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博士論文 星間化学・大気化学で重要なイオン・ラジカル種の 振動・回転

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博士論文 星間化学・大気化学で重要なイオン・ラジカル種の 振動・回転
博士論文
星間化学・大気化学で重要なイオン・ラジカル種の
振動・回転スペクトル研究
平成 25 年 3 月
藤森隆彰
岡山大学大学院
自然科学研究科
目次
第 1 章 緒言 …・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
1-1 本研究の背景
1-2 本研究の目的・内容
第 2 章 H2F+の赤外線吸収スペクトルと電波スペクトル
9
・・・・・・・・・・・・・・・
2-1 ν1, ν3 バンドのフーリエ変換型吸収分光と基底状態の Combination
differences
2-2
BWO(Backward-wave oscillator) を用いた純回転遷移の観測
2-3
TuFIR を用いた純回転遷移の観測―THz 分光
2-4
ハーシェル宇宙望遠鏡を用いた観測の見積もり
2-5
ν1, ν3 バンドの解析、ν2 バンドの測定と平衡構造
第 3 章 分子イオンの時間分解吸収分光と解離性再結合反応速度定数・・
36
第 4 章 宇宙における負イオン C8H-, C10H- の電波観測
48
4-1
・・・・・・・・・・・・・
野辺山 45 m 電波望遠鏡による観測
4-2 C8H-の観測スペクトルと解析
4-3 IRC+10216 における CnH-負イオンの存在量と生成機構
4-4
C10H-の探査
第 5 章 NO3 ラジカルν4 バンドのフーリエ変換型分光
・・・・・・・・・・・・・・
66
第 6 章 まとめ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
81
第 7 章 付録
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
84
A1:H2F+ ν1 と ν3 バンドの遷移波数
A2:NO3 ν4 バンドの遷移波数
謝辞
2
第 1 章 緒言
1-1 研 究 の背 景
本 論 文 で扱 うイオン・ラジカルは化 学 反 応 の中 間 体 として存 在 する。通 常 の条
件 では短 寿 命 であるが星 間 空 間 のように低 密 度 のところや、上 層 大 気 中 での反 応
に重 要 な役 割 を担 っている。星 間 空 間 という言 葉 からは広 大 で空 虚 な空 間 が想
像 される。実 際 、太 陽 と最 も近 い恒 星 までの距 離 は 4.3 光 年 もあり、そのあいだは
地 球 上 で実 現 できる真 空 よりはるかに高 真 空 である。しかしながら宇 宙 スケールで
みるとまた不 均 一 な空 間 でもあり、場 所 によっては可 視 光 が透 過 できないほどの濃
い密 度 で物 質 が存 在 している所 もある。その様 な星 間 空 間 で最 初 に存 在 が確 認
されたのは Ca + イオンで、波 長 3934 Å の吸 収 線 が 1904 年 Hartmann によってオ
リオン座 δ星 の方 向 で見 いだされた[1]。波 長 を正 確 に測 定 すると明 らかに星 の周
辺 部 のものとは異 なっていたので、星 と地 球 の間 に存 在 している Ca + イオンのスペ
クトルとして説 明 された。その後 、多 数 の原 子 、原 子 イオンの吸 収 スペクトルが星 間
空 間 で見 つかり、1930 年 代 には、分 子 として CH, CH + , CN が初 めて星 間 空 間 で
発 見 された[2][3][4]。
1960 年 代 には OH, NH 3 , H 2 CO 分 子 が電 波 観 測 により検 出 された。その後 、
電 波 観 測 は波 長 の短 い領 域 に拡 張 していき、これまで表 1-1に示 すように 165
種 類 の分 子 の検 出 が報 告 されているが、大 部 分 は電 波 による観 測 の結 果 である。
これらの分 子 がどのようにして生 成 するかは発 見 当 初 から議 論 されてきた。分 子 を
構 成 する元 素 の中 で、H と He の一 部 は宇 宙 創 世 のビッグバン直 後 に生 成 したと
考 えられている。He の一 部 と他 の元 素 は星 での核 融 合 反 応 によって生 成 する。そ
して現 在 の宇 宙 における元 素 存 在 度 は原 子 数 比 (括 弧 内 に示 す)が高 い順 に次
に示 すと以 下 のようになっている。
He (6.9 x 10 -2 )
H (1.0)
O (6.8 x 10 -4 )
C (3.7 x 10 -4 )
N (1.2 x 10 -4 )
Ne (1.1 x 10 -4 )
Mg (3.3x 10 -5 )
Si (3.2x 10 -5 )
Fe (2.8x 10 -5 ) S (1.5 x 10 -2 )
Al (2.6x 10 -6 )
Ca (2.2x 10 -6 )
Na (1.9x 10 -6 )
・・・・・・・
-7
Cl (1.8 x10 )
-8
F(6.7 x 10 )
これら元 素 は原 子 のままでいるより、分 子 または固 体 微 粒 子 などの集 合 体 で存
在 する方 がエネルギー的 に安 定 になる。密 度 、温 度 共 に低 い星 間 空 間 で、気 相
の原 子 分 子 間 の衝 突 は、10 10 / n 秒 に一 回 程 度 でしか起 らない(ここで n は cm -3
3
単 位 で表 した気 相 分 子 の密 度 である)。水 素 分 子 密 度 が 10 4-5 個 /cm 3 の分 子 雲
で水 素 分 子 との衝 突 は一 か月 に一 回 程 度 起 るが、水 素 分 子 以 外 と衝 突 する確 率
は数 十 ~数 百 年 に一 回 程 度 になるので、表 1-1のような大 きな分 子 が生 成 する
ためには衝 突 したら必 ず反 応 が進 行 するほど衝 突 断 面 積 の大 きな反 応 が関 与 し
なければならない。当 然 気 相 での三 体 衝 突 の寄 与 は無 視 できる。それゆえ、星 間
分 子 の生 成 反 応 として(i)イオン・分 子 反 応 、(ii)星 間 ダスト上 での反 応 、(iii)中 性 ・
中 性 反 応 ー特 に活 性 化 エネルギーを必 要 としないラジカル・不 飽 和 分 子 反 応 、ラ
ジカル・ラジカル反 応 、(iv)星 形 成 領 域 におけるショック波 や Outflow(原 始 星 から
の物 質 の流 れ)によって誘 起 される反 応 、が考 えられている。また低 密 度 雲 や晩 期
型 星 周 辺 部 の密 度 の低 いところでは(v)光 分 解 反 応 の寄 与 が大 きく、CN, CCH ラ
ジカルなどが生 成 している。
イオン・分 子 反 応 は活 性 化 エネルギーなしに速 い速 度 で進 行 するので、低 温 で
の分 子 生 成 に重 要 な役 割 を担 っている。実 際 HCO + , HCNH + 等 のイオン種 が検
出 されている。また HCN に対 する HNC のような準 安 定 状 態 の分 子 が多 数 検 出 さ
れている事 は、前 駆 体 としてイオン種 を仮 定 し、電 子 との再 結 合 反 応 過 程 で生 成
する機 構 で説 明 される。星 間 雲 でのイオン・分 子 反 応 は宇 宙 線 のエネルギーによ
って誘 発 される。すなわち星 間 分 子 雲 での H 2 分 子 は一 部 宇 宙 線 (c.r)によって
H 2 + c.r. → H 2 + + e
(1)
とイオン化 され、生 じた H 2 + は
H2+ + H2 → H3+ + H
(2)
の反 応 で H 3 + を生 成 する。宇 宙 線 の大 部 分 は高 エネルギー(>100 MeV)のプロト
ンである。H 3 + は H 2 よりプロトン親 和 力 が大 きい分 子 、原 子 と衝 突 するとプロトン移
動 が起 こり HCO + , HN 2 + , H 3 O + 等 が生 成 する。これらの分 子 を含 む主 要 な反 応 過
程 を一 部 まとめたツリーを図 1-1に示 す。この図 の中 で中 心 的 存 在 の H 3 + は平 面
型 (正 三 角 形 )の分 子 で永 久 双 極 子 モーメントをもたないので純 回 転 スペクトルは
観 測 されない。そのため H 3 + は赤 外 3.5 ~4μm の大 気 の窓 の領 域 で観 測 されて
いる。最 近 、H 3 + の振 動 回 転 スペクトル線 を利 用 して多 くの星 間 分 子 雲 で検 出 され
るようになった。その結 果 H 3 + の低 密 度 雲 (diffuse clouds)における存 在 量 が予 想
より多 いことがわかり、再 結 合 反 応 定 数 が小 さいのではないかとの説 も出 されたが、
4
実 験 室 での測 定 によると大 きいことが確 認 され、その結 果 、反 応 (1)における宇 宙
線 の量 が従 来 用 いられてきた値 より多 いとして説 明 されている。
図 1 - 1 は 本 研 究 に 関 係 す る 星 間 分 子 H 2 F + , C 8 H - , C 10 H - の 生 成 と 反 応 ス
キ ー ム を 示 す 。 H 2 F + は H 3 + と HF の反 応 で生 成 する。HF のプロトン親 和 力 は H 2
より大 きいので星 間 空 間 で H 3 + と HF の衝 突 が起 こればプロトンは 100%HF に移
行 して H 2 F + が生 成 する。しかしながら濃 い雲 ではプロトン親 和 力 が HF より大 きい
CO, N 2 の濃 度 が増 すので、H 2 F + がそれらと衝 突 するとプロトンは移 行 し、HCO + ,
HN 2 + が生 成 する。一 方 低 密 度 雲 では H 2 F + は電 子 と結 合 して消 滅 する反 応 が起
こるので、その反 応 速 度 定 数 の値 が低 密 度 雲 における H 2 F + の存 在 量 の見 積 もり
にとって重 要 である。
本 研 究 で扱 う NO 3 ラジカルは地 球 大 気 化 学 の分 野 において鍵 となる役 割 を果
たしている。大 気 中 の NO 3 のほとんどが NO 2 と O 3 の反 応 によって生 成 しているた
め、大 気 上 層 におけるオゾン濃 度 減 少 に関 わる反 応 系 に関 与 している。NO 3 ラジ
カルは、日 中 太 陽 光 によって光 解 離 して NO 2 になっている。NO 2 自 体 は OH ラジ
カルとの反 応 により HNO 3 を生 成 し、酸 性 雨 の原 因 と考 えられている。夜 間 は上 述
したようにオゾンとの反 応 で NO 3 としてある時 間 存 在 することができ、大 気 中 の有
機 分 子 から H 原 子 を引 き抜 いて、HNO 3 を生 成 する。また反 応 機 構 としては NO 2
と反 応 して N 2 O 5 を生 成 する。窒 素 の酸 化 物 の中 で気 相 の反 応 において安 定 に
単 離 できる分 子 は、N 2 O, NO, N 2 O 3 , NO 2 , N 2 O 4 , N 2 O 5 の 6 種 類 で、各 種 の反 応
の中 間 に存 在 する不 安 定 化 学 種 として NO 3 が知 られている[8]。以 上 から NO 3 ラ
ジカルは NOx と呼 ばれる大 気 の有 害 な汚 染 物 質 のキャリアとして注 目 されている。
夜 間 に上 層 大 気 でのオゾンとの反 応 で生 成 するため大 気 の NO 3 ラジカルを直 接
観 測 した報 告 はあまりない。そのためまず NO 3 ラジカル自 体 の化 学 特 性 を知 ること
はラジカル種 の研 究 のみならず大 気 化 学 の面 においても非 常 に意 義 のあることで
ある。
NO 3 ラジカルは平 面 分 子 (基 底 電 子 状 態 は D 3h 対 称 種 と確 定 )で 4 つの基 本
振 動 を持 つ。すなわち対 称 伸 縮 振 動 のν 1 、面 外 変 角 振 動 のν 2 、非 対 称 伸 縮 振 動
のν 3 、面 内 変 角 振 動 のν 4 である。ν 1 の対 称 性 は A 1 ’で 4 つの振 動 モードの中 で
唯 一 赤 外 不 活 性 となり、ν 2 の対 称 性 はΑ 2 ”で分 子 面 と垂 直 方 向 に遷 移 モーメント
を持 っている。ν 3 , ν 4 の対 称 性 は E’で縮 重 振 動 である。分 子 の持 つ非 調 和 性 によ
り、2 つ以 上 の基 準 振 動 が同 時 に励 起 された状 態 への遷 移 であるコンビネーショ
ンバンドや 2ν 4 のような倍 音 も測 定 可 能 な強 度 を持 つ場 合 があるが、通 常 の分 子
5
ではそれらの吸 収 強 度 は基 音 に比 べて弱 い。しかし NO 3 ではコンビネーションバ
ンドの強 度 が基 音 より強 いことが予 想 され、赤 外 強 度 の点 で奇 妙 な振 る舞 いを示
す分 子 である。
1-2 本 研 究 の目 的 ・内 容
星 間 空 間 、大 気 化 学 におけるイオン・ラジカルの存 在 と化 学 反 応 における役 割
を理 解 するために実 験 室 で2種 類 のデータが望 まれる. 一 つは反 応 中 間 体 など
新 しい分 子 のスペクトルデータであり, もう一 つは反 応 の速 度 定 数 と分 岐 比 の情
報 である. 後 者 の中 では電 子 付 着 による負 イオンの生 成 速 度 , 陽 イオンと電 子 の
再 結 合 反 応 の速 度 , 再 結 合 反 応 の分 岐 比 などの問 題 を解 明 することが星 間 空
間 における分 子 存 在 量 を理 解 するために重 要 である。
本 研 究 では、第 2 章 で H 2 F + の分 光 研 究 、特 に宇 宙 での探 査 のための純 回 転
遷 移 周 波 数 を決 定 し、またすべての振 動 状 態 における分 子 定 数 を求 め平 衡 構 造
を導 出 したので報 告 する。純 回 転 遷 移 の測 定 と・ ・ バンドの測 定 は本 研 究 が初 であ
る。ハーシェル宇 宙 望 遠 鏡 での探 査 プロジェクトが採 択 され 2013 年 観 測 が行 わ
れることになった。第 3 章 では時 間 分 解 分 光 法 による陽 イオンと電 子 の再 結 合 反
応 速 度 定 数 の測 定 について報 告 する。その値 は星 間 空 間 でのイオン密 度 にとっ
て重 要 である。第 4 章 では C 8 H - , C 10 H - の野 辺 山 宇 宙 電 波 観 測 所 45m電 波 望 遠
鏡 による観 測 について報 告 する。C 8 H - は宇 宙 で 3 番 目 に見 つかった負 イオンでそ
の生 成 機 構 を考 察 した。第 5章 では大 気 化 学 でよく取 り上 げられる NO x の中 のラ
ジカル NO 3 のν 4 バンドの測 定 ・解 析 結 果 を報 告 する。他 のバンドとの同 時 解 析 に
より単 一 バンドの解 析 では決 まらない回 転 定 数 C を決 定 できたことが特 徴 である。
6
参考文献
[1] J. Hartmann, Astrophys. J, 19, 268(1904).
[2] P. Swings, and L. Rosenfeld, Astrophys. J, 86, 483 (1937).
[3] A. McKellar, Publ. Astron. Soc. Pacific, 52, 187 (1940).
[4] A. E. Douglas, and G. Herzberg, Astrophys. J, 94, 381 (1941).
[5] S. Weinreb, A. H. Barret, M. L. Meeks, and J. C. Henry, Nature, 200, 829
(1963).
[6] A. C. Cheung, D. M. Rank, C. H. Townes, D. D. Thornton, and W. Welch,
Phys. Rev. Lett. 21, 1701 (1968).
[7] P. Palmer, B. Zuckerman, D. Buhl, and L. E. Snyder, Astrophys. J, 156, L147
(1969).
[8] 長 哲 郎 、 「 NOx の 化 学 」 、 共 立 出 版 、 1987.
