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桂川 淳(千歳市立青葉中学校)(PDF/806KB)

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桂川 淳(千歳市立青葉中学校)(PDF/806KB)
平成 25 年度 教師海外研修(派遣国:フィリピン共和国) 指導案(兼実践報告書)
1.単元名(活動名):
2.対
人と人、国と国の共助を考える
象:千歳市立 青葉中学校
(21HR36名
第2学年
全クラス
22HR35名
23HR35名
授業者:桂川
24HR36名)
淳
4.教科との関連性:
総合的な学習の時間
5.実施時期:2014年
3月
3.学習領域
1
2
3
A多文化社会
文化理解
文化交流
多文化共生
Bグローバル社会
相互依存
情報化
C地球的課題
人
D未来への選択
歴史認識
権
環
境
市民意識
平
4
和
開
発
社会参加
6.時数: 3時間
7.単元の目標(評価の観点を意識して設定):
8.キーワード:
フィリピンの人々に関心をもつ。
共助
【関心・意欲】
他者の意見に耳を傾けながら自分の意見をもち、発信することができる。
【技能】
台風30号
東日本大震災
違いと同じ
フィリピンや日本の人々を通じて、共助することの大切さを理解する。
【知識・理解】
9.単元について(教材観、単元設定の理由、開発教育/国際理解教育の視点等):
千歳市は新千歳空港を擁し、国際都市を自認している。千歳市主催の中高生を対象とした国際交流行事も盛
んで、広報誌の発行、姉妹都市間の人的交流など、生徒へのアピールや環境作りに積極的である。しかし、例
えば学校で配布される案内文書は、担任が一言申し添えなければ、それほどの興味関心がなく読み捨てられる
ことが多い印象である。また、千歳で暮らす生徒達は、他国の人と接する機会は決して多くない。英語が話せ
ないからコミュニケーションは無理と若い世代のうちにあきらめてしまうこともしばしばある。さらに、生徒
に影響をもつ周囲の大人(保護者や教師)も、他国への意識は弱いように感じる。
若い世代のうちに広い視野で他者を見つめる視点をもつことは、身近な他者を見つめコミュニケーションを
とることの大切さに気づくことにもつながるであろう。他国を知ることで自国を知り、また他国で暮らす誰か
の今を知ろうとすることで、自分の今もまた見つめると考える。今回 JICA 教師海外研修に参加する機会を得
て、魅力ある国フィリピンの存在を知った。若年層の数的な充実や安定した英語力の獲得など、秘めた力をも
つフィリピンは、これまで私にとって遠い存在であり、直面している諸問題もまた、遠い世界の話と感じてい
た。しかしながら、実際に訪問し多くの人と接する中で、家族間だけでない、人と人の密接なつながりを感じ
る場面が多くあった。災害時の対応、日常の近所づきあいなど、日本の都市部ではやや疎まれる密接なコミュ
ニケーションが、いまだフィリピンには存在していることに心が動かされた。
中学 2 年生の生徒たちは、少しずつ広い視野を獲得しようとしている時期にさしかかっている。自我が目覚
め、他者の存在を意識し出す今、他者と共に生き、共に助け合うことの尊さや必要性を感じる学びをここで行
うことで、次の学びや他者を理解しようとする態度につながるのではないか。学習の 1 時間目には、興味関心
の高まりをねらいとして、クイズ形式の学びを行う。私がみたフィリピンを紹介することを通して、自分たち
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
と一緒であったり違っていたりという発見をさせ、他国を知る楽しさを味わわせたい。2~3 時間目は「共助」
をテーマに、
「同じ国同士での共助」
「国と国の共助」という二つの視点から学び合う時間を設定したい。
10.展開計画(3時間扱い)
展開順
1時間目
発問・働きかけ
主な学習活動と学習者(児童生徒)の意識
「フィリピンを知ろう~わたしが見たフィリピン」
留意点など
*南東アジア 10 カ国のミニ国旗を各班
(計6チーム)に事前配布
1
フィリピンの国旗を知る
*以下は、外務省 HP「南東アジア」区分
に掲載されている国々(この 10 カ国は東
日本大震災での日本支援国であること
は、次の時間にふれる)
カンボジア、タイ、ベトナム、ラオス、
インドネシア、シンガポール、東ティモ
「いろいろな答えがでましたね。では、さきほどの 10 カ ール、
国を含めて、正解を確認してください。正解は、これから フィリピン、ブルネイ、マレーシア
配布するアジア地図に載っています。」
Q1「私は先日フィリピンを訪問しました。フィリピンの国
旗はどれですか? グループの机に置かれている 10 の国
