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交通事故におけるドライバーの責任と応急救護処置

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交通事故におけるドライバーの責任と応急救護処置
★交通事故(人身事故)が発生した場合、運転者等には負傷者を救護することが義務づけられており、
迅速・適切な「応急救護処置」を行えば、負傷者の命を取り留めたり、後遺症の軽減を図ることが
事業所ドライバーによる応急救護処置の実態は…
可能です。
※(社)日本交通福祉協会「職業ドライバーの応急救護処置講習の受講実態等に関する調査研究」
(2005年)より
※全国の貨物運送事業所と安全運転管理者選任事業所のドライバー計1,138人を対象にしたアンケート調査
★そこで、北海道では、安全運転管理者等が運転者に対して実施する安全教育に役立てていただく
ため、指導用の教材を作成することとしました。本書では、交通事故の当事者になったときや負
傷者がいる現場を通りかかったときに、率先して「応急救護処置」を講じることができるよう、そ
のポイントをわかりやすく解説します。
交通事故があったとき、その車のドライバーには、
負傷者の救出や安全な場所への移動、119番への通報、
医師・救急車が到着するまでの間の止血・心肺蘇生などの可能な「応急救護処置」などを
行わなければならない義務が課されています。
事故現場で応急救護処置を行ったドライバーは少ない…
7人に一人が
事故負傷者と遭遇
応急救護処置を行った
ドライバーは4割程度
■応急救護処置が必要と思われる
交通事故負傷者との遭遇経験
■交通事故負傷者と遭遇した
ドライバーの応急救護処置の実施状況
わからない
3.9%
無回答8.0%
遭遇した
ことがある
交通事故の場合の救護(緊急)措置義務(道路交通法第72条第1項前段)
★「車両等の交通による人の死傷又は物の損壊が
あったときは、当該車両等の運転者その他の
乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、
負傷者を救護し、道路における危険を防止す
る等必要な措置を講じなければならない。」
※運転者には「救護(緊急)措置義務」に加え、警察官が現場にいたり
来合わせた場合はその警察官に、また、現場にいない場合は直ち
に最寄りの警察署
(交番・駐在所を含む)
の警察官に、交通事故が
発生した日時・場所、死傷者の数および負傷者の負傷の程度など、
所定の事項を報告しなければならない義務も課されている。
(道路交通法第72条第1項後段)
現場を立ち去ったり、
車を持ち去ったりすると、
「ひき逃げ」で厳罰
無回答
2.6%
1.0%
受講した
ことがある
17.4%
24.3%
38.2%
実施した
ことがない
受講した
ことがない
必要だと思う
77.0%
59.0%
72.1%
心臓停止後3分間放置されると、
半数の人が死亡する…
■緊急事態における経過時間と死亡率の関係
(カーラーの救命曲線、一部改変、1981年)
100
%
●心臓停止や呼吸停止などの緊急事態における経過時間と死亡率
の関係を示した「カーラーの救命曲線」によると、たとえば心
臓停止後3分間放置された場合の死亡率は5
0%となり、呼吸停
止では1
0分間放置されると死亡率は5
0%となります。
死
75
%
心臓停止
呼吸停止
出血
亡 50
%
率
25
%
0%
30 1
秒 分
2
分
3
分
5
分
10
15
30
分
分
分
経 過 時 間
1
時間
事故現場に居合わせた人による
適切な処置の有無が生死を分ける…
警察官の指示に従う
応急救護処置を行う
救急車を呼ぶ
危険防止の措置
●事故の続発を
防ぐための
車両の移動など
警察官に報告
2
わからない
0.9%
●このことから、救急車が事故現場に到着するまで、手をこまね
いて見ているだけでは、命を救うことは極めて困難になること
がわかります。
警察官がいるとき
負傷者
あり !
!
無回答
4.7%
応急救護処置 の 必要性
交通事故を起こしたときは…
事故発生!
!