7
表1-1 これまでに観測された星間分子(2012)
簡単な水素化物、酸化物、ハロゲン化物など
CO
H2(IR)
NH3
SiH4*(IR)
SiO
HF
C2(IR)
SO2
HCl
OCS
CH4*(IR)
H2O
N2O
CO2
CS
SiS
H 2S
PN
NaCl*
AlCl*
KCl*
AlF*
ニトリル、アセチレン誘導体など
C3*(IR)
HCN
CH3CN
HC3N
C5*(IR)
CH3C3N
C 3O
HC5N
NH3C5N
C 3S
HC7N
CH3C2H
C4Si*
HC9N
CH3C4H
HC11N
CH3CH2CN
HC2CHO
CH2CHCN
HNC
HNCO
HNCS
HNCCC
CH3NC
HCCNC
C2H4*(IR)
C2H2*(IR)
HC4H*(IR)
HC6H*(IR)
アルデヒド、アルコール、エーテル、ケトン、アミドなど
CH3OH
CH2NH
HCOOH
H2CO
H2CS
CH3CH2OH
CH3NH2
HCOOCH3
CH3COOH
NH2CN
CH3CHO
CH3SH
NH2CHO
(CH3)2O
CH2OHCHO
H2CCO
(CH3)2CO
環状分子
c-C3H2
c-C6H6*(IR)
c-SiC2
c-SiC3*
分子イオン
CH+(OPT)
HCS+
CO+
HCO+
HOCO+
H2COH+
HCNH+
HC3NH+
SO+
ラジカル
OH
CH
CH2
CH3
NH(UV)
NH2
SH(IR)
C2H
C3H
C4H
C5H
C6H
C7H
C8H
CN
C3N
C5N
HCCN*
CH2CN
CH2N
HNO
c-C3H
H3O+
HOC+
C2O
NO
SO
HCO
MgNC
MgCN
NaCN
H2C3
H2C4
H2C6
c-C2H4O
HN2+
H 3+
C 2S
NS
SiC*
SiN*
CP*
SiCN*
電波以外の波長域で観測される分子については、それをカッコ内に示し
た。IRが赤外線、OPTが可視光、UVが紫外線である。
* 赤色巨星でのみ検出されていることを示す。
最近:C4H-, C6H-, C8H-, C3N-, C5N-, HCl+,H2Cl+, H2O+, OH+
8
図1-1
星間分子の生成と反応
9
第2章 H 2 F + の赤外線吸収スペクトルと電波スペクトル
H 2 F + は 10 個 の電 子 を持 ち、基 底 電 子 状 態 は 1 A 1 で、H 2 Cl + ,H 2 O と極 めて
類 似 した構 造 を持 つ。H 2 F + は 1927 年 に Hantzsch により錯 体 (H 2 F + ・ClO 4 - )とし
て初 めて報 告 された[1]。H 2 F + の理 論 計 算 では 1982 年 Mavridis と、Harrison
に より 近 似 ハート リ ー フ ォ ッ ク 計 算 で 平 衡 配 置 が 求 め られ た [2]。 1983 年 に は
Botschwina[3] が平 衡 構 造 、ポテンシャル関 数 を求 め、H 2 F + ,HDF + ,D 2 F + の
振 動 数 の予 測 を行 った。1984 年 Schäfer & Saykally [4,5]により、ν 1 及 びν 3
バンドの振 動 回 転 スペクトルが赤 外 レーザー分 光 法 により測 定 されている。また、
ν 2 バ ン ド ( 変 角 振 動 バ ン ド ) の 振 動 回 転 状 態 は Petsalakis 等 [6] に よ る ab
initio 計 算 の結 果 を用 いた MORBID (Morse oscillator rigid bender internal
dynamics) Hamiltonian [7]で予 測 されているが、分 光 測 定 は報 告 されていない。
宇 宙 空 間 で の フ ッ 素 の 水 素 に 対 す る 相 対 存 在 量 は 6.7×10 -8 で あ る 。 こ れ
は 塩 素 の 半 分 で あ る 。 こ れ ま で に 検 出 さ れ た F を 含 む 星 間 分 子 は AlF [8],
HF [9], CF + [10] の み で あ る 。 最 近 、 ハ ー シ ェ ル 宇 宙 望 遠 鏡 を 用 い 、
H 2 Cl + [11,12]が 2 つ の 天 体 で 初 め て 検 出 さ れ た 。 こ れ と isovalent な H 2 F + の
星 間 空 間 で の 存 在 が 興 味 を 持 た れ る が 、 サ ブ ミ リ 波 THz 領 域 で の 天 文 観
測 に 必 要 な 純 回 転 遷 移 周 波 数 は 全 く 知 ら れ て い な い 。 本研究では、フーリエ変
換型分光器による ν1, ν3 バンドの振動回転スペクトルの精密測定から始め、基底状態の
純回転遷移の測定、ν2 バンドの初めての測定、平衡構造の決定、電子との解離性再結
合反応速度定数の決定を行った。
2-1
H 2 F + ν 1 ,ν 3 バ ン ド の フ ー リ エ 変 換 型 吸 収 分 光 と 基 底 状 態 の
combination differences
本研究は、フーリエ変換型分光器によるν1, ν3 バンドの振動回転スペクトルの精密測
定からスタートした。以前は、ν1, ν3 バンドがカラーセンターレーザーを用いた速度変調法
で測定されていたが[4,5]、本測定ではそれより約 5 倍高精度で遷移周波数を決めること
ができた。
【 実 験 】 H 2 F + イオンは図 2-1 に示 すホローカソード放 電 セル中 で、He で 5%
に希 釈 された F 2 70 mTorr、H 2 300 mTorr の混 合 物 の放 電 (400 mA)により生 成 し
た。多 重 反 射 型 セルでは光 学 配 置 の改 良 により光 路 長 を、従 来 と比 べ約 2 倍 に
することができた。分 光 器 は Bruker IFS 120HR を用 いν 1, ν 3 バンドをカバーする
領 域 1900~3900 cm -1 を波 数 分 解 能 0.008 cm -1 で測 定 した。光 源 には近 赤 外 用
10
のランプを、ビームスプリッターは CaF 2 、検 出 器 は InSb を用 いた。イオンの生 成 、
維 持 にはセルの冷 却 が不 可 欠 で、液 体 窒 素 を流 せる銅 製 のジャケットを放 電 部
分 のガラスセルに装 着 し、セルを-80 ~-100 度 に冷 却 した。波 長 較 正 には放 電
時 に不 純 物 として観 測 される H 2 O のスペクトル線 を用 いた[13]。
【観 測 スペクトルと解 析 】図 2-2 に観 測 したスペクトルの例 を示 す。検 出 されたス
ペクトル線 の多 くは既 にレーザー分 光 で測 定 されていたので、その結 果 を参 考 に
帰 属 を行 った。レーザー分 光 で検 出 されていたスペクトル線 のいくつかは本 実 験
で観 測 されなかった。これはレーザー分 光 の方 が光 源 として大 きなパワーを持 ち、
高 感 度 であることを意 味 する。レーザー分 光 では遷 移 周 波 数 の測 定 は波 長 計 を
用 いてなされ、測 定 精 度 は 0.005 cm -1 と見 積 られている。本 研 究 での測 定 精 度 は
強 いスペクトル線 では 0.001 cm -1 であった。この測 定 精 度 の違 いを正 しく最 小 二
乗 法 解 析 における統 計 重 率 として考 慮 することが分 子 定 数 の決 定 に重 要 であっ
た。
分 子 イオンの回 転 エネルギーの計 算 においては、以 下 の Watson の A-reduced
Hamiltonian [14]を用 いた。
H = (B% + C% )/2 J 2 + {A% - ( B% + C% )/2)}J a 2 + ( B% - C% )/4(J + 2 + J - 2 )
–Δ J J 4 – Δ JK J 2 J a 2 - Δ K J a 4 – δ J J 2 (J + 2 + J - 2 )
– δ K [J a 2 , (J + 2 + J - 2 ) ] + /2 + Φ J J 6 + Φ JK J 4 J a 2 + Φ KJ J 2 J a 4 + Φ K J a 6
+ φ J J 4 (J + 2 + J - 2 ) + φ JK J 2 [J a 2 , (J + 2 + J - 2 ) ] + /2 + φ K [J a 4 , (J + 2 + J - 2 ) ] + /2
+L J J 8 + L JJK J 6 J a 2 + L JK J 4 J a 4 + L KKJ J 2 J a 6 + L K J a 8
(1)
こ こ で J ± = J b ± iJ c そして [A, B] + は AB + BA を意 味 する(anti-commutator)。
ν
1,
ν 3 バンドの振 動 回 転 線 から基 底 状 態 の combination differences を計 算 し、
それらを用 いて基 底 状 態 の純 回 転 遷 移 の周 波 数 を計 算 し、サブミリ波 分 光 におけ
る純 回 転 遷 移 の探 査 に用 いた。この過 程 で基 底 状 態 の回 転 定 数 を決 定 したが、
後 に純 回 転 遷 移 を精 度 よく測 定 できたので、それらを含 んだ解 析 結 果 を後 ほど示
すことにする。
2-2 BWO (Backward-wave oscillator) を用 いた純 回 転 遷 移 の観 測
H 2 F + のような簡 単 な分 子 の純 回 転 スペクトルがこれまで得 られていなかったの
はある意 味 では不 思 議 であるが、分 子 が軽 いため、遷 移 周 波 数 が高 くなり、そこで
11
の高 感 度 分 光 は簡 単 ではなかったことを示 している。高 感 度 吸 収 分 光 のためには
光 源 のパワーが大 きいことが必 須 である。図 2-3はサブミリ波 領 域 で利 用 されて
いるいくつかの光 源 の出 力 をまとめたものである[15]。この波 長 域 での光 源 として
は InP Gunn ダイオード等 からの基 本 波 発 振 器 と周 波 数 逓 倍 器 を用 いたもの、共
鳴 トンネルダイオード(RTD)の負 性 抵 抗 を応 用 して二 重 障 壁 を電 子 が 0.1 ps 台 と
いう極 めて短 い時 間 内 に通 過 し充 電 できることを利 用 した発 信 器 が存 在 するが、
出 力 が概 ね数 μW と弱 い[15]。BWO は 0.9 THz 以 下 の周 波 数 領 域 で 1 mW 以
上 の出 力 を供 給 でき高 感 度 な吸 収 分 光 の光 源 として非 常 に有 用 である。BWO は
永 久 磁 石 の中 にセットされた真 空 管 で、高 電 圧 をかけ電 子 を加 速 し磁 場 により一
定 方 向 にサブミリ波 を発 振 させる。De Lucia らは BWO からの出 力 を周 波 数 ロック
せずに既 知 の分 子 吸 収 線 とエタロンのフリンジ(干 渉 縞 )の間 隔 から絶 対 周 波 数
を測 定 する方 法 で利 用 している [16]。本 研 究 では次 項 に述 べるように周 波 数 ロッ
ク法 で周 波 数 測 定 精 度 を上 げた。
【実 験 】
純 回 転 遷 移 の測 定 には、後 進 行 波 管 (BWO)を用 いたサブミリ波 分 光 器 [17,
18]を用 いた。装 置 の概 略 を図 2-4に示 す。高 い周 波 数 精 度 の測 定 が可 能 なよう
に、BWO からのサブミリ波 をビームスプリッターで一 部 取 り出 し、ガン発 振 器 からの
ミリ波 と GaAs ハーモニックミキサー上 で混 合 することによりビートをとりそれを利 用
して BWO にフェイズロックをかけて安 定 化 した。ガン発 振 器 自 体 もシンセサイザー
の逓 倍 にフェイズロックをかけることにより安 定 化 されている。またシンセサイザーの
周 波 数 は GPS 信 号 により安 定 化 ・較 正 されている。
スペクトルを感 度 よく測 定 するために周 波 数 変 調 と放 電 変 調 の二 重 変 調 を用 い、
放 電 で生 成 された短 寿 命 分 子 のみを選 択 的 に検 出 することが可 能 になっている。
放 電 には extended negative glow 放 電 [17]を用 いて、セル中 でイオンを生 成 した。
extended negative glow 放 電 の特 徴 は陽 イオンが高 密 度 で存 在 する領 域 に磁 場
をかけることにより長 くすることができる点 である。DC 放 電 電 流 は約 18 mA、放 電
部 分 は-60 ◦ C に冷 却 した。HF は、タンマン管 に入 れた KF*HF をステンレスパイプ
の中 に入 れタンマン管 の部 分 をリボンヒーターで 150-160 ◦ C まで加 熱 して発 生 さ
せ、Ne を流 してセルの中 に導 入 した (図 2-5)。この最 適 な温 度 設 定 のため、事
前 に岡 山 大 にてフーリエ変 換 型 赤 外 分 光 器 (FT-IR)を使 って KF*HF の加 熱 温
度 を変 えて HF の生 成 が最 も良 い条 件 を探 した。その際 、HF 分 子 の FT-IR 赤 外
吸 収 分 光 で 90 % 程 度 吸 収 し て い る こ と が 分 か っ て い る v=1-0 P(4) 遷 移
12
3788.2277 cm -1 のスペクトル線 を用 い、熱 分 解 でも H 2 /F 2 放 電 系 と同 程 度 生 成 し
ていることを確 認 した。注 意 すべきは温 度 が一 定 になってもすぐに HF は生 成 せず
30 分 程 度 たった後 から徐 々に増 えて、1 時 間 程 度 で HF の生 成 が安 定 すること
が分 かった。今 回 扱 う気 体 は H 2 と Ar または Ne でこれらはマスフローコントローラ
によって流 量 をコントロールした。そのため全 圧 力 が変 化 するのは HF 分 子 のみに
よると考 え、圧 力 変 化 が小 さいように温 度 を調 整 しながら実 験 を行 った。それらの
条 件 で導 入 した Ne + HF と Ar, H 2 との混 合 ガスを放 電 して H 2 F + を生 成した。サ
ブミリ波 は InSb のホットエレクトロンボロメーターを用 いて検 出 した。
最 初 に、280-860 GHz の範 囲 内 で二 番 目 に強 いと予 想 される 2 02 -1 11 (パラ)の
遷 移 を、磁 場 を 160-180 Gauss かけ 655371.786(15) MHz に検 出 した(図 2-6)。
軽 い分 子 H 2 F + の純 回 転 遷 移 は広 い周 波 数 領 域 に渡 っているので、それらを観 測
するには数 種 類 の BWO が必 要 になる。サブミリ波 領 域 で一 番 強 いと予 想 される
1 10 -1 01 (オルソ)の遷 移 は 760928.937(10) MHz に検 出 できた(図 2-7)が、この 1
本 の遷 移 の測 定 のため、東 工 大 の金 森 博 士 より BWO を借 りる必 要 があった。他
3 本 の ス ペ ク ト ル 線 は 、 弱 か っ た が 、 そ れ ぞ れ 2 20 -3 13 遷 移 を 473160.854(25)
MHz, 3 31 -4 22 遷 移 を 581005.956(35) MHz, 3 30 -4 23 遷 移 を 773946.615(40) MHz
に検 出 できた。
一 般 には分 子 イオンは冷 却 セルで効 率 よく生 成 することがわかっているが、本
研 究 で、冷 却 メタノールの温 度 をより下 げた状 態 で HF をセル中 に導 入 して、水 素
と放 電 すると H 2 F + の生 成 が悪 くなることが分 かった。これは低 温 下 で HF(融 点 は84 ℃)がガラス表 面 (-60 ◦ C)へ吸 着 することがその理 由 と考 えられる。このことは
Ar ガスのみを流 して冷 却 メタノールを流 さずにセル壁 面 の温 度 を上 げると圧 力 が
上 昇 する現 象 によって確 認 された。またセルを一 晩 排 気 した後 も H 2 +Ar のみの放
電 で H 2 F + のスペクトルが室 温 で検 出 された。このことはパイレックスガラス管 壁 に吸
着 (溶 融 )した HF が、放 電 によりたたき出 され、H 2 と反 応 し H 2 F + が生 成 したと考
えられる。
HF の proton affinity (484 kJ/mol) [19] は CO (594 kJ/mol), N 2 (494 kJ/mol)
よりも小 さく、不 純 物 があれば H 2 F + は生 成 しにくくなるので、リーク等 に注 意 して実
験 を行 う必 要 があった。実 際 に OCS 等 を放 電 した実 験 の後 に H 2 F + の検 出 を試 み
たがガラスセルとフランジ等 を新 しいものと交 換 、その他 を清 掃 するまでは検 出 でき
なかった。
スペクトルが H 2 F + によることの確 認 は、観 測 周 波 数 が予 想 に近 かったこと、生 成
に水 素 とフッ素 を必 要 とする(含 む)こと、100-180 Gauss の磁 場 で強 度 が一 桁 以
13
上 強 くなる振 る舞 いが、他 の陽 イオンと同 じであることでなされた。
【解 析 】
検 出 した 5 本 の遷 移 を表 2-1 に示 す。これらのスペクトル線 と赤 外 スペクトル
から求 めた 122 の combination differences を用 い基 底 状 態 の分 子 定 数 を決 定 し
た。最 小 二 乗 フィットの際 の重 みは各 々のスペクトル線 の測 定 精 度 (Δν)を考 慮 して
(1/Δν) 2 と与 えた。決 定 された分 子 定 数 を用 いて、遷 移 強 度 が強 く、ハーシェル宇
宙 望 遠 鏡 を用 いた観 測 が可 能 な 1-2 THz 領 域 に予 想 される遷 移 の周 波 数 を、
誤 差 付 きで見 積 もった[20]。見 積 もられた誤 差 は大 きいもので 13.8 MHz(5 23 -5 14 )、
9.3 MHz (4 13 -4 04 ) で、ハーシェルで探 査 の第 1 候 補 になる 2 12 -1 01 遷 移 では 5.1
MHz であった。実 際 の天 体 では一 般 に多 くの分 子 種 のスペクトル線 が混 じって観
測 されるでので、遷 移 周 波 数 が 5 MHz の誤 差 を持 つのは帰 属 の場 合 、不 確 定 さ
が残 る。そこで地 上 での直 接 観 測 データを取 得 するために次 に述 べるように
TuFIR での分 光 を行 った。
2-3
TuFIR を用 いた純 回 転 遷 移 の観 測 ―THz 分 光
BWO での発 振 周 波 数 は 900 GHz 以 下 に制 限 されていたので、より高 い周 波
数 域 は富 山 大 の TuFIR(Evenson-type Tunable far-infrared radiation source)
分 光 システムを用 い 7 本 の純 回 転 遷 移 を 1300-1900 GHz 域 で検 出 できた。
【実 験 】
実 験 装 置 を図 2-8に示 す。今 回 用 いた TuFIR[21, 22, 23]遠 赤 外 光 源 (THz
源 )は 2 つの炭 酸 ガスレーザーを MIM ダイオード上 に混 合 させ差 周 波 を発 生 させ
る。光 源 の元 となる 2 つの炭 酸 ガスレーザー周 波 数 は、非 常 に正 確 に分 かってお
り(周 波 数 精 度 3 kHz )、しかも蛍 光 ラムディップを用 いて安 定 化 されている(実 際
実 験 における周 波 数 精 度 25 kHz )。2 つのレーザーの組 み合 わせは約 7000
通 りあり、シンセサイザーを用 いてマイクロ波 を混 ぜて掃 引 しているため、マイクロ
波 分 光 並 みの分 解 能 が得 られる。利 用 できる遠 赤 外 光 の周 波 数 は
ν
と与 えられる。ここで、ν
の周 波 数 で、ν
|ν1
ν2 |
ν
(2)
遠 赤 外 出 力 光 の周 波 数 で、ν と ν
は CO 2 レーザー
は掃 引 するマイクロ波 の周 波 数 になる。
本 実 験 に用 いた 2 つの CO 2 レーザーのパワーは 150 から 230 mW で、18
14
GHz まで可 変 なマイクロ波 シンセサイザーの出 力 は約 2 mW であった。これらが
MIM ダイオード上 で混 合 され、出 力 が数 10 nW から数 100 nW の 5.7 THz まで
の領 域 の遠 赤 外 光 が発 生 し吸 収 セルに入 射 される。その出 力 は BWO に比 べると
弱 かったが、比 較 的 強 いスペクトル線 を測 定 するには十 分 なパワーであった。セル
はサブミリ波 の実 験 を行 なった時 と同 じ extended negative glow 放 電 [17]用 のも
のを使 用 した。これは長 さ 1.5 m のパイレックス製 のデザインの二 重 管 になってい
て外 側 はエタノールを流 せるようになっている。ガラスセルの内 径 は 33 mm で、両
側 はポリプロピレンの厚 さ 1 mm の窓 材 でシールドしている。放 電 用 電 極 は陽 極 、
陰 極 とも長 さ 15 cm の円 筒 状 のステンレスで作 られていて、入 射 光 に近 い電 極 側
にはガスの導 入 管 が 2 本 あり、H 2 F + を生 成 させるための温 度 コントローラーで 150
~160 ℃に加 熱 され生 成 した HF を周 りに吸 着 させないようにバッファーガス Ar
でセルに導 入 した。また Ar は放 電 を安 定 させる目 的 ももつ。Ar と H 2 はマスフロー
コントロールで一 定 に流 すようにした。直 流 放 電 ( 10 mA, 2.5 kV )で、セルの温 度
は-60 ~-80 度 で実 験 を行 なった。検 出 器 は Si ボロメーターを用 い、約 300 G
の磁 場 を印 加 した状 態 で周 波 数 変 調 法 を用 いて測 定 した。
【観 測 スペクトルと解 析 】
サ ブミ リ 波 領 域 の 遷 移 と combination differences か ら 得 ら れ た THz 領 域 の
H 2 F + の予 想 周 波 数 をもとにマイクロ波 を掃 引 して H 2 F + による吸 収 線 を探 した。H 2
と HF と Ar を混 ぜて、磁 場 をかけている状 態 で extended negative glow 放 電 [17]
を行 うことで最 初 の吸 収 線 を 1850082 MHz に検 出 した。この周 波 数 は予 想 されて
いた 2 12 – 1 01 の遷 移 周 波 数 と比 べて 10 MHz だけ低 かった。測 定 周 波 数 の上
下 100 MHz の領 域 をスキャンしたが他 にシグナルを検 出 しなかったため、その測
定 周 波 数 1850081.989 GHz の吸 収 線 を 2 12 – 1 01 によるものと同 定 した。その 2 12
– 1 01 の遷 移 周 波 数 と combination differences から最 小 自 乗 法 フィットを行 い新
たな予 想 周 波 数 を得 て、それをもとに 1.9 THz 以 下 の領 域 で他 の遷 移 を検 出 、同
定 を行 なった。図 2-9に一 次 微 分 で観 測 された 2 本 のスペクトル線 を示 す。ここ
でスキャン回 数 は 6、時 定 数 300 ms であった。セルの温 度 は 1 11 – 0 00 遷 移 の測
定 では-80 ℃、3 03 – 2 12 遷 移 の測 定 では-70 ℃に設 定 した。
表 2-1に THz の領 域 で検 出 した 7 本 の遷 移 をサブミリの領 域 で検 出 した 5
本 とともに示 す。図 2-10に測 定 した純 回 転 遷 移 12 本 を図 示 している。ここでス
ピン重 率 3のオルソ準 位 と重 率 1のパラ準 位 を区 別 している。H 2 F + が比 較 的 軽 い
分 子 のためにある温 度 では分 布 できる回 転 準 位 に限 りがあり、本 実 験 では図 2-1
15
0に示 す12本 しか測 定 できなかった。基 底 状 態 の分 子 定 数 を決 めるために、表 2
-1の 12 本 と赤 外 測 定 から得 た combination differences 122 本 を用 いて最 小
自 乗 フィットを行 なった。遠 心 力 歪 定 数 φ K をパラメーターにすると B −  C, δ K との間
で大 きな相 関 があったので、φ K は段 階 的 に変 化 させて最 適 値 を見 出 した。表 2-
2に得 られた基 底 状 態 の分 子 定 数 を載 せる。左 から、THz 測 定 とサブミリ測 定 と赤
