リフティングを指標とした ボールコントロール評価法 第二報

報告
リフティングを指標とした
ボールコントロール評価法
第二報
一一立位姿勢の重心動揺の比較から一一
辻憲一郎(1)
の可能性を予備的に検討・し，フリーリフテ
[目的]
近年，サッカーの育成年代における技術
イングの回数と左右バランスがポールコン
能力の向上は目覚しい.特にドリプルやト
に有用であることがわかっ
トロールの評価i
ラップ時のボールコントロールにおいては，
0
0回以上，フリー 3
0
0
た.具体的には左右 1
キッズからの取り組みの成果もあり，低年
回以上の選手が特に優れた能力を保有して
齢からレベルの高い選手が多く見受けられ
いた.今回は，それを加味した評価指数の
るようになった.一方で我々は，ジュニア
算出を行い，その再現性(妥当性)を確認
ユース年代の選手に対する指導経験から，
した.また， リフティングにおける左右バ
その年代以降において期待される技術向上
ランスと立位姿勢の静的バランスとの関連
が見られない選手群があることを認知して
を解析した.
いた.この選手群において共通する選手特
性は，プレー動作において利き足の依存度
が著しく高いことである.このことは，
1，
{方法]
対象は NPO法人 BDNAKOSPORTSCLUB
ジュニア年イtにおいてポールコントロール
(以下 B
SC) ジュニアサッカ ースク ールに
スキルが左右両足に対してバランスよく実
4
名(小学 4- 6年生)であ
参加する選手2
施されていなかったこと，また， 2，利き
0
.
56:
t1
.
10
歳.身長は 1
4
3
.
2
る.平均年齢は 1
足のみのスキルアップに偏ったことが原因
:
t6
.
4c
mであった.体重は3
6
.
2:
t7
.
4
k
g
であっ
であると推察してきた.またこれには指導
た.方法は日 本サッカ ー協会公認コ ーチ 4
者やチームの指導方針が，大きく寄与して
名により (B級コーチ 1名
， C級コーチ 3
いるものと推察してきた.
名)により，ゲームでのポールコントロ ー
このことから前回の研究で，先ずこれら
ルの評価指標を，
1.トラップ， 2.パス，
の仮説を明らかにするためのジュニア年代
3
.ドリプルとし，各項目をそのレベルに応
のボールコントロール簡易評価法の確立を
じて 1- 5の 5段階 (l.かなり劣っている，
目的に，リフティングを指標にした評価法
2.劣っている， 3.標準，
4.優れている，
(1)スポーツ開発・支援センター研修員
報告
7
5
.かなり優れている)でスコア化し，その
条件の 60%以 上 満 た し て い る 選 手 を B グ
合計で評価した.リフテイングの測定は右，
以上満たしている選手
ループ，同じく 30%
U
定
左，フリーの各 5分間での最高回数をiJI
を Cグループ，それ以下の低い値の選手を
した.左右，フリーの各リフティングデー
Dグループとして 4グル ープに分類した.
タの評価指数を算出するため，右回数 /
1
0
0，
U
定には，ア
立位姿勢の静的バランスの7Jl
1
0
0，フリー回数 /
3
0
0を行い，その
左回数 /
ニマ社 (
k
k
) 製の重心動揺計ポ ー タブルグ
合計を算出しリフテイング評価指数とした.
7) を使用し ， 1辺 が45cm
ラピコーダ (GS
また，右回数が1
0
0tI.上，左回数が1
0
0以上，
の三角形のフ ォースプ レート上の指定され
0
0回以上の条件を全て満た
フリー回数が3
た場所に，両手は体側に自然に垂らし，足
している選手を Aグループ， Aグループの
底面は踏をつけさせ，つま先を約3
0
度開脚
させた.いわゆる 「
気をつけの姿勢」を保
持させた.静かで明るさが均等な部屋にお
0
秒
いて，開￨浪および閉眼での重心動揺を 3
間測定した.図 1は
， 立位姿勢保持時の重
i
l
1
J
定
風景を示したものである .
心動指l
U
定項目は総軌跡長，単位軌跡長，単位
i
J
I
面積軌跡長，外周面積，矩形面積，
x
!
M
I(
左
MX)， Y制1 (
前
右動)重心平均中心変位 (
左
後動)重心平均中心変位 (MY)， Xi~h (
右動)重心中心変位 (XO)， Y刺1(前後動)
重心中心変位 (YO) である.
図1 立イ立姿勢保持時の重心動揺測定風景
ドリプルコントロール
y=0.
2
763..
.2
.
6
3
4
6
c0
r
.
71
7
リフティング評価指数
図2 リフテイング評価指数と各ポールコントロールスコアとの関係
8 スポーツ開発・支援センタ一年報
第 7巻
リフ テ ィングを指標としたポー ルコント ロー ルZ
干価法
ゲーム 中ボ ￨ル コント ロー ル評価指数
[結果]
リフテ ィング評価指数及びゲーム中ボ ー
ルコントロ ール評価指数は， 有意な相関関
係 (
r=0.
7
7
6，p<0
.
0
01
) を認めた (
図 2，
. 各グループの総軌跡長，単位
図 3，表 1)
時間軌跡、長，外周面積の平均値 は
， その リ
フティング評価指数の程度 に相関 し，低い
グル ープ程，大きくなる傾 向を認めた(図
第二報(辻)
"
，
.
"
'
0
a
e
‘.~
~ .1
ム
.
f.
.
‘==
y 0
.
