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慕 ・ 墓地の共同化、 無形化、 有期限化へ の動向と背景 , ~合祀墓への
墓 ・墓地 の 共 同 化 、 無 形 化 、 有期 限 化へ の動 向 と背景 村 久 子 墓 ・墓 地 の 共 同 化 、 無 形 化 、 有 期 限 化 へ の 動 向 と 背 景 棋 ∼合 祀墓 への過 渡的形 態 と樹木 葬墓 地 の事例 研究 から∼ はじ めに こ れ ま で の近 代 墓 地 の成立 と現 代 的 展 開 に 関 わ る研 究 の中 で 、墓 の性格 は 、尊 厳 性 、 永 続 性 、固 定 性 を も って い た が 、個 人化 、無 縁 化 、流 動 化 へと変 化 した 。 特 に 個人 化 では 、 墓 は 現在 の自 分 の ライ フ スタ イ ルや家 族 形 態 や 生 き方 を 写 した も ので あ る こと が わ か った 。3 つの変 化 と そ の矛 盾 を 克 服 す る形 と し て、墓 ・墓地 の共 同 化 、無 形化 、 有 期限 化 の方 向 が 導 き 指 さ れ た 。 そ こ で、 現 在 展 開 し て い る、 共 同 化 、無 形 化 、有 期 限 化 の要素 を 持 つ最 新 の墓 地 の事 例 を 取 り 上 げ 、 そ の背 景 と 方 向 を 考察 す る。 1. 家 族 墓 か ら個 人 墓 、 そ し て共 同 墓 への 過渡 期 的 形 態 の 出 現/ 小 平 ふ れ あ いパ ーク 家 族 構 造 の変化 に よ り 、継 承 者 が 無 い人 に と って 、 一つ の選択 肢 と し て、 永 代 供 養 墓 が墓 苑 に準 備 さ れ る よ う に 239 な った 。墓 は家 族 が 継 承 す る こ とを 前 提 と し て き た墓 地 であ る が 、 現在 民間 墓 地 で、 継 承 者 が いな い人 に墓 地 の提 供を し て いな い墓 地 は 無 い現状 にな り つつあ る 。墓 地 の変 容 の中 で、家 族 墓 の変 容 が 見 ら れ る が 、 そ の空 間 的 な 変 容を 見 て いく 。 ・典 型 的 な 家 族 墓 のデ ザ イ ンか ら 個 性 的 デ ザ イ ン の選 択 へ 従 来 の典 型 的 な 家 族墓 、 つま り 家 の墓 か ら 個 人化 へ向 かう 第 一歩 は 、墓 地 や、 墓 所 ・墓 石 のデ ザ イ ン の変 化 に そ れを 見 る こと が でき る 。例 えば 、小 平 ふ れ あ いパ ー ク ( 東 京 都 小 平市 天神 町 ) は そ の変 容 を 見 る こ とが でき る 。 バ ラ咲 く霊 園 、 ガ ーデ ニ ング墓 地 と し て広 告 さ れ て いる墓 地 は 、 一角 は従 来 型 の家 名 を 彫 刻 し 、竿 型 墓 石 が 並 ん で い る が 、面 積 の多 く は バ ラ や花 の咲 く 家 族墓 で 、特 に個 別 のデ ザ イ ンさ れ た墓 石 であ る。 墓 石 のデ ザ イ ン の多様 化 への変 容 は 、 墓 石 に 彫 刻 され る墓 碑 名 の変容 を 起 こ し て いる 。 これ ま で 、 ﹁何 々 家 の墓 ﹂ と彫 刻 さ れ て いたも の か ら 、 ﹁あ り が と う ﹂ な ど 多 様 な碑 文 が 見 ら れ る 。 後 で 述 べる よ う に 、碑 文 は誰 が誰 に向 け て発 せら れ る 言葉 であ る か、 家 族 の 関係 の変 化 を 見 る こ とが でき る 。 ・永 代 供 養 墓 の進化 同 霊園 で は 、永 代 供 養 墓 と し て 4種 類 あ る 。集 合 型個 人墓 、夫 婦 墓 、個 人墓 、家 族 墓 であ る 。集 合 型 個 人 墓 は 、 一つのデ ザ イ ンさ れ た石 碑 が 中 央 に あ り 、 そ の地 下 に納 骨 さ れ る 。墓 碑 名 は ﹁ 和 ( や わ らぎ )﹂、御 影 石 のプ レー ト に名 前 が 刻 ま れ る形 態 で 、個 別 の石 碑 は な い。 ( 写 真 1) 特 徴 的 な デ ザ イ ンは夫 婦 墓 ( 写 真 2 )、個 人 墓 、 家 族墓 で あ る。 いず れ も 、 一定 の区 画 に中 央 に デ ザ イ ン され た 彫 刻 が据 え られ 、左 右 両 側 に 5 つず つの御 影 石 のプ レー ト が 240 墓 ・墓 地 の 共 同化 、 無 形 化 、有 期 限化 へ の 動 向 と背 景 並 べら れ て いる こと で あ る 。各 プ レー ト に は 、個 人名 や夫 婦 の名前 、家 族 の名 前 が彫 刻 さ れ る 。 こ の中 で も さ ら に 特 徴 的 な 形 態 は 、家 族 墓 で あ る ( 写真 3 )。 