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大野ヶ原開拓組合
平成22年度農林水産祭むらづくり部門農林水産大臣賞受賞 お お の が は ら か い た く く み あ い 「大野ヶ原開拓組合」 愛媛県西予市野村町 大野ヶ原地区 たけだ たかし 代表者 武田 孝司 組合長 標高1000mを超える厳しい条件の中、自然と共生しつつ、生活と営農が一体 となった取組を実施。戦後入植した開拓1世の築いた基盤に2世、3世が継承・ 発展させている。酪農などの経営基盤の確立と地域の絆・結束力により全農家で 後継者が確保されている。 【むらづくりの経緯】 大野ヶ原地区は、西予市の最東部の山 地 区 の 概 要 間部、標高1,000~1,400m の四国カル 規模:1集落 区分:山間農業地域 スト高原にある。年間平気気温は9~10 総世帯数 29戸 農業生産概要 総人口 89人 酪農 258百トン ℃、冬季20~50cm の積雪がある。西予 販売農家戸数 17 戸 (264百万円) 市の中心まで車で1時間30分、松山市ま 主業農家 17 戸 肉牛 154頭 で2時間30分と交通不便地である。 準主業農家 - 戸 (137百万円) 副業的農家 - 戸 花き類 15万本 当地区は戦後の開拓をスタートとし、 耕地面積 136 ha (11百万円) 昭和24年の「大野ヶ原開農業協同組合」 牧草地 113ha、畑 22ha 大根 70トン の設立によりむらづくりが始まる。昭 販売農家1戸当り耕地面積 8.0ha (8百万円) 認定農業者 16 人 和25年には国の開拓地としての認可が 下り、第1次入植農家として30戸が入植 した。入植者は、先ず住む家を造り、電気や水道を引くことから始めた。その後、次第 に農家は増加していたが、交通の便などの悪条件に加え、長雨、冷害(霜害)、風害等 の厳しい自然条件によって多数の離農者が出るという危機も経験した。組合の活動は、 相互扶助の下、未開の原野において営農や生活の基盤を作るものであった。入植当時から 厳しい気象・立地条件の中、一つの家族のように助け合う精神が醸成され、地区が結束し て農業・生活基盤の発展に取り組んできた。 昭和44年の開拓行政の打切りに伴い、組合は野村町農業協同組合の下部組織となった。 平成17年、「大野ケ原開拓組合」と名称変更し、 むらづくりの推進体制 任意組織とし、住民相互の連携と協調を図る ため、地域的な共同活動を行う組織に生まれ 変わった。 集落の自治区を兼ねる大野ヶ原農林業振興 協議会の区長は開拓組合の組合長が兼務して おり、営農と生活面の一体的な活動がなされ ている。開拓組合が中心となり、消防団、拓 友会(開拓1世の会)、PTA等、集落内組織 と連携を図りながら開拓祭、龍王神社大祭、 高原祭、小学校・地区民合同運動会などのイ ベントや各種行事を実施している。 【むらづくり活動の特徴】 ~ 農業基盤の確立と継承・発展 ~ 地区の恒久的な安定経営を図るため、開拓1世により昭和 34年に乳牛が導入され、草地改良等の取組が進められた。 開拓2世により、牧草による自給飼料をベースとした低コ ストでバランスのよい持続的な経営、大型機械化体系等によ る省力化が図られ、現在は県下有数の産地となっている。ま た、家畜糞尿の地域内循環による環境と調和した酪農が確立 大型機械化体系の確立 されている。 さらには、開拓3世により、肉牛経営、冷涼な気候を活かしたデルフィニウムの栽培 など新たな取り組みが行われている。 現在、地区にはUターンした開拓3世が16名いるなど、経営基盤の確立と地域の絆が あいまって、全農家に後継者が確保されている。 ~ 地区住民の結束力でブナの原生林を守る ~ 地区内には、日本南限のブナの原生林があり、地域の生活 ・農業用水の水源となっている。昭和63年、水源近くまでブ ナの原生林の伐採が進んだ。このとき、地区住民の間で水源 涵養機能や貴重な自然環境が失われるとの意識が高まり、地 区住民全員参加による「大野ケ原ブナ原生林を守る会」を発足 した。関係機関への要請や1万人を超える署名活動等の反対 運動を展開した結果、ブナの原生林は守られた。 ブナの原生林 この活動を通じ住民の自然環境保全に対する意識と結束力 が高まった。現在も、遊歩道の整備や自然観察会など自然保護活動が続けられている。 ~ 地域の結束力の継続 ~ 小学校・地区住民合同運動会などの行事には、地区住民全 員が参加している。豊かで奥深い自然の中、若い人も子供の 頃から、農作業や地域行事を通じ地域の一員として深く関わ っている。毎年4月に開催される開拓祭は4世代の交流の場 となっており、入植時の苦労や将来の夢が語り合われ、子供 を含め家族や地域で価値観の共有が図られるとともに、世代 を超えた地域の結束力が高められている。 小学校・地区住民合同運動会 地区には小学校しかなく、子供たちは中学から親元を離れ 寮生活を強いられるが、一度は地区を出た子供たちが成人して戻り家を継いでいる。地 域の絆・結束力が地区の農業の発展や後継者確保に実を結んでおり、「開拓者魂」は確 実に次世代に受け継がれている。 大野ヶ原地区 入植当時の共同防除 大野ヶ原地区の皆さん