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第一章 情報化推進の背景

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第一章 情報化推進の背景
第一章
情報化推進の背景
ここ数年のインターネットや携帯電話の急激な普及により、ITは日常生活
に欠かせないものとなりつつあります。また、光ファイバー網※や地上デジタル
放送※など、通信・放送インフラの整備もすすみ、RFID※などの最新技術の
活用も本格的に始まっています。
最近では、ITが社会基盤の重要な位置を占めるようになったことで、市民
生活、産業経済、行政サービスなどにおけるITへの依存度も高まっています。
このような中で、システム障害が市民生活に大きな影響を与えたり、フィッ
シング詐欺※などのサイバー犯罪※が増加したりしていることなどにより、情報
システムにおけるセキュリティ対策が強く求められるようになっています。
本章では、ITの動向と、市民生活・産業経済・行政サービスの 3 つの側面
からの情報化社会の動向、国の情報化施策についての概要を示すとともに、こ
れまでの本市における情報化の取り組みや、市政アンケート、統計データから
見た情報化の現状と課題を示して、本市の情報化推進の背景を明らかにします。
-7-
1-1
ITの動向
インターネットの利用人口、ブロードバンド回線※利用者の拡大、携帯インタ
ーネット※契約数の拡大によりインターネットは日常生活に欠かせないものと
なりつつあります。また、インターネットの普及にあわせて、新たなコミュニ
ケーションの手段としてブログ※やSNS※などを利用する人が急増しています。
情報化社会を支える通信・放送インフラも整備がすすんでおり、平成 15 年に
三大広域圏(関東・中京・近畿)において開始した地上デジタル放送は、順次
放送エリアを拡大して平成 23 年のアナログ放送停止に向けて普及が促進されて
います。また、光ファイバー網の敷設もすすみ、各家庭において安価で高速な
インターネットが楽しめる環境が整いつつあります。
また、他都市では、RFID技術を実用化したICタグ※やICカード※を活
用した図書館の蔵書の貸出・返却、就学児童の安全確保、生産履歴情報の提供
などといった最新技術を生かした市民サービスの向上や安心安全な仕組みづく
りなどを目的としたさまざまな取り組みも始まっています。
このように、現在の情報化社会は、ITのインフラ整備の段階から利用者の
視点に立ってITを活用する段階に入ったと考えられます。今後、市民生活、
産業経済、行政サービスなどにおいて、ITがさらに重要な位置を占めること
が想定されます。
ここでは、インターネット環境の進展、携帯電話の高機能化、地上デジタル
放送の開始などの面から、平成 22 年度を見据えたITの動向を示します。
-8-
1-1-1
インターネット環境の進展
日本のインターネットの利用人口は年々増え続けており、総務省の「平成 18
年版 情報通信白書」によると、平成 12 年末のインターネットの利用人口が 4,708
万人、人口普及率が 37.1%であったのに対し、平成 17 年末には 8,529 万人、
66.8%となっており、人口で約 2 倍、普及率では約 30 ポイントも伸びています。
また、DSL※やFTTH※などのブロードバンド回線も急速に普及しており、
DSLの利用人口は、平成 12 年度末に 7 万人であったのに対し、平成 17 年度
末には 1,452 万人に増加し、平成 12 年度末にはほとんど利用者がいなかったF
TTHも、平成 17 年度末には 546 万人が利用しています。このようなブロード
バンド回線の急速な普及は、インターネットサービスプロバイダ※による安価な
サービスの出現が後押ししたものと想定されます。
これらのことから、高速なインターネットがより市民にとって身近なもの、
日常生活に欠かせないものとなっていることがわかります。
(%)
(万人)
10,000
インターネット利用人口
8,000
6,000
4,000
6,942
5,593
4,708
54.5%
44.0%
37.1%
人口普及率
7,730
7,948
8,529
60.6%
62.3%
66.8%
100
80
60
40
20
2,000
0
0
平成12年末
平成13年末
図1-1-1
平成14年末
平成15年末
平成16年末
平成17年末
インターネット利用人口および人口普及率
(万契約)
2,500
DSL
ケーブルインターネット
FTTH
※
無線(FWA )
2,000
1,500
1,000
500
0
0.09
0.02