自 分 自 身 は シ ング ル で墓 地 の後 継 者 が いな いが 、親 の墓 に 一緒 に 入 り た い、 ま た 子 ど も は いる が先 の後 継 者 が いな い、 ま た 子 ど も が いて も そ の後 の 承継 は 不 明 で あ る と いう 場 合 、 建 立 時 で は 家 族 墓 と し て 造 ら れ参 詣者 は期 待 で き る が 、 そ の後 は 承 継 者 が いな い家 族 の永 代 供 養 墓 に な る と いう 考 え方 であ る。 刀 ぎ 、 う わ や く 和 - 真ク 写 一 パ い あ れ ふ 平 こ の 3 種 類 の墓 地 は 、 個 別 に建 て ら れ る の で は な く 、 一定 の空 間 に 関 係 の無 い個 人 、 夫 婦 、 家 族 の墓 が同 居 す る と いう 形 態 に 特 徴 が あ る 。 実 際 上 は 、経 営 的 、空 間 的 節 約 の 中 で作 られ た も の と考 え ら れ る が 、 空 間 的 には こ のデ ザ イ ン に よ って 、個 人化 か ら 共 同 化 への過 渡期 的 形 態 と 考 え ら れ る。 後 で 、民 営 墓 地 と 公営 墓 地 の共 同 墓 を 比 較 す るた め に 、永 代 供 養 墓 の墓 地 使 用 料 を あ げ てお く 。 小 平 ふ れ あ いパ ー ク にお け る 集 合 型個 人墓 は 50万 円 、 夫 婦 墓 1 2 0 万 円 よ り 、 個 人 型 個 人墓 80万 円 よ り 、 家族 墓 は 2 00 万 円 で あ る。 いず れ も彫 刻 料 は含 ん で いな い。 写真2 小平ふ れあいパ ーク 夫婦墓 「 絆(き ずな)」 写 真3小 平 ふ れ あ いパ ー ク 家 族 墓 「温(ぬ く も り)」 241 ・家 族 墓 の墓碑 名 に み る変 容 永 代 供 養 墓 で は な い家 族 墓 も 、 墓碑 銘 が ﹁ 何 々家 の墓﹂ か らデ ザ イ ンが 個 性化 す る に連 れ 、 多 様 化 し て いる 。目 立 った のは ﹁あ り が と う ﹂ と いう 文 字 であ る 。 ﹁あ り が と う﹂ と い う言 葉 は 、故 人 が残 され た 遺 族 、 つま り 子 ど も や 配 偶 者 に 対 し て述 べ て いる のか 、 子ど も や配 偶 者 が 亡 く な った 故 人 に対 し て述 べた言 葉 であ ろ う か 。 いず れ に し ても 、 何 々家 の継 承 の意 味 では な く 、 家 族 関 係 の中 で 発 せ ら れ て いる 。 つま り タ テ の関係 で は な く 、 ヨ コの 関係 、 水 平 的 な関 係 の中 で発 せ ら れ て いる。 そ の他 、 ガ ー デ ニン グ墓 地 な ど で墓 碑 の多 様 化 と 、 故 人 と遺 族 と の家 族 間 の コミ ュニケ ー シ ョン のひ と つと し て、 墓碑 銘 が登 場 し始 め て いる。 ま た 、 家 の名 前 、 姓 で な く 、 ﹁あ り が と う ﹂ と いう 文 字 を 彫 刻 す る こと によ って、 墓 ・墓 地 の承 継 が し や す く な る 点 も考 え られ る。 少 子 ・人 口減 少 社 会 にお いて 、墓 の承 継 は 結 婚 に よ って姓 が 変 わ って も 承継 す る場 合 が 増 え る と考 え られ る。す る と 、姓 が 彫 刻 さ れ て いなけ れ ば 、承継 した 場 合 姓 の違 いによ る違 和 感 が なく な ると 考 え ら れ る。 ・地 域 へのボ ラン テ ィア活 動 に 広 が る コミ ュ ニテ ィ の形 成 全 く 関 係 の無 か った 人 々 が、 永 代 供 養 墓 の 利 用 によ って、 新 し い関 係 を 創 り 始 め て いる こ とも 特 徴 であ り 、近 年 の墓 地 経 営 の流 れ でも あ る。永 代 供 養 墓 の申 し込 みと 同 時 に ﹁ふ れあ い倶 楽 部 ﹂ の会 員 と し て登 録 さ れ 、正 月 、盆 、 彼 岸 、ま た 音楽 会 や文 化 講 座 、 供 養 のセ レ モ ニーな ど 年 間 を 通 じ て 、会 員 が コミ ュニケ ー シ ョンす る 、 活 動す る場 を 作 って いる 。活 動 の特 徴 と し て 、 霊園 内 で の活 動 から 、周 辺 の空 き 缶 広 いや 清掃 など 地 域 へと ボ ラ ンテ ィア活 動 が 始 ま って いる こと であ る 。 これ は新 た な コミ ュニテ ィ形 成 の萌 芽 と考 え ら れ る 。 242 墓 ・墓 地 の 共 同化 、 無 形化 、有 期 限化 へ の 動 向 と背 景 2. 公 営 の 合葬 墓 地 と 屋 内 ・屋 外 の新 型 墓 地 の 出現 / さ いた ま市 思 い出 の里 市営 霊 園墓 地 合 葬 墓 は 、 経 済 的 、空 間 的 、都 市 的 、 家 族 構造 の変 容 のた め 、 自 治体 も 市 民 にも 二ー ズ が 高 く な って い る。 公 営 墓 地 で は これ ま で承継 者 が いな い市 民 に 対 し て 、墓 地 の提 供 が 進 め ら れ て来 な か った 。 し か し 近年 、 ﹁ 合葬式墓地﹂ を 設 置 す る 公 営 墓 地 が出 現 し て いる 。 