外 測 定 からの combination differences から導 いたもの[24]、真 ん中 はサブミリ測
定 5 本 と combination differences のみでの解 析 したもの[20]、右 は Schafer と
Saykally によるν 1 とν 3 バンドの赤 外 振 動 回 転 遷 移 だけを用 いた解 析 結 果 である。
本 解 析 では Watson A reduced ハミルトニアンを使 ったが、Schafer と Saykally[4,
5] は S reduced ハ ミ ル ト ニ ア ン を 用 い て い た 。 そ の た め 両 者 を 比 べ る た め に S
reduced から A reduced ハミルトニアン用 の分 子 定 数 への変 換 を行 なった[14]。表
2-1の(o.-c.)は観 測 値 と表 2-2の分 子 定 数 による計 算 値 との差 で、ほぼ測 定 精
度 内 におさまっている。同 様 に combination differences に対 する o – c の値 を付
録 A1 に示 す。
2-4 ハーシェル宇 宙 望 遠 鏡 を用 いた観 測 の見 積 もり
H 2 F + の基 礎 的 データを得 ることができたので宇 宙 での探 査 へ適 用 することにし
た。H 2 F + のスペクトルが検 出 された場 合 、その観 測 データより、H 2 F + の存 在 量 が得
られ、前 駆 体 HF も同 時 に観 測 するのでその存 在 量 と他 のハロゲン化 合 物 と比 較
することで化 学 反 応 を理 解 する手 助 けになる。
HF のプロトン親 和 力 484 kJ/mol [19]は N 2 ( 494 kJ/mol )
や CO ( 594
+
kJ/mol )より小 さいので、H 2 F は N 2 や CO が多 い dense clouds(最 も多 い水 素 分
子 の密 度 で 10 4 -10 6 個 /cm 3 を持 つ雲 )の中 では大 量 には存 在 できない。H 2 F + が
検 出 されるところとしては diffuse clouds(水 素 分 子 ・水 素 原 子 密 度 で 100-1000
個 /cm 3 )が考 えられる。そこでは塩 素 はイオン化 され Cl + として存 在 できる。それは
Cl のイオン化 エネルギーが水 素 のイオン化 より低 く、Cl + は H 2 と反 応 して H 2 Cl + が
生 成 する。一 方 フッ素 のイオン化 エネルギーは水 素 のものより大 きく、F はイオン化
されず H 2 と反 応 して HF 分 子 になり、dense clouds や diffuse clouds の中 で蓄 積
されていく。diffuse clouds の中 では H 2 と cosmic ray の反 応 により H 3 + が多 く存
在 していて、その中 で H 2 F + は HF + H 3 + で生 成 される考 えられる。diffuse clouds
での H 3 + の観 測 的 研 究 では、2007 年 に Indriolo 等 [25]が H 3 + の存 在 量 を測 定
するために cosmic ionization rate は 2 ×10 -16 s -1 であるべきであると提 案 している。
Newfeld と Wolfire [26]は 2009 年 の計 算 には 1.8 ×10 -16 s -1 を使 って H 2 Cl + の
16
存 在 量 を得 ている。この値 は以 前 用 いた値 ( 1.8 ×10 -17 s -1 )[27]に比 べて一 桁 大 き
なものになっている。この一 桁 大 きな cosmic ionization rate を使 っても、diffuse
clouds 中 の H 2 F + の存 在 量 は多 くは予 想 されなかった。だが diffuse clouds で
H 2 F + の主 な消 滅 過 程 と考 えられる電 子 との解 離 性 再 結 合 反 応 速 度 定 数 に不 確
か さ が 残 っ て い る 。 そ の 実 験 値 が ない の で Newfeld 等 (2005)[27] 、 Newfeld と
Wolfire(2009)[26]の計 算 では H 2 F + の電 子 との解 離 性 再 結 合 反 応 の速 度 定 数 を
3.5 ×10 -7 (T/300) -0.5 cm 3 s -1 と表 し、T = 50 K において H 2 Cl + と比 べて 3.1 倍 大 き
な反 応 速 度 定 数 を仮 定 した。Diffuse clouds における H 2 F + の存 在 量 を見 積 るに
あたり、この値 は非 常 に重 要 になるので、第 3 章 でその実 験 的 測 定 について述 べ
る。
Lis 等 によって 2010 年 に NGC6334I において H 2 Cl + が検 出 され、その存 在 量
が HCl ( 4×10 14 cm -2 ) の 4.3 %にあたる 1.7×10 13 cm -2 であることが分 かった[11]。
Sonnentrucker 等 [28]によって、2010 年 に HF 分 子 が W49N での diffuse cloud
で検 出 された。H 2 F + の永 久 双 極 子 モーメントは Mavridis と Harrison[29]によって
1982 年 に 2.5 D と計 算 され、Bunker[7]は 1990 年 により大 きな値 2.79 D を報
告 している。その値 が H 2 Cl + の 1.89 D に比 べて大 きいことを考 えると H 3 + が多 く存
在 している diffuse clouds で H 2 F + が検 出 される可 能 性 は残 っている。
宇 宙 空 間 のような低 い温 度 下 では H 2 F + はオルソ準 位 とパラ準 位 の最 もエネル
ギーの低 い一 つの準 位 すなわち 1 01 準 位 と 0 00 準 位 にしか分 布 していないと推 定
される。実 験 室 分 光 により H 2 F + の回 転 遷 移 の周 波 数 を正 確 に得 たが、宇 宙 で観
測 できる遷 移 は 1 11 -0 00 (1305 GHz), 2 12 -1 01 (1850 GHz), 1 10 -1 01 (761 GHz) の 3
本 になる。これら周 波 数 領 域 には大 気 の吸 収 があり、地 上 の望 遠 鏡 では観 測 が難
しい。(系 外 銀 河 のように大 きな red shift を示 す天 体 では大 気 の吸 収 を避 けて見
える場 合 もあるが、まずは我 々の銀 河 系 で検 出 されていなければならない。)それ
故 、新 しい分 子 イオン H 2 F + の検 出 には Herschel 宇 宙 望 遠 鏡 を用 いた観 測 しか
方 法 はないので、分 光 装 置 HIFI( Hetrodyne Instrument for the far - infrared )で
の観 測 提 案 を行 ったところ採 択 され、2013 年 2 月 に観 測 が行 われる予 定 である。
パラ準 位 からの遷 移 周 波 数 1 11 -0 00 (1305 GHz)は装 置 の都 合 で観 測 できないの
で、オルソ準 位 からの 2 本 と HF の J =1-0 遷 移 が観 測 される予 定 である。
2-5 ν 1 , ν 3 バンドの解 析 、ν 2 バンドの測 定 と平 衡 構 造
基 底 状 態 の分 子 定 数 が決 定 された[24]ので、それらを用 いてν 1 ,ν 3 バンドの解 析
を行 った。式 (1)を各 振 動 状 態 に用 いた解 析 により決 定 された分 子 定 数 を表 2-3
17
に示 す。ここでいくつかの定 数 は基 底 状 態 のものに固 定 した。最 小 二 乗 法 におけ
る各 スペクトル線 の重 みはFT測 定 の重 みを1、レーザー測 定 の重 みを0.04とした。
各 遷 移 周 波 数 の測 定 値 と、表 2-3の分 子 定 数 での計 算 値 との差 を付 録 A2に示
す。フィットの標 準 偏 差 は0.0023 cm -1 で測 定 誤 差 0.001 cm -1 より大 きかった。ま
た遠 心 力 歪 み定 数 L KKJ と L K はν 1 状 態 と ν 3 状 態 で異 なる符 号 を持 つこと、
およびν 1 状 態 のL KKJ ( 2.14×10 -6 cm -1 ) がH 2 Oの基 底 状 態 での値 L KKJ =
0.32×10 -6 cm -1 [30]より1桁 程 度 大 きいなどの異 常 があった。これらはc-type 振 動
回 転 相 互 作 用 と考 えν 1 状 態 とν 3 状 態 間 にコリオリ項 などの相 互 作 用 項 を含 む解
析 を試 みたが、相 互 作 用 定 数 は決 定 できなかった。
これまでν 2 バンドの実 験 的 測 定 は報 告 されていない。このバンドの測 定 により、3
つの振 動 バンドのデータが揃 い、平 衡 構 造 を導 くことができるようになる。
この節 の内 容 は、2012年 J. Phys. Chem. A にて印 刷 中 である[31]。
【ν 2 バンドの実 験 】
H 2 F + イオンは図 2-1 に示 すホローカソード放 電 セル中 で、He で 5%に希 釈
した F 2 70 mTorr、H 2 330 mTorr の混 合 物 の放 電 ( 1.2 kV, 400 mA ) により生 成
した。ν 1, ν 3 バンドの測 定 とほとんど同 じ設 定 の多 重 反 射 型 セルを用 いたが、異 な
る点 は窓 板 および検 出 器 前 の集 光 レンズとして CaF 2 の代 わりに MgF 2 を用 いた。
こ れ は 1100 cm -1 以 下 の 赤 外 線 も 透 過 す る よ う に す る た め で あ る 。 分 光 器 は
Bruker IFS 120HR で、1900 cm -1 以 下 を透 過 するローパスフィルター, または波
数 領 域 1000-1543 cm -1 を透 過 するバンドパスフィルターを用 い、分 解 能 は 0.008
cm -1 であった。光 源 はグローバー灯 、ビームスプリッターは KBr, 検 出 器 として新
たに準 備 した狭 帯 域 HgCdTe 検 出 器 を用 いた。吸 収 セルと検 出 器 は分 光 器 の外
に設 置 したため、その周 りは空 気 中 にさらされるので、窒 素 ガス (1.7 気 圧 )でパー
ジ し た 。 窒 素 ガ ス を 流 し た 状 態 で 、 グ ロ ー バー 光 で 空 気 中 の 水 の 吸 収 線 を モ ニ
ターしながら窒 素 ガス置 換 の効 果 を確 かめた。
【ν 2 観 測 スペクトルと解 析 】
H 2 F + のν 2 バンド領 域 (波 長 7 μm)には良 く似 た分 子 の H 2 O のν
2
バンドが強 く
測 定 されている。本 実 験 でも H 2 O は不 純 物 として放 電 中 に存 在 し、フーリエ変 換
型 分 光 では目 的 のイオン種 との区 別 を行 う必 要 がある。そのため H 2 のみの放 電
でスペクトル測 定 し、壁 に元 々付 いていたようなものからのスペクトルと F 2 と H 2 を
混 ぜて放 電 を行 なったスペクトルを比 較 することにより H 2 O のスペクトルを除 いた。
18
図 2-11 (a)は H 2 F + イオンの ν
2
バンドの観 測 スペクトルの例 である。また過 去 に
ダイオードレーザー速 度 変 調 法 で測 定 されたスペクトル(b, 松 村 :私 信 )も参 考 に
した。図 2-10(b)は内 径 20 mm 長 さ 1.2 m のセルで NF 3 ( 45 mTorr ), H 2 (50
mTorr ), He( 4 Torr )を交 流 放 電 ( pp 200 mA)する事 により得 られた速 度 変 調 ス
ペクトルである。冷 却 には水 を用 いた。スペクトルの形 から陽 イオンであることを確
認 し、いくつかの波 長 域 で観 測 したところ、スペクトル線 は非 常 にまばらにしか検 出
できなかった。そのスペクトル線 の密 度 と出 発 物 質 から推 察 するに、観 測 されてい
る陽 イオン種 は H 2 F + であると考 えられるが、多 くのモードギャップのためダイオード
レーザーでν 2 バンドの全 ての領 域 を測 定 できなかった。本 フーリエ変 換 型 分 光 で
観 測 した図 2-11(a)のスペクトルのピーク波 数 は速 度 変 調 で観 測 した波 数 と測 定
誤 差 0.001 cm -1 内 で一 致 したので、同 じイオン種 を測 定 していると結 論 した。図 の
スペクトルは最 終 的 には 4 04 – 5 15 遷 移 に帰 属 された。
図 2-12は本 測 定 での観 測 スペクトル線 (b)を MORBID による計 算 スペクトル
(a)[7] と と も に 示 す 。 バ ン ド オ リ ジ ン の 周 波 数 を 18 cm -1 だ け 低 い 側 に ず ら す と
MORBID [7]のスペクトルパターンは測 定 スペクトルとよく合 っている事 が分 かった。
その比 較 により観 測 スペクトルの帰 属 を行 うことができ、さらに表 2-2から計 算 され
る基 底 状 態 の combination differences を用 いて帰 属 の確 認 を行 った。最 終 的 に
はν 2 状 態 の K a = 0, 1, 2, 3 を持 つ全 部 で 61 本 の遷 移 を帰 属 し、表 2-4に示 し
た。速 度 変 調 法 では観 測 された 12 本 のなかで 3 31 – 4 40 と 3 30 – 4 41 遷 移 は、フー
リエ変 換 型 分 光 では弱 くしか観 測 されなかったので、表 には速 度 変 調 法 での測 定
周 波 数 を掲 載 した。それら遷 移 の始 状 態 4 40 と 4 41 は 579 cm -1 の回 転 エネル
ギーを持 っているので、FT-IR 測 定 でのセルの温 度 -80 ℃において分 布 は非 常 に
少 ないが、速 度 変 調 法 はほとんど冷 却 せず室 温 で、尚 且 つセルの内 径 が FT-IR
実 験 より細 いので電 流 密 度 が高 くなり、エネルギーが大 きい準 位 委 からの遷 移 の
検 出 に適 していた。
最 小 二 乗 法 による解 析 では、ν 2 状 態 のいくつかの定 数 は基 底 状 態 に固 定 して、
表 2-3のような分 子 定 数 を決 定 することができた。標 準 偏 差 は 0.0017 cm -1 で、
強 い遷 移 の測 定 精 度 が 0.001 cm -1 であることを考 慮 すると妥 当 な結 果 であること
を意 味 する。ν 2 のバンドオリジン周 波 数 1370.5236 ( 67 ) cm -1 は Botschwina[3]
による予 想 周 波 数 1373 cm -1 と比 べてよい一 致 を示 した。
【分 子 構 造 】
今 回 の研 究 で H 2 F + におけるν 2 バンドの測 定 を初 めて成 功 させた。Watson A
19
reduced ハミルトニアン[14]を用 い 3 つの基 音 の振 動 状 態 での分 子 定 数 を決 定
することができた。実 験 により求 めた ,
,
から遠 心 力 歪 み定 数 の効 果 を補 正 し、
回 転 定 数 A, B, C を得 ることができる[14]。基 底 状 態 の回 転 定 数 は零 点 振 動 の
影 響 を含 むため、振 動 回 転 定 数 αが平 衡 状 態 における分 子 構 造 を計 算 するため
に必 要 である。表 2-5には補 正 済 みの回 転 定 数 とαの値 を載 せた。分 子 の中 に
は、ν
2
変 角 振 動 の分 子 定 数 が基 底 状 態 のものに比 べて大 きく異 なるものもある。
その場 合 、高 次 の振 動 回 転 定 数 γ i a , γ i b , γ i c ( i : 振 動 モード)を考 慮 することにより
平 衡 状 態 における回 転 定 数 A e , B e , C e を導 かねばならない。γ i a , γ i b , γ i c の決 定 に
は倍 音 の測 定 が必 要 になるが、H 2 F + ではスペクトルも弱 く現 実 的 でない。そこで、
類 似 分 子 H 2 O におけるγ i を利 用 することにした。ここでγ i a を入 れて回 転 定 数 は
A v = A e - α 2 a (v 2 +1/2) + γ 2 a (v 2 +1/2) 2
(2)
と表 され、右 辺 3 項 目 が 新 た に 加 わ っ た こ と に な る 。 B v も C v に関 する式 は
(2)式 の A を B または C に変 更 すれば得 られる。Watson A reduced ハミルトニア
ン[14]使 っての 2ν 1 や 2ν 3 の解 析 は報 告 されていないが、2ν 1 や 2ν 3 励 起 での回 転
定 数 の変 化 はν 2 励 起 の場 合 に比 べて小 さいので、ここではν 2 の励 起 状 態 に関 す
るγ 2 の影 響 についてのみ考 慮 した。Watson A reduced ハミルトニアンを用 いた解
析 で得 られた回 転 定 数 が H 2 O の v 2 = 1 と v 2 = 2 の状 態 について報 告 されてい
るので、それと基 底 状 態 の値 を用 いて、H 2 O 分 子 に対 して
γ 2 a = 0.6036 cm -1 , γ 2 b = - 0.008528 cm -1 , and γ 2 c = 0.00082 cm -1
を得 た。上 記 の定 数 は、v 2 = 0 と v 2 = 2 においては Matsushima ら[30,32]による
報 告 値 を、v 2 = 2 においては Flaud & Camy-Peyret[33]による値 を用 いた。これ
により、慣 性 欠 損 Δ=I c − I b −I a は-0.005 amuÅ 2 となり、γ 2 a = 0 の時 の値 -0.01
amuÅ 2 と比 べて小 さくなった。平 衡 状 態 における慣 性 欠 損 は電 子 の寄 与 のみが
含 まれるべきで、SH 2 の場 合 には 0.0001 amu Å 2 と小 さな値 になっている[34, 35]。
v 2 =0 と v 2 =1 状 態 間 の回 転 定 数 A の差 は H 2 F + では 7.78 cm -1 で、H 2 O の回 転
定 数 A の差 の 3.25 cm -1 と比 べて大 きいため、H 2 F + のγ 2 a の値 も H 2 O の値 に比
べて大 きいはずである。よってγ 2 a =0.7 ~ 0.12 cm -1 の値 が考 えられ、表 2-5で
は γ 2 a = 0.9 cm -1 の場 合 の慣 性 欠 損 を記 している。その場 合 、慣 性 欠 損 は
-0.00068 amu·Å 2 と小 さくなった。その状 態 の平 衡 構 造 は、
r e ( H-F ) = 0.9608 (6) Å, and θ e ( F-H-F )=112.2 (2)°,
誤 差 はγ 2 a =0.7 ~ 0.12 cm -1 の不 確 定 さによるものかまたは、比 較 的 大 きな慣 性
20
欠 損 が残 るような場 合 、r e とθ e を導 出 する際 の回 転 定 数 のペアの違 いから生 じるも
ので大 きくなるものを示 した。慣 性 欠 損 が小 さい場 合 はどの回 転 定 数 の組 み合 わ
せを選 んでもすでに平 衡 状 態 に達 しているのでペアの違 いで r e とθ e に差 はあまり
見 られない。測 定 から導 いた r e とθ e と理 論 計 算 と比 較 する。Bunker 等 [7]の r e は
0.96023(17) Å で、 Botschwina[3]は r e とθ e それぞれ 0.966 Å and 112.7°と報 告
している。最 近 Gutlé と Coudert[36]が 0.960290(44) Å, 112.49948(55)°としてい
る。Gutlé and Coudert は ab initio potential エネルギー曲 面 に次 の実 験 データを
含 んで、実 際 に合 うように調 整 している。
(i) Fujimori et al.の報 告 した 5 本 の純 回 転 遷 移
(ii) Schafer と Saykally によるν 1 , ν 3 バンドの振 動 回 転 線 の波 数
(iii) ν 2 バンドオリジンの振 動 数
その方 法 は最 初 Partridge と Schwenke[37]によって H 2 O 分 子 に適 用 され成 功
を収 めている。H 2 F + の場 合 、ν 1 , ν 3 バンドの J<5 の振 動 回 転 遷 移 周 波 数 が 0.014
cm -1 の誤 差 内 で予 測 できている。ν 2 バンドの場 合 は J < 5 で 0.038 cm -1 内 で測
定 周 波 数 と合 っている。
【赤 外 強 度 】
表 2-6に基 底 状 態 の共 通 の回 転 準 位 から 3 つの基 音 バンドへの振 動 回 転 遷
移 の吸 収 スペクトル線 強 度 (積 分 強 度 )と比 較 のため理 論 予 想 値 を示 す。基 底 状
態 の同 じ回 転 準 位 からの遷 移 強 度 はνμ 2 S に比 例 する。ここで ν は遷 移 周 波 数 、
μ は遷 移 モーメント、S は line strength である。同 じバンド内 でのいくつかの遷 移 で
観 測 された強 度 は S に比 例 している。ν 2 と ν 1 振 動 バンドの強 度 比 は観 測 値 とし
て I 2 /I 1 =1.80(45), そしてν 3 と ν 1 振 動 バンドの強 度 比 I 3 /I 1 =4.27(51) と得 られた。
これは MORBID による予 測 値 1.04 と 3.56 に近 い。
21
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23
表 2-1
24
表 2-2
25
Table 2 - 3
Constant
Molecular constants of the H 2 F + ion a
v 1 =1
v 3 =1
3348.7294(12)
A%
B%
ground state b
v 2 =1
3334.68847(89)
1370.52356(67)
33.8947(17)
33.22460(52)
42.41863(82)
34.535552
12.60441(18)
12.66997(12)
12.89581(15)
12.8935908
8.89639(11)
9.0731570
0.0011042(11)
0.0012840(16)
0.0010852
C%
8.88493(18)
ΔJ
0.0010494(35)
8.899671(93)
Δ JK
-0.007151(68)
-0.007449(17)
-0.012573(13)
ΔK
0.087256(59)
0.081234(77)
0.26718(26)
δ J × 10 3
0.3988(14)
δ K × 10 2
0.3448(61)
Φ J ×10 6
[0.3901] c
Φ JK ×10 6
[0.1768] c
Φ KJ ×10 4
-1.11(12)
0.4154(10)
0.3269(17)
[0.3901] c
-0.496(23)
[-0.7485] c
[-0.4837] c
φ K ×10 4
0.923(91)
0.870(13)
c
c
L K ×10 5
a
2.14(73),
-1.28(22)
0.34030
0.1768
φ JK ×10 6
L KKJ ×10
1.1649(37)
[0.1768] c
[0.1809] c
[0.5467]
0.40778
[0.1768] c
φ J ×10 6
6
0.478778(37)
0.3901
1.004(65)
L JK ×10
0.087808
[0.3901] c
Φ K ×10 3
7
-0.00740886
0.6824(34)
0.2049(59)
[-0.4837] c
[0.5467]
-0.276(72)
-0.7485
5.670(20)
0.7863
[0.1809] c
0.1809
[-0.4837] c
-0.4837
[ 0.9240] c
[0.5467]
[0.6314]
c
c
0.9240
0.5467
0.6314
0.1569(70)
cm -1 unit. Numbers in parentheses denote one standard deviation and apply to the last
digits.
