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参議院法制局入局からこれまでを振り返って 参議院法制局の仕事と魅力
参議院法制局入局からこれまでを振り返って 私が参議院法制局に勤め始めてから、既に まず、条例案、規則案等の審査です。知事が 17年が経過しました。当局の職務は、参議院 議会に提出する年間100件弱の条例案につ 議員の依頼が前提となり、政治情勢にも左右 いて審査を行うのが主な業務で、参議院法制 されますので、どのような案件を担当するか 局の勤務で培った法制執務に関する経験を は偶然の産物です。私の経験を振り返ること 生かすことができました。また、県内の幼稚 によって、参議院法制局での職務のイメージ 園から高校までの私立学校の振興施策を担 をお伝えできれば幸いです。 当しました。例えば、私立学校の設置の認可、 ■ 係員級 (平成11年4月~) 年間約50億円の予算で学校法人に対する助 平成11年4月に参議院法制局に入局し、法 成などを行いました。こうした業務を通じ、地 務、外交防衛の担当課に配属になりました。 方の行政運営について知見を得ることがで 法務分野で、児童ポルノ禁止法案の立案など きました。岩手県庁では約2年お世話になり、 の依頼がありましたが、気が付いたら可決さ 平成18年1月に参議院法制局に復帰し、厚生 れていたという具合で、周りで何がどう進んで の担当課、財政金融の担当課を経験しました。 いるのか分からない状態でした。先輩方の説 平成19年8月には、アメリカ合衆国及びカナダ 明によって議論についていくのがやっとでし に出張し、ボストンで開催された全米立法機関 たが、立案の過程を初めて経験し、立法の現 協議会に出席したほか、カナダ議会の立法補 場に就職したことを実感しました。同じ年の 佐機関を訪問するなどの機会がありました。 夏には、地方行政の担当課に異動になりまし 代表選挙を拘束名簿式から非拘束名簿式に する改正案の依頼があり、条文の原案の起案 憲法適合性、現行法体系との整合性など げていきます。課内での議論においては、 ともに、判例・学説、諸外国の制度、その ことが求められますので、若手のうちから、 略歴 ほか参考となり得る各種文献を徹底的に 積極的な活躍が期待されている職場であ 調べ、既存の法体系の枠内で依頼者の思 ると思います。 いを最大限実現できるよう日々たゆまぬ また、私は、当局に入局して以来、様々 努力をしています。 な分野の議員立法の立案等に携わりまし ときには、立案の過程で、憲法適合性 たが、当局は、採用後、定期的に人事異 が問題となることや、従来あまり議論の対 動があることから、大学等で培った法的知 象となってこなかった未知の分野に取り 識を生かして幅広い分野の法律に携わる 掛からなければならないこともありますが、 仕事がしたいという方にとっては、魅力的 このような場合であっても、検討を先送り な職場ではないかと思います。 平成11年4月 入局 〔法務、外交防衛、地方行政、総務、議院運営、厚生労 働(厚生)等を担当〕 平成15年4月~ 係長級 〔厚生労働(厚生)等を担当〕 平成15年12月 岩手県庁に出向 平成18年1月~ 参議院法制局に復帰 〔厚生労働 (厚生) 、財政金融、法務、文教科学等を担当〕 平成20年4月~ 課長補佐級 〔法務、文教科学、財政金融、総務、国土交通等を担当〕 平成27年10月~ 現職 〔法務、外交防衛を担当〕 案に関わる業務を処理するため、当時所属し にすることは許されず、自分たちで一定の このパンフレットを読んで当局に興味 衛の担当課の応援に行きました。応援先の課 結論を導き出さなければなりません。 を持っていただいた方と、共に仕事がで では、対案の作成に始まり、連日の委員会審 このため、各自で地道に調査・研究を行 きることを楽しみにしています。 うのはもちろんですが、課内では何度も 佐するという課長補佐の任務をこなす一方で、 ■ 係長級 (平成15年4月~) ■ 課長補佐級 (平成20年4月~) その後、国家基本政策、議院運営等の担当 法務、文教科学の担当課に配属になり、文 課を経て、厚生の担当課に配属になりました。 教科学分野で依頼を立て続けに受けることに 同課では、性同一性障害者性別取扱特例法 なりました。研究開発力強化法案や教科用特 案の立案の依頼がありました。当時は、性同 定図書等普及促進法案の立案に関与し、そ 一性障害に対する理解や関心が今日ほど進 のいずれもが成立に至りました。また、法務 んではいませんでしたが、当事者のために熱 分野では、野党から、被疑者の取調べの録音・ 心に活動する議員がいて、成立に至りました。 録画制度の導入等を行う刑事訴訟法の改正 この法律は、 「議会は、男を女にし、女を男に 案の依頼があり、提出されましたが、廃案と すること以外は何でもできる。 」という有名な なりました。しかし、平成28年の通常国会で、 格言に挑戦するような内容であり、議会で働く 政府提案の刑事訴訟法等の一部改正法が成 人間として強く印象に残っています。 立し、取調べの録音・録画制度の導入が決ま 平成15年12月から、岩手県庁の総務部に りました。このように、野党が政府よりも前に 出向しました。