78
7
0.8
3
146
238
3
31
207
702
3
114
258
1,120
2
2
290
296
546
1,368
1,452
331
平成12年度末 平成13年度末 平成14年度末 平成15年度末 平成16年度末 平成17年度末
図1-1-2
ブロードバンド契約数の推移
(図1-1-1、図1-1-2 総務省「平成 18 年版 情報通信白書」により作成)
-9-
このように、各家庭に安価で高速なインターネット接続環境が普及したこと
から、インターネットは、従来の情報収集のためのホームページの利用や連絡
手段としての電子メールなどの利用にとどまらず、音楽や動画などの大容量コ
ンテンツ※のダウンロードサービスや、オンラインショッピング※、オンライン
バンキング※、オンライントレード※、eラーニング※など、さまざまなオンライ
ンサービスに利用範囲が拡大しています。
一方で、急激なインターネット利用人口の増加により、各端末に割り振られ
るIPアドレス※の不足が心配されており、管理できるアドレス空間の増大、セ
キュリティ機能の追加、優先度に応じたデータの送信などの改良を施した次世
代インターネットプロトコル※であるIPv6※の実用化の研究がすすんでいま
す。IPv6の活用は、パソコンや携帯情報端末だけでなく、家電製品や交通
機関、公共・商業施設のセキュリティシステムなど、社会的なインフラを支え
る機器にもIPアドレスを割り当てることができ、相互の通信によってさまざ
まな新サービスの創出が期待できます。
今後も、利用者はインターネットの接続料金を意識することなく、いつでも
好きな時にインターネットを活用していくことが想定されるとともに、このよ
うな環境を活用することで就業形態も多様化し、企業などにおけるテレワーク※
の活用がすすむことも想定されます。
-10-
1-1-2
携帯電話の高機能化
携帯電話は、従来の通話、電子メール、ホームページ閲覧などの機能に加え、
カメラ(静止画、動画)、GPS※、二次元バーコードリーダー※、音楽プレイヤ
ー、テレビ電話、FMラジオ受信、電子マネー、テレビ受信など、高機能化が
すすんでおり、平成 12 年度末に 6,094 万件であった契約数も平成 17 年度末に
は 9,179 万件となり、過去 5 年間で約 1.5 倍に伸びています。
また、携帯電話によるインターネット利用も増加しており、平成 17 年末には
携帯電話などの移動端末によるインターネット利用者数が、パソコンによる利
用者数を逆転しています。
携帯電話を活用することで、自宅や会社にいなくても、いつでもどこでもイ
ンターネットを始めとしたさまざまなサービスを受けることができるようにな
り、今後も、市民生活、産業経済、行政サービスなどにおいて活用がすすむも
のと想定されます。
加入者数(万加入)
10,000
9,000
7,566
8,000
7,000
6,000
8,152
8,700
9,179
6,912
6,094
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
平成12年度
平成13年度
図1-1―3
平成14年度
平成15年度
平成16年度
平成17年度
携帯電話の加入者数の推移
(総務省「平成 18 年版 情報通信白書」により作成)
-11-
1-1-3
地上デジタル放送の開始
放送インフラにおいては、平成 15 年 12 月に三大広域圏(関東・中京・近畿)
において開始された地上デジタル放送が、順調に放送エリアを拡大しています。
デジタルハイビジョン※の高画質で高音質な番組に加えて、データ放送による暮
らしに役立つ情報の提供や、クイズやアンケートなどの双方向サービスなどが
提供されます。
また、携帯電話やカーナビゲーションなどの携帯・移動体向けのワンセグ放
送※も開始され、これにより、緊急災害時において電話が混みあってつながらな
い状況でも、確実に避難経路や安否情報などを受信することが可能になります。
平成 23 年の地上デジタル放送への完全移行に向けて、地上デジタル放送は、
地域情報や災害情報の提供など、地域に密着した情報提供における活用が期待
されています。
図1-1-4
防災分野における地上デジタル放送の活用イメージ
(出典:総務省「平成17年版 情報通信白書」)
-12-
1-1-4
1
ICタグ、ICカードの普及
ICタグの実用化
最近では、図書館や学校、企業など、さまざまな場面でICタグの実用化が
すすんでいます。ICタグは、すでに一般に普及しているバーコードと比較し
て、情報量が大きいこと、書き込みが可能なこと、離れた場所から一度に複数
の情報を読めることなどの利点が多く、物品管理、入退場管理、生産・流通履