8
7
9
5xゃ 7.
57
36
，
. 0.
776
Pく 005
‘
:
。
。
Log
また左右 リフテ イングバ ラ ンス (
2
。
6
4
リフティング評価指数
右回数/左 回数 :Log
R/L)は， 前後動の重
図3 リフティング評価指数と ゲーム中ポー
心動揺の指標である M Y，YOと有意な相関
ルコントロール評価指数 との関係
(
MY
;1'=0
.
4
62，p<0
.
0
5，YO;r=
O
.
4
27，p
グループ
<0
.
0
5)が認められた. (
図 5，表 2) リフ
テ ィング評価指数の高い選手とそうでない
リファイング リファイング ゲーム中ポー
5
'
f
価
指
数
左右バランス ルコントロー
ル評価指数
(
L
.
O
g
=
V
l
J
選手の立位姿勢にお ける重心動揺測定結果
A
5
.8
1
O
.
1
0
2
.5
1
図 6).
(開眼) の一例を示 した (
B
3.
回
0
.
3
4
1
1
.25
C
2
.1
7
D
。回
。
日
。42
9
.
7
8
7
.
8
5
表1 各グループのリフテ イング評価指数
及びゲーム中ポール コン トロー ル評価指数
0開眼
0開眼単位時間軌跡長 (
c
m
/
s
) 0開眼
総軌跡長 (
c
m)
総弱
車
t
I 50・
跡
長崎
4
6
.
6
0
単 1B
位 1.
7
時
間
1
.
6
軌
t<
跡…
長1.4
o
3
外周面積(口ミ)
5
5
.
5
4
40
O 1.
3
ミけ
35・
曲
目
3T
坦5ー
1
.9
6
0
外周面積 (
c
前
)
日
2
.7
2
.
61
2
.
61
'
2.
4.
;
2.
22
2
.25
B
c
2.
2
2
1
.
6
1
.
6
1
.
4
戸
1
.2
3
0
A
同 富 田n叫自関係数
有窓抱1Il(
両側}
日
c
-0
.35
0.
00
。
1
A
日
par
田 nの1
目l
関係
量
生
有Il.
富率 {
両側}
c
D
-0
.
3
5
0.
00
A
円盟r
皿 nの相関係数
有怠強率{南側}
D
0.28
ー
0
.
1
9
図4 各グルー プのリフテ ィング評価指数 と童心動揺の相関
報告
9
。
。
0.
4
0
.
2
@
・
‘
a a
凹邑
0.
6
0.
8
。
。
。
1.
0
皿
.
1
人.
E
>
0
.
6
1
湾 〉之
- D
ヨ
口
.@
-5
@
戸
y=-2
.
7714
x-1.
5
8
89
戸 0
.
427
0.
462
υ
左右 リフテ ィングバランス(LogR!
左右リフティングパランス (
L
勾R!L)
図5 左右リフテイングバランス (LogRI
し)と重心動揺の相関
重心動揺項目
有意確率
相関係数
MX(
c
m
)
MY(
c
m
)
XO(
c
m
)
YO(
c
m
)
0.056
ー0
.
462
o
.
刃5
0.037
ー0
.427
0.862
0.
023
取
0.
038*
表2 左右リフティ ングバラン ス (
LogRlし)と重心動揺の相関
4
Y
総軌跡長 "師、
38.83c
r
n
総軌跡長
91
.0
9
c
r
n
一一_
.
?
<
_
.
-2
.
・4
MY
.
，
'
c
伽
t忠則 "
，
MY
E
.
1
.17cr
n
o
.
2
2
cr
n
YQ
・
1
.15cr
n
YQ
・
5.
86cr
n
'0
'
0
1
.
0
2
1
-
@
~ C: O )
0.
8
1-3
3
i
0.
4
。
y
_
e1
0.
2
0
etι詰
¥0
，
2f
亙
一 -='il画
-1
面
1n
・
・
・
LP E
コン トロール評価の高い選手
ヨントロ ール評価の低い選手
らogJU
L
:O
.
1
2
. ゲーム野伝 12;
)
:
イ ント
) (LogJUL:O
.
40. ゲーム評価 6
.
3
8ポイン ト}
図6 立位姿勢における重心動揺測定結果の一例図(開眼)
1
0 スポー ツ開発 ・支援センタ 一年報
第 7巻
リブテイングを指標としたボールコントロール評価法
第二報 (
辻)
[考察]
リフテイング評価指数とゲーム中コント
ロール評価指数とに有意な相関関係が認め
はゲー
られたことから，リフテイング評価i
ムでのポールコントロールの評価法として
有用であることが再現された.また，リフ
テインク・の左右バランスは，動的バランス
の安定性が一部関係しており，特にリフテ
イングの左右バランスの交E性が低い選手
は，立位姿勢の重心が中心点より後方に位
置した.これらは抗重力筋の作用および足
関節の伸展，屈曲の動作が機能していなか
寺
ったものと推察される.これは立位姿勢n
の前後バランスが，ボールコントロール能
力における重要な要因の一つである可能性
を示唆する.今後の課題としては，重心補
正のトレーニング方法やシューズの改良に
よりその改善が可能かどうか検討したい.
[結論]
リフテイング評価指数がボールコント
ロール能力の指標として有用であり，リフ
テイングを指標としたボールコントロール
評価法は妥当であることが示唆された.ま
た，左右バランスが惑いグループほど重心
の中心点が後方にあり，良いグループほど
中心に近いという値を示した.
報告
1
1