Comments
Description
Transcript
素晴らしきミュンヘン大学 研修医 松本佳子 このプログラムのお話を頂い
素晴らしきミュンヘン大学 研修医 松本佳子 このプログラムのお話を頂いたのは一年程前のこと。昨年から始まったこのプログラム にはドイツの大学へ一ヶ月間、麻酔科研修が出来るというものがありした。進路を私なり に考えて麻酔科に進もうと決めてはいたものの、ドイツでの研修はまさに寝耳に水でした。 語学に全く自信もなければドイツは英語圏でもないし、旅行ですら海外経験が全くない私 にとって正直なところ不安の方がはるかに大きかったのですがこんな好機はそうないと思 い返し渡独を決意し、ミュンヘンの Ludwig Maximillian Universtaedt の一施設である Klinikum Grosshadern での研修が決まりました。 元旦明け早々に当院麻酔科藤田教授に引率して頂きミュンヘンに向かいました。当地で の気温は氷点下 5 度程度と寒く、生活の基盤を整えていよいよ院内研修が始まりました。 Klinikum Grosshadern は欧州でも一、二を争う大きな病院で総ベッド数 1420 床、ICU ベッド数 49 床、年間 50000 件以上の予定手術に加え緊急手術 8000 件以上、手術室は 28 室、麻酔科医だけで 196 人という破格の規模です。各臓器移植も積極的に行われており、 心臓移植だけでも平均して週に一度は行われていました。またドイツ国内の患者に留まら ず近隣諸国からの手術依頼やドナーが運ばれてくる事もしばしばです。研修初日に院内を 案内して頂き、改めて規模の違いに圧倒されました。麻酔科の担当は手術室、ICU と明瞭 に区別されておりさらに手術室は専門的なチームが構成されています。私はその中でも心 臓麻酔を中心とするチームにお世話になりました。先生方は 8 名で、大学を卒業後最低で も全身麻酔を 3 年、ICU を1年半経験した後に数年間心臓を専門としておられる方々ばか りです。一日平均 5 例、生後間もない子供の先天性心疾患から大人の弁膜症、バイパス手 術、大血管手術、心臓移植や大血管の緊急手術と、わずか一ヶ月で多岐にわたる症例を見 学できました。なかでも印象的だったのが日本ではまだ認可されていませんがこの施設で は半年前から大動脈弁狭窄症のリスクの高い症例に対して人工心肺を用いずにカテーテル による弁置換術が行われていました。短時間で侵襲が少ない利点に加えこの画期的な方法 自体に感銘を受けました。 私の目に映るのは男女共に見上げるような体格の人達と耳に入るのは馴染みのないドイ ツ語ばかり。これまでの生活とあまりの環境の違いに私は今どうしてここに居るのだろう と不思議に思うこともありました。ですが、麻酔科だけでなく外科の先生方も温かく迎え 入れて下さり、知識も経験もない私に大変親切にして頂きどんな愚問にも答えて下さいま した。私の英語が拙いためコミュニケーションにはとりわけ苦労しましたが、人種や言語 は違えども言わんとすることを汲み取ろうとしてくださる心が私にはとても嬉しく、思い が伝わったときの感動は忘れ難く、今思い起こしても胸が熱くなる思いです。 私自身、これまで未知であったはずの対象や人物と出逢い、見聞を広めることのできた 喜びは計り知れず、そしてその得られたものは無形ではありますが、これからの人生にか けがえのない財産となったように思います。思いを馳せると、行く前には想像すら出来な かった事が今はどんなに距離があろうと近くに感じることが出来ます。この一ヶ月は大変 短い期間でしたが、出逢うもの全てが真新しく五感で喜びを感じることが出来ました。ま たミュンヘンという街は実に美しく魅力的な街だと知りました。歩けば至る所で長い歴史 に培われた伝統ある芸術の息吹を肌で感じることができます。その一方で車社会を代表す る高級車や大型医療機関、整った交通機関など近代の建築構造物もみられます。自然な形 で歴史と近代が融合し街全体に相乗効果をもたらしているように感じました。この素晴ら しい街で研修が出来たことに深く感謝するとともに是非この機会をもっと多くの方にも経 験してもらうことを願ってやみません。 最後になりましたがこの研修が実現させることができましたのも、引率して頂き素晴ら しい環境を整えて下さいました麻酔科の藤田喜久教授を始め、受け入れて下さった LMU の Zwissler 教授、レジデント教育委員長である柏原直樹教授、プログラムディレクターであ る長谷川徹准教授、川崎明徳理事長、植木宏明学長、角田司病院長ならびに川崎医科大学 附属病院関係者の先生方のご尽力の賜物です。この場をお借りして深く感謝の意を述べさ せて頂きます。