b
Reference 5 .
c
Fixed to the ground state value.
26
表2-4
J’ K a ’ K c ’
Observed ν 2 band of H 2 F + (cm -1 )
J” K a ” K c ”
obs
δa
J’ K a ’ K c ’
J” K a ” K c ”
obs
δa
3 3 1
4 4 0
1189.5709b
3
3 0
b
3 3 0
4 4 1
1189.5965
-4
2 0
3 2 1
4 3 2
1198.7040
17
1 0
2 2 1
3 3 0
1220.2067
42
1 1
3 1 2
4 2 3
1231.7590
-14
2 1
2 1 2
3 2 1
1234.1930
17
3 1
6 1 6
7 0 7
1240.9280
36
3 0
5 0 5
6 1 6
1246.1621
7
1 1
4 0 4
5 1 5
1261.3573
16
4 1
5 1 5
6 0 6
1262.1099
-16
4 0
1 1 1
2 2 0
1262.2751
4
2 1
1 1 0
2 2 1
1266.6829
21
5 1
3 0 3
4 1 4
1276.3800
21
5 1
6 2 5
6 3 4
1276.5378
-4
5 2
4 1 4
5 0 5
1284.3181
-15
6 2
4 1 4
4 2 3
1286.7126
-9
3 1
3 2 1 3 3 0 1287.5640 -11
4 2
4 2 2
4 3 1
1288.8750
20
5 0
2 0 2
3 1 3
1291.9189
3
4 1
3 1 3
3 2 2
1295.6600
-17
2 2
2 1 2
2 2 1
1302.3902
10
6 0
3 1 3
4 0 4
1307.6646
5
5 1
5 0 5
5 1 4
1307.9258
6
6 1
1 0 1
2 1 2
1308.6377
-13
7 0
7 1 6
7 2 5
1311.8056
4
6 2
4 1 3
4 2 2
1319.3095
2
2 2
5 1 4
5 2 3
1319.6635
14
7 1
4 0 4
4 1 3
1322.2822
-7
2 2
0 0 0
1 1 1
1326.9849
-16
2 2
7 1 6
7 2 5
1311.8056
4
8 1
2 1 2
3 0 3
1331.8747
-3
a
4
-1
(calc-obs)x10 cm .
b
Observed with velocity modulated diode laser spectroscopy.
27
3
2
1
0
1
2
3
1
3
4
2
4
4
3
4
3
2
5
4
1
6
5
6
7
5
1
7
0
0
8
3
2
1
1
2
3
2
0
4
3
1
5
4
5
6
2
4
4
3
2
5
4
5
6
6
1
6
1
1
7
1
1
1
0
0
0
1
0
0
1
0
0
2
1
1
0
1
1
0
1
1
0
0
1
1
1
0
1
1
0
2
1
0
1
2
3
2
0
4
3
1
5
3
4
5
2
3
4
3
2
5
4
5
6
6
0
6
1
1
7
1333.0189
1340.4161
1344.9678
1403.6064
1407.7017
1414.6547
1415.5983
1421.6227
1425.1787
1439.1124
1439.3157
1439.6657
1442.0611
1453.7514
1454.7683
1455.1003
1455.7025
1461.7874
1469.6109
1474.6538
1483.2083
1483.6749
1497.9844
1503.2989
1509.2502
1510.9820
1512.8398
1515.1602
1515.1603
1528.2040
11
3
-13
25
-2
6
15
-7
-19
0
-6
-9
-12
22
-11
-23
-20
-3
-14
-10
-6
5
2
-31
-2
8
22
-24
-25
-3
Rotational constants and inertial defects of H2F+
ground
ν1
ν3
ν2
-1
A(cm )
34.53772
33.89683
33.22681
42.42120
B(cm-1)
12.88073
12.59166
12.65736
12.86155
C(cm-1)
9.07554
8.88757
8.90190
8.91064
A
2
I (amu Å )
0.488093
0.497322
0.507350
0.3973869
IB(amu Å2)
1.308748
1.338793
1.331844
1.310700
IC(amu Å2)
1.857479
1.896764
1.893713
1.891854
Δ(amu Å2)
0.060638
0.060649
0.054519
0.18376
a
-1
α (cm )
0.64089
1.31091
-6.08348a
b
-1
0.28907
0.22337
0.00212a
α (cm )
αc(cm-1)
0.18797
0.17365
0.16654a
a
Higher order vibration rotation constants γ2a =0.9 cm-1, γ2b =-0.0085 cm-1,
1
were assumed.
表2-5
28
Equilibrium
32.24688
13.14015
9.33941
0.522768
1.282910
1.804999
-0.00068
γ2c =0.00082 cm-
表2-6
Observed intensities of vibration-rotation transitions in the three bands of H2F+ and the band
intensity ratioa
ν1 band
ν2 band
b
c
d
calc
obs transitiona Sb
transition S
(i)
Transitions from 101
110-101 1.500 0.111 0.477 110-101 1.500
212-101 1.500
( I2/I1 =1.64
(ii)
Transitions from 303
212-303 1.402 0.041 0.112 414-303 2.779
414-303 2.786 0.073 0.211
( I2/I1 =1.61
(iii)
Transitions from 514
523-514 4.299 0.234 0.288 505-514 3.385
523-514 3.869
( I2/I1 =2.40
(iv)
Transitions from 221
330-221 2.442 0.681 0.363 110-221 1.500
(
I2/I1 =1.26
(v) Transitions from 312
321-312 2.058 0.054 0.480 303-312 2.798
423-312 1.918 0.047 0.350
303-312 2.798 0.080 0.527
(
I2/I1 =2.09
average ratio
I2/I1 =1.80(45)
c
calc
ν3 band
transitiona Sb
d
obs
calcc
obsd
0.040 0.297 000-101 1.000 0.100 1.317
0.039 0.366 110-101 1.990 0.199 2.928
I3/I1 =4.42
)
0.211
0.410
I3/I1 =3.70
202-303 2.964 0.298 2.450
404-303 3.916 0.391 2.807
)
0.380 0.256 413-514 4.759 0.479
0.111 0.209
I3/I1 =4.77 )
0.398 0.279
I3/I1 =4.69 )
0.296
0.478
220-221 3.316 0.330
1.440
2.30
211-312 2.662 0.267 1.915
313-312 0.587 0.059 0.462
413-312 3.731 0.374 2.530
I3/I1 =3.75 )
I3/I1 =4.27(51)
a
I1, I2, and I3 are proportional to square of dipole moments for the ν1, ν2 and ν3 bands, respectively.
Numbers in parentheses denote one standard deviation.
b
Line strength.
c
Calculated intensity by Gutlé and Coudert12.
d
Observed integrated intensity with an unit of absorbance·cm-1×10-4. The uncertainty was estimated
to be 0.31×10-5 and 0.90 ×10-5 absorbance·cm-1 for the ν2 and ν1/ν3 bands, respectively.
29
図2-1
多 重 反 射 型 セ ル を 用 い て の フーリエ変 換 型 赤 外 吸 収 分 光
Bruker IFS 120HR
H 2 F + ν 3 バンドのFTIR吸 収 スペクトル
図2-2
absorbance
0.016
220-221
111-110
0.008
321-322
0.000
3329.5
3330.0
-1
wavenumber (cm )
30
3330.5
図2-3
テラヘルツ領 域 の固 体 波 源 周 波 数 に対 するパワー
図2-4
純 回 転 遷 移 測 定 のための Waterloo 大 学 の BWO 分 光 装 置 図
31
図2-5
H 2 F + の回 転 遷 移 測 定 のための HF 生 成 部 と吸 収 セルの実 験 配 置 図
図 2-6 BWO を用 いた分 光 器 で最 初 に観 測 された H 2 F + イオンのスペクトル
32
図 2-7
BWO での H 2 F + 1 10 -1 01 遷 移 の観 測 スペクトル
図 2-8 H 2 F + の THz スペクトル観 測 のための TuFIR 装 置
33
図 2 - 9 H 2 F + 1 11 -0 00 と 3 03 -2 12 の THz 領 域 の TuFIR で の 観 測 ス ペ ク ト ル
周 波 数 変 調 法 で1次 微 分 形 で観 測 されている。
34
図 2-10 H 2 F + の回 転 エネルギー準 位 と観 測 された遷 移
(黒 :BWO, 赤 :TuFIR)
35
図 2 - 1 1 (a) H 2 F + ν 2 の フ ー リ エ 変 換 型 ス ペ ク ト ル (b) 速 度 変 調 ス ペ ク
トル
(b)
Arbitrary unit
(a)
1461.77
1461.79 cm -1
図 2-12 H 2 F + ν 2 の 観 測 ス ペ ク ト ル (b) と MORBID に よ る 計 算 ス ペ ク ト ル (a)
36
第3章
度定数
分子イオンの時間分解吸収分光と解離性再結合反応速
イオンと電 子 の解 離 性 再 結 合 反 応 の速 度 定 数 はイオンの星 間 空 間 における
存 在 量 を見 積 もる場 合 に重 要 なパラメータである。これまで時 間 分 解 赤 外 発 光 分
光 により、H 3 + と e - の再 結 合 反 応 を調 べてきたが、発 光 分 光 では H 3 + の濃 度 を測 定
することは難 しい。そこで電 子 密 度 を Langumuir プローブ法 で求 め、[H 3 + ]= [e - ]
の仮 定 により、H 3 + の濃 度 として速 度 定 数 の決 定 に利 用 した[1]。一 方 吸 収 分 光 で
は吸 収 強 度 によりイオンの存 在 量 を求 めることができる利 点 があるので、本 研 究 で
は時 間 分 解 フーリエ分 光 法 を吸 収 の時 間 変 化 に応 用 した。イオン種 として H 3 + を
用 い、H 3 + の解 離 性 再 結 合 反 応 の速 度 定 数 の測 定 を行 い、他 の測 定 と比 較 した。
また2章 で扱 った H 2 F + の反 応 へ応 用 した。
【実 験 】
図 3-1に実 験 配 置 の概 略 を示 す。H 3 + は H 2 (300 mTorr)を、H 2 F + は H 2 (330
mTorr)と He 5 %希 釈 F 2 (70 mTorr) を用 いたパルス (50 μs 400 mA p-p) ホロー
カソード放 電 することで生 成 した。セルは内 径 104 mm で、長 さ 950 mm の部 分 を
ドライアイスで冷 却 した。多 重 反 射 機 構 により実 効 光 路 長 30 m にセットし、フーリ
エ変 換 型 赤 外 分 光 器 Bruker IFS 120HR を用 い赤 外 スペクトルを得 た。吸 収 分
光 の場 合 干 渉 波 形 の中 でセンターバーストの部 分 が突 出 して強 いため、AD 変 換
時 にはセンターバーストから離 れた部 分 を 8 倍 増 幅 した後 AD 変 換 している(Gain
スイッチ)。今 回 データ処 理 系 ソフトウェアで Gain スイッチ対 応 の機 能 を新 たに付
け加 えることにより吸 収 スペクトルでの S/N 比 が約 2 倍 向 上 できた。波 数 分 解 能
は 0.04 cm -1 で 3 μs ごとに 180 μs の時 間 、吸 収 スペクトル強 度 の時 間 変 化 を測
定 した。
フーリエ分 光 器 でのデータは He-Ne レーザーの干 渉 波 形 をトリガーとして取 り
込 まれている。 サンプリングの速 さは移 動 鏡 の速 度 に依 存 して、3-40 kHz である。
本 実 験 ではその He-Ne レーザーの干 渉 波 形 を FPGA(Field Programmable
Gate Array: 米 国 Altera 社 EP1K10)に入 力 し, 干 渉 波 形 と同 期 したパルス放
電 トリガーと AD トリガーを発 生 させた。FPGA プログラミングによりパルスの継 続
時 間 を自 由 に設 定 でき, また AD トリガーを任 意 の間 隔 で複 数 回 発 生 させること
ができた。 FPGA はパーソナル・コンピューター(PC)からのスタート信 号 を受 け
取 った後 は, PC のタイミングに依 存 せずに独 自 のタイミングで動 作 できる. パルス
放 電 トリガーはトランジスタ・スイッチ HTS81(Behlke Electronic)の制 御 に用 いら
37
れ, 任 意 の幅 を持 つパルス放 電 を誘 起 する。 本 実 験 では放 電 開 始 後 0-30 点
または 0-64 点 の時 間 におけるデータを取 得 できるようにした。 すなわち各 点 間
の時 間 を 2 μsec に設 定 すれば放 電 開 始 後 60 または 128 μsec の時 間 範 囲 をカ
バーできる。 図 3-2に FPGA(Field Programmable Gate Array)で制 御 している
タイミング・チャートを示 す。連 続 スキャン方 式 の移 動 鏡 の移 動 速 度 を 10 kHz に
設 定 すると 100 μs の間 の時 間 変 化 がモニターできる。 一 般 の反 応 や緩 和 過 程
はより長 い時 間 の観 測 を要 する。 そのような場 合 は図 3-2に示 すような間 引 きサ
ンプリング(1/n サンプリングと呼 んでいる)で対 応 している。 1回 目 の掃 引 では n
個 の He-Ne 干 渉 波 形 の中 の1番 目 でパルス事 象 を誘 起 しサンプリングを行 い、
次 回 の掃 引 では2番 目 でパルス事 象 を起 こしデータ取 得 を行 う。そして n 回 のス
キャンで一 つの干 渉 波 形 が完 成 する。この方 式 により繰 り返 しが遅 い現 象 や長 い
時 間 変 化 の観 測 にも対 応 できる[2]。
AD 変 換 には Analogic 社 の ADC 4322(16 bit, 2 MHz)を用 いた.AD 変 換 器
の出 力 はパラレル入 出 力 PCI ボードを通 して, PC へ DMA 転 送 (速 度 20 MHz)
を行 った。 データ取 り込 みおよびフーリエ変 換 などの処 理 は C++プログラミング
により実 現 した。データの取 得 、保 存 、計 算 は通 常 のパソコンを用 いている。現 在
のパソコンの能 力 で、分 解 能 0.03cm -1 で 64 点 の時 間 データが得 られる。分 解 能
を 0.015 cm -1 にすれば 32 点 と時 間 の点 数 が少 なくなる。時 間 分 解 能 は AD 変
換 器 の速 度 , 検 出 器 の増 幅 器 系 の性 能 に依 存 し 0.5 μs である。
【観 測 スペクトルと解 析 】
図 3-3に時 間 分 解 吸 収 分 光 によって得 られた H 3 + のスペクトル(放 電 開 始 後
60 μsec)を示 す。放 電 部 の実 効 的 長 さ 30 m で強 い線 は約 10%の吸 収 を示 した。
パルス放 電 は 3 μsec 毎 に行 っているので、図 3-3の R(1, 0)遷 移 (2725.898 cm 1
)の吸 収 強 度 の時 間 変 化 を図 3-4に示 す。図 3-4の absorbance のピーク値 か
ら H 3 + J,K=1,0 における濃 度 を 11.56×10 9 cm -3 と見 積 もった。ここで遷 移 モーメン
トとして Miller と Tennyson の値 [3]を用 いた。
放 電 により以 下 の反 応 で H 3 + が生 成 し、放 電 が終 わると主 に電 子 との再 結 合 反
応 によって消 滅 する。
H 2 +e fast →H 2 + + e slow + e slow
H 2 + + H 2 →H 3 + + H
σ =1×10 -16 cm 2 (電 子 エネルギー 70 eV) (1)
k=2.0 × 10 -9 cm 3 s -1 ΔH= -1.65 eV
38
(2)
H 3 + + e - → H 2 (X 1 Σ +g , vJ)+ H(1s),
ΔE = 9.2 eV
(3)
→H(1s) + H(1s) + H(1s).