歴の管理など、今後もさまざまな場面で活用がすすむことが想定されます。
活用事例
概要
ICタグによる蔵書の貸出・返却や検知ゲートによ
① 図書館システムにお
ける活用
る盗難防止など。
② 就学児童の安全確保
ICタグによる登下校時間の記録。電子メールによ
る保護者への登下校の通知。
③ 食品トレーサビリテ
ICタグによる食品の生産・流通履歴情報の管理。
ィ※
表1-1-1
ICタグの活用事例
(総務省「平成17年版 情報通信白書」ほかにより作成)
図1-1-5
就学児童の安全確保のための電子タグシステムの実証実験概要
(出典:総務省「平成17年版 情報通信白書」)
-13-
2
ICカードの多機能化
公共交通機関で活用がすすんでいる非接触ICカードは、一括前払いした金
額の範囲内において改札が瞬時にできるだけでなく、提携している店舗でのシ
ョッピングで使用できたり、クレジットカード機能が搭載されたりしているも
のもあります。
ICカードは、個人の利用履歴などを管理し、膨大な情報をサービス提供者
側で瞬時に処理することで、利用者個人のニーズに応じたきめ細やかなサービ
スの展開を可能にし、また、現金、印鑑、健康保険証などを常時持ち歩く負担
を軽減してくれる便利なカードとして、今後の普及が期待されます。
-14-
1-2
情報化社会の動向
情報化社会の進展により、ITは社会にとってなくてはならないものとなっ
ています。これまで日本は、最先端のIT国家をめざし、ITのインフラ整備
を中心に取り組んできましたが、今後はITをいかに活用していくのか、さら
には、利用者の視点から、いかに利便性を高めるのかが課題となっています。
また、ITの活用の拡大によって発生する新たな脅威への対応や安心して利
用可能な環境の構築といった視点も必要とされています。
ここでは、市民生活、産業経済、行政サービスという 3 つの側面から、情報
化社会の動向を示します。
1-2-1
情報化社会と市民生活
インターネットは、各家庭に安価で高速な接続環境が普及したことから、情
報収集やコミュニケーションの手段としてだけではなく、大容量の動画や音楽
のダウンロードサービス、オンラインショッピング、オンラインバンキング、
オンライントレードなど、24 時間 365 日、場所を問わずさまざまなサービスが
受けられる環境を実現しています。最近では、インターネット上で日記を作成
し公開できるブログや、インターネット上で友人を紹介しあって個人間の交流
を支援するSNSといった新たなサービスも登場しており、市民生活にもたら
しているITの恩恵は計り知れないものがあります。
1000
800
(万登録)
ブログ登録者数
SNS登録者数
600
716
400
200
868
335
111
473
399
0
平成17年3月末
図1-2-1
平成17年9月末
平成18年3月末
ブログおよびSNSの登録者数
(総務省 報道発表資料「ブログおよびSNSの登録者数」により作成)
-15-
その一方で、インターネットにおける個人情報の漏えい事件やコンピュータ
ウイルス被害などが急増しており、市民が安心してITを活用できる環境が求
められています。
また、少子高齢化社会を迎え、高度化したITの利用環境に適応できない高
齢者などが、利便性の恩恵を受けられないといった情報格差(デジタル・ディ
バイド)がさらに広がる傾向にあります。今後は、このような格差を生まない
ための取り組みが、市民生活において情報化をすすめていく上で非常に重要な
課題となっています。
さらに、防災・防犯情報の提供や食品の生産履歴情報の提供など、ITを活
用した安心・安全な社会の実現に向けた取り組みも数多く始まっており、自助・
共助・公助の仕組みが調和したまちづくりを一層推進することが求められてい
ます。
1-2-2
情報化社会と産業経済
ITの活用の進展は産業界にも大きな変革をもたらしています。電子商取引
の拡大、RFIDの活用によるサービスの向上や業務の効率化、インターネッ
トを活用した 24 時間 365 日のサービス提供など、ITの活用によって、新しい
事業の創出や変革がすすんでいます。また、一部の企業ではテレワークの導入
もすすんでおり、従業員の就業形態も変わり始めています。
最近では、企業のほとんどの事業がITに依存するようになっており、社会
経済活動の基盤となっているインフラの停止や機能低下などにより、産業・経
済全体へ大きな影響を及ぼす事態が数多く見られるようになってきました。こ
のため、情報セキュリティ対策を一層強化し、災害などの多種多様な脅威を想
定した事業継続計画の策定などに取り組むことが今後の重要な課題となります。
