島田 亮 1)、文元 聰志 1)、小田中 豊 2)、尾崎 智康 2)、岸 勘太 2)、 博視 2)、島川 修一 2)、青松 友槻 2)、松村 秀樹 2)、長谷川 昌史 3)、 志保 4)、大地 史広 4)、下山 雄一郎 4)、日下 裕介 4)、門野 紀子 4)、 知行 4)、梅垣 修 4)、宮田 郁 5) 1 )大阪医科大学附属病院 小児心臓血管外科、2 )同 小児科、3 )同 周産期センター・新生児部門、 4 )同 集中治療部、5 )同 看護部リエゾン精神看護専門看護師 小児を対象とする集中治療は、年齢と疾患による多様な特殊性が特徴である。わが国の大 学附属病院は医育機関でありながら、人事の流動性と診療科縦割り医療などの理由から、小 児集中治療の実施が容易ではない。PICU として独立した病床と専従医を持たぬ当院では、 この問題に対し multidisciplinary アプローチで通常の ICU 内で対応している。その出発点 として、ICU 入室理由の最多を占め、かつあらゆる薬物および機械的治療を必要とする小 児心疾患患者に対する集中治療の確立をスタートラインと設定した。その実施に当たり、 open or closed ICU という概念に捉われずに、集中治療医の統括のもと、小児科医(循環お よび必要時に新生児、腎臓、消化器、脳神経の専門医) 、麻酔科医、小児心臓外科医、看護 師(ICU、病棟、手術室、リエゾン精神看護) 、および臨床工学士が、朝夕の定時ラウンド、 術前検討などの事例カンファレンス、死亡例・合併症発生例の検討、そして ICU 退室後の 予後検討を、担当する全員が参加する横断的チーム医療を構築した。これによりメンバーの 合意に基づく全治療期間に渡る定型的診療の形成(①各種プロトコール:鎮痛・鎮静法、循 環作動薬、ステロイド治療、肺高血圧治療、ECMO など、②客観的評価:ScvO2 モニタリ ング、肺動脈圧モニタリング、各種エコー検査など) 、シームレスな治療協力(血漿交換、 血液浄化、腹膜透析、ビデオ脳波などの専門的治療) 、そして良好な ICU 退室率が可能と なった。この multidisciplinary アプローチによる小児集中治療は、現在心臓疾患以外にも その治療対象が広げられている。更なる診療内容の革新と近隣の病院との連携による地域単 位ユニットへの昇華を目指している。 ― 33 ― ランチョンセミナー 1 神経集中治療における脳保護・蘇生を考える 内野 博之 東京医科大学 麻酔科学講座 集中治療における脳保護は、心停止に伴う心肺蘇生および脳梗塞や頭部外傷、くも膜下出 血、痙攣発作、脳炎、頭部外傷などの一次性脳損傷に続発する二次性脳損傷をいかに軽減す ることが可能であるかが焦点となる。脳は、呼吸・循環などの生命維持の制御や意識・記憶・ 感情などの高次脳機能を司る重要な臓器であるが、エネルギーの備蓄がほとんどなく、虚血 に対しての防御能を兼ね備えていない臓器であり、再生能力に乏しいため一旦傷害を受ける と重篤な後遺症を残すことに繋がるという特徴を有している。脳蘇生とは、脳虚血に引き続 いて介在治療を施行し、脳機能そのものを回復させることをその目的としている。心停止に 伴う心肺蘇生および脳梗塞や頭部外傷、くも膜下出血に伴う急性期の神経集中治療の成否は、 ① 脳への早期の血流再開とエネルギー代謝の改善(脳機能回復を念頭に入れた脳蘇生法)と ② 血流再開後の脳保護(脳障害から脳を保護する治療法の適用)が大きな柱となるものと思 われる。殊に、心停止から蘇生した患者では、心拍再開後の心停止後症候群(Post Cardiac Arrest Syndrome:PCAS)に対して効果的な介在療法を用いることで二次的な脳障害の進 展を阻止し、脳の機能を維持して保護し、患者を社会復帰させることができるかが蘇生の成 否の鍵を握っている。すなわち、脳に対する病的なストレスにより脳が障害を受けることを、 効果的な介在療法を用いることで阻止し、脳の機能を維持かつ保護することと解釈できる。 現時点では、心肺蘇生時の救命救急蘇生法の改善および脳梗塞時の再灌流療法の進歩に加 えて、低体温療法を併用した神経集中治療管理により、回復が難しいと思われてきた神経機 能回復に光明を見い出すことができるようになってきている。特に、神経集中治療における 低体温療法は、頭部外傷患者ではその有効性にエビデンスが認められなかったが、院外心肺 停止患者、周産期脳虚血・低酸素の新生児の蘇生において神経学的予後を改善するというエ ビデンスが得られている。 その一方で、薬物療法はバルビツレート療法に端を発し、多くの薬剤が開発されてきたが、 動物実験での有効性とは逆に、臨床試験では殆んど満足する結果が得られていない。それは、 人の脳神経細胞障害の分子生物学的メカニズムが複雑かつ多要素で、神経機能回復を目指し た治療を開始するまでの許容時間が極めて短いためと考えられている。 脳障害は、脳内の様々な情報伝達系に影響を及ぼして神経細胞死を誘発するが、最近の 我々の神経細胞死における免疫抑制剤の抗虚血作用に対しての研究から脳神経細胞死の制御 は脱リン酸化酵素の一つであるカルシニューリンの変動とミトコンドリア内膜に存在する MPTpore( Mitochondrial Permeability Transition pore)と呼ばれる非特異的な穴の開口 を介するミトコンドリア機能不全が関与することが明らかとなり新規の薬物治療の標的とな ― 34 ― る可能性が示唆されてきている。 「神経集中治療の成否」には、 「分子生物学的観点に立って脳を蘇生・保護する」ことが 重要で、それには、脳への早期血流再開と脳神経細胞死誘発機構を抑制がポイントとなる。 虚血再灌流後に脳神経細胞障害を引き起こす細胞内でのプロセスと生化学的なプロセスにお いて MPT に続発するミトコンドリア機能不全が重要な役割を担うことが指摘され、微小臓 器レベルでの蘇生と機能維持の重要性が明らかとなってきた。 そこで、本講演では、 「神経集中治療における脳保護・脳蘇生」を考える上で考慮すべき ことについて、 ①虚血性神経細胞障害の分子機序の理解 ②脳ミトコンドリア機能の特徴とその重要性 ③脳障害を反映しうるバイオマーカーや DNAchip による関連遺伝子の捕捉 ④心停止後症候群の特性と対応 ⑤低体温療法の実際と脳保護のためのモニタリング 等に焦点を当て、その概略を概説したい。特に、ヒト脳組織から得られたヒト脳ミトコンド リア機能の特徴を踏まえて、集中治療における脳保護・蘇生の在り方を討論したい。 ― 35 ― ランチョンセミナー 2 EV1000 がクリティカルケアの現場に新風をもたらす ― チーム医療への応用 ― 檜垣 聡(医師)、川上 美絵子(看護師) 京都第二赤十字病院 救命救急センター 集中治療領域での循環管理においては、疾患、重症度により管理に難渋することが多い。 特に循環動態が不安定な患者に対して、循環動態を安定化させるうえで輸液負荷か、それと も薬剤投与かという判断は重要であり、迷うことも多かった。近年、ビジレオや EV1000 をはじめとする低侵襲的に血行動態を測定するモニタリングシステムが広まり、集中治療領 域にとって EV1000 は必要不可欠なものになってきている。 医師にとっては適切な管理ができるようになったという意見も多かったが、看護師にとっ ては当初は新たなモニタリングに対してかなり抵抗があったようである。そこで我々の施設 では、当初から看護師と医師でビジレオ研究グループを数年前より立ち上げ、ビジレオシス テムの活用方法などが主であったが、1 年後には 2012 年の集中治療医学会のランチョンセ ミナーでビジレオシステムを用いた看護ケアに対する当院でのプロトコールを発表した。そ の後もチームでビジレオの発表を数々行っている。 現在では EV1000 を中心に以前にまして医師とのコミニュケーションが活発化し患者さ ん中心のケアがいっそう進展したと感じられます。 今回はクリティカルケアにおけるモニタリングの役割と重要性そして我々の施設のビジレ オ研究グループのこれまでのチームの成果を発表したいと思います。 ― 36 ― 一般演題 ( 医師部門) D1-1 著明な代謝性アシドーシスを呈したシアン中毒の 1 例 ○山本 朋納、金田 和久、加賀 慎一郎、晋山 直樹、山本 啓雅、山村 仁、 溝端 康光 大阪市立大学医学部付属病院 症例は 34 歳、男性。シアン化合物を取り扱うメッキ工場で作業中気分不良となったため 自宅へ帰宅したが、その後意識障害が出現したため近医に救急搬送された。呼吸、循環は安 定していたが、意識は GCS6 点(E1V2M3)であり全身痙攣が出現したため経鼻挿管となっ た。血液ガス分析では pH 6.8、PaCO2 23.7 ㎜Hg、PaO2 336 ㎜Hg、HCO3- 7.6 ㎜ol/ℓ、 BE-26.2 ㎜ol/ℓと著明な代謝性アシドーシスを呈し、病歴からシアン中毒が疑われたため 当院に転院となった。早急に亜硝酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムで解毒を開始したが、 亜硝酸ナトリウム投与後血圧低下を認めたため 900㎎を投与して終了し、チオ硫酸ナトリウ ムは 25g まで投与を行った。メトヘモグロビン濃度は 24.6% まで上昇し、アシドーシスは 改善傾向となった。第 3 病日に意識レベルは改善したが、総ビリルビン 14.3 ㎎/㎗、PT 19% と肝不全が急激に進行したため FFP の投与を行った。その後意識及び呼吸状態は安定 したため第 5 病日に抜管となり、黄疸は軽快傾向となったため第 10 病日に独歩退院された。 来院時の胃液中のシアン濃度は 33.6 ㎍/㎖であった。シアン中毒は初療での確定診断は困難 であるため積極的に中毒を疑うことが重要である。本例はシアン摂取の病歴は不明であった が、職歴と著明な代謝性アシドーシスからシアン中毒が強く疑われたため早急に治療を開始 することで救命できたと考えられる。 ― 38 ― D1-2 コハク酸シベンゾリン中毒に起因する低血糖・ペーシング不全に 対し、血液浄化により改善が得られた 1 例 ○長田 俊彦 1)、三木 豊和 2)3)、的井 愛紗 1)、武東 義成 1)、石田 丈貴 1)、 多田 祐介 1)、原 悠也 1)、藤本 善大 1)、宇佐美 哲郎 1)、矢田 憲孝 1)、廣田 哲也 1) 1 )淀川キリスト教病院 救急診療科、2 )同 集中治療科、3 )同 総合内科 コハク酸シベンゾリン(以下 CIB)はⅠa 群(Vaugham-Williams 分類)の抗不整脈薬であ り、副作用として低血糖や、心臓ペースメーカー使用患者のペーシング閾値上昇が知られて いる。主に腎排泄の薬剤であるため腎機能低下患者では血中濃度が上昇しやすい。今回我々 は CIB を処方された慢性透析患者が中毒症状を呈し、血液浄化によって改善した症例を経 験したため報告する。 69 歳の男性。63 歳時、洞不全症候群により DDD 型ペースメーカー埋込後、近医通院中で あった。来院日朝より全身倦怠感を自覚し救急外来を受診した。来院時、意識清明、血圧 107/70 ㎜Hg、脈拍数 60bpm 程度(心電図モニタでは時折ペーシングスパイクが出現) 、呼 吸数 28 回 / 分、SpO2 96%(room air) 、体温 36.5℃であった。血糖測定において 30 ㎎/㎗ と低血糖を認めたため 50% ブドウ糖液を投与した。心電図モニタ上は当初ペーシングスパイ クを認めていたが徐々にペーシング不全が出現するようになり、やがて脈拍数は 30 bpm 台 まで低下した。ペースメーカー自体の出力は保たれていたため、血清カリウム値の著明上昇 (8.2 mEq/L)が原因でペーシング閾値が上昇している可能性が高いと判断、ICU 入室とした。 ペーシング出力の設定を増強し、血清カリウムの補正を行うことで徐々にペーシング調律 に復帰したが、ペーシング閾値はやや高値で遷延していた。また 50% ブドウ糖液の頻回投 与にも関わらず低血糖が遷延した。入院の約 1 ヶ月前より CIB の内服が開始されていたこ とから、CIB 中毒を疑い血液透析を施行した。CIB 除去に血液濾過透析が有効であるとい う報告があり、引き続き血液濾過透析を連日施行した。その後 CIB 濃度が判明し、血液透 析前後で 1,294 → 748ng/㎖ と明らかに低下、各血液濾過透析前後でも 748 → 592ng/㎖、 621 → 451ng/㎖、350 → 314ng/㎖と低下を認めた。CIB 濃度が有効治療域上限(250ng/㎖) を下回るまで、ブドウ糖投与を必要とする低血糖が遷延した。ペーシング閾値も徐々に低下 を認め、CIB 内服前の程度まで改善した。 ペーシング出力を来院当初の設定に戻した後もペーシング不全を認めず、また低血糖の再 燃を認めることもなく第 19 病日に軽快退院した。 血液透析による CIB 除去効果は乏しく、血液濾過透析がより除去効果に優れているとの 報告はあるが、今回の結果からは血液透析・血液濾過のいずれもある程度の除去効果がみら れた。しかし体内分布容積が 6-7L/㎏と非常に大きく効率的な除去が難しいため、頻回の 血液浄化法が必要となる場合がある。また本症例では低血糖やペーシング閾値上昇が、CIB 濃度が至適治療濃度に低下するまで遷延しており、中毒域(800ng/㎖以上)を下回った後も 十分な注意が必要と考える。 ― 39 ― D1-3 術後 ICU 管理中にプロポフォール症候群が疑われた一症例 ○堀 直人、佐藤 創、江藤 孝史、大橋 直紹、竹田 健太、西 信一 兵庫医科大学病院 集中治療部 プロポフォールは ICU の鎮静管理において頻用される薬剤である。プロポフォールによ る副作用には、重篤なものとして心不全、横紋筋融解症、代謝性アシドーシス、不整脈など を呈するプロポフォール症候群 Propofol infusion syndrome( PRIS)が含まれる。今回、術 後挿管管理中に PRIS が疑われた症例について報告する。 【 症例 】19 歳男性、潰瘍性大腸炎の急性増悪、消化管出血に対して、結腸亜全摘、小腸部分 切除、人工肛門増設が施行された。術中出血 3,905 ㎖、ノルアドレナリン使用も循環動態不 安定なため、挿管管理で ICU 入室となった。 【 ICU 経過 】入室後、デクスメデトミジンに加え、プロポフォールを 2.5 ∼ 4 ㎎/㎏/h の範囲 で適宜併用していた。術当日血清 CK 値は 638 IU/ℓであったが、術後 3 日目に 2,766 IU/ℓ まで上昇したが、その後は低下傾向を示したため、手術の影響によるものと考えた。しかし、 術後 6 日目に 1,134 IU/ℓと再上昇を認め、術後 8 日目に 76,360 IU/ℓまで上昇した。尿の色 調は褐色であり、横紋筋融解症が疑われ尿検査を施行、尿中ミオグロビンは 84,000 IU/ℓと 高値を示した。経過中行った心臓エコー検査でも術前と比較し壁運動異常を認め、プロポ フォールによる横紋筋融解症、PRIS の一所見と考え、輸液管理に加え血液浄化(CHDF)を 開始した。その後は、CK 値は低下傾向を示し、フォローの心臓エコーでも改善を認め、血 液浄化を中止、術後 13 日目に抜管したのちに ICU 退室となった。 【 考察 】本症例では、心機能低下、横紋筋融解症の所見よりプロポフォール症候群が最も疑 われた。PRIS の発生には、プロポフォールの他にカテコラミンやステロイドなどが関与し ていると考えられており、本症例でも潰瘍性大腸炎に対して日常よりステロイドは内服され ていた。加えて ICU 管理中においてもノルアドレナリンを使用しており、より PRIS の発 生を助長した可能性が考えられた。ICU での管理において、ステロイドやカテコラミンを 使用した治療はよく行われることであり、挿管管理が長期にわたることが予想される場合は ミダゾラムなど他の薬剤に変更する必要もあったと考える。 ― 40 ― D1-4 頚椎術後、デクスメデトミジン持続投与下の 人工呼吸管理中に心停止を起こした 1 症例 ○村上 幸一、大森 睦子、倉迫 敏明、仁熊 敬枝、八井田 豊、仙田 正博、 山岡 正和、稲井 舞夕子、上川 竜生、古島 夏奈、吹田 晃享、出口 美希 姫路赤十字病院 麻酔科 デクスメデトミジンは呼吸に対する影響が少ないこと、せん妄に対する有効性などから、 近年ガイドライン等で集中治療患者の鎮静に有効な薬剤とされ、我々の施設においても、人 工呼吸中第一選択の鎮静薬として多くの症例に使用している。しかし循環系に対しては多彩 な副作用があり注意が必要である。今回われわれは頚椎手術後に比較的低用量の持続投与に も関わらず、短時間のうちに心停止に至った症例を経験した。 【 症例 】60 才代男性。身長 176 ㎝、体重 84 ㎏、既往歴に高血圧があり、アンギオテンシン Ⅱ受容体拮抗薬およびカルシウム拮抗薬を内服していた。術前検査では血液検査・呼吸機能 検査・胸部レントゲン・心電図に異常はなかった。頚椎症性脊髄症の診断で頚椎前方・後方 固定術を施行した。麻酔はプロポフォール及びレミフェンタニルによる全静脈麻酔とし、手 術時間は 11 時間、術中出血量は 1,250 ㎖であった。術後は気道狭窄の可能性を考慮して気 管挿管のまま ICU に入室した。ICU 入室後よりフェンタニル 20 ㎍/hr、デクスメデトミジ ン 0.3 ㎍/㎏/hr で持続投与を開始したところ、2 時間後にⅠ度房室ブロックから一過性に 30 回 / 分程度の徐脈となり、デクスメデトミジンを 0.1 ㎍/㎏/hr に減量した。しかしその約 1 時間後に心停止となった。CPR により直ちに心拍再開し、デクスメデトミジンの持続投与 を中止したが、20 分後に再び心停止となった。心拍再開後、硫酸アトロピン投与、イソプ ロテレノール持続投与開始し、経皮ペーシングを準備した。約 1 時間後に再度心停止となっ たが、その後循環は安定した。入室 2 日目の頚部 CT では、上咽頭におよぶ頚椎腹側の軟部 腫脹があったが、血腫による圧迫等の所見はなかった。入室 2 日目に気管チューブを抜去し ICU を退室、術後 18 日目に後遺症なく退院した。 【 考察と結語 】本症例では10 時間におよぶ前方後方固定という、侵襲の大きな頚部の手術に、 デクスメデトミジンの心刺激伝導系抑制が加わり、心停止に至ったと考えられた。投与前にな かった房室ブロックの出現があれば早めにデクスメデトミジンの投与は中止するべきである。 ― 41 ― D1-5 PMMA-CHDF が有効であった急性重症膵炎の 2 症例 ○口分田 美奈 1)、稲富 理 2)、小泉 祐介 3)、喜多 理香 4)、橋本 賢吾 4)、藤井 恵美 4)、 岸本 卓磨 4)、今宿 康彦 5)、山根 哲信 4)、浜本 徹 4)、辻田 靖之 4)、田畑 貴久 4)、 高橋 完 4)、安藤 朗 2)3)、江口 豊 4) 1 )滋賀医科大学附属病院 医師臨床研修センター、2 )同 消化器内科、3 )同 血液内科、 4 )同 救急・集中治療部、5 )同 麻酔科 重症急性膵炎に対し持続的血液濾過透析(continuous hemo-diafiltration:CHDF)は保 険診療上認可されており、発症早期からの施行による多臓器不全への進展防止効果が議論さ れている。近年、サイトカインを吸着する PMMA 膜の大口径ヘモフィルター (膜面積 1.8m2 )が使用可能となった。今回、重症膵炎 2 例に使用したので報告する。 【 症例 1 】67 歳、男性。突然の心窩部痛を自覚し救急要請となる。来院時意識清明も冷汗が 認められ腹部は膨満やや硬で圧痛(+)であった。BP83/71 ㎜Hg、HR59 回、RR24 回、血 清アミラーゼ 4,469U/L、腹部 CT にて膵は全体に腫大し造影効果の低下、液貯留は左前腎 傍腔や結腸間膜根部まで認められ CTgrade3 と判断した。膵炎の原因は不明で APACHEⅡ スコア 16 点、SOFA スコア 10 点であった。動注療法(メシル酸ガベキサート 2.5g/ 日持続 投与 +MEPM0.5g × 2 回 / 日)を開始し一般病棟入院となる。入院後点滴 5L/ 日投与行う も 尿 量 と SpO2 が 低 下 し た た め、 第 2 病 日 ICU 入 室 し 気 管 内 挿 管・ 人 工 呼 吸 器 管 理 +PMMA 膜を用いた CHDF(PMMA-CHDF)開始となる。施行条件はヘモフィー CH1.8W(東レ)を用い Qb80 ㎖/min、Qs, 500 ㎖/h、Qd1,000 ㎖/h で、補液と透析液はサブ ラッド Bi(扶桑)を、抗凝固剤はナファモスタットメシル酸(FUT) (35 ㎎/h)を使用した。 また動注療法を FUT(365 ㎎/day)に変更した。状態改善し、第 5 病日に動注療法を、 PMMA-CHDF を第 8 病日に終了した。第 13 病日に抜管、第 14 病日に ICU 退室となった。 退室時の APACHE スコアは 7 点まで改善を認めた。 【 症例 2 】33 歳、男性。AIDS 感染症、双極性障害 1 型で入院中に心窩部痛と嘔吐出現し、 腹部打診で鼓音、心窩部中心に圧痛(+) 、血清リパーゼ 1,974U/L であった。腹部 CT にて 膵は全体に腫大し液貯留は両側腎下極以遠まで貯留しており CTgrade4 と判断した。薬剤 による急性膵炎の診断にて ICU へ入室となる。気管内挿管・人工呼吸器管理と動注療法 (MEPM0.5g × 2+FUT288 ㎎/ 日持続投与)+PMMA-CHDF を施行(施行条件は症例 1 と 同様)し、第 5 病日に動注療法を、第 8 病日に PMMA-CHDF を終了した。第 10 病日に抜 管し、第 12 病日に ICU 退室となる。 【 まとめ 】急性重症膵炎に PMMA-CHDF が有効であると考えられる。症例を重ねてさら なる検討が必要である。 ― 42 ― D1-6 甲状腺機能低下症による心嚢液貯留が胸部打撲を機に見つかり、 試験開胸術を要した一例 ○池田 真悠実、岡澤 祐樹、植田 浩司、下薗 崇宏、美馬 裕之、山崎 和夫 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔・集中治療部 【 症例 】46 歳男性。20 歳代にバセドウ病でアイソトープ治療を受け、その後ホルモン剤を内 服していたが不要と言われ終診となっていた。以後は医療機関受診歴なし、内服薬なし。 【 現病歴 】当院受診前 5 ヶ月間で誘因なく体重が 7 ㎏増加していたが放置していた。2014 年 X-3 日にバイク運転中に転倒し右側胸部を打撲した。その後体動時に増悪する右側胸部痛、 呼吸苦を自覚し、X 日近医受診。胸部 CT で右肋骨骨折、心嚢液貯留を認め、加療目的に 同日当院紹介受診となった。 【 入院時所見 】身長 182 ㎝、体重 91 ㎏、体温 37.9 ℃、血圧 145/95 ㎜Hg、心拍数 68 bpm、 洞調律、呼吸数 17 回 / 分、SpO2 93%(鼻カヌラ 2L) 、頸静脈怒張なし、前頸部腫大なし、 四肢浮腫なし。血液検査:WBC 6,700/μL、RBC 370 × 10^4、Hb 11.6g/dL、PLT 17.6 × 10^4/μL、Na140mEq/L、K 3.4mEq/L、AST 43IU/L、ALT 27IU/L、LD 379IU/L、 BUN 13.2 ㎎/dL、Cre 1.12 ㎎/dL。 心電図:洞調律。胸部レントゲン:心陰影拡大あり、CPA は鋭。胸部造影 CT:右第 6、7 肋骨骨折、心嚢液貯留(血性疑い) 、右胸水貯留。 経胸壁心エコー:壁運動異常なし、EF 50% 程度、左室後壁に最大 33 ㎜ 程度のエコーフ リースペースあり。 【 経過 】当院受診時、バイタルサインは安定し、心タンポナーデを疑う所見はなかった。各 種検査から外傷による血性心嚢液貯留が疑われ、X+1 日待機的に人工心肺下に試験開胸術 を施行した。心嚢液は透明漿液性であり、明らかな心損傷なし。その後精査により、TSH 45.95 μIU/㎖, fT3 < 0.26 pg/㎖, fT4 < 0.03 ng/㎗であり、甲状腺機能低下症による心嚢液 貯留が疑われた。チラーヂンおよび利尿薬の内服を開始したところ、貯留速度は徐々に減少 し、X+21 日に退院となった。 【 考察 】甲状腺機能低下症による慢性心嚢液貯留が胸部外傷を機に見つかり、外傷性急性心 嚢液貯留と考えられ試験開胸術を要した一例を経験した。一般的に、心嚢液貯留が認められ た際は、まず循環動態に与えている影響を評価し、必要であれば心嚢ドレナージ等で循環動 態の安定をはかる。次に原因疾患を鑑別し治療介入する。鑑別疾患には、他に悪性腫瘍、結 核、膠原病、心不全、腎機能障害(尿毒症)等がある。本症例でも開胸術後、血液検査等で スクリーニングを行ったが、これらの疾患を示唆する所見はなかった。一般的に、甲状腺機 能低下症では心嚢液貯留は 3-6% にしか合併せず、貯留速度も遅いため、急激な症状の出現 は稀である。本症例では受診時に甲状腺機能低下症を示唆する所見は体重増加のみであり、 呼吸苦は胸部外傷を機に出現していた。外傷による血性心嚢液貯留の場合、自然止血が得ら れ循環動態が安定していても損傷部位が修復されていなければ再度出血し急変する危険性が ある。そのため、確定診断がついていなくとも試験開胸術を施行することは妥当と考えられ た。しかし、試験開胸術自体もかなりの侵襲となるため、本症例のように循環動態が安定し ている場合は、すぐに緊急手術ができる環境を整えたうえで心嚢穿刺による性状確認を考慮 してもよいかもしれない。 ― 43 ― D1-7 乳癌術後の化学療法中、ドセタキセルによる多臓器障害を伴う 重症全身性浮腫をきたした症例 ○多田羅 康章 1)、服部 洋一郎 1)、松尾 佳代子 1)、荻野 充利 2) 1 )明石医療センター 麻酔科、2 )同 乳腺外科 【 はじめに 】日本では 1980 年代以降癌罹患率は増加しており、乳癌の罹患率は、女性におい ては 19% と第 1 位である。女性における癌の死亡率では第 5 位となっている。 乳癌の治療は、局所に対して外科的切除または放射線療法となっている。全身に対する補助 療法として術前・術後の化学療法または、ホルモン療法を併用することが多い。今回、乳癌 術後の化学療法中にドセタキセルによる重症全身性浮腫をきたした 1 症例を経験したので報 告する。 【 症 例 】52 女 性、身 長 145 ㎝ 体 重 60.6 ㎏。家 族 歴、既 往 歴 に 特 記 す べきことは 無し。 2012/11/22 左乳癌に対して胸筋温存乳房切除術を施行。病理診断結果 sol. tub, n(1) 、 pT16 ㎜ ER(+:80%) 、PgR(+:100%) 、HER2-IHC(0) 、Ki-67:25.5%、T2N1M0Stage ⅡB であった。術後の経過は良好で退院となる。術後の補助療法として最も効果の高い多剤 併用療法を選択し、2013/2/4 より FEC100( エピルビシン・シクロホスファミド・フルオ ロウラシル)6 クール投与。2013/6/17 よりドセタキセル 4 クール開始した。発熱性好中球 減少きたし、減量・延期を行いながら 2013/9/6 最終投与した。同 12 日より好中球の改善を 認めるも食思不振、軽度全身性浮腫認めたため入院加療となった。入院後、利尿剤などによ る反応に乏しく徐々に呼吸状態悪化をきたしたため 2013/10/8 ICU にて人工呼吸器管理と なった。胸部レントゲンにて肺水腫、胸腹部 CT では両側胸水、腸管浮腫によるイレウス像 も認められた。採血上は感染傾向は認めないものの、DIC 所見認め、重症全身性浮腫・ DIC・ARDS の診断にて麻酔科・腎臓内科・呼吸器内科併診による治療を行った。治療効 果認められず 2013/11/1 死亡確認。 【 考察 】ドセタキセルの副作用として頻度不明ながらも DIC や全身性浮腫、多臓器不全など が報告されており、特に浮腫に対しては血管透過性亢進によるものと考えられ軽快までの中 央値は約 30 週と報告されている。