そ の中 で、 さ いた ま市 の ﹁思 い出 の里市 営 霊 園 墓 地﹂ ( 埼 玉 県 さ いたま 市 大 字大 谷 ) の事 例 を 見 よ う 。 (1) さ いたま 市 営 墓 地 の新 型墓 所 出 現 さ いたま 市 は 、 2 0 0 1年 5月 、埼 玉 県 浦 和 、大 宮 、与 野 の三 市 が合 併 し て でき た 人 口百 万 都市 ( 約 四十 一万 世 帯) で あ る 。 そ の、 さ いた ま市 の ﹁思 い出 の 里市 営 霊 園 ﹂ ( 旧 大 宮 市 営 霊 園 ) に、 2 0 0 2年 に、 屋 内 と 屋 外 の立 体式 墓 地 と合 葬 式 墓 地 が建 設 され た 。 屋 外 の立 体式 墓 地 は全 国 でも 初 め て の事 例 で、 市 民 か ら の評価 と墓 地 行 政 の 今後 の方 向 性 と し て も 、注 目 さ れ て いる 。 ・屋 内 墓 地 写真4 まず 屋 内 墓 地 は 三 階 建 て で 、 ド ー ム の よ う な 弓 な り の大 屋 根 で、 側 面 から 外 気 が 入 る 立体 駐 車 場 のよ う な 形 態 であ る。 ( 写 真 4 ) 一階 部 分 は 側 面 か ら採 光 が 十 分 取 り 入れ られ 、 屋 内 と いう よ り 、 屋 根 付 き 墓 地 と いう感 じ で あ る 。 一般 的 な 家 族 墓 所 であ るが 、墓 石 の 設 置 基 準 は 厳 し い。 台 石 と 石 拝 の上 に規 定 寸 法 以 内 の墓 石 と 墓 誌 、 ま た 一体 型 の花 立 て や 水 鉢 、 香 炉 を 設 置 す る。 屋 内 墓 地 で あ る た め 、 す べて ピ ン で固 定 す る 。 他 の容 器 類 や 鉢 物 、 彫 刻 な ど の設 置 は でき な いこ と に な って いる 。 床 の上 のた め 構 造 的 に は 、 ス テ ン 243 レ ス製 の 納 骨 室 を 床 に 埋 め 込 ん で い る 。 6 体 用 と 8 体 用 が ある。 ( 写 真 5) ・屋外 立 体 墓 地 屋 外 立 体 墓 地 は 、 大 き な ブ ロ ック石 を 三 段 に重 ね た よ う な 形 態 であ る 。 一見 鉢 の巣 に見 え る。 ( 写真6)外観は、欧 米 式 の ロ ッカ ー 式 の壁 墓 地 で 、 上 段 と 中 段 は 4体 用 、 下 段 は 8 体 用 で あ る 。 ]つひ と つの区 画 は 内 部 が L字 型 の 隔 壁 板 に よ って奥 と 手 前 に 仕 切 ら れ て いる 。 手 前 の ス ペ ー スに 墓 石を 置 く 。 し かし 、 こ の スペ ー ス に置 く に は、 墓 石 のミ ニチ ュ アに な らざ るを 得 な い. 設 置 基 準 に よ る と 、 墓 石 の 大 き さ は 高 さ 24 ㎝、 幅 24 ㎝、 奥 行 き 15 ㎝以 内 と な っ て い る 。 ( 2 )合 葬 式 墓 地 さ て 、 上 記 の 屋 内 墓 地 、 屋 外 墓 地 と い う立 体 墓 地 が 従 来 の家 族 墓 で あ る のに 対 し て 、 同 時 に造 ら れ た ﹁合 葬 式墓 地 ﹂ は 、理 念 や シ ス テム が 異 な る共 同 墓 の形 態 であ る 。 ( 写真 7) これ ま で、 ﹁ 納 骨 堂 ﹂ は 設 置 さ れ て お り 、 25 ㎡ 、 2棟 、 3 段 コ ンク リ ー ト製 棚 で、 収 蔵 数 は 4 0 0体 。 し か し 永 久 納 骨 堂 では な く 、 利 用 期 間 が 5年 以内 の 一時 収 蔵 施 設 で あ る。 2 0 0 2年 に造 ら れ た 合 葬 式 墓 地 は 、 コ つの お墓 に多 く の遺 骨 を 一緒 に埋 蔵 す る新 し い形 態 の墓 地 です ﹂ と申 写真6 写真7 写真5 244 墓 ・墓地 の共 同 化 、無形 化 、有 期 限 化 へ の動 向 と背景 し込 み の案 内 に書 か れ て いる。 合 葬 式 墓 地 の特 色 と し て 、 3 つあ げ ら れ て いる 。① 個 人 及 び 夫婦 用 の墓 地 であ る 、 ② 生 前 に申 し込 む こと が で き る 、③ 墓 地 を 継 ぐ 人 が いな い人 も 利 用 で き る こ と であ る。 参 拝 方法 は 、献 花 は墓 地 正 面 に 設 け られ た合 祀 祭 壇 で行 う こと 、 ま た集 合 合 葬 室 ( 地 下 の カ ロー ト) に は 入 る こと は でき な いと書 かれ て いる 。 ・有 期 限 に よ る共 同 合 祀 埋 蔵 方 法 は 、遺 骨 は地 下 にあ る 集合 合 葬 室 で永 代 に埋蔵 す る と し 、埋 蔵 す る 遺 骨 の容 器 は 、幅 ・奥 行 き ・高 さ と も に 30 ㎝以 内 であ る こ と 、利 用 許 可 日 か ら起 算 し て 20年 間 は骨 壷 に 入れ た 状 態 で埋 蔵 し 、 そ の後 は同 施 設 内 の散 骨 室 に共 同 合 祀 、 つま り遺 骨 を 骨 壷 か ら出 し て合 わ せ て葬 る こと 、 と し て いる 。 