一方、IT関連産業においては、インターネットを活用した新規ビジネスの
登場など、創意工夫により多様なビジネスを生み出す可能性に富んでいます。
また、比較的小規模の資金(初期投資)で参入可能であることや、資金調達の
ための新興企業向け証券市場が整備されたこともあり、ここ数年、IT関連の
-16-
ベンチャー企業の参入が相次いでいます。
1-2-3
情報化社会と行政サービス
政府は、これまで利用者本位の行政サービスの提供と予算効率の高い簡素な
政府の実現をめざし、電子政府の構築を推進してきました。その結果、平成 17
年 3 月までに国の行政機関が扱う申請・届出等手続(約 1 万 4,000 種類)のほ
とんどについて、オンラインによる利用環境が整いました。今後も引き続き、
世界一便利で効率的な電子行政をめざし、
「オンライン申請率 50%達成や小さく
て効率的な政府の実現」を推進することとしています。
また、地方公共団体は、住民基本台帳ネットワークシステム※、公的個人認証
サービス※などの基盤を活用し、住民サービスの向上をはかるためのさまざまな
施策に取り組んでいます。申請・届出等手続をオンライン化するための汎用受
付システムの導入がすすんでいるほか、電子入札や公共施設予約のオンライン
化の開始など、住民・企業などに対するサービスの開始に向けた具体的な取り
組みが、各地域においてすすんでいます。また、複数の地方公共団体が共同で
情報システムを外部委託する共同アウトソーシング※の活用や、組織全体を通じ
た業務・情報システムの最適化をはかる設計手法であるエンタープライズ・ア
ーキテクチャー(EA)※を活用した効率的な電子自治体の構築を推進していま
す。
-17-
1-3
国の情報化施策
政府が平成 13 年 1 月にIT国家戦略として発表した「e-Japan 戦略」では、5
年以内に世界最先端のIT国家となることをめざし、産・学・官が一体となっ
てITインフラの整備をすすめ、その結果、最先端のマーケットと技術環境を
有する世界最先端のIT国家となりました。
その一方で、行政サービスや、医療、教育分野などのITの活用における満
足度の向上、地域や世代間などにおけるIT活用の格差の是正、セキュリティ
対策など、依然として課題が残っています。
このような状況をうけ、政府は平成 18 年 1 月に「IT新改革戦略」を策定し、
「いつでも、どこでも、誰でも
ITの恩恵を実感できる社会の実現」に向け
た具体的施策を発表しています。
ここでは、国が発表している今後の情報化施策の概要を述べます。
1-3-1
IT新改革戦略
政府は、平成 18 年1月に「IT新改革戦略」を発表しました。これは、
「e-Japan
戦略」および「e-Japan 戦略Ⅱ」の成果と課題をふまえ、
「いつでも、どこでも、
誰でもITの恩恵を実感できる社会」を実現しようとするものです。
同計画は、
「構造改革による飛躍」、
「利用者・生活者重視」
、
「国際貢献・国際
競争力強化」の 3 つの理念に基づき、今後重点的に取り組むIT政策をまとめ
ています。
まず、ITの構造改革力を追求して、日本の社会が抱えるさまざまな課題解
決を行おうとする「ITの構造改革力の追求」と、国際貢献のための「世界へ
の発信」の政策があり、これらを実現すべく「構造改革力を支えるIT基盤の
整備」や「新戦略を実現する推進体制・方法」を示しています。
-18-
図1-3-1
「IT新改革戦略」の概要
(出典:IT戦略本部「IT新改革戦略」)
1-3-2
u-Japan 政策
総務省は、平成 16 年 12 月に「u-Japan 政策~2010 年ユビキタスネット社会
の実現に向けて」を発表しました。
ユビキタス※とは、ラテン語で「遍在する」
、
「どこにでも存在する」という意
味であり、平成 22 年の日本の姿として、社会のさまざまな問題がITによって
解決された、いつでも、どこでも、何でも、誰でもネットワークにつながる「ユ
ビキタスネット・ジャパン(u-Japan)」の実現をめざしています。
この u-Japan 政策の基本思想は、
「ユビキタスネットワークの整備」、
「ICT
利活用の高度化」、
「利用環境の整備」3 つの基本軸で構成されており、これら 3
つの基本軸に沿って政策を展開することにより、ITが草の根のように生活の
隅々にまで融け込み、創意ある利活用を通じて新しい価値が次々に湧き上がる、
-19-
「価値創発」型の社会の実現をめざしています。
図1-3-2
u-Japan政策の主な内容
(出典:総務省「平成17年版 情報通信白書」)
-20-
1-4
本市の情報化への取り組み
ここでは、本市の総合計画における情報化施策の位置づけと、本市がこれま
ですすめてきた情報化への取り組みについて示します。