軽快までの期間が比較的長いことから全身性にきたした 場合の治療方針及び全身管理が困難であることより、症状が軽度な時点での多科による早期 管理の強化が必要と考えられた。 ― 44 ― D2-1 急性呼吸不全をきたした慢性 GVHD の 1 例 ○藤野 光洋、堤 貴彦、狩野 謙一、吉田 浩輔、藤井 雅士、濱中 訓生、田中 博之、 竹下 淳、別府 賢、笹橋 望、志馬 伸朗 京都医療センター 46 歳男性。慢性骨髄増殖性悪性疾患に対して骨髄移植後、慢性 GVHD と診断されプレド ニゾロン 9 ㎎/day、タクロリムス内服中、2 型糖尿病、慢性腎不全の既往がある。2014 年 X 月 Y-2 日夕方より全身倦怠感を自覚され、Y-1 日より下痢、嘔吐、Y 日朝より呼吸困難を 訴え、当院救急外来に徒歩で受診された。初診時 E3V5M6 BT36.1℃ BP113/60 ㎜Hg HR150/ 分 SpO2 < 70%(室内気)と酸素化不良を認め、RR=39/ 分の頻呼吸、チアノーゼ 著明であった。CT 検査では、気道散布性の粒状影∼ consolidation を広範に認め、重症肺 炎の診断で ICU 入室となった。Nasal high flow を使用し、一旦呼吸状態改善したが、その 後再度呼吸不全が急激に進行し、高血圧、頻脈を認めた。心エコー上 EF は著明に低下し、 atypical balloning 様の壁運動異常を認め、たこつぼ型心筋症が疑われ、重症肺炎による敗 血症性ショックをベースとした ARDS として緊急気管挿管、人工呼吸管理を行い、MEPM, AZM で経験的抗菌薬加療を開始したが、病原菌の検出なく 3 日間のみで中止した。第 10 病 日に気管切開を施行し、呼吸器離脱を行い、第 36 病日に転院された。その 16 日後転院先で 再度呼吸困難をきたし当院救急搬送された。来院時 E4V5M6 BP203/120 ㎜Hg HR132/ 分 RR30/ 分 SpO2 88%(リザーバー酸素 15L/ 分)と高血圧、頻脈、酸素化不良を認めた。 NIPPV 装着、ニトログリセリン、ランジオロール、ニカルジピンで血圧コントロールを行 い、速やかに呼吸循環は安定化し、3 日後 ICU 退室となった。 本症例は急性呼吸不全の原因として当初肺炎合併 ARDS を疑ったが、再入院時の診断治 療から遡及的に見れば、高血圧性心不全に伴う心原性肺水腫が主病態であったと考えられる。 慢性 GVHD の心肺系合併症に関する文献的考察を含め報告する。 ― 45 ― D2-2 頚髄腫瘍が原因で急性Ⅱ型呼吸不全を来した 1 症例 ○猪飼 浩樹、熊澤 淳史、青柳 健一、小畠 久和、小原 章敏 市立堺病院 救急集中治療部 【 症例】53 歳男性。来院当日から呼吸苦を自覚し起坐呼吸を認め、近医を受診した。呼吸パター ンと動脈血液ガス所見(pH 7.149、pCO2 84.8 ㎜Hg、pO2 73.5 ㎜Hg、HCO3- 28.3 mEq/L (room air) )から重度気管支喘息重積発作と診断され、経過中に意識障害(E1V1M1)を来し たため、気管内挿管を施行の上当院に転院になった。 当院に到着した時点では意識レベルは改善していた(E4VtM6)が、呼吸は奇異性呼吸で 両側横隔神経麻痺を思わせる呼吸様式であり、呼吸サポートなしでの深呼吸による換気量は 400 ㎖程度と高度拘束性障害を来していた。レントゲンで右横隔膜挙上を認め、右横隔神経 麻痺の存在が示唆されたが、それだけではこの呼吸状態を説明しうるには不十分であった。 既往歴で 24 年前に頚髄髄膜腫に対して手術を施行されており、5 年前より右上下肢の不自由 さの自覚を認めていたとの情報を得たため、頚髄腫瘍の再発を考慮し頚部 MRI で確認する と、C3-C4 レベルに硬膜内髄外腫瘍を認め、頚髄を左側に著明に圧排していた。右横隔神 経麻痺に加えて頚髄髄膜腫の増大による左横隔神経不全麻痺が加わった事が原因と考え、頸 椎椎弓切除術および腫瘍摘出術を施行した。高度に神経を圧迫していた影響から術直後から 呼吸パターンの改善を認めず人工呼吸管理下での呼吸リハビリを要すると判断し、術翌日に 気管切開術を施行した。呼吸リハビリを継続し、第 50 病日に人工呼吸器から離脱すること ができた。 【 考察 】今回、呼吸パターンから両側横隔神経麻痺による呼吸不全と診断したが、呼吸不全を 診察する際に、様々な呼吸不全の呼吸パターンの違いを認識することは重要である。喘息は 呼気障害である一方、両側横隔神経麻痺は吸気障害である。吸気障害を呈する疾患の中でも 両側横隔神経麻痺による奇異性呼吸は特徴的な呼吸パターンであり、視診で認識可能である。 ― 46 ― D2-3 2 型呼吸不全をきたし診断に苦慮した重症筋無力症クリーゼの 1 例 ○是永 章 1)、辻本 登志英 1)、山田 裕樹 1)、山 千代 孝夫 2) 一幸 1)、亀井 純 1)、置塩 裕子 1)、 1 )日本赤十字社 和歌山医療センター 集中治療部、2 )同 救急部 【 症例 】80 代男性。 【 主訴 】意識障害。 【 既往歴 】頸部後靭帯骨化症、白内障。 【 現病歴 】2013 年末より全身倦怠感が出現し、精査を行ったが特記すべき異常を認めなかっ た。2014 年 1 月に当院眼科外来受診し、15 時頃に瞳孔散瞳薬を投与後から意識レベルが低 下したため、ER に搬送された。 【 ER 経過 】来院時 E1V1M1 で下顎呼吸、橈骨動脈触知微弱、徐脈であったため、挿管、人 工呼吸管理とした。動脈血液ガス分析で pH 7.17、pCO2 91.7 ㎜Hg と CO2 ナルコーシスを 認めたが、頭部 CT、MRI、体幹部造影 CT、心エコーで特記すべき異常は認めず、原因不 明の 2 型呼吸不全で ICU に入室した。 【 入院後経過 】挿管後数時間して意識清明となったが、四肢に MMT3 の筋力低下を認めた。 入院 3 日目には四肢の MMT は 4 に、PaCO2 も 50 ㎜Hg 前後と改善傾向にあり、入院 4 日 目に抜管したが、頻呼吸、CO2 貯留を認めたため、NPPV を開始した。抜管後より、嗄声、 嚥下困難の症状が持続していた事から、重症筋無力症クリーゼを疑い、入院 7 日目にテンシ ロン試験を施行した所、嗄声改善、眼瞼裂開大あり、誘発筋電図でも waning を認めたこと から、全身型重症筋無力症およびクリーゼと診断し、同日より免疫グロブリン大量療法を施 行した。NPPV からは離脱できなかったが、胸郭運動、筋力、発声ともに改善傾向となり、 入院 11 日目に集中治療室から退室した。その後、入院 20 日目には NPPV から離脱し、入 院 100 日目に自宅退院となった。 【 考察及び結語 】重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は自己抗体により神経筋接合部 の刺激伝導が障害される自己免疫疾患で、初発症状は眼瞼下垂や眼球運動障害による複視な どの眼症状が多く、四肢筋力低下や嚥下障害、構音障害、呼吸障害を来す事がある。近年世 界中で高齢発症の MG の頻度が増加しており、2006 年の本邦の全国疫学調査でも 50 才以上 に発症した MG は全体の約 40%(1987 年 30%)に、65 才以上で発症した MG は 16.8%(1987 年 7.3%)と増加している。一方で高齢者では、眼瞼皮膚は加齢とともに弛み、眼裂は狭小 化するため、眼瞼下垂の評価が困難となる事や、白内障などにより軽度の複視には気づかれ ない場合が多い。 本症例でも、診断後再度病歴聴取を行った所、5 年前より両眼瞼が重い感じを自覚し、1 年前より悪化していた事が判明、また入室後の身体所見でも眼瞼裂狭小化を認めていた。高 齢者の原因不明の急性 2 型呼吸不全を認めた際にも、重症筋無力症を鑑別疾患に挙げ問診や 身体診察を行う必要がある。 ― 47 ― D2-4 アスペルギルス菌塊塞栓による 気管支チェックバルブを生じたと考えられる症例 ○松浦 秀記、井上 聡己、野村 泰充、西和田 忠、安宅 一晃、川口 昌彦 奈良県立医科大学麻酔科学教室 集中治療部 血液悪性腫瘍患者の化学療法に伴う好中球減少時に発症する急性呼吸器感染症では侵襲性 肺アスペルギルス症である場合がある。今回侵襲性肺アスペルギルス症における菌塊により 呼吸不全を呈した症例を経験したので報告する。症例は 12 歳の女児。急性骨髄性白血病 (M2)で化学療法中に広域抗生剤投与にもかかわらず発熱が続いていた。真菌による呼吸器 感染を疑いミカファンギンも投与開始されたが喀血を生じ急激に呼吸不全に至った。胸部 CT にて気管分岐部に網状異物が認められたが血痰もしくは血栓であると思われた。気道出 血も生じていると考えられ人工呼吸目的に集中治療室入室となった。入室時 100% 酸素投与 下にバルブバックマスク換気を行っていたが SpO2 は 90% 前後であったため直ちに気管挿 管をした。しかしバックが固く換気困難であった。SpO2 も低下し血圧測定不可能、徐脈傾 向になった。ほとんど胸壁は動いていなかったが左肺が過膨張気味で打診で鼓音がしたため 緊張性気胸を疑い 18G の静脈留置針で前胸部第 3/4 肋間あたりを穿刺した。すると大量の ガスが排出され換気可能となり徐脈が解除された。直ちに左胸腔ドレーンを留置した。留置 後気管支鏡にて観察すると左気管支有意に血痰様の塞栓があり鉗子を用いて摘出した。手技 中何度か換気不全に陥ったが塞栓が気管を閉鎖するためと考えられた。塞栓の除去により呼 吸条件は改善し呼吸器から離脱することができた。アムホテリシン B の静脈投与、そして ボリコナゾールの内服にて感染は制御することができた。後に塞栓は血痰を含んだアスペル ギルス菌塊であることが分かった。入室時の呼吸不全、循環不全は緊張性気胸のためと考え られたが気管支塞栓のチェックバルブによる左肺過膨張が原因であった可能性も考えられた。 肺アスペルギルス症にかかわらず気管支チェックバルブが存在する場合陽圧人工呼吸時には 肺過膨張などが問題とされるがその問題点が実際報告されることは少ない。今回われわれの 症例では気管支チェックバルブが存在していた可能性は高く肺過膨張から緊張性気胸もしく は肺過膨張による縦隔圧迫から循環不全が生じたと考えられる。気管支チェックバルブが存 在する呼吸不全の場合であっても陽圧人工呼吸が必要となる場合がある。その際には緊張性 気胸や肺過膨張による循環不全に陥る可能性があることを認識しなければならない。肺過膨 張に対し胸郭よりの脱気が必要かの判断は困難であるかもしれないが緊急回避的に施行しな ければならない場合があるのかもしれない。 ― 48 ― D2-5 縦隔腫瘍による気道閉塞に対し、異なった治療法を 選択した 2 症例 ○喜多 加枝 1)、三住 拓誉 2)、江木 盛時 2)、溝渕 知司 1) 1 )神戸大学医学部附属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部 【 はじめに 】縦隔腫瘍は時に気道を圧排して呼吸困難を起こすが、その腫瘍の性質や発生部 位によって ICU における管理法も異なる。今回、気道閉塞を伴った縦隔腫瘍の 2 症例に対 し挿管・人工呼吸管理を行い、それぞれ異なった対応によって抜管に至った症例を経験した ので報告する。 【 症例 1 】72 歳女性。2 ヶ月前より頚部・縦隔の悪性リンパ腫疑いで当院血液腫瘍内科にて フォローされていた。3 日前より喘鳴が出現し、呼吸困難感が増悪したため救急車にて来院 した。来院時仰臥位での呼吸は困難であった。CT 上、右鎖骨上窩から縦隔にかけて既知の 腫瘍が増大し、気管軟骨に浸潤して気管狭窄を来していた。ICU 入室後、体外循環用シー スを大腿静脈に挿入した後に挿管し、気管支鏡にて気管内腔を観察しながら狭窄部まで チューブを進め留置した。以後、鎮静下に人工呼吸管理とし、入室 2 日目にプレドニゾロン を開始するとともにリンパ節生検を行い、6 日目に小細胞癌の確定診断に至った。7 日目に 放射線照射、8 日目より化学療法が開始となった。14 日目の CT にて腫瘍の縮小と気管内腔 の拡大を認め、同日抜管した。以後、気道・呼吸に問題なく 16 日目に ICU 退室となった。 【 症例 2 】59 歳女性。1 年前から嚥下困難を自覚していた。突然呼吸苦が出現し、救急車に て前医を受診した。呼吸状態が悪化し挿管され、CT 上、気管支分岐部周辺を後面から圧排 する腫瘍を認め、精査加療目的に当院搬送、ICU 入室となった。即日、食道粘膜下腫瘍の 診断のもと、緊急食道亜全摘、食道皮膚瘻・腸瘻作成術が行われた。術中に気管膜様部の剥 離を行いしばらく創部安静が必要であり、また術前より誤嚥性肺炎を併発していたことから、 術後も引き続き鎮静・人工呼吸管理を行った。術後 6 日目の CT にて気管狭窄の改善を確認 し、また酸素化が改善傾向にあったため術後 7 日目に抜管し、9 日目に ICU 退室となった。 【 考察 】縦隔腫瘍は縦隔内の組織から発生した腫瘍の総称である。一般的に治療法はその組 織と病期によって異なるが、窒息の危険がある場合、体外循環などを含めた対応が必要とな る。今回の症例ではいずれも体外循環を必要とせず気道が確保できた。症例 1 では当初、薬 物療法が著効する悪性リンパ腫を疑い、確定診断前にステロイド療法を行った。また画像上、 気管を含む周辺多臓器浸潤が認められたため外科的治療を選択しなかった。しかし病理診断 の結果、小細胞癌と判明し、急遽放射線照射と化学療法を行った。幸いなことに腫瘍縮小の 効果を認め抜管に至ったが、効果が認められなかった場合は気管ステントを留置する予定で あった。症例 2 は後縦隔腫瘍であり、成人の場合ほとんどが良性の神経原性腫瘍で外科的切 除の対象となる。今回の症例も病理組織診断は神経鞘腫であった。 【 結語 】気道閉塞を伴った縦隔腫瘍症例においてはその組織系・病期を考慮しつつ、早急な 対応が求められる。 ― 49 ― D2-6 体外式膜型人工肺を用い、食道癌術後の呼吸不全患者を 救命できた一症例 ○今川 憲太郎 高槻赤十字病院 麻酔科 食道癌術後に食道気管瘻を形成し呼吸不全に陥った患者に体外式膜型人工肺(以下 ECMO)を用い救命できた症例を経験したので報告する。 症例:58 歳 男性。身長;162㎝、体重;44 ㎏。既往歴は特になく、約 30 年の喫煙歴がある。 食道癌に対して胸腔鏡下食道切除胃管再建術が行われた。術翌日、人工呼吸器から離脱し気 管内分泌物の喀出もでき、特に問題なく経過していたが食道気管瘻、誤嚥性肺炎を併発し呼 吸状態が徐々に悪化したため、術後 8 日目、気管切開施行し人工呼吸管理となった。しかし、 瘻孔からのリークが増悪し気胸を起こし、肺炎が増悪した。そのため術後 13 日、食道気管 瘻に対して胃管離断術、および気管に対して広背筋皮弁術を行った。しかし、胸腔内への リークが増大し、人工呼吸器での酸素化が困難になり循環動態も不安定になってきたため、 術後 16 日目 ECMO を使用した。ECMO 使用後は酸素化も改善し循環も落ち着いてきたた め、ドパミンの量は減量できるようになった。術後 20 日目、気管瘻孔に対しステント留置 を行い、気管からのリークも改善したため術後 21 日目、P/F 比は 110 ほどであったが、感 染や出血の可能性も考慮し ECMO を離脱した。 ECMO 離脱後は炎症反応も軽快し、酸素化も徐々に改善を認め、術後 34 日目に人工呼吸 器から離脱できた。 食道癌術後に呼吸不全に陥り ECMO を使用し救命した報告は過去にもある。しかし、食 道気管支瘻や縦隔炎などの合併症が起こると治療に難渋する。今回の症例では、気管内ステ ントを留置した後すぐに ECMO を離脱し感染や出血の可能性を低くしたのが救命した一つ の要因であったと考える。 ― 50 ― D2-7 急速な胸水ドレナージにより再膨張性肺水腫をきたした 1 例 ○谷 大輔、松本 充弘、前田 英里、山本 泰史、二宮 万理恵、西田 朋代、 香河 清和、高田 幸治 市立豊中病院 麻酔科 再膨張性肺水腫(以下 RPE:Re-expansion pulmonary edema)は、胸水ドレナージ後な どに急激に発症して、死亡率 19% との報告もある重篤な病態である。今回、虚脱から数日 経過した肺に対し急速な胸水ドレナージを行い、約 3 時間で完成した RPE の 1 例を経験し たので報告する。 【 症例 】76 歳女性、147 ㎝、64 ㎏。 【 既往歴 】膵頭十二指腸切除術(56 歳) 、潜在性甲状腺機能低下症、糖尿病性腎症。 【 現病歴 】75 歳から全身浮腫を認めた。術後肝不全は否定的で、甲状腺機能低下症の疑いで レボチロキシンが開始された。今回、全身浮腫増悪と体動時呼吸困難が出現し入院となった。 胸部レントゲンでは右側優位の両側胸水貯留を認めた。甲状腺機能は良好で、肝機能障害 (Child-Pugh 分類 C)を認め、利尿剤、アルブミンの投与を行ったが効果は限定的で胸水貯 留は増悪傾向を示した。入院 12 日目に呼吸苦と低酸素血症が著明となり、圧排性無気肺解 除を目的に胸水ドレナージを行った。8Fr シリコンチューブを挿入し、吸引圧 10 ㎝H2 O で 持続吸引し、2 時間で排液 1,000 ㎖を得た。その約 1 時間後に呼吸状態が急速に悪化した。 リザーバーマスク 10ℓ/min 酸素投与下でも SPO2:80%、PO2:66 ㎜Hg、PCO2:59 ㎜Hg と重度の呼吸不全を呈し、呼吸管理目的で ICU 入室となった。病歴、胸部レントゲン像か ら RPE と診断し、気管挿管・人工呼吸管理を開始した。入室直後、BILEVEL, FiO2:0.8, PEEP 30/10 ㎝H2 O で PO2:152 ㎜Hg、PCO2:55 ㎜Hg を認めたが、翌日には FiO2:0.8 で PO2:45 ㎜Hg、PCO2:46 ㎜Hg と急速に増悪した。一方、低血圧、尿量低下、貧血、凝 固能低下に対して、輸液負荷、ノルアドレナリン 0.06 ㎍/㎏/min・ドパミン 3 ㎍/㎏/min・ カルペリチド 0.1 ㎍/㎏/min、アルブミン、RCC、FFP を投与したが効果は乏しかった。 ICU 入室 3 日目除水及び電解質補正の目的で CHDF を導入した。緩やかに除水を進めてい たが、血行動態は不安定で、翌日朝に著しい血圧低下を認めたため CHDF を終了した。そ の後も循環動態改善せず、同日永眠された。 RPE 発 生 の risk factor と し て 若 年、女 性、3 日 以 上 の 肺 の 虚 脱、30% 以 上 の 虚 脱、 2,000 ㎖以上の胸水ドレナージ、10 分以内の急速な再膨張、持続吸引を指摘する報告が散見 される。ドレナージ中の肺の変化は微小にとどめ、緩徐に膨張させることが重要と推測され るが、最適な条件については未だ明らかでない。RPE は発症すると重篤になり得るため、 リスクが少ないとされる方法でドレナージを行う必要がある。 ― 51 ― ネーザルハイフローの水消費量についての実験的検討 ― 流量の影響 ― ○富田 敏司 1)、平尾 収 1)、山下 健次 1)、田中 成和 1)、榎谷 佑亮 1)、西村 信哉 1)、 森 隆比古 2) 1 )大阪府立急性期・総合医療センター 麻酔科、2 )同 医療情報部 【 目的 】ネーザルハイフローは低流量酸素療法に比べて水消費量が多い。今回、流量の影響 について実験的検討を行った。 【 方法 】吸気ガスは空気−酸素ブレンダ(OA2060、サンユーテクノロジー)で FiO2 0.4 に設 定し、シングルヒータ型成人用ディスポーザブル回路(RT202、F & P) 、自動給水型加湿 チャンバー (MR290、F&P) 、ネーザルカニューレ(OptiflowTM、F&P)を通って流れる。 カニューレは開放状態とした。加温加湿器(MR850、F & P)はオートモードに設定した。 蒸留水 500 ㎖入りボトル 3 本を連結管で連結し、加湿チャンバーの給水ラインと接続した。 給水ラインのセットアップ時には適正水位で給水が止まることを確認して加温加湿器の電源 を入れた。そして、流量を 30、40、50、60 L/min に変化させた場合について、1 時間毎に チャンバーの出口温度と回路先端の温度の表示値の記録およびボトルの重量減から水消費量 を計算し 8 時間後まで行った。室温は 24 ∼ 26℃であった。 【 結果 】チャンバーの出口温度は約 37℃、回路先端の温度も約 40℃で安定していた。流量 の差による水消費量の経時的な増加を示す(図) 。流量 30、40、50、60 L/min における 8 時 間後の総水消費量は、648、894、1,108、1,223 ㎖であった。各流量における 1 時間当たりの 水消費量の平均値・標準偏差は 81.1 ± 7.1、110.5 ± 5.4、138.5 ± 6.8、153.2 ± 3.2 ㎖で有意 差が見られた(p < 0.01) 。 【 考察 】パスオーバー型加温加湿器は吸気ガスがチャンバー内の温水との接触により加温加 湿される構造である。今回の検討で水消費量と流量の関係が実証され、水消費量の予測から 空焚き防止に役立つ可能性ある。 【 結語 】ネーザルハイフローの水消費量は吸気流量に伴って増加する。 1400 60L/min 1200 水消費量 (㎖) D3-1 50L/min 1000 40L/min 800 30L/min 600 400 200 0 1 2 3 4 5 6 7 8 時間 (時) 図 吸気流量の差による水消費量の経時的な増加の様子 ― 52 ― D3-2 Nasal High Flow を用いて管理した小児 40 例の後方視的研究 ○重川 周、橘 一也、竹内 宗之、京極 都、水口 壮一、堀口 佑、山下 智範、 文 一恵、津田 雅世、旗智 武志、清水 義之、木内 恵子 大阪府立母子保健総合医療センター 【 背景 】Nasal High Flow(以下 NHF)は、鼻カニューレから高流量の酸素を流すことによっ て、①高濃度酸素の供給、②より正確な濃度の酸素供給、③十分な加湿効果、④解剖学的 死腔の洗い流し効果、⑤ CPAP 効果、⑥ 圧迫感がなく快適性向上などが期待できる。近年 成人での有用性の報告は多いが、小児の報告はまだ少ない。そこで当院での小児における NHF の使用状況やその効果を後方視的に調査した。 【 対象 】当院小児集中治療室(PICU)に 2013 年 1 月以降 1 年間に入室した患児のうち、NHF を使用した症例。 【 方法 】診療録より後方視的に調査した。調査項目は NHF 導入直前の呼吸管理法、導入目 的(CPAP 効果、加湿効果、高濃度酸素投与、快適性向上の 4 つに分類) 、導入時ガス流量、 使用日数、NHF 失敗(導入後 48 時間以内に、より侵襲的な呼吸管理を要した)症例数とした。 NHF の有効性評価として、NHF 導入前後での呼吸数、心拍数、PaO2 /FIO(P/F) 比の変 2 化を調査した。当 PICU では 1 時間ごとの呼吸数、心拍数が記録されており、呼吸数は導入 前後 4 時間の平均値で比較し、心拍数は導入前後 1 時間の値で比較した。P/F 比の比較は NHF 導入直前に抜管された症例で行ない、心臓外科姑息手術後の症例は除外した。NHF 導入前後の呼吸数、心拍数、P/F 比の変化は paired t-test を用いて統計処理を行い、P < 0.05 を有意差ありとした。 【 結果 】対象となった小児は 40 例(月齢中央値 14 ヶ月(IQR 4-35 ヶ月) 、体重 7.3 ㎏(4.79.5 ㎏) 。内訳は、心臓血管外科術後 22 例、小児外科術後 4 例、急性呼吸不全 13 例、その他 1 例であった。NHF 導入目的は、CPAP 効果 32 例、加湿効果 24 例、高濃度酸素投与 14 例、 快適性向上 5 例であった(1 症例に複数目的) 。NHF 導入時のガス流量は 1.8 ± 0.7 L/㎏/ min(mean ± SD) 、使用日数は 6.7 ± 8.4 日であった。不快感で NHF の継続が不可能で あった症例が 1 例、NHF 失敗症例が 2 例(挿管 1 例、NPPV1 例)であった。全 40 例の NHF 導入前後での呼吸数は 38 ± 15 から 35 ± 12 回 / 分へ有意に減少し(P = 0.01) 、心拍数は 135 ± 23 から 129 ± 29 回 / 分へと低下傾向を示した。また NHF 導入前に鼻カニューラに よる酸素投与を行っていた症例(14 例)でも導入後呼吸数は有意に低下した(45 ± 16 → 40 ± 13 回 / 分 P=0.03) 。一方、抜管直後に NHF を導入した症例(15 例)では、呼吸数は 33 ± 10 → 31 ± 11 回 / 分、心拍数は 137 ± 19 → 135 ± 21 回 / 分、P/F 比は 376 ± 76 → 311 ± 118 と有意な変化は認めず、NHF が有効な呼吸補助となったかもしれない。今回の調査で は NHF 使用によると思われる重大な合併症は認めなかった。 【 考察 】NHF は小児でも受け入れが良好であり、バイタルの変化から類推すると呼吸補助 効果があると考えられた。 ― 53 ― D3-3 敗血症における感染巣別のプロカルシトニン値と ノルアドレナリン投与量 ○小谷 祐樹 1)、辻本 登志英 1)、亀井 純 1)、是永 章 1)、山 置塩 裕子 1)、千代 孝夫 2) 一幸 1)、山田 裕樹 1)、 1 )日本赤十字社和歌山医療センター集中治療部、2 )同 救急部 【 背景 】プロカルシトニン(以下 PCT)は敗血症の診断マーカーとして、日本でも 2006 年に 保険適応を得て以来、広く用いられている。しかし、PCT 値と敗血症の感染巣との関係に ついては一定の見解が得られていない。そこで今回は、敗血症における感染巣ごとの最大 PCT 値、さらに最大 PCT 値とノルアドレナリンの最大用量の関係について調査した。 【 方法 】2013 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日に当院 ICU に入室した症例のうち、血清 PCT 値を測定した敗血症症例は 125 例で、各症例での最大 PCT 値を調査し、感染巣ごとに集計 した。感染巣のうち 10 例以上あったものは、下部消化管穿孔及び腹腔内膿瘍(31 例) 、肺炎 (16 例) 、軟部組織感染症(14 例) 、尿路感染症(14 例) 、上部消化管穿孔(13 例)の 5 つで計 88 例であった。この 5 つの感染巣において、最大 PCT 値を比較し、最大 PCT 値とノルア ドレナリンの最大用量の相関を検討した。統計解析は、分散が等しいと仮定できる 2 群の差 の検定にはスチューデントの t 検定を用いた。また相関係数はスピアマンの順位相関係数を 用いた。 【 結果 】全 88 例では、平均の最大 PCT 値は 52.3 ng/㎖であった。平均のノルアドレナリン の最大用量は 0.259γであり、最大 PCT 値とノルアドレナリンの最大用量の間には rs=0.46 の正の相関が見られた。感染巣別では、平均の最大 PCT 値は、尿路感染症(111 ng/㎖) 、 下部消化管穿孔及び腹腔内膿瘍(53.6 ng/㎖) 、上部消化管穿孔(48.6 ng/㎖) 、軟部組織感染 症(40.9 ng/㎖) 、肺炎(11.6 ng/㎖)の順に高値であった。また平均のノルアドレナリンの 最大用量は、尿路感染症(0.339γ) 、軟部組織感染症(0.310γ) 、下部消化管穿孔及び腹腔 内膿瘍(0.264γ) 、肺炎(0.205γ) 、上部消化管穿孔(0.174γ)の順に高値であった。最大 PCT 値とノルアドレナリンの最大用量との間には、尿路感染症(rs=0.88) 、軟部組織感染 症(rs=0.75) 、上部消化管穿孔(rs=0.61) 、肺炎(rs=0.57) 、下部消化管穿孔及び腹腔内膿瘍 (rs=0.15)の順に強い正の相関が見られた。 【 結論 】ICU 管理を要する敗血症患者では、感染巣によって PCT 値の分布が異なり、尿路 感染症で高値となる傾向があった。