Comments
Description
Transcript
平成20年度 幼児教育研究部
平成20年度 幼児教育実践事例集 幼児教育研究部 登米市教育研究所 幼児教育研究部 【研究主題】 「あしたもあそぼう幼稚園」 -集会活動を通して- も く じ 1 主題設定の理由 ……………………………………………………………… 2 研究主題のとらえ方 1 ………………………………………………………… 1 3 研究の目標 …………………………………………………………………… 2 4 研究の視点 …………………………………………………………………… 2 5 研究の方法と内容 …………………………………………………………… 2 ……………………………………………………………………… 2 実践例① …………………………………………………………………… 3 実践例② …………………………………………………………………… 5 実践例③ …………………………………………………………………… 7 実践例④ …………………………………………………………………… 9 実践例⑤ …………………………………………………………………… 11 6 実践例 7 研究のまとめ 8 今後の課題 ………………………………………………………………… 13 …………………………………………………………………… 13 【研究員】 所 属 佐 沼 幼稚園 中 田 幼稚園 米山西幼稚園 石 越 幼稚園 東 郷 幼稚園 職 名 教 教 教 教 教 諭 諭 諭 諭 諭 氏 佐 千 星 千 佐 名 藤 文 紀 葉 麻衣子 良 葉 尚 子 藤 美 子 【指導・助言】 学校教育課 主任指導主事 金 野 勉 研究主題 「あしたもあそぼう幼稚園」 -集会活動を通して- 1 主題設定の理由 近年,少子化が進み,幼児をとりまく環境や暮らし方は変化してきている。戸外遊び や友達との遊びが減少してきており,体力や気力の低下をもたらす要因の一つと考えら れる。さらに,生活経験や直接体験の機会が少なく,心の育ちなどにさまざまな影響を もたらしている。また,友達とのかかわりをもつことができずに,一人で遊んでいる幼 児の姿もみられる。 そこで,教師や友達と一緒に『集会活動』を十分に楽しんだならば,友達とのかかわ りが強くなり,満足感や達成感を味わい,幼稚園の遊びが楽しいと感じるようになるの ではないかと考える。そのことは,友達への関心を更に高め,「もっと友達と幼稚園で 遊びたい。」「あしたも幼稚園に行きたい。」という意欲につながり,幼児が期待感をも って登園するようになるのではないかと考えた。 今年度幼児教育研究部では,今日的な課題の中にいる幼児が,幼稚園で経験する遊び の中で,教師や友達とかかわり,楽しさを十分に味わいながら「あしたもあそぼう」と 思えるような各園での取り組み「集会活動」を共通理解,分析し,その実践の中から, 幼児の「あしたもあそびたい」と思えるような環境構成の工夫や教師の援助の在り方を 探っていきたいと考えた。 2 研究主題のとらえ方 (1)「あしたもあそびたい」と思えるような幼稚園とは ・幼児の意欲をかき立て,興味や関心が満たされる環境がある。 ・友達とかかわり,一緒に遊んだり,一体感を感じたりすることができる。 (2)「集会活動」で培われるものとは ・同年齢の友達や異年齢の友達と共通の経験をすることにより,思いを共有したり,相 手の思いに気付いたりたりすることができる。 ・共有する遊具や用具の使い方,始末の仕方を確認することができる。 ・遊びのルールや遊び方を伝え合ったり,確認し合ったりすることができる。 (3)「集会活動」についての幼児教育研究部でのとらえ ・各園の園内研究を基盤としながら,研究部においての「集会活動」はクラスとしての 活動,歳児としての活動,また,園全体で行う活動というように,グループ活動とと らえるべきものから,大きな集団で行う活動まで,広くとらえることで,研究員の共 通理解を図っている。 -1- 3 研究の目標 幼児が「あしたもあそぼう」という思いを育んでいくための環境構成や援助の在り方 を,各園の集会活動の実践を通して明らかにしていく。 4 研究の視点 集会活動を通して,次のような環境構成や援助の在り方を工夫すれば, 「あしたもあ そぼう」とする思いを育むための手がかりが得られるであろう。 (1)同年齢の友達や異年齢の友達と思いを共有したり,相手の思いに気付かせる。 (2) 遊びや活動の中で,遊具の使い方を知ったり,遊びのルールを確認し合ったりして, 集団生活の楽しさを味わわせる。 5 研究の方法と内容 (1) 研究主題の共通理解を図る。 (2) 研究の視点に沿いながら,次の内容の実践を行う。 ① 同年齢や異年齢の友達との触れ合い活動 ② 集団でのルールのある遊び ③ 音楽やリズムに合わせた身体表現活動 ④ 友達と一緒にする製作活動 (3) 実践をもとに反省・考察を行い,視点の検証を行う。 6 実践例 [実践例集]として3ページ以降に記載 -2- 実 践 例 集 (実践例1∼5) 実践例1 登米市立佐沼幼稚園 《幼児教育研究部の視点(1)・内容①③から》 1 研究内容 (1) 環境構成 ・共通のイメージをもって遊びを進めていけるような場や物の提示をする。 (2) 教師の援助 ・お互いのことを認め合い,思いを共有していくことができるような援助をする。 2 活動名 3 ねらい 集会「触れ合って遊ぼう」 ・5歳児と触れ合いながら親しみをもつ。(4 歳児) ・4歳児とのかかわりを楽しみ,お世話をしようという気持ちをもつ。(5歳児) 4 実践 〔平成 20 年5月 30 日(金) 4歳児 27 名,5 歳児 37 名 ●幼児の活動 ●5歳児が 迎え行き, 4歳 児と 一 緒に ホ ー ルに行く。 ○環境構成 遊戯室にて〕 ◇教師の援助 ○楽しい雰囲気で参加できるよう,集まりの曲を流しておくよう にする。 ◇迎えの時にスムーズに一緒に行くことができるよう,事前に話 をして安心感をもたせるようにする。 ステージ 音響 機材 ピアノ ★5歳児と4歳児がペアになって 円形に並ぶ。 (T1) ★T6は音楽担当 (T2) (T6) (T4) (子) (子) (T3) ★ふれ合い遊びでは,中央に 出て手本を見せる。 少 長 (T5) ちゅうりっぷ組から 5歳児と手をつないで入場 ●「シャン プーマン体 操・ はや ね はや お き あさ ごは ん 体操 」 を する。 ★ 教師(T)は固定ではなく,全体の 様子を見ながら臨機応変に動く。 ○円形に並ぶことで友達や教師が見えるようし,安心して参加し たり,楽しさを共有したりできるようにする。 ◇不安そうな幼児にはそばにいてやったり,時々言葉を掛けたり して安心できるようにする。 ○その場に座って落ち着いた雰囲気の中で5歳児と4歳児が触 れ合って遊べるようにする。 -3- ●手遊び「 パンパンパ ン屋さん」をする。 ● 親子旅行に関した 話を聞く。 ●触れ合い 遊び「バス にのって」をする。 ○ペープサートを見ながら,具体的にいろいろなパンのイメージ がもてるようにする。 ◇親子旅行で体験するパン作りに関した手遊びをすることでパ ン作りへの期待が高まるようにする。 ○5歳児は足を伸ばして座り,ひざの上に4歳児を乗せ,一緒に ハンドルを持ってバスに見立てる。 ◇幼児同士がかかわっている姿を認めたり,教師も一緒に遊んだ りしながら,楽しい雰囲気で触れ合いがもてるようにする。 ◇作ったハンドルや運転の仕方を認めながら,5歳児への尊敬の 気持ちをもって一緒に遊べる喜びを感じ取らせるようにする。 ●終わりの あいさつを する。 5 ◇楽しかった思いを引き出すと共に,次回への期待がもてるよう な話をする。 実践の反省と考察 (1) 環境構成 ・パン屋さんの手遊びの時にペープサートを見たり,ハンドルを持ってバスごっこを したりするなど,視覚的・感覚的な教材を活用したことで,4歳児・5歳児共に, より具体的なイメージをもって楽しむことができた。 (2) 教師の援助 ・触れ合い遊びでは,5歳児がリードをして楽しめるようにしたことで,4歳児はよ り5歳児の頼もしさを感じることができた。 6 幼児教育研究部の研究主題についての考察 ・多くの友達と触れ合うことで,かかわり合って遊ぶ楽しさを味わい,幼稚園が楽しい と思う気持ちをもつことができた。明日の遊び(活動)への期待にもつながった。 ・今後予定されている行事について具体的な内容を知らせ,関係する歌や遊びを取り入 れたことで,より一層その行事に対する期待をもつことができた。 -4- 実践例2 登米市立東郷幼稚園 《幼児教育研究部の視点(2)・内容②から》 1 研究内容 (1) 環境構成 ・遊びを工夫したり発展させたりできるような場や物を提示していく。 (2) 教師の援助 ・幼児が考えたことや工夫したことが遊びに生かしていけるような援助をする。 2 活 動 名 「フルーツバスケット」をしよう 3 ね ら い ・ルールを守りながら,意欲的にゲームを楽しむ。 ・友達と一緒に考えを出し合いながら,楽しく遊ぶ。 4 実践内容〔平成 20 年 5 月 30 日(金) 時間 ○幼児の活動 5 歳児 12 名 保育室にて〕 ☆教師の援助 ・予想される幼児の姿 ◎個々への援助 ◇環境構成 10:00 ○曲を聞きな ・円形にいすを並べ,帽 ☆考えたり相談したり,意見を ◇危険のないよ がら,いすの 子をかぶって,ゲームの 言い合ったりしながら準備を うに室内を広く 準 備 を 始 め 準備をする。 する様子を見守る。状況に応じ しておく。 る。 て手伝ったり助言したりする。 ・いすの間隔を見たり, ◎いすを動かしながら,建設的 いすを並べ替えたりしな な意見を出す幼児がいたら,全 がら準備をする。いすを 体に知らせ,遊びに反映してい 近づけ過ぎる幼児に間隔 くようにする。 を知らせたりする幼児も ☆果物のカードの絵を確認し いる。 て,遊びへの期待を高める。 10:05 ○「フルーツ ・円の中央に立ち遊びを ☆中央に立って果物を示す側 バスケット」 リードする幼児が出る。 をする。 (□)と示された言葉に従って ・ (□)になることを嫌が 席を移動していく側(△)双方 って乱暴になってしまう が遊びを発展させていく大切 幼児,また,何度も(□) な役割があることを知らせる。 になろうとして,空いて ◎教師も遊びに参加しながら, いる席に行こうとしない 個別に言葉をかけたり,席を知 幼児が出てくる。また, らせたりする。また,思いを受 瞬時に判断して動き出す け止めながら励ましていく。 ことが苦手な幼児や,空 ☆今までの遊びの経験からヒ いている席を見つけられ ントを得て,遊び方を考えてみ ないでしまう幼児が出て んなに知らせようとする様子 くる。 を認め,褒めながら遊びに取り 入れていく。 ○新しいルー ・いす取りゲーム等で経 ◎席が見つけられなかったり, ◇遊びが発展す ル を 確 認 す 験したことからヒントを カードを取り忘れたりしてし るような新しい る。 得て,遊び方を考える幼 まう幼児には,再度ルールを確 遊び方を提案し 児が出てくる。 認したり,一緒に探したりして ていく。 ・話し合って決めた新し 遊びの楽しさを味わわせてい ◇首からさげた いルールが理解できない くようにする。 -5- カードの絵と同 で,カードを取り忘れた ☆危険のないように見守りな じようなカード り,席が見つけられない がら遊びを楽しませていくよ を 準 備 し て お で し ま う 幼 児 も 出 て く うにする。 き,どのように る。 して遊びにいか ・カードを探したり,席 していけるかを に早く座ろうとして乱暴 考え合うように な動きになってしまう幼 する。 児も出てくる。 ◇(□)が示し た果物と同じカ ードを一致させ てから空いてい る席に座るとい う新しいルール を確認して遊び を楽しませてい く。 10:20 ○ゲームにつ ☆ゲームの楽しさをみんなで ◇(□) (△)共 いて話し合 共有し合ったことを褒めなが に遊びの中で大 う。 