旗の中から選んでみましょう。班で誰か一人、旗を持って
上にかかげてください。
」
○アジア地図1枚を班に配布する
「この地図は先日私がフィリピンを訪問したとき、本屋さ
んで購入したものです。10カ国がそれぞれどこの国なの
か、英語で表示されていますが、きっと読めることと思い
ます。確認できましたか?」
「では、フィリピンの国旗をもう一度かかげてください。」 ・黒板に、フィリピンの国旗を掲示する。
2
12 分割された写真を3種類に合わせ、何ができたか考
える
Q2「次に 各班の机上に、封筒がありますね。写真がバラ
バラになっているものが中に入っています。簡単なパズル
のようになっているので、班のみんなで作ってみましょ
う。また、完成後はそれが何なのか、考えてください。
」 ・食べ物と乗り物、生徒が身近に感じら
れるもので簡単な絵合わせをさせる。
・何ができたか考えることで、これから
フィリピンを学ぶことを意識させる。ア
イスブレーキング的要素が強い。
「バナナ」
「ジプニー」
「マンゴー」
「なにができたか、
3 つのグループから教えてもらいます。
この写真を見た感想やコメントも、少しでよいので添えて
ください。
」
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
3
私が見たフィリピンについて、仲間と学び合いながら
想像し、興味関心をもつ
三択クイズ<第1部>
①フィリピン概要クイズ
Q3「それではこれからフィリピンについて少し学びましょ
う。これから見せる写真の裏には、三択クイズが9問載っ
ています。
(例を見せる)
」
「班の仲間と相談し合いながら、クイズに答えてみましょ
う。なお、フィリピンのことをわからない人の方が多いで
しょうから、クイズと割り切り、思い切って決断してくだ
さい。この赤鉛筆で解答に○をつけてください。なお、こ
の赤鉛筆は消えるので、間違えたらどうぞ訂正してくださ
い。
」
・クイズ終了後に活動を止め、関連する
写真をいくつか紹介する。
・9問のクイズ。答えは別になっている。
生徒たちで解き、生徒たちで答え合わせ
をさせる。
・写真の裏側に9分割で掲載。三択の答
えは、赤鉛筆で○を直接書き込むことと
する。
「では、クイズと赤鉛筆を配布します。
」
「解答は、○分後に紙で配布します。何問正解できるか、
競争しましょう。
」
(問題配布)
「では、スタート」
①フィリピン概要
Q1 成田空港からフィリピン空港。何時間?
Q2 フィリピンの首都は?
Q3 フィリピン語で「こんにちは」は?
Q4 フィリピンにもあったお店は?
Q5 マニラのホテル入り口、1 月 5 日に飾っていたものは?
Q6 フィリピンの輸出先、第1位の国は?
Q7 フィリピンの誕生日、食べるものは?
Q8 日本で暮らす、フィリピン人の数は?
Q9 フィリピンをかつて植民地支配していた国は?
Q1 ア約 2 時間 イ約 5 時間 ウ約 9 時間
<正解はイ>
Q2 ア マニラ イ ハノイ
ウ プノンペン
<ア>
Q3 ア マガンダンアーラウ
イ イランカラプテ
ウ ズドラースト ヴィーチェ <ア>
Q4 ア セイコーマート イ 元気寿司
ウ ケンタッキー <ウ>
Q5 ア バレンタインチョコ イ クリスマ
スツリー
ウ 鏡餅 <イ>
○時間になったら解答配布。何問正解できたか、確認する。 Q6 ア 韓国 イ 中国 ウ 日本 <ウ>
Q7 ア スパゲッティ イ のり巻き
ウ そば <ア>
Q8 ア 18,000 人 イ 52,000 人
ウ 209,000 人 <ウ>
Q9 ア 1 カ国 イ 2 カ国 ウ 3 カ国 <ウ>
Q4「クイズの裏に写真が載っていました。9 枚あったので
すが、そのうちの 6 枚を紹介してもらいましょう。写真か
ら何がわかりますか?」
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
4
私が出会った 3 名の方々の紹介を聞く
三択クイズ<第2部>
②フェーリンさん(パナイ島 イロイロ在住 15 歳)
③グレイスさん (パナイ島 バロタック在住 9 歳)
④アンさん
(ルソン島 ケソン市在住 16 歳)
Q5「この写真を見てください。私がフィリピン滞在中に出 ・多くは説明せず、フィリピン滞在中に
会った 3 名の方々です。これからこの方に関わるクイズに 出会った人々であること、彼らが登場す
答えてもらいます。やり方はさきほどと一緒です。
」
るクイズにこれから取り組むことだけを
伝える。
「答えは 3 枚。問題と一緒に配布するので、一人の方のク
イズに答えるたびに、答え合わせをしましょう」
「クイズが終了したら、今日感じたことや、考えたこと、
フィリピンのことで発見したことなど、まとめとして書い
てもらいます」
「では、各班でクイズを開始しましょう」
②フェーリンさんクイズ
Q1 今ほしいものは?
