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2 冬季における有効な加湿方法 (PDF:194KB)
2 冬季における有効な加湿方法 2 冬季における有効な加湿方法 冬 季 は 低 温 低 湿 の 外 気 の 影 響 に よ り 、施 設 内 も 湿 度 が 低 く 乾 燥 し ま す 。乾 燥 状 態 が 続 く と 、イ ン フ ル エ ン ザ ウ イ ル ス が 活 性 化 す る と と も に 、人 の 呼 吸 器 粘 膜 に 付 着 し た ウ イ ル ス に よ る 感 染 が 起 こ り や す く な り ま す 。こ の た め 冬 季 に イ ン フ ル エンザが蔓延しやすくなります。 そこでみなさんの施設では、加湿器を使用して乾燥を防いでいます。しかし、 卓 上 型 加 湿 器 を デ イ ル ー ム や 食 堂 に 設 置 し て い る に も か か わ ら ず 、目 標 の 相 対 湿 度 を 確 保 す る こ と が で き な い 、と い っ た 話 を よ く 耳 に し ま す 。卓 上 型 加 湿 器 か ら 水 蒸 気 が 勢 い よ く 出 て い れ ば 、視 覚 的 に 良 い 環 境 で あ る と 錯 覚 し て し ま う も の で すが、適正な相対湿度を確保できなければ意味がなくなってしまいます。 加 湿 す る こ と の 重 要 性 を 再 認 識 す る と と も に 、加 湿 器 を 上 手 に 利 用 し 適 正 な 相 対湿度を確保することでインフルエンザウイルスの感染を防止しましょう。 加湿の重要性 イ ン フ ル エ ン ザ の 予 防 で 最 も 基 本 的 な こ と は 、ウ イ ル ス を 施 設 内 に 持 ち 込 ま な いことです。 しかし 施 設 内 に は 介 護 者 や 面 会 者 な ど 様 々 な 人 が 出 入 り を し て お り 、ウ イ ル ス の 侵 入 をゼロにすることは非常に困難です。 そこで た と え ウ イ ル ス が 持 ち 込 ま れ た と し て も 、ウ イ ル ス が 生 き て い け な い 室 内 環 境 を作ります。 すなわち 重要 ウイルスは乾燥には強いことから、逆に加湿をして適正な相対湿度を確保す ることが必要になるのです。 同 時 に 人 の 呼 吸 器 粘 膜 が 乾 燥 し な い た め 、ウ イ ル ス に 感 染 し に く く な り ま す 。 乾燥していると・・・ 加湿していると・・・ インフルエンザ 空気中の水分 ウイルス ウイルスはほこりと共に舞い上がり、 人に感染しやすくなります。 - 46 - 水分量が多いと、ウイルスは浮遊す ることができず活性も低下します。 目標とする相対湿度 目標とする相対湿度はズバリ40%以上です。 インフルエンザウイルスの生存率(Harperらの報告) 70 60 ︵ 生 50 存 率 40 相対湿度 20% 相対湿度 50% 相対湿度 80% 30 ︶ % 20 10 0 10 22 温度(℃) 32 上 図 は イ ン フ ル エ ン ザ ウ イ ル ス の 生 存 率 を 温 度 別 、相 対 湿 度 別 に 示 し た も の で す 。温 度 2 2 ℃ 、相 対 湿 度 2 0 % で は 6 0 % 以 上 が 生 存 し て い ま す が 、相 対 湿 度 5 0 % で は ほ と ん ど 生 存 で き な い こ と が 分 か り ま す 。イ ン フ ル エ ン ザ ウ イ ル ス と 湿 度 の 関 係 に つ い て は 、こ れ 以 外 に も 報 告 が あ り ま す が 、い ず れ も 水 分 量が多いほどウイルスの生存率が低くなる、という結果がでています。 こ の よ う な こ と か ら も 、※「 建 築 物 に お け る 衛 生 的 環 境 の 確 保 に 関 す る 法 律 」 (通称:建築物衛生法)では、相対湿度の基準値は「40%以上70%以下」 と 定 め ら れ て い ま す 。社 会 福 祉 施 設 は こ の 法 律 に は 該 当 し な い 建 物 で す が 、努 力 義 務 が あ り ま す の で 、冬 期 に 相 対 湿 度 4 0 % 以 上 を 確 保 す る こ と が 必 要 で す 。 ※ 「 建 築 物 に お け る 衛 生 的 環 境 の 確 保 に 関 す る 法 律 」( 通 称 : 建 築 物 衛 生 法 ) 事 務 所 や 店 舗 等 の 延 べ 床 面 積 が 3 0 0 0 ㎡ 以 上 あ る 建 物 に つ い て 、室 内 空 気 、 飲 み 水 、排 水 、清 掃 、ね ず み・衛 生 害 虫 の 防 除 等 の 維 持 管 理 基 準 を 定 め て い る 法律です。 (参考)空気環境の管理基準値 項目 基準値 温度 17℃以上28℃以下 冷房時には外気との差を著しくしない 相対湿度 気流 浮遊粉じん 二酸化炭素 一酸化炭素 ホルムアルデヒド 40%以上70%以下 0.5m/秒以下 0.15mg/㎥以下 1000ppm以下 10ppm以下 0.1mg/㎥以下 - 47 - 相対湿度と絶対湿度 相 対 湿 度 と は 、そ の 空 気 の 中 に 含 む こ と が で き る 最 大 の 水 分 量 に 対 す る 実 際 に 含 ま れ て い る 水 分 量 の 割 合 を い い ま す ( % )。 通 常 「 湿 度 」 と 呼 ば れ て い る の が これです。 絶 対 湿 度 と は 、 そ の 空 気 の 中 に 含 ま れ て い る 水 分 量 そ の も の で す ( g/kg’)。 実際の水分量 これが絶対湿度 ( g/㎏ ’) ×1 0 0 = これが相対湿度(%) 最大の水分量 1㎏の空気 こ の 場 合 、実 際 の 水 分 量 は 最 大 の 水 分 量 の 半 分 な の で 、相 対 湿 度 は 5 0 % と な ります。 温度と相対湿度と絶対湿度の関係 下 表 は 、 相 対 湿 度 が 40% の 時 の 温 度 と 絶 対 湿 度 の 変 化 を 表 し た も の で す 。 温度と絶対湿度の関係(相対湿度40%) 温度 相対湿度 絶対湿度 0℃ 40% 1.5g/kg’ 10℃ 40% 3.0g/kg’ 20℃ 40% 5.8g/kg’ 30℃ 40%10.7g/kg’ 温 度 が 上 昇 す る と 空 気 の 容 積 は 大 き く な り 、最 大 の 水 分 量 も 多 く な り ま す 。こ のため相対湿度が40%で同じでも、その水分量(絶対湿度)は多くなります。 - 48 - 冬季における湿度管理手法調査 ∼平成16年度の調査結果より∼ 居室や食堂に温湿度連続測定器を24時間設置しました。 (1)温湿度の実態調査 (ア)温度の実態 暖かい A施設の温度 ℃ 30 居室110 25 居室111 20 約3℃ 15 10 食堂 足 元 付 近 は 常 に 3℃ 程 低 い 食堂足下 5 冷たい 0 -512:00 外気 16:00 20:00 1/5 0:00 4:00 8:00 1/6 12:00 A 施 設 の 温 度 は 居 室・食 堂 と も 2 5 ℃ 前 後 で し た 。ま た 、足 元 と の ※「 上 下 温度差」は平均で3℃程度でした。 ※ 上 下 温 度 差 : ISO( 国 際 標 準 化 機 構 の 規 格 ) で は ±3 ℃ 以 内 を 推 奨 し て い ま す 。こ れ を 解 消 す る に は 、設 定 温 度 を 抑 え る か 扇 風 機 な ど で 空気をかくはんしましょう。 (イ)相対湿度の実態 % 100 A施設の相対湿度(食堂のみ卓上型加湿器設置) 80 居室110 60 居室111 40 食堂 20 0 12:00 外気 16:00 20:00 1/5 0:00 4:00 8:00 1/6 12:00 A 施 設 の 相 対 湿 度 は 居 室 が 平 均 1 0 % 、食 堂 で も 1 2 % し か 確 保 で き ず 卓 上 型 加湿器の効果はほとんどみられませんでした。 - 49 - (2)有効な加湿方法の検証 加 湿 能 力 の 違 う 2 種 類 の 卓 上 型 加 湿 器 を 居 室 に 設 置 し 、相 対 湿 度 に 差 が み ら れ るか調査しました。 居 室 2 0 1 : ※ 十 分 な 能 力 の あ る 加 湿 器 を 設 置 ( 加 湿 能 力 7 0 0 ml/h) 居 室 2 0 8 : 能 力 が 不 足 し て い る 加 湿 器 を 設 置 ( 加 湿 能 力 3 5 0 ml/h) 食堂:加湿器設置せず 加 湿 能 力 7 0 0 ml/h 加 湿 能 力 3 5 0 ml/h ※居室の容積等から相対湿度40%以上を確保するための必要加湿量を計算 し選定。 