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`Fゴ の養老保険制度改革の展開
中国 の養老保 険制 度改 革 の展 開(武)97 中国 の養老 保 険 制 度改 革 の展 開 武 膨 東 【 は じめ に II基 本養 老保 険制 度 の形成 m現 行 の養 老保 険制度 の内容 IV多 元 的 な養老保 険制 度 の確 立へ Vむ すび 1は じめ に 60歳 以 上 の 人 口が 総 人 口の10%に の7%を 達 し、 ま た は65歳 以 上 の 人 口が 総 人 口 占め る よ う に なれ ば 、 高 齢 化 社 会 が 到 来 す る と言 わ れ る 。 中 国 の 人 口調 査 資 料 と世 界 … 銀行 の研 究 結 果 に よ る と 、 中 国 は 、2000年 人 口は 総 人 口 の7.4%、60歳 i数は1.3億 に65歳 以 上 の 人 口 は総 人 口の10.7%を 占め 、そ の総 人 に達 す る 見 込 で あ る。 ま た 中 国 の 高 齢 化 は ほ ぼ30年 す る と い う研 究 結 果 か らみ る と、 中 国 の 高 齢 者 は 、2025年 以上の 毎 に倍 増 に世 界 の 高 齢 者 (1) の4分 の1前 後 を 占め 、2.8億 人 に達 す ると推 定 され て い る。 推定 には誤 差が あ る に して も、 いずれ 現在 の国家財 政 と養 老保 険制 度(年 金 制度 に相 当す るもの)で は充 分 にまか なう ことが で きず 、 よ り一層 の制度 改革 を行 わ なけれ ば な らないで あ ろう。 高齢 化 の到来 の ほか、現代 企業制 度 を 目指 す 国有企 業 の制 度 改革 は、 もう 0つ の側面 か ら養老保 険制度 の更 な る改 革 を求め て い る。 また人事制 度等 を 98 含 む 政府 機構 の再編 や制 度改 革 も、行 政機 構 ・事 業部 門の養 老保 険 制 度 改革 の早急 な完結 を必要 と してい る。 2000年1月 現在 、 中国 の労働 社会保 障部 の刊 行物 は 、現行 の養老保 険制 度 を ① 企業職 員 労働 者 の基 本養老 保 険 、② 行 政機 構 と事 業部 門 の養 老保 険 、 ③ 農 村社 会 の養 老 保 険 、④ 企業 補 助養 老保 険か ら構 成 され て い る、 と説 明 (2} してい る。 政府 は、現在 、主 に企業 従業 員基 本養老保 険 の完備 を 目指 し、企業 補助養 老保 険 を奨 励 しなが ら、同時 に人事制 度 改革 の一 環 と して国家公 務員制 度 を 実行 して きた行 政機構 お よび独 立 した養老保 険体 系が 形成 され て いな い事業 部 門 の養老 保険 制度 を改革 して、企業 の基 本養老 保険 と一 本化す る こと等 を 模索 してい る。 本稿 で は、企業 従業 員基 本養老保 険 の形成 にっ いて概観 し、現行 の養 老保 険制度 の 内容 を明 らか に し、政府 が 目指 して い る多元 的 な養老 保 険制度 の確 立 につ いて検 討 を試み た い。 II基 本 養老 保険制 度 の形成 現行 の基 本養 老 保 険制 度 の形 成 にっ いて は 、1991年 の多 元 的 な養 老 保 険 (3) 体 系 の提起 か ら取 り上 げ る ことが で き るで あろ う。 1.多 元 的 な養 老保 険体系 の提起 1991年6月26日 に 国務 院 は 「企業 職員 労働 者 の養 老保 険制度 改 革 に関 す る決 定」(国 発[1991]33号)を 通 達 し、多元 的 な養老 保 険体 系 を改 革 の 目 標 と して打 ち出 した 。多 元的 な養 老保 険 体 系 とは 、「国家 が 強制す る基 本養 老保 険」、「企業 が補助 す る養老保 険」、「職 員労働 者 の個 人 的 な貯 蓄性養 老保 険」 が互 い に結合 す る養老保 険体 系 であ る。 中国の養 老保険制 度改 革 の展開(武)99 国発[1991]33号 文 書 の主 な内容 は次 の通 りで あ る。 ① 省 とい う行 政単 位 で の統 一 運営 を奨 励 し、異 な る地 域 や 企業 の間 に生 じた一定 の差 異 を容認す る。 ② 多 元 的 な養 老保 険体 系 の構 築 を決 定 し、個 人 も一 定 の保 険料 を納 付 し なけれ ば な らない。 ③ 基 本養 老保 険基金 の資金 集め の原 則 は、「支 出状 況 に よ って徴 収額 を決 め、やや 余 り、若 干 の蓄積 を残 す」 ことと決 定す る。 ④ 企 業補 助 養老保 険 は 自由参加 で、 そ の費用 は企 業 の資金 の なかの奨励 、 福利 基金 か ら支 出す る。 ⑤ 個 人貯 蓄性養 老保 険 は、各 人が収 入 に応 じて 自由に参加す る。 ⑥ 労 働部 は都 市 企業 の養老 保 険 を管 理 し、 人事 部 、民政 部 はそれ ぞ れ 国 家機 構 ・事業 部 門の養老保 険 と農村 養老保 険 を管理 し、具 体 的 な方 法 は別 に 制 定す る。 33号 文 書 は都 市 部 にお け る企業 の多 元 的 な養老 保 険制 度 の 内容 を規 定 し たが 、「統 一 された 省 レベル の運 営 と個 人 口座 との併用 」(以 下 、統 一運 営 と 個 人 口座 と略す)方 式 の具体 的 な実施 方法 につ いて は と くに触れ て い なか っ たQ 2.「 統 一運 営 と個人 ロ座」 方式 の実施 方法 1993年11月 の共 産党 第14期3中 総 会 は、養 老保 険 の原則 を 「社 会 の統 一 調達 ・運 営 と個 人年 金 口座 との結 合」 と決 め、「公 平 と効 率 との結 合 」 お よ び 「社 会互 助 と自己保 障 との結合 」 の実 現 をはか る方針 を示 した。 