Q2 日曜日に必ずすることは?
Q3 どうやって学校に来る?
Q4 大切にしているものは?
Q5 将来の職業希望は?
Q6 日本のことで知っていることは?
Q7 お昼。学校で何を食べる?
Q8 大学はどこへ行きたい?
Q9 かけ算は何段まであるの?
Q1 ア ノート イ 猫
ウ スマートフォン <正解はウ>
Q2 ア 図書館に行く イ 教会に行く
ウ デパートに行く <イ>
Q3 ア ジプニー イ 馬車 ウ 徒歩 <ア>
Q4 ア洋服 イ家族 ウ教科書 <イ>
Q5 ア TV アナウンサー イ バスケット
選手 ウ デパート店員 <ア>
Q6 ア海がある イ米がとれる
ウ雪が降る <ウ>
Q7 ア給食で出された物 イ学校前の屋台
で好きな物 ウ家からのお弁当 <イ>
Q8 ア海外で留学 イ フィリピン国内
ウ 考えたことがない <ア>
Q9 ア7段まで イ 9 段まで
ウ 12 段まで <ウ>
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
③グレイスさんクイズ
Q1 学校で はやっている遊びは?
Q2 日曜日に必ずすることは?
Q3 どうやって学校に来る?
Q4 大切にしているものは?
Q5 将来の職業希望は?
Q6 将来海外へ行きたいのはなぜ?
Q7 日本のキャラクターで知っているものは?
Q8 学校で嫌なことは?
Q91時間目は何時からスタート?
④アンさんクイズ
Q1 好きな歌手は?
Q2 日曜日に必ずすることは?
Q3 どうやって学校に来る?
Q41日の片道交通費は?
Q5 将来の職業希望は?
Q6 なぜその職業が希望?
Q7 地域で行われている、町内会行事は?
Q8 近所との交流でしていること全てに○を。
Q9 趣味は?
Q1 ア 折り紙 イ ドッジボール
ウ かくれんぼ <正解はウ>
Q2 ア 図書館に行く イ 教会に行く
ウ デパートに行く <イ>
Q3 ア トライシクル イ馬車 ウ徒歩 <ア>
Q4 ア 洋服 イ お家 ウ 教科書 <イ>
Q5 ア 学校の先生 イ バスケット選手
ウ デパート店員 <ア>
Q6 ア 両親にお金をあげたい イ 自分用
に貯金したい ウ ゲームをたくさんし
たい<ア>
Q7 ア ガンダム イ ハローキティ
ウ サザエさん <イ>
Q8 ア 部活に休みがない イ 宿題がたく
さん出る ウ 女子同士のけんか<ウ>
Q9 ア 7:30 イ 8:30 ウ 9:30 <ア>
Q1 ア サラジェロニモ イ マイケルジ
ャクソン ウ AKB48
<ア>
Q2 ア 図書館に行く イ 教会に行く
ウ デパートに行く <イ>
Q3 ア ジプニー イ馬車 ウ徒歩 <ア>
Q4 ア 14 円 イ 140 円 ウ 1,400 円 <ア>
Q5 ア 弁護士 イ バスケット選手
ウ デパート店員 <ア>
Q6 ア 他にやりたいことがない イ 家
族にお金をあげられる ウ 人に自慢
できそう <イ>
Q7 ア 餅つき大会 イ バスケット大会
ウ 百人一首大会 <イ>
Q8 ア 挨拶 イ 夕食のおすそ分け ウ
隣のおばさんが誕生日なので、一緒に
食事 <アイウ>
Q9 ア 読書 イ スノーボード
ウ プリクラ <ア>
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
クイズから考えたこと、気づいたことなどを交流する
・全てのクイズに答えられなくても、時
間になった段階でまとめに入る。
○考えたこと、気づいたことなどを、紙に書く。
○いくつか意見を交流し、学び合う。
Q6「では時間になりました。今日の授業のふり返りを、こ
の用紙に書いてもらいます。書き終えたら、発表してもら
います。
」
○ふり返って、感想など記入
「では、今日の授業をふり返って、コメントしてくれる人
はいますか?」