生 前 申 し込 み区 分 の人 は 、 い つでも ( 無 期 限 に) 納 骨 で き る が 、利 用許 可 か ら 20年 を 過 ぎ て納 骨 す る場 合 は 、最 初 ( 納 骨 時 点 ) か ら共 同 合 祀 にな る こ と 、 共 同合 祀 後 の遺 骨 は 返す こ とが でき な いと説 明 さ れ て いる 。 ・生前 申 し込 みと 資 格 合 葬 式墓 地 の申 し込 みは 、 生 前申 し込 みが でき る のが特 徴 であ る。 生 前 申 し 込 み区 分 で は次 の 5 つにす べて該 当 す る こと が申 し込 み資 格 であ る 。① ﹁ 申 込 者 本 人 が住 民登 録 又 は外 国 人 登 録 を し て市 内 に 1年 以 上継 続 し て居 住 し て いる こと ﹂。 これ は他 の墓 地 も 同 じ であ る。 次 に② ﹁ 自 分 自 身 の埋 蔵 場 所 を 生 前 に確 保 す る 必 要 が あ る 人 (1体 用)、 ま た は 自 分自 身 及 び 配 偶 者 ( 配 偶者 が遺 骨 でも 可 能 ) の埋蔵 場 所 を 生 前 に確 保 す る 必要 のあ る人 (2体 用)﹂。 これ は シ ン グ ル、 ま た は 夫 婦だ け で墓 地 の承継 者 が いな い場 合 が 想 定 さ れ て いる 。③ 2体 用 で配偶 者 が遺 骨 の場 合 は 、遺 骨 を 自 宅 に安 置 し て いる人 ・遺 骨 を 収蔵 施 設 ( 納 骨 堂 ) に 預 け て いる 人 ・遺 骨 を 寺 院 等 に仮 安 置 し て いる 人 が対 象 と し て いる 。 245 そ し て④ ﹁自 分 の遺 骨 ( 2 体 用 の 場合 、自 分 と 配偶 者 の遺 骨 ) が共 同 合 祀 され る こ とを 承 諾 で き る﹂ 人 であ る。 こ れ は ど ち ら か の配 偶 者 が 生 前 に 遺 骨 を 共 同 合 祀 され る こ と を 承 諾 し てお く こ と が 必 要 な のだ ろ う か。 最 後 に⑤ ﹁共 同合 祀 後 は 申 し 込 み遺 骨 を お 返 し でき な いこ とを 承 諾 で き る方 ﹂ と し て いる 。 夫 婦 ふ た り と も 遺 骨 の場 合 。 ﹁ 遺 骨 申 し込 み区 分 ﹂ で遺 骨 の祭 祀 主 宰 者 が申 し込 む。 こ の場 合 、埋 蔵 され る シ ング ルで 1体 用 を 生 前 に 申 し込 む条 件 は 明 確 であ る。 2 体 用 の場 合 は ケ ー スが 次 の よ う に 3 つあ る 。 ① 夫 婦 のう ち 一方 が遺 骨 で 、 そ の配 偶 者 は 健 在 の場合 。 ﹁ 生 前 申 し込 み区 分 ﹂ で、 申 込 者 は夫 婦 のう ち 健 在 の 人 は故 人 であ る か ら 、共 同 合 祀 さ れ る ことを 承 諾 す る 人 は祭 祀 主 宰 者 、 つま り子 ど も な ど で あ る 。 ② 方 が申 し込 む 。 この場 合 、先 に亡 く な った配 偶 者 の共 同合 祀 の承 諾 は いる のだ ろう か? ③ 夫 婦 ふ た り とも 健 在 の場 合 。 ﹁ 生 前 申 し込 み区 分 ﹂ で、 夫 婦 のう ち いず れ か 一方 が 申 し込 む 。 こ の場 合 、 夫 婦 が 二人 と も 共 同合 祀 され る こと を 承諾 す る必 要 が あ る の か ? 生前 の意 思 確 認 が ど の よ う な形 でさ れ る のだ ろう か。 ま た 、遺 骨 を 誰 が 持 ってく る の かが 問 題 に な る。 ﹁祭 祀 主宰 予 定 者 の登 録 等﹂ で、 ﹁ 当 選 後 の書 類 審 査 時 に祭 祀 主 宰 予 定 者 ( 合葬式墓地に遺骨を納骨する手続き を行 って いた だ く 方) の登 録 と 遺 骨 共 同合 祀 承 諾 書 の提 出 を お願 い しま す﹂ と記 さ れ て いる 。 ﹁生前 に確 保 す る 必要 のあ る方 ﹂ の必 要 性 の判 断 はど のよ う な も のだ ろう か。も し 、 シン グ ルや夫 婦 だ け の場 合 、 墓 地 は確 保 した も の の、誰 か が納 骨 の手 続 き を し なけ れ ば な ら ず 、 誰 が ﹁ 祭 祀 主 宰 予 定 者﹂ と な る の か。 事 例 研 究 ー 東 長 寺 ・縁 の会 墓 苑 と ﹁ も や い の碑 ﹂ か ら特 定 非 営 利 活 動 法 人 ・任 意 後 見 生 前 契 約 受 託機 関 の設 立 へ ( 京都女子 大 学 宗 教 ・文 化 研 究 所 ﹃ 研 究 紀 要 ﹄ 第 17号) で述 べた た よ う に 、 子ど も や依 頼 でき る 親族 が いな い場 合 、 そ れ に代 わ る人 が 必 要 に な る。 