また尿路感染症や軟部組織感染症では、最大 PCT 値と ノルアドレナリンの最大用量の間に強い正の相関があることが示唆された。 ― 54 ― D3-4 神戸大学附属病院集中治療部における誤嚥性肺炎に対する 薬物療法 ○岡田 卓也 1)、三住 拓誉 2)、江木 盛時 2)、溝渕 知司 1) 1 )神戸大学医学部附属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部 【 はじめに 】ARDS の主たる原因に誤嚥性肺炎がある。胃内容物を気管内に誤嚥すると、胃 酸などが原因となる化学性肺臓炎と腸内細菌などによる感染性肺炎を起こすといわれている。 近年、誤嚥による化学性肺臓炎に対するシベレスタットの有効性が報告された。また以前よ りステロイドによる治療が有効であるという研究もある。我々はそれらを組み合わせて治療 を行うことで良好な結果を得ているので報告する。 【 症例 1 】66 歳、男性。食道癌術後患者で咽頭機能が著しく低下していた。術後 2 日目に CT にて右下肺を中心とした誤嚥像を認め、また培養より腸内細菌をみとめた。徐々に酸素 化が悪化し 6 日目に再挿管となった。細菌性肺炎に対し抗生剤の効果が認められるようにな り 8 日目にメチルプレドニゾロンを投与開始し、酸素化の改善を認め 12 日目に抜管に至った。 【 症例 2 】28 歳、男性。先天性二分脊椎症、水頭症のため V-P シャントを造設していたが、 シャント閉塞のため再建術が施行された。術前から嘔気はあったが嘔吐は認められていな かった。迅速導入による麻酔が行われたが、導入中に嘔吐し、気管内から吐物を吸引した。 術後、挿管・鎮静下で ICU 入室した。ただちに、シベレスタットを開始したところ、翌日 には酸素化の改善が認められ、抜管後病棟帰室となった。 【 症例 3 】81 歳、男性。肝細胞癌に対し肝動脈化学塞栓術施行目的にて入院中であったが、 病棟にて経腸栄養剤を誤嚥した。ICU 入室後挿管管理とし、すぐにシベレスタットを開始 した。以後酸素化の改善が認められ 6 日後抜管に至った。 【 症例 4 】78 歳、男性。食道癌術後患者で咽頭機能が低下していた。術後 3 日目に酸素化の 低下があったため再挿管、シベレスタットを開始した。感染のコントロールがついたため 7 日目にメチルプレドニゾロンに変更、開始した。その後酸素化が改善し安定化したため 16 日目に気管切開を施行し、37 日目に呼吸器から離脱した。 【 考察 】シベレスタットは ALI/ARDS に適応のある薬剤であるが、欧米ではその有効性が 否定されている。しかし肺傷害の早期投与においては有効性があるという研究もあり、院内 で発生した誤嚥性肺炎は、肺傷害が起こる超早期からシベレスタットを投与することができ るため、よい適応になる可能性がある。また一方、ステロイドは近年 ARDS において早期 持続少量投与の有効性が報告されているが、感染を増長する副作用を持つ薬剤でもある。 我々はそれぞれの薬剤の特性を活かし、誤嚥が発生した早い段階でシベレスタットを使用し、 感染がない、もしくはコントロールできた段階でステロイドを使うことによって良好な結果 を得ることができたと考えている。今後、誤嚥性肺炎に対するステロイド/シベレスタット の効果の前向き研究が行われることが期待される。 ― 55 ― D3-5 非心臓術後または内科疾患で集中治療部に入室し ランジオロールの持続投与を行った 33 症例の検討 ○山下 智範、内山 昭則、宇治 満喜子、滝本 浩平、吉田 健史、柏 庸三、 酒井 佳奈紀、平松 大典、大田 典之、井口 直也、藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療科 【 背景と対象 】本邦では持続静注用のランジオロールが周術期の循環管理に広く使用されて いるが、本年初めに発表されたメタアナリシスでは、非心臓血管手術患者における周術期の βブロッカーの使用に疑問符が付けられている。2007 年の POISE trial でも脳梗塞と死亡 率の上昇の可能性が報告されている。我々は平成 24 年 4 月∼平成 26 年 3 月に阪大病院 ICU でランジオロールの持続投与を行った非心臓手術後患者もしくは内科疾患患者を後方視的に 調査し、あらためてランジオロールの効果と安全性について検討した。 【 結果 】33 例で計 43 回、ランジオロールの持続投与が行われた。症例は食道癌術後 15 例、移 植術後 7 例、その他の術後 6 例、内科疾患 5 例であり、ICU での死亡例が 3 例であった。6 例 で術前心疾患(うち 2 例が不整脈疾患)を有し、6 例はβブロッカー、3 例は抗不整脈薬を術前 から内服していた。ランジオロールの開始量は 1.65 ±1.00γ、最大投与量は 2.32 ±1.39γ、 投与期間は 3.53 ± 2.79 日間であった(平均±標準偏差) 。使用適応は心房細動 23 回、洞性頻 脈 13 回、その他の上室性頻脈 17 回、心室性不整脈 1 回、不明 2 回であった。心房細動では 1 例を除く全例で少なくとも一時的に洞調律へ復帰した。心拍数は投与前 117 ± 31 bpm、1 時 間後 100 ± 26 bpm、6 時間後 96 ± 24 bpm、収縮期血圧は投与前 103 ± 27 ㎜Hg、1 時間後 101 ± 25 ㎜Hg、6 時間後 101 ± 24 ㎜Hg であり、持続投与中の徐脈(< 50 bpm)を認めた症 例は 1 例のみであったが、一時的な血圧低下(収縮期血圧< 75 ㎜Hg)を 21 例で認めた。26 例で急速投与を行ったが、重大な副作用はなかった。ICU で経口βブロッカーの内服を開 始した症例は 8 例(術前内服していた 6 例を含む) 、病棟への持続投与継続は 6 例であった。 明らかな脳梗塞の発症例は無かった。 【 考察 】ランジオロールの持続投与は心拍数およびリズムのコントロールに有用であった。 持続投与中の血圧は保たれ、21 例で一時的な血圧低下を認めたが、頻脈発作や併用薬によ るものも含まれるため、ランジオロールとの因果関係は不明である。術後の頻脈性不整脈に 対するランジオロールの容量は 10 ∼ 40γであるが、本調査ではより少ない使用量でも十分 有効であった。食道癌など経口内服が不可能なため長期の持続静注を要する症例もある。今 回は重大な副作用は認めなかったが、止むを得ず一般病棟で使用を継続する場合、心電図や 血圧を含めた十分なモニタリングが必須であろう。 【 結論 】周術期の心拍数およびリズムコントロールにβブロッカーは有効と考えられるが、 十分な観察とモニター下に行うべきであり、安易な使用は慎むべきである。 ― 56 ― D3-6 大動脈弁置換術単独施行された大動脈弁狭窄症患者に対し、 長期に ICU 管理を必要とした症例の検討 ○安本 寛章 1)、徳平 夏子 2)、田畑 雄一 2)、井上 美帆 2)、三井 誠司 2)、 黄瀬 ひろみ 2)、木村 彰夫 2)、橋本 悟 2)、佐和 貞治 1) 1 )京都府立医科大学医学部附属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部 大動脈弁狭窄症(以下 AS)はその成因として、リウマチ性、先天性二尖弁に加え、加齢 による影響が挙げられ、高齢社会である本邦において、臨床上重要な疾患と考えられる。そ して、その重症度により、症状、運動制限の改善、左室機能の保護を目的として、大動脈弁 置換術(以下 AVR)による介入が行われているが、現行の開心術の周術期管理について検討 を行なった。 当院で実施された AVR 術後症例について、当院 ICU データベースに基づき 2009 年 4 月 ∼ 2013 年 3 月の ICU 入室患者を検討した。全開心術(968 例)の内、AVR を施行された患 者は 259 例、このうち AS に対し待機的に施行された AVR 単独症例は 72 例であり、ICU 在室日数 3.0 ± 2.8( 中央値 3)日、年齢 42-92( 中央値 75)歳、男女比 32:40 であった。 AVR 単独症例の転帰については、30 日死亡率は 0% であり、周術期においては概ね予後 良好であったが、一部 ICU 在室期間が長期化する症例を認めた。そこで、ICU 在室期間に より経過良好群(ICU 在室期間 5 日未満) 、経過不良群(同 5 日以上)として比較検討した。 経過良好群 65 例;ICU 在室日数 3.0 ± 0.7( 中央値 2)日、年齢 42-92( 中央値 75)歳、男女 比 30:35、経過不良群 7 例;10 ± 5.8( 中央値 7)日、61-79( 中央値 77)歳、男女比 2:5 で あった。 手術関連因子については、経過不良群で人工心肺時間が延長し(良好群:145.3 ± 38.2 分、 不 良 群:166.0 ± 64.0 分) 、APACHE(Ⅱ)ス コ ア は 高 値(良 好 群:12.4 ± 4.9、 不 良 群: 18.1 ± 5.9)する傾向を認め、手術経過と ICU 入室時所見が、ICU 在室期間に影響を与える 可能性が示唆された。患者関連因子については、入室前の心疾患の重症度は 2 群間に差は認 められず、また、年齢分布については 70 歳以上の割合は 2 群間に有意差は認められなかっ た(p=0.90, χ2 検定) 。経過不良群 7 例の ICU 経過については、酸素化不良(6 例)が最も多 く、治療を要した不整脈(4 例) 、血液浄化法(4 例) (非透析患者 3 例を含む) 、心不全(3 例) 、 再開胸止血術(2 例) 、感染(2 例) 、中枢神経障害(1 例)であった。 【 考察 】大動脈弁狭窄症に対する待機的動脈弁置換術後症例において、9.7% の症例で長期 の ICU 管理を要した。ICU 在室中の経過は多岐にわたることが明らかになった。 ― 57 ― D3-7 重症 ARDS に筋弛緩薬を使用した症例の検討 ○小山 有紀子、吉田 健史、宇治 満喜子、井口 直也、大田 典之、平松 大典、 酒井 佳奈紀、内山 昭則、藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療部 【 背景 】近年、重症 ARDS で人工呼吸器を装着した患者に対する筋弛緩薬の早期投与が予 後を改善したという報告がある(NEJM 2010;363:1107) 。我々は中等症∼重症 ARDS 患 者の発症早期に 48 時間の筋弛緩薬持続投与下に人工呼吸を行っている。筋弛緩の適応基準 は発症 48 時間以内の ARDS 症例で P/F 比 150 未満、深鎮静下でも自発呼吸努力が強く一回 換気量(Vt)を 8 ㎖/㎏EBW 以下に制限できないこととした。これまでに経験した 5 症例に ついて報告する。 【 症例 】ARDS 発症原因は、癌化学療法後の骨髄抑制 + 細菌性肺炎 2 例、間質性肺炎 + 膵炎、 間質性肺炎 + アスペルギルス肺炎、食道癌術後の誤嚥性肺炎がそれぞれ 1 例であった。筋 、 弛 緩 導 入 直 前 の 呼 吸 条 件 は PCV+A/C モ ー ド、PCV 13.4 ± 3.3 ㎝H2 O(mean ± SD) PEEP 9.2 ± 4.2 ㎝H2 O で、P/F 比 109.2 ± 33.7、鎮静レベルは RASS スコア -4 ∼ -5 にて も Vt 11.6 ± 4.4 ㎖/㎏EBW であった。1 症例は PaCO2 の貯留、pH の低下により担当医の 判断で筋弛緩薬投与を 2 時間弱で中止した。4 症例では 46.0 ± 7.3 hr の筋弛緩薬の投与を 行った。ベクロニウム(1.5 ∼ 4 ㎎/H) 、もしくはロクロニウム(10 ∼ 20 ㎎/H)を用い、BIS モニターでスコア 40 を目標に鎮静を行った。Vt 6 ㎖/㎏EBW を目標とし吸気終末圧が 35 ㎝H2 O を超えないように、pH > 7.2 を目標として吸気圧、呼吸回数を調節した。Vt/㎏ EBW と P/F 比の推移をグラフに示す。pH は直前 7.42 ± 0.05 から 60 分後に 7.25 ± 0.13、 PaCO2 は直前 37 ± 6.32 ㎜Hg から 60 分後 69.5 ± 26.5 ㎜Hg と増加した。投与中に著明な血 圧低下や不整脈の発生等の合併症はなかった。予後は、筋弛緩薬を 2 時間で中止した 1 症例 は呼吸状態が改善せずに、1 症例は基礎疾患の悪化により死亡した。3 症例は酸素化改善し 人工呼吸から離脱でき ICU から退室した。 【 考察 】ARDS 患者ではしばしば吸気努力が強く胸腔内圧の陰圧が増大する。補助換気中に 肺胞にかかる経肺圧は、同一の気道内圧でも胸腔内圧によって増大し肺障害を進行させる可 能性がある。筋弛緩薬を使用により換気量を制限し経肺圧を下げ、予後の改善につながる可 能性がある。 400 18 350 16 300 14 12 250 10 200 8 150 6 100 4 50 2 時間 時間 12 中止後 時間 2 中止後 36 中止 時間 ― 58 ― 24 中止直前 12 時間 6 時間 3 時間 90 時間 60 分 分 直前 0 24 0 P/F Vt/EBW D4-1 麻酔導入時にたこつぼ型心筋症を発症し手術中止となったが、 再手術のために周術期管理を行った一症例 ○山下 健次 1)、橋本 明佳 3)、下川 亮 1)、平尾 収 1)、田中 成和 1)、川村 篤 4)、 西村 信哉 1)、森 隆比古 2) 1 )大阪府立急性期・総合医療センター 麻酔科、2 )同 医療情報部、 3 )大阪大学医学部付属病院 麻酔科、4 )大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔科 麻酔導入時にたこつぼ型心筋症を発症したが、悪性所見の疑いがあったため早期に再手術 を必要とし周術期管理を行った症例を経験した。心筋症発症後、早期の手術が必要となった 症例は少なく文献的考察を含めて報告する。 【 症例 】73 歳女性、身長 143 ㎝、体重 38 ㎏。巨大卵巣腫瘍に対して硬膜外麻酔併用全身麻 酔下で付属器摘出術が予定された。 【 既往歴 】31 年前子宮筋腫に対して単純子宮全摘術施行。左脚前枝ブロック疑い、貧血。 【 現病歴 】硬膜外カテーテル留置後、麻酔導入し気管挿管時に心室性期外収縮と心電図Ⅱ誘 導上で ST 上昇を認めた。12 誘導心電図の全誘導でも ST 上昇し、また心エコーで心尖部の 壁運動低下と心基部の過収縮認めたため、たこつぼ型心筋症が疑われた。手術を中止し緊急 カテーテル検査を施行したところ冠動脈造影では有意狭窄を認めずたこつぼ型心筋症と診断 された。 【 経過 】未覚醒、未抜管で ICU に入室したが入室直後は血行動態が不安定で、ノルアドレナ リンによる循環サポートも必要であった。徐々に心機能は改善してきたが左室流出路狭窄を 認めており心破裂の危険性もあることからランジオロールを投与し、また心室内血栓予防の ためヘパリンによる抗凝固療法を開始した。第 2 病日に心エコーにより心不全徴候がないこ とを確認ののち抜管した。内服可能になってからは内服でワルファリンとビソプロロールを 開始している。循環動態が安定したため第 3 病日に一般病棟へ転棟した。心機能を 2-3 週後 に再評価し、再手術を考慮する方針となった。第 10 病日に一度退院したが、退院してから も術前までビソプロロールを続行した。再入院前の心機能評価は問題なく第 30 病日に巨大 卵巣腫瘍に対して付属器摘出術、大網切除術、虫垂切除術を施行した。硬膜外穿刺困難で難 渋したこともたこつぼ型心筋症発症の契機となった可能性があるため再手術は全身麻酔のみ で管理した。術中、血圧変動はあったが不整脈や心電図変化は認めなかった。硬膜外麻酔は 施行しておらず鎮痛とストレス緩和目的に鎮静下、挿管下に ICU 入室した。ランジオロー ルとニカルジピンで心負荷を抑制しフェンタニル静注で鎮痛した。エコー検査で心機能低下 しておらず第 31 病日にデクスメデトミジン鎮静下で抜管した。抜管後も循環動態は安定し ており第 32 病日に一般病棟へ転棟、術後経過は問題なく第 38 病日に退院した。 【 結語 】良性腫瘍であれば心筋症発症ののち十分に待機してから手術に臨むことができたが、 悪性腫瘍が疑われ早期の再手術の必要があり周術期管理がより重要となった。βブロッカー やカルシウムブロッカーにより循環動態を安定させ十分な鎮痛を得ることで良好に周術期管 理をし得たたこつぼ型心筋症の症例を経験した。 ― 59 ― D4-2 脊髄クモ膜下麻酔後にタコツボ型心筋症を伴う 頭蓋内硬膜下血腫を来した一症例 ○村田 裕、宮崎 嘉也、足立 健彦 田附興風会医学研究所北野病院 麻酔科・集中治療部 【 背景 】脊髄クモ膜下麻酔の重篤な合併症として頭蓋内硬膜下血腫が報告されている。今回 我々は頭蓋内硬膜下血腫にタコツボ型心筋症を合併し、その原因として脊髄クモ膜下麻酔が 考えられた症例を経験したので報告する。 【 症例 】43 歳女性、身長 161 ㎝、体重 40 ㎏。既往歴なし。近医にて慢性裂肛に対し脊髄ク モ膜下麻酔下に裂肛根治術が施行された。手術終了 7 時間後に安静解除し、その 20 分後に 歯の浮くような感じと頭痛を訴え JCS300 の意識障害及びショック状態となった。心電図で ST 変化を認め、前壁梗塞疑いで当院に救急搬送された。 【 経過 】来院時血圧 79/53 ㎜Hg、心拍数 70bpm、SpO2 99%、JCS300。ST 変化は改善し、 心筋逸脱酵素上昇も軽度であった。経胸壁心エコーで左室中部∼心尖部に限局した著しい収 縮障害を認めたことからタコツボ型心筋症と診断した。経胸壁心エコー施行中に下顎呼吸と なったため気管挿管を施行した。頭部 CT を撮影したところテント下硬膜下血腫・小脳扁桃 ヘルニアを認めたため、緊急開頭血腫除去術、脳外減圧術が施行された。ICU に入室後、 意識状態は徐々に回復し、入室 6 日目に人工呼吸器から離脱した。入室 8 日後に ICU を退室 した。頭部 MRI で再出血・脳梗塞などはなく、また経胸壁心エコーで左室収縮能の改善と 心電図の正常化を認め、心筋シンチにより虚血は否定された。病棟でパニック障害や興奮な ど認めたが第 29 病日に退院となった。 【 考察 】本例は入院時虚血性心疾患の疑いで救急搬送されたが、遷延する意識障害及び呼吸 障害を認め、頭蓋内病変を疑い頭部 CT で硬膜下血腫の診断に至った。臨床経過から硬膜下 血腫の原因として脊髄クモ膜下麻酔が疑われた。脊髄クモ膜下麻酔の稀な合併症として硬膜 下血腫が報告されている。脳脊髄液漏出による脳脊髄液圧の減少が、脳の支持構造の牽引と それに伴う架橋静脈の破綻を引き起こし硬膜下血腫となると言われている。重症度は様々で あるが重篤な意識障害を引き起こしたという報告もある。個々の症例で因果関係を示すこと は困難であるが、本例は血管奇形や脳出血を来すような既往を持たない患者が脊髄クモ膜下 麻酔後に意識障害及びタコツボ型心筋症を来すほどの広範な頭蓋内血腫を来しており、やは り脊髄クモ膜下麻酔が原因であると考えられた。 【 結語 】脊髄クモ膜下麻酔後にタコツボ型心筋症を伴う頭蓋内硬膜下血腫を来した一症例を 経験した。脊髄クモ膜下麻酔後の意識障害の鑑別診断の一つとして硬膜下血腫を想定してお く必要がある。 ― 60 ― D4-3 肺炎を契機に status dystonicus を発症し、 長期人工呼吸管理が必要であった一症例 ○眞弓 あずさ、竹内 宗之、橘 一也、木水 友一、水口 壮一、重川 周、堀口 佑、 寺田 雄紀、山下 智範、文 一恵、津田 雅世、籏智 武志、清水 義之、木内 惠子 大阪府立母子保健総合医療センター ジストニアが重度で、全身性、持続的になると、status dystonicus といわれる状態となり、 呼吸不全や、横紋筋融解に続発する腎不全を引き起こし、死亡率は 10% に昇ると報告され る。感染や手術・麻酔、その他様々な刺激が status dystonicus を誘発する。 今回、肺炎を契機に status dystonicus を発症し、長期間の人工呼吸管理が必要となった 小児を経験したので報告する。 【 症例 】12 歳、女児、29 ㎏。原因不明の脳性麻痺、精神発達遅滞で、当院神経科に通院中 であった。10 歳時、ジストニアのコントロールのため当院で入院加療した既往がある。今回、 誤嚥性肺炎を契機にジストニアの悪化を認め入院、第 2 病日に当集中治療科に紹介された。 入室時、持続的な全身性ジストニアを認め、38.9 度の発熱があり、status dystonicus の状 態であった。マスク酸素 7 L/ 分で SpO2 は 93% で、胸部単純 Xp で肺炎像の悪化を認めたた め、直ちに気管挿管を行い、人工呼吸管理を開始した。ジストニアに対しピペリデン(抗コ リン薬)やブロマゼパム、その他様々な薬剤を投与するとともに、ミダゾラム、フェンタニ ルの持続投与を行ったが、ジストニアのコントロールは不良で、プロポフォールを両親の同 意と承諾書を得て持続投与した。第 4 病日をピークとする CK 上昇(CK 8,656 IU/L)を認め たが、腎機能低下はなかった。肺炎が改善し、酸素化(PaO2 /FIO2 =440)も良好であったた め、第 4 病日に抜管を試みたが、喉頭ジストニアによる上気道開存困難、ジストニア抑制の ための鎮静による呼吸抑制や舌根沈下があり、再挿管となった。第 8、第 40 病日にも抜管を 試みたが、舌根沈下に対するエアウェイの刺激、不十分な鎮静や鎮静薬の離脱症状による分 泌物増加の刺激、および呼吸苦そのものがジストニアを悪化させ、再挿管が必要になった。 その後もジストニア軽減のため、プロポフォールの持続投与(2 ㎎/㎏/h)が必要であった。 鎮静・鎮痛により経腸栄養が成立せず、完全静脈栄養管理となった。家族は当初気管切開を 拒否していたが、抜管困難に対し、第 58 病日に家族の承諾下に気管切開術・腸瘻造設術を施 行した。術後は、手術や麻酔、創部痛のためジストニアが増悪しフェンタニル・プロポフォー ルで鎮痛・鎮静を図ったがコントロールできず、フェンタニルに代えて、より短時間作用性 で調節性の良いレミフェンタニル(0.04 ㎍/㎏/min)を使用したところ、ジストニアを軽減で きた。第 62 病日にレミフェンタニルを中止でき、第 63 病日に人工呼吸器から離脱、第 64 病 日にプロポフォールの持続投与も終了、第 65 日に PICU を退室し、第 125 病日に退院した。 【 結語 】感染を契機に脳性麻痺児に生じた二次性の全身性ジストニアの status dystonicus に対し、長期間の人工呼吸管理が必要となった。ジストニア症状のコントロールにおいて、 プロポフォールとレミフェンタニルは調節性が良く有効だった。 ― 61 ― D4-4 自己免疫性溶血性貧血に肺塞栓症を合併し、 急速な転帰を辿った一例 ○山本 真義 1)、端野 琢哉 2)、井手 岳 2)、藤原 周一 2)、野村 文彦 2)、矢部 光一郎 2)、 南 有紗 3)、井尾 克宏 4)、三好 隆史 4)、永井 謙一 4) 1 )関西電力病院 神経内科、2 )同 救急集中治療センター、3 )同 消化器・肝胆膵内科、 4 )同 血液内科 【 症例 】66 歳男性。既往に高血圧あり。10 日前からの動作時の息苦しさを主訴に近医受診し たところ、軽度の心拡大と心房細動を指摘されベラパミル内服にて一旦帰宅とされた。しか し、翌日になっても症状改善せず再度受診し、全身倦怠感があり心電図上心房細動の持続と ST 低下が認められて精査目的に当院紹介受診となった。来院時、意識は清明であったが、 全身皮膚の黄疸・眼瞼結膜に貧血所見を認め、血液検査上 Hb5.6 ㎎/㎗ と低下、LDH・ D-dimer・間接 Bil 値の著明な上昇、直接および間接 Coombs 試験共に陽性、著明な低酸素 血症を認めたため、溶血性貧血の診断で ICU 入室となった。入院時の心エコー検査で著明 な右心負荷と心室中隔の扁平化を認め、胸部造影 CT で、両肺動脈末梢に造影欠損を認め、 肺塞栓症(以下 PE)の診断となった。ウロキナーゼの投与は Hb 低値であり、出血のリスク を考慮し施行せず、ステロイドパルス療法・ハプトグロビン投与・赤血球輸血・ヘパリン持 続静注を開始したものの、代謝性アシドーシスの進行を認めた。ICU 入室 8 時間後には脈拍 低下から PEA となり昇圧剤および強心剤投与を開始し、更に ICU 入室 12 時間後には IABP/PCPS を導入した。ICU 入室 15 時間後には CHDF を導入、22 時間後からは血漿交 換療法を施行したが、徐々に血圧・心拍数低下を認め、心肺蘇生にも反応せず ICU 入室後 25 時間後に永眠された。末梢血のフローサイトメトリーの結果から自己免疫性溶血性貧血 (AIHA)と確定診断した。 【 考察 】35 年間に渡って157 人の AIHA 患者を後方視的に解析した報告では 4 人に深部静脈血 栓症、2 人に続発的な PE がみられた。15 年間に渡る28 人の患者の計 36 回の AIHA 発症に関 する報告では 5 例で PE 発症し、そのうち 4 例が死亡した。他に本症例に類似した病態に関す る報告は以下の 4 例があった。1. ステロイド・摘脾で加療されたが反応悪く、シクロスポリン 投与を開始したところ、胸腹部不快感、冷汗が出現し、検査の結果 PE と診断され、ヘパリン の投与で症状が改善した症例、2. 本症例と同様に急性発症で来院時から PE を認め、tPA、ヘ パリン、ワルファリンで改善した症例、3. 発症後ステロイドで加療したが反応悪く、Hb が 3 台まで低下したため、洗浄赤血球を輸血したところ、突然状態が悪化し死亡後剖検にて PE を 認めた症例、4. 本症例と同様に急性発症で来院時から PE を認め、ヘパリン持続点滴のみで改 善した症例。以上より、血栓溶解薬の使用の是非については現在のところ不明であると考えら れる。AIHA における凝固能亢進の原因として最近では血漿中 cell-free hemoglobin の NO 消費が指摘されており、AIHA の病態生理における新しい知見・治療法を含めて、剖検結果と 共に報告する。 ― 62 ― D4-5 末梢挿入型中心静脈カテーテル( PICC )に伴う 上肢静脈血栓症から肺動脈塞栓症を発症し、 外科的に PICC を抜去した一例 ○岡澤 佑樹、川上 大裕、池田 真悠実、植田 浩司、下薗 崇宏、美馬 裕之、 山崎 和夫 神戸市立医療センター中央市民病院 【 はじめに 】末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)における静脈血栓塞栓症(VTE)発症 率は中心静脈カテーテル(CVC)に比べ高いと指摘されている。今回 PICC 挿入後に肺動脈 塞栓症(PE)を発症し、PICC を外科的に抜去した症例を経験したので報告する。 【 症例 】76 歳女性。既往に悪性関節リウマチ(MRA) 、糖尿病、脳梗塞がありメトトレキ セート(MTX) 、プレドニゾロン、アザチオプリン(AZA) 、ビリダグリプチン、アスピリ ンを内服。来院 10 日程前より上肢筋力低下と感覚鈍麻を認め、当院救急外来を受診。MRA 増悪の診断で入院となりステロイドパルス療法、シクロフォスファミド投与を開始した。入 院 5 日目上行結腸憩室出血から出血性ショックとなり内視鏡下止血術及び血管内治療を施行、 アスピリン内服を中止した。また大量輸液による全身性浮腫のため末梢点滴ライン確保が困 難となり右内頸静脈に CVC を挿入した。入院 11 日目発熱及び胸部レントゲンにて右肺野 浸潤影の出現を認め抗生剤治療開始、カテーテル関連血流感染(CRBSI)も疑い CVC を抜 去した。その後アスピリン内服を再開、血液培養の陰性を確認し右尺側皮静脈に PICC を挿 入した。