B施設の相対湿度 % 100 居室201 80 60 居室208 40 食堂 20 外気 0 16:00 20:00 0:00 4:00 8:00 12:00 16:00 20:00 0:00 4:00 8:00 1/7 1/8 1/9 B 施 設 の 相 対 湿 度 は 、十 分 な 能 力 の あ る 加 湿 器 を 設 置 し て い た 居 室 2 0 1 で は 常 に 4 0 % を 確 保 で き て い ま し た 。し か し 、能 力 が 不 足 し て い る 加 湿 器 を 設 置 し て い た 居 室 2 0 8 及 び 加 湿 器 が 未 設 置 の 食 堂 で は 、4 0 % を 確 保 す ることができませんでした。 居室201では・・・ 食堂では・・・ - 50 - (3)ぬれタオルの効果検証 居室にぬれタオルを設置しその効果を検証しました。 居室213:能力が不足している加湿器を設置 居 室 2 0 7 : 能 力 が 不 足 し て い る 加 湿 器 +ぬ れ タ オ ル 設 置 % C施設の相対湿度 100 居室213 80 60 居室207 40 20 0 12:00 1/11 外気 0:00 12:00 1/12 0:00 12:00 1/13 0:00 C 施 設 の 相 対 湿 度 は 、居 室 2 1 3 、居 室 2 0 7 と も 4 0 % を 確 保 す る こ と が で き ま せ ん で し た 。居 室 2 0 7 は ぬ れ タ オ ル を 設 置 し ま し た が 、そ の 効 果 は ほ と ん どみられませんでした。 - 51 - 参考)ぬれタオルからどのくらいの水分量が蒸発するかの検証実験 場所:保健所の小部屋(当日の温湿度平均24℃、45%) 使用したもの:フェイスタオル1枚、ハンガー、扇風機 方 法:一 般 の フ ェ イ ス タ オ ル( 6 4 .6 g)を 水 で ぬ ら し 、水 滴 が 垂 れ な い 程 度 にしぼり、1時間ごとにその重さを測定して蒸発量を算出しました。 ぬれタオルの重さと蒸発した水分量(時系列) g 250 ぬらした直後 223 190.6 200 ぬれタオルの重さ 蒸発した水分量 227.2 172.3 172.2 149.6 150 123.3 100 127.1 102.3 55 50 32.4 18.3 22.7 26.3 77.1 50 45.1 21 0 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 扇風機弱運転 扇風機停止 扇 風 機 停 止 時 の 平 均 蒸 発 水 分 量 は 2 4 .1 g で 、 約 7 時 間 で 乾 い て し ま う 。 扇 風 機 弱 運 転 時 の 平 均 蒸 発 水 分 量 は 5 0 .0 g で 、約 3 時 間 で 乾 い て し ま う 。 1 時 間 あ た り 5 0 g の 水 分 量 が 加 湿 さ れ た と す る と 、2 0 ℃ 、2 0 % の 乾 燥 し た 居 室( 4 人 部 屋 )に お い て 、計 算 上 わ ず か 約 4 % し か 相 対 湿 度 を 上 昇 さ せ ることができません。 相対湿度 24%にしか 20% 上がらない ぬれタオルを 1 枚 おいたとしても - 52 - (4)まとめ ① 食 堂 や デ イ ル ー ム な ど 大 き い 空 間 で は 、卓 上 型 加 湿 器 で は 相 対 湿 度 4 0 % を 確保することが難しい。 ② 居 室 に つ い て は 能 力 の あ る 加 湿 器 を 設 置 す れ ば 、相 対 湿 度 4 0 % を 確 保 す る ことが可能である。 ③ぬれタオルでは相対湿度40%を確保することが難しい。 ② に つ い て は 、卓 上 型 加 湿 器 が 居 室 の 数 だ け 必 要 と な り 、維 持 管 理 の こ と を 考 え る と 非 常 に 大 変 で 現 実 的 な 解 決 に は な り ま せ ん 。ま た 、入 所 型 施 設 で は 入 所 者 は 2 4 時 間 生 活 し て お り 、昼 間 は 食 堂 や デ イ ル ー ム な ど で 過 ご す こ とが多く、この広い空間も加湿する必要があります。 従って 重要 卓 上 型 加 湿 器 は 補 助 的 に 利 用 し 、他 に 施 設 内 の 食 堂 や 居 室 の 大 き さ( 容 積 ) 全体に見合った必要加湿量を確保できる十分な能力のある加湿器を設置する ことが重要です。 送風ファン 蒸気がでるところ この中で蒸気をつくる 熱源は電気 水道配管 食堂の壁に設置された大型加湿器 (蒸気タイプ) - 53 - 有効な加湿器の選択方法 例 え ば 次 の よ う な 施 設 で は 、ど れ ぐ ら い の 能 力 の あ る 加 湿 器 を 選 定 す れ ば よ い でしょうか。 