これ を受 け て1995年3月1日 に国務 院 は 「企業 職 員労 働 者 の養老 保 険制 度 改 革 に関 す る通 知」(国 発[1995]6号)を 通 達 し、「統一 調達 ・運営 と個 人年金 口座 との結 合」 方式 を実行 す るため 、二 つ の具体 的 な実 施方 案 を打 ち 出 した。 二 つ の実 施 方案 は、① 基 本 養老 保 険 費 の徴 収 、②,基本養 老保 険 の個 人 口 100 座 の 設 立 、 ③ 基 本 養 老 金 の支 払 い か ら成 り立 って い る。 実 施 方 案1は 個 人 口座 で 構 成 され 、 次 の よ う に決 め られ た 。 ① 個 人 口座 は 賃 金 の16%前 老 保 険 料(例 え ば4%)は (例 え ば12%)も 後 と定 め られ た 。 そ の う ち個 人 が 納 付 した 養 す べ て個 人 口座 に 記 帳 す る。 企 業 が納 付 した 部 分 個 人 口座 に 記 帳 す るが 、 そ の 中 の5%前 働 者 の 月 平 均 賃 金 を基 数 と して 記 帳 し、7%前 後 は 当地 の職 員 労 後 は 本 人 の 賃 金 を、 基 数 と して 記帳 す る。 ② 退 職 後 、 個 人 口座 の 累 積 額 を120で し、 毎 月 支 払 う。 平 均35年 の56%前 割 り、 支 給 す る 基 本 養 老 金 を 算 出 の 納 付 で 計 算 す る と、 基 本 養 老 金 の 支 給 は 賃 金 後 に相 当 す る。 実 施 方 案1を 選 ん だ7つ の 省 、 市 は 、 上 海 、吉 林 、 河 南 、 雲 南 、 黒 龍 江 、 江 西 、 青 海 で あ った が 、 個 人 口座 の比 例 は表1の よ う に地 域 に よ って異 な っ て い る。 表1実 施 方 案1を 選 択 した7つ の省 、市 の個人 口座 の比例 口座 の構 成(%) 個 人 口座 比 例(%) 個 人(%) 企 業(%) 社 会(%) 上海 16 4 7 5 吉林 16 2 9 5 雲南 黒龍江 青海 江西 16 3 S 5 16 3 8 FJ 16 3 7 6 17 3 8 6 河南 17 3 7 7 出所:何 平 『国有企業改革中的社会保険』より作成 実施 方 案2は 、(a)個 人 口座 の養 老金(b)納 付養 老 金(c)社 会 養 老金 か ら 構成 され 、次 の よ うに決 め られた 。 ① 個 人 が納 付 した養 老 保 険料 の全 部 あ るい は一部 と企業 が納 付 した一 部 を個 人 口座 に記入す る。具 体的 な数字 は納付 能力 に したが い各地 で決定す る。 ② 退 職後 、個 人 口座 の養老 金 の支給 方法 は実施 方 案1と 同様 だ が 、納 付 中 国の養老保 険制 度改 革 の展 開(武)101 養老 金 は納付 賃金 と納 付年 限 によ って支給 し、社 会養 老金 は社 会 の平 均賃 金 の25%前 後 を支給 す る。最 終 的 に個 人 口座 と社 会 養老 金 の み に な る と見 込 まれ てい るQ ③ 平 均35年 間納 付す る と本人 の賃金 の60%前 後 に相 当す る。 実施方 案2を 選択 した5つ の省市 の基 本養老 金 の支給 比例 は表2の 通 りで ある。 表2実 施方案2を 選択 した5つ の省市の基本養老金の支給比例 個 人 口座 比例(%) 口座 の構成(%) 企 業(%) 個 人(%) 社会(%) 広東 2 2 ■ 天津 漸江 北京 湖南 不定 4 ● 層 4 4 一 5 5 ● 16 3 8 社 会養 老 金 (%) 納付養老金計 算係数(%) 30 1.0-1.4 25 1.1.4 一 25 1.0-1.4 欄 25 1.0-1.4 5 25 1.0-1.4 噂 出所:何 平 『国有企業改革中的社会保険』 よ り作成 こ の ほ か 、15の 省 、 市 は 、 実 施 方 案1と2に 基 づ き、 ① 個 人 口座 養 老 金 、 ② 社 会 養 老 金 か ら構 成 さ れ た 第3の 方 式 を 選 択 した 。 個 人 口座 の 比 例 は 、 本 人 が 納 付 した 賃 金 の10%-14%で 、 実 質 の 納 付 は2%-4%の 間 と され る。 なお 海 南 、 チ ベ ッ トは 従 来 の 方 法 を 援 用 し、 貴 州 は 各 市 が 自 ら実 施 方 案 (4) を選 択 した 。 3.企 業 と従 業 員の負担 率 お よび 基本 養老年 金支 給率 の統 一 二 つ の具 体 的 な実施 方案 が公表 され てか ら、す で に実施 に移 した 上海 、広 東 、海 南 を除 き、各地 域 で は、種 々の方案 が実施 された 。 しか し異 なる方 案 の実施 が 多 くの問題 を生 み 出 し、 と くに企業 の従業 員 の移 動や養 老保 険管 理 に多 くの困難 を もた ら した。 1997年7月16日 に国務 院 は 「統 一 した 企業職 員 労働 者 の基 本養 老保 険制 度 の構築 に関す る決 定」(国 発[1997]26号)を 公 布 し、企 業 と職 員労働 者 102 が納付 す る基本養 老保 険費 の比例 を規範 化 し、個人 年金 口座 の負担 率や基 本 養 老基 金 の支給 率の統 一 をはか ろ うと した。 1999年1月 259号)を に 国務 院 は さ らに 「社 会 保 険 費 徴 収 暫 定 条 例 」(国 務 院令 第 公 布 し、基 本養 老保 険料 の徴 収範 囲 は、「国有企 業 、 都市 集 団企 業 、外 商投 資企業 、都市 私営 企業及 びそ の職員 労働 者 、 また は企業 化管理 を 実行 した事 業部 門及 びそ の職 員労働 者」 と規 定 した。 また各省 、市 、 自治区 は実情 に基 づ き、個人経 営 を基本養 老保 険料 の徴収 範 囲 に納 め る ことが で き ると した。 基本 養老保 険料 を徴 収す る適用範 囲は、失業 保 険料 よ りや や狭 く、・ 基 本医 療 保 険料 の適用範 囲 には及 ば ないが、保 険料 の徴収 管理 や、監 督 、罰則 は失 業 保 険、基 本医療保 険 とほぼ 同様 で あ る。 