1-4-1
総合計画における情報化施策の位置づけ
本市では、
「誇りと愛着の持てるまち・名古屋」を目標にした「名古屋新世紀
計画 2010」を平成 12 年 9 月に策定しました。この計画で掲げている「2010 年・
名古屋がめざす 8 つの都市像」のうち、
「情報・産業技術都市」において、「電
子市役所の実現」を先導的プロジェクトのひとつとして位置づけ、市民が必要
なときに必要なサービスを身近な場所で受けられるよう行政サービスの電子化
をはかるなど、情報化を推進しています。
また、この総合計画の「情報・通信」部門では、高度情報通信社会の進展に
対応した施策として、
「電子市役所の実現」
、
「ICカードの導入」
、
「情報ネット
ワークの整備」などを盛り込んでいます。
1-4-2
情報化施策の取り組み状況
本市では、
「名古屋新世紀計画 2010」の着実な実現に向けて実施計画を策定し
ており、これまでに「第 1 次実施計画」
(平成 13 年 9 月)、
「第 2 次実施計画」
(平
成 16 年 3 月)を策定して、施策・事業の効率的かつ効果的で着実な推進をはか
っています。
情報化施策においては、
「名古屋市情報化プラン」の示す方向性のもと、これ
らの実施計画に基づいて「市民サービスの向上と行政の効率化」、「豊かで活力
ある地域の情報化」、「安全な情報環境づくり」の 3 つの施策をすすめてきまし
た。
-21-
1
市民サービスの向上と行政の効率化
市民サービスの向上と行政の効率化をすすめるため、ホームページを活用し
て市民生活に結びつくさまざまな情報を提供するとともに、スポーツ施設利用
の申し込みや市税の申告、調達事務などの手続きや区役所窓口業務の電子化な
どをすすめてきました。
さらには、こうした電子化をすすめていくための通信基盤の整備として、市
役所と区役所などの間に光ファイバー網を整備し、住民記録、国民健康保険、
税務など行政情報の伝達だけでなく、道路・河川・雨水排水などの防災情報の
画像伝達における活用もすすめてきました。
一方、文書の総合的な管理や人事・給与情報の一元的な管理など内部事務の
電子化をすすめるとともに、誰もがITを活用できる環境を確保するため、パ
ソコン初心者でも使いやすいソフトの開発や図書館など公共の場所への誰もが
利用できる公共情報端末の整備などの取り組みをすすめてきました。
名称
概
要
① 財務会計総合システム
一般会計およびすべての特別会計を対象に、財務
会計事務を総合的に行う情報システムである。
② 税務総合情報システム
税務関係事務を総合的に行う情報システムであ
る。
③ 福祉総合情報システム
福祉関係事務を総合的に行う情報システムであ
る。
④ 行政内部事務システム
⑤ 電子調達システム
⑥ 市税電子申告システム
表1-4-1
文書管理事務や人事・給与事務を行う情報システ
ムであり、利用権限を制御する認証機能をほかの
情報システムに提供している。
調達情報の提供や、入札参加資格審査申請、入札
を、インターネットを活用して行うことのできる
情報システムである。
納税義務者が市税の申告を、インターネットを活
用して行うことのできる情報システムである。
主な情報システムの整備状況(平成12年度以降)
-22-
2
豊かで活力ある地域の情報化
豊かで活力ある地域の情報化をすすめるため、ケーブルテレビの設備の広帯
域化や、インターネットや地上デジタル放送対応など、地域に密着した情報通
信基盤であるケーブルテレビ網の拡大を促進してきました。
3
安全な情報環境づくり
安全な情報環境づくりをすすめるため、
「名古屋市情報あんしん条例」を制定
し、職員の安全対策に関する知識や意識向上のための研修や情報セキュリティ
監査の実施など、電子情報の保護対策およびその検証に取り組んできました。
-23-
1-5
本市の情報化の現状と課題
今後の情報化施策をすすめる上での参考とするため、
「インターネットを活用
した行政サービスについて」というテーマで市政アンケートを行いました。
ここでは、市政アンケートの結果などのデータを参考にしながら、本市の情
報化の現状と課題を示します。
1-5-1
1
市政アンケート結果・統計データ
パソコンの保有状況、インターネットの利用状況
本市の市政アンケートの結果によると、ここ数年のパソコンの保有率は 60%
台の後半を推移しており、また、インターネットの利用状況については 60%前
後を推移していることから、本市におけるパソコンやインターネットの普及が
一定の水準に達していることがうかがえます。
80
60
(%)
56.1
52.0
68.6
68.2
66.6
平成16年
平成17年
平成18年
59.2