ら,次回の遊びに期待をもたせ きな役割を果た ○ミニ賞状を ていく。 もらう。 ☆友達同士で遊びを十分に楽 実感できるよう ○後片付けを しめたことを褒めながら,ミニ な工夫をする。 10:40 する。 5 していることが 賞状を手渡していく。 実践の反省と考察 ・幼児が慣れ親しんできたゲームの中で,友達同士で考えながら遊びを進めていけるような場 や物を提示したり,不足の場を設けて考え合うようにして取り組ませたことで,遊びに変化 が生まれ発展した。 ・勝敗がかかわってくるゲームではあるが,その遊び方,方向性を明確にして遊びを取り上げ ていくことで,幼児同士が思いを共有したり,互いの役割を理解していくことにつながって いくと感じた。 ・ゲームの内容,遊び方を工夫することで,幼児の興味が持続し発展していく。この取り組み の中で,幼児が考えたり,意見を出し合ったりする機会が増え,よりよい友達とのかかわり 合いを学んでいく機会になると考える。 6 幼児教育研究部の研究主題についての考察 ・遊びを継続して楽しんだ。継続したことは幼児の興味・関心が持続し「あした」に期待して, 楽しく遊ぶことになったと考える。 ・競争心を味わいながらも,友達との一体感を味わえる集会活動は,友達とかかわり一緒に遊 ぶことの楽しさを満喫できる遊びだったと思う。 ・遊びの中で満足感や達成感,挑戦心や競争心をかき立てていく環境構成をしたり,遊びに変 化をつけながら成就感を味わわせていったことで集会活動の楽しさを満喫した。こうした積 み重ねにより幼児の気持ちにさらなる期待感が生まれ「あしたもあそびたい」という気持ち につながっていったと考える。 -6- 実践例3 登米市立米山西幼稚園 《幼児研究部研究の視点(1)・内容①②から》 1 研究内容 (1)環境構成 ・教師や友達と一緒に活動することの楽しさや,発見したり感動したりしたことを共感し 合えるような活動を取り入れる。 (2)教師の援助 ・遊びの中で友達と一緒に活動する喜びや,満足感を味わえるような援助。 2 活動名 「なかよしタイム」鬼遊び「引越し鬼」 3 ねらい ・教師や友達と一緒に体を動かして遊ぶことを楽しむ。(4歳児) ・友達とルールのある遊びを楽しむ。(5歳児) 4 実践 〔平成 20 年 6 月 17 日(火) 4,5歳児 合計 90 名 園庭にて〕 〔活動にあたって〕 天気の良い日が続き,幼児たちは戸外で遊んでいる。遊んではいるが,少人数のグループ であった。そこで,みんなと一緒に遊ぶ楽しさと自ら遊びに取り組む意欲を高めるような遊 びを取り入れたならば,共に遊ぶ楽しさを感じ,満足感を味わうことになり,友達ともっと かかわりながら遊ぶようになるのではないかと考えた。友達と十分にかかわれる「なかよし タイム」の中で,戸外で体を動かしながら,みんなで一緒に遊ぶ楽しさを味わうことができ る「引越し鬼」の遊びを取り入れた。 時 刻 9:45 ○幼児の活動 ◇環境構成 ◆教師の援助 ■準備物 ◆園庭に○(白色),△(緑色),□(黄色)を引いておく。色分けをし,幼児 にわかりやすくする。 ■ラインカー 10:00 ○「なかよしタイム」鬼遊び「引越し鬼」に参加する。 ◆5 歳児の係の幼児のカラー帽子を裏返させ,鬼の役がわかるようにする。 ◆始めに 5 歳児が「引越し鬼」をして,4 歳児の見本となるようにする。 ○大きな声で決まりの言葉を話している。 ○鬼役は捕まえようと,他の幼児は捕まらないように力いっぱい走っている。 ◇最後まで残った幼児をみんなの前で紹介して意欲を高める。 ◆全体を半分にし,5 歳児と 4 歳児を組み合わせ遊ばせる。 (鬼の係は 5 歳児。) ◇教師も参加して,安心して遊べるようにする。 ○5 歳児と一緒に 4 歳児も懸命に走っている。 ◆4~5 回繰り返し,捕まらなかった幼児を紹介し,達成感を味わわせる。 10:30 ○終りのあいさつをする。 ◇また遊ぶことを幼児に伝え,期待感をもたせながら遊びを終える。 -7- 5 実践の反省と考察 (1)環境構成・・・移動する場を色分けしておいたことで,すぐにルールを理解し,友 達に教えたり誘ったりして,伝え合い,遊びを楽しむことができた と考える。また,5歳児を見本としたことで 4 歳児は容易に内容を 理解でき,混合チームで一緒に遊んだことを通して,安心してかか わり合いながら遊べるということがわかった。 (2)教師の援助・・・最後まで残った幼児をみんなの前で紹介したことは,喜びを感じ, 幼児が満足感を味わうことになることがわかった。他の幼児たちも 友達がみんなの前で認められる姿をみて, 「自分も」とさらに意欲を もって,遊びに参加することにつながった。 ○次回の取り組みへの課題 ・4 歳児もすぐに楽しめるような遊びだったので,慣れてきたらルールを難しくしてい くと,幼児がさらに挑戦心や競争心をもち,集中して遊べるようになるのではないか と考える。 6 幼児教育研究部の研究主題についての考察 ・友達と触れ合う場を設け,幼児が体を動かして友達と一緒に遊び,満足感や充実感を味 わえば,友達と遊ぶことに期待感を感じ, 「あしたもあそびたい」という思いをもつよう になり,幼児たちが元気に登園する意欲を育むようになるのではないかと考える。 〈『引越し鬼』の活動から〉 どこにする? つかまえた!! う~ん! わー!緑(三角)に 三角にしよう!! にげろ!! -8- 実践例4 登米市立中田幼稚園 《幼児教育研究部の視点(2)内容④から》 1 研究内容 (1) 環境構成 ・幼児がすぐに製作をしたり,作り直したりできるような環境を整えておく。 (2) 教師の援助 ・一人一人の工夫したところを認め,物とかかわる楽しさが味わえるようにする。 2 活動名 舟を作って遊ぼう 3 ねらい 物とかかわって遊ぶ楽しさを味わう。 4 実践内容 日時 〔平成 20 年 7 月 8 日~10 日 環境構成 4 歳児 21 名 プール,保育室にて〕 幼児の姿 教師の援助 廃材で自分の舟を作る(物とかかわる) 7/8 ・牛乳パック,紙皿、 ・教師の舟に興味をもち,す ・材料一つ一つの元が何な 紙コップ,セロハン ぐに作ってみたいと言っ のかを見せながら,教師 テープを用意した。 ていた。 の舟を動かして見せた。 幼児と一緒に舟を作り、 ・舟を置く場所を確保 ・教師の見本を見ながら、同 しておいた。 できないところは援助し じように作っていた。 た。 ・教師の舟が浮かぶ様子を見 な が ら 「 頑 張 れ ー 。」 と 応 ・廃材を組み合わせて完成 した作品が、舟として動 援していた。 ・教師の舟を見て,明日の自 く様子を見せるため,教 分の舟を浮かべる活動を 師がプールで舟を浮かば 楽しみにしていた。 せ,その様子を見学させ た。 作った舟で遊ぶ楽しさを味わう 7/10 ・舟を置く場所や,紙 ・沈んだり,浮かんだりする ・一人一人の様子を見守り 皿を入れるカゴ,セ 舟をそれぞれ体験したり ながら, 「 進んでいるね。」 ロハンテープを用 見たりした。 「水が入って沈んだね。」 と言葉を掛けた。 意しておいた。 ・紙皿を使って扇ぎ舟を一生 ・上手な幼児に,皆の前で 懸命動かしていた。そっと 動かしてもらい,舟をそ 動かしたり水につけて波 っと水に浮かばせている で動かす幼児もいた。 ところや,水を掛けない ・友達の舟の様子が見 ・友達の舟の扱い方や,扇ぎ られるように,浮か 方の真似してやってみた。 ように扇いでいるところ などを紹介した。 べ る ス ペ ー ス を 作 ・舟の紙皿や扇ぐ紙皿が水に ・壊れたところはまた作り 濡れて,曲がったことに気 直し,曲がった紙皿は捨 が付いた。 てずに取っておくことを った。 ・濡れた舟はロッカーの上に -9- 伝えた。 ・作った舟を置いてお 置いておいた。 く ス ペ ー ス を 設 け ・牛乳パックやトレイなどの た。 素材の名前が出た。また, ・壊れた舟をどう直せば良 いかを話し合った。 