翌年の4月から法務私学担当 先駆的な政策を提案することがあり、そうした 政策を法律案の形にするのも、参議院法制局 の重要な役割です。 平成22年1月には、総務の担当になり、再び 選挙制度の改革に携わることになりました。参 議院法制局の担当者として、各会派による選 挙制度協議会等に陪席して協議内容をフォロー しました。この仕事は、平成24年に、参議院選 挙区選出議員の定数の4増4減の較差是正等 を行う公職選挙法の改正につながりました。 平成27年夏には、平和安全法制関連2法 05 職員からのメッセージ 合うことで、依頼内容を条文の形に仕上 第 5 部第 1 課 安藤 美幸 略歴・主な担当法案 平成18年4月 入局〔環境、農林水産を担当〕 環境配慮契約法案 等 平成18年7月~ 〔文教科学、法務、外交防衛を担当〕 研究開発力強化法案、教科用特定図書等普及促進 法案 等 平成21年8月~ 〔内閣、行政監視を担当〕 消費者教育推進法案、国家公務員法等改正案 等 平成23年9月~ 〔厚生労働(労働) 、経済産業を担当〕 放射線業務従事者の被ばく線量の管理に関する法律 案 等 平成25年1月~ 〔議院運営、憲法、総務を担当〕 公職選挙法改正案 (4県2合区を含 む10増10減案 ) 等 平成27年10月~ 現職〔法務、外交防衛を担当〕 ヘイトスピーチ解消法案 等 き、これらの業務を通じて、課長を的確に補 に関与できたことに参議院法制局ならではの 課長になり、次のような業務に当たりました。 案依頼を受けると、限られた時間の中で、 採用年次に関係なく、積極的に発言する 長補佐時代には色々な案件に携わることがで る選挙制度について、立法府において法改正 議論を行い、職員一人一人が知恵を出し 様々な観点から依頼内容の検討を行うと 議への対応に追われました。このように、課 作業等を行いました。民主主義の根幹に関わ 議院法制局にお いては、法律案の立 齋藤 陽夫 第 5 部第 1 課長 ていた国土交通の担当課から、急きょ外交防 た。翌平成12年の夏に、参議院議員の比例 やりがいを感じました。 参議院法制局の仕事と魅力 公職選挙法改正案の立案を振り返って 様々な分野の法律について土地勘を養うこと ができました。 ■ 課長 (平成27年10月~) 今夏の参議院通常選挙では、選挙区選 だけに特に印象に残っています。 出議員について「合区」された選挙区で この法案に限らず、依頼議員の政策を の選挙が初めて行われました(鳥取県及 執行する上で支障が生じないように、ある び島根県選挙区と徳島県及び高知県選 いは、その政策を円滑に執行することが 員への説明、委員会審議への対応、修正案の 挙区) 。これは、昨夏に成立した公職選挙 できるようにするにはどうすればよいかを 作成などの職務に責任を持って当たりました。 法の改正案によって実現したもので、私は、 考え、既存の法制度等との齟齬のない条 その法案の立案に携わりました。 文を作成することは、当局の重要な仕事 この立案の中で、印象深く、やりがいが の一つとなります。 あったのは、 「合区」された選挙区での選 これまでにない政策を検討し、条文に 平成27年10月に法務、外交防衛の担当課 の課長になりました。管理職になって初めて 迎えた第190回通常国会で、いわゆるヘイト スピーチ解消法案の立案に携わりました。議 緊張の連続でしたが、課長になって初めて成 立した法律ということもあり、これまでにない 満足感が得られました。 課長になると、課を単位とするチームのマ ネジメント能力が求められます。また、依頼議 員に対し、法的な論点について説明したり、 質問に回答したりと、議員と直接やり取りをす る立場にもなります。議員の思いや政策を受 け止め、適切な法律案とするには、議員との 信頼関係を醸成していかなければなりません。 そのためにも、課というチームで課員がそれ ぞれの持つ能力を発揮し、検討の質を高める ことが不可欠です。こうした仕事に取り組む意 欲のある皆さんが、参議院法制局に興味を持 第 5 部第 2 課 阿部 高幸 略歴・主な担当法案 平成24年4月 入局〔環境、農林水産を担当〕 小型家電リサイクル法案修正案 等 平成25年1月~ 〔厚生労働(厚生)を担当〕 がん登録推進法案 等 平成26年1月~ 〔議院運営、憲法を担当〕 国会議員資産等公開法改正案 等 平成27年1月~ 〔総務を担当〕 公職選挙法改正案 (4県2合区を含む10増10減案 ) 等 平成28年7月~ 現職〔文教科学を担当〕 挙における管理執行体制をどういった仕 するのは、ときに非常に大変な仕事となり 組みにするのか、という問題への対応です。 ます。しかし、その仕事をやり遂げたとき 2つの都道府県の区域に及ぶ事務を担う の充実感は他の何物にもかえがたいもの 組織の体制やその事務の法的な位置付 です。 けについて検討したこと、その新組織(「合 そんな充実感を感じてみたいと思った 区」された選挙区に設ける参議院合同選 方、是非当局を受験してください。あなた 挙区選挙管理委員会)に関する条文の一 の期待を裏切らない仕事が待っているは 部の起案を行ったことは、学生時代に勉 ずです。 強した地方自治法に関わるものであった ち、入局を志望してくださることを期待します。 職員からのメッセージ 06