246 墓 ・墓 地 の共 同化 、 無 形 化 、 有 期限 化 へ の動 向 と背 景 ・合 葬 墓 の需 要 が多 い背 景 実 際 上 の申 込 者 は 多 く 、合 葬 式 墓 地 に人 気 が高 い。そ の理 由 は 、 一つは経 済 的 な 面 で 、 立体 墓 地 の屋 内 墓 地 ( 従 来 型 の家 族 墓 ) が 使 用料 が 69万 1 0 00 円 ( 6体 用) ∼ 77万 3 0 0 0 円 ( 8体 用 ) と 年 間 管 理料 が必 要 であ る のに 対 し て、 合 葬 式 墓地 は 、 1体 用 が 14万円 、 2体 用 は 28万円 と、 大 き な使 用料 の差 が あ る か ら と考 え ら れ て いる 。 ま た 、も う 一つ の理由 は 、家 族 が個 人 化 し 、自 分 の 人生 の最 後 は 自分 で準 備 す る 、子 ど も への墓 の承 継 は考 え な い、 と いう ライ フ スタ イ ルが明 確 にな り 始 め た と考 え られ る 。 申 込 者 は定 年 前 後 の夫 婦 が多 く 、今 のう ち に 自 分 た ち夫 婦 の墓 を 予 約 し て お き た いと いう 。 さ いた ま市 は首 都 圏 に あ って 、東 京 への通 勤 圏 で あ り 、高 度 経 済 成 長 時 に社 会 的 人 口増 加 が 全国 でも 有 数 であ った 。そ の人 口が 定 年 後 も市 内 に定 着 す る と 考 え られ 、出 身 地 であ る 郷 里 に帰 らず 、 居 住 地 に 自 分 た ち の墓 地 を 確 保 し た いと いう ニー ズ が高 いと 考 え ら れ る。 3. 無 形 化 と し て の ﹁樹 木葬 墓 地 ﹂ 合 祀 墓 と い う共 同 化 の流 れ と も に 、 も う 一つ の流 れ は無 形 化 であ る 。 墓 地 の無 形 化 は 散 骨 が そ の 一つで あ る 。 ﹁ 樹 木 葬 墓 地﹂ は いわ ゆ る散 骨 で は な い。遺 骨 を 土中 に直 接 埋 め 、墓 石 の代 わ り に樹 木 を 植 え る の で 、樹 木 葬 墓 地 と 言 う 名 前 が 生 ま れ た 。 墓 石 や 区 画 の無 い無 形 の墓 地 であ る 。 ﹁ 墓 地 、埋 葬 等 に関 す る法 律 ﹂ によ る ﹁ 墓 地 ﹂ であ り 、 散 骨 の よ う に海 に撒 き 、墓 地 と いう 土 地 が 無 い無 形 化 の墓 地 と はま た 異 な る 。 ・樹 木 葬墓 地 の風 景 岩 手 県 一関市 字 台 町 の祥 雲 寺 ( 千 坂嵯 峰 住 職 ) の墓 地 であ る。 祥 雲 寺 か ら車 で約 20分 近 く の里 山 に着 く 。樹 木 葬 墓 地 と 書 か れ た 所 か ら 道 を 入 る と 、 田 ん ぼ に 、 水 田 後 に 自 然 に 戻 った 湿 地 、 里 山 の風 景 そ のも のが 眼 前 に 広 が る 。 247 あ ぜ 道 のよ う な 小 道 か ら 、 山 林 に 入 る 。素 朴 な木 で で き た 、樹 木 葬 墓 地 の 入 り 口 。林 間 は 間 伐 さ れ て明 る く 、 間 伐 材 を 利 用 し た バ ー ク が小 道 に敷 か れ て いる 。墓 参 の た め に自 然 の傾 斜 の歩 道 が 造 ら れ て いる 。 馨 蒼 と し た 手 入 れ が さ れ て いな か った植 林 地 を 間 伐 し、 明 る く し た こと で 、 自 然 に 、 リ ンド ウ や セ ンブ リ 、 ニ ッコウ キ スゲ など 林 床 に山 野草 が咲 き 始 め た ので あ る。 よ く 見 る と 、花 が 手 向 け てあ る。 こ こが墓 所 な の か。 説 明 さ れ て始 め て 、 小 さ な 立 て札 に 埋葬 さ れ た 人 の名 前 が書 いてあ る の がわ か る 。気 が つか な けれ ば 、 花 の木 が美 し い 、里 山 と し か 見 えな い。 ( 写真8) ・樹木 葬 墓 地 の概 要 8 真 写 里 山 の面 積 約 1万 ㎡が 墓 域 で 、 そ の土 地 に遺 骨 を 約 1 0 0 0体 納 め る こと が で き る 。墓 地 内 は 里 山 と 変 わ ら な い よ う な 空 間 で、 林 間 に 先 が 赤 く 塗 ら れ た 杭 が た く さ ん 立 って いる 。杭 は遺 骨 を 埋蔵 す る 候補 の地 点 を標 し て いる 。 墓 地 の契 約 者 は こ の中 か ら 、 希 望 の場 所 を 選 び 、 そ の杭 か ら半 径 ー メ ート ルが墓 地 を 契 約 した 人 の墓 所 に な る 。墓 所区 画 の巻 き石 が な く て も 墓 地使 用者 の墓 所 の空 間 が 限定 され て いる 意 味 で は 、特 定 の空 間 を 占 有 す る の で あ る か ら 、無 形 化 と いえ る か ど う か。 里 山 で埋 葬 地 点 を 特定 す る のは 、 基 準 木 と他 の 2本 と 3 本 か ら距 離 を 確 定 す る 。 