全身状態は安定し車椅子への移動や経口摂取を開始していたが、入院 28 日目に SpO2 の低下、不穏状態となり造影 CT で右肺動脈本幹の PE と判明、未分画ヘパリン持続 静注を開始した。静脈エコーで下肢静脈血栓はないが、右腋窩静脈内の PICC を取り巻くよ うに血栓付着を認め塞栓源と考え PICC 抜去が必要と判断した。しかし刺入部より抜去した 場合、血栓遊離による PE の増悪が懸念されたため入院 30 日目外科的抜去術を行った。 【 手術経過 】全身麻酔下で鎖骨下静脈の中枢側、末梢側をクランプ、縦切開した。中枢側カ テーテルを緩徐に引き抜き 5 × 5 ㎜の血栓を除去。末梢側は刺入部のカテーテルを 1 ㎝引き 抜き切断、鎖骨下静脈側から緩徐にカテーテルを抜去したが、明らかな血栓は確認できな かった。血管内をヘパリンで洗浄し終了。手術後呼吸状態の急激な増悪は認めなかった。 【 考察 】PICC 挿入後の主な合併症には VTE と CRBSI がある。VTE 発症率は無症候性の ものも含めると CVC に比べ高いとされ、CRBSI 発症率は低いという報告からほぼ同等と する報告まで様々である。本症例は VTE のリスク因子として関節リウマチ、ステロイド投 与があり、PICC ではなく CVC を選択することが有用であったかもしれない。また VTE の治療には一般的にヘパリン持続静注及び抗凝固療法を行うが、PICC を抜去するか否かに ついて明確なエビデンスはない。本症例では呼吸状態の悪化を認め、増悪を防ぐために可及 的速やかな外科的抜去が必要と判断した。しかし摘出した血栓は術前エコーで確認できたも のに比べ小さかったことから推察すると、術前のヘパリン持続静注により血栓が縮小した可 能性がある。そのため入念な血栓の観察を行い、待機的に手術を行うことや、内科的治療の みで経過を見ることも可能であったかもかもしれない。 ― 63 ― D4-6 高位頸髄損傷患者における、 High Tidal Volume Ventilation 管理を行った 3 例について ○酒谷 佳世、川副 友、柴田 尚明、米満 尚史、上田 健太郎、山添 真志、 木田 真紀、島 幸宏、岩崎 安博、加藤 正哉 和歌山県立医科大学 救急集中治療部 高位頸髄損傷患者では、呼吸筋麻痺や肺の拡張障害などにより、呼吸器合併症の発生率が 高く、人工呼吸器からの離脱が困難な場合が多い。米国での「脊髄損傷の呼吸器管理に関 するガイドライン 2005」では、15 ㎖/㎏ の high tidal を目標に一回換気量を設定し、low PEEP での管理が推奨されている。しかし開始基準や開始時期に関しての詳細は明確でなく、 呼吸器離脱の方法や限界に関しても明らかではない。当施設においても頸髄損傷患者の呼吸 器離脱にはこれまでも難渋していたため、このたび頸髄損傷患者 3 症例に対して High Tidal Volume Ventilation(HVtV)を行った。 【 症例 1 】70 歳、男性。自動車の衝突事故で C4 レベルでの頸髄損傷となる。受傷後 11 日目 に頸椎前方固定術の施行となった。術後 14 日目より、CMV f10 PEEP0 TV900( 13 ㎖/㎏) での管理を開始し、最大 TV980 ㎖を経て、受傷 2 ヶ月後に人工呼吸器離脱。 【 症例 2 】68 歳、男性。てんかん発作による転倒で、C4 レベルでの頸髄損傷となる。保存的 加療の適応となり、受傷後 7 日目より CMV f10 PEEP0 TV 840( 12 ㎖/㎏)での管理を開始 した。最大 TV1,050( 15 ㎖/㎏)まで上昇させ呼吸器リハビリを実施していたが、自宅復帰 を家族が望まず転院の方針となったため、HVtV を断念し一般的な呼吸器設定で転院とした。 【 症例 3 】68 歳、男性。崖からの滑落で C4 レベルでの頸髄損傷となる。受傷後 3 日目に前方 固定術施行し、術後 ICU 帰室時より、CMV FiO2 0.4 f8 PEEP0 TV760( 12 ㎖/㎏)での管 理を開始した。最大 TV1,060 ㎖(16 ㎖/㎏)を経て第 20 病日となる現在も HVtV にてリハ ビリ継続中である。 当施設において、未だ HVtV での管理は少ないが、考察のポイントとして、①開始基準、 適応患者はどうか、② 開始時期はいつが妥当か、③ 喀痰排泄への対応と呼吸器離脱への道 筋をどう理解するか、④ 呼吸器離脱の可能性の限界をいつどのように判断するか、などが あげられた。当施設での経験を踏まえ、文献的に検討を加えて報告する。 ― 64 ― D4-7 自然気胸が原因と考えられる空気塞栓により 脳梗塞を発症した一例 ○大嶋 圭一、植田 浩司、下薗 崇広、美馬 裕之 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科 【 症例 】70 歳台男性。既往に肺癌、間質性肺炎があり、肺癌は 2003 年に右下葉切除を施行 され完全寛解、間質性肺炎は無治療で経過観察中であった。2013 年 10 月 20 日未明右片麻痺 が出現し救急要請、当院救急外来受診となった。 【 経過 】救急隊接触時には症状改善し、来院時の頭部 CT でも有意な所見なく、経過観察入 院となった。第一病日朝に、徐脈と意識レベル低下、左片麻痺が出現したため頭部 MRI を 施行したが、T2 強調画像で右頭頂葉に線状の高信号域がみられたのみで、症状も改善した ため、症候性てんかん疑いで加療する方針となった。第二病日に再び、徐脈と意識レベル低 下が出現。この時、血圧低下と完全房室ブロック、Ⅱ・Ⅲ・aVf 誘導での ST 上昇が認めら れたため UCG および CAG を施行したが、右心負荷所見や冠動脈狭窄は指摘されず、直後 の頭部 CT で血管内に散在する低吸収域指摘されたため、空気塞栓による意識障害と一過性 の心筋虚血が疑われた。数時間後の CT で脳浮腫の増悪と右気胸、肺嚢胞、皮下気腫・縦隔 気腫が認められ、緊急外減圧術が施行された。術後も頭蓋内圧の管理に難渋し、第四病日に 脳ヘルニアをきたして死亡した。 【 考察 】空気塞栓による脳梗塞に関しては、カテーテル検査など大血管の穿刺手技に伴う合 併症としての報告が多いが、本症例では CAG 施行前に塞栓症を疑う症状が繰り返し出現し ており、カテーテル操作に伴う空気塞栓(脳梗塞)とは考えにくい。脳梗塞発症前は末梢静 脈カテーテル留置のみであったこと、発症後の胸部 CT にて右胸腔に気胸と肺嚢胞、近傍の 軟部組織内に空気が観察されたこと、さらには、右心負荷所見が乏しいことなどから、胸腔 内空気の肺静脈系への迷入が疑われた。剖検の結果、右中葉の嚢胞は血腫を伴い、周囲の肺 実質には太い血管を巻き込む壊死が認められた。臨床経過やこれらの所見から、肺嚢胞の周 囲組織が破綻して気胸となり、その腔に露出した肺静脈や毛細血管から左心系内へ空気が流 入していた事が推測される。 【 結語 】自然気胸が原因と思われる空気塞栓により脳梗塞を発症した症例を経験した。文献 的考察を含めて報告する。 ― 65 ― D5-1 ARDS と DIC を合併した重症真菌性敗血症の一例 ○奥 佳菜子 1)、楠 宗矩 2)、岡本 明久 1)、山木 壮 3)、梅垣 岳志 2)、濱野 宣行 1)、 西 憲一郎 1)、廣田 喜一 2)、新宮 興 2) 1 )関西医科大学附属枚方病院 総合集中治療部、2 )関西医科大学 麻酔科学講座、3 )同 外科学講座 【 はじめに 】深在性真菌症は、発症が確認されると死亡率が 40% 以上とも報告されている。 今回、我々は ARDS と DIC を合併した重症真菌性敗血症の一例を経験したので報告する。 【 症例 】17 歳男性。既往に特記事項なし。 【 現病歴 】AVM 破裂による右被殻出血にて当院救命センターに緊急入院した。開頭血腫除 去術を施行され、その後 MRSA 髄膜炎、脳膿瘍を発症し、重症敗血症となったが、治療に より改善し一般病棟に転棟した。2 ヶ月後に再度、敗血症性ショック、急性呼吸不全を発症 したため、当院 GICU に入室となった。 【 入院歴 】入室時、発熱 37.8℃、血圧 112/44 ㎜Hg、心拍数 116 回 / 分、血中乳酸値 47 ㎎/㎗ であり、敗血症性ショックの状態であった。入室時の血液培養から Candida glabrata が検出 され、β-D グルカン 1,445 pg/㎖と高値を認めた。EGDT に準じて治療を開始したが、ショッ ク状態が持続したため、バソプレシン、低容量ハイドロコルチゾンの投与、PMX-DHP を施 行した。ARDS により P/F ratio 111と低値を認め、APRV での人工呼吸管理を施行し、併 発した急性腎不全に対しては、CHDF を導入した。急性期 DIC スコアは 8 点であったため、 トロンボモジュリン製剤、ATⅢ製剤を投与した。入室時の PCT 6.65 ng/㎖と高値を認め、 経過から MRSA を含めた細菌性髄膜炎の増悪の可能性を考慮し、セフトリアキソン、テイコ プラニン、リネゾリドを投与した。真菌性敗血症に関しては、感染巣が不明であったため、 ミカファンギン(MCFG)とアムホテリシン B リポソーム製剤(L-AMB)の 2 剤を投与した。 GICU 入室前より挿入されていた中心静脈カテーテル(CVC)からも Candida glabrata が検 出されており、CVC による真菌性敗血症も考慮する必要があった。しかし、カテーテル抜去 後 2 週間以上経過しても血液培養は陰性化せず、β-D グルカン高値が持続したため、全身の CT 検査を施行したところ、下大静脈内に CVC 留置が原因と思われる血栓形成を認めた。血 栓部への真菌感染が関与していると考え、MCFG と L-AMB の投与を継続した。入室 21日 目には血液培養は陰性化し、β-D グルカンは 382 pg/㎖と減少傾向となった。酸素化も徐々 に改善を認め、入室 11日目には APRV から CPAP に変更し、入室 14 日目には CHDF も離 脱可能となった。その後経過良好となり、入室 28 日目に GICU を退室した。 【 考察 】本症例は、重篤な DIC の存在から髄膜炎に対する精査ができなかったため、 MRSA だけでなく真菌性髄膜炎の治療も経験的に行った。深在性真菌症に対する治療につ いて文献的考察を加え論述したい。 【 結語 】ARDS と DIC を合併した重症真菌性敗血症の症例に対し、抗真菌薬 2 剤併用を中心 とした集学的治療を行い、救命できた一例を経験した。 ― 66 ― D5-2 劇症肝炎に対する脳死分割肝移植後に 侵襲性アスペルギルス症に罹患した一例 ○酒井 佳奈紀、滝本 浩平、内山 昭則、藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療部 【 症例 】63 歳男性。 【 経過 】2013 年 10 月中旬より倦怠感を自覚、近医にて HBV による急性肝炎と診断され緊急 入院となった。IFN+ エンテカビル + ステロイドパルス開始も、入院 4 日目に肝性脳症発症 し CHDF+PE 施行開始、以後も改善せず入院 14 日目に脳死発生したため当院転院となった。 転院翌日に脳死分割肝移植(分割肝;右葉 + 尾状葉 + 中間静脈付きグラフト)施行、術後 ICU 入室となった。分割移植のため虚血の可能性が高く、グラフトサイズも体格に比し小 さいため、肝機能の立ち上がりが悪く血液製剤を連日投与し輸液負荷も十分に行う術後管理 となった。感染対策としては FMOX+CLDM+MCFG+GCV 投与した。術前 CT にて左肺 野浸潤影を指摘されていたが術後胸部レントゲン上でも徐々に増悪、POD1 の吸引痰培養で アスペルギルス検出あり、βD グルカン上昇、血中アスペルギルス抗原陽性指摘、侵襲性 肺アスペルギルス感染症(Invasive pulmonary aspergillosis、以下 IPA)として POD4 より l-AMPH-B 投与を開始した(MCFG 中止、FMOX+CLDM も終了) 。しかし急性拒絶のた め肝機能悪化し POD8 よりステロイドパルス施行、肝機能は改善したが肺浸潤影は悪化、 POD11 には septic shock へ陥り大量の茶褐色粘稠痰を認め IPA 悪化と判断した。原因と して l-AMPH-B 抵抗性 IPA の可能性、また、同薬剤由来と考えられる血小板低下を中心 とした汎血球減少を認め、POD12 より l-AMPH-B 中止、VRCZ 点滴投与開始した。以後 徐々に炎症反応は改善したが浸潤影は改善せず、連日気管支鏡による除痰が必要であった。 POD20 には ESBL 産生 CVVHDF 開始となった。 による重症肺炎発症・septic shock となり、AKI 併発し 肺炎は MEPM9 週間投与にて治癒した。炎症所見は徐々 に改善したが、胸部 CT にて左胸腔膿瘍形成指摘、POD48 開胸下膿瘍ドレナージ術を施行 した。以後呼吸状態も徐々に改善、肝機能も持ち上がり POD60 の肝生検では拒絶の所見な しであった。一方腎機能は改善せず POD82 より間欠維持透析導入となった。全身状態安定 したため POD88 に ICU 退室、一般病棟管理となった。以後現在も VRCZ 内服継続し安定 して経過している。 【 考察 】固形臓器移植後の侵襲性真菌感染症発症頻度は 5 ∼ 42% といわれ(Clin infect Dis 2010;50:1101) 、しばしば重篤な転機をとる。肝移植後の IPA の発症頻度は 1 ∼ 8% との 報告もあり比較的稀ではあるが、1989 年の報告では死亡率は 100%、最近では改善している が 60% ともいわれる。我々は脳死肝移植後急性期に IPA に罹患した症例を経験し、文献的 考察も交えここに報告する。 ― 67 ― D5-3 外傷後の肺動脈血栓への細菌感染が疑われた一例 ○浅香 葉子 1)、瀬尾 龍太郎 1)、渥美 生弘 2)、山崎 和夫 1) 1 )神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科、2 )同 救命救急センター 【 はじめに 】血管内血栓への細菌感染を合併した外傷症例を経験したので報告する。 【 症例 】特に基礎疾患のない 22 歳男性。バイク乗車中に乗用車と接触し受傷。来院時は意識 障害なく、血行動態安定していたが低酸素血症は認めていた。血液学的検査、画像的検査の 結果、右気胸、肺水腫、右腎出血、副腎出血、左大腿骨幹部骨折と診断した。大腿骨骨折は 牽引し待機手術の方針とし、他は保存的加療の方針で集中治療管理とした。低酸素血症も改 善していたが、受傷後 2 日目に突然意識障害と再度酸素化の悪化を認め、CT で肺塞栓症と 診断した。受傷後 6 日目に採取した血液培養から 4/4 本で黄色ブドウ球菌が検出され、来院 時にとられた末梢静脈留置針後の血栓性静脈炎からの菌血症と診断した。体幹部の膿瘍形成 も明らかなものはなく、抗菌薬加療を開始した。抗菌薬加療後 3 日目、4 日目に採取した血 液培養でも菌血症が継続していたが、経食道心エコー検査で感染性心内膜炎も認められな かった。抗菌薬加療後 7 日目に採取した血液培養で陰転化が確認され、加療後 10 日目の CT では肺塞栓症もほぼ消失していた。状況からは肺動脈血栓への感染により持続菌血症に至っ たと考えられ、抗菌薬加療継続で軽快した。 【 考察・結論 】通常は抗菌薬加療を必要としない血栓性静脈炎が持続菌血症を起こした症例 を経験した。その原因として、血管内血栓の関与が示唆された。本症例のように血栓の存在 が既知であった場合、血栓への感染を考慮する必要があると考えられたので報告する。 ― 68 ― D5-4 発見が遅れた敗血性ショック・小腸壊死に対し 小腸切除術施行し救命するも、治療断念となった 統合失調症患者の一例 ○赤澤 彰 1)、喜多 理香 2)、橋本 賢吾 2)、牛塲 彩 2)、藤井 恵美 2)、岸本 卓磨 2)、 松下 美季子 2)、大内 政嗣 2)、山根 哲信 2)、浜本 徹 2)、藤野 和典 3)、辻田 靖之 2)、 田畑 貴久 3)、高橋 完 2)、松村 一弘 3)、江口 豊 3) 1 )滋賀医科大学医学部附属病院 医師臨床教育センター、2 )同 救急・集中治療部、 3 )同 救急集中治療医学講座 【 症例 】35 歳男性、統合失調症のため精神保健指定病院に入院中、たびたび発熱・腹痛・四 肢の緊張の症状を訴えていた患者。第 1 病日に発熱、SpO2 低下、四肢の緊張と精神運動興 奮発現し、カタトニアと判断されジアゼパム 5 ㎎投与されたが症状持続した。第 2 病日 0 時 に sBP 70 台と低下傾向、尿量減少があり、輸液、酸素投与を行うも、呼吸不全、発熱、低 血圧が持続、DOA5γを開始、PIPC/TAZ4.5g × 3 を開始したが改善を認めず本院転院搬 送となった。入室直後に撮影した胸腹部 CT にて回腸壊死疑いにて家族に説明の上緊急小腸 切除術施行された。腹腔内は悪臭のする混濁淡血性腹水が多量にあり、約 60 ㎝程の回腸が 黒色に変色し壊死しており同部位を切除・ストマ造設術施行となった。術直後の APACH2 スコアは 26 点、SOFA は 15 点であった。その後 6 時間で輸液 25 mL/㎏/h 入れるも乳酸ク リアランスの改善認めず、尿量も 0.5 mL/㎏/h と低下していたため第 3 病日に持続的血液濾 過透析(CHDF)開始した。また急性期 DIC 診断基準 6 点、厚労省 DIC 基準 9 点よりアンチ トロンビンⅢ製剤 3,000 単位投与した。しかし元々治療抵抗性の統合失調症で抑制を受け床 上安静である事から家族はこれ以上の集学的治療を望まれず、同日 DNAR の方針となった。 第 12 病日から発熱、第 19 病日から呼吸状態の悪化見られ、第 20 病日呼吸状態悪化より血圧 低下し永眠された。 【 考察 】重度の精神疾患のある場合、集学的治療行う際は家族とのより継続的かつ密なコ ミュニケーションが必要であると考えられた。 ― 69 ― D5-5 早期集中治療によって重篤化を回避しえた 産褥期敗血症性ショックの 1 例 ○文 一恵 1)、橘 一也 1)、清水 義之 1)、籏智 武志 1)、津田 雅世 1)、木内 恵子 2)、 竹内 宗之 1) 1 )大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科、2 )同 麻酔科 産褥期に敗血症性ショックとなったが、早期からの集中治療によって重篤化を回避しえた 症例を経験したので報告する。症例は 35 歳女性。身長 170 ㎝、体重 61.8 ㎏(非妊時 55.0 ㎏) 。 妊娠 24 週 0 日に前期破水を認め、当院に搬送入院となった。来院時の胎児心拍数は 148 bpm で母体の感染兆候は認めなかった。子宮収縮予防のため塩酸リトドリンの投与を開始 し、胎児肺成熟促進目的でベタメタゾンの投与を 2 日間行った。また来院時の膣分泌物から B 群溶血レンサ球菌(GBS)を検出したので、アンピシリンを 2 日間投与しその後はサワシ リンを内服した。妊娠 24 週 3 日、母体発熱(39.0℃)を認め、子宮内感染を疑いアンピシリ ンの再開およびゲンタマイシンの投与を開始した。同時に切迫早産兆候が進み抑制が困難と なり分娩の方針となったが、直後に子宮内胎児死亡を確認した。母体熱発から胎児死亡確認 まで 2 時間であった。その後自然娩出となったが羊水混濁はなく、胎盤早期剥離の所見も認 めなかった。その後母体の体温は 40.0℃まで上昇、抗生剤による治療を継続した。児娩出 1 時間後に血圧 70/26 ㎜Hg に低下、明らかな出血なく子宮収縮良好であった。その後血圧は 54/41 ㎜Hg まで低下し、輸血投与と酸素投与を開始し産科的出血がないことを確認後 ICU 入室となった。ICU 入室時、意識は清明、呼吸は多呼吸で呼吸苦を訴えたが酸素マスク 100% 5L/ 分の投与下で PaO2 は 215 ㎜Hg であった。心拍数 110 bpm、血圧 69/34 ㎜Hg を 呈し、ドパミン 5 mcg/㎏/min で開始後も血圧の上昇を認めないためノルアドレナリン 0.08 mcg/㎏/min の投与を行った。CT 検査では両側胸水、下葉無気肺と少量の腹水を認めたが、 その他の出血や血栓像、感染源となる異常所見は認めなかった。呼吸苦に対し BiPAP(FIO2 0.5、IPAP 8、EPAP 4)を導入後呼吸数は低下した。抗生剤は劇症型 A 群レンサ球菌感染 症を危惧し、アンピシリン大量投与とクリンダマイシンの投与に変更した。ノルアドレナリ ン投与後は血圧の上昇を認め、その後循環は安定しフロセミドを投与して除水を行った。同 時にカテコラミンの減量も可能であった。ICU 入室 2 日目には呼吸・循環の改善を認めカテ コラミンの中止、BiPAP の中止が可能であったので一般病棟へと転棟となった。その後産 褥 9 日目に抗生剤を終了、産褥 11 日目に合併症なく退院となった。培養結果は、入院時の 膣分泌物から GBS が陽性であった以外は血液培養からも同定されなかった。また羊水塞栓 症は否定された。胎盤の病理所見では胎盤内膜の炎症および臍帯動脈の炎症を認めた。絨毛 膜羊膜炎は中等度であるが、絨毛に細菌塊が散見された。原因菌の同定は不可能であったが 母体ショックの原因は産科関連敗血症によると考えられた。 妊産婦敗血症の発生は稀であるが、周産期母体の呼吸・循環不全の悪化は早い。妊産婦の 重篤化回避のためには早期集中治療の介入が必要であり、周産期母子センターにおいては、 小児集中治療室での母体初期治療の知識習得と受け入れ体制の構築が必要と思われた。 ― 70 ― D5-6 迅速抗原検査が陰性であり PCR で診断を確定し得た 重症インフルエンザウイルス肺炎の 2 例 ○宮本 恭兵、酒谷 佳世、安田 真人、柴田 尚明、川副 友、木田 真紀、島 幸宏、 岩 安博、加藤 正哉 和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座 インフルエンザは自然軽快する疾患だが、稀にウイルス性肺炎を併発し重症化することが ある。今回我々は迅速抗原検査が陰性だったが鼻腔ぬぐい液の PCR でインフルエンザウイ ルス H1N1 型が検出され診断し得た重症インフルエンザ肺炎の 2 例を経験したので報告する。 1 例目は 52 歳女性。5 日前からの発熱、咳嗽のため 2 日前に近医を受診、肺炎の診断で入 院したが、抗菌薬治療に反応せず当院へ転院となった。同日酸素化不良のため挿管を行い、 抗菌薬に加えステロイドによる加療を開始した。入院 3 日目、画像上ウイルス性肺炎が鑑別 にあがったため提出した PCR が陽性と判明、インフルエンザ肺炎と診断した。同日すでに 抜管できるほど改善していたため抗ウイルス薬の投与は行わなかった。その後も徐々に改善 あり入院 6 日目 ICU を退室とした。 2 例目は 66 歳女性。5 日前からの発熱、咳嗽、呼吸苦のため当院外来を受診、肺炎の診断 で ICU へ 入 室 と し た。 挿 管 後 も 呼 吸 状 態 は 悪 く ECMO(extracorporeal membrane oxygenation)を導入し、原因不明の肺炎として抗菌薬、ステロイド、ペラミビルによる加 療を開始した。その後 PCR の結果が判明しインフルエンザ肺炎と診断した。以後は徐々に 改善し ECMO を離脱、抜管、入院 18 日目 ICU 退室とした。 今回原因となった H1N1 型インフルエンザウイルスは肺炎を起こしやすい可能性が示唆 されている。また、2009 年の世界的流行に続き昨シーズンは H1N1 型の再流行が報告され ており、今シーズン以降もインフルエンザ肺炎が大きな問題となる可能性がある。我々の症 例のように迅速抗原検査が陰性となることが多いため、疑い例では早期に PCR を実施し、 診断後は ECMO などの集中治療が可能な施設と早期に連携する必要があると考えた。 ― 71 ― D6-1 大量腹水患者が上部消化管内視鏡中に 腹部コンパートメント症候群( ACS:abdominal compartment syndrome )を発症し急変した 1 症例 ○信正 千尋、加藤 之紀、小尾口 邦彦、福井 道彦、渡邊 宏樹、蒲池 正顕、 和田 享、宮 勇輔 大津市民病院 救急診療科・集中治療部 【 はじめに 】腹腔内圧の上昇に由来する循環不全によって、代謝性アシドーシス、低血圧、 呼吸障害などを引き起こされる腹部コンパートメント症候群(ACS:abdominal compartment syndrome)は重症腹部外傷・重症急性膵炎などが主な原因として知られる。しかし、 一般医の間での認知度は高いとは言えないのが現状である。今回大量癌性腹水患者が上部消 化管内視鏡検査による処置中に ACS を原因として急変したと思われる症例を経験したので 報告する。 【 症例 】74 歳男性。 【 既往歴 】高血圧、膝関節症、脳梗塞。 【 内服薬 】クロピドグレル。 【 現病歴 】腹部膨満感を主訴に近医受診し腹水を指摘され当院へ紹介された。腹部エコーに て大量腹水・腹部単純 CT にて胃体部壁肥厚と腹膜播種、リンパ節転移を疑う所見を認め入 院・精査加療の方針となった。腹水多く穿刺も考慮されたが抗血小板薬内服されており延期 された。第 4 病日、精査目的で上部内視鏡検査を行った。検査中呼吸苦を訴えたため開始 10 分で検査終了したが、努力呼吸、浅呼吸を呈し SpO2 は 80% 前後まで低下、収縮期血圧も 70 台まで低下、意識レベルも低下した。急速補液・挿管したことにより状態はやや改善し、 造影 CT 撮影後 ICU へ入室した。入室時腹部膨満著明で固く、両大腿大理石様の文様あり、 陰茎の持続勃起を認めた。造影 CT では大量腹水、腹部大動脈の扁平化、腹腔内に限定した 下大 / 腸骨静脈の扁平があり、また全体に血管造影遅延であることから低心拍出状態である ことが示唆された。身体所見、造影 CT の所見から ACS と診断した。ICU 入室直後より、 バイタルサイン不安定となり一時心停止・蘇生を要したが、急速補液と並行して腹水穿刺を 行い 2,850 ㎖の排液を得た。排液にともない血行動態は徐々に安定化し、静脈鬱滞の所見も 改善した。持続透析などの補助療法も行いながら血管作動薬による循環管理を行っていたが、 腹水穿刺後 12 ㎝H2 O まで低下した腹腔内圧は徐々に上昇し血圧は低下した。その後、代謝 性アシドーシスが進行し、第 5 病日死亡した。 死亡原因として ACS と急速に進行した癌性腹膜炎の双方が考えられた。 【 考察 】急速に増大した癌性腹水と上部消化管内視鏡による気腹の影響が疑われる ACS 症 例を経験した。 ― 72 ― D6-2 極めて短時間の経過により死亡した 小児出血性ショック脳症症候群を強く疑った 1 例 ○前田 英里、二宮 万理恵、谷 大輔、山本 泰史、松本 充弘、香河 清和、 西田 朋代、高田 幸治 市立豊中病院 【 症例 】2 歳 0 ヶ月女児。 【 既往歴 】特になし。 【 経過 】X 日 38 度の発熱出現、夕方は 37.2 度で鼻汁を認めた。X+1 日朝は玩具で遊んでい たが、午前 10 時ごろに焦点が合わず呼吸も不規則だったため救急要請した。 搬送中に間代性痙攣が出現、当院到着時には強直性痙攣が持続していたため、ミダゾラム とフェノバルビタールで止痙した。一時的に用手換気を要したが、入院時は頚部後屈、酸素 2L 投与で安定したため一般病棟に入院した。午後 3 時 40 分頃、陥没呼吸、呼吸様式不規則 となり酸素 15L でも酸素化保てず挿管された。右上肢強直性痙攣が出現し自然止痙したが、 瞳孔散大、対光反射微弱であった。午後 4 時 40 分に ICU に入室後は痙攣予防のためミダゾ ラム持続投与し、人工呼吸器の同調は良好であった。入室 2 時間後に 40 度台の発熱、入室 3 時間後の咳嗽時に鼻腔からコーヒー残渣様の排液が噴出し、水様下痢便が多量にあった。入 室 6 時間後、急激に陽圧換気の換気量が低下し、ほぼ同時に脈拍 200 回 / 分以上、血圧 130/80 ㎜Hg と上昇後、急激に血圧低下し一時 30/10 ㎜Hg となった。