ΔE = 4.8 eV
(4)
H 3 + の減 衰 が再 結 合 反 応 (3), (4)によって決 まり, そのスペクトル線 強 度 が存 在 量
に比 例 するとすれば
1
1
=
+ ke t ,
+
n(H 3 )
n(H 3+ )0
(5)
が成 り立 つ. ここで n(H 3 + ) は H 3 + の密 度 , k e は再 結 合 定 数 , n(H 3 + ) 0 は初 期 密
度 で、ここでは放 電 の 切 れ た と き の H 3 + の 密 度 で あ る 。 そ の プ ロ ッ ト を 図 3
- 5 に 示 す 。 そ の 傾 き か ら =4.7×10 -7 cm 3 s -1 を得 た。この反 応 が起 こっている温
度 は観 測 した 7 本 のスペクトル線 の強 度 の Boltzmann プロットにより 209±43 K
と決 定 した。これは H 3 + 回 転 温 度 で反 応 の場 合 は衝 突 相 手 の電 子 の温 度 が効 き、
それは必 ずしも H 3 + の 温 度 と 等 し く な い が 、 近 似 的 に 同 じ と 仮 定 し た 。 本 実
験 で の 再 結 合 反 応 定 数 は 天 埜 が差 周 波 レーザー吸 収 スペクトル法 で得 た値
=2.5(1)×10 -7 cm 3 s -1 と近 い[4]。イオン・ストレージリング実 験 では図 3-6のように電
子 エネルギーを変 化 させた場 合 の値 が報 告 されている[5]。温 度 200 K では k e =
1×10 -7 cm 3 s -1 で本 実 験 値 の方 が大 きい値 が出 た。
同 じ方 法 で H 2 F + ν 3 バンドの 2 20 - 2 21 3329.617 cm -1 について強 度 の時 間 変 化
を測 定 した。星 間 空 間 での H 2 F + が検 出 できる量 存 在 しているとすれば、それは比
較 的 密 度 の低 い雲 (Diffuse cloud) と考 えられる。そこでのイオンの消 滅 過 程 は電
子 との再 結 合 反 応 が主 なので、その速 度 定 数 の大 きさは星 間 空 間 での存 在 量 に
深 く関 係 する。
図 3-7は放 電 のあと5つの時 間 での H 2 F + の吸 収 スペクトルを示 す。横 軸 を時
間 にした時 間 変 化 でのプロファイルを図 3-8に示 す。式 (5)によるプロットを図 3-
9に示 す。傾 きから k e =5.8(5)×10 -6 cm 3 s -1 と得 られた。これまで H 2 F + と電 子 の再
結 合 反 応 速 度 定 数 を実 験 的 に決 定 した報 告 はないが、本 実 験 で得 た値 は2章 で
引 用 した理 論 値 より大 きい。この値 が大 きいと低 密 度 雲 での存 在 量 は少 なくなる。
観 測 された時 間 変 化 が式 (5)で説 明 できることは、再 結 合 が主 であることを意 味 す
るが相 手 が電 子 ではなく、負 イオンである可 能 性 も残 っている。負 イオンとして考 え
られるのは F − で、一 般 に陽 イオンと負 イオンの再 結 合 は電 子 とのものり速 いことが
知 られている。しかし、F − の存 在 量 をモニターする手 段 がなかった。一 方 電 子 密 度
は Langumuir プローブ法 で求 めることができるので、その測 定 により再 結 合 の相
手 の確 認 はできるであろう。ハーシェルでの観 測 データの解 析 とともに進 めるべき
39
今 後 の課 題 である。
参考文献
[1] 川 口 , 分 光 研 究 , 57, 104-114 (2008).
[2] K. Kawaguchi, Y. Hama, and S. Nishida: J. Mol. Spectrosc. 232, 1 (2005).
[3] S. Miller, and J. Tennyson, Astrophys. J. 375, 486 (1988).
[4] T. Amano, J. Chem. Phys. 92, 6492 (1990).
[5] B. J. McCall, A. J. Huneycutt, R. J. Saykally, T. R. Geballe, N. Djuric, G. H.
Dunn, J. Semaniak, O. Novotny, A. Al-Khalili, A. Ehlerding, F. Hellberg, S.
Kalhori, A. Neau, R. Thomas, F. Osterdahl, and M. Larsson, Science, 422,
500 (2003).
40
図 3-1 時 間 分 解 フーリエ変 換 型 吸 収 分 光 FPGA(Field Programmable Gate
Array)の利 用
41
図 3-2 時 間 分 解 FT用 タイミング・チャート
42
図 3-3.
H 3 + の吸 収 スペクトル, 分 解 能 0.04 cm -1
43
Scan 回 数 20 回 3μs
図 3-4
図 3-5
44
図 3-6 イオン・ストレージリングで得 られた電 子 との解 離 性 再 結 合 反 応 定 数
45
図 3-7
46
図 3-8
図 3-9
47
第4章 宇宙における負イオン C 8 H - , C 10 H - の電波観測
晩 期 型 星 IRC+10216 はしし座 の方 向 約 500 光 年 の距 離 にある晩 期 型 星 で中
心 星 からの質 量 放 出 過 程 で様 々な分 子 、ダストが形 成 され、星 周 辺 部 では電 波
観 測 、赤 外 線 観 測 により多 くの分 子 種 が検 出 されている。炭 素 存 在 量 が比 較 的
高 く、炭 素 鎖 分 子 が豊 富 に存 在 しているのが特 徴 である。陽 イオン種 は HCO + の
み検 出 されているが、その存 在 量 は 1.5×10 11 cm -2 と非 常 に少 ない。しかしながら、
驚 くべきことに、負 イオンが最 初 に検 出 された天 体 となった。
野 辺 山 45m鏡 による 28-50 GHz での IRC+10216 におけるサーベイ観 測 [1]に
よって、ほぼ 2754 MHz の周 波 数 間 隔 を持 つ未 知 の直 線 分 子 によるスペクトル線
のシリーズが観 測 されていた。その回 転 定 数 B の大 きさが 1376.86 MHz だったこ
とから未 知 分 子 B1377 と呼 ばれていた。2000 年 に青 木 [2]は ab initio 計 算 から
C 6 H と C 6 H - の回 転 定 数 は 1394.91 MHz, 1377.14 MHz と報 告 している。これは
測 定 値 1395 MHz, 1376.86
MHz と非 常 によくあっている。C 6 H の電 子 親 和 力
3.85eV は DIBs (Diffuse Interstellar Bands:可 視 ・紫 外 ・近 赤 外 領 域 で主 に吸 収
として観 測 される星 間 未 同 定 線 )キャリアの候 補 [3]として当 時 考 えられていた C 7 の 3.25 eV より大 きい。また電 子 密 度 は暗 黒 星 雲 TMC-1 より IRC+10216 の方 が
高 いと考 えられている。だが 2000 年 の時 点 でまだ負 イオンが一 個 もスペクトル的
には知 られていなかったことと、陽 イオン HCO + が IRC+10216 では弱 いことから負
イ オ ン へ の 帰 属 に は 疑 問 が 持 た れ て い た 。 2006 年 、 McCarthy 等 [4] は 、
Ar(15%)+C 2 H 2 (85%) 混 合 物 を全 圧 力 10 mTorr 以 下 で 150 K に冷 却 し、直 流
放 電 (放 電 電 流 150mA)を行 い、C 6 H - の回 転 スペクトルを初 めて検 出 した。C 6 H - の
スペクトル線 強 度 は C 6 H と比 べて 1/20 だったが、一 時 間 の積 分 で信 号 と雑 音 と
の比 (S/N 比 )10 が得 られた。C 6 D - のスペクトルも予 想 位 置 に検 出 でき、分 子 種 の
同 定 を 確 立 し た 。 実 験 室 で の C6H- の 回 転 ス ペ ク ト ル の 解 析 に よ り 回 転 定 数
B=1376.86298(7) MHz が 得 ら れ 、 IRC+10216 で の 観 測 か ら 得 ら れ た 値
1376.8625(29) MHz と非 常 によく一 致 した。それによって、負 イオンの星 間 物 質 中
における存 在 が初 めて明 らかになった[5]。ここで C 6 H - の観 測 スペクトルを図 4-1
に示 す。その後 、実 験 室 分 光 により C 4 H - のスペクトルが測 定 され[6]、そのデータ
に基 づいて IRAM 30m 鏡 で5本 の遷 移 が IRC+10216 で検 出 された[7]。観 測 さ
れた強 度 の解 析 により回 転 励 起 温 度 T rot (C 4 H - ) = 23±2 K, カラム密 度 N(C 4 H - )
= 7.1±2.0×10 11 cm -2 が決 定 された。
負 イオンでは電 子 の結 合 エネルギーは数 eV なので、可 視 光 でたいていの負 イ
オンは解 離 する。1939 年 頃 より負 イオン H - は太 陽 など星 の opacity の起 源 と考 え
48
られている。また星 間 空 間 でも opacity の起 源 になり、その役 割 を理 解 するために
は、負 イオンの存 在 形 態 や量 についてより詳 しく知 ることが重 要 である。本 研 究 で
は IRC+10216 の周 辺 部 における負 電 荷 の形 成 形 態 、負 イオンを含 めた反 応 過
程 を理 解 するために、より長 い炭 素 鎖 負 イオン C 8 H - を検 出 し、回 転 温 度 と存 在 量
に関 する知 見 を得 ることを目 的 とした。本 章 では、45 m電 波 望 遠 鏡 による C 8 H - の
検 出 、C 10 H - の探 査 について報 告 する。
C 8 H - については 2007 年 ハーバード大 学 でのフーリエ変 換 型 マイクロ波 分 光 に
より純 回 転 遷 移 が測 定 され[6]、回 転 定 数 B = 583.34014(8) MHz, 遠 心 力 歪 み
定 数 D = 4.3(2)Hz が決 定 された。そのデータにより計 算 した遷 移 周 波 数 を 1995
年 の野 辺 山 のサーベイ観 測 結 果 と比 較 したところ、スペクトル線 の兆 候 があったの
で、野 辺 山 45m 鏡 を使 い、2007 年 5~6月 に 28~44GHz 帯 で C 8 H - の観 測 を行
った。C 8 H - の検 出 に引 き続 いて、C 10 H - のスペクトル線 を探 査 した。
4-1
野 辺 山 45m 電 波 望 遠 鏡 による観 測
野 辺 山 45m 鏡 は 1982 年 に作 られ、観 測 を開 始 してから数 多 くの分 子 を新 しく
検 出 している。アンテナ自 身 の重 さによる自 重 変 形 よって引 き起 こされる主 反 射 鏡
の焦 点 位 置 の変 化 に応 じて副 反 射 鏡 が駆 動 する機 構 や、約 600 枚 の主 鏡 パネ
ルを人 工 衛 星 から発 射 されている電 波 を利 用 して鏡 面 誤 差 を測 定 し、そのデータ
に基 づいてステッピングモーターによって 10 μm 単 位 で上 下 駆 動 し鏡 面 精 度 を高
める機 構 が施 されている。そして観 測 天 体 に対 する 45 m 望 遠 鏡 の視 線 速 度 を地
球 の自 転 や公 転 などを考 慮 して計 算 し、その速 度 による受 信 周 波 数 の変 化 を計
算 し、常 に目 的 の周 波 数 で観 測 が続 けられるように周 波 数 トラッキングを行 ってい
る。
観 測 の大 まかな流 れを図 4-2に示 す。45m のアンテナで集 められた電 波 はい
くつかの鏡 によって受 信 機 へと伝 送 される。宇 宙 からの電 波 は微 弱 なため非 常 に
感 度 がよく雑 音 の少 ない検 出 器 、増 幅 器 が必 要 で、22 GHz から 115 GHz までの
周 波 数 帯 域 で観 測 目 的 にあった受 信 機 を利 用 して観 測 を行 う。受 信 する周 波 数
によって 2 種 類 の方 法 がすなわち、(i)受 信 した電 波 RF (Radio Frequency)を直
接 増 幅 させるものと、(ii)天 体 からの信 号 に周 波 数 の安 定 した電 波 を混 ぜることで
ビート信 号 (差 の周 波 数 )を発 生 させることにより信 号 の周 波 数 を変 換 し取 り扱 い易
い低 い周 波 数 IF (Intermediate Frequency)に変 換 (ミキサーと呼 ばれる素 子 を利
用 )した後 に増 幅 するものがある。(i)の方 法 は 40 GHz 以 下 で用 いられ、RF 信 号
を 20 K に冷 却 された HEMT (High Electron Mobility Transistor)アンプを用 いて
増 幅 される。(ii)の方 法 は RF が 40 GHz 以 上 で用 いられる。周 波 数 が高 く RF を
49
直 接 増 幅 できる低 雑 音 のアンプを作 るのが難 しいので、RF 信 号 と局 部 発 信 信 号
(ローカル, LO)を 4 K に冷 却 した超 伝 導 SIS ミキサーに導 入 し、取 り扱 いやすい
周 波 数 に変 換 した後 、増 幅 させる。アンテナから来 た RF 信 号 はホーンを通 ってア
イソレータを通 り必 要 な信 号 に分 離 するためのリングフィルタで LO と一 緒 になって
ミキサーに導 入 される。LO は観 測 する周 波 数 を決 める大 切 な信 号 なのでフェイズ
ロックループを使 って周 波 数 がずれていかないようにフィードバックをかけ周 波 数 を
安 定 化 する。ミキサーで 1 次 IF 信 号 (8.8~10.8GHz)に周 波 数 変 換 された信 号 は
さらに冷 却 されたアイソレータとアンプを通 り増 幅 されデュワーの外 へと出 る。外 で
さらにミキサーを通 り 2 次 IF 信 号 (5~7 GHz)に周 波 数 変 換 され、その後 分 光 計
で検 出 できる周 波 数 帯 域 幅 を持 つ信 号 に変 換 され(フィルタ、ミキサーでの周 波
数 変 換 、常 温 アンプでの増 幅 )、観 測 棟 の分 光 計 に伝 送 される。45 m 鏡 の分 光
計 には主 に音 響 光 学 分 光 計 AOS (Acousto-Optical-Spectrometer)が利 用 されて
きたが、最 近 自 己 相 関 をとりその後 フーリエ変 換 してスペクトルを得 る自 己 相 関 型
の分 光 計 も使 用 されている。分 子 雲 などの内 部 の速 度 構 造 を詳 細 に調 べるような
観 測 に 適 し た 帯 域 幅 が 狭 く 周 波 数 分 解 能 が 高 い 分 光 計 ( AOS-H : 分 解 能 37
kHz)と系 外 銀 河 のように輝 線 幅 の広 い天 体 を観 測 するのに適 した分 光 計 (AOSW:分 解 能 250 k Hz)と更 に線 幅 の広 い銀 河 の観 測 や高 い周 波 数 での観 測 に適
した分 光 計 (AOS-U:分 解 能 500 kHz)がある。AOS の特 徴 は帯 域 幅 とチャンネル
数 を非 常 に多 く取 れることである。増 幅 された IF 信 号 は、ピエゾ素 子 で超 音 波 信
号 に変 換 され、音 響 光 学 素 子 に疎 密 波 を発 生 させる。そこにレーザー光 を入 射 す
ると超 音 波 の疎 密 波 のパターンによってレーザー光 は回 折 されて、アレイ検 出 器
で1次 回 折 光 が検 出 される。入 射 の電 波 周 波 数 により超 音 波 の疎 密 波 のパターン
が異 なり、回 折 されたレーザー光 はアレイ検 出 器 の異 なる位 置 に入 り、その情 報 は
スペクトルとして計 算 機 に記 録 される。同 時 に8台 の AOS-H, AOS-W を利 用 でき
る。しかしながら HEMT 受 信 機 を用 いた観 測 では配 線 の都 合 で4台 の AOS-W し
か用 いることができなかった。
<ポインティング>
本 観 測 前 、観 測 途 中 に行 い、アンテナの指 向 性 をチェックする。位 置 が精 度 よ
く求 められている電 波 源 にアンテナを向 け方 位 角 仰 角 方 向 にそれぞれ 3 点 の強
度 を測 定 する。その結 果 をガウス関 数 でフィッティングしてそれぞれのピーク位 置 を
求 める。アンテナが正 しい方 向 を向 いていれば中 心 にピークがくる。ポインティング
がずれているようであれば測 定 で得 られたずれの分 だけアンテナ位 置 に補 正 を加
えピークが中 心 にくるようにする。風 があるなし、向 きの変 化 、また気 温 の変 化 など
にも影 響 されるので、一 定 時 間 毎 に行 う必 要 がある。IRC+10216 の観 測 ではミラ
50
型 変 光 星 R-Leo の SiO メーザー線 を用 い、2 時 間 ごとにポインティングを行 った。
観 測 位 置 はα 1950 =9 h 45 m 15”, δ 1950 =13°30’45”であった。
<電 波 強 度 の較 正 >
電 波 を吸 収 する吸 収 材 を受 信 機 のホーンの前 に挿 入 し、ほぼ黒 体 とみなせる
吸 収 材 を見 た時 の受 信 電 波 強 度 の強 さを電 波 強 度 標 準 として使 って、スペクトル
線 の強 度 較 正 を行 った。
4-2 C 8 H - の観 測 スペクトルと解 析
C 8 H - の観 測 は、20 GHz 帯 に HEMT 受 信 機 を用 い、30 GHz 帯 以 上 に SIS 受
信 機 を用 いた。観 測 スペクトルを図 4-3に示 す。5本 のスペクトル線 が予 想 周 波
数 に観 測 された。スペクトルは速 度 表 示 になっていて、5 本 の遷 移 が同 じ速 度 軸
にあり、同 じ分 子 からなるスペクトルであることが分 かる。検 出 された各 スペクトル線
について表 1にまとめる。
スペクトル線 の幅 で、実 験 室 などで見 られる圧 力 幅 (pressure broadening)は星
間 空 間 の密 度 が非 常 に低 い(10 4 -10 5 /cm 3 )ので通 常 は問 題 にならない程 小 さい。
星 間 空 間 でスペクトル線 の形 を決 めるのは一 般 的 にガスの熱 運 動 、雲 の収 縮 、膨
張 ないしは回 転 運 動 、雲 の内 部 の乱 流 運 動 などによるドップラー効 果 である。熱
運 動 の場 合 [8]、ガウス型 で表 され、その線 幅 は半 値 全 幅 で
Δν = 7.15 × 10−7 ν 0
T
M
(1)
で与 えられる。ここでν 0 は中 心 周 波 数 、M は amu 単 位 での分 子 量 である。
観 測 周 波 数 が 30 GHz で、温 度 が T=30 K の場 合 、C 8 H - では熱 運 動 による幅
は 0.012 MHz と予 想 される。実 際 観 測 される幅 は 2.6 MHz で中 心 星 からの物 質
が周 辺 に放 出 される速 度 30 km/s のドップラー幅 に対 応 している。このような場 合 、
一 般 的 に線 幅 を周 波 数 単 位 でなく、速 度 の単 位 で表 すほうが便 利 である。その半
値 全 幅 Δν, Δv は以 下 のように関 係 している。
Δv =
c
ν
Δν
Δν =
ν
c
Δv
(2)
ここで c は光 速 である。
ス ペ ク ト ル 線 の 強 度 解 析 に お い て 、 LTE 近 似 (local thermodynamic
equilibrium)を適 用 すると、ピーク強 度 T r (輝 度 温 度 )は、
T r = { J ( T ex ) - J ( T b )}{1 - exp(- τ )}
(3)
と与 えられる[8]。ここで J ( T )= h ν/ k B {exp( h ν/ kT ) - 1} , T b は宇 宙 背 景 輻 射 温
51
度 (2.7 K), T ex は分 子 の回 転 励 起 温 度 で、 k B はボルツマン定 数 である。黒 体 放
射 を表 すプランク関 数 は h ν<< k B T ex の場 合 、輝 度 (放 射 エネルギー)と黒 体
の熱 力 学 的 温 度 が比 例 するので輝 度 を温 度 で表 している。宇 宙 背 景 放 射 温 度
T b より雲 の温 度 が高 い場 合 、発 光 としてスペクトルが観 測 される。τは光 学 的 厚
みτ= k L ( k : 吸 収 係 数 、 L : 光 路 長 )で、分 子 雲 の奥 行 き方 向 の大 きさは分 か
らないので、カラム密 度 ( N : cm -2 単 位 )を用 いると以 下 のように表 される[8]。
τ= 8π3 μ 2 SN
exp(− E 2 / k BT )
{exp(hν / k BT ) − 1}
3h⊿VU
(4)
ここでνは遷 移 周 波 数 、 T は分 子 の回 転 励 起 温 度 T ex [K]、 S はライン強 度 、μは
永 久 双 極 子 モーメント[Debye]、 E 2 は発 光 の始 状 態 (上 の状 態 )のエネルギー、⊿
V は 線 幅 [km s -1 ]、 U は分 配 関 数 である。
輝 度 温 度 T r と実 際 観 測 されるアンテナ温 度 T a * の関 係 は
Ta = TBηη BD
*
(5)
で与 えられる。ここでηは望 遠 鏡 の効 率 で、beam filling factor η BD は
η BD =
θs2
θ s 2 + θ BM 2
θ Bm = 1.12
(6)
λ 180
∗
× 3600 ″