遺 骨 を 埋 蔵 す る 時 は 、 墓 所内 に 30 ㎝深 さ の穴 を 掘 り 、遺 骨 を 壷 から 出 し て そ のま ま 埋 め て土 を か ぶ せ る 。 埋 めた 所 に 、目印 と し て低 木 を 植 え る 、墓標 と し て植 え る 樹 木 は 、花 を つけ る 、 こ の地 域 に 適 し た低 木 で、 エゾ アジ サ イ 、 サ ラサ ド ウ ダ ン、 ヤ マツ ツジ 、 ツリ バ ナ、 ガ マズ ミ など であ る。 時 間 を 経 る間 に 、樹 木 は 生 長 し 、 周囲 の林 を 同 じ よ う に な る、 遺 骨 も 土 に還 って行 く 、 と いう考 え であ る 。 248 墓 ・墓 地 の 共 同化 、無形 化 、 有 期限 化 へ の動 向 と背 景 既 に 埋蔵 さ れ た所 は名 前 が書 かれ た 杭 が立 ってお り 、植 え られ た 樹 木 は 成 長 を 始 め て いる 。 ( 写 真 9 ) こ の樹 木 葬 墓 地 では 、供 物 は蜂 な ど の虫 を 呼 び 、線 香 は 山 火 事 の 危険 があ るた め 、 切花 以外 の供 物 は 禁 止 さ れ て い る。 ・樹 木 葬 の手 続 き 樹 木葬 墓 地 に 関 心 が あ っても 、実 際 ど の よ う に し て実 行 さ れ る のだ ろ う かわ から な い。 そ こで まず 、 問 い合 わ せ や資 料 請 求 を す る が 、 12月 か ら 3月 以 外 は毎 月 現 地 説 明 会 が 行 わ れ て いる 。墓 地使 用料 と し て 20万 円 、環 境 管 理 費 と し て 一ロ ー0万 円 を 3 口以 上 、 つま り 30万 円 以上 を 納 め る 。 ま た事 務 管 理 費 と し て年 間 8 0 0 0 円 が 必要 であ る 。 環 境管 理費 は墓 地 内 の環 境整 備 費 と し て使 用 さ れ 、雑 木 林 など 周 辺 の自 然を 守 る と いう 、 樹 木 葬 墓 地 の 趣旨 を 理 解 し ても ら う必 要 性 か ら で あ ると いう 。 環 境管 理費 は分 割 し て納 め る こと が で き 、 3年 以 内 に完 納す る 。 家族 な ら同 じ墓 所 に 入 り た い人も い る。 そ のた め 、 同 じ墓 所 であ れ ば 2体 目 以降 を 埋 蔵 す る 時 は 、 1体 に つき 10 万 円を 納 め る。 ・樹 木 葬 墓 地 の形 成 の 経過 里 山 は地 域 の人 々が 生 活 の中 で手 入 れ を す る こと で維 持 され てき た 。 そ れ が放 置 さ れ れ ば 景 観 も 里 山 の植 生 も 崩 れ て いく 。 地 域 の生命 の源 で あ る磐 井 川 や久 保 川を 何 と か し よ う と 、 ﹁水 環 境 ネ ット岩 井 川 ﹂ を 作 り 、地 域 の活 動 を 始 め る中 で、 樹 木葬 が着 想 さ れ た 。 ( 平 成 2年 ) ﹁ 北 上 川 流 域 の歴 史 と 文 化 を 考 え る会 ﹂ を 立 ち 上 げ た 。 1 9 9 5年 ( 平 249 住 職 の千 坂 氏 が 1 9 9 0年 成 7年 ) に は ﹁ 北 上 川 流 域連 携 交 流 会 ﹂ 設 立 に 参 加 。す ば ら し いポ テ ン シ ャ ルがあ ると 信 じ て いる 故郷 を ど のよ う 写真9 に した ら 全 国的 なも のと し て アピ ー ル でき る かが 根本 にな って いた と いう。 ・墓 地 の許 認 可 に つい て 1 9 9 5年 ( 平 成 7年 )、 地 元 のシ ンボ ルで あ る 須 川 岳 ( 栗 駒岳 ) の 見 え る 土 地を 予定 地 と し た が 、隣 接 地 の全 員 の同 意 が 得 ら れず 断 念 した 。 平 成 10年 か ら現 在 の土 地 の購 入交 渉 を 始 め た 。 当 初 か ら大 規 模 墓 地 と し て 認 可を 得 る こと は 困 難 で あ る と考 え て いた ので 、 1 9 9 9年 ( 平 成 11年 ) 8月 では 、 4 9 9 6 ㎡ が宗 教 法 人 の祥 雲 寺 の墓 地 経 営 ﹁樹木 葬 公園 墓 地 ﹂ と し て 許 可 が 下 りた 。 平 成 13年 1月 に 4 5 1 7㎡ を 足 し た 。平 成 15年 3 月 に は 1 万 7 1 6 0 ㎡を 拡 張 し て 、現 在 は 2万 6 6 7 3 ㎡ であ る。 樹 木葬 墓 地 と いう 形 は 、 行 政 に と って初 め て のケ ー スで あ った の で、 一関市 は岩 手 県 の墓 地 許 可 要 領を 定 め て い る岩 手県 の関 係 課 と 協 議 し 、 許 可を 出 した 。 各 県 で墓 地 経営 の許 可 条 件 が 異 な って いる。 国 土 法 、 森林 法 は問 題 が 無 か った が 、課 題 にな った のは 、 埋葬 者 の個 別 墓 所 の位 置 が特 定 さ れ る こと と 、墓 地 の隣 接 地 と の境 界 が明 ら か にな る こと であ った 。 