昇圧剤投与と脱水補 正のため輸液負荷を行うも血圧上昇せず、ミダゾラム投与を中止した。輸液負荷継続の上、 ドパミン持続投与を開始したが脈拍 30 回 / 分と低下し、胸骨圧迫を開始した。アドレナリ ン投与で心拍回復後、中心静脈ルート確保しドブタミン、ノルアドレナリンを追加投与した。 入室 10 時間後の血液検査でアシドーシスを呈し炭酸水素ナトリウムを投与し、脳症を疑い メチルプレドニゾロンとマンニトール投与した。血小板 2.9 万と低下し DIC を考慮してトロ ンボモジュリンを投与した。循環動態の安定を待ち頭部 CT を施行した所、著明な脳浮腫を 認めた。X+2 日には瞳孔散大、対光反射消失し、脳波検査で平坦脳波であり脳死状態であっ た。DNR の方針となり、X+5 日に死亡確認。 【 考察 】本症例は生来健康な幼児が初発症状から僅か 2 日の経過で脳死に至った。発熱で初 発し意識障害、痙攣、呼吸循環障害、嘔吐、下痢、止血凝固機能障害を次々に呈した。CT で脳浮腫があり急性脳症、特に出血性ショック脳症症候群(HSES)を疑う。鑑別には敗血 症など重症感染や溶血性尿毒症症候群がある。血液培養陰性などの除外診断から HSES が 考えられる。HSES は主に生後 3 ∼ 8 カ月に発症し 60% 以上が死亡、生存者の 70% 以上で 重度の神経学的後遺症が発生する。治療は循環維持のための大量輸液と血液製剤に加え強心 薬による循環管理など対症療法が中心となる。 本症例は意識低下、呼吸不全が生じた時点で ICU 管理となり、急激な呼吸循環不全に対 して輸液負荷やカテコラミン投与し、ステロイドなど脳浮腫改善も試みたが救命し得なかっ た。急激な経過の脳症を疑う際は十分な観察と、循環不全に備え早期から中心静脈ルート確 保を考慮する必要があると考える。 ― 73 ― D6-3 APRV および脳低温療法にて管理した 病的肥満患者の蘇生後症例 ○橋本 賢吾 1)、江口 豊 1)、松村 一弘 1)、辻田 靖之 1)、松下 美季子 1)、高橋 完 1)、 田畑 貴久 1)、藤野 和典 1)、浜本 徹 1)、大内 政嗣 1)、山根 哲信 1)、今宿 康彦 2)、 岸本 卓磨 1)、藤井 恵美 1)、牛場 彩 1)、喜多 理香 1) 1 )滋賀医科大学附属病院 救急集中治療部、2 )同 麻酔科 【 症例 】蘇生後症例のうち、目撃者のいる心肺停止(特に VF/VT 波形による心肺停止) 、蘇 生後速やかに心拍再開、意識障害が遷延している等の症例は脳障害のリスクを緩和するため に積極的に脳低温療法の適応症例となる。 また、人工呼吸中の長期臥床患者、特に病的肥満患者においては無気肺の形成が問題となる。 体重 100 ㎏、BMI40 ㎏/m2 の病的肥満患者の心肺停止蘇生後症例を、脳低温療法にて中 枢神経障害を生じさせることなく ICU 退室可能な状態まで治療でき、長期臥床による無気 肺も座位・立位の積極的施行により改善したため、症例報告を行う。 症例:67 歳女性、糖尿病、高血圧症、うつ病で内服加療中であった。発症数日前よりダイ エットを始め、発症より 3 日ほど前からほとんど食事摂取せず、内服も自己中断していた。 不明言動があり救急要請、救急隊接触時に心肺停止、PEA となり近医へ救急搬送。蘇生 開始 6 分で心拍再開したが呼吸不全状態であり挿管施行。心肺停止時に目撃あり、心拍再開 まで早期であったため脳低温療法の適応ありと判断され、当院へ搬送された。 当院到着時は挿管状態であり、APCHEⅡscore19 点、SOFAscore9 点であった。 搬送後即座に脳低温療法を開始し、第 5 病日まで脳低温療法施行した。肥満患者であり臥 床による無気肺の形成が著しく、入室直後より呼吸管理が困難であったが、第 3 病日より人 工呼吸器設定として APRV を使用した。第 8 病日には抜管し NPPV にて呼吸管理可能と なった。意識状態改善後は積極的に座位・立位をとらせ、第 15 病日にはマスク換気にて SpO2 が保たれる状態となり、第 19 病日には ICU 退出、他院転院となった。退室時は APACHEⅡscore7 点まで改善しており、支えがあれば自立可能、会話や意思疎通も十分可 能な状態となった。 【 考察 】当症例は目撃のある心肺停止症例、心拍再開までごく早期の症例であり、蘇生後脳 低温療法にてほぼ中枢神経障害なく回復させることが出来た。また、病的肥満患者の脳低温 療法中は重度の無期は異形成が問題となるが、APRV による人工呼吸器管理、さらに積極 的な座位・立位により無気肺を改善させることが出来た。 ― 74 ― D6-4 頚部血腫による気道偏位と上気道浮腫のため ICU に緊急入室後 VV-ECMO も考慮しながら 緊急挿管を行なった症例 ○木下 真央 1)、徳平 夏子 2)、澤田 麻衣子 1)、西尾 健志 3)、新井 啓仁 3)、 伊藤 博士 4)、八木 克史 5)、木村 彰夫 2)5)、黄瀬 ひろみ 2)、佐和 貞治 1)5)、 橋本 悟 2) 1 )京都府立医科大学付属病院 麻酔科、2 )同 集中治療部、3 )同 耳鼻咽喉科、 4 )同 消化器外科、5 )同 医療機器管理部 【 はじめに 】内頚静脈穿刺に伴う気道閉塞における気道確保法についてあまり報告がない。 今回、頚部血腫による気道偏位と上気道浮腫を有する患者に対し、緊急で気道確保戦略を立 て安全に管理ができたので報告する。 【 症例 】57 歳、男性、174 ㎝、63 ㎏。マイルズ手術 31 日目に右内頚静脈に中心静脈カテー テルを留置。その後右頚部の血腫増大にともなう気道狭窄進行のため、留置 2 日後に気管内 挿管の依頼があった。挿管前評価として意識清明で頻呼吸、呼吸困難感、嗄声など呼吸器症 状はなく、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2 )は 96%(空気呼吸下)であり、右頚部の腫脹は 著明であった。またマランパチ分類は classⅡで、項部後屈制限・開口障害は認めなかった。 血液一般生化学・凝固検査では貧血および血小板数 53 × 103 /μL と低下を認め、DIC スコ アは 4 点であった。耳鼻咽喉科による病棟での喉頭ファイバー所見では、喉頭は全体的に左 側に圧排されており、喉頭蓋に粘膜下血腫、浮腫(声帯、披裂部、舌根)が著明であった。 また過去 2 回の麻酔記録から専門医が挿管困難と判断していた。 【 ICU 入室後 】実際の挿管について、まず第一に耳鼻咽喉科、臨床工学士、上級医など人を できるだけ集めた。そして局所麻酔下に両側大腿静脈を穿刺し、5Fr のシースを確保。緊急 気管切開および補助循環が使用できる状況下で、デクスメデトミジンを使用し、経口気管支 ファイバー挿管を試みた。しかし高度の開口障害を認めたため、ボスミンガーゼで鼻の前処 置を行い、1% リドカインにて局所麻酔を行ないながら経鼻ファイバー挿管を行い、気管 チューブ(MallinckrodtTM ID 6.5 ㎜)を気管内に留置した。 【 考察 】気道確保困難が予想される場合、代替手段として気管切開、補助循環などが考慮さ れるが、本症例は易出血性であり血腫による気道偏位があったため気管切開術を容易に選択 しがたい状況であった。このような頸部血腫による気道偏位を伴った症例に対し、V-V ECMO 待機下に、意識下経鼻ファイバー挿管を安全に行うことができた。 ― 75 ― D6-5 CPA 蘇生当日、緊急開腹手術を施行した 十二指腸穿孔 2 例の周術期経験 ○江藤 孝史、佐藤 創、小濱 華子、井出 岳、大橋 直紹、堀 直人、竹田 健太、 西 信一 兵庫医科大学 集中治療医学科 CPA に対し CPR を施行した当日中に十二指腸穿孔と診断され、緊急開腹手術を施行し た 2 例を経験したので報告する。 症例 1 は 52 歳、女性。DM、CRF にて 8 年前に HD が導入。2 日前より食思不振にて近医 入院、1 日前に心窩部痛を認めたが、胸部レントゲン検査にて free air を認めなかった。当 日 HD 施行中に shock vital から CPA となった。心臓マッサージ・挿管・昇圧剤(DOA 20 mcrg/㎏/min)投与を施行し 1 分以内に心拍再開した。蘇生後の CT 検査にて free air が 認められ、同日当院搬送後に緊急手術を施行した(手術時間 1:14、麻酔時間 1:53、麻酔 方法 AODes+ レミフェンタニル、出血量 541 mL、麻酔開始時 BIS 値 84) 。術後挿管したま ま ICU 入室し、CHDF と PMX による血液浄化を開始、翌日 CHDF と PMX を終了とし、 HDF へ変更した。術後 4 日目に 2 回目の HDF を施行、呼吸に関しては同日に抜管できた。 術後 6 日目より HD(週 3 回)に戻し、術後 11 日目に一般病棟へ転棟、術後 63 日目に神経学 的後遺症を残すことなく退院された。術後 76 日目に胃カメラを施行し、穿孔部位の瘢痕化 が確認できている。 症例 2 は 57 歳、男性。数か月来の慢性アルコール中毒、心窩部・背部痛を自覚していた が放置。当日、気分不良にて本人が救急車要請し、救急隊到着時、頻脈(120bpm)と血圧 低下(測定不可)を認めた。当院 ER 到着時に CPA となり、心臓マッサージ・挿管・昇圧 剤(NAD 合計 3A)投与・輸血(RCC6 単位)により約 5 分で心拍再開した(hypovolemic shock、Vit B1 欠乏症が原因と後に推測) 。蘇生後の CT 検査にて free air が認められ、緊 急手術となった(手術時間 1:01、麻酔時間 1:54、麻酔方法 AODes+ レミフェンタニル、 出血量 870 mL、アルブミン投与量 1,000 mL、麻酔開始時 BIS 値 78) 。術後挿管したまま ICU 入室し、血液浄化として CHDF を術後 6 日目まで施行、術後 6 日目に抜管できた。術 後 8 日目より HD(週 3 回)へ戻り、術後 10 日目に一般病棟へ転棟、術後 35 日目の胃カメラ で十二指腸球部に潰瘍の残存が認められたが明らかな穿孔・出血所見の無いことが確認、術 後 49 日目に神経学的後遺症を認めず退院された。 CPA 蘇生後当日の緊急開腹手術の報告例は稀(2012 年松尾ら、2009 年 Fujisawa ら)であ り、6 ∼ 8 分以内に蘇生に成功しなければ予後は極めて厳しいとされる。術中麻酔管理では 蘇生後脳症を念頭に置き、BIS モニターによる麻酔深度評価と昇圧剤によるバイタル維持が 重要となる。術後 ICU 管理では持続血液浄化療法による酸塩基平衡の恒常性維持と臓器保 護、術後感染対策、水分管理、神経学的後遺症予防のための早期リハビリ等が重要となる。 ― 76 ― D7-1 術後きわめて早期に発症した食道亜全摘術後再建結腸壊死の症例 ○木村 詩織、瀬川 一、谷本 圭司、田中 具治、武信 洋平、福田 和彦 京都大学医学部附属病院 麻酔科 集中治療部 手術当日に意識障害と呼吸不全で発症した、食道亜全摘術後の再建結腸壊死を経験したの で報告する。 【 症例 】75 歳男性。食道および胃の重複癌に対して、胸腔鏡下食道亜全摘、開腹胃全摘、結 腸再建術を施行された。合併症として、糖尿病、高血圧があり内服加療中であった。 【 経過 】術後、手術室で抜管され、意識清明な状態で ICU に予定入室となった。術中、胸膜 の癒着が強く剥離に伴う肺損傷を修復した以外には、特記すべき合併症はなかった。吻合前 の結腸の血流も良好であった。入室約 1 時間後、呼吸停止を伴う意識レベルの低下を認め再 挿管となった。この時点で著明な高炭酸ガス血症と代謝性アシドーシスを認めた。分泌物に よる気道閉塞を疑い気管支鏡にて気管内を観察したが気道閉塞所見はなかった。翌朝には意 識状態は改善し、代謝性アシドーシスも改善してきたが、血圧が低下し始めたため輸液負荷 やカテコラミン投与を開始した。また採血にて可溶性フィブリン、PAI-1 の異常高値を認 めた。敗血症性ショックを疑い、メロペネム、テイコプラニンの投与を開始した。原因検索 目的にて、上部消化管内視鏡を施行し、再建結腸粘膜の色調不良を認めたため、同日、再建 結腸壊死疑いにて挙上腸管切除・食道瘻、腸瘻造設術が施行された。術後、気管挿管のまま ICU へ帰室となった。手術直後より循環動態が著明に改善し POD2 にはカテコラミンの投 与を終了し抜管したが、約 4 時間後に頻呼吸及び呼吸困難感が出現したため再挿管となった。 Refilling による肺鬱血を疑い、フロセミドにて利尿を図り POD4 に抜管した。その後、特 に問題なく経過し POD6 に ICU 退室となった。 【 考察 】食道癌手術後の再建臓器の血流障害による壊死は、致死的になる可能性のある術後 合併症である。通常、再建結腸の壊死は術後 72 時間程度で明らかとなってくることが多い とされているが、本症例では術後 1 時間ときわめて早期の発症であった。また初発症状は意 識障害と代謝性アシドーシスであり、手術からの経過時間も短いため、これらの症状から直 ちに腸管壊死を疑うのは困難であったが、血圧の低下に加え、PAI-1 や可溶性フィブリンの 高値から消化管壊死に伴う敗血症を強く疑うことになった。食道再建術では手術直後であっ ても全身状態の悪化に際して再建臓器の壊死の可能性も考慮する必要があると考えられた。 ― 77 ― D7-2 拡大胸腺摘除術術後に筋無力症性クリーゼを発症し、 治療に難渋した重症筋無力症の一症例 ○堀田 有沙、中本 あい、吉川 範子、大平 直子、立川 茂樹 一般財団法人 住友病院 麻酔科 重症筋無力症(MG)患者で感染、術後などを契機に急激な呼吸困難、球麻痺が進行し呼 吸管理を要する重篤な状態を筋無力症性クリーゼ(MC)という。我々は拡大胸腺摘出術翌 日に MC と思われる呼吸状態悪化を認め、再挿管、長期人工呼吸管理を要し、治療に難渋 した一例を経験したので報告する。 【 症例 】63 歳、女性、身長 153.2 ㎝、43.8 ㎏。 【 既往歴 】糖尿病、十二指腸潰瘍、脂質異常症。 【 現病歴 】X-1 年より物がぼやけて見えるようになり、X 年 6 月には頚部の保持困難、8 月 には上肢挙上困難が生じ、徐々に下肢の脱力も認めるようになって当院神経内科を受診した。 テンシロンテスト、筋電図の waning 現象により MG と診断された。術前にプレドニゾロ ンの内服、二重膜血漿濾過(DFPP)を 7 回施行し、抗アセチルコリン受容体抗体(抗 AchR 抗体)は入院時の 120 から 31.0 nmol/L にまで低下したが、疲労テストなどの臨床症状はむ しろ悪化を認めた。一方で入院時に認めた拘束性換気障害は改善していたため、9 月には拡 大胸腺摘出術施行となった。手術は全身麻酔と硬膜外麻酔で行われ、筋弛緩薬は術中使用し なかった。術直後、呼吸状態が良好だったため抜管し、ICU に入室した。術後 1 日目 (POD1)より二酸化炭素の貯留を認め、浅呼吸となり、テンシロンテスト陽性で MC と判 断し再挿管となった。メチルプレドニゾロンやプレドニゾロン、ヒト免疫グロブリンの投与、 血漿交換(PE)などの治療を行い、POD8 には抜管したが、POD9 には再々挿管となった。 抗 AchR 抗体価は 68.0 nmol/L にまで増加しており、術前の DFPP の抗体除去効果が不十 分であった可能性を考え、PE を継続することになった。計 5 回の PE を行い、POD20 に抜 管となった。この際の抗 AchR 抗体価は 7.7 nmol/L にまで低下していた。POD22 には ICU を退室し、POD66 には退院となった。 【 考察 】MG に対する拡大胸腺摘出術は全身性 MG の患者に対して、できるだけ早期に施行 することが推奨される。しかし、本患者では術前に臨床症状が悪化し、術後に MC を認め、 治療に難渋した。MG 患者に胸線摘出術を施行する際は、術前に病状の安定化を図ることが 重要といえる。また、本患者では術前施行した DFPP の効果が不十分であった可能性を考 慮し、MC 発症後は PE を施行した。MG 患者で DFPP が無効の場合、早期に PE を試す必 要があるのかもしれない。 ― 78 ― D7-3 術後に vasoplegic syndrome をきたした 1 症例 ○中尾 権太、日下 裕介、出口 志保、大地 史広、下山 雄一郎、門野 紀子、 日外 知行、梅垣 修 大阪医科大学 集中治療部 【 背景 】vasoplegic syndrome は開心術後にみられる血管拡張性ショックである。心拍出量 が維持され、血管収縮薬の投与にもかかわらず血圧が維持できない状態と定義される。今回 我々は冠動脈バイパス術後の vasoplegic syndrome を経験したので報告する。 【 症例 】74 歳、男性、身長 155 ㎝、体重 55 ㎏、既往歴に糖尿病があった。急性心筋梗塞に て術前より気管挿管、IABP を挿入されていた。術式として冠動脈バイパス術、僧帽弁形成 術が施行された。手術時間(7:35)大動脈遮断時間(2:30) 。術後は IABP サポート下に ICU 入室となった。ICU 入室後は低血圧が遷延し、多量のカテコラミンを必要とした。心 拍出量は維持されていた。術翌日よりノルアドレナリンとバソプレッシンの投与を開始した。 腎機能の悪化から乏尿となり術後 2 日目より CHDF 開始とした。その後も低血圧が持続し、 術後 9 日目に抜管およびバソプレッシンの投与を中止した。術後 10 日目にノルアドレナリ ンの投与を中止した。術後 12 日目に ICU 退室、25 日目に軽快退院となった。 【 考察 】vasoplegic syndrome の定義は様々であるが、血管収縮薬(ノルアドレナリン)の投 与下に MAP < 50 ㎜Hg でなおかつ心係数> 2.2 ㎖/min/m2 と表現されることが多い。心臓 外科術後の発生頻度は 9 ∼ 44% と様々である。リスクファクターとしては術前からの ACE 阻害薬や Ca 拮抗薬、アミオダロン、ヘパリンの投与や、低心機能(EF < 35%) 、うっ血性 心不全、糖尿病などが挙げられる。本症例は急性心筋梗塞で肺水腫を来たし、vasoplegic syndrome のハイリスク患者であったと考えられる。病態としては血管拡張性ショックであ るため、血管拡張薬の中止に加えて、ノルアドレナリンやバソプレッシンの投与が効果的で ある。またメチレンブルーの投与が効果的との報告も散見される。いずれにせよ抹消動脈圧 (撓骨動脈など)が低いが心拍出量が維持されていて vasoplegic syndrome が疑われる場合 は、中枢動脈圧の評価を行い早めに血管収縮薬の投与を行うことが望ましい。なお当院では 動脈圧の確実な評価のため撓骨動脈に加えて、大腿動脈圧のモニタリングを必ず行っている。 【 考察 】冠動脈バイパス術後の vasoplegic syndrome を経験した。血管収縮薬の投与が効果 的であった。 ― 79 ― D7-4 両 VAD 導入後 5 か月の集中治療を経て植え込み型 LVAD 単独下の心移植待機に移行しえた小児劇症型心筋炎の 1 例 ○前畠 慶人 1)、鳥越 史子 1)2)、内山 昭則 1)、高橋 邦彦 2)、小垣 滋豊 2)、 上野 高義 3)、澤 芳樹 3)、藤野 裕士 1) 1 )大阪大学医学部付属病院 集中治療部、2 )同 小児循環器内科、3 )同 心臓血管外科 小児劇症型心筋炎は臨床経過の進行が早く、多臓器不全が急速に進行するため救命が困難 な場合も多い疾患である。今回我々は発症早期からの積極的な循環補助によって多臓器不全 から回復し、植え込み型 LVAD 装着下、心移植待機に至った症例を経験したので報告する。 症例は 12 歳女児。体重 33 ㎏、身長 155 ㎝。 【 既往歴 】特記すべきことなし。 【 現病歴 】2 日間の感冒症状の後、近医にて心筋炎と診断され、他県の前医小児総合医療セ ンターに搬送された。同院にて劇症型心筋炎として頚部より緊急 V-A ECMO を導入したが、 Ⅲ度 AV ブロックを伴う low EF 状態のまま血行動態の改善を認めなかったため、2 日後 (心筋炎発症 4 日目)に開胸下の Ao 送血、RA 脱血、LA ベント併用の central ECMO を確 立した。ECG 上 wide QRS 幅の改善を認めたが、依然 UCG では EF 13% と低値であった。 3 日後に VAD 導入・心移植を見据えて当院 ICU に搬送入院となった。 【 入院後経過 】当院搬送当日(心筋炎発症 7 日目)に緊急両 VAD 装着術を施行した(Rota flow を用いた LVAD:LV 脱血・Ao 送血と RVAD:RA 脱血・PA 送血、人工肺付) 。2 日 後に RVAD の人工肺離脱テストを施行したが自己肺の酸素化能は悪く、断念した。両 VAD 導入 1 週間後に NO 10ppm 投与下に人工肺より離脱した。両 VAD 補助下 1 か月後には EF 30-40% まで改善しカテコラミンの投与も中止した。また、同時期に気管切開を施行した。両 VAD 補助下 2 か月後に RVAD 離脱を目的としてカテコラミンの増量のもと RVAD 流量の軽 減を試みたが、LVAD の preload が不十分となり肺水腫を発症したため RVAD 流量の再増 量と high PEEP 治療を要した。以後 UCG にて観察しながら両 VAD の流量軽減を図った。 両 VAD 補 助 下 3 か 月 後 に LVAD を 植 え 込 み 型(Jarvik 2000)に 移 行。同 手 術 時 に RVAD に再度人工肺を装着したが 4 日後には離脱した。LVAD 植え込み 1 か月(両 VAD 補 助下 4 か月)後に RVAD 離脱テストを踏まえて、RVAD 離脱術を施行した。NO 20ppm を 投与したが 1 週間で中止可能であった。RVAD 離脱後 2 週間で ICU より一般病棟へ退室した。 現在、人工呼吸器から離脱し、心移植待機中である。ICU 入室期間は約 5 か月間であった。 【 考察 】小児での補助循環を施行できる施設は限られており、小児専門施設へ早期に搬送で きたことが救命に重要であったと考えられる。劇症型心筋炎は臓器不全の進行が早く、本症 例でも比較的早期に前医で補助循環を装着されてはいるが、それでも肺水腫、急性腎不全、 神経筋傷害などの多臓器不全が進行しており、臓器不全からの回復に長期間を要した。小児 劇症型心筋炎は救命が困難なことも多い疾患であるが、発症早期から小児治療に対応できる 施設が連携した積極的な治療を行うことで救命につなげられる可能性もある。 【 結語 】両 VAD 導入後約 5 か月間の集中治療を経て、植え込み型 LVAD 単独下の心移植待 機へ移行しえた小児劇症型心筋炎の 1 例を経験した。 ― 80 ― D7-5 経皮的心肺補助と持続的血液濾過透析を用いて救命し得た 小児劇症型心筋炎の一例 ○杉浦 順子、二川 晃一、出口 文華、山本 智久、岡本 慎司、奥田 隆彦 近畿大学医学部奈良病院 麻酔科 【 症例 】6 歳女児、身長 112 ㎝、体重 17.5 ㎏。発熱・腹痛・嘔吐を主訴に近医を受診し、急 性胃腸炎の疑いで経過観察していた。発熱は軽快したが腹痛が増強したため、2 日後に他院 を受診し、造影 CT で急性胆嚢炎を疑う所見を認め、当院へ搬送された。 【 経過 】精査の結果、胆嚢捻転症と診断し緊急手術を施行した。麻酔はプロポフォール 40 ㎎ で導入し、エスラックス 20 ㎎を投与して気管挿管、酸素 - 空気 - セボフルラン、レミフェ ンタニルで維持した。腹腔鏡下胆嚢摘出術の予定で手術を開始したが、腹腔内を観察すると 胆嚢頸部に捻転所見を認めず、胆嚢炎は否定的となり手術を中止し、経胸壁心エコー検査を 実施した。エコー所見で心室中隔、左室後壁以外の壁運動が低下し、下大静脈の拡大が著明 で、急性心筋炎と診断した。覚醒を待つ間に心電図上 ST 変化が生じ、不整脈が出現、徐脈 を呈したため心臓マッサージの実施、抗不整脈薬・カテコールアミンの投与を開始した。心 拍が回復した後、直ちに経皮的心肺補助(PCPS)を導入して ICU に入室した。 ICU 入室後、血行動態は安定して尿の流出も良好で、持続的血液濾過透析(CHDF)は ICU 入室 2 日間で終了した。ICU 入室 5 日目には心エコー上心機能は改善傾向を示し、入室 9 日目に PCPS は終了した。入室 12 日目には人工呼吸器を離脱、18 日目に病棟へ帰室した。 以降は合併症なく経過し、入院 59 日目に退院となった。 【 考察 】劇症型心筋炎は、血行動態の急激な破綻をきたし、体外循環補助を必要とする重症 度を有する心筋炎と定義される。主症状としては、ショックを含む心不全症状と不整脈によ る動悸や失神、長時間持続する胸痛などが見られるが、初発症状としては発熱を伴う感冒症 状や嘔吐・下痢などの消化器症状を併発することも多い。本症例でも消化器症状が先行し、 心不全症状が顕在化しなかったため手術を予定した。全身麻酔管理中の急変であったため、 速やかに投薬、PCPS の導入が可能であり術後の回復に繋がったと考えられる。 急性心筋炎の多くはウイルス性であるが、本症例でもコクサッキーウイルスおよびパライ ンフルエンザウイルスの抗体価が上昇しており心筋炎の原因である可能性が考えられる。 【 結語 】小児の劇症型心筋炎では、消化器症状が初発症状として先行することがあり、心筋 炎の可能性も考慮して対処する必要がある。循環不全に対しては、迅速な PCPS の導入と 集中的治療が重要となる。 ― 81 ― D7-6 肺動脈絞扼術を先行させた心室中隔欠損症に対する 根治術時に cardiac ECMO を使用した 集学的治療によって救命しえた 18 トリソミー患児の 1 例 ○文元 聰志 1)、島田 亮 1)、小澤 英樹 1)、根本 慎太郎 2)、小田中 豊 1)、尾崎 智康 1)、 岸 勘太 1)、片山 博視 3)、廣川 文鋭 4)、宮崎 信一郎 5)、出口 志保 1)、大地 史広 1)、 日下 祐介 1)、下山 雄一郎 1)、門野 紀子 1)、日外 知行 1)、梅垣 修 6) 1 )大阪医科大学 胸部外科、2 )大阪医科大学附属病院 小児心臓血管外科、 3 )同 小児科、4 )同 消化器外科、5 )同 麻酔科、6 )同 集中治療室 症例は 11 ヶ月の女児。在胎 35 週 5 日で出生。出生後の心エコーで心室中隔欠損症と動脈 管開存症があり染色体検査で 18 トリソミーと診断された。生後 3 ヶ月時に肺動脈絞扼術と 動脈管結紮術を行ったが体重増加に伴い肺動脈絞扼部の狭搾と右心不全の増悪がみられたた めに心室中隔欠損パッチ閉鎖術及び肺動脈形成術を施行した。肺動脈は絞扼部による狭搾を 横断した後に端々吻合し、さらに自己心膜パッチを縫着することで拡大させた。しかし体外 循環の離脱を試みるも右室の拘束型心不全による重度の低酸素血症と肺高血圧症がみられた ために離脱困難と判断し上行大動脈を送血路に上大静脈を脱血路とし veno-arterial cardiac ECMO を導入した。止血・洗浄をしていた際に腹部の過度な緊満感に気付き腹腔穿刺を 行ったところ血性の腹水が流出。洗浄するも腹水の色調が変化しなかったため腹部からの持 続的な出血を考え、右大腿静脈に挿入していた中心静脈カテーテルから造影剤を注入し透視 下に観察するとカテーテル先端から後腹膜内に造影剤の漏出を認めたために開腹止血術を 行った後に胸部にはエスマルヒ布を縫着し開胸のまま ICU に入室した。 ICU 入室後、ECMO に関しては約 2,500rpm で循環を維持することができた。開胸下で の管理であるためドレーン排液量など出血量を随時評価し適宜血腫除去術と洗浄を行った。 ECMO の脱血圧をモニタリングすることで循環血液量の評価を行ない、脱血圧の上昇がみ られた場合には血管内脱水を考え適宜輸血することでバランス管理を行った。抗凝固に関し てはヘパリンの持続投与を行い ACT 及び APTT を頻回に測定することで適切な投与量を 維持しえた。