D π
(7)
θ BM はアンテナのビーム幅 で、θ S は分 子 分 布 の大 きさである。 λ は観 測 波 長 、 D
は望 遠 鏡 の口 径 である。
光 学 的 に薄 い場 合 τ <<1 、 T r = {J(T ex ) - J(T b )}τ と近 似 され、スペクトル線
強 度 は τ すなわち分 子 存 在 量 N に比 例 する。その場 合 、
log(
E
3kW
N
1
) = log( ) − 2 log10 e
3
2
8πνSμ
U
kB
Tex
(8)
が成 り立 ち、回 転 エネルギーを横 軸 、スペクトル線 強 度 W( 積 分 強 度 ) の対 数 を縦
軸 にプロットすれば、その傾 きより回 転 の励 起 温 度 T ex が得 られる。得 られた温 度
を用 いて分 配 関 数 を計 算 すれば、切 片 よりカラム密 度 N が決 定 される。
解 析 においては (6) 式 におけるθ S を見 積 もる必 要 がある。スペクトル線 が強 け
れば分 子 分 布 の大 きさθ S を電 波 干 渉 計 などでの観 測 により決 定 することができ
るが、この度 のように弱 い場 合 は、分 布 が知 られている他 の分 子 のスペクトル線 と
形 を比 較 して推 定 せざるをえない。 C 8 H - に対 しては C 6 H - の解 析 に用 いた大 きさ
(30”) より少 し大 きな値 33” を仮 定 した。
52
式 (8) を用 いて、横 軸 に C 8 H - の回 転 エネルギー、縦 軸 に強 度 の対 数 をとると図 4
- 4の よ う に な っ た。 そ の 傾 き か ら T rot (C 8 H - ) = 17 ± 2 K, 切 片 か ら カ ラ ム 密 度
N(C 8 H - ) = 2.6 ± 0.4 × 10 12 cm -2 を 得 た 。 同 時 期 に Remijan 等 [9] に よ っ て
IRC+10216 での C 8 H - がアメリカの GBT 100 m 望 遠 鏡 で観 測 された。彼 らは
T rot (C 8 H - ) = 34 ± 2 K, カラム密 度 N(C 8 H - ) = 2.1 × 10 12 cm -2 と報 告 していて、回
転 温 度 が高 く見 積 もられているが、カラム密 度 は我 々の値 と一 致 している。
比 較 のために C 8 H ラジカルの IRC+10216 での存 在 量 を野 辺 山 45m望 遠 鏡 に
よる観 測 データから導 いた。表 4-2は用 いたデータである。
4-3 IRC+10216 における C n H - 負 イオンの存 在 量 と生 成 機 構
表 4-3に C n H ラジカルとその負 イオンの電 子 親 和 力 、双 極 子 モーメント、
IRC+10216 における存 在 量 をまとめた。 C 2 H - は C 2 H の豊 富 な存 在 量 にもかかわ
らず検 出 されていない。
負 イオンの生 成 機 構 として下 記 の 3 つの反 応 [7] [10-12] が考 えられる。
(i) C n H への放 射 性 電 子 付 着 、
C n H + e- → (C n H - ) *
(9)
(C n H - ) * → C n H + e
(10)
(CnH - ) * → C n H - +hν
(11)
(C n H - ) * は 、 (10) の autodetachment 過 程 により電 子 は離 れていくか、(11)の電
磁 波 の放 射 が起 これば安 定 化 により負 イオンを生 成 する。振 動 モードが多 い大 き
な分 子 の場 合 、(C n H - ) * 余 剰 のエネルギーをすばやく分 散 できるので、負 イオンが
生 成 しやすいと考 えられる。それゆえ n が増 えるにしたがって負 イオンの相 対 的 割
合 が増 加 している。
(ii) C n H への電 荷 移 動 、
CnH + X- → CnH- + X
(12)
これは電 子 親 和 力 が小 さな分 子 から大 きな分 子 に電 子 が移 動 する反 応 で、表 2か
ら C 6 H の生 成 の場 合 C 4 H からの移 動 が考 えられる。また X - には H - , S - , C - , O - ,
OH - , CCH - , ・・・が該 当 するが IRC+10216 ではこれら X - は期 待 されるほどの存 在
量 がない。 (i) と比 べて寄 与 は小 さいと予 想 される。
(iii) HC n X への解 離 性 付 着
HC n X + e → C n H - + X
(13)
ここでは C-X の結 合 エネルギーが C n H の電 子 親 和 力 より小 さいことが要 請 される。
HC 6 Mg などと電 子 との反 応 が考 えられるが、小 さな HCCMg も検 出 されていない
53
ので HC 6 Mg の存 在 量 は多 くないと推 定 されるので寄 与 は小 さい。
(i) に よ る 生 成 反 応 速 度 を k ratt と す る 。 負 イ オ ン の 壊 れ る 過 程 は Associative
attachment
A - + H → AH + e
k aa
(14)
または中 性 化
A - + B + → products
k neu
が考 えられる。ここで k aa 〜 10
-9
(15)
3
-7
3
cm /s, k neu 〜 10 cm /s の値 を持 つ。光 分 解 で
も負 イオンは壊 されるが IRC+10216 周 辺 部 は固 体 微 粒 子 (ダスト、塵 )に覆 われ
ているので可 視 光 、紫 外 光 による解 離 過 程 は無 視 する。負 イオンとその親 分 子 と
の存 在 量 比 は次 のように与 えられる。
kratt [e]
[ A− ]
=
[ A] kaa [ H ] + kneu [ B + ]
(16)
ここで各 分 子 、原 子 、電 子 の存 在 量 に典 型 的 な次 のような関 係 を仮 定 する。
[e]
[B+ ]
=
= 10−7 [13],
[H 2 ] [H 2 ]
[H]
= 10−4 [14]
[H 2 ]
式 (16) に観 測 値 を代 入 すると、 k ratt (C 8 H)=1.3×10 -7 cm 3 /s が得 られた。この値 は
C 4 H, C 6 H の値 2 x 10 -10 , 5 x 10 -8 cm 3 /s に比 べて予 想 どおり大 きくなっている。
4-4
C 10 H - の探 査
C 4 H - , C 6 H - , C 8 H - の 観 測 に よ り 、 負 イ オ ン と そ の 親 分 子 の 存 在 量 比 は [C 4 H ]/[C 4 H]= 0.00024, [C 6 H - ]/[C 6 H]=0.086, [C 8 H - ]/[C 8 H]=0.37 と大 きな分 子 イオン
ほど相 対 存 在 量 が増 加 していることが分 かった。図 4-6は炭 素 鎖 分 子 で炭 素 数
n が増 えていった時 の C n H と C n H - の存 在 量 をまとめた図 である。 n が増 えるにつ
れ C n H と C n H - の比 が 1 に近 くなっていることが分 かる。電 子 付 着 の確 率 は大 きな
分 子 ほど高 くなるので、これは負 イオンが主 に分 子 への電 子 付 着 により生 成 してい
ることを意 味 している。これにより C 10 H - と C 10 H の存 在 量 比 は C 8 H の場 合 より1に
近 づくかまたは C 10 H - の方 が多 くなることが予 想 される。実 際 Remijan 等 の計 算 で
は、 C 10 H の存 在 量 は 5.0×10 11 cm -2 に比 べて、 C 10 H - では 1.5×10 12 cm -2 が予 想 さ
れている [9] 。ただし C n H - を生 成 するために必 要 となる C 2 H 2 の存 在 量 に依 存 し、
上 記 の値 は C 2 H 2 の存 在 量 として 1×10 -5 cm -3 を仮 定 した場 合 の予 想 で、観 測 的
54
に確 認 する必 要 がある。 Remijan 等 は C 10 H の探 査 を IRC+10216 で GBT を使 っ
て行 ったが、検 出 に至 っていない。しかしながら C 10 H - と C 10 H の双 極 子 モーメント
の大 きさ、分 配 関 数 を考 えると、 C 10 H - の双 極 子 モーメントは 14 D と非 常 に大 きく
また 1 Σ 電 子 状 態 のため分 配 関 数 も C 10 H ラジカルに比 べて小 さくなり C 10 H - の方
がむしろ検 出 しやすいと考 えられる。本 研 究 では45 m 鏡 を用 いてその探 査 を行 っ
た。
実 験 室 では C 10 H - の回 転 スペクトルは測 定 されていないが、他 の分 子 からの補
間 により B=299.83(3) MHz と見 積 もられている。一 方 Botschwina [15]による ab
initio 計 算 で 得 ら れ た C-C 結 合 距 離 か ら 計 算 し た C 10 H - の 回 転 定 数 は
299.423±0.6 MHz である(図 4-5)。その回 転 定 数 の誤 差 は実 際 の遷 移 周 波 数
の誤 差 には 56 MHz となって反 映 する。AOS-W 分 光 器 は一 台 で 250 MHz の範
囲 を測 定 できるので、もし C 10 H - の存 在 量 が高 いならその範 囲 内 にスペクトル線 が
検 出 できるはずである。直 線 状 分 子 の回 転 量 子 数 J が異 なる回 転 スペクトルはほ
ぼ整 数 比 で現 れる。それゆえ別 の AOS-W 分 光 器 に異 なる回 転 遷 移 を割 り当 て、
比 例 関 係 に合 うスペクトル線 を見 いだすことで C 10 H - の検 出 を目 指 した。
図 4 - 7 に示 す4本 のスペクトル線 の領 域 を観 測 した。赤 線 は C 10 H - が回 転 定
数 B=299.81 MHz を持 つと仮 定 した場 合 、スペクトル線 予 想 される位 置 である。図
から J=47-46, J=48-47, J=49-48 は比 例 関 係 にある周 波 数 が観 測 され、最 小 二 乗
法 により回 転 定 数 B=299.83MHz (D=8.74×10 -7 に固 定 [19]) を得 た。同 じ分 子 に
よるスペクトル線 なら同 じ速 度 のところにスペクトルがくるはずであるが J=46-45 遷
移 は予 想 値 に観 測 されていない。このことは J=47-46, 48-47, 49-48 に相 当 する 3
本 は偶 然 合 っていて C 10 H - ではないと考 えられる。
55
参考文献
[1] K. Kawaguchi, Y. Kasai, S. Ishikawa, and N. Kaifu, Publ. Astron. Soc. Japan 47, 853 (1995).
[2] K. Aoki, Chem. Phys. Letters 323, 55 (2000).
[3] M.Tulej, D. A. Kirkwood, M. Pachkov, and J.P. Maier, Astrophys. J. 506, 69 (1998).
[4] M. C. McCarthy, C. A. Gottlieb, H. Gupta, and P. Thaddeus, Astrophys. J. 652,141 (2006).
[5] Y. Kasai, E. Kagi, and K. Kawaguchi, Astrophys. J. 661, 61(2007).
[6] H. Gupta, S. Brunken, F. Tamassia, C. A. Gottlieb, M. C. McCarthy, and P. Thaddeus, Astrophys. J.
655, 57 (2007).
[7] J. Cernicharo, M. Guelin, M. Agundez, K. Kawaguchi, M. C. McCarthy, and P. Thaddeus, Astron.
Astrophys. 467, 37(2007).
[8] K. Rohlfs, and T. L. Wilson, “Tools of Radio Astronomy”, Springer, (2003).
[9] A. J. Remijan, J. M. Hollis, F. J. Lovas, M. A. Cordiner, T. J. Millar, A. J. Markwick-Kemper, and P.
R. Jewell, Astrophys. J. 664, 47 (2007).
[10] E. Herbst, 1981, Nature, 289, 656 (1981).
[11] S. Petrie, and E. Herbst, Astrophys. J, 491, 210 (1997).
[12] T. J. Millar, E. Herbst, and R. P. A. Bettens, MNRAS, 316, 195 (2000).
[13] A. E. Glassgold, G. A. Mamon, A. Omont, and R. Lucas, Astron. Astrophys. 180, 183 (1987).
[14] A. E. Glassgold, AR Astron. Astrophys. 34, 241 (1996).
[15] P. Botschwina, R. Oswald, Int. J. Mass Spectro. 277, 180 (2008).
56
表4-1 IRC+102169 における C8H-の観測データ
Ta*の積分
遷移
J'-J"
ν[MHz]
強度
Trの積分強度
[K*kms-1]
[K*kms-1]
24-23
28000.1
0.167(25)
0.792
25-24
29166.7
0.194(50)
0.867
31-30
36166.6
0.489(49)
1.68*
34-33
39666.5
0.171(38)
0.536
38-37
44332.9
0.200(47)
0.544
Trの積分値は source size を 33"で計算
*
重なりのため Boltzmann プロットには含めなかった
57
表4-2
IRC+102169 におけ
る C8H の観測データ
遷移 J'-J"
ν[MHz]
Ta*の積分
Tb の積分強
強度
度
[K*kms-1]
[K*kms-1]
26.5-25.5
31093.2
0.134(37)
0.562
27.5-26.5
32266.4
0.104(16)
0.414
30.5-29.5
35786.4
0.151(32)
0.526
31.5-30.5
36959.7
0.200(50)
0.669
34.5-33.5
40480.5
0.213(43)
0.640
35.5-34.5
41652.9
0.250(44)
0.728
42.5-41.5
49865.6
0.280(67)
0.716
Tb の積分値は source size を
33"で計算
58
表4-3
(CnH)
Electron affinity(EA) of CnH, dipole moment (μ) of CnH, and column density(N)
n=2
4
6
8
10
EA of CnH
2.96
3.56
3.81
3.97
3.9
(eV)
μ of CnH
3.4
5.9
8.2
10.4
12.7
(Debye)
N of CnH
5000
2980
N
<0.4
of CnH
Ratioa
<1/12500
0.71
1/4200
80
7.0
6.9
2.6
1/12
1/2.7
a[anion]/[neutral]存在量比
59
(×1012 cm-2)
(×1012 cm-2)
図4-1
野辺山45m鏡で観測された C6H−と C6H ラジカルのスペクトル
0.04
0.03
C 6 H-
TA*(K)
0.02
0.01
0.00
-0.01
-0.02
49.50
49.52
49.54
49.56
49.58
Frequency (GHz)
60
49.60
49.62
49.64
図4-2 電波望遠鏡での観測の仕組み
NRO
61
図4-3
晩期型星 IRC+10216 における C8H−のスペクトル
62
図4-4
IRC+10216 での C8H−の Boltzmann plot
回転エネルギー
図4-5
CnH−負イオンの構造
Botschwina による ab initio 計算
(Ref.15 )
C8H- B = 582.573 MHz
C10H- B = 299.423 MHz
63
図4-6
CnH− と CnH の存在量(IRC+10216)
64
図4-7 IRC+10216 での C10H-の探査 赤線は回転定数 B=299.81 MHz を持
つ分子の予想周波数位置
Ta*[mK]
0.01
J=46-45
27.5836GHz
0.00
0.01
J=47-46
28.1832GHz
0.00
0.01
J=48-47
28.7828GHz
0.00
0.01
29.3824GHz
J=49-48
0.00
-300-250-200-150-100 -50 0
50 100 150 200 250 300
図1 IRC+10216 におけるスペクトル
VLSR = -26km/s
65
第5章
NO 3 ラジカルν 4 バンドのフーリエ変換型分光
NO 3 ラジカルの存 在 は古 くから知 られていて、その吸 収 バンドは初 め気 相 にて
Johes と Wulf によって 480 ~ 665 nm の領 域 に 1937 年 に確 認 された [1] 。その後
Ramsay([2],1962 年 ) や Graham と Johnston([3], 1978 年 ) によって研 究 がなさ
れ、この可 視 領 域 における電 子 励 起 状 態 の強 い吸 収 バンドは基 底 状 態 X 2 A 2 ’
% 、以 下 電 子 状 態 の順 序 を示 す表 記 A, B も同 様 )から B 2 E’ 電 子
(正 しくは X X
状 態 への遷 移 であると帰 属 されているが、いまだに回 転 構 造 については説 明 され
ていない。 B 2 E’- X 2 A 2 ’ 電 子 遷 移 においては 1980 年 代 に石 渡 等 による LIF
(Laser induced fluorescence) 分 光 法 で研 究 が行 われ、基 底 状 態 の構 造 が D 3h と
推 定 され、電 子 基 底 状 態 における 3 つの振 動 モードの振 動 数 ν 1 = 1060 cm -1
(a 1 ’:symmetric NO stretch), ν 3 = 1480 cm -1 (e’:degenerate NO stretch), ν 4 = 380
cm -1 (e’:degenerate ONO distortion) が報 告 されている [4] 。その同 時 期 に Nelson
らによる蛍 光 スペクトル分 光 法 による測 定 では、石 渡 らとほぼ同 じスペクトルデータ
が得 られている。しかし彼 らは基 底 状 態 を C 2v であると推 定 していた [5] 。その後 石
渡 らは NO 3 ラジカルの 1492 cm -1 付 近 のバンドを赤 外 ダイオードレーザー分 光 法
で観 測 し、回 転 構 造 の解 析 から電 子 基 底 状 態 は平 面 D 3h 構 造 を持 つ 2 A 2 ’ 対 称
種 であると断 定 した [6] 。すなわち、基 底 状 態 の K=0 では回 転 量 子 数 N が奇 数 の
準 位 のみが存 在 していた。 1986 年 には Friedl と Sander らによってフーリエ変 換
型 吸 収 分 光 による ν 2 バンドの測 定 ・解 析 が行 われ、そのバンドオリジン周 波 数 が
762.327 cm -1 と報 告 された [7] 。この報 告 も電 子 基 底 状 態 の対 称 性 が D 3h を支 持
するものであった。図 5-1 に4つの基 準 振 動 のモードを示 す。
NO 3 ラジカルの電 子 状 態 エネルギーは、基 底 電 子 状 態 X 2 A 2 ’ の付 近 に B 2 E”
より低 く A 2 E” 電 子 状 態 の存 在 が知 られている。基 底 状 態 から A 2 E” へのバンドは、
近 赤 外 の領 域 で 1991 年 に Weaver らによって発 見 され [8] 、 Hirota 等 によりダイ
オードレーザー分 光 により高 分 解 能 スペクトルが観 測 された [9] 。またその状 態 に
関 する NO 3 − の光 電 子 スペクトルの研 究 が 2002 年 に Wang 等 によって報 告 され
ている [10] 。 2000 年 代 までの多 くの分 光 研 究 の結 果 、基 底 状 態 の基 準 振 動 は ν 1
= 1060 cm -1 , ν 2 = 762 cm -1 , ν 3 = 1492 cm -1 , ν 4 = 365 cm -1 とされてきた。
2007 年 に Stanton が 1492 cm -1 に存 在 する振 動 状 態 は ν 3 ではなく ν 1 +ν 4 であ
るとする帰 属 を提 案 した [11] 。そこでは ν 3 は 1000 cm -1 以 下 になると予 想 されてい
る。続 いて、 2008 年 には Jacox と Thompson による 700 ~ 3000 cm -1 領 域 での
低 温 Ne マトリクス中 の
14
NO 3 とその同 位 体 種 の赤 外 スペクトルの測 定 ・解 析 結 果
が報 告 された [12] 。それによると ν 3 +ν 4 = 1492 cm -1 に、 ν 1 +ν 4 = 1412.5 cm -1 に再
帰 属 された。この値 と気 相 の振 動 数 とを比 べると差 は 2.5 cm -1 以 下 で一 致 してい