「次の時間も、フィリピンについて考えます」
「自国内の共助。15 歳の 2 人。」
2時間目
1
2013.11.8
台風 30 号(ヨランダ)について知る
「写真を見てください」
「私が先日フィリピンを訪問したとき、台風 30 号(ヨラ ・3枚の写真で紹介する。台風のことは、
ンダ)のことを知る機会がありました。
後述で学ぶ時間があるので、ここではそ
皆さんはこの台風、去年のことですが、覚えています れほど多くの情報を必要としない。
か?」
2
ギマラス島のウィリアムくん ケソン市のアンさん
台風のときの 二人を知る
・パソコン画面を使用して、簡潔に紹介
「ふたりの 15 歳の方と出会いました。首都から飛行機と したい。
船で 3 時間近く離れたギマラス島に住むウィリアムくん。
彼は、今回の台風で、少なからず被害を受けた方の一人で
す。紹介します」
ギマラス島のウィリアムくん
・ギマラス島在住。
(首都から飛行機で
2 時間。そこから船で 30 分)
・8人きょうだい
・15 歳
・通学は 徒歩。または 近所の人も運転してくれるバイ
クの後部
座席。
・父と母は農家。
・携帯電話は持っていない。
・読書が好き。
・将来はそのまま農家を手伝えるよう、今から父に習って
いる。
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
<台風30号のとき>
・台風のとき、停電があった。
・となりの町の停電は、まだ続いている。
・丈夫な家に暮らしていない近所の家族が、台風のとき自
宅に宿泊した。
・学校はしばらく休みだった。
・再開のとき、修理を手伝った。
・学校の屋根は壊れたまま。雨の多い日は、教室を移動し
て、別の場所で授業する。
・雨の日は、トタン屋根なので先生の声が聞こえづらい。
「もう一人。アンさんは、ケソン市に住み、今回の台風の
被害には遭うことはありませんでした。紹介します」
・パソコン画面を使用して、簡潔に紹介
したい。
ケソン市のアンさん
・ルソン島 ケソン市在住。(首都マニ
ラから車で 30 分)
・3人きょうだい
・アンさんは、前時のクイズで既習。
・15 歳
・通学は毎日往復ジプニー。片道7ペソ。
・父は会社員。
・携帯電話を持っている。
・読書が好き。
・将来は弁護士になりたい。家族のため&両親の誇りにな
りたい。
・好きな歌手は Sarah Geronimo(女性歌手)
<台風30号のとき>
・こちらはとくに被害はなかった。
・ニュースでたくさんの人が亡くなり、たくさんの建物が
なくなったことを知った。
・テレビで、被災者が泥棒をしているニュースを聞き、恥
ずかしい。
・みんな頑張っている。希望をもっている。
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
3
アンさんの答えを考える
「私はアンさんに、次のような質問をしました。
」
・パソコン画面に、質問と答えを表示す
○質問:今回の台風30号について、どう感じています る。
か?
「すると答えは、次のようなものでした。」
○アンさんの答え:台風でたくさんの人が亡くなり、悲し
い。
「こんな質問もしました」
○質問:台風30号のあと、あなたは何をしましたか?
「すると答えは、次のようなものでした。」
・<
1
>を通じて、<
2
>を寄付した。
・授業でも協力を呼びかけるポスターを作り、教室の窓に
はった。
・台風のとき、私は
<
3
> を用意した。
・でも、一番大切なのは <
4
>。
・あともう一つ。 <
5
>が足りなければダメ。
Q6「今見たように、アンさんの答えに空欄がありましたね。 ・5の答えは「祈り」であることを伝え
5の答えは、今 みんなで考えてみましょう。 前回の る。
Ann さんクイズにヒントがあったのですが、想像できる人
はいますか?