この26号 文 書 と259号 文 書 の実施 に よ り、現行 の企 業 従業 員 の基 本 養 老 保 険制 度 の基本 的 な枠組 が形 成 され た ので あ る。 III現 行 の養 老 保 険 制 度 の 内 容 中 国の養 老保 険制 度 は、① 企 業職 員 労 働 者 の基 本養 老保 険 、② 行 政 機 構 と事 業部 門 の養 老保 険 、③ 農村 社 会 の養 老保 険、 ④ 企業 補 助養 老保 険か ら 成 り立 ってい る。 この なか で と くに企業職 員 労働者 の,基本養老 保険 が重要 視 され 、改革 の中心 にな ってい る。今 後 、養老保 険制 度 の整合性 や規 範化 を考 え る と、行政 機構 と事業 部 門の養老 保険 も、条 件付 で企業 職員 労働 者 の基 本 養 老保 険 と一本化す る必 要が あ る。 1.企 業 従業 員 の基 本養 老保険 制度 都 市部 におけ る企業従 業員養 老保 険制 度 は、「・ 基 本養 老保 険」 「企 業補助 養 老保 険 」 と 「個人貯 蓄性 養老保 険」 か ら構成 され て い る。 しか し 「企業 補助 中 国の養老保 険制度 改革 の展 開(武)103 養 老保 険」 と 「貯 蓄性養 老保 険」 の普及 率 は低 く、法 に よ って強制 され た基 本養老保 険が改革 の 中心 にな ってい る。 (1)統 一運 営 と個 人 ロ座 方式 の特 色 現行 の基本 養老 保 険制 度 は 、「統 一運 営 と個 人 口座 」 方式 が 実施 され て い る。 この方式 は、 フラ ンス とア メ リカ等 の伝統 的 な養 老保 険 であ る統 一運 営 方 式 を吸収す る と同時 に、 シ ンガポー ル等 の強制貯 蓄型養 老保 険 であ る個 人 口座 方式 も採用 してい る。 「統 一運 営 と個 人 口座 」 方式 の最 大 の特 色 は、① 個 人 口座 制 が統 一 され た 運営 方 式 の上 に制 定 され た方 式 で あ る こ と、② す べ ての責 任 は国 が負 う こ (5) と 、 ③ 個 人 口座 制 は 不 完 全 な個 人 所 有 で あ る こ と に あ る。 そ の構 想 は 次 の 表3の 通 りで あ る。 表3「 統 一運 営 と個人 口座」 方式 の養老 保 険 1)個 人 資金 の 累 積 2)元 金 と利 息 は 本 人 或 い は遺 族 の 所 有 1)個 人権 益 の累 積 (大部 分 は す で に定 年 退 職 者 に支 給 さ れ た) 2>本 人 が定 年退 職 後 、 退 職 金 の 支 給 に 使 う。 この 場 合 は 個 人所 有 とな る。 3>本人 が定 年退 職前 、出 国或 い は死 亡 、 お よび 定 年 退 職 後 間 もな く、 も し くは 支 払 う途 中で 死 亡 の場 合 は 「 統 一 され た運 営 ・管理 」 に入 る。 統 一 され た運 営 ・管 理 (社会 統 簿) 郭 士征 ・葛 壽 昌 「中国社会 保 険 的改革 与探 索」 等 に よ り作 成 104 (2)企 業 と従 業 員 の 支払 い 率 26号 文 書 と259号 賃 金 総 額 の20%を 文 書 に よ る と 、 企 業 が 支 払 う基 本 養 老 保 険 料 は 、 企 業 超 え て は な ら な い 。 そ の な か に 個 人 口座 に支 給 す る分 が 含 まれ る 。 各 省 、 市 、 自治 区 は保 険 料 の 比 率 を 決 定 す る が 、20%以 上 を超 え る場 合 は 労働 保 障 部 と財 政 部 の審 査 ・許 可 を 必 要 とす る。 個 人 が 支 払 う基 本 養 老 保 険 料 は 、1997年 1998年 か ら2年 毎 に1ポ は4%以 下 に な って は な ら な い 。 イ ン トを 高 め 、 最 終 的 に8%に 引 き 上 げ る。 条 件 の あ る地 域 と 賃 金 増 加 の 速 い年 度 は ポ イ ン トを 高 め る ス ピー ドを 適 切 に速 め る。 (3)個 人 ロ座 の 比 例 と基 本 養 老 金 の 支 給 本 人 が 賃 金 の11%を 個 人 口座 に 記 帳 し、 実 際 納 付 分 と の 差 額 は 企 業 の 支 払 った 分 か ら繰 り入 れ る。 個 人 納 付 率 の 上 昇 につ れ て 、 企 業 の繰 り入 れ る部 分 は 徐 々 に3%に 下 げ る。 個 人 口座 は職 員 労 働 者 の年 金 のみ に使 い 、転 職 時 に 同 時 に移 転 し、 個 人 が 支 払 った 分 は相 続 で き る。 基 本 養 老 金 は 、 基 礎 養 老 金 と個 人 口座 養 老 金 か ら支 給 され る。 基 礎 養 老 金 の 基 準 は 、各 省 、 市 、 自治 区 の 職 員 労 働 者 の 前 年 度 平 均 賃 金 の20%、 座 養 老 金 の 基 準 は 個 人 ロ座 残 高 の120分 の1と な る。 納 付 年 限 が15年 個人 口 未満 の 場 合 、 定 年 退 職 後 、 基 礎 養 老 金 待 遇 を 享 受 しな い 。 そ の 個 人 口座 の累 積 額 は 本 人 に一 括 支 払 う。 (4)省 レベ ルの 統 一 運 営 ・管 理 の 実 行 1998年6月 も8月 に 党 中 央 ・国 務 院 は 、 業 種 毎 の 運 営 を 地 方 政 府 に 移 し、 しか 末 ま で に 完 了 す る よ う と要 求 した 。 これ に よ っ て8月 の業 種 と31の 省 市 で 協 議 が 交 わ され た 。 ま た1998年7月 に年 末 ま で に 全 国 で 省 レベ ル の 統0運 中 下 旬 、11 に国務 院 は、 さ ら 営 ・管 理 を 実 行 す る と決 定 し、1998 年 末 、27の 省 、 市 、 自治 区 は 省 レベ ル の 統 一 運 営 ・管 理 あ る い は 省 レベ ル の調 節 金 制 度 を実 現 した 。 