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ロボットを用いたプログラミング学習

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ロボットを用いたプログラミング学習
ロボットを用いたプログラミング学習
事業代表者:宇都宮大学教育学部 准教授 松原真理
1.事業の目的・意義
高度情報化が進んだ現代において,これからの社会を担
う人材の育成を目指し,学校現場でも子供たちの学びを支
援する教材としてロボットを活用した授業展開が行われて
いる.ロボットを用いたプログラミングは,小・中学生で
も比較的容易に作成することができ,自由に動かすことが
できる.本事業で行うプログラミング学習は,普段体験で
きない最新の技術に触れ『楽しく,遊びながら学ぶ』をテ
ーマに,達成感や感動を味わう中で,ものづくりや創意工
夫する楽しさを得ることができる.今回の企画,実施に関
しては本学の学生・大学院生に参加してもらった.このこ
とは,教員育成に有意義なことであり,子どもに教えると
は,教員になるとは等を学ぶ中で,学生の新たな知と価値
ある教育を生み出すことができる.
図2 打ち合わせ
2.事業内容
(1) 実施体制
この事業を実施するに当たり,学生の協力が必要不可欠
であった. 設備の都合から子供たちの数は10名と仮定し
たので6名の学生(大学院2名・4年生1名・3年生3名)
に協力をお願いした。12月の第一週の土日に開催したの
は 8 月は教員採用試験,10 月は教育実習のためこのような
期日になった。
以下のようなポスターを作り,市内の小学校の校長宛に
郵送した。
図3 準備
(2) 活動内容
土曜日は市内の小学校の登校日に当たってしまい参加希
望者が4名と少なかったが,日曜日の方は10組の親子が
参加した。以下のようなタイムスケジュールで実施した。
13:00
13:10
13:15
13:20
13:50
14:00
14:40
15:20
15:30
15:45
15:50
図1 ポスター
また本学技術科の HP にも掲載した。
開催前に学生と教材の選定からテキスト作り,コースなど
の作成等数度に渡り打ち合わせを行った。なお教材は,プ
ログラミングの操作が小学生でも簡単であり比較的安価な
ものを選定した。打ち合わせや準備の写真を載せておく。
~
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13:10
13:15
13:20
13:50
14:00
14:40
15:20
15:30
15:45
15:50
16:00
開講式
アンケート
ロボットの紹介
基本動作の説明
休憩
センサ・LED の説明
最終課題 ~カード集めゲーム~
休けい
ロボットコンテスト
アンケート
閉講式
授業風景やテキスト・掲示資料を以下に示す。なおロボッ
トコンテストのルールを示す。
8
○カード集めゲームのルール
・コートの中の黒いカードをより多く集めるゲーム
・コートの中で 1 対 1 の対戦形式で 30 秒間行う
・ロボットはスタートラインの中に入っていれば向きは自
由
・ロボットが黒いカードを見つけたら,停止させ,LED を
光らせる。
・ゲームが始まったら,ロボットは相手のコートに入って
もかまわない
・各コートには障害物を設置する
図7 掲示資料
図4 協力してくれた学生
図8 ロボットコンテスト
図5 授業風景
図9 表彰式
3.事業の成果
(1)子どもたちへのアンケート
実践前の事前アンケートと実践後の事後アンケートの結
果を表にする。これにより,たった数時間の本授業でも小
学生がプログラムがどのようなものか理解することができ
たと考える。
また全ての項目において事前よりも事後の方が高い数値
または同様の数値になった。
以上の結果から今回の実践を通して,受講生が自らプロ
図6 配布資料
9
ら,小学校でロボット教育を行うことは有効であると考え
る。
グラムを考えられるようになりたいと感じるようになって
いる。これは問題解決能力を養う為にこの実践が有効であ
ることを確認することができたといえる。
(2)保護者の感想
また保護者に対しアンケートを行った。講習会の内容につ
いてのみ示す。
問1. 子供が受講した結果の満足度
全員が‘とても満足’と回答
問2. 具体的に満足だという点は
まったくの初めてプログラムをする子どもに、
「ム
リ」とか思わせない教え方が上手だなあって思い
ました。
興味を持ち、自らが熱心にやっていた。
プログラミングの基本が理解出来たと思う(他)
問3. 感想
自分で PC を使って自分でロボットを自由に動か
せて顔が自慢気で忘れられません。
子供は吸収が早い!こんなに食いつくとは思わな
かったので、とても良かったです。プログラムの
内容も良くできておりました。
小学生(4 年生)でも十分について行けました。とて
も打ち込んでいる姿を見られて良かったです。
(他)
表1 事前・事後アンケート結果
質問項目
1.ロボットに興味がある
2.ロボットのメカ的(仕組み
など)なところが知りたい
事前
事後
t値
4.5
4.8
0.8
4.5
4.8
1.4
4.5
4.8
1.4
2.1
4.6
5.8**
4.6
4.9
1.4
4.6
4.8
1.5
4.2
4.8
2.3*
4.8
4.8
0.0
3.ロボットの情報的(プログ
ラムなど)なところが知り
たい
4.プログラムがどのようなも
のか知っている
5.プログラムを作ってみた
い
6.プログラムのいろいろなこ
とが知りたい
7.自分の力でプログラムが
考えられるようになりた
い
8.これから行う授業が楽しみ
だ
以上のように大変好評であった。学校に来てもらうにはど
うすれば良いかなどの問い合わせもあった。
TA を行った学生も子どもたちと触れ合い勉強になった
と言っていた。この実践は,将来教員を目指す学生にとって
良い機会だと言える。
また講義の最後に,授業の面白かった・楽しかったとこ
ろ,難しかったところ,感想を記入させた。面白かった・
楽しかった部分について見てみると,自分でプログラムを
作成しロボットを動かすことに充実感を持っている受講生
が多く見られた。また,ゲームが楽しかったという記入も
多く見られたことから,対戦形式の最終課題は適当であっ
たと考える。
難しかった部分については,最終課題用のプログラムの
作成が難しかったという記入が多かった。タッチセンサや
ラインセンサなどそれぞれを使用したプログラムはうまく
いくが,それらを組み合わせるプログラムに苦戦している
様子が実践中も見ることができた。改善点としては,今回
は説明と同時進行で作業を行ってしまったため,自分で考
えてプログラムを作成することが無かった。実際の授業で
は自ら考えさせる機会を与えると同時にフローチャートの
学習も行い,道筋を立てながらプログラムの作成すること
が望ましいと考える。
最後に感想については,プログラムの作り方やロボット
の動かし方が分かったという記入が多かった。身の回りの
ロボットがプログラムによって制御されていることを理解
し,そのプログラムがどのように作成されているのか学ん
でいるように見えた。また,楽しみながら作業を行ってお
り,学校でできない体験ができたという記入もあることか
4.今後の展望
今回、子どもたちに対しロボットを使ってプログラミン
グを教えるという機会を得た。たった三時間の講習でフロ
ーチャートの基礎を習得し,対戦型ゲームができるまでの
プログラミング能力を取得させることができた。
最近改訂された小学校の新学習指導要領では情報教育の
重要度が増してきている。問題解決能力を養うために、小
学生が興味を持っているロボットを用いることは有効であ
ると考える。よって今後は子どもたちだけでなく小学校の
教員や教員志望の学生対象にした講習を行うことが必要か
と思われる。子どもたちと直に触れ合う学校教員の資質が
向上することにより,子どもたちの学びが豊かになるから
である。これは大きな地域貢献だと言える。
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