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第10号 - 滋賀県

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第10号 - 滋賀県
平成20年3月15日
塾 報
『滋賀の教師塾』事務局
編集発行: 事務局長
【第10号】 〔第一面〕 ちどり
千 鳥
【今日の言葉】人を不安にするものは、
事柄そのものではなく、むしろそれに
関する人の考えである。
ヒルティ『幸福論』(第一部)
【本日の講座について】 今日の講演は森建司氏(前県教育委員)によるMOHを
巡るお話。さて何を意味するのか。同氏が発行しておられる雑誌『MOH通信』(第
19 号)も全員分をいただきました。同講演の他に演習の中で「教師と読書」について
も意見を交換し合います。限られた時間ですが、積極的な参加を期待しています。
【第十一回教師塾開催について】
◎日 時: 平成20年4月19日(土)13:00 ∼ 16:40
◎場 所: 『コラボしが21』3階大会議室(「びわ湖ホール」の南側道路をはさんだ向かい側の新築ビル)
〔JR大津駅下車徒歩 15 分、JR膳所駅下車徒歩 10 分、京阪電車「石場」駅より徒歩3分〕
◎内 容: ・『教材作りの実際』 (学校教育課担当指導主事)
・
『指導案作りの実際』 ( 同 上 )
【選択講座受講報告書】 選択講座を3講座受講し、報告書も提出済みの方は現在70名です。報告書をも
って受講確認をしますので、受講分についてまだ報告書未提出の人は早めに提出してください。
【講座の「感想と評価」提出について】 各講座のアンケートの未提出の方は次の通りです。確認の上至急提出を。
〔第1回〕 1101, 1127, 2435, 2450 〔第2回〕 1127, 2303, 2435, 2437 〔第5回〕2322 〔第6回〕1101, 1116, 1236,
1273, 2322 〔第 7 回〕1101, 2440 〔第8回〕1242, 1254, 1256, 2322, 2435, 2440 〔第9回〕15 名
【第9回講座の評価結果について(5段階表示)】
① 特別支援教育について … 4.26 ② 国際理解教育について … 4.55 ③ 外国人児童の指導について … 4.87
《第9回講座における塾生アンケートより》
▼実地研修で自閉症の子と接する機会があったので、今日の特別支援教育についての講義は前から興味があった。
自らの経験から詳しく話していただいたのでとても勉強になった(小・男)▼講師のお話は大変学びのあるもの
だった。特別支援の考え方は本当に美しい教育的営みを可能にするのだと思う(小・男)▼自分の世界を基準と
して考えるのでなく、それぞれの人に基準があることを理解すべきという言葉が印象に残った(小・女)▼ ADHD,
LD,高機能自閉症と言われる人が日頃どんな思いで生活しているのかが具体的な事例を知ることでよくわかった
(小・女)▼専門的知識以外にも講師の考え方が聞けて良かった。私たちは自分の物差や解釈で障がいを持つ人
を見てしまうために“障がい”という概念が存在するという言葉が印象的だった(小・女)▼「世の中で生きて
いく上でさしさわりが出てきた時にはじめて障害となる」という講師の言葉を聞いて障がいに対するイメージが
大きく変わった(小・女)▼こんなにも多くの外国籍児童が県内の小中学校に在籍していることを初めて知った
社会の変化に伴って学校の状況も変化しているので教師に求められる資質も広く変化していると感じた(小・女)
▼国単位で国際理解教育への理解を深めている現在、滋賀の教員を目指すからこそ県の現状、日本の現状を踏ま
えた上で教壇に立つという意欲が湧いてきた(中・男)▼県内の外国人児童の在籍比率の高さに驚き、現状の難
しさや課題の多さを知った。その中で日々辞書を片手に奮闘している先生方の努力に感銘を受けた。私も諦めな
い教師になりたいと思う(中・女)▼沢山の資料を用意して頂き分かり易かった。私はスペイン語学科なのでラ
テンアメリカに興味もあり、今後ボランティアなどに参加し支援していきたい(中・女)▼日系三世の講師にお
会いできてVTRの映像から飛び出して来られたような錯覚になった。自分が戸惑っていた部分のモヤが晴れて
いく思いがした。その姿勢に憧れを抱いた(小・女)▼瑞慶山先生は強い意欲と情熱をもっておられ、外国人児
童の気持ちに寄り添いながらきめ細かに指導されている姿にとても感動した(小・女)▼先生のTV番組の特集
を以前拝見していたので、今日直接お話を聞けたことにとても感激した。もっと長時間お話を聞きたかった(小
・女)▼先生の立派な姿が素敵で教師のモデルだと思った(小・女)▼一つ一つの困難な問題に試行錯誤しなが
ら対応されていてその苦労と努力から多くのことを学び、また感動さえ覚えた。先生の凛とした姿がまぶしく、
また目標とする先生が増えました(小・女)▼先生は高校の部活(陸上部)の先輩で全国大会にも出られて、友
人も多く後輩にも優しかった。お話から外国人児童の心の中の叫び声が聞こえてくるようだった。先生のように
子どもの心に寄り添える教師になりたい(小・女)▼私の大学近くの新宿大久保はコリアタウンとして知られて
いる。その小学校では三分の一から半分がハーフまたは外国籍の児童だという。そういう環境の近くで普段大学
に通っていながら、これまで殆ど接してこなかったことが非常に勿体ないと感じている。今回の講義は大変有意
義なものだった。今後はこうした国際理解の面にも積極的に目を向けるようにしていきたいと思う(中・男)
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塾報 『千鳥』【第10号】
【教育随想】