中 国の養老保 険制 度改革 の展 開(武)105 (5)基 本養 老 保険加 入者数 の推 移 基 本 養 老 保 険 に 加 入 した 国有 企 業 の 在 職 者 は 、 図1の よ う に1995年 減 って お り、 一 方 、 国 有 企 業 の 離 職 ・定 年 退 職 者 数 は 、 図2の か ら 通 り 、1996 年 を 除 き 、 毎 年 増 え て い る。 基 本 養 老 保 険 職 員 労働 者 負 担 係 数 も毎 年 大 き く な り、1998年 1999年 は1993年 の9月 よ り40%上 昇 して い る。 末 現 在 、 企 業 基 本 養 老 保 険 の 加 入 者 は9262万 の加 入 者 は9481万 人 に止 ま り、 同年6月 人 、 失業保 険 末 の 到 達 目標 よ りそ れ ぞ れ1738万 {6) 人 、4219万 人 不 足 して い た 。 条 例 通 り の 実 施 や 設 定 目標 の 達 成 等 が 容 易 で は ない こ とが 改 め て 浮 き彫 り と な った 。 2.行 政機 構 と事業部 門 の養老保 険 2000年 現 在 、3000万 人 に上 る政 府 機構 と事業 部 門 の人員 は 、企業 と異 な る養 老保 険 に加 入 してい る。政 府機 構 と事 業部 門 の養 老保 険制度 改 革 は遅 れ てお り、 ご く一部 の実験 テ ス ト地域 を除 き、ほ とん ど従来 の退職 規 定 を援用 して い る。 この制 度 の特 徴 は、 ① 養 老保 険 費 はす べ て政府 また は部 門が 負 担す る。 ② 「現収 現 付 」方 式 を行 い 、部 門 間 で は互 い に調 節 しない。③ 退 職 した 幹 部 の養 老 金 は元 の勤 務 先 によ り管理 され る。④ 養 老 金 の支給 は本 人 の給 料 を基 数 と し、勤務年 数 に基 づ き、計算 ・支給 す る。そ の なかで政府 機構 の公 務員 は、退職 後 、「基礎 工 資」(基 本給 に相 当)と 「工齢 工 資」(号 俸 に相 当) を全額 支給 し、「職 務工 資」(役 職 手 当 に相 当)と 「級別工 資」(等 級 に相 当) は 比例 に基 づ き支給 す る。 事 業 部 門 の人 員 は 「基 礎 工 資」 と 「崩 位 工 資 」 (作業場 手 当 に相 当)の 総和 に対 して比例 に基づ き支給 す る。 その基 準は表 {7) 4の 通 り で あ る。 106 (万 人) 図1基 本養 老保 険加 入者 の推移 iOOOO :fi :iii 'ニi ce='甜" .r4i. NN ,,踊 :a Y 承 t ・111 111 2000 0 1992199319941995199619971998 +国 有企 業 唖 一都 市 集 団 企 業+そ の 他 の 企 業 …:3'...合 計 出所:『中国 労 働 統 計 年 鑑 』1999年 版 より作 成 図2離 出所:図1と 同じ 職 ・ 退 職 者 の 推 移(万 人) 中 国の養老保 険制 度改 革 の展 開(武)107 表4行 政機構 と事 業部 門の養 老保 険金 の支給 一 覧 政 府機 構 (「職務 工 資 」 と 「級別 工 資 」★) 勤務年数 待遇比例(%) 10年 未満 事業 部 門 (「基 礎 工 資」 と 「嵩位 工 資」) 勤務年数 待遇比例(%) 10年 未 満 40 50 10・20年 so 10・20年 70 20-30年 75 20.30年 80 30・35年 82 30-35年 85 35年 以上 出 所:労 源 88 動和 社会保 障部 文(中 国 語 と英 語)で は 90 35年 以上 『中 国 的 社 会 保 険 』 、p.3.よ 「級 別 工 資 」 が り引 用 「.^.位工 資 」 と な っ て い る 。 (8) 現行 の制 度 には主 に次 の よ うな二 つ の問題点 がみ られ る。 ① 基金 累 積 制 度 は設 置 され て い ない。 退職 金 は毎 年 、財 政 予 算 よ り支 出 す るため 、退職 金 の支 出増 は他 の項 目の財政 予算減 に直接 に関連 し、 国民経 済 の持 続 的 な発展 に も一定 の影響 を与 え る。 ② 退職 人員 は 元 の勤 務先 に管 理 され て い るので 、 各機構 、部 門 は専管 施 設 と人員 を設 け、膨 大 な管理 業 務 を遂 行 してい る。 そ のため正 常 な業 務 に支 障 が起 こ り、効率 が低下 してい る。一 一部 の機構 ・部 門で は、在職 人員 と離職 ・ 退職 人員 の比例 がす で に1=1と な ってい る。 今後 、 まず 現行 の制度 を止 め、基 本養老 保 険 を設 け て企業従 業員 の基 本養 老保 険 と一 本化す る必要 が あ る。 次 に代 替 率 を平均50%台 に切 り下 げ て、す べての都市住 民 を0本 化 した基 本養老保 険 に納 め、統 一 した都市住 民年 金保 険を作 り、養老保 険全 体 の統0・ 整合 化 をは か る。 そ の うえ で企業 との相 違 点 を考 え、行政事 業共 済 を設立す べ きで あ る。個 人 も一 定 の割合 で保 険料 を 納 め るべ きであ ろ う。 3.農 村 社会 の養老 保険 農 村部 の養老 保 険 にっ いて は1991年5月 とと な った が 、1998年 に朱鋸 基G理 か ら 「民政部 」 が 責任 を負 う こ の行 政機 構 改 革 に よ って農村 社 会 の養 108 老 保 険 は 労 働 保 障 部 の管 轄 下 と な った 。 労 働 社 会 保 障 部 の公 式 見 解 に よ る と、 農 村 社 会 の 養 老 保 険 の 原 則 で は 保 障 レベ ル が 農 村 生 産 力 の 発 展 と各 方 面 の受 容 力 の 範 囲 内 と され る。 