天 井 高 2.5m 居室 居室 201 食堂 203 15m 全体の容積 居室 居室 居室 205 206 207 デイルーム 居室 居室 居室 208 210 211 居室 居室 居室 212 213 215 1875 ㎥ 50m 温湿度条件で表すと・・・ 外 気( 仮 定 ) 温度 :0℃ 相対湿度:50% 絶 対 湿 度:1 .9 g/㎏ ’ 室 内( 目 標 ) 暖房と加湿 温度 :22℃ 相対湿度:40% 絶 対 湿 度:6 .7 g/㎏ ’ 必要加湿量は下記の式から求めます。 必 要 加 湿 量( g/h )= 風 量 ×外 気 と 室 内 と の 絶 対 湿 度 差 ×空 気 の 比 重 ※風量:すきま風等により1時間に1回全体の空気が入れ替わるとする と 1 8 7 5 ㎥/h 絶 対 湿 度 差 : 4 .8 g/㎏ ’( 6 .7 − 1 .9 ) 空 気 の 比 重 : 1 .2 kg/㎥ ※ ロ ス ナ イ な ど の 換 気 装 置 が 設 置 さ れ て い る 場 合 は 、そ の 風 量 を あ て は め て 計 算します。 以 上 の 数 値 を 式 に あ て は め る と 、1 8 7 5 ×4 .8 ×1 .2 = 1 0 ,8 0 0( g/h) し た が っ て 、1 時 間 に 1 0 ,8 0 0 g( 1 0 .8 ㎏ )以 上 の 加 湿 能 力 を 持 つ 加 湿器を選定する必要があります。 - 54 - ち な み に 、こ の 量 は 卓 上 型 加 湿 器 お よ そ 2 0 台 分 に も な り ま す 。維 持 管 理 の こ と を 考 え る と 、卓 上 型 加 湿 器 で 適 正 な 相 対 湿 度 を 確 保 す る こ と は 非 常 に 難 し いことがわかります。 重要 室内温度が室内条件の22℃を超えている場合、相対湿度40%を確保す るためにはそれだけ多くの絶対湿度が必要になります。このため加湿能力に は 十 分 な 余 裕 を 持 た せ る こ と が 重 要 で す 。例 え ば A 施 設 の よ う に 室 内 温 度 が 2 5 ℃ を 超 え て い る 場 合 、絶 対 湿 度 が 8 .2 g/kg’以 上 確 保 で き な い と 相 対 湿 度40%を確保することができません。 加湿器の設置方法 ① 大 型 空 調 機 が あ る 場 合 、そ の 風 量 等 か ら 加 湿 能 力 を 算 出 し 、そ の 中 又 は ダ ク ト内に設置します。 空調機内に設置された 加湿器 ②食堂などの壁に取り付けます。 廊下の壁に設置された 加湿器 ③小部屋などは補助的に卓上型加湿器を設置します。 施設長室に置かれた 卓上型加湿器 - 55 - 加湿時に気をつけること ① ロ ス ナ イ な ど の 換 気 装 置 は 、常 に 熱 交 換 モ ー ド で 運 転 し ま し ょ う 。こ れ に よ り 排 気 に 含 ま れ る 水 分 が 半 分 ぐ ら い 給 気 に 移 行 さ れ 、省 エ ネ を 図 る こ と もできます。 OFF ON 熱交換 普通 天井に設置されたロスナイ ② 加 湿 能 力 は 、換 気 さ れ る 風 量 に 大 き く 左 右 さ れ ま す 。こ の た め 清 掃 時 な ど の窓開け換気は最小限にしましょう。 ③ エ ア コ ン の 設 定 温 度 を 控 え め に し て 、室 内 温 度 を 抑 え る こ と に よ り 相 対 湿 度 を 上 昇 さ せ ま し ょ う 。 例 え ば 、 絶 対 湿 度 が 6 .7 g/kg’ で 一 定 の 場 合 、 温 度 2 5 ℃ 、相 対 湿 度 3 4 % の 空 気 は 、理 論 上 温 度 を 2 2 ℃ に 下 げ る こ と で相対湿度40%を確保することができます。 温度と相対湿度の関係(絶対湿度6.7g/kg’) 温度 相対湿度 絶対湿度 20℃ 46% 6.7g/kg’ 21℃ 43% 6.7g/kg’ 22℃ 40% 6.7g/kg’ 23℃ 38% 6.7g/kg’ 24℃ 36% 6.7g/kg’ 25℃ 34% 6.7g/kg’ ④ 冬 季 は 温 湿 度 計 を こ ま め に チ ェ ッ ク し ま し ょ う 。ま た そ の 値 は 記 録 し 保 存 しましょう。 温湿度計をチェック 記録 - 56 -