40
20
0
平成13年
平成14年
平成15年
図1-5-1
パソコンの保有状況
(各年度 市政アンケート結果により作成)
-24-
80
(%)
60.0
59.4
平成17年
平成18年
56.7
60
43.4
47.9
48.0
平成14年
平成15年
40
20
0
平成13年
図1-5-2
平成16年
インターネットの利用状況
(各年度 市政アンケート結果により作成)
2
名古屋市公式ウェブサイトへのアクセス件数
名古屋市公式ウェブサイトへのアクセス件数が増え続けており、トップペー
ジ(http://www.city.nagoya.jp)のアクセス件数(月平均)は、平成 12 年度
に 47,940 件でしたが、平成 17 年度には 280,790 件と、約 6 倍の伸びを示して
います。
市政情報を入手する手段として、インターネットを活用する人が増加してき
ていることがわかります。
平成17年度
130,799
平成15年度
105,984
平成14年度
95,791
平成13年度
47,940
平成12年度
0
図1-5-3
280,790
164,637
平成16年度
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
(件)
名古屋市公式ウェブサイトアクセス件数(月平均)の推移
-25-
3
ケーブルテレビの普及状況
市内ほぼ全域に整備されたケーブルテレビは、大量の伝送能力(多チャンネ
ル)、地域密着性などの特徴をもっており、インターネット接続サービスも提供
しているなど、地域の情報基盤として有効なものです。
ケーブルテレビの加入世帯数は、平成 12 年度においては、286,019 世帯であ
ったものが、平成 17 年度においては 457,457 世帯と、約 1.6 倍の伸びを示して
います。また、世帯普及率も、平成 17 年度において 47.7%となっています。
(世帯)
(%)
500,000
47.7
450,000
400,000
41.5
加入世帯数
世帯普及率
350,000
300,000
38.5
40
35.1
31.9
250,000
388,628
424,288
457,457 30
355,355
200,000
150,000
50
44.8
286,019
320,321
20
100,000
10
50,000
0
0
平成12年度末 平成13年度末 平成14年度末 平成15年度末 平成16年度末 平成17年度末
図1-5-4
4
市内のケーブルテレビの加入状況の推移
ITの進展に対するイメージ
情報化の進展のイメージとしては、
「より多くの正確な情報が迅速に得られる
(40.5%)」というインターネットなどのITの進展に対する期待を感じている
市民が多くみられます。一方で、
「個人情報が漏えいし、プライバシーが侵され
る(29.9%)」、
「社会の進展についていけず、個人の情報格差が拡がる(25.7%)」
など、不安を抱えている市民も少なくないという傾向がみられます。
-26-
40.5
より多くの正確な情報が迅速に得られる
6.1
情報通信サービスにより効率的になり、自由な時間が増える
4.4
インターネットなどを通じて人と人とのふれあう機会が増える
29.9
個人情報が漏えいしプライバシーが侵される
社会の進展についていけず、個人の情報格差が拡がる
25.7
漏えいした個人情報が犯罪に使用されるなどの経済的な被害にあう
25.3
情報が氾濫し、必要な情報が探しにくくなる
25.0
21.7
あふれる情報に人が左右され、社会が間違った方向に進んでいく
16.2
通信費用や機器購入費用など経済的負担が増える
11.2
コンピューター等の事故により、大きな社会混乱が生じる
※ 複数回答あり(3つまで回答)
図1-5-5
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
(%)
50
ITの進展に対するイメージ
(平成18年度 市政アンケート結果により作成)
5
電子申請で利用してみたいと思われる行政サービス
今後、電子申請で利用してみたいと思う行政サービスとしては、
「住民票の写
し等の交付申請」が 33.2%、
「戸籍(除籍)謄抄本等の交付申請」が 26.8%、
「市
民参加イベント等の申し込み」が 19.5%などという結果になっており、市民に
身近な申請・申し込みの電子化の希望が多くなっています。
また、証明書交付の電子申請については、電子申請を利用してみたいと思わ
れる市民の半数以上の人が、
「申請と手数料の支払いをパソコンで行い、証明書
は郵送で受け取る」方法を利用したいと答えています。
-27-