※運転免許取得時の講習
(教習)
を含む
必要だとは
思わない
実施した
ことがある
ドライバーとしての責任を自覚し、
72.9%
■応急救護処置講習の受講状況
わからない
15.2%
遭遇した
ことがない
講習受講経験がない
ドライバーが7割以上も
■応急救護処置に関する知識の必要性
わからない 1.1%
無回答 1.7%
しかし、「応急救護処置」の実施率は依然として低いのが実情です。
いざという場面で「心肺蘇生」などを必ず実施できるようにしましょう。
大半が応急救護処置の
知識の必要性を認識
●心肺停止状態に陥った負傷者の命を救うためには、
いかに早く適切な処置を行うかが生死の境目となり、
事故現場に居合わせた人は、1
1
9番への「迅速な通報」
を行うとともに、
心臓マッサージ(胸骨圧迫)と人工呼吸による
「迅速な心肺蘇生」
AED(自動体外式除細動器)を使った
「迅速な除細動」
などの「一次救命処置」を実施し、「二次救命処置」
(救急救命士や医師による高度な救命医療)に途切れ
ることなく引き継ぐことが必要です。
■救命の連鎖
迅速な通報
迅速な心肺蘇生
迅速な除細動
二次救命処置
※
「除細動」
…心臓が細かくふるえる「心室細動」によって心臓停止が
生じたときに、電気ショックを与えて心臓の動きを取り戻すこと。
※
「心肺蘇生」と「除細動」、異物で窒息をきたした場合に行う「気道
異物除去」の三つを総称して「一次救命処置」という。
3
2
応急救護処置 の 手順
負傷者の発生
反応あり
(負傷者の適切な体位と
移動、止血法など)
反応の確認
反応なし
応急手当
※大声で叫んで助けを呼ぶ、119番通報、AEDの手配
大声で叫んで助けを呼び、
119番通報をしてAEDを手配する
●負傷者に反応がない場合は、
「誰かきてください!」など
と大声で叫んで助けを呼び、1
19番に通報します。また、
近くにAEDがあるときは、それを持ってくるように頼み
ます。
●大声で叫んでも誰もこない場合、手元に電話がないとき
は、負傷者のそばを離れてでも1
19番通報し、近くにAED
があることがわかっていれば、自分で取りに行きます。
気道を確保し、呼吸を確認する
している
普段通りの息をしているか?
一
次
救
命
処
置
回復体位にして、
様子を見守りながら
救急車の到着を待つ
※AEDは、JR・地下鉄の駅や、市町村庁舎、体育館、学校、
大型商業施設などに設置されており、その設置数は徐々に
増えつつある。
■地下鉄の駅構内に
設置されているAED
していない
3
人工呼吸を2回 ※省略してもよい
心臓マッサージ3
0回と人工呼吸2回を繰り返す ※人工呼吸は省略してもよい
AED装着
心電図解析
電気ショックの必要あり
電気ショック1回
その後、直ちに心肺蘇生を再開
(5サイクル・2分間)
電気ショックの必要なし
直ちに心肺蘇生を再開
(5サイクル・2分間)
気道を確保し、呼吸を確認する
■気道確保の方法
●負傷者をあお向けに寝かせ、片手で負傷者のひたいを押
さえながら、もう一方の手の指先をあごの先端にあてて
持ち上げ、のどの奥を広げます。
●気道を確保したら、顔を負傷者の口元に近づけ、胸の動
きや息の有無を観察します。5∼10秒間観察してみて、
普段通りの息(正常な呼吸)がなければ、
「心肺停止」と判
断し、
「心肺蘇生」を開始します。
●反応はないが普段通りの息がある場合は、負傷者を注意
深く観察しながら、救急車の到着を待ちます。
二 次 救 命 処 置
救急救命士や医師による高度な救命医療
一次救命処置 の 実施
1
負傷者の反応を確認する
●負傷者を発見したときは、周囲を見回して安全を確認し
たうえで、負傷者の肩をやさしくたたきながら大声で呼
びかけます。
●目を開ける、何らかの返答がある、痛みで体を動かすな
どのしぐさが認められないときは「反応なし」とみなし
ます。なお、心臓停止直後には引きつるような動き(け
いれん)が起こることもありますが、けいれんしか見ら
れない場合も、
「反応なし」として対応します。
4
※参考文献:
「改訂3版・救急蘇生法の指針《2005》」
(へるす出版)
4
人工呼吸を2回行う
●負傷者の気道を確保したまま、口を大きく開いて負傷者
の口をおおって密着させ、ゆっくりと息を吹き込みます。
この際、吹き込んだ息が負傷者の鼻から漏れ出さないよ
うに、ひたいを押さえているほうの手の指で負傷者の鼻
をつまんでおきます。
【人工呼吸のポイント】
●胸が上がるのが
見えるまで
●約1秒間かけて吹き込む
●吹き込みは2回
※人工呼吸を行うことによって救助者がウイルスなどに感染
する危険性はきわめて低いとされているが、ゼロではない。
人工呼吸を行うにあたっては、感染防護具を使用すること
が望ましいが、感染防護具がない場合や口と口が直接接触
することに躊躇する場合は、人工呼吸ができなくても、心
臓マッサージだけでも実施することが強く推奨される。
※心肺蘇生のためには、心臓マッサージが最も重要であり、
これだけでも負傷者の救命率は大幅に向上する。
息を2回吹き込む
吹き込んだ息が
自然に出るのを待つ
5
5
心臓マッサージを行う
■胸骨圧迫をする場所
応急手当 の 実施
●2回の人工呼吸が終わったら、直ちに心臓マッ
サージを開始します。胸の真ん中に一方の手の