では、その他の空欄にはどんな答えが入ると予想します ・配布したカードにマジックで記入させ
か? これからカードを配布するので、そこに答えを書き る。
込みましょう。
」
「どんな言葉が入るか発表してもらいます」
・各グループで発表させる。
「では、Ann さんの答えを発表します」
・パソコン画面で、答えを伝える。
1 TV 局 2 非常食・服 3 米・薬・衣服
4 近所の人と連絡体制を作る 5 祈り
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
4
2011.3.11
東日本大震災のとき、何をしたか想起する
「2011 年 3 月の東日本大震災のときは、どうだったでし
ょう。ここに当時の新聞記事があります。紹介します」
新聞記事<青葉中の被害>
※新聞記事の掲載は割愛させていただきます。
(JICA 北海
道)
新聞記事<千歳市内の生徒会 募金活動>
※新聞記事の掲載は割愛させていただきます。
(JICA 北海
道)
新聞記事<千歳市民からの支援>
※新聞記事の掲載は割愛させていただきます。
(JICA 北海
道)
Q7「みなさんは、東日本大震災で被災された方と、直接的、
または間接的に、関わった経験はありますか」
「何かしたという人は、どんなことをしましたか?」
→ 国内で、共に助け合ったことに気づ
く。
○自由に発表させる。
「次の時間もフィリピンについて勉強しましょう」
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
3 時間目
「国と国の共助。 フィリピンと日本」
1
写真を組み合わせて ストーリーを作る
Q8「写真で作るストーリーから、授業を始めましょう。こ
れから使用する写真を見てください。」(写真を紹介)
・1枚目の写真はこちらで指定し、さら
にその写真に事前に文をつけることで、
そのあとのイメージが広がるよう配慮す
る。
・残りの6枚はミックスで、班に配布す
る。
・4枚の写真で一つの作品とするが、数
のバランスが崩れてもかまわない、また
は使用できない写真があってもよしとす
る。
・作成する文は、1枚の写真につき、2
文程度とする。
「合計8枚の写真を配付します。これから8枚を使って、
二つのストーリーを作ってもらいます。
」
(写真補足説明)
「それぞれのお話の1枚目は、もうすでに見つかっていま
す。確認しましょう。
」 <G&H>
「1枚目の写真には、すでに文もついていますね。確認し
ます。
①(G)2011 年 3 月 11 日、東日本大震災が起こりました。 <今も続く避難生活>
日本はたくさんの被害を受け、流された船は建物の上に乗
キャンプ地で避難生活が続く男性。寄
りました。
付された物品は数多くあるが、この先の
暮らしを考えると不安はつのるばかり。
キャンプ地はもうすぐ撤収されてしま
う。
①(H)2013 年 11 月 8 日、台風 30 号が起こりました。
フィリピンはたくさんの被害を受け、船は住宅地に流され
ました。
「では、この話が続くように、写真を選び、1 枚目になら <希望の架け橋>
って二つ程度の文を添えてみましょう。最後は、二つの写
日本の復興もなかなか進まない状況の
真ストーリーができあがります。では、スタートです」
中、岩手県陸前高田市の、土砂を運ぶベ
ルトコンベヤーを支えるつり橋が、住民
の希望をつなぐ象徴になっている。
「どんなお話ができたか、発表しましょう」
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
2
2013.11.8
知る
台風 30 号のときの日本の報道。そして今を
Q9「去年の台風 30 号。日本でも発生当時は新聞やニュー
スで報道されました。
」
新聞記事<日本>(発生当時)
「日本がどんな支援をしたか、知っていますか?」
新聞記事<日本>(日本の支援)
※新聞記事の掲載は割愛させていただき
ます。
(JICA 北海道)
→日本が国として支援していたことに気
づく。
→日本での情報は日を追うごとに少なく
「1 ヶ月後。日本の新聞に載った記事は次のようなもので なっていることに気づく。
した」
新聞記事<日本>(1 ヶ月後)
→現在でも停電が続いている状態である
ことに気づく。
「私がフィリピン滞在中、こんな記事を読みました。」
新聞記事<まにら新聞>2014.1.13 付
Q10「これを読んで、どんな感想をもちますか?