うちわのような形にすれ ばよいという意見も出た。 ・次回また新しい素材を用 ・舟を作り直すことを楽しみ にしていた。 意して作り直すことを伝 え,期待がもてるように した。 新しい素材を使って舟を作り直し、動かす(成功体験を与え、楽しさを味わう) ・切り開いた牛乳パッ ・自分で素材を選び,うちわ ・ 「牛乳パックとトレイはど クやトレイ,プラス にしたり、舟の帆の部分に ちらが水に強いかな。」言 チックのカップや、 使ったりした。 葉を掛け,好きな方を選 乾かした紙皿を用 意し,作り直せるよ うにしていた。 べるようにした。 ・「 舟 が 壊 れ た り , 沈 ん だ り ・持っていきたくないと言 するから舟では遊びたく う幼児の話を聞き,壊れ ない。」という幼児がいた。 てもまた作り直せること ・「今 度 は 浮 い た よ 。」「 す ぐ を伝えた。 沈 む よ 。」 と い ろ い ろ な 反 ・「○○君の舟は浮かぶね。」 応があった。 ・帆をトレイに交換する,紙 皿の枚数を減らすなど、自 などと一人一人の反応や 舟の様子を受け止め,教 師も共感した。 分で工夫していた。 5 実践の反省と考察 ・舟は作るだけでなく浮いたり沈んだり壊れたりなど,変化がある教材だったため、物と かかわりをもつ楽しさが味わえた。 ・紙皿は水に弱い,牛乳パックやトレイは水に強いなど,素材の特性に気付くことができ た。 ・一度舟が沈んでしまった経験から,舟を作らないという幼児もいた。失敗したくないと いう気持ちがうかがわれた。壊れても作り直し,繰り返し物とかかわる経験を積ませ, 失敗経験を乗り越えていく経験を経て,物とかかわる楽しさを味わえるような援助が必 要だと感じた。 6 幼児教育研究部の研究主題についての考察 ・幼児が試してみたい,遊んでみたいと思えるような教材を用意しておくことや,自分で 工夫したり繰り返し遊べるような教材であることが大切であると感じた。また,いつで も廃材などの素材を手に取って試せるような環境構成の工夫が大切だと感じた。 ・成功したときに教師も一緒に共感し,また,失敗して もなぜそうなったのか話し合い,次は頑張ろうという 気持ちがもてるように援助することが必要だと感じた。 -10- 実践例5 登米市立石越幼稚園 《幼児研究部研究の視点(1)・内容①③から》 1 研究内容 (1) 環境構成 ・共通のイメージをもって活動を進めていけるような場や物の提示をする。 (2) 教師の援助 ・幼児同士が気づき,認め合い,協力し合えるような援助をする。 2 活動名 「たのしいね」を歌おう 3 ねらい 友達とリズムや動作を合わせて歌を歌う楽しさを味わう 4 実践内容 日時 〔平成 20 年 7 月 10 日~18 日 環境構成 7/10 3,4,5 歳児 97 名 遊戯室にて〕 教師の援助 幼児の姿 <場の確保・共通のイメージをもたせる> る> ♪♪♩ のリズムを合わせて打つことができる 「ほらね」で友達と手を合わせるタイミングをつかむ 10:00 ・園児全員から見 ・笑顔で楽しく歌い,歌の楽しさを伝 ・教師の歌う歌に興味をもち ~ えるように教 えるとともに,きれいな歌声を意識 10:30 師が前に出て して歌うようにする。 真剣に聴いている。 歌を歌う。 ・タンバリンでリ ・歌を歌いながら,手拍子「タタタン」 ・ほとんどの幼児が「タタタ ズムがはっき りと分かるよ のリズム打ちをゆっくりと伝えた。 ・「みんな上手だね。」と賞賛する。 うに打つ。 ・「あわせてみよ う(ほらね) 」 ン」のリズム打ちが上手に でき,友達と合わせて手拍 子をしている。 ・「ほらね」の「ね」の部分で友達と ・近くの友達と教師の真似を 手を合わせることを伝えた。 して両手を合わせている。 で タ イ ミ ン グ ・友達と手の合わせ方について3つの ・ 「きれいな音だから」 「いい や手の合わせ 例を取り上げ,何番がなぜ良いかを 音だから」「優しいから」 方が合わない 幼児に問いかける。 