住民票の写し等の交付申請
33.2
戸籍(除籍)謄抄本等の交付申請
26.8
固定資産評価証明の申請(固定資産課税台帳等登載事項証明の申請)
9.4
所得証明の申請(市民税・県民税証明の申請)
15.8
国民年金に関する申請(国民年金保険料免除の申請)
13.0
国民健康保険に関する申請(国民健康保険高額療養費支給の申請)
14.1
市民参加イベント等の申し込み
19.5
そのほかの申請等
1.5
今のところ、利用したいものが思いあたらない
32.8
よくわからない
13.1
(%)
※ 複数回答あり
0
図1-5-6
5
10
15
20
25
30
35
40
今後電子申請で利用してみたいサービス
(平成18年度 市政アンケート結果により作成)
申請と手数料の支払いをパソコンで行い、
証明書は郵送で受け取る(郵送料は申請者負担)
55.3
申請のみパソコンで行い、受付場所に出向いて
証明書の受け取りと手数料の支払い行う
30.1
申請と手数料の支払いをパソコンで行い、
証明書は受付場所に出向いて受け取る
9.8
利用したいと思うものはない
11.0
(%)
0
10
20
30
40
50
60
※ 利用したい申請があると回答した人が回答、複数回答あり
図1-5-7
証明書の受け取り方法や手数料の支払い方法
(平成18年度 市政アンケート結果により作成)
6
ITを活用したコミュニティ活動
ITの進展により、地域活動や文化活動などの情報発信や情報交換がホーム
ページなどにより行われています。これらの取り組みを通して、地域の課題解
決の担い手となるようなコミュニティが形成され、市民同士で情報交換をした
-28-
り、助けあったりすることによって、地域社会の課題解決をはかることが期待
されます。
ITを活用したコミュニティ活動について興味がある市民が全体の 15.6%と
いう結果になり、そのうち「今後、コミュニティ活動に関するホームページの
閲覧をしたいと考えている」という回答が 4 割近くあります。また、
「興味はあ
るが、どのようにすればよいかがわからない」と答えた市民は 27.5%となって
います。
このことから、今後、地域活動においてITも活用されていくものと考えら
れます。
すでに、ホームページなどでコミュニティ活動の
情報発信や情報交換をしている
7.8
すでに、コミュニティ活動に関するホームページの
閲覧をしている
20.3
今後、ホームページなどでコミュニティ活動の
情報発信や情報交換をしたいと考えている
13.7
今後、コミュニティ活動に関するホームページの
閲覧をしたいと考えている
39.2
11.8
興味はあるが、活用できるホームページがない
興味はあるが、どのようにすればよいかが
わからない
27.5
そのほか
0.7
よくわからない
0.7
0
5
10
15
20
25
30
35
40
※ ホームページなどを活用したコミュニティ活動に興味がある人が回答、複数回答あり
図1-5-8
コミュニティ活動におけるITの活用の希望
(平成18年度 市政アンケート結果により作成)
-29-
45
(%)
1-5-2
課題
1-5-1
市政アンケート結果・統計データから、本市の情報化の現状を
明らかにしました。これらの現状から、以下のような課題に取り組んでいく必
要があります。
1
ITを活用した市民サービスの向上
図1-5-1、図1-5-2から、本市におけるパソコンやインターネット
の普及状況が一定の水準に達していることがわかります。また、図1-5-4
からケーブルテレビについても普及がすすんでいることがわかります。名古屋
市公式ウェブサイトへのアクセス件数については、図1-5-3にあるとおり、
過去 5 年間で約 6 倍の伸びを示しております。
このようなことから、インターネットを活用した行政手続きの電子化や市政
情報の提供など、ITを活用した市民サービスを引き続き向上させていく必要
があります。
2
ITの進展に対するイメージ
図1-5-5から、インターネットなどのITの進展に対しては、個人情報
の漏えい、個人の情報格差(デジタル・ディバイド)
、プライバシーの侵害など、
情報化社会に不安を抱えている市民は少なくありません。
このような中でITの活用をすすめていくためには、万全なセキュリティ対
策や情報格差への対応など、市民の不安を解消するための取り組みが必須とな
ります。
3
電子申請で利用してみたいと思われる行政サービス
図1-5-6から、市民は、住民票の写しや戸籍(除籍)謄抄本等の交付申
請や市民参加イベント等の申し込みなど、身近な手続きの電子化を希望してい
-30-
ることがわかります。
市民サービスの向上をはかるためにも、市民ニーズを把握し、電子申請に対