ください」
教えて
3
前時から使用している国旗は
どんな集まりか考える
Q11「前回の授業で使用した 10 種類の国旗。南東アジアの
国々であるというつながりはわかったと思いますが、実は
もう一つ、何か理由のある集まりだったのです。今日授業
した内容に関わりますが、気づいた人はいますか?」
「あの 10 カ国は、東日本大震災のとき、日本に支援の手 →3.11 震災時、日本を支援した国々で
をさしのべた国です。もちろんフィリピンも、日本を助け あることを知る。
た国の一つです」
「例えば、フィリピンのセントベルナルド町は、日本のた
めに募金活動をしました。この町は、2006 年、大規模地
滑りで多くの死者と被害を出し、日本政府から支援を受け
た歴史をもちます。
」
「当時の町長さんのコメントを聞いてください」
町長のことば
「今度は我々が兄弟である日本にお返ししたい。1ペソ、
5ペソ硬貨でも良い。額は少ないかもしれないが、日本へ
の気持ちを表したい」
→
共助
「今度は国と国で、助け合っていたのですね」
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
4
今日の写真
数枚に タイトルをつける
「今日の最後の活動を行いましょう。
→「共助」について、まとめたり気づい
Ann さんは同じ国の中で、ウィリアムくんのような誰か たりする時間とする。
を助けていました。一方、国と国で助け合っていたことも
わかったと思います」
Q12「さて、みんなの机の上に載っている 8 枚の写真。も
う一度見てください。
前に示した 8 枚の写真の中で、同じ国の中の助け合いの
写真はどれかわかりますか?
また、国と国との助け合いの写真はどれかわかります
か?
グループで考えて、2 枚の写真をかかげてみましょう」
Q13「この 2 枚の写真に、タイトル、そして短い文の説明
をつけてください。
」
「この写真は 1班から5班に考えてもらいましょう。
」
「こちらの写真は 6版から 10 班に考えてもらいます。
」
「最後に発表してもらいます。今日の授業で考えたことを
生かして、作成してみましょう」
○各班の発表
5
授業をふり返って感想を交流し、学び合う
Q14「では時間になりました。今日の授業のふり返りを、
この用紙に書いてもらいます。書き終えたら、発表しても
らいます。
」
(ふり返って、感想など記入)
「では、今日の授業をふり返って、コメントしてくれる人
はいますか?」
「今回の授業から、フィリピンに興味をもってくれたらよ
いと思います。これで授業を終了します」
11.評価方法
【関心・意欲】評価方法:行動観察・発言・記述
フィリピンの人々に関心をもったか。
【技能】評価方法:作品・発言
自分の考えをもち、班や学級の中で発信することができたか。
【知識・理解】評価方法:記述
共助することの大切さを理解したか。
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
12.苦労した点・改善点
○知りたいという生徒の知的好奇心への配慮はどうあるべきか。フォトストーリーをどう使用するか。
○題材の整理をどうするか。
○効果的な教具作りはどうあるべきか。
上記 3 点は授業作りにおいてどれも共通した事項である。1 時間目「関心をもたせる」
「イメージを広げさせ
る」ことに主眼を置いて、小さなパズルやクイズを実施したが、
「なぜ日曜日に教会に行くのかな」
「交通費が
ずいぶん安いな」「どうして遠くの学校に通っているのかな」などという素直な疑問に正対させる時間を確保
していなかったことは、改善の余地がある。
「深まり」のない授業の入り口が果たして生徒たちに有効だった
か、大事な 1 時間でどう教材と出会わせるか再考したい。
また、2~3 時間目は連続で実施し、多くの教材・教具を使用した。年の近いふたりを出して親近感をもたせ
たうえで、自然災害と向き合う姿をなんとか自分ごととしてとらえるよう内容編成したが、6 枚の写真を並べ
てのストーリー作り、最後のタイトル付けなどは、授業者の意図に沿った答えや授業の流れに沿った答えをこ
ちらで導いた感が残った。ファシリテートの難しさ、伝えたいことの精選の必要性を改めて感じた。
○「同じ国の中での共助」
「国と国との共助」 二つの共助の整理。
「共助」をキーワードに、国内、そして世界中からの支援、助け合いが見られることに気づき、世界はつな
がっていること、他者に関心をもつことを考えてほしいという願いをもって授業を構成した。しかし、国内、