66
た。また Beckers 等 の Ne マトリクス法 (Ne-matrix isolation observation) では ν 4
基 音 バンドが 365 cm -1 に測 定 された [13] 。 2009 年 に Stanton による理 論 計 算 が
なされ、 ν 3 バンドは 1067 cm -1 に存 在 し、この ν 3 バンドの強 度 は 1492 cm -1 バンド
の約 600 分 の 1 の弱 い強 度 を持 つと予 想 された [14] 。この ν 3 基 音 の強 度 の弱 さ
は、 Ne マトリクス法 また気 相 赤 外 フーリエ分 光 で ν 3 基 音 が観 測 されなかった理 由
を説 明 していると考 えられる。 ν 3 基 音 が弱 いのは振 電 相 互 作 用 により ν 3 状 態 が励
起 E’ 電 子 状 態 の性 質 をもち、その結 果 電 子 遷 移 モーメントが生 じ、それと振 動 の
遷 移 モーメントが打 ち消 し合 っているとして理 解 される。もしそうであれば、ホットバ
ンドではその打 ち消 し合 いが変 化 して検 出 できるようになる可 能 性 があると考 え、
2011 年 我 々はフーリエ変 換 型 分 光 によりその検 出 を試 みたところ、 ν 4 状 態 からの
ν 3 ホットバンド (ν 3 +ν 4 -ν 4 ) を観 測 できた [15] 。そこでは E’-E’ バンドに加 えて、 A’-E’
バンドも観 測 され、 Jacox 等 の帰 属 を支 持 した結 果 となった。その ν 3 ホットバンドの
測 定 から ν 4 状 態 の分 子 定 数 が決 定 された。しかしながら回 転 定 数 C は決 定 でき
なかったので、慣 性 欠 損 から予 想 される値 に固 定 して解 析 をしていた。本 研 究 で
は NO 3 ラジカルの基 音 ν 4 バンドの赤 外 吸 収 スペクトルを気 相 では初 めて測 定 す
ることができ、回 転 定 数 C の決 定 と慣 性 欠 損 について知 見 を得 たので報 告 する。
図 5-2に本 研 究 での測 定 に関 係 するエネルギー図 を示 す。
【実 験 】
図 5-3に実 験 配 置 を示 す。 NO 3 ラジカルは , F 2 / He 混 合 物 (F 2 : 20 mTorr,
He : 403 mTorr) のマイクロ波 放 電 により生 成 した F 原 子 と , HNO 3 (70 mTorr) の反
応 により得 た。そして , 生 成 した NO 3 ラジカルを多 重 反 射 型 吸 収 セルに導 入 し ,
フーリエ変 換 型 赤 外 分 光 器 BRUKER IFS120HR を用 いて赤 外 吸 収 スペクトルを
測 定 した。ビームスプリッターにマイラー 6 μm 、検 出 器 には Si ボロメーターを用 い、
分 解 能 0.006 cm -1 で測 定 した。 ν 4 バンドオリジン 365 cm -1 より高 波 数 領 域 は光 源
のパワーが弱 くスペクトル線 は検 出 できなかった。検 出 器 応 答 からスキャナーは 10
kHz の He-Ne フリンジ周 波 数 を与 える速 度 が最 もよい S/N (振 動 対 雑 音 )比 で観
測 できた(通 常 は InSb, HgCdTe 検 出 器 を用 い 40 kHz で測 定 )。測 定 中 は別 の
He-Ne レーザーを用 いて NO 3 ラジカルの生 成 をモニターし ( 光 路 長 3 m) 、常 時
9 ~ 10 % 程 度 の吸 収 があるように HNO 3 の流 量 を調 整 した。図 4-4に He-Ne
レーザー光 の吸 収 の様 子 を示 す。フーリエ変 換 型 分 光 では S/N 比 の向 上 のため
に長 時 間 積 算 が必 要 である。その間 ラジカル種 のように化 学 反 応 中 間 体 の濃 度
を測 定 の間 (1-2時 間 )一 定 に保 つことは簡 単 ではない。本 システムでは He-Ne
レーザー光 の吸 収 を利 用 して、ラジカル生 成 をリアルタイムでモニターするようにし
67
たことが特 徴 で、以 前 検 出 できなかったバンドの測 定 ができるようになった。赤 外 光
に対 しては White 型 多 重 反 射 機 構 に T 形 ミラーを用 いて実 効 光 路 長 42 m を実
現 し感 度 を向 上 できた。ボロメーター冷 却 用 液 体 ヘリウムデュワーは測 定 開 始 前
に 30 分 程 度 真 空 引 きすることにより 1.4 K まで冷 やすことができ、 4.2 K での実
験 に比 べて高 感 度 な測 定 が可 能 になりこれも S/N 比 の向 上 に貢 献 した。その排
気 系 を図 5-5に示 す。スペクトル線 のピーク波 数 は反 応 中 に生 成 した水 のスペク
トル線 で較 正 した。その波 数 は2章 の文 献 [13] を用 いた。測 定 精 度 は 0.001 cm -1
であった。
15
NO 3 ラジカルは硝 酸 H 15 NO 3 とフッ素 の反 応 により生 成 しスペクトルを測 定 で
きた。 15 N 置 換 硝 酸 は文 献 [16] により合 成 した。
【解 析 】
図 5-6に観 測 スペクトルの例 を示 す。ほとんどの振 動 回 転 線 は特 徴 的 なスピン
二 重 項 の分 裂 をもって観 測 された。 14 NO 3 ラジカルの個 々のスペクトル線 の帰 属 は
以 前 の ν 3 ホットバンドの測 定 から得 られた ν 4 状 態 の分 子 定 数 を用 いて計 算 した予
想 スペクトルとの比 較 によりなされた。解 析 には基 底 状 態 、 ν 4 状 態 のエネルギーと
して以 下 の表 現 を用 いた [17] 。基 底 振 動 状 態 には
<N, k, l|H vr |N, k, l> = T v + BN(N+1) +(C – B)k 2 – D N N 2 (N+1) 2 – D NK N(N+1)k 2
– DKk4 ,
(2)
ここで、 T v は電 子 ・振 動 のエネルギー、 B, C は回 転 定 数 、 D N 、 D NK 、 D K は遠 心
力 ひずみ定 数 で、 N はスピンを含 まない分 子 回 転 の角 運 動 量 ( N ) 量 子 数 、 k は N
の分 子 軸 方 向 の成 分 である。 ν 4 状 態 で は
<N, k, l|H vr |N, k, l> = T v + BN(N+1) +(C – B)k 2 – 2Cζkl + η N N(N+1)kl
+ η K k 3 l – D N N 2 (N+1) 2 – D NK N(N+1)k 2 – D K k 4 ,
(3)
ここで l は縮 重 振 動 により生 じる角 運 動 量 で l = v 4 , v 4 -2 ··, −v 4 で、 ζ は一 次 のコ
リオリ結 合 定 数 、 η N 、 η K はその遠 心 力 項 である。 · 非 対 角 項 として l 型 共 鳴 項
v 4 , N , k , l4 H l v 4 , N , k ± 2, l4 ± 2 =
1
q4 [(v 4 + 1) 2 − (l4 ± 1) 2 ][ N ( N + 1) − k (k ± 1)][ N ( N + 1) − ( k ± 1)( k ± 2)]
4
68
(4)
を考慮し
た。ここで q 4 は l 型 二 重 項 定 数 で、スピン回 転 相 互 作 用 は以 下 のように含 めた
[18] 。
<N, k, l, J, F 1 |H sr |N, k, l, J,F 1 > = [ ε cc k 2 +ε bb {N(N+1)-k 2 } + a eff kl] / 2(N+1)
(5)
<N, k, l, J, F 2 |H sr |N, k, l, J,F 2 > =− [ ε cc k 2 +ε bb {N(N+1)-k 2 } + a eff kl] / 2N
(6)
<N–1, k, l, J,F 1 |H sr |N, k, l, J,F 2 > = − [{( ε cc −ε bb )k + a eff l} (N - k )
(7)
2
2 1/2
] / 2N
ここで F 1 , F 2 はスピン成 分 を表 し、 F 1 , F 2 は それぞれ全 角 運 動 量 J=N+1/2,
J=N-1/2 に対 応 する。また a eff =<E ev |aL z | E ev > はスピンー軌 道 相 互 作 用 を表 す
行 列 要 素 で、基 底 電 子 状 態 A 2 ’ は非 縮 重 状 態 なので本 来 ならその項 は存 在 し
ないが、 NO 3 では励 起 電 子 状 態 B 2 E’ が振 電 相 互 作 用 で混 合 してきて E’ 振 動
状 態 でのスピン分 裂 を説 明 するためには必 要 であった [18] 。その項 は基 底 振 動 状
態 には不 要 であった。 ε cc , ε bb はスピン・回 転 相 互 作 用 を表 す。 ε cc は小 さな値 を
もちこれまでの解 析 では決 まらなかったが本 測 定 データの解 析 で初 めて決 定 でき
た。
帰 属 したスペクトル線 の最 小 自 乗 フィッティングでは以 下 の 4 種 のデータの同
時 解 析 を行 い、基 底 状 態 と ν 4 の分 子 定 数 19個 を決 定 した。
(i) 測 定 した ν 4 バンド、 ΔK=-1 のみ観 測
(ii) ν 4 バンド、 ν 3 +ν 4 -ν 4 ( 1127 cm −1 )バンド、 ν 3 + ν 4 バンド( 1492 cm −1 )から得
られる基 底 状 態 の ΔK=3 combination differences 、(図 5-7参 照 )
(iii) 1127 cm −1 バンドと 1492 cm −1 バンドから得 られる ν 4 状 態 と基 底 状 態 のエ
ネルギー差 (図 5 - 7 参 照 )
(iv) 1492 cm −1 バンドから得 られる基 底 状 態 の ΔK=0 combination differences
(iv) では以 前 のダイオードレーザーでの測 定 値 ( K の大 きな遷 移 )も含 めた。同 時
解 析 における重 みは直 接 測 定 を1、 n 個 の測 定 値 からの combination differences
では 1/ nにした。その結 果 決 定 された分 子 定 数 を表 5-1に示 す。ここで比 較 のた
め以 前 の基 底 状 態 の分 子 定 数 [19] も掲 載 している。また帰 属 したスペクトル線 は
付 録 A3に掲 載 する。ここで、観 測 波 数 と表 5-1の分 子 定 数 を用 いて計 算 した遷
移 波 数 との差 も calc-obs として示 している。フィットの標 準 偏 差 は 0.00098 cm -1 で
測 定 精 度 0.001 cm -1 と同 程 度 で、このことは解 析 の妥 当 性 を意 味 する。 l 型 二 重
項 定 数 q 4 は K=1 を持 つ準 位 における分 裂 を与 えるが、本 実 験 では K=1 への遷
移 は強 度 が弱 いため検 出 できなかった。その場 合 式 (4) の非 対 角 項 だけからは q 4
69
の符 号 は決 まらない。しかしながら、 ν 1 +ν 4 バンド( 1410 cm -1 )では K=1 への遷 移
が観 測 され、 q 4 の符 号 が正 とわかっているので、 v 4 =1 でも同 じ符 号 と仮 定 した [20] 。
15
NO 3 ラジカルではホットバンドのデータが報 告 されていなかったので、新 たに測
定 し帰 属 を行 った。その解 析 結 果 は別 の論 文 で発 表 予 定 であるが、 14 NO 3 ラジカ
ルの場 合 と同 様 に ν 4 状 態 の分 子 定 数 が得 られたので、この度 観 測 した ν 4 振 動 回
転 スペクトル線 は問 題 なく帰 属 できた。 14 NO 3 の場 合 と同 様 に解 析 を行 い、表 5-
1のような分 子 定 数 を決 定 できた。帰 属 したスペクトル線 は付 録 A3に示 す。
14
N 種 、 15 N 種 に対 してバンドオリジン周 波 数 と基 底 状 態 の回 転 定 数 C 0 はそれ
ぞれ 365.7871(3), 360.2020(5), と 0.228 6321(67), 0.228 674(11)cm -1 と決 定 され
た。振 動 数 の同 位 体 シフトは 5.2869(3) cm -1 と得 られ、固 体 Ne マトリックスで得 ら
れた値 5.3 cm -1 [13] とよい一 致 を示 した。 ΔK=3 の CDs より基 底 状 態 の遠 心 力
ひずみ定 数 D K も初 めて決 定 できた。その値 D K =0.1047(14) ☓ 10 -5 cm -1 ( 14 NO 3 ),
D K =0.1004(19) ☓ 10 -5 cm -1 ( 15 NO 3 ) は平 面 分 子 に対 する以 下 の関 係 式 [21]
D K = −(2D N +3D NK )/4
(8)
で の 計 算 値 D K =0.1003 ☓ 10 -5 cm -1 ( 14 NO 3 ), D K =0.0999 ☓ 10 -5 cm -1 ( 15 NO 3 )
と 3σ( 標 準 偏 差 ) 内 で 一 致 し た 。
【考察】
表5-2に
14
NO 3 の 基 底 状 態 か ら の 遷 移 で こ れ ま で 観 測 さ れ た バ ン ド の
吸 収 強 度 を ま と め た ( 2000 cm -1 以 上 の 遷 移 と ホ ッ ト バ ン ド は 省 略 し て い
る ) 。 こ こ で 1492 バ ン ド の 強 度 を Friedl と Sander が 報 告 し た 値 36 km
mol -1 と し て 相 対 強 度 を 示 し て い る [7]。 計 算 値 は Stanton [14]に よ っ て 報 告
さ れ て い る 相 対 的 双 極 子 強 度 (relative dipole strength) か ら の 値 を 1492 バ
ン ド の 強 度 に よ り 換 算 し た 。 表 か ら ν4 バ ン ド の 場 合 を 除 い て 観 測 値 と 計
算 値 は フ ァ ク タ ー 2 内 で 一 致 し て い る 。 ν4 バ ン ド の 強 度 の 不 一 致 に つ い て
は理由が不明で振電相互作用の効果を正しく見積もる必要がある。
基 底 状 態 の 回 転 定 数 C0 が 初 め て 決 定 さ れ た の で 、 他 の 振 動 状 態 の 回 転
定 数 C v が 求 ま り そ の 値 と B v の 値 を 用 い て 慣 性 欠 損 Δ = I c - 2I b が 計 算 で
き る よ う に な っ た 。 こ こ で 慣 性 モ ー メ ン ト と 回 転 定 数 は 、 I b = h/8π 2 B, I c
= h/8π 2 C で 関 係 し て い る 。 平 面 分 子 で 平 衡 位 置 で は 慣 性 欠 損 は 零 に 近 い 値
を持つが、一般の振動状態(基底状態も含む)では零よりかなり異なる値
70
を 持 つ 。 そ の 慣 性 欠 損 Δ は 振 動 回 転 相 互 作 用 を 考 慮 し て 、 Oka と Morino
に よ り 一 般 的 に 導 か れ た [22]。 よ り わ か り や す い 形 で D 3h の NO 3 型 の 分 子
に 対 し て 以 下 の よ う に 与 え ら れ て い る [23]。
(9)
慣 性 欠 損 の 計 算 は 、 調 和 振 動 数 3 つ と 1 次 の コ リ オ リ 結 合 定 数ζ 3 の み で
得られるので、観測している振動状態の帰属についての判断材料になりう
る 。 比 較 の た め BF 3 分 子 [24]で の 理 論 値 ( 式 (9)) と 実 験 か ら 得 ら れ た 慣 性
欠 損 を 表 5 - 3 に 挙 げ る 。 基 音 で の 値 は よ く 一 致 ( 14 %内 ) し て い る 。
最 大 の 不 一 致 は 32 %に な っ て い る が 元 々 の 値 が 小 さ い こ と を 考 慮 す る 必
要がある。
NO 3 で は 以 前 コ リ オ リ 相 互 作 用 定 数 と し て Force field か ら 得 ら れ る 値
ζ 3 =0.7 を 用 い て い た [15]が 、 そ の 値 は 実 験 的 に 得 ら れ たζ 4 =-0.188 と D 3h 対
称 性 で の 関 係 式 ζ 3 = -ζ 4 か ら 予 想 さ れ る 値 と 大 き く 異 な り 、 振 電 相 互 作 用
の効果を示唆するが、まだ説明はなされていない。本研究で、基底状態の
回 転 定 数 C 0 が 決 定 さ れ 、 慣 性 欠 損 の 実 験 値 が 得 ら れ 、 式 (9)の 理 論 予 想 と
比 較 が で き る よ う に な っ た 。 そ の 場 合 、 コ リ オ リ 結 合 定 数 と し て Force
field か ら 予 想 さ れ る 値 よ り 実 験 的 に 得 ら れ た 値 を 用 い る 方 が 一 致 は よ
か っ た 。 そ の コ リ オ リ 結 合 定 数 と 3 つ の 調 和 振 動 数 と し て 、 ν 2 =762,
ν 3 =1127, ν 4 =365 cm -1 を 用 い た 慣 性 欠 損 の 計 算 値 と 実 測 値 を 表 5 - 3 に 示 す 。
こ こ で 振 動 状 態 は (v 1, v 2, v 3, v 4 ℓ )で 示 し て い る 。 基 底 状 態 、 ν 4 , ν 1 +ν 4 , 3ν 4 状
態 で の 一 致 は 非 常 に よ い と い え る 。 そ れ に 比 べ て 、 ν 3 +ν 4 ( 1492 バ ン ド )
で の 一 致 は よ く な い 。 こ の 理 由 と し て 、 (i)他 の 振 動 状 態 か ら の 摂 動 の 効 果
を 取 り 込 ん だ 解 析 が な さ れ て い な い こ と 、 (ii) ν 3 +ν 4 で は ζ 3 =-ζ 4 が 成 立 し て
い な い こ と が 考 え ら れ る 。 (i)で は ν 2 +2ν 4 か ら の 相 互 作 用 が 考 え ら れ 、 そ
の効果は
15
NO 3 の 1472 バ ン ド の 振 動 回 転 ス ペ ク ト ル に 不 規 則 な ス ペ ク ト
ル 形 状 と し て 顕 著 に 表 れ て い る 。 (ii)は Jahn-Teller 効 果 に よ り 分 子 が D 3h
71
構造からずれていることまたは非調和定数による振動状態間の混合の効果
を 示 唆 す る 。 そ の 効 果 は 1492 バ ン ド の K’=1 に お け る 大 き な 分 裂 ( BF 3
の 場 合 に 比 べ て 数 桁 大 き い ) に 、 ま た ス ピ ン ・ 回 転 相 互 作 用 に お け る ε aa ε bb の 大 き さ に 現 れ て い る [15]。
表 5 - 3 に お け る v 2 =1 状 態 の 慣 性 欠 損 は 大 き な ν 3 振 動 数 依 存 性 を 示 し
た 。 す な わ ち ν 3 振 動 数 を 1492 cm -1 に 仮 定 す る と 慣 性 欠 損 は 0.246 amuÅ 2
に な り 、 観 測 値 0.141 amuÅ 2 と 大 き く 異 な っ て き た 。 こ れ は 1492 バ ン ド
が ν3 で は な い こ と を 支 持 す る 一 つ の 証 拠 と な っ て い る 。
72
参考文献
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73
表5-1 Molecular constants of the 14NO3 radicala
14
15
NO3
NO3
b
ν4
groundb
0.4592019(15) 0.4585445(61)
0.4592283(35)
0.4586263(89)
ν4
B
C
ground
0.2282479(11) 0.2286274(57)
0.2282573(12)
0.2286547(58)
5
0.09457(47)
0.10880(94)
0.1001(12)
0.1111(14)
5
DNK☓10
-0.1790(14)
-0.2062(19)
-0.1836(26)
-0.2072(30)
DK ☓105
0.0926(11)
0.1047(14)
0.0874(15)
0.1004(19)
DN ☓10
-0.0429081(91)
-0.0356060(78)
ηN ☓10
-0.470(13)
-0.493(13)
5
0.400(15)
0.447(16)
aeff
-0.16711(23)
-0.16578(27)
εbb
-0.015395(20)
-0.01642(14)
-0.014810(30)
-0.01581(20)
εcc
0.000622(16)
0.00074(14)
0.000598(17)
[0.00074]c
Cζ4
5
ηK ☓10
q4
Tv
0.0133024(86)
365.48717(17)
0.0133855(91)
0.0
360.20186(25)
0.0
a
cm-1 unit. Numbers in parentheses denote one standard deviation and apply to the last digits of
the constants.
b
Compared with the previous values [19] : B = 0.4585485(63), DN=0.1113(12) ☓ 10-5,
DNK = −0.2121(27) ☓10-5, ε bb=-0.01649(13) cm-1, where C and εcc were not determined.
c
Fixed to the value of 14NO3.