埋 葬 位 置 の特 定 は 、先 に述 べた よ う に基 準 木 と 2本 で行 う 。 墓 地 の境 界 は ロープ と アジ サ イ の花 で示 し た 。 樹 木 葬 墓 地 のよ う な 新 し い考 え方 は 、行 政 よ り も 地域 住 民 に理 解 を 得 ら れ る か が 、大 規 模 墓 地 に 発展 す る か の分 か れ道 であ ると 、 千 坂住 職 は考 え て いる 。 ・樹 木 葬 賛 同 者 と 地 域 墓 地 の希 望 者 は 、 里 山 の環境 保 全 の考 え 方 に 賛 同す る人 た ち で、 東 京 、神 奈 川 、千 葉 、 埼 玉 の各県 など 首 都 圏 か ら が半 分 であ る 。 家 族 形 態 か ら墓 の承 継 者 が いな い人 、 子 ど も が いる が自 然 の中 で眠 り た い人 、友 人 同 士 で 一緒 に 墓 所 を 5 人共 同 で代 表 者 が契 約 し た 人も いる 。 目的 と 利 用 を は っき り さ せ るた め に、 ﹁樹 木葬 墓 地 使 用 約款 ﹂ が 作 られ て いる 。 地域 の 人 たち も 見 学 に来 るよ う にな った 。 250 墓 ・墓 地 の 共 同化 、無形 化 、 有期 限 化 へ の動 向 と背 景 年 1回 合 同 慰 霊祭 ( 樹木 葬 メ モ リ ア ル) を す る 。そ の時 には 地 元 の神 楽 や津 軽 三 味線 や 、農 産 物 も 持 ち 込 まれ る。 古 い民家 を 移 築 し て知 勝 院 会 館 と し て参 詣 者 が利 用 でき るよ う にし て いる 。 ・墓 地 経 営 上 の注意 点 樹 木 葬 墓 地 が 知 ら れ る に つれ 、 利 用 者 も 同様 の墓 地 を 模 倣 し よ う とす る人 た ち も 現 れ る 。 それ に対 し て、 樹木 葬 墓 地 は里 山 の自 然 を そ のま ま 利 用 す る こと で 支持 され て いる 。模 倣 しよ う と す る 人 の中 に は 、 里山 の自 然 に 全 く 理 解 を 示 さ ず 、 墓 石 の代 わ り に樹 木 を 植 え る の は安 上 が り だ と し か考 えな いこと が 多 いと いう 。 し か し、 里 山 の自 然 は放 置 し ても 、 手を 加 えす ぎ ても だ め で 、植 生 の遷 移 を 止 め る た め に適 度 の手 を 加 え る 必要 があ る。 そ のた め 、資 金 と 労 力 は 、墓 石だ け の墓 地 よ り比 較 にな ら な いほど か かる こと を覚 悟 しな け れ ば な ら な いと 千 坂 住 職 は指 摘 す る。 樹 木 葬 の契 約者 は 一般 墓 地 よ り熱 心 に墓 参 に来 る が 、それ は 墓 地 経営 の 理念 を 理 解 し ても ら って いる た めだ と いう 。 それ だ け 、 契 約者 の人 々と の付 き 合 いが大 切 で 、年 5回 の会 報 誌 や 、東 京 で の集 いや 、 メ モ リ ア ルや 、 旅 行会 、墓 参 の便 に 取 り組 ん で いる 。 ま た 地 元住 民 以外 の人 々 の誘 致 を 考 え る な ら 、首 都 圏 など で の支 援 者 を 得 る こと が 必要 で 、そ れ に は契 約 者 が亡 く な った後 の ケ アま で シ ス テム化 す る必 要 が あ る と考 え て いる 。 ・遺 骨 引 取 り事 業 に ついて 契 約 者 で、 承継 者 が いな い人 は 、 埋葬 を 誰 がす る かと いう課 題 が 残 る 。 契 約 者 の相 談 か ら、 遺 骨 引 取 り事 業 を 行 う こと に な った 。逝 去 から 身 の回 り の整 理 、火 葬 、 搬 送 、 埋葬 ま で しな け れ ば な ら な い こと が 多 い。相 談 日を 設 け て、 細 か く 手順 と内 容 を 契 約 で 決 め られ るよ う に し て いる 。民 法 第 8 9 7条 に よ る祭 祀 主 宰 者 の指定 を す る こと に よ って 、死 亡 後 のさ まざ ま な手 続 き を 行 う こと が でき る よ う に な って いる 。 251 ・新 た な 出 発 と し て祥 雲 寺 か ら の独 立 樹 木 葬墓 地 の運 営 は 、 これ ま で祥 雲 寺 別 院 知 勝 院 と し て 、本 体 の祥 雲 寺 と は 切 り離 し て行 わ れ て き た 。 そ の理 由 は、 墓 地 の継 承 者 を 必 要 と せず 、個 人 と の契 約 によ る樹 木 葬 と いう 特 徴 か ら で あ った 。ま た 樹 木 葬 の施 設 であ る知 勝 院 本堂 や同 会 館 、 自 然 体 験 の ログ ハウ ス悠 号 庵 など は樹 木 葬 墓 地 の契 約 者 だ け が使 用 す る 。 そ のた め祥 雲 寺 と は 明 確 に 分離 す る必 要 が あ る と 考 え られ た 。 