国同士の共助を考えるうえで用意したたくさんの教具や資料、(同年代の生徒、東日本大震災のときの日本、
恩返しのコメントを出すフィリピンの町長、国旗の数々など)が、決して内容の深まりを生み出したわけでは
ないように思う。また、国内・国同士と、共助のかたちが変わっていることに生徒自らが気づく姿は今回の実
践では見られなかったし、こちらから説明してもリアクションが薄かったようにも思う。今後、授業構成をシ
ンプルにし、
『
「共助」するフィリピンの姿』に思いをはせられるような授業作りができないか検討したい。伝
えたいことを、何を切り口に授業作りをするか、フィリピン訪問時から悩み続けており、未だその答えは出て
いないが、今後も「フィリピン」
「共助」を題材に授業作りをチャレンジしていきたい。
○気づき、葛藤を生み出すことの難しさ。
授業の最後に作るフォトストーリーで、全体的な傾向として「復興ができて笑顔がもどった」という結びを
想像するグループがほとんどだった。
「避難所がもうじき撤収されてしまい途方に暮れている男性の写真」を
最後に配置するグループがあればそこで葛藤が生まれ、気になることが残って授業が終わるように考えたが、
どのグループからのストーリーもそれほど揺れがなかった。こちら側の写真の選択、6 枚の写真を並べる授業
のスタイルなどはこの授業において適切であったか、検討を要すると感じた。
13.授業づくりのための参考資料・引用文献
協同組合 アミティ 「感謝の気持ちを忘れないフィリピンの方々」<最終アクセス 2014.2.3>
http://www4.hp-ez.com/hp/amity/page23
外務省>トップページ>東日本大震災>「がんばれ日本!
世界は日本と共にある」(世界各地でのエピソー
ド集)>目次<最終アクセス 2014.2.3>
http://www.mofa.go.jp/mofaj/saigai/episode/contents.html#01
岩手県大槌町を支援する「大槌町支援チーム高橋鮮魚店」<最終アクセス 2014.2.5>
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
http://otsuchi.sanriku.in/schedule/carpstreamer2.html
アーネル・ピネダ慈善団体 HP
Arnel Pineda Foundation Inc.(APFI)<最終アクセス 2014.2.5>
http://arnelpineda.org/
東北関東大震災の復興応援サイト ねまる HP<最終アクセス 2014.2.5> http://www.nemaru.com/?p=591
14.学びの軌跡(児童生徒の反応、感想文、作文、ノートなど)
<振り返り用紙 から>
1→そう思う 2→どちらかといえばそう思う 3→どちらかといえばそう思わない 4→そう思わない
1
2
3
4
3 時間の授業を通してフィリピンに関心をもつことができた。
76
9
1
2
授業を通して、新たに気づいたこと、大切なことに気づくことができた。
73
10
3
2
<自由記述欄より>
「フィリピンは日本が震災で困ったときに助けてくれた国の一つなんだということがわかりました。一人の人
を思いやることでもいろんなことを深く考えなきゃいけないのに、一つの国を助けることはとても親切なこと
だし大切なことだなと思いました。お互いを思いやる気持ちを忘れないでいることが大事だと思いました。そ
してフィリピンの人々のように、人のためになる職業に就くことや行動をしようと思いました。1 秒でも早い
復興を私は心から祈りました。
」(24HR 女子) 「宗教とかの関係で違う考えはあるけど、やっぱり共通の考え
もあって、そういうのはうれしいなって思った。恩返しとして日本で災害が起きたとき、寄付してくれるのは
うれしい」
(24HR 女子) 「東日本大震災のときも、世界中の人たちが助けに来てくれて、日本はその分他の
国が困ったとき、助けてあげるというつながりがいいなと思った」
(24HR 女子) 「楽しく班の人と交流でき
たし、フィリピンのたくさんのことを学ぶことができた」
(24HR 女子) 「物語にすることで、いろいろなこ
とを考えられた」
(24HR 女子) 「フィリピンへの関心が深まったような気がする。お互いの国が協力できて
いることを知ってうれしくなった。フィリピンと日本のつながりが知られてよかった。フィリピンだけでなく
別の国にも興味をもってみたいと思った」
(24HR 男子)
「3 人の子どものクイズをして、3 人とも国や家族の
ために大きく関わる仕事を将来の夢としてあげていたのはすごいと思った。フィリピンを含む、外国にも目を