農 村 部 の養 老 保 険 の保 障 方 式 は 、 家 庭 扶 養 、土 地 保 障 お よ び社 会 救 済 な どの 方 式 と の結 合 で あ り、 主 に 政 府 の組 織 ・指 導 と農 民 の 志 願 と の 結 合 と い う方 法 を 取 って い る。 そ の 主 な 特 徴 は 次 の通 りで あ る。 ③ 資 金 集 め は 、 主 に個 人 納 付 で 、集 団が 補 助 し、 政 府 は政 策 で 扶 助 す る 。 ② 県 は基金 の運営 ・ 管 理 の 単 位 で あ る。 ③ 個 人 口座 を 設 け 、 蓄 積 を 実 行 し、 累 積 総 額 に基 づ き 、 支 給 基 準 を確 定 す る。 ④ 農 村 内 の各 業 種 の 人 員 の養 老 保 険 一 体 化 を 実 行 し、 加 入 者 に 対 し、 制 度 、保 険 番 号 と管 理 の統 一 を 実 行 す る。 1998年 に28の 施 され 、8025万 省 、 市 、 自治 区 の2123の 県(市)と65%の 郷(鎮)で 実 人 が 養 老 保 険 に加 入 して い る。 年 間 の 農 村 社 会 養 老 保 険 基 金 の 収 入 は31.4億 元 、 支 出 は5,4億 元 、期 末 の 残 高 は166.2億 元 と な り、 (9) すで に50万 人余 りが養 老金 を受 け取 り始 めた 。 4.企 業補助 養老保 険 企業 補助 養老保 険 とは、企業 が政 府 の行政指 導 を受 け、企業 の経 済 力 と従 業員 の収入 に応 じて従業 員 のため に設 けた補助 的 な養老保 険 で あ る。企 業補 助養老 保険 は、 多元 的 な養老保 険制 度 の なか の第2次 元 で あ り、企 業 内部で 決定 ・執行 し、保 険料 は企 業 自身 の資金 の中の奨励 、福利基 金 か ら支 出す る。 した が って企業 の損益 によ って保 険 の加 入料金 が異 な り、赤字 企業 は しば ら く加入 しな くて もよい とな ってい る。 社会 保険 管理機=構は、「国家技 術監 督局」 が公 布 した 「社 会保 障番 号」(国 家標 準GB11643-89)に したが って補 助 養老 保 険 基 金 を従 業 員 の個 人 口座 中 国の養老保 険制度 改革 の展 開(武)109 に 記 帳 す る。 現 行 の 企 業 補 助 養 老 保 険 の 適 用 範 囲 と条 件 は 、1995年 部r企 の労 働 業 補 助 養 老 保 険 制 度 の 構i築に 関 す る意 見 」(労 部 発[1995]464号)に (10) よ って規 定 され て い る。 企 業 補 助 養 老 保 険 制 度 は 、1991年 か ら実 施 され た 。1996年 保 険 に加 入 した 従 業 員 は全 国 で わ ず か270万 統 の65万 末 、 補 助 養i老 人 前 後 に過 ぎず 、 しか も銀 行 系 人 が そ の なか に含 まれ て お り、1.2億 人 を持っ 基 本 養老 保 険 とは 比 べ られ な い ほ ど少 な い の で あ る。 基 金 残 高 も18億 元 に止 ま り、 約600億 (11) 元 の残 高 を持っ基 本養 老保 険 の3%に 過 ぎ ない。 しか し1999年 には500万 の 企業 従業 員 が 企業 補助 養 老 保 険 に加 入 して お (12} り、累積 した基金 も64億 元 に達 した。 2000年 現在 、政 府 が承 諾 した基 本養 老保 険 の代 替 率 は平均83%と 高 く、 そ のため 企業 は補 助養 老保 険 に加 入す る余裕 は な く、従業員 も基 本養老 保 険 のみ で足 りる とされ 、補助 養老保 険 の普及 を制約 して いる。 5.「 個人 貯 蓄性 養 老保 険」 個 人貯 蓄性養 老保 険 とは、企業 の従 業員 が個 人 の経 済状 況 に応 じ、 自 ら保 険管理 機構 を選 び 、 自由 に参加 す る養 老保 険で あ る。 個人 貯蓄性 養老 保険 は 多 元的 な養 老 保 険制 度 の 中 の第3次 元 で あ り、加 入者 の権 利 と義務 は1995 年6月30日 に採 択 され た 「中 華 人民 共和 國保 険法 」 に よ って規 定 され て い る。 1996年 末 、個 人 貯 蓄 性養 老 保 険 の加 入 者 は、全 国で わず か225万 人 で 、 基金 の残 高 はわず か6億 元 余 りのみ で あ った。1999年 には全 国で30の 保 険 会 社 が存 在 し、そ の なか で外 資経 営 会社 は17社 を 占め 、保 険業 の収 入 は前 {13} 年 同 期 比10.17%増 しか し1998年 の1393億 元 に 達 した 。 に 「中 国社 会 事 物 調 査 所 」 が 実 施 した 北 京 市 の ア ンケ ー ト 調 査 で は 、 積 極 的 に 商 業 保 険 を購 入 した 者 は わ ず か15%に 過 ぎず 、66%の 110 住 民 は 商業 保 険 が あ ま り理 解 で き て い ない。 また 「慧 聡 国際 資 訊 公 司」 が 行 っ た 北 京 等 の9大 らず 、51%の 60%の 都 市 の サ ン プ ル 調 査 に よ る と 、68%の 人 は 良 く理 解 して お 人 は商 業 保 険 と接 触 した こ と が な い こ と が 判 明 した 。 そ して 市 民 の 毎 年 負 担 で き る保 険 料 は1000元 以 下 、33%の 市 民 は1000- (14) 2000元 1999年 の 間 で あ った 。 現 在 、 養 老 保 険 業 務 を 全 国 規 模 で 展 開 した 会 社 は5社 に 達 し 、 養 老 保 険 の 種 類 も 多 く み ら れ る 。 中 国 保 険 情 報 網(http://www.chinainsurance.com)も1997年11月28日 に 正 式 に 開 通 し、 一 部 の 保 険 会 社 は イ (15) ン ター ネ ッ ト上 で の 宣 伝 、 紹 介 を 行 って い る。 