する市民の認知度の向上につとめながら、多くの利用が見込める手続きについ
て電子化をすすめていく必要があります。
4
ITを活用したコミュニティ活動
図1-5-8から、ITを活用したコミュニティ活動に興味のある市民の中
には、今後、コミュニティ活動に関するホームページの閲覧をしたいと考えて
いる市民や興味はあるがどのようにすればよいかがわからない市民が多くみら
れます。
今後は、このような市民に対する支援をすすめていくことが必要となります。
5
行政事務の効率化
財政状況が引き続き厳しい中で、ITの導入をはかり、市民サービスの向上
や行政事務の効率化をすすめてきました。
今後も、ITを活用した行政事務のさらなる効率化を実現するとともに、費
用対効果のある情報システムの構築、情報システムの運用の効率化によるコス
トの低減などに、引き続き取り組んでいく必要があります。
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
(億円)
11,135
10,860
10,793
平成12年度
10,544
11,037
平成13年度
歳入
歳出
10,079
10,280
10,462
平成14年度
10,212
平成15年度
図1-5-9 歳入・歳出決算額の推移
-31-
10,043
平成16年度
1-6
情報化推進に向けて
情報化推進の背景として、ITの動向、情報化社会の動向および国の情報化
施策について示すとともに、本市のこれまでの情報化の取り組み状況や、今後
の課題について示しました。
本市を取り巻く状況として、少子高齢化や環境問題、安心・安全なまちづく
りなどの課題がある中、インターネット環境の進展など情報通信基盤整備がす
すみ、パソコンや携帯電話などの情報通信機器が普及したことから、社会環境
の変化や多様化する市民ニーズに的確に応えるため、ITを活用することは大
変有効な手段といえます。
情報化の推進においては、引き続き電子情報の保護対策につとめるとともに、
これまですすめてきた電子市役所の基盤整備の成果を効果的に生かすよう取り
組むことが重要です。そのためには、行政内部の情報化による事務の効率化は
もとより、市民が利便性を実感できる電子行政サービスの推進や地域の活力と
魅力を創出するためのコミュニティ活動におけるITの活用の支援など、市民
があらゆる場面で安心してITを利用できる情報化社会に向けた取り組みが重
要であると考えられます。また、ITは日々進歩しているため、常に新しい技
術の動向に留意して、行政における活用を検討していくことも必要です。
-32-
社会課題への対応
ITの進展
これまでの取り組み
・少子高齢化対策
・インターネット環境の進展
・電子行政サービスの推進
・環境問題
・携帯電話の高機能化
・光ファイバー網の整備
・安心・安全なまちづくり
・地上デジタル放送の開始
・行政内部事務の効率化
・ICタグ、ICカードの普及
・電子情報の保護対策
改訂のポイント
‹ 基盤整備からITの活用へ
◇ 電子行政サービスの推進
•
電子申請・電子調達・市税電子申告システムで扱う
行政サービスの拡充
•
地上デジタル放送を活用した市政情報や防災情報
などの提供
◇ コミュニティ活動におけるITの活用の支援
◇ ICタグ・ICカードなど最新のITの活用の検討
‹ 電子情報保護対策の適切な実施
-33-
改訂のポイント
◇
電子行政サービスの推進
電子申請・電子調達・市税電子申告システムで扱う行政サービスの拡充
窓口へ行くことなく自宅や会社のパソコンから各種申請・届出などの
手続きができるようにするため、手続きの電子化をすすめます。
市民ニーズを把握し、高い効果の見込める手続きの充実をはかること
で、利便性が実感できる電子行政サービスを実現します。
-34-
改訂のポイント
◇
電子行政サービスの推進
地上デジタル放送を活用した市政情報や防災情報などの提供
さまざまな行政情報を市民が入手しやすい環境を整備するために、イ
ンターネットや地上デジタル放送などを活用した情報提供の充実をは
かります。
-35-
改訂のポイント
◇
コミュニティ活動におけるITの活用の支援
地域の活力と魅力を創出するため、地域で活動している市民を対象に、
ホームページなどによる情報発信や情報交換など、コミュニティ活動に
おけるITの活用を支援していきます。
-36-
改訂のポイント
◇
ICタグ・ICカードなど最新のITの活用の検討
市民の利便性向上をはかるため、ICタグやICカードなど最新技術
の行政分野における活用の検討をすすめていきます。
-37-
-38-
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