(No.2)
巣立ちゆくX君へ
事務局長
中居 和平
卒業おめでとう。卒業は人生の一区切りであり、新しい旅立ちとして次の飛翔への礎となるものなのです。物
理的にも精神的にも親の手厚い庇護から離れて真の自立が始まることを意味するだけに、大きい価値を持つもの
だということをよく心に留めて欲しいのです。英語で卒業式を commencement とも呼びますが、それは commence
(始まる・始める)という動詞から来ていることぐらいは、英語を志す君ならどこかで聞いて知っているでしょ
う。そのことは誠に象徴的なことで、ここから新たな人生が始まることに大きな意味があるのです。
裁判にもなったD・H・ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』の日本語訳者としても知られている作家の伊藤
整は、『青春』を定義して「人生が自分の後方にではなく、前方に全部未開発で残っている気持」と言っていま
す。実に言い得て妙であると思います。僕は高校生諸君がどこの大学に入ったかということより、どんな学生生
活を送るかということの方により強い関心があるのです。つまり、これから君が大学生活を送ろうとするとき、
眼前に洋々と広がる未開発の知の領域をどう埋めていくのか、そして、彼の定義による『青春』をどのように謳
歌していくのかに興味を持っているのです。 思想の森を逍遙し、抽象の世界に耽溺し、言語の厳密性を追究し、
天下国家を論じ、人生いかに生きるべきかを考えることができるのは、モラトリアム人間としての大学生にのみ
与えられた特権のようなものなのです。それを体験するかどうかで、その後の君の人生は大
きく変わってくると言っても決して過言ではありません。君にできることは、めぼしい講義
に触発されて、できる限り多くの書物を紐解いてみることです。そして自分の肌に合う好き
な学者や作家、評家に出会ったなら、その全集を読破してみるのです。「文は人なり」とはよ
く言われること。書物が書物には見えず、それを書いた人間に見えてきたならば、君は読書
を通じて大きく成長した自分の姿を発見するでしょう。痩せたソクラテスになれとまでは言
わない。太っていてもいい、ただ精神だけは絶えずハングリーな状態にしておくことだ。
旺盛な知識欲、満ち溢れる気力と体力、研ぎ澄まされた感性と鋭敏な問題意識、そして学
ぶ意欲、前向きな姿勢 …… そんな環境が整えば書物の方が君に近づいてくるだろう。書物
は君が実体験し得ないような果てしない想像の世界に誘い、知恵を授け、心を満たしてくれ
るのです。その意味で、書物に親しむ者は福沢諭吉の言う「一身にして二生を経る」がごと
き贅沢な人生を享受することができるのです。君は居ながらにして、ジュリアン・ソレルや
ハンス・カストルプ、イシュメルとなり、全く異質な世界をさまようことができるだろう。また、ラスコーリニ
コフやマクベスの世界に感情移入すれば、君を二重三重に取り巻いている観念の諸形態を、原理的に否定しよう
とするある危険な何ものかが自分の奥深い内部にもあることを知って慄然とするだろう。高校時代に『罪と罰』
を読んで人生観や人間観を塗り替えられるほどの衝撃を受けた僕自身の体験からすれば、書物には読まれるべき
ふさわしい年齢があるものなのです。そう、しなやかな感受性が応えてくれる年齢というものが。
忙しすぎて本を読む暇などないという見やすいことは誰でも口にしますが、進んで本を求めなくなった自分の
心には、人はなかなか気づかないものです。巷には書物があふれ、情報が乱舞しています。だが、人間が文字を
読むスピードは、昔も今も少しも変わっていないことは注目すべきことです。だからこそ、この情報洪水の中で、
何をどう読み、本当に必要な情報をいかに取り出すかを、君は懸命に学ばなければならないのです。
21 世紀にはなりましたが、時代は相変わらず苦悩と混迷を極めています。ハムレットに言わしめた"Times are
out of joint." (世の中タガがはずれている)というシェイクスピアの言葉は、4世紀もの長き歴史を超えてそのま
ま現代にも通じるのです。ただ、この世紀は確実に君たちの時代です。不満や愚痴だけを口にすることはやめよ
う。大切なことは、卒業して社会人になってからでも出来る俗事に身を費やすのではなく、また万事が軽佻浮薄
な世の習いに没することなく自分自身の確たる生き方を模索し、確立していって欲しいということです。
僕は、この新世紀を意味あらしめる力は、恐らく二つの《ソウゾウリョク》─つまり創造力と想像力ではないか
と考えています。偉大な先人の知恵の集積としてのあらゆる書物から学びながら、この二つの力を大切に育みつ
つ、充実した大学生活を送って欲しいと願っています。月並みながら、何よりも健康が第一です。体には十分留
意しなさい。いつの日か再会し、大きく成長した君と共にまた語り合えることを楽しみにしています。
拙著『言葉とともに』(平成 19 年 4 月発行)より抜粋転載
【最近の読書から】福岡伸一『生物と無生物のあいだ』
(講談社現代新書)生命とは何か?それは“自己複製
を行うシステム”であるというメッセージを基調とし
て、遺伝子等を巡る先端科学発見の神秘と妙味を余す
ことなく表出、生物音痴の編集子にも緊張と興奮をも
たらしてくれる。文学者肌の自然描写と文体も秀逸。
【編集後記】昔「○○○○を入れないコーヒーなんて」
というコマーシャルがありましたが、それを真似て言え
ば「読書をしない教師なんて」と明言できそうです。課
題図書をどう読んだか、「自分の一冊」にどんな本が登
場するのか、興味津々。読書好きの児童生徒を育てるた
めには少なくとも教師自らが本を愛する心を持ちたい。
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