今 後 、商 業 保 険 の加 入 者 が 対 前 年 比 急 増 す る と見 込 まれ て い るが 、 普 及 率 の急 伸 は あ りそ う に な い。 現 在 、80%台 に上 る 基 本 養 老 保 険 の 代 替 率 は 、 老 齢 化 社 会 の 到 来 につ れ て 、政 府 の 財 政 負 担 を 一 段 と重 く し、 今 後 、 代 替 率 は40%-50%の 準 に近 い50%-60%に 国際基 徐 々 に切 り下 げ られ て ゆ くで あ ろ う。 また 普 及 率 の 低 い企 業 補 助 養 老 保 険 を考 え る と、 個 人 貯 蓄 性 養 老 保 険 は今 後 徐 々 に 台頭 し て く る と 思 わ れ る。 IV多 元的 な養老 保険 制度 の確 立 へ 1.社 会 保障 制度 改革 の構想 と原則 多元 的 な養 老保 険制度 の確 立 を 目指す 政府 は 、社 会保 障制度 改革 の、 基本 的 な構想 を 、「基 本 を保 障す る、広 くカバ ーす る、多 元的 に構 築す る、双 方 が 負 担す る、統 一運 営 と個 人 口座 との結合 を行 う」 ことで あ る と決定 した。 また 、社 会保 障制 度 改 革 の原 則 を 、① 社 会保 障 レベ ル は 、常 に生 産 力 レ ベ ル に相 応 す る。 ② 社会 保 障 の項 目に よ って公 平 さが異 な る。③ 制 度 と政 策面 にお いてそ の方針 は全 国的 に統 一 してい るが 、具 体 的 な実施 方法 は地域 の諸事清 によ って異 な る。④ 都 市 と農村 を区別す る、 と決定 した。 中 国の養老保 険制 度改革 の展 開(武)111 2000年 現 在 、 労 働 社 会 保 障 の 主 な任 務 は 、「三 っ の 重 点 、 二 つ の確 保 、 一 つ の統 一 」、す なわ ち 「国 有 企 業 の 一 時 帰休 者 の 再 就 職 、養 老 保 険 制 度 改 革 、 医 療 保 険 制 度 改 革 を重 点 と し、 国 有 企 業 の一 時 帰 休 者 の 基 本 生 活 と離 退 職 人 員 の養 老 金 の 支給 を確 保 し、 社 会保 険 の統 一 管 理 を実 現 す る」 こ とで あ る。 養 老 保 険 制 度 改 革 は 三 っ の 重 点 の 一 っ を 占め 、離 職 ・ 退 職 人員 の養老 金 支給 の確 保 も二 つ の 確 保 の なか の 一つ に な って い る よ う に、 き わ め て 重 要 視 され て い る。 2.多 元 的 な養老保 険制 度の確 立 の原則 と推 進 目標 養 老保 険制度 の確 立 を 目指 す た め に次 の よ う な原 則 、す なわ ち、① 養 老 保 険 の水 準 は生 産力 と各 方面 の受 け られ る能 力 と適 応 して い る、 ② 権 利 と i義務 の統 一 、 ③ 自己保 障 と社 会互 助 との結 合 、④ 公平 と効 率 との結合 、⑤ (16) 管 理 の 法 制 化 、 が 要 求 され て い る。 ま た 政 府 は 、2000年 に もひ き っ づ き 「二 つ の 確 保 」 と 「三 三 制 」(個 人 、 企 業 、 社 会 が そ れ ぞ れ 三 分 の一 を 負 担 す る こ と)の う と発 表 し、 養 老 保 険 の 推 進 を2000年 資 金 調 達 原 則 を 着 実 に行 の社 会 保 障 制 度 改 革 の 二 大 目標 の 一一 く ユの っ で ある こと と決定 した。 2000年 の養 老保 険 の推 進 目=標は次 の ように設 定 され てい る。 ① ひ きっ づ き養老 金 の期 日通 りの全額 支給 を確 保す る。 ② 養 老保 険 の カバ ー範 囲を拡 大 し、新 規 加入 者 を1200万 人増 や し、全面 的 に カバーす る ことを基 本 的 に実現す る。 ③ 基金 の徴 収 を強化 し、基金 徴収 率 を90%以 上 に引 き上げ る。 ④ 差額 納 付 支給 を全額 納 付支給 に改 め 、年末 に支給 率 を80%以 上 に引 き 上げ 、大多数 の離 退職 者が期 日通 り住居 の近 くの銀行 、郵 便 局で養 老金 を受 け られ るよ うにす る。 112 3.養 老保 険制度 の主 な問題 点 現行 の養老 保 険制度 には多 くの問題 点 が存 在 してお り、次 のよ うに ま とめ (18) る ことがで き る。 ① 養 老 保 険制 度 の統 一 問題 。 企業 、行 政機 構 と事業 部 門 、農 村 社 会 は そ れ ぞれ の養老 保 険制度 が実行 され てお り、モ デルか ら待遇 の基準 まで か な り の差異 が存在 して い る。 ② いわ ゆ る 「空 帳 」 また は 「空洞 」 の問題 。現 行 の養 老保 険制 度 は基 本 的 に 「新人 」 のため に設計 され て い る。 したが っていわ ゆ る 「空 帳」 また は 「空 洞」、す なわ ち養 老保 険 制度 改 革 を行 う前 の退 職者 と新 旧制 度 に また が る在職 者 の制 度 改革 の前 の保 険料 は政 府 が補 填 してい ない。 また 「現 収現付 制 と完 全累積 制」 で あ る 「統 一運 営 と個 人 口座」 方式 の強行 は、行政管 理 を 煩 雑 に し管理 コス トを押 し上げ て い る。 ③ 中央 政府 は改 革 の方 向や 政 策 だ け を決定 し、 地 方政 府 が具 体 的 な改 革 方 案 を規 定す るため 、保 険料 の納 付 率 と待遇 の基 準 は千差万 別 で、地域 を ま たが る労働 力 の移 動や 今後 の制度 の一本化 の実 現 に大 き な困難 を もた ら して い る。 ④ 「非対 称養老 負担 」 の問題。 政府 が 、企業 の利潤 分配制 度 、予算管理 制 度 お よび社会 保 障制度 をセ ッ トと して改革 して こなか った ため 、退職前 の労 働 成果 の利 益 を受 け た者 、す なわ ち(a)労 働 者 本 人及 び そ の家族 、(b)生 産 財 の所 有 者 、(c)国 家 と社 会 が 、薪 制 度 の下 で 養老 金 を共 同で 負担 してい な い。