74
表5-2
Intensities of the 14NO3 infrared bandsa
νobs(cm−1)
Band
obs int.
ν4
365
8.1
ν2
762
[6.6]b
[772]c
2ν4 (l4=2)
calc. int.
1.9
1.3
3ν4
1172
1.9
1.6
ν1+ν4
1412
3.2
6.1
ν3+ν4
1492
36
36
ν3+2ν4
1927
23
15
akm
mol-1 unit. Observed and calculated intensities are obtained by assuming the 1492 band
intensity as 36 km mol-1 [7], where the relative dipole strengths with base 10 reported by
Stanton [14] were used for the calculated values.
bFrom
Friedl and Sander’s intensity ratio [7] of the ν2 and 1492 bands.
cDetermined
from perturbation analysis.
75
表5-3 Inertial defect of NO3 and BF3 (amu Å2)a
v v
0
1
2
0
v
3
v
4
10
NO3
Δobsb
d
BF3
Δobsb
Δcalcc
Δobs- Δcalc
-0.018 (9 %)
-0.021 (10 %)
-0.009 (2 %)
-0.008 (2 %)
0 0
(15NO3)
0 0 1
(15NO3)
0.206
0.203d
0.434d
0.432d
0.224
0.224
0.443
0.440
1
0
0.469e
0.443
0
1
0 0
( NO3)
0 0 2
0.141f
0.115f
[0.821]f
0.097
0.116
0.663
(15NO3)
[0.856]f
0.655
0.201
(23 %)
(16 %)
0
0
0
1
15
0.026
0.044 (31 %)
-.0.001 ( 1 %)
0.158 (19 %)
0
0
0
3
0.759e
0.882
-0.123
0
0
0
0
2
0
1
0
1
1
0
0
0.367g
0.511
0.144
a
b
(6%)
(39 %)h
Δcalcc
Δobs- Δcalc
0.197
0.196
0.001
(0.5 %)
0.394
0.391
0.003
(0.8 %)
0.408
0.391
0.017
(4 %)
0.0665
0.0763
0.589
0.586
0.428
-0.0639
0.244
-0.0097
(14 %)
0.003 (0.5 %)
0.452 -0.024 (6 %)
-0.0436 -0.0204 (32%)i
0.257 -0.013
(5 %)
Numbers in parentheses denotes |Δobs− Δcalc|/Δobs ×100 (%). In NO3, the first line with vibrational
quantum numbers lists data of 14NO3, and the second line is for 15NO3.
Δobs=Ic-2Ib
c
Δcalc was obtained by using Jagod and Oka’s formula [23], where for the 14NO3 calculation, ν2=762,
ν3=1060, ν4=365 cm-1, ζ3=0.188 were used, and for 15NO3, ν2=742, ν3=1040, ν4=360 cm-1,
ζ3=0.165, and for 10BF3, ν2=691, ν3=1454, ν4=479 cm-1, ζ3=0.78554 [24].
d
Present study.
e
Ref.[20].
f
Ref.[25]. The B and C constants in the v4=2 state were determined from perturbation analysis by
fixing the centrifugal distortion constants. Therefore, they may be changed if a direct measurement
on the 2ν4 band is carried out.
g
Ref.[15]
h
Planarity condition ζ3 = − ζ4 does not hold in this state.
i
Maximum discrepancy in BF3 between observed and calculated inertial defects.
76
図5-1
14
NO3 の 4 つの基準モード ν3 振動数は 1055 cm-1 と報告されている。
15
NO3 は 同位体シフト 0 (ν1), -20 cm-1 (ν2), -20 cm-1 (ν3), -5 cm-1 (ν4)で低い
振動数をもつ。
図 5-2
14NO
3 の振動エネルギー準位と観測された遷移
基底状態からν3+ ν 4 , ν 4 からν3+ ν 4 への遷移をそれぞれ 1492,
1127 バンドと呼ぶ
v3=1, v4=2
1927
2000
1800
v3=1, v4=1 1492
1600
Energy(cm-1)
1400
1200
1000
800
v2=1 762
v4=1
365
600
400
200
Gr.
0
77
図5-3
フーリエ変換型分光用実験配置
78
図 5-4
NO3 生成の He-Ne レーザー光吸収によるモニター
NO3 ラジカルはマイクロ波放電で生成したF原子と HNO3 の反応で生成
図 5-5 Siボロメーター用デュワーを排気することにより 1.4 K まで冷却している配置
79
図 5-6
14
NO3 ν4 バンドの吸収スペクトル スピン回転相互作用とスピン軌道相互
作用(ν4 状態)による分裂が見える
p
0.10
P(N,K)
(15,12)
(13,6)
absorbance
(16,15)
(14,9)
0.05
0.00
355.8
355.9
356.0
356.1
356.2
356.3
356.4
-1
wavenumber (cm )
図 5-7 基底状態ΔK=3 combination differences(CDs)のためのエネルギー図
ν3 バンドと 1492 バンド、1127 バンドと組み合わせて基底状態の CDs を得, 1492,
1127 の2つのバンドから点線のようなν4 の CDs が得られる。
80
第 6 章 まとめ
本論文では、星間化学関連で H2F+の振動回転スペクトル、純回転スペクトルの測定と
解析、星間空間での存在についての検討を行った。純回転スペクトル線 5 本をカナダ
Waterloo 大学の BWO(Back-wave Oscillator)サブミリ波分光器により初めて検出
できた。また TuFIR(Tunable far-infrared radiation source)光源を利用して 111 – 000
遷移(1305306.503 MHz)を含む 7 本の THz 領域のスペクトル線の検出に成功した。こ
れら測定は Herschel 宇宙望遠鏡での H2F+探査にとって貴重なデータとなった。フーリエ
変換型赤外分光器によるν1, ν2, ν3, 3 つの基準振動全ての振動回転スペクトルを測定す
ることにより、基底状態を含めて 4 つの状態の分子定数を得ることができ、これにより平衡
状態における分子構造を決定することができた。その際振動回転定数αe の高次の項γを
無視すると、平衡状態の回転定数から求めた慣性欠損が−0.01 amuÅ2 と大きくなったの
で、水のγ定数を参考にしてγ2a=0.9 cm-1 と仮定したところ慣性欠損は-0.00068 と小さくす
る こ と が でき 、 平 衡 位 置 で の 核 間 距 離 re(H–F) = 0.9608(6) Å と 角 ∠ e(H–F–H) =
112.2(2) °を決定することができた。
星 間 空 間 での H 2 F + が検 出 可 能 な量 存 在 しているところは比 較 的 密 度 の低 い
雲 と考 えられる。そこでの消 滅 機 構 は電 子 との再 結 合 反 応 が主 なので、時 間 分
解 フーリエ変 換 型 分 光 システムを用 いて、 H 3 + と H2F+の解 離 性 再 結 合 反 応 の速
度 定 数 の測 定 を行 った。波 数 分 解 能 は 0.04 cm −1 で 3 μs ごとに 180 μs の間 、吸
収 スペクトル線 強 度 の時 間 変 化 を測 定 した。その解 析 により H 2 F + と電 子 との再 結
合 反 応 定 数 k e = 5.81(49)×10 −6 cm 3 s -1
が得 られた。それは初 めて実 験 的 に求 め
られた値 で、 Neufeld と Wolfire がモデル計 算 から得 た 4.19×10 -7 cm 3 s -1 より一
桁 速 い定 数 となった。
野 辺 山 宇 宙 電 波 観 測 所 45 m 鏡 に よ り C8H− の 純 回 転 遷 移 5 本 を 晩 期 型 星
IRC+10216 周辺部で観測した。このイオンは宇宙で見つかった 3 番目の負イオンとなっ
た。解 析 により回 転 励 起 温 度 T rot (C 8 H - ) = 17 ± 2 K, カラム密 度 N(C 8 H - ) = 2.6 ±
0.4 × 10 12 cm -2 を 得 た 。 負 イ オ ン と そ の 親 分 子 の 存 在 量 比 は [C 4 H - ]/[C 4 H]=
0.00024, [C 6 H - ]/[C 6 H]=0.086, [C 8 H - ]/[C 8 H]=0.37 と大 きな分 子 イオンほど相 対
存 在 量 が増 加 していることがわかった。分 子 の大 きさとともに電 子 付 着 の確 率 が高
くなるので、これら負 イオンが主 に分 子 への電 子 付 着 により生 成 していることを示
唆 している。
大気化学で重要な NO3 ラジカルのν4 振動回転スペクトルを気相で初めて測定するこ
とができた。解 析 では測 定 した ν 4 バンドのスペクトル線 をこれまでの研 究 で報 告 さ
れ て い る バ ン ド と 一 緒 に 解 析 し 、 基 底 状 態 に お け る Δ K =3 combination
differences を得 ることができ、基 底 状 態 の回 転 定 数 C 0 を初 めて決 定 できた。
81
D 3h 対 称 性 では ζ 3 = −ζ 4 が成 立 するので、 ν 4 バンドの解 析 から得 られた ζ 4 と、3
つの調 和 振 動 数 として、 ν 2 =762, ν 3 =1127, ν 4 =365 cm -1 を用 いた慣 性 欠 損 (平 面
分 子 では零 になるはずだが振 動 の効 果 で零 と異 なる値 をもつ)の計 算 値 と実 測
値 を比 べると、基 底 状 態 、 ν 4 , ν 1 +ν 4 , 3ν 4 ではよい一 致 を示 した。
82
第7章
付録
A1: H 2 F + ν 1 , ν 3 振 動 回 転 スペクトルから得 られた基 底 状 態 の combination
differences (1), o-c は 10 -4 cm -1 単 位 , 観 測 値 の誤 差 は 0.0014 cm -1 ,
ただし添 え字 a, b 付 きの波 数 の誤 差 はそれぞれ 0.005 cm -1 , 0.007 cm 1
である。
83
A1: H2F+ ν1, ν3 振動回転スペクトルから得られた基底状態の
combination differences (2)
84
A2: H2F+ ν1 と ν3 バンドの遷移波数
J' Ka' Kc'
ν(cm-1)
J Ka Kc
(c-o)*104 weight ν1/ ν3
(ν1 band)
2
7
4
3
6
2
6
5
5
4
4
3
4
6
5
3
1
2
3
2
1
3
2
1
2
3
3
5
7
5
3
2
2
6
2
3
4
6
7
4
5
5
4
7
2
0
1
1
0
1
1
0
2
0
1
0
1
1
1
1
0
1
0
0
0
2
0
1
1
1
0
2
2
1
2
1
2
1
2
1
2
3
1
1
3
1
3
1
1
7
3
2
6
2
6
5
3
4
4
3
4
5
4
2
1
2
3
2
1
1
2
0
1
2
3
3
5
4
1
2
0
5
1
3
3
3
6
4
2
5
2
6
3
8
5
4
7
3
7
6
5
5
5
4
4
6
5
3
2
3
3
2
1
4
1
1
2
3
2
5
7
5
3
1
2
6
2
2
4
6
7
3
5
4
4
6
3
1
2
2
1
2
0
1
3
1
0
1
2
2
2
2
1
0
1
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
0
1
0
1
0
1
0
1
2
0
0
2
0
2
2
0
8
4
3
7
1
7
6
2
5
5
4
3
4
3
1
2
3
2
1
0
4
1
1
2
3
2
4
6
5
2
1
1
6
2
2
4
4
7
3
3
4
3
5
3166.4660
3180.3272
3182.6227
3199.1290
3199.7775
3203.6362
3206.3512
3218.2478
3235.2200
3235.7099
3252.2982
3252.4581
3254.6949
3276.9278
3282.6348
3284.3461
3286.5376
3301.3179
3309.0986
3317.6464
3322.8672
3348.3680
3369.1824
3373.1811
3376.4092
3382.0264
3391.6774
3397.4896
3399.9242
3402.6362
3405.0094
3408.7581
3409.9644
3417.5640
3420.9140
3423.9358
3431.7723
3433.7361
3434.5280
3437.5916
3442.1717
3450.5186
3455.0224
3456.1587
85
36
-9
34
-22
41
12
16
21
16
-9
0
29
-15
29
-9
-11
13
-9
3
17
18
46
-79
-5
-8
-18
13
-5
-12
-25
11
-3
-17
-10
-26
30
-6
-19
8
-5
40
0
-30
1
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
0.04
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
6
7
3
3
4
3
4
5
5
4
5
4
4
8
5
7
6
6
2
5
4
6
5
7
5
2
2
4
4
5
1
6
4
4
5
5
5
3
5
3
7
5
4
8
5
6
10
4
2
2
1
0
2
2
2
3
3
2
3
4
2
2
1
1
1
1
2
2
1
2
2
1
1
2
2
0
1
2
1
2
1
2
2
0
0
2
1
3
3
3
1
4
4
1
2
2
1
2
1 1
0 1
6 5
7 6
2 2
1 2
3 3
0 2
2 3
3 4
2 4
1 3
3 6
3 5
4 5
8 9
4 6
7 8
5 7
5 6
1 3
4 5
3 4
6 6
5 6
5 7
4 6
2 3
2 2
3 5
3 4
3 6
1 0
4 6
2 4
4 3
5 4
4 5
5 4
0 3
3 5
1 3
7 6
1 5
1 4
8 7
4 4
5 5
10 9
2 3
1
1
0
1
1
1
1
2
2
1
2
3
3
3
2
0
2
0
1
3
2
3
3
2
0
3
1
1
2
1
2
1
0
1
1
1
1
1
0
2
2
2
0
3
3
0
1
1
0
1
0
1
5
6
1
2
2
1
1
4
3
0
4
2
3
9
5
8
6
4
2
3
2
5
6
4
5
3
1
4
2
6
0
5
3
3
4
5
4
1
4
2
6
2
2
7
3
4
9
3
3457.2411
3461.4870
3463.4045
3469.9952
3474.0412
3487.5880
3488.4122
3521.5371
3540.2414
3551.3526
3564.5676
3578.6743
3102.9990
3115.6350
3132.2930
3162.3250
3167.2030
3184.2290
3215.3340
3216.1180
3216.9650
3222.8070
3227.6830
3227.9740
3228.9480
3239.4730
3246.5480
3269.1490
3271.8310
3277.9100
3284.8020
3335.7150
3391.4270
3397.0980
3400.4420
3413.4612
3433.8675
3439.5760
3450.5192
3453.3360
3455.0815
3455.5450
3476.5660
3486.6480
3489.8130
3489.9920
3500.4990
3510.6060
3516.9500
3517.2770
86
3
19
12
-77
-48
23
-26
6
-38
-28
30
1
139
85
53
99
76
52
-7
84
36
136
75
88
35
118
-58
19
28
10
10
104
131
4
30
12
66
1
-5
53
75
39
48
-31
43
52
-4
-34
140
-8
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
0.04
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
7
5
2
6
4
2
4
2
2
3
6
1
1
5
1
6
4
3
6
4
(ν3 band)
10 0 10 11
8 1 7 9
7 3 5 8
7 2 6 8
6 2 4 7
6 3 3 7
6 3 4 7
6 1 5 7
7 1 7 8
5 4 2 6
5 2 3 6
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6 0 6 7
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A3:NO3 ν4 バンドのスペクトル線
14
NO3
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N K
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19 12
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F2-F2
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1.00
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1.00
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NO3 ν4 band
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94
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F1-F1
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1.00
1.00
1.00
1.00
1.00
謝辞
本研究において有益な議論と適切なご指導をしてくださった岡山大学大学院の川口建太
郎教授に深く感謝いたします。化学が絡んだ分光実験を全く知らなかった私に一から教え
て下さいました。分光学という研究ツールを基にして興味があった天文学の世界にも足を踏
み込む事もできました。また川口教授には研究のみならず公私にわたり大変お世話になりま
した。
唐先生、宮本先生には研究を進めていく上での有益なご助言・ご助力をして下さり感謝
いたします。
H2F+の実験において、サブミリ波の実験ではウォータールー大学の天埜先生の実験室で
測定させてもらい、大変お世話になりました。度重なる訪問、実験にもかかわらず快く受け入
れて下さり、実験の進め方からプレゼンまで教えて下さり感謝しています。
東工大の金森先生には BWO を貸していただき貴重な一本のスペクトルを測定すること
ができました。
遠赤外の実験では富山大学の松島先生の実験室で測定させてもらい、H2F+を宇宙空間
で直接探査可能な遷移を測定することができ、大変お世話になりました。実験を進めるうえ
で松島先生の研究グループの皆様にはご協力いただきありがとうございます。
赤外領域の振動回転遷移の実験では、環境研究所の森野先生にお世話になりました。
ダイオードレーザーの測定に関して西南学院大学の松村先生にお世話になりました。
C8H-等の野辺山 45m 望遠鏡による観測では、国立天文台の高野先生には望遠鏡自体
の事から始まり色々とお世話になりました。天文台の方々にも観測に関して大変お世話にな
りました。
NO3 の実験では、広島市立大学の石渡先生には毎回無水硝酸を作っていただき、実験、
解析を進める上で大変お世話になりました。廣田先生には、本研究において、さらには研究
全般に関して有益なご助言をしていただきありがとうございました。NO3 は大変面白い分子
で分光学では注目の分子となっていて、理解に貢献できる機会に恵まれ非常に感謝してい
ます。
名古屋大学の平原先生には研究全般において相談にのっていただきありがとうございま
した。研究室のメンバーには大変お世話になりました。特にポスドクとして滞在していた
Pradeep R.Varadwaj 博士には公私共に刺激を与えてもらいました。また博士論文には結果
的に載せられなかった研究に対しても、多くの方々にお世話になり、感謝いたしています。
現在の職場である名古屋大学太陽地球環境研究所 所長の松見先生、技術部の方々に
は博士論文を書き上げる環境を作って下さり感謝しています。
最後に研究をする機会を与えてくれた妻、研究を続けさせてくれた 4 人の子供たちに感
謝いたします。
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