知 勝 院 は 、樹 木 葬 墓 地 契 約 者 のも の と位 置 づ け て運 営 で き るよ う に、 宗 教法 人格 を 取 得 す る た め 、 岩 手県 に申 請 し、 2 0 0 4年 5月 に認 定 さ れ た 。 2 0 0 4年 度 ( 平 成 16年 度 ) の知 勝 院 の壇 信 徒 総 会 で承 認 さ れ た事 業 計 画 に、 教 科育 成 、供 養 、墓 地 経 営 の各 事 業 の他 、里 山 保 全事 業 や地 域 づ く り 事 業 が あげ られ て いる こと が 特徴 であ る。 しか し 、 こ の事 業 計 画 は 樹 木 葬 の契 約 者 全 員 を 縛 る も ので はな く 、 賛 同 す る 意 思 のあ る 人 だ け が壇 信 徒 と し て登 録 さ れ る シ ス テム で あ る。 樹 木 葬 墓 地 で重 要 な こ と は 、住 職 が ﹁ 専 門家 など の付 き 合 いで 樹 木 と の関 わ り は 長 期 に わ た る こと を 覚 悟 す る こ と が必 要 と のゆ る ぎ な い方 針 が 決 ま った 。 こ の こと によ り 、 3 0 0年 以上 続 く 寺 が 保障 す る体 制 を い かに 理 解 し て いた だ く か の実 践 が勝 負 とな った ﹂ と いう 点 であ る。 家 族 構 造 の変 化 によ り 、家 族 が 限 り な く 一代 に 近 づ く 現 在 、 樹 木 と いう 時 間 性 と組 織 の時 間性 を 保 証 す る 。 ま とめ 以 上 のよ う に 、 都市 部 で首 都 近 郊 のガ ーデ ニン グ墓 地 ・小 平 ふ れ あ いパ ー ク の永代 供 養 墓 と し て の個 人 墓 、 夫婦 墓 、 家 族 墓 を 、 さ いたま 市 営 思 い出 の 里霊 園 では 屋 内 、 屋外 の新 型 墓 所 と 合 葬 墓 を 、地 方 で岩 手 県 一関 市 の祥 雲 寺 252 墓 ・墓 地 の 共 同化 、無形 化 、有 期 限化 へ の 動 向 と背 景 の ﹁ 樹 木 葬 墓 地 ﹂ を 見 て き た 。永 代 供 養 墓 と よば れ る墓 の形 態 の進化 が見 られ 、 家 族 墓 か ら個 人墓 、共 同 墓 へ の流 れ が出 てき てお り 、 そ の過 渡 期 的 形 態 が 準 備 さ れ て い る。 ま た 、 これ ま で墓 所 の継 承 者 が いる こ とを 前 提 と し て 開 発 され てき た 公 営 墓 地 に 、合 葬 式 墓 地 が 準 備 され 始 め、 市 民 の利 用者 も 多 い こと が う か が え る 。墓 の無 形 化 に つ い て は 、散 骨 が 海 上 で行 わ れ る場 合 が 一般 的 で あ る 。 し かし 、 樹木 葬 墓 地 は、 墓 地 と いう区 域 が設 定 さ れ た ﹁ 墓地 埋 葬 法 ﹂ に基 づ く 墓 地 で あ り 、墓 地 経 営 の許 認 可条 件 では 想定 され てお ら ず 、日 本 で初 め て成 立 した 、特 異 例 で あ る。 海 上 への散骨 と異 なり 、 一定 の土 地 と いう空 間 、 墓 地 と いう空 間 があ り 地 点 が 特 定 さ れ 、 し かも 自 然 地 に近 い空 間 であ る こと は 、拠 り 所 と し て 、使 用者 の時 間 的 、空 間 的 な 安 堵 感を 与 え て いる ので は な いかと 考 え ら れ る 。 参考文献 棋 村久 子 ( 1 99 6) " ﹃お墓 と家 族﹄、朱 鷺 書房 棋 村久 子 ( 2 00 4) " ﹁ 家 族 構 造 と 都市 構 造 の変 化 に お け る死 生 観 と墓 地 の研 究 一都 市 型共 同 墓 所 と 新 た な コミ ュ ニテ ィの形 成 へ ・二 つの事例 研 究 ﹂ ﹃ 研 究 紀要 ﹄ 第 17号 、 P871 、 京都 女 子大 学 宗 教 ・文 化研 究 所 さ いた ま 市 川 ﹃ さ いた ま市 墓 地 ・納 骨 堂ご 利 用 のご 案内 ﹄ さ いたま 市 思 い出 の里 市 営霊 園 事務 所 " ﹃ さ いたま 市 思 い出 の里 市 営霊 園 墓 地申 し 込 み のご 案 内﹄ 月 刊石 材 ( 2 00 2) " ﹁ク ロー ズ ア ップ 業 界 ・墓 地行 政 の行 方 は い かに ﹂、 ﹃ 月 刊 石材 ﹄ 8月 号 、石 文社 いせ や ( 2 00 3) " ﹃ バ ラ咲 く聖 園 ・小 平 ふれ あ いパ ー ク﹄ いせや ( 2 00 3) " ﹃ バ ラ咲く 聖 園 ・永 代 供養 墓 ふれ あ いの碑﹄ 253 千 坂 峰 ・井上 治 代編 ( 2 0 03) " ﹃ 樹 木 葬を 知 る本 ﹄、 三省 堂 千 坂 峰 ( 2 00 2) H ﹃ 五 山 文学 の世 界 ﹄白 帝 社 知 勝院 ( 2 0 04) " ﹃ 樹 木 葬 通信 ﹄第 20号 、知 勝 院 知 勝院 ( 2 00 4) H ﹃ 樹 木 葬通 信 ﹄第 21号 、知 勝院 ︿キ ー ワ ー ド ﹀ 墓 墓地 家族 無縁 合祀墓 都市 O門 器 o①80冨受 霞 甘 254