ひらの基部(手掌基部)をあて、その手の上にも
う一方の手を重ねて置きます。
負傷者の体位と移動
●救急車が到着するまで、負傷者が楽になるような姿勢に
して安静を保ちます。ただし、車が通る路上など負傷者
が危険な場所にいる場合は、安全な場所に移動させます。
●垂直に体重が加わるように両ひじを真っすぐに
伸ばし、肩が圧迫部位の真上になるような姿勢
をとり、圧迫を繰り返します。
【心臓マッサージのポイント】
●胸の真ん中(乳頭と乳頭を結ぶ線の真ん中)
●強く(胸が4∼5センチ程度沈むまで)
●速く(1分間に約1
00回のテンポで)
●絶え間なく(30回連続で)
●圧迫の十分な解除
6
心臓マッサージ30回と人工呼吸2回を繰り返す
●心臓マッサージを30回続けたら、その後は人工呼吸を2回
行います。この心臓マッサージ30回と人工呼吸2回の組み
合わせを絶え間なく続けます。
【心肺蘇生はいつまで続けるか】
●負傷者が動き出す、うめき声を出す、
普段通りの息を始めるまで
●AEDを装着するまで
●救急隊などに引き継ぐまで
●特に疲れてくると圧迫が弱くなったり、テンポが遅くなった
りしがちですので、もし他に手伝ってくれる人がいる場合は、
2分を目安に交代します。
7
●「心肺蘇生」が必要となる場合は、頭や首(頸椎)がねじれ
ないように頭を支えながらあお向けにします。
止 血 法
■直接圧迫止血法
●市民が行う止血の方法としては、出血部位をガーゼや布
などで直接に圧迫する方法(直接圧迫止血法)が推奨され
ています。
●出血部位を確認したら、ガーゼやハンカチ、タオルなど
を重ねて出血部位にあて、その上を圧迫します。圧迫位
置が出血部位から外れていたり、圧迫する力が弱いとう
まく止血できませんので、出血部位を確実に押さえるこ
とが重要です。
②AEDを準備する
※「心肺蘇生」を行っている途中でAEDが届いたら、すぐに
AEDを使う準備に移る。
「心肺蘇生」を開始する前に届い
た場合は、AEDの使用を優先する。
③電源を入れる
④電極パッドを張りつける
⑤心電図の解析
⑥電気ショックと「心肺蘇生」の再開
※電気ショックのあと、または、AEDからショック
不要の指示が出たら、直ちに心臓マッサージを行い、
「心肺蘇生」を再開する。
⑦「心肺蘇生」とAEDの手順の繰り返し
■電極パッドの張りつけ
※止血の際には、救助者が負傷者の血液に触れると
感染を起こす危険性があるため、できる限りビニー
ル手袋やビニール袋を使用する。
しっかり習得し、勇気をもって実施!
①AEDを持ってくる
6
●負傷者が正常な呼吸はしているが、おう吐や吐血などが
見られる場合や、救助者が自分一人のみで、やむを得ず
負傷者のそばを離れる場合には、負傷者を横向きにした
姿勢(回復体位)にします。
AEDを使用して「除細動」を行う
●AEDはコンピュータ作動によって、自動的に心電図を解
析して「除細動」が必要かどうかを決定し、電気ショック
を音声メッセージで指示するため、簡単・確実に操作す
ることができます。安全に使用するためには次の手順で
行います。
■回復体位
※「心肺蘇生」を再開してから2分
(心臓マッサージ30
回と人工呼吸2回の組み合わせを5サイクルほど)
た
つと、AEDが自動的に心電図を解析し、電気ショ
ックが必要かどうかを決定する。以後、
「心肺蘇生」
とAEDの手順を繰り返す。
◆現在、運転免許の取得時に「心肺蘇生」などの「応急救
護処置講習」の受講が義務づけられ、
「応急救護処置」
について学んだことがある人は徐々に増えつつありま
すが、講習を1度受講した程度では、いざという場面
で自信をもって「心肺蘇生」などを実施することは難
しいため、(社)日本交通福祉協会や日本赤十字社、各
地の消防署などが実施する講習を繰り返し受講するな
どして、しっかり習得することが必要です。
◆また、「心肺蘇生」などを習得していても、不成功だ
ったときの責任追及を恐れ、手を出さない―という人
も多いのが現状ですが、善意による「応急救護処置」
の結果についてかつて法的責任が問われたことはない
うえに、そもそも心肺停止に陥った瀕死の負傷者は、
そのまま放置すれば死亡することが避けられませんの
で、勇気をもって実施すべきであることをしっかり理
解することが大切です。
※本書における「一次救命処置」
、
「応急手当」の内容については、
(財)日本救急医療財団心肺蘇生法委員会が2006年
6月に策定
(改訂)
した「日本版救急蘇生ガイドライン」に基づいています。
※紙面の都合上、実施手順・方法などの概要を掲載しています。また、小児
(1∼8歳未満)
および乳児
(1歳未満)
に
対する「一次救命処置」については、その方法などが成人
(8歳以上)
に対するものと異なりますので、詳細は各種
講習などで確認してください。
7
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037002S・再生紙使用
● 編集・発行 ●
北海道環境生活部生活局くらし安全課
〒060--8588 札幌市中央区北3条西6丁目
011--204--5219
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