そ の代わ りに 当時 の労働 成果 の利 益 を受 け なか った企業 や勤 労者等 が 、 現在 彼 らの養 老金 を負担 す る ことにな ってお り、 いわ ば 「非対称養 老 負担」 が 生 じた。 ⑤ 賃金 増 と保 険 料増 の ア ンバ ラ ンス の問題 。 離職 ・退職 者 の養 老金 は 、 常 に在職 者 の賃金 と同 じペ ー スで引 き上 げ られ て い る。 しか し在職 者 の賃金 増 と納 付す る保 険料 増 は正 比例 に な ってい ない。 ゆえ に賃金 ア ップ した在 職 中 国の養老 保険 制度 改革 の展 開(武)113 者が納 付 した保 険料 の増 加 分 は、在職 者 の賃 金 と同 じペ ース で引 き上げ られ てい る離職 ・退職 者 の養老金 の増 加 分 をまか な う ことが で き ない。 ⑥ 養老 金 の引 き上 げ の 問題 。 養老 金 は省 とい う行 政 単位 で 統 一運 営 ・管 理 され てい る。 各省 、市 、 自治 区が実 情 に よ って異 な る政 策 を取 り入れ てお り、それ ぞれ の経済格 差 も相 違 してい る。 しか し中央 政府 の支給 養老 金 の引 き上げ は地 域 と関係 な く、 しか も同 じ期 日、 同 じ幅 を要 求す るた め、後進 地 域 で の養老 金 の支給 遅滞 の原 因 を作 った。 4.残 され た当面の課 題 現行 の養老保 険制 度 にみ られ る多 くの問題点 を解 決す る ことは今 後 の課題 では あ るが 、現体制 の下 で実 現困難 な部 分が か な り存在 して い る。 多元 化的 な養 老保 険制度 を 目指す 中 国政府 は、 当面 、 まず次 の よう な課 題 を解決 すべ きで あろ う。 (1)現 行 の基本養 老保 険 の運 営、管理 、監 督 の強化 。 「基 金 の統 一運 営 と個 人 口座 との結合 」方 式 で は、「老 人老 方法 、新 人新方 法」 な どを通 して社 会保 障制度 を再構築 しよ う と して いるが 、基金 運営 の資 (19) 本 化 と基 金 管 理 の 市 場 化 が 前 提 条 件 と して成 立 して い な い。 また 企 業 の 滞納 等 に よ る基 金 の減 収 も 、基 金 運 営 に支 障 を もた ら して い る。 1999年12月 、383億 元 に 上 る 養 老 保 険 費 が 滞 納 さ れ 、 そ の な か で1000 万 元 以 上 を 滞 納 す る企 業 は200余 りに達 した 。 当面 、 基 金 の増 殖 等 を含 む 運 (20) 営 を さ ら に講 じるべ き で あ る。 国務 院 の28号 老 保 険 の 統0運 文 書 に した が って 、1998年8月 末 ま で に11の 業 種 に よ る養 営 を各 省 に移 管 した 過 程 に お い て 、一 部 の業 種 は 統 一 一基 金 の 運 営 項 目を 拡 大 し、 支 給 基 準 を 高 め 、 納 付 率 を低 め に 調 節 し、不 正操 作 を 行 い 、 負 担 を 「省 、 市 、 自治 区 」 に転 嫁 した 。1998年1-8月 た 規 定 違 反 の 定 年 退 職 者 は 、79.6万 、作 り出 さ れ 人 の 新 規 定 年 退 職 者 の な か で55%の 114 (217 43.8万 人 に達 した。 なか に は24歳 の 定年退 職者 もあ った とい う。 今後 、 さ らに カバ ー範 囲を拡大 し、煩雑 な管 理方 法 を改善 し、 よ り一層 の監 督 をはか るべ きで あ る。 (2)「 企 業補助 養老 保 険」 と 「個人 貯蓄性 養老保 険」 の早 期確立 政府 は 、 しば しば 「企業補助 養老 保険 」 と 「貯蓄 性養老 保 険」が それ ぞれ 多元的 な企業 従業 員養老保 険 の第2次 元 と第3次 元 で あ る ことを説 明 して い る。 しか し社 会保 険 を管 轄す る労働 社会保 障部 は、公 式 見解 と して 「企業補 助 養老 保 険」 を、「企業 従 業員 の基 本養 老保 険」、「政 府機 構 と事 業 部 門 の養 老 保険」、「農 村社 会養老保 険」 の次 に位 置付 け してい る。 国務 院 は 、「個 人貯 蓄 性 養 老保 険 」 の環 境 作 りに努 め てお り、1999年10 月 に保 険会社 によ る証券 投資基 金 の購入 を認 め、保 険会社 の証券 市場 へ の間 接 的参 入 を許 可 した 。 さ らに保 険業 の規範 化 をは か るた め 、2000年3月1 {22) 日か ら 「保険 会社管 理規 定」 を実施す る予定で あ る。 しか し労働社 会保 障部 が公表 して いる現 行 の養老保 険制度 には 「個 人貯蓄 性養 老保 険」 は入 ってい ない。 現在 、「企業補 助養 老保 険」と 「個 人貯 蓄性養 老保 険」 は 、 ご く一部 の企業や 地域 、階層 に限 られ てお り、今後 、 更 な る政 策 を打 ち 出 し、現状 の打 開 と確 立 を早 急 にはか るべ きで あ る。 (3)養 老保 険条例 の早期 登場 1997年 に開かれ た15回 党大 会 で 、養 老保 険 、失業保 険 と医療保 険が 最重 要 の3項 目と決 定 され た が、2000年1月 現在 、「失 業保 険条 例」 しか公布 さ れ てい ない。 今 後 、「養老 保 険条 例 」 の早期 登場 は不 可 欠で あ り、 さ らに起 草 の段 階 に 止 ま ってい る 「社 会保 険法 」 の公 布 も早 急 に検 討す べ きで あ ろ う。 また社会 保 障制 度 の観点 か ら養 老保 険制 度 改革 を取 り上 げ る必要 性 が あ り、「社会 保 険」 と して の統 一性や 整合 性 も十 分 に配 慮 し、基 本養老保 険 の一本 化 とそ の 普及 に伴 ない、都 市住 民年金 制度 を徐 々に作 り上 げ るべ きであ ろ う。 