術後 3 日目より脈圧とともに尿量も増加したことから術後 5 日目には回転数を 徐々に下げていき ECMO を離脱した。離脱直後の循環動態は安定していたが、肺動脈圧が 依然として高値であったため一酸化窒素(NO)の吸入を開始し肺血管拡張薬も併用し肺動脈 圧の管理を行った。これらの循環・呼吸管理が奏効し術後 7 日目には NO を離脱、術後 12 日目には集中治療室から一般病棟に転棟した。転棟後は循環、呼吸状態は安定したものの肝 機能の増悪と高ビリルビン血症がみられ現在肝庇護剤などで対症療法を行いながら原因精査 中である。 Cardiac ECMO(veno-arterial ECMO)は先天性心疾患や劇症型心筋炎など内科的治療 に反応しない心原性ショックや循環が維持できない不整脈が適応とされているが絶対的基準 はなく各施設や医師の経験に依存するところが大きい。今回我々は肺動脈絞扼術を先行させ た心室中隔欠損症に対する根治術時に cardiac ECMO を使用した集学的治療によって救命 しえた 18 トリソミー患児の 1 例を経験した。18 トリソミー患児に対して cardiac ECMO を 使用した報告例はなく当科における ECMO 管理時の工夫、さらには先天性心疾患術後にし ばしばみられる急性期肺高血圧症に対する ICU での戦略を含め報告する。 ― 82 ― D8-1 肺炎球菌感染症により電撃性紫斑病を来した一例 ○谷 泰弘 1)、辻本 登志英 1)、山田 裕樹 1)、山 亀井 純 1)、千代 孝夫 2) 一幸 1)、是永 章 1)、置塩 裕子 1)、 1 )日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部、2 )同 救急部 【 症例・現病歴 】70 代男性、既往にアルコール性肝障害あり、ADL は自立していた。2014 年 3 月某日の夕方、意識障害を認め近医へ救急搬送された。搬送先で心不全、肺炎、CO2 ナルコーシスの診断で同日当センターに救急搬送された。循環器内科で ICU に入室し人工 呼吸管理、高容量カテコラミン投与、持続血液透析、抗菌薬治療を開始されたが改善せず、 肺炎による敗血症性ショック、多臓器不全のため当科に転科となった。 【 入院後経過 】重症感染症により多臓器障害を来しており、人工呼吸管理、大量輸液、カテ コラミン投与、持続血液透析、抗菌薬治療、ステロイド投与、免疫グロブリン投与を行った。 当初は血圧維持に難渋したが、徐々に全身状態は改善し、第 4 病日にカテコラミン投与を終 了した。第 5 病日に持続血液透析から離脱した。敗血症は収束傾向となったが呼吸不全は遷 延し、第 14 病日に抜管した。 一方で、入室時から体幹・四肢のチアノーゼは著明であり、体幹のチアノーゼは消退した ものの四肢のチアノーゼは残存し、色調は蒼白となり最終的に黒色壊死の経過をたどったこ とから、電撃性紫斑病と診断した。第 21 病日に ICU 退室し、四肢末梢の黒色壊死が腫脹軽 減し、感染のないことを確認したうえで、第 27 病日に紹介元の病院に転院となった。後日 指趾切断術を予定されている。 【 考察及び結語 】重症感染症により稀に電撃性紫斑病を来すことがあり、致死率が高いこと が知られている。プロテイン C/S 欠損症の小児の報告例が多いが、成人発症例の報告も散 見される。成人報告例では脾摘などの免疫力低下を背景にもつ症例が多い。この症例は、プ ロテイン C、プロテイン S はともに正常範囲内であり、脾摘はされていなかった。起因菌 としては、本邦では肺炎球菌の報告例が多く、海外では髄膜炎菌の報告例が多い。救命例で は指趾切断が必要となる。時期としては、局所感染がない限りは肉芽が形成されるまで待機 した後に手術を行い、可能な限り機能温存に努めるべきと思われる。 ― 83 ― D8-2 肺炎球菌感染症に伴う電撃性紫斑病の 1 救命 ○村上 紗羅 1)、名倉 功二 2)、熊澤 淳史 1)、青柳 健一 1)、小畠 久和 1)、小原 章敏 1) 1 )市立堺病院 集中治療科、2 )同 総合内科 【 はじめに 】肺炎球菌による電撃性紫斑病は稀な疾患であるが致死的全身感染症である。今 回、救命し得た 1 症例を経験したので報告する。 【 症例 】53 歳男性。生来健康であったが、来院 2 日前から感冒症状、来院前日の下痢嘔吐を 認めた。来院当日、皮膚の変色に気付き当院に来院した。来院時 vital は意識清明、血圧 80/40 ㎜Hg、心拍数 120bpm、体温 39 度、SpO2 は末梢循環が悪く測定不能であった。外表 所見としては全身に紫斑と網状斑が混在する状態であった。血液検査では高炎症状態、腎機 能低下、DIC を認めた。CT では明らかな感染源は認めなかったが、脾臓の低形成を認めた。 尿中肺炎球菌抗原陽性であり、血液グラム染色で GPDC が観察された。以上より肺炎球菌 感染に伴う電撃性紫斑病、敗血症性ショックと診断し、全身管理目的で ICU 入室とした。 入室時 APACHEⅡscore は 35 点、SOFA score21 点であった。入室後は感染症治療と ショックの加療を行った。感染症治療は入室時から MEPM+LVFX+VCM を用いたが、菌 感受性が判明してからは CTRX+LVFX で加療した。ショック状態は入室後も不安定な状 態が継続し、人工呼吸管理の上で、大量輸液と高容量カテコラミンを要した。来院時から無 尿と高度代謝性アシドーシスを認めており、入室後速やかに CRRT を開始した。入室 10 日 後にカテコラミンから離脱、入室 12 日後に人工呼吸器から離脱した。来院当初から認めた 全身の紫斑部は一部潰瘍化し、四肢末端部は DIC に伴う血流不全のために壊死を認めた。 壊死部はさらに感染を合併したため、入室後 26 日に両下腿切断術、左前腕切断術を施行し た。入室 28 日後には全身状態は安定し ICU を退室となった。RRT は ICU 退室時には依然 必要な状態であったが、入院 38 日後に離脱した。 【 考察 】電撃性紫斑病は DIC に伴い、血栓/出血傾向による皮膚壊疽を引き起こす病態であ り、原因により急性感染性、先天性プロテイン C 欠損症に代表される凝固異常、特発性に 分類される。本症例のような急性感染性では、その起炎菌として肺炎球菌や髄膜炎菌が有名 であるが、成人発症症例では肺炎球菌が多いとされ、肺炎球菌性敗血症の 6% に電撃性紫斑 病を合併したとする報告もある。感染性電撃性紫斑病を発症する特徴として、免疫不全状態、 脾臓摘出後等があるが、この患者では脾臓低形成に伴う脾機能低下がその一因と考えられた。 通常肺炎球菌性電撃性紫斑病の死亡率は約 30% との報告があり、その死因は多臓器不全、 DIC であることが多いとされている。また、生存例でも多くは壊死部切断をせざるを得な い四肢壊死を伴うことが多いとされる。今回経験した症例も、多臓器不全を併発し、治療過 程で肢切断を行わざるを得なかったが、早期診断からの適切な抗菌薬治療と全身管理により 救命し得たと考えられた。 ― 84 ― D8-3 肺炎球菌感染症に合併した電撃性紫斑病 ○山条 純基、荒井 祐介、成宮 博理、平木 咲子、大岩 祐介、岡田 遥平、 市川 哲也、小田 和正、榊原 謙、石井 亘、檜垣 聡、飯塚 亮二、北村 誠 京都第二赤十字病院 救命救急センター 【 背景 】肺炎球菌は市中肺炎の原因菌として最も頻度が高い一方、DIC や髄膜炎など invasive pneumococcal disease を発症することがあり致命的となることがある。一方、感染症 が原因の電撃性紫斑病を acute infectious purpura fulminans( AIPF)という。肺炎球菌が 原因である敗血症の 6% に合併し、致死率は 30 ∼ 40% と報告されている。今回、救命し得 なかった AIPF の症例を経験したので報告する。 【 症例 】84 歳男性 【 現病歴 】3 日前から感冒症状があり、1 月某日に自宅で倒れていたところを発見され当院救 命救急センターに搬入された。 【 搬入時現症 】GCS E3V2M4、HR 86bpm、BP 168/136 ㎜Hg、SpO2 94%(リザーバー 10L) 、BT 36.6℃と全身に淡い紫斑を認めた。徐々に酸素化が悪化し来院後 4 時間で挿管し 人工呼吸管理が必要になった。また頻拍と意識障害、アシデミア、乳酸の上昇を来し shock は進行した。経時的に紫斑は更に拡大した。胸腹部 CT では全肺野の淡い微細粒状影と左舌 区の無気肺、無脾を認め、肺炎球菌尿中抗原検査は陽性であった。以上から肺炎球菌性肺炎 に伴う、電撃性紫斑病、敗血症性ショック、DIC と診断し、γグロブリン静注(5,000 ㎎/ day) 、抗生剤(MEPM 2g/day、ABPC 8g/day、CLDM 2.4g/day)を投与し、全身管理を 目的に ICU に入室した。 【 ICU 入室後経過 】血圧低下に対し補液、カテコラミン(NA 0.3γ、DOA 4γ)を投与し、 収縮期血圧 90 ㎜Hg 以上を保った。横紋筋融解症と急性腎障害による高カリウム血症 (7.9mEq/L)をきたし、心電図はサインカーブ状 QRS 波になったためグルコン酸 Ca、重 炭 酸 Na、GI 療 法、 血 液 透 析 で 対 応 し た。 胸 腹 部 造 影 CT で 非 閉 塞 性 腸 管 虚 血 症 と Waterhouse-Friderichsen 症候群の合併が疑われ、ソル・コーテフ 300 ㎎/day を投与した。 血液培養からは肺炎球菌が検出された。DIC に対してリコモジュリン、ATⅢを投与し、高 サイトカイン血症に対して PMX、PMMA-CHDF を使用した。更に急性肝不全に対して血 漿交換を行った。しかし MOF をコントロールすることができず来院後 72 時間で死亡した。 【 考察 】AIPF は原発感染巣が不明の菌血症で発症することがあり、今回の症例も 3 日前の 感冒症状から急激に菌血症が悪化したと考えられたが画像上は明らかな感染巣は不明だった。 致死率は高く予後は極めて不良な疾患であるが、今回比較的早期に診断し治療を開始するこ とができたにもかかわらず救命できなかった。感染巣のコントロールができない AIPF の 治療は極めて困難と考えられる。 ― 85 ― D8-4 左踵膿疱から Toxic Shock Syndrome( TSS )を呈した MRSA 感染の 1 例 ○荒井 裕介、小田 和正、大岩 祐介、平木 咲子、岡田 遥平、榊原 謙、石井 亘、 成宮 博理、檜垣 聡、飯塚 亮二、北村 誠 京都第二赤十字病院 救命救急センター Toxic Shock Syndrome( 以下 TSS)は、黄色ブドウ球菌により産生される Toxic Shock Syndrome Toxin-1( TSST1)が原因となり、発熱・頭痛などの症状から、急激に意識障害・ ショック・多臓器不全を来す疾患である。TSS の原因として本邦では MSSA が多いが、近 年、市中型 MRSA(community-aquired MRSA:以下 CA-MRSA)が問題視されており、 注意を要する疾患である。今回我々は、左踵膿疱から TSS を呈した MRSA 感染症の 1 例を 経験したので文献的考察を加えて報告する。 【 症例 】48 歳女性、15 年前卵巣囊腫手術歴あり。内服歴なし。受診 6 日前、岩盤浴・温泉に 出かけていた。3 日前より、左踵に挫創に気づいたが放置。2 日前に 39 度の発熱、倦怠感、食 思不振が出現。徐々に全身に発疹が出現し、倦怠感増悪、嘔吐・下痢を来したため、5 月某日、 当院救急外来受診した。血圧 89/63 ㎜Hg、脈拍 106/ 分、38 度の高熱、呼吸数 24 回 / 分、意 識は清明であった。全身にびまん性斑状紅斑を認めた。血液生化学検査で WBC14,000/μ ℓ、 CRP 23.3 ㎎/㎗, BUN 32.8 ㎎/㎗、Cre 2.35 ㎎/㎗、T-bil 2.1 ㎎/㎗と高度炎症所見の上昇、 腎機能障害、ビリルビン値の上昇を認めた。当直医の診察で明らかな熱源が同定できず、敗 血症疑いとして、入院の上、輸液・第 3 世代セフェム系抗生剤投与を行い経過観察されてい たが、同日深夜、輸液加療に反応せず、ショックの遷延・乏尿・意識レベルの低下を認めた ため、当科紹介・ICU 入室となった。初診時は気づかれていなかったが、ICU 入室後、左踵 に膿疱を認め、穿刺にて灰白色の膿汁が認められた。グラム染色にて GPC が認められたため TSS もしくは TSLS を疑い、PCG(2,400 万単位 /day)+CLDM(2,400 ㎎/day) ・γ-glb 製 剤(5 g/day)を用いて感染症治療を行った。また輸液負荷および NA 投与・Vigilleo monitor を用いて循環管理を行った。膿汁培養にて MRSA が検出されたため VCM 投与に切り替えた。 血液培養などのその他の培養検査では MRSA 以外の起因菌となり得る菌の検出は認められな かった。その後、徐々に全身状態改善傾向となり、入院 8 日目に退院。退院 3 日後の外来にて 手掌に落屑を認め、TSS として矛盾しない所見と考えられた。 【 考察 】通常診察では見逃しやすい左踵部に出来た膿疱から TSS を発症した 1 例であり、起 因菌は MRSA であった。今後、本邦でも CA-MRSA の増加が予想されており、疫学的動 向や感受性の動向に注意を要する疾患であると考えられた。 ― 86 ― D8-5 ショックが遷延した Toxic Shock Syndrome に対し、 PMMA-CHDF を含む集学的治療により救命し得た症例 ○平山 尚史 1)、稲富 理 2)、喜多 理香 3)、橋本 賢吾 3)、藤井 恵美 3)、岸本 卓磨 3)、 今宿 康彦 4)、山根 哲信 3)、浜本 徹 3)、辻田 靖之 3)、高橋 完 3)、安藤 朗 2)、 江口 豊 3) 1 )滋賀医科大学 医師臨床教育センター、2 )同 消化器内科、3 )同 救急・集中治療部、 4 )同 麻酔科 【 はじめに 】SSCG において、敗血症における循環動態の改善は 6 時間以内を目標としてい る。今回、敗血症性ショックが遷延した症例に対して、SSCG を超えた集学的治療により救 命し得た症例を経験したので報告する。 【 症例 】44 歳男性、既往歴;アルコール性肝障害、慢性膵炎。現病歴;2014 年○月 4 日より 発熱・下痢・嘔吐を認めており、翌々日 6 日の深夜 3 時頃より異常行動・不明言語を認めた ため、9 時頃に救急要請され A 病院搬入となった。同院到着時不穏状態であり、バイタルは sBP100 ㎜Hg、HR150 で、採血結果からは敗血症と DIC の所見が得られた。SSCG に従い MEPM+VCM の抗生剤投与および補液 5L 行うも、夕方には sBP80 ㎜Hg 台まで低下あり、 7 日翌朝にノルアドレナリン(NA)開始するも改善を認めないため、同日 14 時に当院集中治 療室搬送となった。入室時、NA0.08γにて BP82/59 ㎜Hg、HR140、RR36、SpO2 99% (酸素マスク 3L 投与) 、BT37.8℃、APACHEⅡscore14 点、SOFA score11 点、動脈血ガ スでは B. E -5.4 ㎜ol/L、Lac 14 ㎎/dL であった。また、左母趾に潰瘍を伴う皮膚欠損を認 めており、グラム陽性球菌による Toxic Shock Syndrome が疑われた。挿管の後、PMMA 膜を用いた持続血液濾過透析(PMMA-CHDF)を開始した。なお、hemofilter はヘモフィー ル CH1.8W(東レ)を用い、施行条件は Qb80 mL/min、Qs500 mL/h、Qd1,000 mL/h、抗 凝固剤はナファモスタットメシル酸 35 ㎎/h で行った。抗生剤は LZD および PIPC/TAZ で 開始し、入院時採取した血培から MSSA 確認されたため CEZ と CLDM へ変更した。なお、 心エコーでは明らかな疣贅認めておらず、感染性心内膜炎の合併は否定的であった。ウリナ スタチン 10 万単位、アンチロトンビン製剤 1,500 単位を 2 日間投与し、IgG 低下に対しては 免疫グロブリン 5g を 3 日間投与を行った。入室時 CRP41.63 ㎎/dL、PCT28.6ng/mL から 第 5 病日には CRP18.85 ㎎/dL、PCT5.81ng/dL まで改善を認め CHDF 離脱とした。第 10 病日には sBP170 ㎜Hg 台、HR80 台、BT37℃まで改善し、同日抜管、第 11 病日に A 病院 に転院となった。 【 結語 】初期輸液に反応せず、6 時間以上経過した後もショック状態が遷延した敗血症およ び Toxic Shock Syndrome 症例に対して、PMMA 膜を用いた CHDF を始めとする集学的 治療が有用であったと考えられる。今後さらに症例を重ね検討していく必要がある。 ― 87 ― ― 88 ― 一般演題 ( 看護部門) N1-1 救命救急センターにおける Behavioral Pain Scale( BPS )導入 ― 看護師の疼痛に対する意識・行動の変化と問題点 ― ○小松 永莉子、宇良 郁美、浅川 寿 奈良県立医科大学附属病院 高度救命救急センター ICU 【 背景、目的 】これまで A 病院高度救命救急センター集中治療室(以下 ICU)では挿管患者 に共通した疼痛評価スケールを使用していなかったため、主観的な疼痛評価を行ってきた。 また、挿管患者の大多数に鎮静剤と鎮痛剤を併用しているが、鎮痛・鎮静管理は鎮静優位で 行われているのが現状である。意思疎通の図れない挿管患者に使用可能な Behavioral Pain Scale( 以下 BPS)を導入することで看護師の疼痛に対する意識が高まり疼痛緩和を目的とし たケア介入が可能になるのではないかと考えた。本研究の目的は BPS 導入前後での看護師 の疼痛に対する意識・行動の変化と問題点を明らかにすることである。 【 方法 】研究対象は ICU に 3 年以上勤務し、BPS を実際に使用したことのある看護師 12 名 とした。半構成面接(個別インタビュー)でデータ収集を行い、逐語録に起こしたインタ ビュー内容の類似性に基づきサブカテゴリーを作成した。そのサブカテゴリーの内容に基づ きカテゴリーを作成した。研究期間は 2012 年 9 月から 2014 年 4 月までである。 【 倫理的配慮 】本研究は奈良県立医科大学附属病院看護研究倫理委員会の承認を得た。 【 結果 】BPS 導入前後の看護師の疼痛に対する意識・行動の変化と問題点は 13 項目の〈 サブ カテゴリー〉から構成される 5 項目の[ カテゴリー]に分類された。5 項目のカテゴリーは [ ICU における疼痛管理 ] [ BPS の使用 ] [ BPS 導入に伴う看護師の意識・行動の変化 ] [ BPS 使用における問題点 ] [ 今後への期待 ]であった。 【 考察 】BPS の使用により客観的な疼痛評価が可能となり、挿管患者の疼痛に対する意識が 高くなったことから挿管患者の疼痛評価に対する看護師の意識は変化したと考えられた。ま た BPS の使用については〈 判断基準が難しく評価するのに困った点 〈 〉 評価者側の問題点 〉 〈 適応の限界 〉 という問題点が明らかとなったことから、BPS 評価者間及び評価者内の信頼 性を向上させることが更なる有用性の向上につながると考えられた。さらに、BPS の適応 基準を確立することも BPS を有効に使用していく上で重要であると考えられた。 BPS 導入後、疼痛管理について医師に相談することはあったものの、それ以上の疼痛緩 和を目的としたケア介入には至らなかったという意見が多数みられた。その要因として、 BPS の評価に不安があるという〈 評価者側の問題点 〉や BPS だけでは疼痛評価が行えない という〈 BPS による疼痛評価の限界 〉が考えられた。しかしながら、BPS による疼痛評価を 継続し評価者側の問題点を改善することが可能になれば、挿管患者の疼痛管理における看護 師のケア介入の機会が今後増加していくものと考えられた。 【 結論 】本研究において、BPS を使用することで挿管患者の疼痛に対する看護師の意識が高 まった。しかし疼痛管理について医師と相談するという行動の変化は見られたものの、それ 以上のケア介入には繋がらなかった。BPS による疼痛評価を継続し、評価者側及び BPS 使 用における問題点を改善することが今後の課題である。 ― 90 ― N1-2 CAM-ICU を用いた膵頭十二指腸切除術後患者の せん妄発症の実態調査 ○高田 佳澄、桑原 淳子、小泉 素子、白石 由美 地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター ICU 【 はじめに・目的 】消化器外科手術の中でもドレーン数が多い膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;以下 PD)後患者は、他の術式より安静度が厳しく、ほとんど体を動 かすことなく静かに過ごしている印象が強い。そのため、精神的に落ち着いていると判断さ れやすく、低活動型せん妄を発症していても見落としている可能性があると考える。そこで 本研究は、ICU における PD 術後患者のせん妄発症の実態を明らかにすることを目的とした。 【 研究方法 】期間:2013 年 4 月∼ 2014 年 4 月。 対象:PD 術後患者 50 名。 調査方法:同意を得られた患者を対象に、CAM-ICU を用いてせん妄評価を独自で設定し た時期に行う。入院診療録・ICU 経過表から、患者の背景を情報収集する。 分析方法:せん妄発症群は過活動型・低活動型・混合型せん妄に分類し、単純集計する。 【 倫理的配慮 】所属施設の倫理委員会の承諾を得た。 【 研究結果 】対象者は 50 名で性別は男性 30 名、女性 20 名であり、平均年齢は 64.88 歳であっ た。せん妄既往歴があった者は 0 名、手術前の睡眠薬の使用者は 7 名、飲酒歴のある者は 31 名であった。手術前入院期間の平均は 5.98 日、手術平均時間は 647.1 分、ICU 入室期間は平 均 1.78 日 で あ っ た。RASS の 評 価 結 果 は、RASS+ が 1 名、RASS− が 6 名、 そ の 他 は RASS0 であった。せん妄発症者は 1 名で、RASS+2 過活動型せん妄であり、せん妄発症率 は 2% であった。過活動型せん妄と評価された患者は、男性、62 歳、せん妄の既往歴なし、 手術前の睡眠薬の使用歴もなし、飲酒歴のみあり、術前入院期間は 7 日、ICU 入室期間は 1 日であった。手術時間は平均プラス 10 分で、麻酔からの覚醒遅延がみられ、麻酔拮抗薬を 使用後にせん妄と評価された。 【 考察 】せん妄と評価された患者の背景とせん妄発症との因果関係は明確なものは得られな かった。しかし、麻酔からの覚醒遅延がみられ麻酔拮抗薬を使用後にせん妄と評価された事 から、麻酔からの急激な覚醒による一時的な過活動型せん妄であったと考える。せん妄発症 率が 2% と低かった要因として、手術前入院期間・ICU 入室期間が短かった事、H2 ブロッ カーの未使用、平均年齢が比較的若い事が考えられる。手術前に ICU の環境や手術後の経 過等を説明し、ICU 入室後は全身管理だけでなく、常に患者の側に寄り添い、不安等の訴 えを傾聴している。これらの事により、手術前の心構えやイメージが付き、手術後のストレ スや不安を軽減した事が、せん妄発症率が低かった要因の一つと考える。今後も、せん妄を 早期発見し重症化を防止するために、CAM-ICU を用いて定期的な評価を継続することが 重要である。 ― 91 ― N1-3 集中治療室における BPS 導入の取り組み ○吉田 真穂 1)、石西 央樹 1)、辻本 雄大 1)、榊 裕美 2)、高木 美由紀 1)、 西浦 聡子 1) 1 )奈良県立医科大学付属病院 C 棟 3 階 集中治療室、 2 )奈良県立医科大学医学部 看護学科 成人看護学 【 背景・目的 】近年、人工呼吸器患者における「最適な鎮静・鎮痛管理」として、過剰な鎮 静の合併症を防ぐため鎮痛を基本とした鎮静管理が主流となっている。2008 年に日本呼吸 療法医学会が発表した「人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン」では、鎮静においては、 Richmond Agitation-Sedation Scale( 以下 RASS) 、鎮痛においてコミュニケーションが取 れない場合は behavioral pain scale( 以下 BPS)の各評価スケールが推奨されている。 しかし、本邦での BPS の利用率は 3% と少なく 1)、A 病院集中治療室においても、人工 呼吸器管理中の鎮痛の評価は看護師の主観で判断している現状があるため、BPS の導入が 必要であると考えた。今回、新たに BPS を導入することでの現状を把握し、正確に評価し 定着させていくためにはどのような介入が必要であるかを検討した。 【 研究方法 】 対象者:2013 年 9 月の時点で A 病院集中治療室に所属し、同意を得られた看護師 35 名。 期間:2013 年 9 月∼ 2014 年 1 月。 方法:BPS 導入前後に鎮痛管理に関する勉強会を実施した。導入後の内容は、より理解度 を深めるために対象者の疑問点を抽出した上で修正し、動画を用いて勉強会を実施した。評 価は導入前後の使用率および、対象者に行った 10 問のテストの正答率の 2 点で実施した。 分析方法:対象者に実施したテストの正答率及び、BPS の使用率に関しては対応のある t 検定を用いて分析した。 倫理的配慮:奈良県立医科大学附属病院看護研究倫理委員会の承認後、対象者に研究目的・ 方法、研究参加への自由、プライバシーの保護について説明し、同意を得て実施した。 【 結果 】対象者に実施したテストの正答率に関しては、BPS の 3 つの各項目の点数は、表情 は 6.65 点から 7.88 点、呼吸器の同調性は 6.68 点から 7.5 点、合計点は 20.6 点から 23.17 点と 有意に上昇をみとめた(p < 0.05) 。表情に関しては、7.4 点から 7.7 点であり有意に上昇は みとめなかった。BPS の使用率に関しては、1 回目の勉強会後 30 日間で 48%、2 回目の勉強 会後 30 日間では 77.7% と有意に上昇を認めた(p < 0.05) 。また、導入 30 日後では使用率は 低下し、その後 2 回目の勉強会を実施することで使用率の上昇をみとめ、60 日後でも低下に はいたらなかった。 【 考察 】今回 BPS を新たに導入する上で、使用率が低下した 30 日後に 2 回目の勉強会を行っ たことで、30 日から 60 日までの使用率の低下は認めなかった。その理由として、使用率が 低下した時期にアンケートによりスタッフの疑問を抽出したことや、動画を活用し BPS の 評価をよりイメージ化しやすく工夫したことで、スタッフへの使用に対する行動への動機づ けができたことが関連していると考える。 引用文献 1)日本集中治療医学会規格・安全対策委員会:ICU における鎮痛・鎮静に 関するアンケート調査 日本集中医学会雑誌(19) ,p99-106. 2012 ― 92 ― N2-1 人工呼吸管理患者への鎮痛・鎮静プロトコル導入過程における 医療者の鎮静鎮痛管理に対する認識への影響 ○寺本 佳菜 1)、小川 哲平 1)、辻本 雄大 1)、犬童 隆太 1)、松葉 晃平 1)、 高木 美由紀 1)、西浦 聡子 1)、井上 聡己 2) 1 )奈良県立医科大学附属病院 C 棟 3 階、2 )同 麻酔科 【 目的 】集中治療を受ける患者の多くは、様々な苦痛を経験しており、適切な鎮痛鎮静薬の 管理が必須である。近年では、米国集中治療医学会から発表された PAD ガイドライン中で も、鎮痛鎮静管理のプロトコル導入が推奨されている。 