「合わせるといい」等と答 やりかたで示 えている。 しながら気づ かせていく。 ・3 番目の「へい」の動作を次回まで ・ジャンプしたり,右手を挙 考えるようにさせ,次回の音楽集会 げたりして幼児なりにポ へ期待をもたせるようにする。 ーズをとっている。 ・「みんなの歌がとても上手だった。 ・ 「みんなで歌ったから」 「優 どうしてなのか」と問いかける。 しい声で歌ったから」等と 答えている。 - 11 - その後も集会で「たのしいね」の歌をとりあげた。 2回目は,遊戯室で友達と向きあって並び,リズム打ちと友達と手を合わせる部分を再確認し, 行った。また最後の「へい」の動作について考えてきたことを発表してもらい,決めた。 最後に「ほらね」の動作で手を合わせる人数を,増やしていくと更に楽しいことを伝えた。 3回目は,最初に幼児の前でメロディーを歌う教師と「ラララン」を歌う教師に分かれて並び 歌った。幼児にメロディーと「ラララン」の好きなほうを選ばせ,友達の声を聴きながら追いか けて歌う楽しさを味わわせた。また「ほらね」で手を合わせる人数を増やし,できるようになっ た成果を年長児が発表した。 5 実践の反省と考察 (1) 環境構成 ・全体での集会の場ですることは,複数の教師で指導でき,手を合わせる動作や追いかけて 歌う楽しさなどの共通のイメージをもたせるのに有効であった。また3,4歳児が 5 歳児 の歌を聴くことによって歌い方のイメージを共有できた。 ・手だけでなくタンバリンを使ってリズムをはっきり知らせたことで,すぐにリズムをつか み友達と合わせることができ,歌う楽しさやリズムが合う気持ち良さを味わわせることが できた。 (2) 教師の援助 ・教師が失敗例を見せることで,どのような手の合わせ方にしたらよいのかなどに気づき, 友達と協力し合う姿が見られた。 ・5 歳児の上手な姿を認め,発表の場を設けたことは幼児に満足感や憧れをもたせ,さらに 意欲をもたせるのに有効であった。 6 幼児教育研究部の研究主題についての考察 ・全体集会で継続して「たのしいね」の歌を歌った。リズムや動作などを合わせて歌を歌い 一体感を感じたり,達成感を味わうことができたりしたことは, 「あしたもあそびたい」と いう気持ちにつながったと思われる。 ・発表の場を設けたり,次回まで動作を考えてくるようにしたことで,明日への期待をもつ ことができ,喜んで登園することにつながったと思われる。 -12- 7 研究のまとめ (1)各園で行われている集会活動をクラスとしての活動から,歳児が合同で行う活動, また,園全体で取り上げていく活動というふうに大きくとらえ,実践をしたことに より,各園の園内研究を生かしながら,共同研究ができた。 (2)幼児が「あしたもあそびたい」という気持ちになるためには,次の手立てが有効で あることが確かめられた。 ①幼児がクラスや同年齢の友達,異年齢の友達と共通の体験を通し,楽しさや満足感 を味わわせるようにすること。 ②遊びの中で幼児が考えたり,試したり,工夫したりして遊びを発展させていけるよ うな環境を構成していくことや遊びに見通しをもたせること。 ③次回の遊びを具体的に知らせ,期待感や挑戦する気持ち,探究心をもって遊びが継 続されていくようにすること。 8 今後の課題 (1)幼児が「幼稚園で遊ぶことは楽しい」という満足感を味わうためには,友達と一体 感を感じながら遊びを楽しむことが大切と考える。そのためにも,集団の中で友達 と共通の思いで遊ぶようにしていくための環境構成や,幼児の自主性を大事にした 言葉掛けなど,さらなる工夫が必要である。 (2)幼児が「あしたもあそびたい」と意欲をもって取り組むためには,幼児自身が遊びに 見通しをもつことと共に,困難や不足の経験を乗り越え,充実感を味わうような体 験が重要と考える。そのためにも,より具体的に遊びや活動のイメージがもてるよ うな教材を研究していくことが必要である。また,幼児が意欲をもって取り組める ような活動 を繰り返して取り入れていきたい。 - 13 -