向けて旅行をしてみてその国の文化や歴史などを学びたいと思いました」
(24HR 男子)
「フィリピンの人は協力することが多いことがわかった。家族のことを大事にしているところは同じ。他のグ
ループと違う意見が出ておもしろかった。大切なのが、フィリピンでは当たり前なのがわかった」(23HR 女子)
「フィリピンのこと、あと身近な日本のことを知られてよかった。知るだけじゃなくて深く考えることができ
て、めったに自分ではしないことをやれたからよかった。今何をすればいいのか、自然と自分で行動できれば
いいなと思った」
(23HR 男子) 「フィリピンの人は近所づきあいがとてもいいんだなと思いました。日本も
そういう感じになるといいな」
(23HR 女子) 「日本とフィリピンは文化などいろいろ違うけど、支え合おう
とする気持ちは同じだと思いました」
(23HR 女子)
「フィリピンに対して最初思っていた印象と授業を受けてからの印象が大きく変わった。興味がわき行ってみ
たいと思った」(22HR 女子) 「相手に意見を言うことは普段あまりないけど、この授業で自分の意見をもち
相手に伝え実行することができた。フィリピンに興味はなかったけど、この授業で興味をもてた。楽しく学べ
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
た。来年もやってほしいと思った」
(22HR 女子) 「フィリピンの人と友達になりたい」
(22HR 女子) 「フ
ィリピンの子どもたちは私よりもずっとずっと大人で、他の人のことも考え、そして自分の意思をもっていて、
将来のことも考えていてすごいと思った」
(22HR 女子)
「自分はこういう災害のとき、こういうことができるか心配」
(21HR 女子) 「国と国とのつながりがすてき
だと思った。これからも支え合えればいいと思った」
(21HR 女子) 「本場のマンゴーをもっと食べてみたい
と思いました、行ってみたいです。何か自分にできることがあったら取り組みたいです」
(21HR 女子) 「誰
かのために何かをすることはとてもよいことだと思った。前よりもすごくフィリピンに興味をもつことができ
た」(21HR 女子)
<フィリピン写真のフォトストーリーと そのグループがつけた写真の題名> 21HR より抜粋
②多くの人はたくさんのものが流され、たくさんのものを失いました。これからどうすればいいのかもわから
ず住民は困り果ててしまいました。 ③被害を受けてから人々は悲しみました。しかし、世界中の各国からた
くさんの寄付がきて、とてもうれしくなりました。 ④いろんな人たちと助け合い、みんな前向きに生活して
います。これからもみんなで協力して頑張ります。
→ 「国境をこえたつながり」
②台風の影響でたくさんの家が流されていっしょに大量の服も流れた。この人は家をなくしたので、大量の服
を敷き布団代わりにして暮らしている。③食べ物がないため、支給された食料を取りに来ている人たち。みん
な元気に明るい雰囲気。④だいぶ片付けも進んでいます。たくさんの物が流れて悲しいこともあったけど、み
んなと協力して助け合って楽しいでーす。でもまだまだ元に戻るには長いです。 → 「世界の絆」
②そして避難生活を余儀なくされたおじさんたち。フィリピンはどん底状態です。③しかしそんなフィリピン
にもわずかながら希望も見えてきました。他国からの支援物資が集まり、みんなに笑顔が戻りました。④こん
な状態でも子ども達の無邪気な笑顔は私達に勇気や希望を与えてくれますね。 → 「国境を越えたつながり」
②人々はなにもかもをなくしてしまった。だから服をかき集めて売った。③しばらくして食料などいろいろな
ものが届いた。④人々は喜び、笑顔が戻った、そして寄付をした人に感謝をした。 → 「みんなで一つ」
15.備考(授業者による自由記述)
フィリピンで実際に研修しているときから、生徒に何を、どうやって伝えようか大いに悩み、その答えに近
づけていない現状である。
「たくさんの場所で披露して、多くの意見をもらって、授業をどんどんブラッシュ
アップする」ことの大切さを大津先生からご教授いただいたことを金言とし、国際理解教育に携わる強力な仲
間の力を借りながら、自らと世界をつなぎ、仲間と共に未来を創る児童生徒を育成したいと考えている。研修
にあたって、多くの方のご尽力をいただいたことに感謝申し上げます。
教師海外研修(北海道地域)【フィリピン】
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