A 病院集中治療室では、鎮痛鎮静スケールが導入されているものの、治療や看護には活 用しきれていない現状があり、その解決策として、鎮痛・鎮静プロトコルを導入した。鎮痛 鎮静プロトコルの導入により、医療者の鎮痛鎮静管理への認識に少なからず影響を及ぼすこ とが予想される。よって、本研究の目的は、人工呼吸管理患者への鎮痛・鎮静プロトコル導 入過程における医療者の鎮痛鎮静管理に対する認識への影響を明らかにすることである。 【 研究方法 】 対象:集中治療室に勤務する師長を除く看護師約 40 名。部長、副部長を除く麻酔科医師数名。 調査期間:2014 年 3 月∼ 2014 年 6 月。 データ収集方法:独自に作成した鎮痛鎮静管理に関する質問紙調査を、鎮痛・鎮静プロトコ ル導入過程前後で計 2 回行った。データ分析方法:収集したデータに関して単純集計を行い、 前後比較が該当する項目に関しては、対応のないノンパラメトリック検定を行った。 倫理的配慮:本研究は、奈良県立医科大学附属病院看護研究倫理委員会の承認を得た上で実 施した。 【 結果・考察 】鎮痛・鎮静プロトコル導入前の質問紙の回収率は 100% であった。看護師対 象の質問紙の結果について、鎮痛鎮静について関心が「ある」 「どちらかといえばある」と 回答した者は 100% であった。鎮静によるメリット・デメリットについて「知っている」 は 12.9%、 「どちらかというと知っている」は 38.7%、鎮痛によるメリット・デメリットに ついて「知っている」は 11.4%、 「どちらかというと知っている」は 48.6% であった。 PAD ガイドラインを「聞いたことがある」と回答した者は 28.6% であった。BPS・RASS を医師への報告に活用できていると回答した者は、 「活用できている」は 2.9%、 「どちらか と活用できている」は 46.9%、 「どちらかといえば思わない」は 47.1%、 「思わない」は 5.9% であった。鎮静コントロール不足と判断する値は、RASS「2」が 38.7% と最も多く、 「0」 「1」が共に 25.8% であった。鎮痛不足と判断する値は、BPS「5」 「6」が共に 32% で 最も多かった。医師対象の質問紙の結果として、鎮痛・鎮静深度の状況報告時に看護師の BPS・RASS 活用の適切性について、 「どちらかといえば思う」は 25%、 「どちらかといえ ば思わない」は 75% と回答した。BPS を鎮痛コントロールの活用の適切性について、 「ど ちらかといえば思う」 「できていない」は共に 14.2%、 「どちらかといえばできていない」 は 71.4% であった。以上から、BPS・RASS を使用していても医師、看護師の半数が報告・ 治療に活用できていない現状が明らかになった。プロトコル導入後の質問紙を現在集計中で あり、医療者への鎮痛鎮静管理に関する認識への影響とその要因について考察し、報告する。 ― 93 ― N2-2 当院 ICU における人工呼吸器管理の現状と 再挿管関連因子の検討 ○永田 明恵 1)、西浦 聡子 2)、内藤 祐介 1)、安宅 一晃 1)、井上 聡己 2)、川口 昌彦 1) 1 )奈良県立医科大学 麻酔科学教室、2 )奈良県立医科大学附属病院 集中治療部 【 目的 】人工呼吸器からの離脱は ICU での治療・看護において重要課題であり、抜管後は再 挿管に至らないよう注意が必要である。再挿管は ICU 滞在日数の増加や死亡率の上昇と関 連するとされており、その予防に向けた介入は重要である。近年、再挿管に影響を与える因 子を検討した研究が多く発表されているが、当院での現状は明らかとなっていない。今回、 当院での人工呼吸器管理の現状と再挿管に関連する因子を遡及的に検討した。 【 対象および方法 】本研究は当院医の倫理委員会において承認を得た。対象は 2011 年 4 月 1 日∼ 2013 年 3 月 31 日に ICU 入室となった患者のうち、18 歳以上かつ人工呼吸器装着時間 が 48 時間以上の患者。全身状態悪化、予定外抜管などにより再挿管に至った症例は研究対 象から除外した。抜管後 72 時間以内での再挿管の有無により再挿管群、非再挿管群に群分 けした。再挿管の関連因子として、年齢・ICU 入室期間・挿管期間・総入院期間・入室条 件(予定か緊急) ・原疾患(診断名) ・術式・COPD の有無・抜管前 P/F 値・抜管前 pressure support( PS)値・抜管前 PEEP 値・呼吸回数・心拍数・抜管時呼吸器モード・抜管後 意識レベル・自己排痰の有無・FA・FV 挿入カテーテルの有無・抜管後初回坐位日数・抜 管後初回立位日数・理学療法開始日・DEX 使用の有無・抜管前 72 時間以内の MZ 使用の有 無・硬膜外鎮痛薬使用の有無・IV- フェンタ使用の有無・ICU 死亡の有無・病棟転棟後死 亡の有無を検討した。各項目は電子カルテや生体情報システムよりデータ収集し、それぞれ t 検定、Mann-Whitney U 検定またはχ2 検定を行った。再挿管関連因子については多重ロ ジスティック回帰分析を用いて検討した。 【 結果 】ICU 入室患者 2,024 名のうち、18 歳以上で人工呼吸器装着時間が 48 時間以上の患者 は 139 例であった。このうち抜管できず気管切開に至った患者や死亡した患者を除き、抜管 した患者のみ抽出した結果 91 名となった。そのうち 72 時間以内に再挿管となった患者は 11 例であり、再挿管率は 12.1% であった。2 群間に有意な差がみられたものは、体重(非再挿 管:59 ± 14 再挿管:48 ± 9 ㎏, P < 0.05) 、抜管前 PS 値(非再挿管:5.6 ± 2.7 再挿管: 4.3 ± 1.8 ㎝H2 O, P < 0.05) 、抜管前呼吸回数(非再挿管:18.5 ± 4.7 再挿管:22.9 ± 6.6 回 / 分、P < 0.01)であった。再挿管群で ICU 入室期間(非再挿管:12 ± 10 再挿管:22 ± 7 日 P < 0.01)が有意に長く、ICU 死亡率・病棟転棟後死亡率も有意に高かった。多重ロジ スティック回帰分析の結果では体重が有意な関連因子であった(P < 0.05) 。 【 結語 】当院の再挿管率は比較的高率であり、ICU 滞在日数や死亡率と関連していた。再挿 管のリスク因子として、体重や抜管前呼吸回数の関連性が示唆された。 ― 94 ― N2-3 当院における呼吸ケアチームの活動と今後の課題 ○泉 仁美 1)、田村 直子 2)、木田 真紀 3)、堀 晋之助 4)、橋本 幹也 5)、中島 希実 5) 1 )和歌山県立医科大学附属病院 看護部管理室、2 )同 循環器内科病棟、 3 )同 救急集中治療部、4 )海南医療センター リハビリテーション科、 5 )和歌山県立医科大学附属病院 臨床工学センター 【 はじめに 】近年の医療情勢の変化から、一般病棟においても重症度の高い患者の入院が増 え、人工呼吸器管理や離脱への援助が行われるようになってきた。当院では、早期の人工呼 吸器離脱支援や呼吸療法全般における医療安全の支援を目標とし、呼吸ケアチームが週に一 回の回診を行っている。今回、1 年間を通して関わった事例をふり返り、今後の課題を明ら かにするため調査を行った。 【 方法 】対象:2013 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日までに呼吸ケアチームが回診を行った 患者 75 名中、呼吸ケア加算対象であった 48 名。回診記録より診療科の内訳、使用デバイス の内訳、人工呼吸器離脱人数、介入方法について後ろ向きに集計と分析を行った。収集した 情報については、患者本人が特定されないよう配慮し、本調査以外に使用しないよう、倫理 的配慮を行った。 【 結果 】対象患者 48 名中、最も症例数が多かったのは脳神経外科の 11 名、次いで心臓血管 外科 10 名、循環器内科 8 名、神経内科 8 名であった。侵襲的なデバイスを使用していた患者 は(以下 IPPV 患者)26 名、非侵襲的なデバイスを使用していた患者(以下 NPPV 患者)は 22 名であった。離脱に至ったのは、IPPV 患者 17 名、NPPV 患者 9 名であった。介入の内 容は、IPPV 患者では「人工呼吸器離脱に向けたリハビリテーションメニュー立案と実践」 が最も多く、次いで「呼吸リハビリテーション紹介を推奨する」 「人工呼吸器設定変更」 「離脱に必要なデータ・画像評価を行うよう推奨する」であった。 「離脱に向けたリハビリ メニュー立案と実践」の具体的内容は、多機能ベッドへの変更や臨床工学技士による ETCO2 モニターの調達、担当理学療法士と呼吸ケアチームメンバーである理学療法士の介 入、病棟看護師に対する日常生活におけるポジショニングの指導、車椅子乗車訓練や立位訓 練時のリスクマネジメントであった。これらは週に 1 回の回診だけでは不十分であり、人工 呼吸器離脱に至るまで毎日の介入を要することもあった。NPPV 患者では、 「皮膚障害に対 する皮膚保護材使用やマスクの種類変更」 「口腔粘膜乾燥に対する保湿剤使用の推奨」 「マ スクからのリークの調整」の順に多かった。これらについては、週に 1 回の回診、あるいは その後の病棟でのフォローで解決できる項目であった。 【 結語 】今回の調査で、IPPV 患者への介入では「人工呼吸器離脱に向けたリハビリテー ションメニュー立案と実践」が最も多かった。週 1 回の回診では不足することがあり、課題 を残した。NPPV 患者への介入では、皮膚障害や口腔粘膜乾燥、マスクフィッティングなど、 その場で解決法が見いだせる事項が多くを占めた。 ― 95 ― N3-1 術後患者が GICU から車椅子で退室する為の取り組み ∼早期離床の阻害因子を明らかにする∼ ○足立 朱里、大原 里佳、前田 梨紗、鳥前 円、内田 真弓、辻 佐世里 関西医科大学附属枚方病院 【 はじめに 】当院の総合集中治療室では、予定手術の一泊入室患者は早期離床の一環として、 術後一日目に車椅子での退室を推奨している。しかし、ベッドで退室となった原因分析の調 査をしていなかったことから、今回その原因を明らかにし、対策を行うことで早期離床を目 的とした車椅子での退室に繋がると考えた。 【 目的 】車椅子退室を阻害する因子を明らかにすることで、早期離床に繋げる。 【 研究方法 】対象:予定手術の消化器外科患者 46 件(食道疾患手術患者を除く) 期間:平成 25 年 11 月∼平成 26 年 1 月。 方法:ヘッドアップした際の角度と時間をカルテに記載する。車椅子退室ができなかった理 由を、カルテから後ろ向き調査で収集する。 分析方法:統計ソフト JMP を用いて統計処理を行う。 【 倫理的配慮 】早期離床を行うことを説明し、患者が特定されないように留意した。また本 研究以外では使用しない。 【 結果・考察 】車椅子退室ができなかった理由は、嘔気・嘔吐の 53.8% であった。その中で も起床までに 30 度以上ヘッドアップしていた患者 9 名に比べ、退室 1 ∼ 2 時前から 30 度以 上ヘッドアップしていた患者が 37 名であったことから、退室前にヘッドアップし移乗した ことは、嘔気・嘔吐の出現に繋がり、離床を阻害した。 車椅子退室患者は、術後から退室 1 ∼ 2 時間前の嘔気・嘔吐の出現頻度は 19.4% とベッド 退室患者のより多かった。しかし、退室 1 ∼ 2 時間前以降の嘔気・嘔吐の頻度は 13.9% と ベッド退室患者より少なかった。これは、早い時間帯からヘッドアップすることで、嘔気の コントロールが出来ていたためであると考えられる。ベッドでの退室患者は、嘔気・嘔吐の 出現頻度は低かったが、車椅子退室患者と比較しヘッドアップの角度が低かったため、離床 直前にヘッドアップしたことで離床時の嘔気・嘔吐の出現頻度が高くなり、ベッドでの退室 に繋がっていたと考える。 退室 1 ∼ 2 時間前の、車椅子退室患者とベッド退室患者のヘッドアップ角度は、前者 45.89 ± 11.8 度、後者 34.18 ± 11.6 度であり、p 値は 0.007 と有意差があった。つまり、ヘッ ドアップの角度が高いほど、離床に繋がったと考える。車椅子退室患者、ベッド退室患者共 に NRS 値は 3 以下であり、鎮痛剤使用頻度も p 値 0.518 と有意差がないことから、車椅子 離床時には疼痛コントロールができており、疼痛は阻害因子ではなかった。起立性低血圧の 原因と考えられる出血量も、車椅子退室患者とベッド退室患者の P 値は 0.9059 と有意差が なく、離床までに補正されていることが多いため、出血が直接離床を阻害している因子とは ならなかった。 【 結語 】 1)嘔気・嘔吐は、離床の阻害因子である。 2)術後早期からベッドアップを行い、かつベッドアップの角度が高い程離床に繋がる。 ― 96 ― N3-2 循環維持困難のため長期臥床となった患者への看護を振り返って ― リハビリテーションを進める中で有効であった 看護と多職種との連携 ○水戸 秀彰、岡崎 由佳、鈴木 美冴、高藤 志織、谷前 侑加、道本 一枝、 虫明 佐百合 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立急性期・総合医療センター ICU・CCU・SCU 【 目的 】術後合併症により長期臥床となった患者への看護師の関わりを振り返り、有効で あった看護と多職種との連携を考える。 【 症例 】A 氏 60 歳代男性。入院前の日常生活動作は自立。胸痛出現し救急要請。Stanford A 型急性大動脈解離と診断され同日緊急手術。術後、急性腎不全を発症し透析導入。さらに、 術後脳梗塞のため左片麻痺、遷延性意識障害を認めた。 【 方法 】 1)A 氏の看護記録から ICU 入室中の看護師の関わりと理学療法士(以下、PT)のリハビリ テーション(以下、リハビリ)介入を抽出する。 2)入室 14 日目から一般病棟へ退室となった入室 36 日目までの期間を先行文献を用いて看護 師の関わりを振り返る。 【 倫理的配慮 】本研究で得られた情報は、本研究以外では使用せず、匿名性を守り個人情報 の保護に努めるとともに、事例を学会発表すること、一度同意された後も断ることができる こと、データは厳重に管理し、研究終了後に破棄することを説明し書面にて同意を得た。 【 結果・考察 】手術直後は体位変換に伴い血圧が低下するなど循環維持困難を認め、リハビ リは PT と看護師が関節可動域訓練やリラクゼーションを行った。入室 13 日目より鎮静薬 を中止し、抜管を目指して自動運動を含めたリハビリを行った。しかし、入室 15 日目に縦 隔炎を発症し、縦隔洗浄ドレナージ術が行われ鎮静再開となった。そこで、複数科の医師・ 看護師・PT・臨床工学技士(以下、多職種)とカンファレンスを行い、拘縮・廃用予防のた めの他動運動を中心としたリハビリを優先とした。さらに、長期臥床による合併症を予防す るため、人工呼吸器関連肺炎予防として可能な限り頭部挙上や体位ドレナージを実施した。 入室 21 日目より、再び鎮静薬を減量でき、A 氏の協力のもとリハビリが行えた。私達は 透析や処置、検査とリハビリが重ならないように時間調整を行いリハビリの時間を確保した。 また週末は PT より引き継いだリハビリを看護師で行い、多職種と連携することでリハビリ を中断することなく継続できた。 入室 26 日目に抜管できたが、現状認識ができず意思疎通が困難であった。そこで、家族の 前では頑張る人だという情報をもとに面会時にリハビリを行い、A 氏の興味のある話題を提 供した。その結果、覚醒時間が確保され現状認識を促すことができ、リハビリに意欲的に取 り組む姿がみられた。その後、リハビリ中に足浴やマッサージなどリラクゼーションを行い 徐々にリハビリ時間を延ばし、立位まで可能となり、入室 36 日目に一般病棟へ退室となった。 【 結論 】 1. 多職種とカンファレンスを行い、日々変化する A 氏の状態に合わせた個別性のあるリハ ビリを行うことができた。 2. 多職種との連携により、A 氏のリハビリを中断することなく継続することができた。 3. 家族の情報をもとに現状認識を促すことで、意欲的にリハビリに取り組む姿がみられた。 ― 97 ― N3-3 重症患者におけるリハビリテーション開始時期の検討 ○馬越 尚美、今市 晃平、本田 愛子、谷口 孔明、三宅 めぐみ、花本 千晶、 内田 真弓、辻 佐世里 関西医科大学附属枚方病院 総合集中治療部 【 はじめに 】近年、重症患者が ICU 在室中に起こる全身的な筋力低下を生じる神経・筋合併 症(以下 ICU-AW)が、短・長期的に患者に重大な悪影響を及ぼすことで注目されている。 ICU-AW は、人工呼吸器装着患者では 25 ∼ 47%、敗血症患者にいたっては 60 ∼ 100% と 高率で発症すると言われている。A 大学病院の総合集中治療部(以下 GICU)には、年間約 100 名の重症敗血症患者が入室している。 敗血症患者を含む重症患者に対して GICU での PT によるリハビリテーション(以下リハ ビリ)の介入は、医師によりリハビリ科に受診を依頼し、診察後リハビリを開始するシステ ムになっている。また、リハビリ開始の時期の決定は、3 年前に集中治療医と協議し、独自 に作成したリハビリ開始基準に沿って行っている。しかし、リハビリ開始基準の項目に「ピ トレシンを投与していない」 「大量のカテコラミンを投与していない」があり、多剤のカテ コラミン投与中の時期は看護師による関節可動域訓練のみの実施にとどまっていた。さらに、 リバビリ開始可能か否かの評価を看護師が毎日行うことができておらず、リハビリの開始が 遅れてしまっている現状があった。年間約 100 例の重症敗血症患者を扱う GICU において、 ICU-AW の予防を行う為には看護師による関節可動域訓練だけではなく、PT と共にリハ ビリを早期に行うことが重要である。そこで、今回重症患者におけるリハビリの開始時期の 検討を行い、ICU-AW の予防に繋げることを目的に研究を行った。 【 研究目的 】多剤のカテコラミン投与中の重症患者に対するリハビリ開始時期の見直しを行 うことで、ICU-AW の予防に繋げる。 【 研究方法 】 対象:GICU に敗血症で入室・人工呼吸器管理となり、7 日以上在室した患者 30 名。 期間:平成 25 年 7 月∼平成 26 年 3 月。 方法: 1)GICU の全看護師に対し、ICU-AW の勉強会と PT と共同の関節可動域の勉強会と演習 会の開催。 2)集中治療医と協議し、リハビリ開始時期の検討(多剤のカテコラミン投与中から開始) 。 3)入室時からのリハビリ依頼までの日数の調査、前年度(平成 24 年 7 月∼平成 25 年 3 月) との比較。 4)リハビリ開始評価表を作成し、毎日担当看護師がリハビリ開始可能か評価する。 5)入室時とリハビリ開始時の患者の状態とリハビリ状況の後ろ向き調査、およびリハビリ 開始時期の再検討。 【 倫理的配慮 】本研究は、患者・家族に説明しリハビリを開始した。また、患者が特定され ないように留意し本研究以外では使用しない。 【 結果および考察 】毎日リハビリ開始可能か否かの評価を行うことで、前年度より入室から PT のリハビリ開始までの期間が短縮した。また、多剤のカテコラミン投与中の重症患者に 対してもリハビリを早期に開始することができた。さらに、リハビリを開始した患者は、中 止することなく継続でき、今回の重症患者のリハビリ開始時期の検討は ICU-AW 予防に繋 がる一助になった。 ― 98 ― N3-4 離床時のルートトラブル減少に向けての取り組み ∼「離床時ルート確認チェックリスト」を作成して∼ ○坂本 紗友里、川端 祐子、水谷 美保、瀬脇 純子 公立大学法人 大阪市立大学医学部附属病院 ICU 【 研究目的 】ICU・看護師経験年数別に離床時のライン類の確認項目を明らかにし、ルート トラブル減少に向けての取り組みについて有効性を検討する。 【 用語の定義 】離床:ベッド上座位・端座位・立位・歩行を行うこと。 ルートトラブル:点滴ルート・ドレーンなどライン類に関連したインシデント。 【 研究方法 】対象:ICU 看護師 30 人。期間:2013 年 8 月∼ 11 月。方法:対象者にルートト ラブル予防のために離床前後で確認している項目について自由記載のアンケートを実施した。 そのアンケート結果をふまえて離床時ルート確認チェックリストを作成・配布し、離床時の 使用を促した。また、過去の実際のインシデント事例を共有するために学習会を開催した。 1 か月後に再度アンケートを実施し、取り組み前後の結果を比較・検討した。倫理的配慮: A 病院看護研究倫理審査委員会の承認を得た。 【 研究結果 】ICU 経験 3 年未満・看護師経験 3 年未満の看護師(以下 A 群)は、ICU 経験 3 年未満・看護師経験 3 年以上の看護師(以下 B 群)や ICU 経験 3 年以上の看護師(以下 C 群) と比較すると確認項目の回答数が少なかった。B 群では確認項目の回答数は増加したが、C 群ではさらに人員の確保や離床時に不要なものを外すなど、より安全を考慮した回答が見ら れた。学習会後 A 群では確認項目の回答数が増加し、確認の機会が増えたと回答していた。 また A 群の 50% は離床時に毎回チェックリストを活用していると回答した。B・C 群の 40% は確認項目を把握しているという理由でチェックリストを活用していなかった。 【 考察 】過去のルートトラブルの要因として「確認不足」が多くを占めていた。これまでは 離床時の確認事項を適宜口頭で指導していたことや、ICU で患者を離床させた経験値が異 なるため確認行動にばらつきが生じていた。アンケート結果からも看護師経験の少ないス タッフは知識・経験不足により確認項目の回答数が少なく、離床時の確認が不十分であるこ とが明らかになった。そこで確認行動の統一化を目指してアンケート結果をふまえたチェッ クリストを作成し、学習会を開催した。学習会後 A 群ではチェックリストの使用率が高く、 確認項目の回答数・確認の機会が増加していた。これは、チェックリストには ICU 経験が 豊富な看護師の経験知が網羅されており、看護師経験の少ないスタッフにとっては新たな知 識の獲得となったことや、ポケットサイズにしたことで簡便に使用できたためと考える。以 上より、ルートトラブルの予防に重要な確認行動の統一化には、看護師経験が少ないスタッ フにとって学習会やチェックリストの使用が効果的であり、今回の取り組みが有効であった。 【 結論 】 看護師経験の少ないスタッフはルートトラブル予防のための確認項目の把握が不十分で あった。 経験によって差が生じる確認行動を統一化するためには学習会やチェックリストの活用が 有効であった。 ― 99 ― N4-1 ICU における PNS( PartnershipNursingSystem )導入後の課題 ○相澤 千草 1)、小越 優子 1)、小寺 利美 2) 1 )滋賀医科大学医学部附属病院 ICU、2 )滋賀医科大学医学部附属病院 【 はじめに 】近年、一人で複数の患者を受け持つ自己完結型の看護から、二人の看護師が、 よきパートナーとして、安全で質の高い看護を共に提供することを目的とした PNS (Partnership Nurshing System 以下 PNS と略す)が注目されている。 滋賀医科大学医学部附属病院では、看護方式として担当看護師制を実施している。2011 年より 3 病棟で試行的に PNS を導入し、2013 年より病床を有する全部署で開始した。当院 ICU では、2013 年 9 月より日勤のみ PNS を導入した。導入 1 ヶ月後・5 ヶ月後に PNS 導入 に関する調査を行った。調査結果から今後の効果的な PNS 定着に向けた課題を明らかにし たので報告する。 【 研究方法 】 1. 研究対象者:ICU 看護師 1 ヶ月後 30 名 5 ヶ月後 33 名。 2. 調査方法:PNS についてのアンケート調査(PNS 導入から 1 ヶ月後と 5 ヶ月後に実施) 。 3. 調査期間:2013 年 9 月、2014 年 2 月。 4. 分析方法:16 質問を単純集計し、自由記載の項目に関しては、KJ 法で項目に分け、PNS 導入 1 ヶ月後と 5 ヶ月後を比較した。 5. 倫理的配慮:研究の趣旨、回答内容を本研究以外の目的で使用しないことを明記し、調 査対象者が特定されないようにした。また、回答することで利益・不利益を被らないよ うにした。 【 結果 】回収率は、PNS 導入 1 ヶ月後 93.3% 5 ヶ月後 100% であった。PNS 導入 5 ヶ月後 には、84.8% が PNS を導入してよかった、または、おおむねよかったと答えた。 「PNS の長所」は、 「教育的効果」 「業務の効率化」 「看護の質向上」 「安全性の確保」の 項目が抽出された。 「PNS の短所」は、 「ペアと共同する困難感」 「時間がかかる」 「PNS 導入に対する戸惑い」 「業務の負担感」 「安全確保に対する不安感」の項目が抽出された。 【 考察 】 「PNS の長所」は、1 ヶ月後と 5 ヶ月後の項目と、その順位に変化はなかった。しか し、業務の効率化だけでなく「教育的効果」と「看護の質向上」が上昇した。これは、問 題に対して迅速な判断と、実践を展開することが求められる ICU においても、ペアで共同す ることによって、知識や技術を「相互に補完しあう」PNS の利点が生かされていると考える。 「PNS の短所」では、 「PNS 導入に対する戸惑い」に関する回答は、5 ヶ月後になくなっ た。これは、PNS 実践を継続することで、業務も慣れて、効率化を図るため、それぞれの 看護師が、ペア同士で工夫した結果であると考える。その反面、複数の患者を担当し、患者 から目を離す時間が増えるなど、 「安全確保に対する不安」という運用に関する回答が増え た。今後、安全性の確保が PNS に影響する課題と捉え、取り組んでいく必要がある。 ― 100 ― N4-2 「児童期」にある重症熱傷患児の看護 ∼ ICU における発達課題を考慮した関わりの一症例∼ ○木藤 摩矢、寺内 久美子、山根 堂代、森 里加子 公立豊岡病院、但馬救急救命センター ICU 病棟 【 はじめに 】ハヴィーガーストは「次の発達課題に問題なくスムーズに移行するために、各 発達段階で習得しておく課題がある」と述べている。不慮の事故により重傷熱傷を負い ICU に入室した 10 歳台前半の患児との関わりから、クリティカルケアにおける発達課題への看護 の困難さを経験した。この症例から患児の発達課題を満たす看護であったかを検討する。 【 目的 】ICU へ入室した患児へ行った看護が発達課題を満たしていたかを明らかにする。 【 患者紹介 】A 君男児、10 歳台前半。花火大会見物中にガス爆発により全身熱傷を負う。 【 倫理的配慮 】症例検討にあたり患児と母親に匿名性を保護することを説明し承諾を得た。 【 看護の実際 】超急性期を脱した A 君は、口唇の動きや指で文字を書き苦痛を訴え、時々フ ラッシュバックにより流涙する姿もあった。そのため鎮痛剤をできるだけ使用し、病室で DVD 鑑賞を行うことで、精神的・身体的苦痛の緩和を図った。更に A 君に生活リズムの確 立を目的としたタイムスケジュールの作成を行ったが、否定的言動を露わにし、遂行できな かった。A 君の思いを聞き、再三タイムスケジュールの修正を行った。A 君から母親に対 する依存的な言葉が多く聞かれたため、母親と過ごす時間の調整を行った。その後、リハビ リテーションや勉強への意欲は向上したが、日常生活動作は拡大できなかった。A 君に、 自ら自分に何が必要かを考え目標を立てるよう導き、達成することができた。 【 考察 】日常の遊びを取り入れ、苦痛の緩和に努めた事は「遊び友達を作って上手く付き合 う」 ・ 「日常生活の遊びに必要な身体的技能の学習」に繋がった。自らの生き方を模索する児 童期の患児に対し、主体性を引き出し、自身でルールが守れるように働きかけたことで意欲 向上に繋がった。