中 国の養老保 険制度 改革 の展 開(武)115 Vむ すび 中 国の 現行 の養 老保 険 制度 は、① 企業 職 員 労働 者 の基 本養 老保 険 、② 行 政 機 構 と事 業 部 門 の養老 保 険 、③ 農 村社 会 の養 老保 険 、④ 企 業補 助 養老 保 険か ら構成 され てお り、全 国 の統 一 した養老保 険制 度 は存 在 してい ない。 現行 の養 老保 険 の構 造か らみ て も、中 国政府 は、老齢 化社会 が急 速 に進む 中 国で は、生産 力 の低 さ、地域 間や業 種 間の ア ンバ ラ ンス と今後 も長期 間 に わた って都 市 と農村 とい う2元 的 な経 済 構造 が並 存す る こと等 を十 分 に認 識 して いる。 2000年 現 在 、 国務 院 は養老 保 険 に関 す る重 要 政 策 を策 定 し、各 省 政府 は 省 の実 情 に応 じて具体 的 な実施方 案 を作成 ・実施 してい る。 と くに 「企業職 員労働 者基 本養老 保 険」 の完備 を 中心 にその整備 を進 め てお り、 同時 に企業 補助養 老保 険 と個 人貯 蓄性 養老保 険 を大 い に奨励 し、多元 的 な企業 従業 員養 老 保 険 の構築 に努 め て い る。 また政府 は、基 本養 老基金 の運 営 ・管理 ・監督 を強化 しなが ら、行 政機構 と事業 部 門 の養老 保 険 の条 件付 の一 本化 を検 討 してお り、基 本 を保 障 し、広 くカバ ー して多 元的 に構築す る構 想 を実現 しよ うと して い る。 当面 は と くにいわ ゆる 「空帳 」 また は 「空洞」 の補 填問題 を早 急 に解 決 し、 法 的規制 を はか り、「養 老保 険条 例 」や 「社 会保 険法 」 の早 期登 場 を実 現 さ せ るべ きで あ る。最終 的 に制 度 の分割 状態 を終結 させ 、統0し た基 本養 老保 険制度 を確 立 させ た 上 に、地域 や業種 等 に よる各種 の共 済 を 同時 に構築 す る 必要 が あ ると思 われ る。 注: (1)許 暁 峰 ・林 暁 言 『最 新 現 代 保 険 実 用 知 識 問 答 』 中 華 工 商 連 合 出版 社 、1999 年 、P.327. (2)労 動 和 社 会 保 障部 『中 国 的 社 会 保 険 』pp.2-4. 116 (3)労 動 和 社 会 保 障 部 人 事 教 育 司組 織 編 『社 会 保 障 業 務 講 座 』 中 国 労 動 社 会 保 障 出 版 社 、1999年 、pp.28-47.王 旭 東 ・頸 爆 偉 『労 動 和 社 会 保 障 全 書 』 上 、 中 、下 、1998年 を 参 照 され た い 。 (4)何 平 『国有 企 業 改 革 中 的 社 会 保 険 』 経 済 科 学 出版 社 、1997年 、p.65. (5)郭 士 征 ・葛 壽 昌 「中 国社 会 保 険 的 改 革 与 探 索 」 上 海 財 経 大 学 出 版 者 、pp. 65-66. (6)1999年11月3日 に 開 か れ た 「中 美 社 会 保 障 高 級 研 討 会 」 で 劉 雅 芝 ・労 働 社 会 部 副 部 長 の談 話 。 (7)労 動 和 社 会 保 障 部 『前 掲 書 』、p.3. (8)劉 貫 学 ・劉 学 民 『最 新 実 用 養 老 保 険 政 策 問 答 』 経 済 科 学 出版 者1999年 、p. 130. (9)労 動 和 社 会 保 障 部 、 国 家 統 計 局 「1998年 労 動 和 社 会 保 障 事 業 発 展 年 度 統 計 公 報 」。 (10)劉 貫 学 ・劉 学 民 『前 掲 書 』pp.18-19、 (11)宋 暁 梧 「統 一 職 工 基 本 養 老 保 険 制 度 建 立 多 層 次 養 老 保 険 体 系 」 『中 国 社 会 保 障 制 度 』 企 業 管 理 出版 社 、1998年 、p.344. (12)労 動 和 社 会 保 障 部 『前 掲 書 』、p.4. (13)宋 暁 梧 「前 掲 論 文 」、 『証 券 時 報 』2000年1月21日 、 馬 永 偉 ・中 国保 監 会 主 席 の発 言 。 (14)『 経 済 日報 』1999年11月4日 (15)『 中 国 証 券 報 』2000年1月21日 西 南 財 経 大 学 、1999年 (16)劉 (17)『 、 『中 国 証 券 報 』2000年1月21日 。 、 楊 立 旺 ・藍 明 春 『養 老 保 険 投 保 指 南 』 、p.39.pp.269--270. 貫 学 ・劉 学 民 『前 掲 書 』pp.4-5. 人 民 日報 』 海 外 版2000年1月11日 、 『経 済 日報 』2000年1月15日 。 も う一 つ の 目標 は 医 療 保 険 制 度 で あ る。 (18)余 功 斌 「現 行 社 会 保 障 制 度 存 在 的 問 題 」 『中 国 財 政 』1999年 41.劉 京 換 「養 老 負 担 問題 研 究 」 『財 貿 経 済 』1999年 第11号 第12号 、pp.28-31, 韓 立 森 ・曹 媚 「職 工 養 老 保 険 傍 存 在 四 大 誤 区 」 『中 国 改 革 』1999年 pp.57-58.を (19)許 、p. 第7号 、 参 照 され た い 。 暁 菌 ・王 広 学 「社 会 保 障 私 有 化 及 其 理 論 基 礎 」 『経 済 学 動 態 』1999年 第 10号 、p.58. (20)『 (21)江 人 民 日報 』1999年12月15日 。 春 沢 ・李 南 雄 「養 老 保 険 省 級 統 壽 引 発 條 塊 矛 盾 凸 現 」 『現 代 企 業 導 刊 』 中 国 の 養 老 保 険 制 度 改 革 の 展 開(武)117 1999年 (22)『 第11号 、p.35. 人 民 日 報 』1999年10月30日 、 『経 済 日 報 』2000年1月7日 。