患児の言動や行動から幼児退行していると考えられ、母親との関係性を維 持することに努め、その結果闘病意欲が向上した。勤勉性を養う時期である患児に対し、自 身の思いを引き出すことで、自己の導きだした目標に達成感を得られる援助となった。この 事からさらなる目標の立案と生活スタイルの確立に繋がり、 「生活体としての自己に関する 健康的な態度の形成」 「日常生活に必要な概念」の習得となった。看護師や他の医療者と目 標を共有することで情緒的関わりを持て、 「良心・道徳性・価値観の適応的な発達」へとなっ た。また、それらの人々との関わる中で「社会集団に対する態度」を身につける事となった。 【 結論 】 ① ICU では児童期の発達課題は満たせる事と満たせない事があった。 ② 本症例において「日常生活の遊びに必要な身体技能の学習」 ・ 「生活体としての自己に対 する健康的な態度の形成」 ・ 「日常生活に必要な概念」に着目し看護介入を行ったことは、 闘病生活に意欲をもたらした。 ③ 急性期では「個人的独立の段階的な達成・母子分離」を満たさないことで闘病意欲に繋 がることもある。 ― 101 ― N4-3 ICU 退室後訪問による看護の振り返り ∼患者の意見を反映した改善策の検討∼ ○大西 弥生、三宅 望美、井垣 美紗子、今中 陽子、馬場 和美 独立行政法人国立病院機構京都医療センター 看護部 集中治療室 【 はじめに 】当院集中治療室(以下 ICU と略する)では、術後管理目的での入室患者が大半 を占め、平成 24 年度実績では平均在室日数が 3 日だった。そのような中、看護の評価を十 分に出来ないまま一般病棟に患者が退室している現状にあるため、患者の意向を反映させた 看護ケアの提供ができているのか、また看護師の自己満足になっていないかなど疑問に感じ た。そこで退室後訪問を通して患者の看護に対する思いを調査し、今後の看護に活かすこと が出来るよう改善策について検討したいと考えた。 【 目的 】ICU 入室患者に対する退室後訪問による患者の思いの把握と、看護の改善策を検討 し今後の看護に活かす。 【 方法 】調査研究とし、研究対象は平成 25 年 8 月 23 日∼平成 25 年 11 月 30 日に集中治療室 に入室した患者 188 名のうち、退室時に質疑応答可能な患者 129 名とした。データ収集方法 は、患者退室 3 日後に看護師が独自に作成した用紙を用いて退室後訪問を実施した。質問の 項目は、5 つのサブスケールに分類した計 12 項目とした。評価尺度は 1 ∼ 4 点の 4 段階評価 とした。2 ヶ月毎にスタッフへ退室後訪問結果を提示し、データ分析を行い看護の改善策に ついて検討した。 【 結果 】質問項目「E. 総合的な評価」では「良い」 「だいたい良い」が 97% であり、他の 全ての項目においても「良い」 「だいたい良い」が 90% 以上を示した。 「B. 看護師の対応」 は全ての項目で上位となり、 「D. 看護師の気配りと説明」は下位となったが、 「A. ICU の 環境」 、 「C. 看護師の技術」は質問項目により順位にばらつきがみられた。C 群に関しては、 注射や採血の実技に関する質問項目は比較的上位となったが、氏名確認や一日の予定の説明 など看護師からの声かけ、説明に関しては下位となった。 「やや悪い」 「悪い」は全ての質 問項目において数 % にとどまったが、その中では「A-2. 騒音への配慮」と「C-2. 一日の 予定の説明」がやや低さの目立つ結果となった。また、患者の自由意見では、良い点として、 看護師の接遇に対する意見が最も多く、環境、技術面に関する意見は少なかった。悪い点と しては、音・騒音や看護師の対応に関する意見が多く聞かれた。退室後訪問の結果をもとに スタッフ間で看護の改善策について検討した。今回は全退室患者のうちの 7 割の意見による 評価となり、ICU 入室患者の全ての意見を反映できたとはいえない。 【 結論 】 1. 退室後訪問を行うことにより、当 ICU では患者に対する説明や騒音への配慮が不十分で あることがわかった。 2. 看護の改善策として、以下のことが検討できた。 時間・声・音に対しては事前に十分な説明をすることが必要である。 接遇に対しては個々の患者に対応した看護ケアを行っていく必要がある。 ― 102 ― N4-4 ICU で実践した看取りに向けた倫理的意思決定支援 ∼チームアプローチの視点から∼ ○宮田 郁 1)、永田 祐子 1)、岩本 千聡 1)、浅水 宏和 1)、角田 みゆき 1)、濱田 恵美 1)、 福富 美樹 1)、尾崎 智康 2)、岸 勘太 2)、片山 博視 2)、小澤 英樹 3)、根本 慎太郎 4)、 梅垣 修 5) 1 )大阪医科大学附属病院 看護部、2 )大阪医科大学 小児科学教室、3 )同 心臓血管外科、 4 )同 小児血管外科、5 )同 集中治療部 【 はじめに 】当院は、年間約 100 例の先天性心疾患の手術が実施されており、子どもと家族 により良い治療・ケアを提供できるよう多職種チームで関わっている。平成 24 年度より、 リエゾン精神看護専門看護師(以下リエゾンナース)がチームに加わり、手術を受ける子ど もとその家族、医療スタッフ双方の精神的サポートを実施している。手術を受け、生命の危 機を一旦脱したものの、様々な要因によって、死の転帰を辿る子どもたちもおり、看取りへ のケアもチームの重要な役割となっている。今回、先天性心疾患そのものは手術にて根治し たものの、自宅で痙攣重責発作を起こし、救急搬送されたものの回復困難な状況となり、 ICU において看取りに向けたチームアプローチを実践した症例を経験したため、報告する。 【 倫理的配慮 】個人情報保護の観点から匿名性を遵守し、要旨に影響しない範囲で、修正を 加えている。 【 症例 】患児:A ちゃん、1 歳 5 カ月、女児。診断名:痙攣重責発作、急性脳症、誤嚥性肺炎、 播種性血管内凝固症候群。既往歴:両大血管右室起始症、心室中隔欠損症等で既に他院にて 根治術を終了していた。家族構成:両親、姉の 4 人暮らしで、父の転勤にて大阪で暮してい る。当院にて外来通院していた。 【 経過 】X-2 年 Y 月の未明に自宅で体熱感が著明となり、嘔吐出現し、反応低下した。左足 の間代性痙攣出現にて救急要請し B 病院にて緊急対応するも心停止等生じ、全身管理の必 要性から当院へ搬送、ICU へ入室となった。生命危機に対応したが、入院当日の脳波は、 右は flat、左も 4 時間後には flat となり、両側瞳孔散大した。入院後第 3 病日にご両親の精 神的サポートのため、リエゾンナースが介入することになった。母親が A ちゃんに面会す ることができなかったが、リエゾンナースが何度も面談をし、母親の真意を確認することが でき、医師や ICU スタッフに伝えた。何度もチームでカンファレンスを行い、治療やケア の決定、ご両親の倫理的意思決定支援を行った。最終的に両親は積極的な治療を望まず、薬 剤の減量を行いながら、A ちゃんとご家族が一緒に過ごす時間を確保した。第 18 病日に家 族に見守られて A ちゃんは永眠となった。 【 考察 】倫理的意思決定支援、チーム医療、急性期における終末期ケア、 「曖昧な喪失」体 験へのケアという 4 つの視点から考察する。今回の症例においては、まず、それぞれの専門 領域を尊重しながら連携するチーム医療を基盤に、集中治療領域の終末期ケアについて共有 できたこと、リエゾンナースの倫理調整役割を活用することで、両親の倫理的意思決定支援 ができたと考える。また、母親が体験した「曖昧な喪失」に対して、この分野を専門とす るリエゾンナースが心理療法的関わりを実践したことが、家族の精神的苦痛の緩和に繋がっ たと考える。集中治療領域における看取りへのケアの可能性は高く、今回の症例での体験を 今後に活かしたいと考える。 ― 103 ― ― 104 ― 歴代会長 会 則 役員名簿 歴 代 会 長 西 暦 会 長 所 属 1980 吉矢 生人 大阪大学 1981 藤田 毅 国立循環器病センター 第3回 1981 木村 謙太郎、松本 睦子 大阪大学 第4回 1982 丸川 征四郎、石田 詔治 兵庫医科大学 第5回 1982 酒井 章、内田 盛夫 関西医科大学 第6回 1983 山岡 久泰、永川 優子 大阪日赤病院 第7回 1983 石井 奏、八島 喜代子 国立京都病院 第8回 1984 瀬尾 憲正 神戸中央市民病院 1985 西村 清二 大阪市立大学 第 11 ∼ 15 回 1986 畔 政和 奈良県立医科大学 第 16 ∼ 18 回 1987 須貝 順子 京都府立医科大学 第 19 ∼ 21 回 1988 児玉 和久 大阪警察病院 第 22 ∼ 24 回 1989 新宮 興 京都大学 第 25、26 回 1990 田中 一彦 国立循環器病センター 第 27 ∼ 29 回 1991 佐谷 誠 大阪市立城北病院 第 30 ∼ 32 回 1992 美馬 正彦 関西医科大学 第 33 ∼ 35 回 1993 篠崎 正博 和歌山県立医科大学 第 36、37 回 1994 岩坂 壽二 関西医科大学 第 38、39 回 1995 山崎 和夫 神戸市立中央病院 第 40 回 1996 北村 征治 大阪府立母子保健センター 第 41 回 1997 前川 信博 神戸大学 第 42 回 1998 三嶋 正芳 河内総合病院 第 43 回 1999 橋本 悟 京都府立医科大学 第 44 回 2000 公文 啓二 国立循環器病センター 第 45 回 2001 妙中 信之 大阪大学 第 46 回 2002 児玉 和久 大阪警察病院 第 47 回 2003 古賀 義久 近畿大学 第 48 回 2004 野坂 修一 滋賀医科大学 第 49 回 2005 平井 勝治 奈良県立医科大学 第 50 回 2006 宮崎 俊一 国立循環器病センター 第 51 回 2007 行岡 秀和 行岡医学研究会行岡病院 第 52 回 2008 足立 健彦 田附興風会北野病院 第 53 回 2009 中 敏夫 和歌山県立医科大学 第 54 回 2010 藤野 裕士 大阪大学 第 55 回 2011 上田 恭敬 大阪警察病院 第 56 回 2012 江口 豊 滋賀医科大学 第 57 回 2013 西 信一 兵庫医科大学 第 58 回 2014 梅垣 修 大阪医科大学 第 59 回 ― 106 ― 第 1、2 回 第 9、10 回 日本集中治療医学会近畿地方会会則 第1章 総 則 第1条 本会は、日本集中治療学会近畿地方会(Kinki Regional Meeting, The Japanese Society of Intensive Care Medicine)と称する。 第2条 本会は、事務局を細則の定める場所に置く。 第2章 目的および事業 第3条 本会は、集中治療の現場にたずさわるものの新しい知識の交流、情報交換をはかるととも に集中治療医学の発展に寄与することを目的とする。 第4条 本会は前条の目的を達成するために、次の事業を行う。 1)学術集会の開催 2)内外の関係団体との協力活動 3)その他本会の目的に沿った事業 第3章 会 員 第5条 本会の会員は功労会員、正会員および賛助会員とする。 第6条 功労会員とは本会のためとくに功労のあったものの中から、別に定める細則により選出さ れ、総会で承認されたものをいう。 第7条 正会員は、本会の目的に賛同する医師・看護師・その他の医療技術員で、所定の年会費を 納めたものとする。 第8条 賛助会員は、本会の目的に賛同するもので、評議員会の議を経て総会で承認されたものと する。 第9条 本会に入会しようとするものは、当該年度の会費をそえて本会事務局に申し込むことと する。 第 10 条 会員は次の場合にその資格を喪失するものとする。 1)退会の希望を本会事務所に申し出たとき。 2)死亡または失踪宣言。 3)本会の名誉を傷つけ、または本会の目的に反する行為があったと幹事会が決定した時。 4)3 年以上会費未納の場合。ただし留学など特別な理由が認められる場合はその期間を休 会扱いとする。 第4章 役 員 第 11 条 本会に次の役員をおく。 1)会 長 1 名 2)副 会 長 2 名 3)事務局長 1 名 4)幹 事 若干名 5)評 議 員 若干名 6)監 事 2 名 ― 107 ― 第 12 条 本会の役員は次の規定により選出する。 1)会長、副会長は別に定める細則により評議員の中から選出し、総会の承認を受ける。 2)副会長には前会長および次期会長をあてる。 3)事務局長は会長が推薦し、幹事会の議を経て、評議員会、総会の承認を受け会長が委嘱 する。 4)幹事は別に定める細則により評議員の中から選出し会長が委嘱する。 5)評議員は別に定める細則により正会員の中から選出し総会の承認を受け会長が委嘱する。 6)監事は評議員の中から選出し総会の承認を受け会長が委嘱する。 第 13 条 本会の役員は次の職務を行う。 1)会長は本会を代表し会務を統括し、副会長はこれを補佐する。 2)会長は総会、評議員会、幹事会および学術集会を主催する。 3)事務局長は、会長を補佐し事務局の会務を統括する。 4)幹事は、会則に従い会務を執行する。 5)評議員は会則に従い重要事項を審議する。 6)監事は会務を監査する。 第 14 条 本会の役員の任期は次のとおりとする。 1)会長の任期は 1 年とする 2)副会長の任期は 1 年とする。 3)その他役員の任期は 3 年とし、引き続き再任を妨げない。ただし評議員については任期 を定めない。 第5章 会 議 第 15 条 本会の会議は、総会、評議員会、幹事会、委員会、作業部会とする。 第 16 条 総会は正会員をもって構成し、年 1 回会長が招集する。 第 17 条 評議員会は、会長が必要と認めた場合にこれを招集し会長が議長となる。 第 18 条 幹事会は、会長が必要と認めた場合にこれを招集し会長が議長となる。 第 19 条 総会、評議員会、幹事会の議決は、出席者の半数以上の賛成がなければならない。 第 20 条 本会は必要に応じて委員会および作業部会をおくことができる。 第6章 会 計 第 21 条 本会の経費は、年会費、寄付金、その他収入をもってこれにあてる。 本会会員の年会費 は細則の定めるところによる。 第7章 会則の改訂 第 22 条 本会の会則は、評議員会の議および総会の承認を経て改訂することができる。 第8章 補 則 第 23 条 本会の会則の実施に関し、必要な事項は評議員会の議を経て別に定める。 (平成 12 年 6 月 24 日 改訂) (平成 14 年 6 月 1 日 改訂) (平成 21 年 6 月 27 日 改訂) ― 108 ― 日本集中治療医学会近畿地方会会則実施細則 第1条 この細則は、日本集中治療医学会近畿地方会会則(以下「会則」 )第 23 条の規定に基づき、 必要な事項を定めるものとする。 第2条 会則第 2 条に規定する事務局は、京都府立医科大学集中治療部(京都市上京区河原町広小路 梶井町 465)に置く。 第3条 会則第 21 条に規定する年会費は次のとおりとする。 1)正 会 員 3,000 円 2)賛助会員 1 口 10,000 円 3)功労会員は会費の納入を必要としない。 第4条 この細則は幹事会の議によって改訂できる。 第5条 この細則は平成 12 年 6 月 24 日より実施する。 会長および副会長選出に関する細則 第1条 会長および副会長の選出は、評議員 2 名以上の推薦を得たのち、幹事会で決定する。 第2条 この細則は平成 12 年 6 月 24 日より実施する。 幹事選出に関する細則 第1条 幹事は、前会長、会長、次期会長、および評議員の中から選出する。 第2条 この細則は平成 12 年 6 月 24 日より実施する。 (平成 13 年 9 月 1 日 改訂) 評議員選出に関する細則 第1条 医師部門評議員の選出は以下の資格を有するものから選出する。 1)旧世話人(医師部門) 2)日本集中治療医学会評議員 3)日本集中治療医学会専門医 4)3 年以上地方会会員で、集中治療に熱意があり地方会への高い貢献が期待できる医師 第2条 看護部門評議員の選出は以下の資格を有するものから選出する。 1)旧世話人(看護部門) 2)日本集中治療医学会専門医研修施設の看護師長 3)地方会会員で、集中治療に熱意があり地方会への高い貢献が期待できる看護師 第3条 会長は評議員に新評議員の推薦を依頼する。推薦される評議員候補者は遅滞なく略歴と集 中治療に関する主たる業績を事務局に提出する。新評議員は、前 1,2 条による新評議員候補 者の中から幹事会、評議員会の審議を経て承認される。 第4条 3 年連続して理由無く評議員会を欠席した場合は、評議員資格を失う。ただし 委任状の提 出があれば出席とみなす。 第5条 この細則は平成 12 年 6 月 24 日より実施する。 (平成 13 年 9 月 1 日 改訂) (平成 23 年 7 月 9 日 改訂) ― 109 ― 功労会員選出に関する細則 第1条 功労会員となることのできるものは、次の各項にあげる基準のいずれかに該当し、満 65 歳以上のものとする。 1)日本集中治療医学会名誉会員もしくは功労会員 2)長年にわたり本会の会員であり、本会に貢献したもの 第2条 評議員は、功労会員を推薦できる。 第3条 会長が期日を指定して功労会員の推薦を受け付けるものとする。 第4条 会長は幹事会の議を経て、評議員会および総会に諮り会長が委嘱する。 第5条 功労会員には次の恩典が与えられる。 1)総会における称号の授与 2)会則 6 章 21 条に規定する恩典 第6条 この細則は平成 12 年 6 月 24 日より実施する。 (平成 13 年 9 月 1 日 改訂) 幹事、評議員の定数についての申し合わせ事項 幹事、評議員の数については評議員は会員全体の 10%、幹事は 10 名前後が好ましい。ただし現 状では地方会会員数が中央の会員数よりもかなり少ないのでその割合にはこだわらない。 (平成 13 年 9 月 1 日 改訂) 看護部門の評議員についての申し合わせ事項 1. 本会幹事及び日本集中治療医学会看護部会地方会評議員は看護部門評議員作業部会で推薦し、 本会幹事会で承認決定する。 2. 看護部門の評議員はできるだけ分担し、最低 3 年間継続して確実に引き継ぎを行なう。 3. 看護部門プログラム委員長は会長施設看護師とし、前会長・次期会長施設の看護師を看護部門 プログラム委員に指名し、幹事会の承認を得る。 4. 次々期会長施設の看護師が評議員でない場合は、看護部門幹事はその看護師を評議員に推薦 する。 (平成 15 年 6 月 14 日 改訂) (平成 22 年 6 月 26 日 改訂) 看護部門会議についての申し合わせ事項 1. 看護部門評議員作業部会 時期:総会開催時・演題受付け締め切り後の 5 月連休前後・10 月頃に定期招集する。ただし看 護部門幹事が必要と認めた場合はこれを招集し、看護部門幹事が議長となる。 内容:本会幹事会及び日本集中治療医学会看護部会地方会委員・常任委員会会議内容の伝達、 看護部会への意見収集。地方会での検討事項等の協議などを行う。 構成:看護部門評議員 ― 110 ― 2. 看護部門プログラム委員会 時期:看護部門プログラム委員長(会長施設看護師)が必要と認めた場合これを招集する。 内容:総会で行われる看護部門ワークショップ等の内容を合議決定し、会長に諮問する。 構成:前期・今期・次期総会担当施設の看護師 3 名とワークショップ等の司会・書記担当施設 の看護師 2 名 3. 看護部門施設連絡会 時期:地方会総会当日、全プログラム終了後に開催しプログラム委員長が議長となる。プログ ラム委員長は本会開催の旨と詳細の抄録掲載を会長に依頼する。 内容:地方会の反省と次回への希望、次期地方会におけるワークショップ等でのテーマの決定、 各施設の情報交換等を行なう。 構成:看護部門評議員 (平成 15 年 6 月 14 日 改訂) (平成 22 年 6 月 26 日 改訂) ― 111 ― 日本集中治療医学会近畿地方会役員名簿 ( 平成 26 年 6 月 10 日現在、各アイウエオ順 敬称略 ) 功労会員 石井 奏 石川 欽司 岩坂 壽二 尾原 秀史 北村 征治 木村 謙太郎 畔 政和 古賀 義久 児玉 和久 篠 正博 西村 清二 土師 一夫 藤森 貢 美馬 正彦 宮 山岡 久泰 吉矢 生人 足立 健彦 上田 恭敬 梅垣 修( 第 59 回会長 ) 江口 豊 公文 啓二 小寺 利美 塩川 泰啓 嶋岡 英輝( 第 60 回会長 ) 瀬川 一 妙中 信之 西 信一( 第 58 回会長 ) 橋本 悟 平井 勝治 福山 麻里 藤野 裕士 丸川 征四郎 モディ 眞由美 山崎 和夫 行岡 秀和 正夫 幹 事 宮崎 俊一 監 事 野坂 修一 三嶋 正芳 評議員(医師部門 ) 安宅 一晃 奈良県立医科大学附属病院 麻酔科 天谷 文昌 京都府立医科大学 麻酔科学教室 足立 健彦 田附興風会医学研究所 北野病院 麻酔科 石原 英樹 大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 呼吸器内科 出田 眞一郎 神戸大学附属病院 集中治療部 伊藤 賀敏 大阪府済生会千里病院 循環器内科 上田 恭敬 大阪警察病院 循環器科 上藤 哲郎 明石市立市民病院 麻酔科 内山 昭則 大阪大学医学部附属病院 集中治療部 梅垣 修 大阪医科大学 麻酔科学教室 江口 豊 滋賀医科大学附属病院 救急集中治療部 大前 典昭 岸和田徳洲会病院 麻酔科 大家 宗彦 近畿大学奈良病院 救命救急センター 奥田 隆彦 近畿大学医学部奈良病院 麻酔科 奥谷 龍 大阪市立総合医療センター 麻酔科 尾崎 孝平 神戸百年記念病院 麻酔科 鍜冶 有登 岸和田徳州会病院 救命救急センター 川口 昌彦 奈良県立医科大学附属病院 麻酔科 木内 恵子 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔集中治療科 熊野 穂高 東大阪市立総合病院 麻酔科 公文 啓二 近畿大学医学部奈良病院 救命救急科 ― 112 ― 小池 薫 京都大学大学院医学研究科 初期診療・救急医学 小谷 穣治 兵庫医科大学 救急・災害医学講座、救命救急センター 後藤 安宣 市立奈良病院 集中治療部 小西 弘起 岸和田徳州会病院 内科 小林 敦子 宝塚市立病院 中央検査室長 ICT チームリーダー 小林 誠人 公立豊岡病院組合立豊岡病院但馬救命救急センター 佐藤 善一 大阪回生病院 麻酔科 塩川 泰啓 近畿大学医学部 麻酔科 嶋岡 英輝 大阪市立総合医療センター 集中治療部 志馬 伸朗 京都医療センター 救命救急センター 謝 慶一 ベルランド総合病院 集中治療部 新宮 興 関西医科大学附属病院枚方病院 麻酔科 須貝 順子 瀬川 一 京都大学医学部附属病院 集中治療部 妙中 信之 宝塚市立病院 病院長 竹内 宗之 大阪府立母子保健総合医療センター 麻酔集中治療科 竹田 健太 兵庫医科大学附属病院 集中治療部 辻田 靖之 滋賀医科大学 ICU 辻本 登志英 日赤和歌山医療センター 救急集中治療部 土屋 正彦 大阪市立大学医学部 麻酔科学 内藤 嘉之 明石医療センター 麻酔科 中尾 慎一 近畿大学医学部麻酔科学教室 西 憲一郎 関西医科大学 枚方病院 GICU 西 信一 兵庫医科大学附属病院 集中治療部 西村 信哉 大阪府立急性期・総合医療センター 麻酔科 野坂 修一 森ノ宮医療大学 理学療法学科 橋本 悟 京都府立医科大学附属病院 集中治療部 林 孝浩 はやし内科クリニック 内科・循環器科 林 正則 林クリニック 速水 弘 六甲アイランド甲南病院 麻酔科 平井 勝治 平成記念病院 手術・周術期管理センター 福井 道彦 大津市民病院 集中治療室 藤田 啓起 医誠会病院 麻酔科 藤野 裕士 大阪大学医学部附属病院 集中治療部 曲淵 達雄 公立豊岡病院 麻酔科 松本 睦子 姫路赤十字病院 麻酔科 丸川 征四郎 医誠会病院 救急診療センター 三嶋 正芳 河内総合病院 名誉院長 美馬 裕之 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科 宮崎 俊一 近畿大学医学部 循環器内科 ― 113 ― 村尾 佳則 近畿大学医学部 救急医学科 森 隆比古 大阪府立急性期・総合医療センター 麻酔科 夜久 英明 新須磨病院 麻酔科 安田 治正 河内総合病院 集中治療部 山内 順子 萱島生野病院 麻酔科 山崎 和夫 神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科 行岡 秀和 行岡医学研究会行岡病院 麻酔・救急・集中治療科 若林 隆信 姫路聖マリア病院 麻酔科 評議員(看護部門 ) 足立 万里子 行岡医学研究会 行岡病院 HCU 安藤 有子 関西医科大学附属枚方病院 看護部長室 伊藤 聡子 神戸市立医療センター中央市民病院 ICU 伊藤 真紀 宝塚市立病院 植村 桜 大阪市立総合医療センター 臨床教育研修部 大澤 智美 京都府立医科大学附属病院 PICU 大西 恒毅 明石医療センター ICU 神谷 健司 近畿大学医学部附属病院 ICU 桑鶴 由美子 大阪市立大学医学部附属病院 ICU 小寺 利美 滋賀医科大学医学部附属病院 看護部管理室 吹田 奈津子 日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療室 末信 正嗣 兵庫医科大学附属病院 集中治療部 高田 弥寿子 国立循環器病研究センター CCU 竹中 千恵 京都府立医科大学附属病院 ICU 田村 直子 和歌山県立医科大学附属病院 CCU 仁科 典子 大阪警察病院 救命救急センター ICU 能芝 範子 大阪大学医学部附属病院 ICU 畑中 保子 日本赤十字社 和歌山医療センター 特定集中治療室 濱田 恵美 大阪医科大学附属病院 ICU 平松 八重子 京都大学医学部附属病院 救急部・集中治療部 福山 麻里 奈良県立医科大学附属病院 ICU 藤田 美保 関西医科大学附属滝井病院 循環器内科 前田 奈補子 田附興風会医学研究所 北野病院 心臓センター科 8 階東病棟 松村 佳苗 神戸市立医療センター中央市民病院 ICU モディ 眞由美 六甲アイランド病院 森澤 祐己子 和歌山県立医科大学附属病院 ICU 森本 朱美 国立循環器病研究センター NCU 山田 親代 大津市民病院 集中治療室 山中 真知子 京都第一赤十字病院 ICU ― 114 ― 協 賛 企 業 ( 2014 年 6 月 20 日現在) アイ・エム・アイ株式会社 旭化成ファーマ株式会社 アストラゼネカ株式会社 エドワーズライフサイエンス株式会社 MSD 株式会社 小野薬品工業株式会社 株式会社クマノミ出版 コヴィディエンジャパン株式会社 CSL ベーリング株式会社 シーメンス ヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社 株式会社神陵文庫 大日本住友製薬株式会社 株式会社ダテ・メディカルサービス 東レ・メディカル株式会社 ドレーゲル・メディカルジャパン株式会社 一般社団法人 日本血液製剤機構 日本光電関西株式会社 日本製薬株式会社 日本メディカルネクスト株式会社 フクダ電子近畿販売株式会社 ホスピーラ・ジャパン株式会社 マシモジャパン株式会社 丸石製薬株式会社 (五十音順) ― 115 ― ― 116 ― 第 59 回日本集中治療医学会近畿地方会 プログラム・抄録集 会 長:梅垣 修 事務局:大阪医科大学 集中治療部内 〒 569-8686 大阪府高槻市大学町 2 番 7 号 TEL:072( 683 )1221 FAX:072( 684 )6552 E-mail:[email protected] 出 版: 株式会社セカンド http://www.secand.jp/ 〒 862-0950 熊本市中央区水前寺 4-39-11 ヤマウチビル 1F TEL:096-382-7793 FAX:096-386-2025 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)